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京都府迷惑防止条例の改正~盗撮①

2019-12-16

京都府迷惑防止条例の改正~盗撮①

京都府迷惑防止条例の改正、特に盗撮行為に関する部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市左京区にある観光客が利用するホテルの従業員です。
Aさんは自身の働いているホテルの客室に盗撮用の小型カメラを仕掛け、ホテルの利用客の下着姿や裸姿を盗撮していました。
しかしある日、ホテルの利用客であるVさんがAさんの仕掛けた盗撮カメラの存在に気づき、ホテルに報告し、そこからAさんの盗撮行為が発覚しました。
ホテルやVさんが京都府川端警察署に通報したことにより、Aさんは盗撮事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)

・盗撮と現在の京都府迷惑防止条例

痴漢行為と同様、盗撮行為盗撮行為自体が「盗撮罪」として犯罪となっているわけではありません。
盗撮事件ごとの事情により、成立する犯罪が異なるのです。
そして盗撮事件が起きた際、よく適用される犯罪の1つが各都道府県の迷惑防止条例違反です。
京都府では、京都府迷惑行為等防止条例(以下「京都府迷惑防止条例」)という迷惑防止条例が規定されています。

現在の京都府迷惑防止条例での盗撮の規定は以下のようなものになっています。

京都府迷惑防止条例3条
1項 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(略)
2項 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1号 みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
2号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
3号 みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
3項 何人も、みだりに、公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある他人の姿態を撮影してはならない。

つまり、かいつまんで言うと、現在の京都府迷惑防止条例で規制されている盗撮行為は以下のようになります。

①公共の場所・乗り物での盗撮行為と、その盗撮行為のための機器の差出し・設置(京都府迷惑防止条例3条2項1~3号)
②公衆便所・公衆浴場などの講習が利用できる場所で通常衣服の一部または全部を身に着けない場所での、そこにいる一部または全部衣服を身に着けていない人に対する盗撮行為(京都府迷惑防止条例3条3項)

このような規定の仕方からすると、電車や駅での盗撮行為や、銭湯などでの盗撮行為京都府迷惑防止条例違反となりえますが、今回の事例のAさんのような観光客向けホテルの一室で起きた盗撮行為については、「公共の場所」でもなく「公衆が利用できる」場所でもないため、京都府迷惑防止条例違反とはならないと考えられるのです。

では、Aさんのような京都府のホテルの一室での盗撮事件は、現在どのように対処されているのでしょうか。
次回の記事で詳しく触れていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士盗撮事件を含む刑事事件ご相談に初回無料で対応しています。
Aさんの事例のように、盗撮事件ではどこでどのように盗撮が行われたかによって、その場所の迷惑防止条例違反が適用されるのかどうかが異なります。
その判断を行うためには、迷惑防止条例を詳しく知っていることはもちろん、盗撮事件自体の経験・知識も必要です。
まずは一度、刑事事件に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。

京都市上京区内飲食店での食い逃げ

2019-12-12

京都市上京区内飲食店での食い逃げ

京都市上京区内の飲食店での食い逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~ケース~

Aさんは京都市上京区のレストランにてランチセットを注文し、その提供を受けました。
食事後に代金を支払いたくないと翻意したAさんは、会計時に従業員に対して「財布を忘れたので、車に取りに戻る」と言い、店を後にして逃走してしまいました。
その後、飲食店がAさんの食い逃げに気づいて京都府上京警察署に被害届を出した結果、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕され、京都府上京警察署に連行されました。
(事例はフィクションです。)

~食い逃げは何罪か?~

食い逃げ」を行った場合どの罪に当たるのかという点については、

①注文時から代金を支払う意思が無かった場合
②料理の提供を受けた後に、代金を支払う意思が無くなった場合
イ)店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合
ロ)店員を欺いて、支払いを免れた場合
ハ)店員の隙を見て逃走した場合

のそれぞれの場合で何罪が成立するのか分かれることになります。

①注文時から代金を支払う意思が無かった場合

注文時から代金を支払う意思が無かった場合、詐欺罪が成立する可能性があります。

刑法第246条(詐欺罪)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

支払う意思がないにも関わらずあるかのように装って店員を騙し、飲食物(財物)の提供を受けているので、刑法第246条第1項の詐欺罪に当たるということになるのです。

②料理の提供を受けた後に、代金を支払う意思が無くなった場合

料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合については、さらにイ・ロ・ハの場合に分けられます。

イ)店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合
料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合には、強盗罪や恐喝罪が成立する可能性が出てきます。

刑法第236条(強盗罪) 
1.暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法第249条(恐喝罪) 
1.人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

②の場合、飲食物の提供を受けた人はその代金を支払う債務が発生しています。
そしてイ)では、暴行又は脅迫を用いた結果、かかる債務を免れており、かかる債務免除は「財産上」の「利益」といえます。
したがって、刑法第236条第2項の強盗利得罪又は第249条第2項の恐喝利得罪に当たります。
この2条のいずれかになるのかは、相手に加えた暴行・脅迫が「反抗を抑圧する程度」であれば強盗、至らなければ脅迫という区別になります。

ロ)店員を欺いて、支払いを免れた場合
料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員を欺いて支払いを免れた場合には、①同様に詐欺罪が成立する可能性が出てきます。

本件のケースもこのパターンとなるでしょう。
本件では、Aには代金支払債務があるにも関わらず、「車に財布を取りに行ってくる」と嘘を言い、Aの言葉を信じた店員がそれを承諾しています。
店員の承諾はAの支払債務の一時的に猶予すると言う旨の黙示の意思表示であると考えられ、Aにとってかかる債務の猶予を受けることは利益といえます。

ハ)店員の隙を見て逃走した場合
では、料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員の隙を見て逃走した場合にはどうなるのでしょうか。
食い逃げであるのだから窃盗罪が成立するのではないか、と考える方が多いのではないでしょうか。

刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

店員の隙を見て逃走したという行為は、Aに騙された店員がその(瑕疵ある)意思表示を以て支払債務を免除している訳ではなく、あくまで店員の意思に反して支払債務の免除という利益を得ているに過ぎません。
いわゆる利益窃盗という行為に当たりますが、刑法第235条は利益窃盗を処罰していません。
したがって、ハ)のケースは刑事事件としては不処罰となります。
もちろん、刑事事件にならないからといって民事上の責任が問われないわけではありませんし、今まで見てきた他の犯罪に当たるケースだと疑われてしまう場合もあります。
何より食い逃げはいけないことですから、絶対にやめましょう。

~食い逃げ事件を起こしてしまったら~

本件の場合のように被害届が出されてしまう前に弁護士に相談し、早い段階で謝罪や示談をすることができれば、刑事事件化することなく事態を解決することができる場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、詐欺罪窃盗事件に関わる弁護の経験豊富な弁護士が多数在籍しております。
また、逮捕・勾留された方に対しての初回接見サービスの予約も24時間受け付けております。
事件化前であってもご自身がした行為について不安な方や、既にご家族が逮捕・勾留され会うことができない方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へご連絡下さい。

罰則強化のながら運転で刑事事件②

2019-12-08

罰則強化のながら運転で刑事事件②

罰則が強化されたながら運転について刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例①~

Aさんは、京都市東山区にある友人の家に向かう際、スマートフォンをカーナビ代わりにして運転していました。
しかし、友人宅への道がわかりづらかったため、Aさんはカーナビ画面を映していたスマートフォンを注視しながら運転していました。
すると、パトロールしていた京都府東山警察署の警察官がAさんのその様子を発見。
Aさんは、ながら運転をしていたとして、後日京都府東山警察署に呼び出されることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

~事例②~

Bさんは、京都市東山区内の道路で自動車を運転している際、スマートフォンでゲームアプリを起動し、ゲームをしながら運転する、いわゆるながら運転をしていました。
すると、赤信号に気づくのが遅れ、Aさんは横断歩道前で急ブレーキを踏みました。
交通違反を警戒していた京都府東山警察署の警察官にそれを見とがめられ、Aさんはながら運転で交通の危険を発生させたとして、道路交通法違反の容疑で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)

・どのながら運転がどの罰則になるか

前回の記事で触れた通り、今年の12月1日に道路交通法が改正され、ながら運転の罰則が強化されました。
該当条文は以下の通りです。

道路交通法71条5号の5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第118条第1項第3号の2において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。第118条第1項第3号の2において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

道路交通法117条の4
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号の2 第71条(運転者の遵守事項)第5号の5の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者

道路交通法118条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
4号 第75条(自動車の使用者の義務等)第1項第2号又は第5号の規定に違反した者

ながら運転の罰則は、ながら運転をして交通の危険を発生させたかどうかによって異なることも前回の記事で取り上げた通りです。
では、事例①②のAさんとBさんは、このうちどちらに当てはまるのでしょうか。

~Aさんの場合~
Aさんは、カーナビ代わりにしていたスマートフォンの画面を注視してしまっています。
これは、道路交通法71条5号の5でいう「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(略)に表示された画像を注視」することにあたるながら運転です。
ですから、Aさんはながら運転をしてしまっていますが、具体的に交通の危険を発生させたわけではなさそうです。
そのため、Aさんは道路交通法118条4号の、ながら運転禁止の規定に違反したという道路交通法違反になりそうです。
こちらの道路交通法違反は、反則金制度(反則金を納付することで刑事手続にならない制度)の対象となっているため、例えばAさんがその容疑を否認している、何度も交通違反を繰り返しており前科前歴がある等の事情がなければ、反則金を納付することで刑事事件化を免れることができると考えられます。

~Bさんの場合~
Bさんは、スマートフォンのゲームをしながら運転しています。
ゲームをしていることから、スマートフォンの画面を注視しながら運転していたと考えられ、先ほどのAさんと同様、ながら運転禁止の規定に違反していることになります。
こうした態様は、典型的なながら運転といえるでしょう。

ここでBさんはながら運転をしたことで赤信号に気づくのが遅れ、急ブレーキを踏んでいることに注意が必要です。
これは一歩間違えば交通事故ともなりかねない行為であることから、道路交通法117条の4の1号の2にいうような「交通の危険を生じさせた」と判断される可能性があります。
実際に今回の事例②では、Bさんはながら運転により交通の危険を生じさせた道路交通法違反として話を聞かれることとなっています。
Aさんのながら運転の場合とは異なり、ながら運転で交通の危険を生じさせた場合には反則金制度の利用はできず、刑事事件となりますから、Bさんは被疑者として取調べられることになるでしょう。
こうした場合には、まずは刑事事件に強い弁護士へ相談することが望ましいでしょう。

刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士初回無料法律相談を行っています。
ながら運転は刑罰も強化され、世間からの注目も集まっている犯罪です。
ながら運転刑事事件となってしまった際には、一度弁護士までご相談下さい。

罰則強化のながら運転で刑事事件①

2019-12-06

罰則強化のながら運転で刑事事件①

罰則が強化されたながら運転について刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例①~

Aさんは、京都市東山区にある友人の家に向かう際、スマートフォンをカーナビ代わりにして運転していました。
しかし、友人宅への道がわかりづらかったため、Aさんはカーナビ画面を映していたスマートフォンを注視しながら運転していました。
すると、パトロールしていた京都府東山警察署の警察官がAさんのその様子を発見。
Aさんは、ながら運転をしていたとして、後日京都府東山警察署に呼び出されることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

~事例②~

Bさんは、京都市東山区内の道路で自動車を運転している際、スマートフォンでゲームアプリを起動し、ゲームをしながら運転する、いわゆるながら運転をしていました。
すると、赤信号に気づくのが遅れ、Aさんは横断歩道前で急ブレーキを踏みました。
交通違反を警戒していた京都府東山警察署の警察官にそれを見とがめられ、Aさんはながら運転で交通の危険を発生させたとして、道路交通法違反の容疑で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)

・ながら運転の罰則強化

つい先日のことですが、今年の12月1日、改正道路交通法が施行されました。
今回の道路交通法の改正では、スマートフォンなどを操作しながら自動車等を運転するいわゆる「ながら運転」の罰則が強化されました。
上記事例①②を見ながらその内容を見ていきましょう。

今回罰則が強化された道路交通法の条文は以下の条文です。

道路交通法71条5号の5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第118条第1項第3号の2において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。第118条第1項第3号の2において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。

つまり、スマートフォンや携帯電話で通話をしたり、それらの操作をしたり、注視(その物をじっと見ていること)したりしながらの「ながら運転」を禁止しているのがこの条文であるということになります。
では、この条文に違反し、ながら運転をしてしまった時の罰則についての条文を確認してみましょう。

道路交通法117条の4
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号の2 第71条(運転者の遵守事項)第5号の5の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者

道路交通法118条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
4号 第75条(自動車の使用者の義務等)第1項第2号又は第5号の規定に違反した者

どちらも先ほど挙げた道路交通法に違反しながら運転をしてしまった時の罰則ですが、「交通の危険を生じさせた」かどうかによってその区別がなされています。
その刑罰の重さももちろんのこと、ながら運転をして交通の危険を発生させてしまった場合、反則金を支払うことで刑事事件化を免れることができる「反則金制度」の対象外となっていることにも注意が必要です。
つまり、ながら運転によって交通の危険を発生させてしまったら、すぐに刑事事件の手続きに乗ることになるということなのです。

このように、改正された法律違反の犯罪では、刑罰が重くなる以外にもそれまでと大きく違う点が出てきます。
刑事事件に詳しい弁護士に相談し、細かな変更点も一緒に確認していくことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、交通違反から刑事事件に発展してしまったケースについてもご相談をいただいています。
まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。

次回の記事では事例①②に照らし合わせて検討を行います。

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張⑤

2019-12-04

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張⑤

覚せい剤使用事件違法捜査を主張するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

Aさんは、京都府福知山市に住んでいます。
ある日、Aさんは京都府福知山市内の路上で京都府福知山警察署の警察官に職務質問され、帰路につきながらそれにこたえていると警察官が複数人そのまま自宅まで訪ねてきました。
Aさんが玄関を閉めようとすると、警察官がそれを手で押さえ、Aさん宅内に無断で立ち入り、Aさんに「腕を見せてください」などと言ってAさん宅内でAさんの腕の写真を撮影しました。
この際、Aさんには令状等が見せられることはなく、何の容疑で捜査されたかも伝えられませんでした。
さらにAさんは警察署同行するように求められ、そこで尿を提出するよう言われましたが、これを拒んだところ、先ほど自宅に立ち入って撮影された写真を基に取得した令状を基に、強制採尿されることになってしまいました。
その後、Aさんは覚せい剤を使用したという覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまったのですが、違法捜査を受けたのではないかと不満に思っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分が違法捜査を受けたのではないかと相談してみることにしました。
(※令和元年10月29日毎日新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・Aさんの場合~強制採尿

前回の記事では、Aさんの部屋への立ち入りについて、違法捜査となる可能性があることに触れました。
では、その部屋の立ち入りで得られた写真等を利用して行われた強制採尿についてはどうでしょうか。

今回のAさんは、強制採尿されてしまっています。
強制採尿は、言わずもがな強制処分にあたる捜査です。
よって、強制採尿をするには令状が必要となります。
強制採尿は、尿道にカテーテルを挿入して強制的に採尿する捜査手法であるため、令状を得たとしても人格権を侵害して許されないのではないかという論争があるほどです。
そのため、強制採尿をするにはより厳格な審査が必要になると考えられています。
判例では、強制採尿について、「…犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合に、最終週的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきもの」であるとしています(最決昭和55.10.23)。
つまり、強制採尿は強制捜査の中でも特に慎重に判断すべきものであるといえるのです。

今回のAさんも、部屋への立ち入りをされた際に写真を撮られ、その写真を疎明資料として強制採尿の令状を取られ、強制採尿されてしまっているようですが、強制採尿の手続きが本当に適切であったのかが問題となります。
もしAさんの受けた部屋への立ち入りや写真撮影が違法捜査だったとすれば、違法捜査によって得られた証拠によって令状が発行されているのであれば、その令状は大きくゆがめられた判断で発行されたことになります。
ですから、こうした場合、違法捜査によって得られた証拠によって発行された令状に基づいて行われた強制採尿についても、適切な手続きで行われたとはいえず、違法捜査であるといえるのです。
そして強制採尿が違法性の大きい違法捜査であるということになった場合、強制採尿の結果である鑑定書も違法捜査によって得られた証拠ということになり、違法収集証拠排除法則によって証拠として使うことができなくなります。
このように、元々違法捜査によって得られた証拠がありそれによってほかの強制捜査も行われていた場合、連鎖的に違法捜査となってしまう可能性が出てくるのです。

刑事事件では、強制捜査により権利を侵害されることが仕方のないこともありますが、それが違法捜査ではなく適法な捜査であることが求められます。
さらに、前回までの記事でも見てきたように、違法捜査が行われたとしてもその違法捜査で集められた証拠が排除されるかどうかはケースによりけりであり、排除されるべき証拠は排除されるように主張していかなければなりません。
しかし、当事者自身やその周囲の方のみで、こうした違法捜査に当たるのかどうか、違法捜査に当たる捜査を受けたとしてどのように主張していくべきなのかといったことは分からないことの方が多いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士がそうした違法捜査に関するご相談も受け付けています。
まずはお気軽に弁護士までご相談ください(ご相談のご予約・お申込み:0120-631-881)。

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張④

2019-12-02

覚せい剤使用事件で違法捜査を主張④

覚せい剤使用事件違法捜査を主張するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

Aさんは、京都府福知山市に住んでいます。
ある日、Aさんは京都府福知山市内の路上で京都府福知山警察署の警察官に職務質問され、帰路につきながらそれにこたえていると警察官が複数人そのまま自宅まで訪ねてきました。
Aさんが玄関を閉めようとすると、警察官がそれを手で押さえ、Aさん宅内に無断で立ち入り、Aさんに「腕を見せてください」などと言ってAさん宅内でAさんの腕の写真を撮影しました。
この際、Aさんには令状等が見せられることはなく、何の容疑で捜査されたかも伝えられませんでした。
さらにAさんは警察署同行するように求められ、そこで尿を提出するよう言われましたが、これを拒んだところ、先ほど自宅に立ち入って撮影された写真を基に取得した令状を基に、強制採尿されることになってしまいました。
その後、Aさんは覚せい剤を使用したという覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまったのですが、違法捜査を受けたのではないかと不満に思っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分が違法捜査を受けたのではないかと相談してみることにしました。
(※令和元年10月29日毎日新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・任意捜査と強制捜査

これまでで、強制捜査の際には令状が必要であるということ、令状なしの強制捜査は違法捜査となり、その違法捜査によって得られた証拠は違法収集証拠排除法則によって証拠として使えなくなる可能性があるということがおわかりいただけたと思います。
では、そもそも任意捜査と強制捜査はどういった区別がされているのでしょうか。

第1回目の記事で取り上げた通り、任意捜査は被疑者・被告人の任意によって行われる捜査であり、強制捜査は強制的に行うことのできる捜査です。
捜査は任意捜査によって行われるべきであり、強制捜査は特別必要のある時にだけ行われるべきであるという任意捜査の原則という原則があり、さらに強制捜査は令状主義のほかにも、法律に決められている場合にのみ強制捜査が許されるという原則(強制処分法定主義)があるため、強制捜査以外の捜査が任意捜査とされています。

では、強制捜査がどういった捜査であるとされているかというと、「個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段」であるとされています(最決昭和51.3.16)。
ですから、この手段にあたる処分で捜査をした場合、強制捜査であるということになり、それが行われるには令状が必要であるということになるのです。

・Aさんの場合~部屋への立ち入り

まずは今回のAさんの事例の、警察官の部屋の立ち入りについて考えてみましょう。

今回のきっかけとなった職務質問自体は、警察官が何か犯罪をしている若しくはしようとしていると疑う合理的な理由があればすることのできる行為です。
そして、この職務質問はあくまで任意捜査、つまりはAさんの同意に基づいて行われるものですから、警察官がAさんについて何か犯罪をしている若しくはしそうと疑う合理的な理由があり、かつAさんが同意して警察官へ対応していたのであれば、問題にはなりません。

では、Aさん宅への立ち入りやAさんを撮影したことについて、検討してみましょう。
今回の事例の基となったケースでは、警察官らは女性である被告人が閉めようとした玄関のドアを押さえ、靴脱ぎ場までとはいえ断りもなく被告人の部屋に立ち入り、さらにドアを複数人で押さえて開いた状態にしたうえ、被告人が出ていくよう求めてもそれに応じずにとどまり続け、部屋内にいる被告人を撮影するという行為をしたようです。
これに対し、裁判所は、被告人の部屋への立ち入りやそこにとどまり続けた警察官らの行為は被告人の承諾を得て行ったものとは考えられず、被告人の意思を抑圧するものであったとしています。
そして、この行為は被告人のプライバシーや住居の平穏など個人的法益を害する強制処分(強制捜査)であるとしました。
前回の記事から触れているように、令状なしの強制処分(強制捜査)は違法捜査ですから、事例の基となったケースでは、部屋への立ち入りやそこに居座ったこと、撮影をしたことが違法捜査であるとされたのです。

今回のAさんの事例では、具体的に警察官らがどういった態様でAさんに嫌疑をかけたのか、そしてAさん宅にどれほどとどまりどのように立ち入っていたのかは詳しく書かれていませんが、事例の基となったケースのように、Aさんの意思を制圧するような形でAさんの権利を侵害する形で捜査をしていたのであれば、違法捜査であると判断されることも考えられます。

さらに、このケースの基となった事例では、被告人宅への立ち入りについて、嫌疑の具体性が乏しかったことに加え必要性・緊急性が低かった若しくはなかったとして、無令状で強制捜査をしたことは違法捜査の違法性が重大であるとし、この違法捜査によって得られた証拠=被告人の写真等は違法収集証拠であるとしました。

今回のAさんの事例でも、Aさん宅への立ち入りが違法捜査であると判断された場合、その違法性の大きさにより、Aさんの写真等が違法収集証拠排除法則により証拠として使えないと判断される可能性もあります。

こういった違法性の度合いについては、専門家の意見や考察を聞きながら判断し、適切に主張していくことが求められます。
違法捜査や違法収集証拠が絡んだ刑事事件では、刑事事件に詳しい弁護士に逐一状況を相談することが望ましいといえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門弁護士がこういった複雑な刑事手続きについても丁寧にご説明いたします。
まずはお気軽に0120-631-881までご連絡ください。

次回の記事では、Aさんの強制採尿やそれによって得られた鑑定書について検討していきます。

たき火から燃え移って失火罪③

2019-11-24

たき火から燃え移って失火罪③

たき火から燃え移って失火罪となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

京都市中京区に住んでいるAさんは、自宅の裏に空地を所有していました。
Aさんは、落ち葉や枯葉を集めてその空地でたき火をし、簡単に水をかけ、火が見えなくなったために深く確認することもなく帰宅しました。
しかし、Aさんが消火できたと思っていたたき火の火が消え切ってお

らず、空地内に建っていたAさん所有の小屋に燃え移り、火事となってしまいました。
通報により消防車が駆け付け、他の家に火が燃え移る前に消し止められ、当時小屋には誰もいなかったためけが人もいなかったものの、Aさんは京都府中京警察署に呼ばれ、話を聞かれることになりました。
Aさんは、自分がどのような犯罪にあたる可能性があるのか、どういった処罰を受ける可能性があるか不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・重過失失火罪

前々回から2回にわたって取り上げてきた失火罪ですが、実は失火罪の中でも重く処罰されるものがあります。
それが、刑法117条の2に規定されている、重過失失火罪です。

刑法117条の2
第116条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。

「第116条」は前回から取り上げている失火罪のことを指します。
そして、その失火罪にあたる行為が「重大な過失によるとき」には、重過失失火罪となる、と定めているのがこの条文なのです。
なお、失火行為が「業務上必要な注意を怠ったことによるとき」には、業務上失火罪となります。

では、重過失失火罪の「重大な過失」とはいったいどういうことを指すのでしょうか。
「重大な過失」とは、「建造物等の焼損や人の死傷の結果がその具体的な状況下において通常椹として容易に予見できたのにこれを怠り、あるいは結果を予見しながらその回避の措置を取ることが容易であったのにこれを怠ったというような注意義務の懈怠の著しい場合」をいうとされています(東京高判昭和62.10.6)。
つまり、「重大な過失」とは、その文字通り、非常に大きな不注意・落ち度のことを指しており、焼損等の危険が簡単に予想できたにもかかわらずそれを回避をしようとしなかったり、回避する行動を取ることが簡単であったのにその行動を取らなかったりといった、注意すべきことであることについて著しく不注意であったことを指すのです。
過去の例では、盛夏晴天の日ガソリン給油場内においてライターを使用して火災を引き起こしたケースで重過失失火罪が認められたもの(最判昭和23.6.8)や、多量の飲酒により高度の異常酩酊状態になり粗暴な行為に出る習癖があると自覚のある被告人が飲酒をして酩酊状態となり、燃焼中のストーブに椅子を乗せかけて火災を引き起こしたケースで重過失失火罪が認められたもの(最決昭和48.9.6)などが挙げられます。

Aさんのケースの場合、Aさんはたき火を消火しようと水をかける行為をしています。
そしてたき火の火が見えなくなったことからAさんは消火しきったと勘違いをしてその場を立ち去っていることから、Aさんとしては消火する措置をしてはいることになります。
ですから、Aさんとしては火事が起こると容易に予想できる状態で全く回避行動を取らなかった、というわけではありません。
こうしたことから、Aさんに「重大な過失」があったとは考えにくく、重過失失火罪となる可能性は低いように思われます。

しかし、当時の詳細な状況やAさんの行動によっては、「重大な過失」があると判断され、失火罪よりも重い重過失失火罪で処罰される可能性もないわけではありません。
そして、実際には失火罪で処罰されることが妥当なケースであっても、重過失失火罪を疑われてしまう可能性もあります。
ですから、まずは弁護士に事件当時の細かな事情まで話したうえで、見通しや取調べの対応を聞いていくことが望ましいでしょう。

~失火事件と弁護活動~

先述した通り、失火事件での弁護士の弁護活動の1つとして、取調べへの対応のアドバイスをすることが挙げられます。
実際には失火罪にあたる行為であっても、捜査機関が重過失失火罪や放火罪の容疑をかける可能性もあります。
そうした場合には、意図せず自分の主張を異なる供述をしてしまわないよう、細心の注意を払わなければなりません。
刑事事件に精通する弁護士に、どういった点を注意すべきか、どのように話すことできちんと自分の意図を伝えられるのか、相談してから取調べに臨みましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士による初回無料法律相談のご予約をいつでも承っています。
寒くなり、空気が乾燥してくる季節だからこそ、思わぬ失火事件に巻き込まれてしまうことも考えられます。
もしもそうなってしまった場合には、すぐに弊所弁護士までご相談ください。

たき火から燃え移って失火罪②

2019-11-22

たき火から燃え移って失火罪②

たき火から燃え移って失火罪となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

京都市中京区に住んでいるAさんは、自宅の裏に空地を所有していました。
Aさんは、落ち葉や枯葉を集めてその空地でたき火をし、簡単に水をかけ、火が見えなくなったために深く確認することもなく帰宅しました。
しかし、Aさんが消火できたと思っていたたき火の火が消え切っておらず、空地内に建っていたAさん所有の小屋に燃え移り、火事となってしまいました。
通報により消防車が駆け付け、他の家に火が燃え移る前に消し止められ、当時小屋には誰もいなかったためけが人もいなかったものの、Aさんは京都府中京警察署に呼ばれ、話を聞かれることになりました。
Aさんは、自分がどのような犯罪にあたる可能性があるのか、どういった処罰を受ける可能性があるか不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・失火罪と「公共の危険」

前回の記事では、失火罪という犯罪の概要と、刑法116条1項に規定されている失火罪について取り上げました。
今回の記事では、Aさんが刑法116条2項の失火罪にあたるかどうか検討していきます。

刑法116条(失火罪)
1項 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。
2項 失火により、第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

刑法116条2項の失火罪を確認してみましょう。
前回取り上げた刑法116条1項の失火罪の規定同様、「第109条に規定する物」は「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」を指しています。
そして、「第110条に規定する物」は「前二条に規定する物以外の物」(=「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」と「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」以外の物)を指します。
ここで、先ほど確認したように、Aさんの焼損させてしまった小屋はAさん自身の所有する「第109条に規定する物」であることから、失火によって「第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの」を焼損させたAさんにはこの刑法116条2項の失火罪が成立するように思えます。
しかし、刑法116条2項の失火罪の規定では、先に取り上げた刑法116条1項の失火罪の規定にはない条件が加わっています。
それが「よって公共の危険を生じさせた」という条件です。

失火罪等の刑法の「放火及び失火の罪」の章に規定されている犯罪での「公共の危険」の発生とは、「一般不特定の多数人をして所定の目的物に延焼しその生命、身体、財産に対し危害を感ぜしめるにつき相当の理由がある状態」をいうとされています(大判明治44.4.24)。
そして、これは必ずしも「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」や「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」に延焼する危険に限らず、「不特定または多数の人の生命、身体、または建造物等以外の財産に対する危険も含まれる」とされています(最決平成15.4.14)。
つまり「公共の危険を生じさせた」とは、大まかに言えば、不特定多数の人の生命、身体、財産等に対する危険を発生させることを指しているのです。
例えば、広範囲に及んで周囲に建物や物が全く何もないひらけた場所で何かを燃やしたとしても、その火が何かに燃え移って延焼するといった危険はないため、「公共の危険」が発生したとはいえないと考えられます。

今回のAさんについて考えてみましょう。
Aさんは、住宅地の中にある空地でたき火をし、結果として空地内にある小屋を焼損させてしまっています。
住宅地の中で家事を起こしてしまったわけですから、小屋の火がほかの住宅に燃え移り、延焼させてしまう危険が考えられます。
火事となってしまった小屋と他の住宅との距離や火の大きさなどを考慮し、他の住宅への延焼の危険が認められれば、住宅地に住んでいる人たちの生命、身体、財産に対する危険を発生させたとして「公共の危険を生じさせた」と判断されるでしょう。
そうなれば、Aさんは刑法116条2項の失火罪に該当することが考えられます。

では、Aさんに成立する可能性のある犯罪はこの失火罪だけなのでしょうか。
また、Aさんに対してはどのような弁護活動が考えられるでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げます。

京都府失火事件でお困りの方、刑事事件にお悩みの方は、刑事事件・少年事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部弁護士までご相談下さい。
お問い合わせは0120-631-881でいつでも受け付けています。

たき火から燃え移って失火罪①

2019-11-20

たき火から燃え移って失火罪①

たき火から燃え移って失火罪となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市中京区に住んでいるAさんは、自宅の裏に空地を所有していました。
Aさんは、落ち葉や枯葉を集めてその空地でたき火をし、簡単に水をかけ、火が見えなくなったために深く確認することもなく帰宅しました。
しかし、Aさんが消火できたと思っていたたき火の火が消え切っておらず、空地内に建っていたAさん所有の小屋に燃え移り、火事となってしまいました。
通報により消防車が駆け付け、他の家に火が燃え移る前に消し止められ、当時小屋には誰もいなかったためけが人もいなかったものの、Aさんは京都府中京警察署に呼ばれ、話を聞かれることになりました。
Aさんは、自分がどのような犯罪にあたる可能性があるのか、どういった処罰を受ける可能性があるか不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・失火罪

今回のAさんに成立する可能性のある犯罪としては、刑法に規定のある失火罪という犯罪が挙げられます。
(なお、落ち葉や枯葉をたき火で処理する行為は、廃掃法違反等の特別法違反の成立も考えられるところですが、今回の記事は失火罪のみに焦点を絞って取り上げていきます。)

刑法116条(失火罪)
1項 失火により、第108条に規定する物又は他人の所有に係る第109条に規定する物を焼損した者は、50万円以下の罰金に処する。
2項 失火により、第109条に規定する物であって自己の所有に係るもの又は第110条に規定する物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者も、前項と同様とする。

失火罪の「失火」とは、過失によって出火させることを指します。
つまり、火気を取り扱う上で不注意・落ち度があって出火させてしまった場合に「失火」となるのです。
詳しく言えば、出火して目的物を焼損する事情があるときに、その事情を認識できたのに認識しなかったり、その事情から出火の危険性がないと軽々しく信じてしまったりして、出火防止のために適切な手段をとらずに出火させてしまったという場合が、失火罪の「失火」です。

そして、失火罪は失火によって何かを「焼損」することで成立しますが、「焼損」とは一般的に、「火が媒介物を離れ目的物に写し、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達」すること(最判昭和23.11.2)とされています。

今回のAさんは、たき火をしてその火を消したと思い込んでいたものの、実は火を消しきっていなかったことから小屋を燃やしてしまっています。
これは、たき火の火が消え切っていないという、小屋などの周辺の物を焼損させてしまう可能性のある事情があったにも関わらず、確認をせずに=認識できたにも関わらず認識せずに、たき火から出火することはないと信じてさらなる消火をせずに出火させてしまったことによります。
そして、小屋は家事になるほど燃えてしまっていますから、「焼損」したものといえるでしょう。
ですから、今回のAさんは「失火」によって小屋を「焼損」したと考えられます。

ここで、失火罪は焼損した物が何かによって該当する条文が異なります。
条文ごとに詳しく見ていきましょう。

まずは、刑法116条1項です。
第108条に規定する物」とは、「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」を指します。
さらに、「第109条に規定する物」は「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」を指しています。
つまり、刑法116条1項の失火罪は、失火によって「現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」又は他人の所有する「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」を焼損してしまった時に成立するのです。
今回のAさんが焼損させてしまったのは空地にある小屋であり、当時無人であったことから、「現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑」(=「第109条に規定する物」)といえそうですが、この小屋はAさんの所有する小屋であり、「他人の所有に係る」物ではないため、Aさんには刑法116条1項の失火罪は当てはまらなそうです。

では、刑法116条2項の方の失火罪には当てはまるのでしょうか。
次回の記事で詳しく取り上げていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部はこういった失火事件のご相談も承っています。
刑事事件専門だからこそ、聞きなじみのない犯罪に対しての対応も可能です。
まずはお気軽にご相談ください。

児童ポルノを送らせて逮捕②~強要罪~

2019-11-16

児童ポルノを送らせて逮捕②~強要罪~

児童ポルノを送らせて逮捕されたケースの強要罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

会社員のAさんは、SNSの配信機能を通じて、京都市下京区に住む15歳の女子高生Vさんと知り合いました。
ある日Aさんは、Vさんに対し、「ちょっとだけでいいから服を脱いでいる写真が欲しい。お礼にSNSのポイントをあげる」などと言って、Vさんに体を露出した写真を送るように求めました。
Vさんがそれに応じて下着姿の写真を撮り、Aさんに送ったところ、今度はAさんは「次は裸の写真を送ってこい。そうでなければ下着姿の写真をSNSでばらまいてやる」などと言い、Vさんにさらなる要求を行いました。
Vさんは怖くなり、しばらく要求に従って写真を送り続けていましたが、今後要求がさらに過剰になるのではと不安になったことから両親に相談しました。
その結果、Vさんは両親とともに京都府下京警察署に被害申告を行い、捜査ののち、Aさんは児童ポルノ禁止法違反(児童ポルノ製造)と強要罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)

・強要罪

前回の記事では、Aさんの逮捕容疑のうち、児童ポルノ製造による児童ポルノ禁止法違反について取り上げました。
今回の記事では、もう1つの逮捕容疑である強要罪について詳しく取り上げていきます。

強要罪は、刑法223条に規定のある犯罪です。

刑法223条(強要罪)
1項 生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
2項 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者も、前項と同様とする。
3項 前二項の罪の未遂は、罰する。

強要罪は、簡単に言えば、脅迫や暴行によって相手を怖がらせることで、相手がする必要のない行為を無理矢理させる犯罪です。
強要罪で用いられる脅迫は、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知」をすることによって行われ、相手に恐怖心を生じさせる目的で行われるものを指します。
例えば、「痛い目に合わせるぞ。」といった文言であれば身体に害を加える告知をしたことになりますし、「車を壊すぞ。」といった文言であれば、財産に害を加える告知となるでしょう。

今回の事例では、AさんはVさんに対し、「従わなければ下着姿の写真をSNSでばらまく」という旨を伝え、それによってVさんに裸の写真を送らせています。
下着の写真をSNSで拡散されるということは、Vさんの名誉・社会的立場を下げることにつながるでしょう。
こうしたことから、AさんがVさんに「下着の写真をSNSでばらまく」と言ったことは、「名誉…に対し害を加える旨を告知して脅迫」したと考えられます。
そして、それによってAさんはVさんに裸の写真を送らせていますが、もちろんVさんにとって裸の写真をAさんに送ることは何の義務もないことです。
これをAさんの脅迫によってさせられているわけですから、Aさんには強要罪が成立することになるでしょう。
なお、今回のケースでは、最初に下着姿の写真をVさんに送らせたときには、Aさんは脅迫も暴行もしていなかったため、強要罪は成立しないと考えられます。

強要罪は条文を見てわかる通り、罰金刑の規定がありません。
ですから、有罪が確定した場合には、執行猶予が付かなければ刑務所へ行くことになります。
それだけ重い犯罪ですから、強要罪の容疑がかかってしまった場合には、早急に弁護士に相談し、今後の対応を決めましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、土日祝日でも初回無料法律相談・初回接見サービスを受け付けています。
まずはお気軽に0120-631-881までお問い合わせください。

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