1.上告とはどんな制度ですか。
上告とは、高等裁判所のした第1審又は第2審の判決に対する最高裁判所への上訴をいいます。
上告審は、控訴と同じく事後審であり、最終的な違憲審査と法令の解釈を統一する法律審ですが、同時に個々の事件における適正な救済を図る役割も担っています。
2.どのような場合に上告できますか?
憲法違反と判例違反です(刑事訴訟法405条)。権利上告といいます。
ただ、この違反を主張するのは難しいです。
そこで、刑事訴訟法411条では職権で破棄判決がされる場合が規定されています。
権利としての上告理由がない場合であっても、一定の事由が認められれば、最高裁は(職権裁量で原判決を破棄することが出来ます。裁量上告といいます。
- 判決に影響を及ぼすべき法令違反があること
- 刑の量定が甚だしく不当であること
- 判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認があること
- 再審事由があること
- 判決があった後に刑の廃止・変更又は大赦があったこと
により、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるとき、原判決を破棄することができます。
これらの事由は、上告の理由となるものではなく、あくまで上告審である最高裁判所が、原判決を裁量によって棄却できる場合に過ぎません。
よって、これらの事由を主張するだけでは、上告としては不適法です。
ただ、上記が認められれば職権で破棄されることになるため、実際には事実誤認や量刑不当を主張して、職権発動を求める上告の例が多くみられます。
ですので、無理に憲法違反などのこじつけ主張をするのではなく、被告人が主張したい原判決の事実誤認や量刑不当を、破棄しなければ著しく正義に反するものとして主張してゆくことになるのが実際と考えられます。
3.上告の手続きの概要と判断までにどのくらいの期間がかかりますか。
上告審の手続きは、控訴審における手続きとほぼ同様です。
上告の提起期間は14日であり、上告申立人は指定された期間(通知が届いてから28日以上の定められた期間)内に上告趣意書を提出しなければなりません。
通常、判決・決定で終了する事件のうち98%から99%程度について、上告棄却決定が下されており、判決・決定で終了する事件のうち80%程度の事件が3か月以内に終了し、平均審理期間は4か月未満です。
4.判決を覆すことができると確信する事実があります。上告できますか?
通常できないと考えられます。
最高裁では、1審・2審を通じて一度も主張していないことを主張することはできません。
5.上告審の裁判の種類について教えてください。
(1)上告棄却の決定
上告の申立ての不備や形式上の不備など、上告が不適法なことが明らかな場合は、決定で上告が棄却されます。
形式上は法廷の上告理由が主張されていても、実質的にはそれに当たらない場合も含まれ、これが棄却決定の大半を占めています。
(2)上告棄却の判決
上告趣意書において、法定の上告理由に当たる事由の主張がなされていても、上告理由のないことが明らかであると認められる場合には、判決で上告が棄却されます。
(3)原判決破棄の判決
法定の上告事由があると認められた場合は、それが判決に影響を及ぼさないことが明らかなときを除いて、判決で原判決が破棄されます。
また、法定の上告事由が認められなくても、裁量上告の事由が認められ、かつ原判決を破棄しなければ、著しく正義に反する場合にも、判決で原判決を破棄することが出来ます。
控訴裁判所による破棄と同様に、不利益変更禁止の原則(被告人にとって下級審よりも悪い判決ができないこと)が働きます。
6.上告棄却の判決または決定を受けた場合、更に争うことはできますか?
制度上、判決訂正の申立てや異議申立ての手続きがありますが、認められることはまずありません。
但し、判決確定の時期をその間遅らせることができるので、執行猶予期間が間近に迫っている場合に使われることが、理屈上ありえます。
7.上告審における弁護士の役割
1 上告趣意書の作成
上告審は、書面審査であり、期日が開かれることは極めて稀です。
ですから、弁護士の活動としては、上告趣意書の作成と提出に集約されます。
2 身柄解放活動
上告審に至っても、一日でも早い身柄解放が望ましいことは、言うまでもありません。
弁護士は、上告審に至るまでの非常に長期にわたる身柄拘束を受けている方のためにも、事案に応じた適切な身柄解放活動を行います。
上告審は妥当な判決を求める最後のチャンス。
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