1.裁判って何?
裁判とは、裁判所(裁判官)が何か判断をすることをいいます。
難しく言うと、裁判機関(裁判所または裁判官)の意思表示を内容とする訴訟行為のことをいいます。
よく耳にするものとしては、最終局面での裁判所の判断の「有罪または無罪の判決」が挙げられます。
しかし、これだけに限られず、手続きの途中では裁判所(裁判官)が多くの判断(つまり「裁判」)をしています。
この積み重ねによって、最終的な処分が決まるといっても過言ではありません。
裁判の種類には、判決・決定・命令という3種類があります。
具体的な中身についていうと、判決および決定が裁判所による裁判(ある程度厳格な手続きによる判断)であるのに対して、命令は裁判官による裁判(簡易な手続きによる判断)です。
判決が最も厳格な判断であり、口頭弁論に基づくことを要します。
2.裁判はどのようにして行われるの?
裁判官が1人なら、その裁判官自信で判断しますが、合議体(3人の裁判官)の場合には、会議を行って決めます(「評議」・「評決」といいます)。
裁判官の意見が一致しない時は、原則として多数決によって決定をします。
3.単独事件と合議事件の違いは何ですか?
地方裁判所が第一審となる場合に,1人の裁判官が審理する事件を単独事件,3人の裁判官の合議体で審理する事件を合議事件と呼んでいます。
合議事件には,殺人,放火などのように重い刑罰が定められているため,必ず合議体で審理しなければならない事件(法定合議事件)と,争点が複雑であるなどの理由から,本来は単独事件で審理できるものを,特に合議体で審理する事件とがあります。
なお、裁判員裁判では、3人の裁判官と6名の裁判員で構成されます。
4.判決に種類はあるのですか?
判決とは、裁判所が口頭弁論に基づいて示す判断のことを言いますが、判決にもいくつかの種類があります。
(1)実体裁判
①有罪判決
検察官によって起訴された事件の犯罪事実が証明された場合になされる判決で、刑の言渡しの判決と刑の免除の判決があります。
刑の言渡しの判決の中にも、執行猶予付きの判決と執行猶予が付いていない、実刑判決があります。
②無罪判決
法廷での審理の結果、被告人の行為は犯罪にならないと判断された場合、あるいは犯罪事実があったとの証明が不十分であると判断された場合に言い渡されます。
無罪判決を受けた被告人の損失を補償する制度として、刑事補償制度と費用補償制度があります。
刑事補償制度は、無罪判決が下ると、警察、検察、裁判所の故意・過失の有無にかかわらず、身柄を拘束されていた日数に一定の金額を掛けた金額を支払われることとなります。
1日当たりの金額は、現在は1000円~12500円の範囲での範囲内で裁判所が決めます。
次に費用補償制度は、無罪を受けた被告人が裁判に要した費用の一部(出頭するのに要した旅費、日当及び宿泊料並びに弁護士報酬)を国が補償する制度です。
(2)形式裁判
事件がその裁判所の管轄に属さない場合に言渡される判決(「管轄違いの判決」といいます)、実体裁判に至る前に手続きを打切る裁判(「控訴棄却の判決・決定」といいます)、有罪か無罪かの判断をせずに訴訟を打ち切る判決で、すでに確定判決を経たとき、刑が廃止されたとき、大赦があったとき、公訴時効が完成したときに言い渡される判決(「免訴判決」といいます)に分かれます。
5.判決Q&A
①実刑判決と執行猶予つき判決の違いは何ですか?
実刑判決を受けると、刑務所に収容されることとなります。
つまり、社会から隔離されて刑に服さなければならなくなります。
これに対して、執行猶予つき判決の場合は、刑務所に収容されず社会の中で生活を送ることができます。
なお、執行猶予つきであっても前科はつきます。
詳しくは~執行猶予にしてほしい~へ
②執行猶予が付かない(実刑になる)場合はありますか?
あります。
刑法25条に規定されています。
具体例としては、
- 3年を超える懲役・禁錮を言い渡される場合
- (今回の判決が3年以下の懲役・禁錮の場合でも)刑務所を出所してから5年以内に今回行った行為について懲役刑を言い渡されるとき
- 執行猶予の期間中に今回の犯罪をしてしまった場合で再度の執行猶予がつかないとき、等が挙げられます。
もっとも、一部執行猶予制度が適用される可能性はあります。
詳しくは ~ 一部執行猶予へ ~
6.刑罰の種類にはどのようなものがあるの?
刑法9条によれば、生命刑としては死刑、自由刑としては懲役、禁錮、拘留を定め、さらに財産刑として罰金、科料、没収を認めています。
ここで、生命刑とは、人の生命を奪う刑罰のことです。
また、身体刑とは、人の身体に侵害を加える刑罰のことです。
更に、自由刑とは、身体の事由をはく奪する刑のことです。
また、没収は付加刑で、それ以外はすべて主刑です。
主刑は独立に言い渡すことのできる刑罰のことで、付加刑は主刑が言渡された場合に、これに付加してのみ言渡すことのできる刑罰です。
①死刑(しけい)
犯罪者の生命を奪う生命刑であり、現在の刑法では凶悪犯罪に対してのみ適用されると定められています。
殺人罪や強盗殺人罪などの重大犯罪についてのみ法定されています。
②懲役(ちょうえき)・禁錮(きんこ)・拘留(こうりゅう)
懲役とは、自由刑のうち刑務作業に服するもので、刑務作業に服さない禁錮と区別されます(ただ、禁錮も希望により刑務作業に服することができます)。
懲役・禁錮には、無期及び有期があり、有期は1月以上20年以下とされています。
ただ、刑を加重するときは30年、減刑するときは1か月以下にすることができます。
また、懲役・禁錮については、「改悛の状」があるときは、有期刑で刑期の3分の1を、無期刑で10年を経過した後に仮釈放することが認められます。
一方、拘留とは1日以上30日未満の範囲で、身柄を拘束する自由刑であり、刑務作業は要求されません。
比較的軽微な犯罪(例えば侮辱罪)に規定されています。
③罰金・科料(ばっきん・かりょう)
いずれも一定額の財産を徴収する刑罰であることから、財産刑と言われています。
法律でいう罰金とは1万円以上を言いますが、1万円未満に減らすこともできます。
また、科料は1000円以上1万円未満の金額のものをいいます。
罰金・科料の全部又は一部を納付することができない場合には、一定期間、労役場留置で仕事(軽作業)をすることにより償います。
なお、科料は行政上の制裁である過料と区別する意味で「とがりょう」と呼ばれることがあります。
なお、過料は「あやまちりょう」という呼び方をされることがあります。
④没収(ぼしゅう)
判決において主たる刑を言い渡す場合に、これに付加して科せられる刑罰のことをいいます。
没収が行なわれると、物の所有権が剥奪(はくだつ)され、国庫に帰属することとなります。
つまり、被疑者・被告人の持ち物が国に奪われてしまいます。
没収は、以下のような物について行なわれます。
ア)その存在が犯罪行為の不可欠な要素となっている物
「偽造文書行使罪における偽造文書」、「わいせつ物頒布罪におけるわいせつ物」などが挙げられます。
イ)犯罪行為の用に供した物、または供しようとした物
「殺人に用いられたナイフ」「賭博で使われたサイコロ」などが挙げられます。
ウ)犯罪行為によって生じた物、犯罪行為によって得た物、犯罪行為の報酬として得た物、またはこれらの物の対価として得た物
(生じた物の例)「文書偽造罪における偽造文書」などが挙げられます。
(得た物の例)「恐喝によって得た誓約書」などが挙げられます。
(報酬として得た物の例)「殺し屋が仕事の報酬に得た金銭」などが挙げられます。
(対価として得た物の例)「窃盗罪などにおける盗品の売却利益」などが挙げられます。
没収するかどうかは、基本的には裁判所の裁量にゆだねられています。
ただし、賄賂事件の犯人または情を知った第三者が収受した賄賂は、かならず没収されます。
そのほかにも、特別法においてかならず没収すべきものと定められている場合もあります。
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