Archive for the ‘暴力事件’ Category
直接お金を奪わなくても強盗罪に?
直接お金を奪わなくても強盗罪に?
直接お金を奪わなくても強盗罪になるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市東山区にあるVさん宅に忍び込むと、Vさんのクレジットカードを盗み出しました。
そして、AさんがVさん宅から立ち去ろうとした際に、帰宅したVさんに出くわしました。
Aさんは、Vさんにナイフを突きつけると、盗み出したクレジットカードの暗証番号を聞き出し、その場を去りました。
その後、Vさんの通報によって京都府東山警察署の警察官が捜査を開始。
Aさんは、京都府東山警察署に強盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、「お金を脅して奪ったわけでもないのに強盗罪になるのか」と疑問に思い、弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・強盗利得罪
強盗というと、金銭や財物を脅し取るイメージが強いでしょう。
しかし、強盗罪には刑法第236条第1項で定められた暴行や脅迫を手段として財物の占有を得る形態のほかに、同法同条第2項の財産上不法の利益を得る類型が存在します。
この第2項の規定に該当する強盗罪を特に2項強盗罪や強盗利得罪と呼ぶこともあります。
刑法第236条
第1項 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
財産上の利益とは、人の財産の中で財物を除くすべてをいうとされます。
現在、財物は有体物(三態をとって空間の一部を占める物)であるという有体物説が通説となっており、この解釈に従うと、財産上の利益は有体性をもたない無形の財産ということになります。
財産上の利益に当たるものとしては、債権を取得すること、債務の履行を免れること、財産的情報、ノウハウ、企業秘密、重要なデータを取得することなどが挙げられます。
大まかにいえば、強盗罪は、刑法第236条第1項で有形の財産=「財物」に対する強盗行為を、同法同条第2項で無形の財産に対する強盗行為を規制しているということになります。
つまり、よく想像される物理的に金品を奪っていく強盗が第1項の強盗罪、そうではなく利益などの無形の財産を得る強盗が第2項の強盗罪=2項強盗罪や強盗利得罪と呼ばれる強盗罪ということになるのです。
今回のケースでは、AさんはVさんのクレジットカードを盗んだ上で、帰宅したVさんを脅して暗証番号を聞き出しています。
Aさんが盗み出したクレジットカードは有体物であり財産的価値もあるでしょうから「財物」に当たるでしょう。
では、Aさんが脅迫を用いてVさんから聞き出した暗証番号はどうなるのでしょうか。
暗証番号は物として実態があるわけではないため、「財物」には当たらないと考えられます。
そして、クレジットカードや銀行口座などの暗証番号は、それだけでは何の役にも立たない財産的価値のないものといえます。
しかし、暗証番号はクレジットカードによる決済や銀行からの払戻しを受けるために役立つ情報であり、このように特定の状況下で一定の財物を取得するための手段としての価値をもっているため、これを財産上の利益となし得るかどうかが争われています。
過去の高裁判例では,今回のケースと似た事案で、キャッシュカードを窃取した被告人が被害者に包丁を突き付けて同人名義の預金口座の暗証番号を聞き出したという事件について、口座から預金の払戻しを受ける地位という財産上の利益を得たとして強盗利得罪の成立を認めたものがあります(東京高裁判平成21.11.16)。
この高裁判例が強盗利得罪の成立を認める判断は、行為者がいまキャッシュカードを有し、ATMが付近に存在するという状況があり、そのことによってはじめて暗証番号に関する情報が具体的な利益性をもつに至っているというもので、単に暗証番号を聞き出すことが直ちに財産上の利益を得ることと評価されるわけではないため、注意も必要ですが、こういった判断がされる可能性もあるということです。
今回のケースでは、Aさんは既にVさんのクレジットカードを有しており、その状態で暗証番号を聞き出していることから、高裁判例の考えによって強盗利得罪の成立が認められる可能性があります。
・事後強盗罪
今回のケースのAさんとVさんの具体的な状況によっては、強盗利得罪が成立しなかったとしても、事後強盗罪(刑法第238条)が成立する可能性があります。
刑法第238条
窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
事後強盗罪は窃盗犯人が窃取した財物を取り返されたり、捕まることを避けたり、あるいは犯罪の痕跡を隠滅したりするために暴行・脅迫を行った場合に成立する罪で、その法定刑は強盗罪と同じく5年以上の有期懲役です。
今回のケースでは、AさんはVさんにナイフを突きつけ脅していますが、この脅迫行為が、すでに盗んでいたクレジットカードを取り返されたり、捕まることの回避や罪証隠滅のために行われたとすると、クレジットカードを盗んだ行為と合わせて事後強盗罪に当たるとされるおそれがあるのです。
暴行・脅迫によって財物でないものを手に入れたとき、それが財産上の利益といえるかどうかは罪名および科刑上大きな違いを生みます。
どの行為がどの犯罪になるかということも含めて、その分析には刑事事件に関する専門的な法的知識が必要となります。
さらに、今回のAさんのケースのように逮捕・勾留を伴う捜査が行われている場合には、身体解放のための弁護活動も考えられますが、そのためには刑事事件に強い弁護士にいち早く相談し,適切な対応を行っていくしかありません。
対応が遅れると刑事手続が進行し、取り返しのつかない事態に陥ってしまう可能性もあります。
どういった場合にせよ、刑事事件の当事者となってしまったら、早期に弁護士に相談してみることが重要でしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士による初回無料法律相談だけでなく、逮捕・勾留中の方に向けた初回接見サービスも受け付けています。
強盗事件などの重大な刑事事件についてのご相談・ご依頼も受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、京都市中心部にある刑事事件・少年事件の当事者の弁護活動を専門に取り扱う法律事務所です。
京都を中心に近畿地方一円の刑事事件・少年事件について、逮捕前・逮捕後を問わず、刑事事件・少年事件の刑事弁護活動を専門に扱う実績豊富な弁護士が素早く対応致します。
当事務所は初回の法律相談を無料で行っております。土日祝日であっても夜間を含め、24時間体制でご相談を受け付けております。お急ぎの方については、お電話後すぐに弁護士とご相談いただくことも可能です。刑事事件・少年事件に関することなら、どんな疑問でも、どなた様でもご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部 弁護士紹介
いやがらせでパンク 器物損壊事件を相談
いやがらせでパンク 器物損壊事件を相談
いやがらせで車をパンクさせて器物損壊事件となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
~事例~
京都市左京区に住むAさんは、近所に住んでいるVさんが高級外車に乗っている姿を見て、自分に見せびらかしているのではないかと思うようになりました。
そこで、ある日、酒に酔ったAさんは、Vさんへのいやがらせをしようと思い立ち、Vさんの高級外車の右前輪を五寸釘でパンクさせました。
しかし、Vさんは防犯カメラを設置しており、高級車がパンクしていることが判明した後、この防犯カメラの映像を確認しました。
すると、Aさんが写っており、Aさんがパンクさせた犯人だと判明しましたが、Aさんとは長い付き合いであったため、Vさんは、被害届を一旦出さないこととしました。
他方、Aさんは酒の勢いに任せてVさんの車をパンクさせたものの、逮捕されたり、前科を付けたりしたくないと考えたことから、どうにか穏便に済ませられないか、弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・いやがらせで器物損壊事件
今回のAさんは、いやがらせで車をパンクさせているようですが、こうした行為には器物損壊罪が成立すると考えられます。
刑法第261条(器物損壊罪)
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
まず、Aさんがパンクさせた高級外車はVさんの所有物ですので、器物損壊罪の対象となる「他人の物」にあたることは明らかでしょう。
次に器物損壊罪の「損壊」とは、物の効用を害する行為と解されています。
これは物理的に破壊しない態様の行為についても広く含むもので、例えば皿に放尿する行為(大判明治42.4.16)や公選法違反のポスターにシールを張る行為(最決昭和32.4.4)についても、物理的な破壊が伴わないものの物本来の使用を不可能ないし著しく困難にしている点で「損害」にあたるとされています。
本件ではAさんは五寸釘を用いてVさんの高級車のタイヤをパンクさせて車の走行をできなくさせているので、Aさんの行為は器物損壊罪の「損壊」にあたるといえるでしょう。
これらのことから、Aさんがいやがらせとして行ったVさんの車をパンクさせる行為は、器物損壊罪にあたる行為といえます。
・Aさんはどうすべき?
以上の通りAさんの行為に器物損壊罪が成立するとして、穏便に済ませたいと考えているAさんは今後どのような行動をとるべきでしょうか。
事例におけるAさんの状況は、被害者Vさんに被害届が出されておらず、いまだ刑事事件化していないというものです。
したがって、Aさんとしてはまず被害者に被害届の提出等しないようにしてもらうということが先決でしょう。
器物損壊罪は刑事告訴が公訴提起の条件である親告罪(刑法第264条)であるので、被害者が捜査機関に被害を訴えたり刑事告訴しない旨の合意をめざし示談交渉することが重要となります。
刑事事件化前に当事者間で示談締結ができれば、捜査を受けるなどの心配をする必要はなくなります。
本事例では、上記合意を得るために、慰謝料や被害品が高級外車のタイヤに修理に係る弁償費などの示談金を支払うことが条件となりそうです。
とはいえ、不当に高い示談金を支払う必要はなく、適切な示談額となるよう被害者と上手に交渉する必要があります
このような交渉は当事者同士で行うと、逆に話がこじれて関係が悪化してしまったり、せっかく話がついても法律的に正しい示談が締結出来なかったりするリスクがありますから、弁護士に依頼することが望ましいといえます。
もちろん、被害届の提出などによって刑事事件化してしまった場合でも、示談の締結によって不起訴処分の獲得を目指すことができますから、いずれにせよ早い段階で弁護士に相談・依頼をして対応していくことが必要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、器物損壊事件などの刑事事件を専門に扱っています。
いやがらせ行為から刑事事件に発展しそうでお困りの際は、まずはご相談ください。

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美人局で逮捕されてしまったら
美人局で逮捕されてしまったら
美人局で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、「人妻です。京都市西京区で会える不倫相手募集」というようなメッセージを出会い系サイトに投稿し、その投稿に男性会社員のVさんが反応しました。
AさんはVさんと何通かメッセージのやりとりをし、京都市西京区で会う約束をしました。
後日、AさんとVさんが京都市西京区で約束通り会い、ラブホテルから出てきたところ、Aさんの夫を名乗るBさんが現れ、「人妻に手を出して不倫してただで済むと思っているのか」「誠意をもって対応しなければ裁判にしてやる」「裁判になれば職場にも不倫をしたことがばれるぞ」などと言って慰謝料として30万円を支払うよう言ってきました。
VさんはBさんの言葉に怖くなってしまい、Bさんの要求通り30万円を支払ってしまいました。
実は、AさんとBさんは一緒に計画を立てて美人局をしていたのでした。
しかし、その後もBさんから何か言われるのではないかと不安になったVさんが京都府西京警察署に相談したことから被害が発覚し、捜査が開始されました。
AさんとBさんは、恐喝罪の容疑で逮捕され、京都府西京警察署で取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・美人局
美人局(つつもたせ)とは、女性が被害者となる男性を誘って肉体関係をもったり関係をもとうとしたりしたときに、事前に共謀していた第三者(多くは男性)が現れ因縁をつけ、金銭などを脅し取ることをいいます。
美人局を行う女性と男性は実際に夫婦関係や恋愛関係にある場合もありますが、そうでないこともあります。
今回のケースでも、AさんはVさんを誘い出し、ラブホテルで密会した後に夫を名乗るBさんが現れ30万円を脅し取っています。
この美人局によってBさんが行った金銭を脅し取る行為は、恐喝罪(刑法第249条)によって処罰される可能性があります。
刑法第249条(恐喝罪)
第1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
条文中にある「恐喝」とは、暴行または脅迫を手段として相手方をその反抗を抑圧するに至らない程度に畏怖させることをいいます。
もし、財物や財産上不法の利益を得る手段として行った暴行または脅迫が相手方の反抗を抑圧する程度のものであった場合には、恐喝罪ではなく強盗罪(刑法第236条)が成立する可能性があります。
強盗罪の法定刑は5年以上の懲役となります。
また、同じような行為であっても害悪を告知して畏怖させた行為であるとして脅迫罪(刑法第222条)が適用されたり、威迫して人に義務のないことを行わせたとして強要罪(刑法第223条)が適用されたりすることも考えられます。
法定刑は、脅迫罪が2年以下の懲役または30万円以下の罰金で、強要罪が3年以下の懲役です。
さらに、美人局では、女性がまったく性交を行う気がないのに性交を行おうと被害者を呼出し金銭を要求したり、18歳未満であると偽って児童買春が成立するとして慰謝料や示談金の名目で金銭を要求するパターンもあります。
こうしたパターンでは、虚偽の事実を示して金銭などを要求する行為は場合によっては詐欺罪(刑法第246条)に問われる可能性もあります。
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
加えて、ここまでに挙げた主に脅迫行為を行う第三者に成立することが考えられる犯罪だけでなく、被害者を誘い出したり性的な行為を行ったに過ぎない女性(今回の事例でいうAさんの立ち位置)も、共犯(共同正犯あるいは幇助犯など)として第三者と共に罪に問われる可能性があります。
行われた美人局にここまでに挙げたどの罪名が適用されるかは、美人局を行った具体的な状況などによってさまざまで、美人局だからこの犯罪であると断定することは難しいです。
専門家に自身の行った美人局の詳細を話したうえで、どの犯罪に該当し得るのかを聞くことがベストでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕された方向けの初回接見サービスから、在宅捜査を受けていたり刑事事件化がまだされていなかったりする方向けの初回無料法律相談まで幅広くサービスをご用意しています。
美人局で逮捕されてしまった、美人局で刑事事件となりそうとお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、京都市中心部にある刑事事件・少年事件の当事者の弁護活動を専門に取り扱う法律事務所です。
京都を中心に近畿地方一円の刑事事件・少年事件について、逮捕前・逮捕後を問わず、刑事事件・少年事件の刑事弁護活動を専門に扱う実績豊富な弁護士が素早く対応致します。
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弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部 弁護士紹介
シャワー室への侵入で取調べ
シャワー室への侵入で取調べ
シャワー室への侵入で取調べを受けたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府城陽市の会社Xに勤務している男性会社員のAさんは、会社にある女性用シャワー室に侵入したとして、その現場を目撃した同僚に、京都府城陽警察署に通報されてしまいました。
Aさんは、京都府城陽警察署で事情を聞かれることになり、そこで自身に建造物侵入罪と京都府迷惑防止条例違反の容疑がかけられているということを知りました。
自分への処分や自分がたどる刑事手続が今後どのようになるのか不安になったAさんは、京都府の刑事事件に対応している弁護士の初回無料法律相談を利用して、弁護士に詳しい話を聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・シャワー室やトイレへの侵入
今回の事例のAさんは、会社内にある女性用のシャワー室に立ち入ったことで犯罪を行った疑いをかけられています。
ただ単純に男性が女性用の、あるいは女性が男性用のシャワー室やトイレなどに立ち入ったということが絶対に犯罪となるわけではありません。
しかし、事情によっては犯罪に問われる可能性のある行為であるということにも注意しなければなりません。
以下では、シャワー室やトイレへの侵入によって問われうる犯罪について確認していきます。
・建造物侵入罪
今回の事例のAさんにかけられている容疑の1つとして建造物侵入罪という犯罪があります。
建造物侵入罪は、刑法第130条前段に規定されている犯罪です。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物侵入罪という名前から、建造物侵入罪は建物そのものに立ち入る行為を処罰する犯罪であるというイメージのある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、建造物侵入罪では、建造物その物への侵入行為のほかにも、立ち入りが許された建造物内部において立ち入ることが禁止されている区画に立ち入る場合についても処罰することになっています。
立ち入り行為が建造物侵入罪にいう侵入に当たるかどうかは、居住者や看守者の意思に反する立ち入りであるかどうか、立ち入りによって事実上の平穏が侵害されたといえるかどうかという2つの点を考慮して判断されます。
例えば、今回の事例で問題となっているシャワー室やトイレといった場所は、普段衣服によって隠されている身体の一部または全部を露出する場所です。
そこに異性が正当な理由なく立ち入るとなれば、安心してそのシャワー室やトイレなどを利用できない状態になると考えることができます。
さらに、正当な理由なしに異性がシャワー室やトイレに入るようなことは、その建造物の看守者(管理している者)の意思にも反することになるでしょう。
こうしたことから、正当な理由なしに異性用とされているシャワー室やトイレに立ち入ることは建造物侵入罪に当たることになると考えられるのです。
ただし、建造物侵入罪の条文にも「正当な理由がないのに」とあるように、シャワー室やトイレへの立ち入りに正当な理由があれば、建造物侵入罪は成立しないということになります。
例えば、異性によるトイレへの立ち入りについては、本来使用すべきトイレがいっぱいで失禁してしまうのを回避するために止む無く立ち入った場合や、トイレに清掃目的で立ち入った場合などが考えられます。
・迷惑防止条例違反
今回の事例のAさんは、先ほど触れた建造物侵入罪だけでなく、京都府迷惑防止条例違反の疑いもかけられています。
各都道府県の迷惑防止条例では、盗撮やのぞき行為を禁止していることが多く、今回の事例のAさんは女性用シャワー室に立ち入っていたという事情から、そうした行為による迷惑防止条例違反を疑われている可能性があります。
京都府迷惑防止条例第3条
第3項 何人も、住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、第1項に規定する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
第1号 当該状態にある他人の姿態を撮影すること。
第2号 前号に掲げる行為をしようとして、他人の姿態に撮影機器を向けること。
例えば、Aさんが女性用シャワー室に立ち入って盗撮行為をしようとカメラなどをシャワー室を利用している人に向けていたり、その様子を盗撮していたりすれば、Aさんにはこの迷惑防止条例違反も成立することになるのです。
都道府県や行為の行われた場所によっては、のぞき行為でも迷惑防止条例違反となるケースもあります。
・軽犯罪法違反
のぞき行為については、軽犯罪法第1条第23号でも「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を罰する規定があります。
場所などの関係上迷惑防止条例違反にはならない場合でも、立ち入り行為の目的がのぞきであり、実際にのぞき行為をしていたような場合には、軽犯罪法違反に問われる可能性も出てくることになります。
このように、シャワー室やトイレへの侵入によって成立する可能性のある犯罪は複数存在します。
侵入の目的や侵入してからした行為によっても成立する犯罪は異なりますから、シャワー室やトイレへの侵入によって刑事事件化してしまい、取調べを受けることになったら、まずは弁護士に相談し、自分が問われうる犯罪についてきちんと聞いておきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士による初回無料法律相談も受け付けています。
まずはお気軽にご相談ください。

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おふざけがエスカレートして強制わいせつ事件に?
おふざけがエスカレートして強制わいせつ事件に?
おふざけがエスカレートして強制わいせつ事件に至ったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市南区に住むAさんは、自宅で友人の女性Vさんと酒を飲んでいました。
お酒が回ってきたAさんは、おふざけのつもりでVさんの太ももを触りはじめました。
Vさんが嫌がるそぶりを見せないことからAさんの行為はエスカレートし、Vさんのお尻や胸を揉むなどした上、無理矢理キスしようとしたところで突如Vさんが激怒し、そのまま京都府南警察署に通報されてしまいました。
Aさんは、警察官から簡単に話を聞かれた後、強制わいせつ事件の被疑者として京都府南警察署で取調べを受けることになりました。
おふざけの延長線上の行為だったつもりなのに強制わいせつ罪という犯罪の容疑をかけられてしまったと不安になったAさんは、刑事事件を取り扱う弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・強制わいせつ罪
今回のAさんは、Vさんの太ももを触るのに加え、Vさんのお尻や胸を揉み無理矢理キスしようとしています。
この行為は、Aさんに容疑をかけられている強制わいせつ罪(刑法第176条)という犯罪になる可能性のある行為です。
刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪における「わいせつな行為」とは、被害者の意思に反して他人から触れられたり見られたくない身体の一部に触れたりするなどして被害者の性的羞恥心を害し、かつ一般通常人でも性的羞恥心を害されるであろう行為のことをいいます。
つまり、性的に恥ずかしいと思わせるような行為を相手の意思に反して行うことが強制わいせつ罪の「わいせつな行為」となるのです。
具体的には、陰部や胸、お尻や太ももなどに触れる行為や、裸にして写真を撮る行為、無理矢理キスしようとする行為などが挙げられます。
強制わいせつ罪が成立するためには、この「わいせつな行為」を行う手段として暴行・脅迫が用いられることが必要です。
この暴行・脅迫は被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものでなければなりません。
すなわち、相手の抵抗を押さえつける程度に強い暴行・脅迫が用いられることが求められるのです。
ここで注意したいのは、実際に反抗されたとしても、客観的に反抗することが著しく困難であったと認められる限り強制わいせつ罪の成立は妨げられないということです。
ですから、相手が反抗してきたからといって必ずしも強制わいせつ罪の暴行・脅迫に当たらない(強制わいせつ罪が成立しない)とは限らず、加害者と被害者の体格や年齢、関係性、事件の起こった現場の状況など、様々な事情を総合的に考慮して強制わいせつ罪にあたるか判断されることになります。
また、強制わいせつ罪を含む性犯罪ではわいせつな行為と手段としての暴行・脅迫が必ずしも別個に存在しません。
例えば、陰部をもてあそぶという「わいせつな行為」に当たる行為が、手段としての「暴行」としての性格ももつとして、強制わいせつ罪が成立するということもあります。
今回の事例についても、AさんがVさんに行った太ももを触る行為に始まる一連の行為は、その強度などによっては、強制わいせつ罪にいう「わいせつな行為」に当たるおそれがあると同時に、Vさんへの「暴行」でもあると判断される可能性があります。
・おふざけから刑事事件に発展?
ここまでの検討で、Aさんの行為は強制わいせつ罪にあたり得る行為であるということが確認できました。
しかし、強制わいせつ罪は故意犯=故意がなければ成立しない犯罪なので、Aさんに強制わいせつ罪が成立するとなると、Aさんに強制わいせつ罪の故意がなければならないことになります。
AさんはおふざけのつもりでVさんに触れる等の行為をしていますが、こうした場合に「故意」があると判断できるのかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
刑事事件で「故意がある」というためには、悪いことをしているという意識までは必要ではありませんが、その行為が構成要件(条文に定められているその犯罪が成立するために必要な条件のこと)に該当する行為であることの認識とその行為によって生じる結果の予見が必要です。
したがって、たとえ本人がおふざけのつもりでやった行為だったとしても、必ずしも故意が否定されるわけではありません。
ですから、今回のAさんがおふざけのつもりでVさんの身体を触ったり無理矢理キスしようとしたりしていたのだとしても、事件の状況によっては強制わいせつ罪の故意が認められる可能性もあるということになります。
しかし、今回の事例でいえば、Aさんの行為を嫌がらなかったのだからVさんがわいせつな行為を行われることに同意していたとAさんが考えていた可能性があります。
もしも被害者が行われる行為に同意していたのであれば、それは犯罪とはなりません。
このときに問題となるのは錯誤(=勘違い)です。
勘違いをしていたからといって必ずしも犯罪とならないわけではありませんが、例えば、Aさんがどの程度酒に酔っていたのか、AさんとVさんの関係性はどのような関係性だったのか、事件に至る経緯はどのようなものだったのかといった細かい事情によっては、AさんがVさんの同意があるものだと錯誤をしてしまったことに相当性があるとして、強制わいせつ罪に問われることを避けられる可能性もあります。
ですが、こうした検討は細かい事情全てを専門的に調べていかなければできないものです。
一般の方のみで検討を行うことは困難でしょうから、早い段階で専門家である弁護士に相談し、検討してもらうことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、おふざけからエスカレートして刑事事件に発展してしまったとお困りの方のご相談も受け付けています。
在宅捜査を受けている、または、まだ捜査は受けていないが刑事事件化が不安であるという方については、初回無料法律相談がおすすめです。
まずはお気軽にご相談ください。

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京都を中心に近畿地方一円の刑事事件・少年事件について、逮捕前・逮捕後を問わず、刑事事件・少年事件の刑事弁護活動を専門に扱う実績豊富な弁護士が素早く対応致します。
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喧嘩から共犯者のいる殺人事件・傷害致死事件に
喧嘩から共犯者のいる殺人事件・傷害致死事件に
喧嘩から共犯者のいる殺人事件・傷害致死事件に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、友人Bさんと一緒に京都府宮津市内で食事をしていました。
その帰り、Aさんらは路上で通行人VさんとぶつかったことがきっかけとなりVさんと喧嘩になりました。
Aさんらは2人がかりでVさんに暴行を加えてVさんに怪我をさせてしまいましたが、VさんがAさんらを罵倒したことからBさんが激しく怒り、Bさんは「そんなことを言うなら殺してやる」と言ってナイフを取り出すとVさんを刺してしまいました。
通行人の通報によって救急車と京都府宮津警察署の警察官が駆け付
け、Vさんは病院に搬送されましたが間もなくナイフで刺された傷がもとで死亡してしまいました。
AさんとBさんは共に殺人罪の容疑で京都府宮津警察署に逮捕されたのですが、AさんとしてはBさんと一緒に喧嘩をしていただけで、自分にVさんを殺すつもりはなかったと困っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分も殺人罪になってしまうのか相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・殺人罪と傷害致死罪
殺人罪は、名前のとおり人を殺してしまった場合に成立する犯罪です。
刑法第199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
殺人罪が成立するには、殺人罪の故意=人を殺すという認識や意思を持って人を死なせることが求められます。
「殺してやる」と殺意をもって人を殴ったり刺したりして死なせてしまえば殺人罪が成立するということです。
では、例えば殴るだけにとどめるつもりだった(殺意はなかった)のに人を死なせてしまったような場合はどのような罪に問われるのかというと、傷害致死罪という犯罪が挙げられます。
刑法第205条(傷害致死罪)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。
傷害致死罪は、簡単に言えば「殺すつもりはなかったが死なせてしまった」といった場合に成立する犯罪で、暴行罪や傷害罪の延長線上にある犯罪ともいえます。
殺人罪の故意はなかったものの、人に対して暴行し怪我をさせたりして死なせてしまったような場合には傷害致死罪に問われることになります。
・共犯と「意思の連絡」
2人以上の人が一緒になって犯罪をすれば、いわゆる「共犯」となります。
このうち、「共同して犯罪を実行した」場合には「共同正犯」としてすべて正犯=自らがその犯罪をした者と同じ扱いとなります。
刑法第60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
つまり、共同正犯に当たる場合は、たとえ犯罪の一部しか実行していなかったとしてもその全部についての責任を負うことになります。
この原則を「一部実行全部責任の原則」といいます。
今回のケースについて考えてみましょう。
AさんとBさんは、一緒になってVさんに暴行を加えてVさんに怪我をさせ、最終的にはVさんを死亡させています。
共同正犯の考え方を踏まえれば、AさんとBさんは一緒にVさんに暴行をした上でVさんを殺してしまったわけですから、その一部を実行しているAさんは殺人罪の共同正犯となるかのように思われます。
しかし、AさんにはVさんを殺害する意思はなかったのにBさんが殺意をもってVさんをナイフで刺してしまったという事情もあります。
こうした場合にもAさんも殺人罪の共同正犯として扱われてしまうのでしょうか。
ここで問題となるのが、共同正犯が成立する際に必要だと考えられている「意思の連絡」という要素です。
共同正犯が成立するためには、「一緒にその犯罪を実行する」という意思をそれぞれが有していなければなりません。
これが「意思の連絡」と呼ばれるものです。
判例では、意思の連絡があって故意が異なる場合ではそれぞれの行為が該当する構成要件の重なる範囲でのみ共同正犯の成立が認められるとしています。
今回のケースで考えてみましょう。
AさんとBさんは、「Vさんに暴行を加える」ということについては共通の認識があったようです。
ですから、暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)といった範囲では「意思の連絡」があったと考えられます。
しかし、Vさんを死なせてしまった部分については、Aさんは殺意がなかったにもかかわらず、Bさんは殺意を持ってナイフでVさんを刺しているというずれが生じています。
つまり、AさんとBさんは、「Vさんへ暴行を加える」という範囲では重なり合っているものの、殺意の有無=殺人罪の故意の有無に違いがあるという状態なのです。
ですから、AさんとBさんはそれぞれの行為が該当する構成要件の重なる範囲でのみ共同正犯が成立することになります。
すなわち、AさんはVさんを殺すつもりはなかったがBさんと一緒にしていた暴行(ナイフで刺すという行為自体は暴行に含まれます。)によってVさんを死なせてしまったという状況のため、「身体を傷害し、よって人を死亡させた」という傷害致死罪の範囲で共同正犯となると考えられます。
対して、殺意をもってVさんを死なせたBさんは「人を殺した」という殺人罪が成立するということになると考えられます。
共犯者のいる刑事事件では、今回取り上げた「意思の連絡」の問題など、専門的な部分で様々な検討が必要となります。
共同正犯となるかどうかによって刑罰の重さが大きく異なることもあるため、十分な検討と対応が必要ですが、刑事事件の知識や経験がなければそれも困難です。
だからこそ、弁護士に相談・依頼することが大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事手続きや容疑をかけられている犯罪について丁寧に解説・アドバイスを行います。
まずはお気軽にご相談ください。

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弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 京都支部 弁護士紹介
DVから過剰防衛をして殺人罪に
DVから過剰防衛をして殺人罪に
DVから過剰防衛をして殺人罪に問われてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
〜事例〜
京都市上京区に住んでいるAさんは、同棲中している恋人の男性Vさんから、日常的に殴られたり蹴られたりと言ったDVを受けていました。
このままDVが続けば自分が殺されてしまうのではないかと怖くなったAさんは、ある日、暴行を加えようとしてきたVさんに対して咄嗟に包丁を突き出しました。
包丁はVさんの腹部に深く突き刺さってしまい、Vさんは倒れ込みましたが、その後Aさんはさらに包丁でVさんを突き刺しました。
しばらくしてからとんでもないことをしてしまったとAさんが通報したことにより、Vさんは病院に運ばれたものの、これが致命傷となりVさんは後日死亡しました。
Aさんは殺人罪の容疑で京都府上京警察署に逮捕され、Aさんの家族はDVに反撃した結果の事件だという話を聞き、どうにかAさんの弁護をしてやれないかと弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです)
・過剰防衛とは?
今回のAさんは、日常的にDVを受けており、そこから自分を守るために殺人行為をしてしまったようです。
ここで、「AさんはDVから身を守るためにVさんを刺したのだから正当防衛となり、殺人罪にならないのではないか」「なぜAさんは殺人罪に問われているのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
今回のAさんは、過剰防衛と呼ばれるケースに相当すると考えられたのだと思われます。
過剰防衛とは、正当防衛になりうる状況で行われた防衛行為が防衛の程度を超えた場合を指します。
刑法第36条
第1項 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
第2項 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。
ご存知の方も多い正当防衛は、刑法第36条第1項の部分に規定されているものです。
今回問題になる過剰防衛は、同じ条文の第2項の部分に定められています。
防衛の程度を超えたかどうかは、侵害を排除するのに必要と考えられる程度以上の侵害性を備えていた場合(質的過剰)と、急迫不正の侵害に対して行われた反撃が継続されるうちに量的に必要以上の侵害性を伴ってしまった場合(量的過剰)の2つの場合に分けられます。
質的過剰を具体的な例で表すと、素手での侵害行為(殴りかかるなど)に対して日本刀や拳銃などで反撃した場合が挙げられます。
判例では質的過剰の事例について過剰防衛が認められることとなっています。
対して、量的過剰の場合については必ずしも過剰防衛の成立が肯定されるわけではありません。
複数の暴行(反撃)が加えられる量的過剰の事案については、これらの暴行を一連一体のものとして捉えられる場合に過剰防衛が認められるとされているものがあります(最判昭和34.2.5)。
複数の暴行が一連一体のものとして捉えられるかどうかについては、判例では「防衛の意思」の同一性を基準にしていると考えられます(最決平成20.6.25など)。
防衛の意思とは、正当防衛の成立要件のうち、反撃行為が「自己又は他人の権利を防衛するため」にされたものかどうかという部分です。
防衛の意思が認められれば反撃行為は防衛行為と認められます。
対して、正当防衛になりうるだからといって相手を積極的に加害する意思(積極的加害意思)が認められれば、その意思のもとに行われた行為は防衛行為とはいえないことになります。
例えば、「相手が殴りかかってきたのだから正当防衛になりうる。これを理由にして日頃の恨みを晴らして痛い目を見せてやろう」と相手を殴り返すと場合には、防衛の意思はないと考えられるのです。
この防衛の意思の同一性による判断とは、複数の暴行いずれもが同一の防衛の意思によるものであることかどうか(=複数の暴行のどれにも加害意思がないかどうか)という判断ということになります。
もし複数の暴行のうち後の方の暴行が防衛の意思によるものでなければ、防衛の意思に基づいて行った暴行のみについて正当防衛あるいは過剰防衛が成立し、そのほかの暴行については暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)に問われる可能性があります。
ここで注意しなければならないのは、相手の侵害行為が終了していても反撃行為が継続していた状況であることが量的過剰の前提とされていることです。
あくまで侵害者に向けられた複数の行為の時間的・場所的連続性を前提として、防衛の意思の同一性が認められれば過剰防衛となりうるということです。
ここでAさんのケースを見てみましょう。
Aさんは倒れ込んだVさんにも複数回包丁を刺していることから、やりすぎている=量的過剰による過剰防衛が成立するのではないか、と考えられます。
ですからAさんによる複数の暴行に先ほどまで見てきた「防衛の意思」が一貫しているかどうかと言ったことが問題になるでしょう。
AさんはVからのDV(=侵害)に対する反撃として咄嗟に包丁を突き出し、Vさんに傷害を負わせています。
さらに、倒れ込んだVさんはもうAさんに暴行をすることはできませんが、それでもAさんは再度包丁でVさんを突き刺し致命傷を与えました。
最初にAさんが包丁を突き出した行為と2回目にVさんに包丁を突き刺した行為との間には時間的・場所的連続性は認められそうです。
次に、これらが同一の防衛の意思のもとにとられた行為であるかが問題となります。
最初にAさんが包丁を突き出した行為は、VさんによるDVから身を守るための行為であると考えられます。
VさんのDVが素手で殴るという手段だったことから、包丁で対抗したのは質的過剰であることも考えられますが、積極的加害意思を認めるような事情なく、防衛の意思はあったと考えられそうです。
しかし、その後再びVさんに包丁を突き刺した行為については、Aさんの内心が事例からは不明であるため一概には言えません。
ですが、この行為が最初の行為と一連一体のものとして認められれば、全体について過剰防衛が成立する可能性があります。
このように、正当防衛や過剰防衛が認められるかどうかといった判断は容易なものではなく専門家の分析を必要とします。
自身あるいは他人を守るためにとった行為について被疑者となってしまった場合には刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼することがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が被疑者やそのご家族に直接刑事事件やその手続き、かけられている容疑や検討すべき事項を丁寧にご説明します。
専門家から詳しい話を聞くことで解消できる不安もあるでしょう。
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電車での過失傷害事件
電車での過失傷害事件
電車での過失傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
Aさんは、京都府舞鶴市内を走る電車内で、大きなスーツケースを荷物棚からおろす際、不注意からそのスーツケースを隣に座っていた利用客Vさんの顔に激しくぶつけてしまいました。
Vさんは鼻血を出すほど強く顔面を打ち付けており、駅に着いた際にAさんとVさんは一緒に駅員の元へ向かいました。
その際、Aさんがさほど反省した様子を見せていなかったことからVさんは激怒し、京都府舞鶴警察署に被害を届け出ると言ってきました。
Aさんは、「わざとぶつけたわけではないがそれでも犯罪になるのか」と不安に思い、京都府内の刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・不注意で人に怪我をさせてしまった…犯罪になる?
人に暴行をして怪我をさせたり、怪我をさせるに至らなくても人に暴行をしたりすれば、刑法の傷害罪や暴行罪に当たることは皆さんご存知の通りでしょう。
刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
では、今回のAさんのように、不注意で暴行を加えてしまい、相手に怪我をさせたような場合、これらの犯罪は成立するのでしょうか。
傷害罪や暴行罪は故意犯と呼ばれる犯罪であり、暴行の故意=相手に暴行をするという意思や認識が認められなければ犯罪として成立しません。
つまり、今回のAさんがスーツケースをVさんにぶつけてやろうという意思をもっていない限り、傷害罪や暴行罪は成立しないということになります。
ただし、スーツケースがぶつかりそうであることを分かっていながらあえて「ぶつかってもいいだろう」と思ってぶつけたような場合には、いわゆる「未必の故意」が認められ傷害罪や暴行罪が成立する可能性もあるため、詳細な状況を専門的に検討することは必要です。
・過失傷害罪
では、Aさんのように不注意で人に怪我をさせた場合には、なんの犯罪も成立する可能性はないのかというと、そうではありません。
刑法には、過失傷害罪という犯罪が規定されています。
刑法第209条第1項(過失傷害罪)
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
過失傷害罪は、過失=不注意によって人を傷害してしまった時に成立する犯罪です。
つまり、今回のAさんのケースのような場合には、過失傷害罪が問題となるのです。
では、どんな時に過失傷害罪の「過失」(不注意)が認められるかというと、結果の発生が予見でき、さらに、その結果を回避する義務に違反した場合に限って過失が認められるとされています。
例えば今回の事例の場合、荷物棚からスーツケースをとる際に、スーツケースを落とすなどして他の乗客にぶつかってしまうことが予想できたか、その結果を回避するためにAさんはなんらかの対策を取っていたか、といったことが検討されることになるでしょう。
単に「不注意だった」というだけで過失傷害罪の成否が判断されるわけではないため、やはり専門家の弁護士に詳細な事情とともにアドバイスをもらうことが必要とされるでしょう。
なお、過失傷害罪は親告罪(刑法第209条第2項)となっていますので、告訴がなければ起訴されません。
ですから、過失傷害事件では迅速に示談を締結することによって不起訴処分の獲得など、寛大な処分を得ることができます。
そういった点からも、早めに弁護士に相談・依頼することが重要と言えるでしょう。
ふとした不注意から刑事事件の当事者になってしまうこともあります。
弁護士のサポートを受けることで、突然の刑事手続きへの不安や疑問を解消することにつながります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事事件の始まりから終わりまでフルサポートいたします。
まずはお気軽にご相談ください。

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ひったくり事件で逮捕されたら
ひったくり事件で逮捕されたら
ひったくり事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市下京区の商店街は、年末年始ということもあり、少し人通りが多くなっていました。
21歳のAさんは、その商店街で買い物をしていた76歳のVさんのバッグを後ろから自転車に乗ってひったくるという、いわゆるひったくり事件を起こしました。
目撃者が京都府下京警察署に通報し、京都府下京警察署の捜査の結果、Aさんはひったくりをした容疑で逮捕され、Aさんが逮捕された旨はAさんの両親に連絡されました。
Aさんの逮捕を知ったAさんの両親はどうすればいいのか分からずにいましたが、年末年始の時期に入っていたこともあり、なかなか相談できる弁護士が見つかりません。
そこでAさんの両親は、インターネット検索で出てきた、年末年始も対応している刑事事件を取り扱う弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・ひったくり
ひったくりとは、物を持って歩いている歩行者や前かごにバッグなどの荷物を入れている自転車に近づき、すれ違いざまや追い越しざまに、歩行者の持っている物や自転車の前かごに入っている荷物を奪い取って逃走する行為のことを指します。
ひったくりの手口としては、バイクや自転車などの乗り物に乗って犯行に及ぶ手口が多く、ひったくりの被害者は女性や高齢者が多いと言われています。
今回のAさんも、自転車に乗ってひったくりの犯行をしたようです。
ひったくり事件では、犯人は犯行後すぐに逃走してしまう上、犯人が自転車やバイクに乗っていることも多いことから、犯人を現行犯逮捕するというケースはそう多くないと考えられます。
犯人が何度か同じようなひったくり行為を繰り返していた場合、ひったくりの被害者・目撃者の証言や防犯カメラの映像、警察官の巡回などによって犯人が発覚し、逮捕されるというケースが度々見られます。
刑事事件として捜査される=逮捕されるというわけではありませんが、逮捕は逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると判断されれば行われる可能性が出てきます。
ひったくり事件の場合、犯人は犯行現場から逃げてしまっているか、あるいは犯行現場から逃げようとしていることから、捜査中にも逃亡のおそれがあると判断されて逮捕を伴う強制捜査となる可能性があるのです。
・ひったくりは何罪?
ひったくりは、一般的には「窃盗罪」として刑事罰の対象となると考えられています。
窃盗罪というとこっそり人の物を取ってしまう、というイメージがあるかもしれませんが、ひったくりも持ち主の同意を得ずに持ち主の管理下にある物を自分の物にしてしまう行為であることから、一般的には窃盗罪に当たると考えられているのです。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
しかし、ひったくり=必ず窃盗罪となる、というわけではありません。
過去の裁判では、自動車やバイク等を利用して走りながらひったくりを行った場合において、強盗罪にあたると判断された例も存在します。
刑法第236条第1項(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
これは、ひったくりの被害者がひったくられた物を渡すまいとして被害品から手を離さない状態となっている時に、ひったくり犯の方が手を離さなければひったくりの被害者はバイクや自転車に乗ったひったくり犯にひきずられるような格好になることから、ひったくり犯が手を離さなければひったくりの被害者の生命・身体に重大な危険をもたらすおそれのある暴行を用いていると判断されたことによります。
強盗罪のいう「暴行」とは、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行であることが求められますが、ひったくり犯が自転車やバイクに乗ってひったくりの被害者を引きずる行為はこの「暴行」にあたり、その「暴行」を加えて財物を奪い取っているために強盗罪であると判断されたのです。
ですが、自転車やバイクを使ったひったくりが必ず強盗罪になるわけではなく、これもケースバイケースに判断されることです。
お悩みになっているひったくり事件が何罪にあたるのかによってその後の見通しや対応も異なってきますから、まずは専門家である弁護士に相談してみることが望ましいといえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士による初回無料法律相談や初回接見サービスの受付を年末年始問わず受け付けています(お問い合わせ:0120-631-881)。
年末年始であっても、逮捕や捜査といった刑事事件の手続は進んでいきます。
まずはお気軽にお電話ください。

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電子計算機損壊等業務妨害事件で逮捕
電子計算機損壊等業務妨害事件で逮捕
電子計算機損壊等業務妨害事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府向日市にある会社Vに勤務していましたが、会社Vに解雇されたことをきっかけに会社Vに対して恨みをもっていました。
Aさんは、会社Vになんとか痛い目を見せてやろうと考え、会社Vのサーバーにアクセスすると、会社Vが業務で使用していたシステムのデータを壊し、システムを使えないようにしました。
会社Vはシステムが破壊されたことで業務をすることができなくなり、京都府向日町警察署に被害を届け出ました。
京都府向日町警察署の捜査により、会社Xのシステムが壊されたのはAさんの犯行であることが発覚し、Aさんは電子計算機損壊等業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが聞きなれない犯罪名の容疑で逮捕されたことに驚き、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(※令和2年11月16日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・電子計算機損壊等業務妨害罪
多くの業務妨害事件で成立する犯罪としては、刑法にある「偽計業務妨害罪」や「威力業務妨害罪」が挙げられるでしょう。
刑法第233条(偽計業務妨害罪)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第234条(威力業務妨害罪)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
偽計業務妨害罪の「偽計」とは人を騙したり人の不知・錯誤を利用したりすることを指し、威力業務妨害罪の「威力」とは人の意思を制圧するに足りる勢力のことを指します。
これらを利用して実際に業務を妨害したり、業務を妨害する相当の危険性を生じさせた場合、それぞれ偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪が成立することになります。
例えば、商業施設に爆破予告をして業務妨害したような場合には、爆破予告によって人の意思を制圧していると考えられるため、威力業務妨害罪にあたると考えられます。
業務妨害事件が起こった際、この2つの業務妨害罪が成立することが多いのですが、刑法にはもう1つの業務妨害罪が定められています。
それが、今回のAさんの逮捕容疑である、電子計算機損壊等業務妨害罪です。
電子計算機損壊等業務妨害罪は、刑法の以下の条文に定められています。
刑法第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害罪)
第1項 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
第2項 前項の罪の未遂は、罰する。
電子計算機損壊等業務妨害罪は、業務妨害の手段として「人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊」すること、「人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせ」ることを用いることで成立する犯罪です。
難しいように思えますが、要は業務に使用されている電子計算機=コンピュータやそのシステム・データを壊したり、コンピュータやそのシステム・データに対して嘘の情報や指令を与えることでコンピュータ等を作動させなかったり誤作動させたりすることを手段として業務を妨害したり妨害の危険性を発生させたりすることによって電子計算機損壊等業務妨害罪となるということです。
偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪とは異なり、電子計算機損壊等妨害罪には未遂罪の規定があることにも注意が必要です。
今回のAさんの事例では、Aさんは会社Vが業務に使用しているシステムを破壊してその業務ができないようにしています。
これは、「人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊」して「人の業務を妨害」していることになりますから、Aさんには電子計算機損壊等業務妨害罪が成立すると考えられるのです。
電子計算機損壊等業務妨害事件では、コンピュータやシステムにアクセスする際に不正な手段が取られることもあり、そうなれば電子計算機損壊等業務妨害罪に加えてさらに不正アクセス禁止法違反など他の犯罪も成立する可能性があります。
複数の犯罪が成立しても柔軟に対応していけるよう、まずは刑事事件に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が初回無料法律相談から初回接見サービスまで、ご相談者様の状況に合ったサービスをご提供しています。
まずはお気軽にお問い合わせ用フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

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