自宅に放火して逮捕

2021-06-21

自宅に放火して逮捕

自宅に放火して逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

~事例~

京都府南丹市在住のAさんは、自宅が老朽化している状態にもかかわらず、以前と同じように税金を納めることに嫌気がさしていました。
そこで、Aさんは自宅を解体して土地を売りに出すことを思いついたのですが、自宅が木造住居であったことから、解体費用の節約のため燃やすことによって解体してしまおうと思いつきました。
そして、Aさんは妻子には自宅を燃やすことを知らせずに適当な話をして別の家に泊まらせると、自宅に火を放ち、自宅を全焼させました。
当日、自宅の周りには他人の住居はなく、Aさんが自宅に火を放った当時周りに延焼するおそれはありませんでしたが、Aさんの自宅から上がる煙を発見した地域の住民が京都府南丹警察署に通報。
消防車やパトカーが駆け付ける事態となり、自宅の燃える様子を見ていたAさんは、現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
Aさんは、「中に人もいなかったし、燃え移る心配もなさそうだった。何よりこれは自分の家なのだからどうしようと勝手なのではないか」と思い、家族の依頼を受けて接見にやってきた弁護士に、詳しいことを相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・放火罪と放火の対象物

放火罪という犯罪は、実は何種類かに分けられています。
その大まかな違いは、何に対して放火したかという、放火の対象物の違いです。
例えば、今回の事例のAさんは、自身の自宅という建造物に対して放火していますが、刑法の放火罪では、その建造物が①現住性ないし現在性があるもの、②①がなく非現住ないし非現在とされるものとを区別しています。
そして、その区別によって分けられた放火罪が以下の①現住建造物等放火罪と②非現住建造物等放火罪です。

①現住建造物等放火罪
刑法第108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

②非現住建造物等放火罪
刑法第109条第1項
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。

以上に加えて、非現住建造物等放火罪については、刑法第109条第2項において、それが自己の所有しているものであり、公共の危険を生じなかったといえれば、罰しないと規定されています。

刑法第109条第2項
前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。
ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

今回のAさんのように、自分の所有する建造物に放火した場合、その建造物に現住性があるかどうかによって、どちらの犯罪が成立し、どのくらいの重さの刑罰を受ける可能性があるのかが大きく異なってくることが考えられます。
つまり、放火罪において、建造物に現住性が認めれるかどうかが重要になってきます。

では、本事例のAさんにはどういった放火罪が成立するでしょうか。

まずは、現住性以外の点について検討してみましょう。
建造物に関する放火については、法文から、①放火し、②建造物を焼損したことが必要だと考えられます。
本件で、Aさんの自宅は「建造物」であることは間違いないでしょう。
さらに、Aさんは火を放っており①「放火」したといえます。
また、②焼損したとは、火が媒介物を離れ独立して燃焼継続しうる状態に至ることをいうと解されていますが、Aさんの自宅は全焼しているので、この要件についても認められると考えられます。
このことから、Aさんは建造物に放火したことによる放火罪は成立すると考えられるものの、Aさんの自宅に現住性があるのかどうかによってその罪名が現住建造物等放火罪になるのか、非現住建造物等放火罪になるのかが変わりそうだということが分かります。

では、次に、Aさんの自宅が「現住性」を有するかどうかを検討してみましょう。
そもそも、建造物の現住性はどういった場合に認められるのでしょうか。
現住建造物等放火罪において「現に人が住居に使用」している場合とは、放火行為当時に犯人以外の人が起臥寝食の場所として使用している場合をいい、また、放火当時に人が現在する必要はないと解されています。
つまり、現住性については、放火当時その建造物内に人がいるという状況だけでなく、建造物を「人が起臥寝食の場所として使用している」抽象的可能性があればよいということとなります。

これを踏まえると、今回の事例では、Aさんは、妻子には放火に関して何も告げずに自宅に放火していることから、Aさんの妻子は日常住居とする意思があり使用形態に変更はなかったといえるので、現住性が認められる可能性が出てきます。
そうなると、Aさんには現住建造物等放火罪が成立する可能性が出てくると考えられるのです。

現住建造物等放火罪は、刑罰に死刑・無期懲役が含まれていることから、起訴されれば裁判員裁判になる重大犯罪です。
裁判員裁判は通常の刑事裁判手続きとは異なる手続きも多く、手続きが分からずに困惑してしまう方もいらっしゃるでしょう。
だからこそ、刑事事件に精通した弁護士のサポートを早いうちから受けておくことが重要です。

「自分の所有している建物だから自分の意思で放火する分には問題ない」と考えていても、その建造物の状況次第ではこれほど重大な犯罪が成立してしまう可能性があります。
もしも自宅など自身の所有する建造物への放火事件で刑事事件の当事者となってしまったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
刑事事件専門弁護士が、被疑者・被告人ご本人やそのご家族の疑問や不安の解消に努めます。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。