喧嘩から共犯者のいる殺人事件・傷害致死事件に

2021-03-29

喧嘩から共犯者のいる殺人事件・傷害致死事件に

喧嘩から共犯者のいる殺人事件傷害致死事件に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、友人Bさんと一緒に京都府宮津市内で食事をしていました。
その帰り、Aさんらは路上で通行人VさんとぶつかったことがきっかけとなりVさんと喧嘩になりました。
Aさんらは2人がかりでVさんに暴行を加えてVさんに怪我をさせてしまいましたが、VさんがAさんらを罵倒したことからBさんが激しく怒り、Bさんは「そんなことを言うなら殺してやる」と言ってナイフを取り出すとVさんを刺してしまいました。
通行人の通報によって救急車と京都府宮津警察署の警察官が駆け付

け、Vさんは病院に搬送されましたが間もなくナイフで刺された傷がもとで死亡してしまいました。
AさんとBさんは共に殺人罪の容疑で京都府宮津警察署に逮捕されたのですが、AさんとしてはBさんと一緒に喧嘩をしていただけで、自分にVさんを殺すつもりはなかったと困っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分も殺人罪になってしまうのか相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・殺人罪と傷害致死罪

殺人罪は、名前のとおり人を殺してしまった場合に成立する犯罪です。

刑法第199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

殺人罪が成立するには、殺人罪の故意=人を殺すという認識や意思を持って人を死なせることが求められます。
「殺してやる」と殺意をもって人を殴ったり刺したりして死なせてしまえば殺人罪が成立するということです。
では、例えば殴るだけにとどめるつもりだった(殺意はなかった)のに人を死なせてしまったような場合はどのような罪に問われるのかというと、傷害致死罪という犯罪が挙げられます。

刑法第205条(傷害致死罪)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

傷害致死罪は、簡単に言えば「殺すつもりはなかったが死なせてしまった」といった場合に成立する犯罪で、暴行罪や傷害罪の延長線上にある犯罪ともいえます。
殺人罪の故意はなかったものの、人に対して暴行し怪我をさせたりして死なせてしまったような場合には傷害致死罪に問われることになります。

・共犯と「意思の連絡」

2人以上の人が一緒になって犯罪をすれば、いわゆる「共犯」となります。
このうち、「共同して犯罪を実行した」場合には「共同正犯」としてすべて正犯=自らがその犯罪をした者と同じ扱いとなります。

刑法第60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

つまり、共同正犯に当たる場合は、たとえ犯罪の一部しか実行していなかったとしてもその全部についての責任を負うことになります。
この原則を「一部実行全部責任の原則」といいます。

今回のケースについて考えてみましょう。
AさんとBさんは、一緒になってVさんに暴行を加えてVさんに怪我をさせ、最終的にはVさんを死亡させています。
共同正犯の考え方を踏まえれば、AさんとBさんは一緒にVさんに暴行をした上でVさんを殺してしまったわけですから、その一部を実行しているAさんは殺人罪の共同正犯となるかのように思われます。
しかし、AさんにはVさんを殺害する意思はなかったのにBさんが殺意をもってVさんをナイフで刺してしまったという事情もあります。
こうした場合にもAさんも殺人罪の共同正犯として扱われてしまうのでしょうか。

ここで問題となるのが、共同正犯が成立する際に必要だと考えられている「意思の連絡」という要素です。
共同正犯が成立するためには、「一緒にその犯罪を実行する」という意思をそれぞれが有していなければなりません。
これが「意思の連絡」と呼ばれるものです。
判例では、意思の連絡があって故意が異なる場合ではそれぞれの行為が該当する構成要件の重なる範囲でのみ共同正犯の成立が認められるとしています。

今回のケースで考えてみましょう。
AさんとBさんは、「Vさんに暴行を加える」ということについては共通の認識があったようです。
ですから、暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)といった範囲では「意思の連絡」があったと考えられます。
しかし、Vさんを死なせてしまった部分については、Aさんは殺意がなかったにもかかわらず、Bさんは殺意を持ってナイフでVさんを刺しているというずれが生じています。
つまり、AさんとBさんは、「Vさんへ暴行を加える」という範囲では重なり合っているものの、殺意の有無=殺人罪の故意の有無に違いがあるという状態なのです。
ですから、AさんとBさんはそれぞれの行為が該当する構成要件の重なる範囲でのみ共同正犯が成立することになります。
すなわち、AさんはVさんを殺すつもりはなかったがBさんと一緒にしていた暴行(ナイフで刺すという行為自体は暴行に含まれます。)によってVさんを死なせてしまったという状況のため、「身体を傷害し、よって人を死亡させた」という傷害致死罪の範囲で共同正犯となると考えられます。
対して、殺意をもってVさんを死なせたBさんは「人を殺した」という殺人罪が成立するということになると考えられます。

共犯者のいる刑事事件では、今回取り上げた「意思の連絡」の問題など、専門的な部分で様々な検討が必要となります。
共同正犯となるかどうかによって刑罰の重さが大きく異なることもあるため、十分な検討と対応が必要ですが、刑事事件の知識や経験がなければそれも困難です。
だからこそ、弁護士に相談・依頼することが大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事手続きや容疑をかけられている犯罪について丁寧に解説・アドバイスを行います。
まずはお気軽にご相談ください。