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【事例紹介】息子の知人を装い、高齢女性から現金をだまし取ったとされる事件

2023-12-10

【事例紹介】息子の知人を装い、高齢女性から現金をだまし取ったとされる事件

特殊詐欺事件の新聞記事

息子の知人を装い、高齢女性から現金をだまし取ったとされる事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

高齢者から多額の現金をだまし取ったとして、京都府警組対2課と東山署は11月28日、詐欺の疑いで、(中略)再逮捕した。府警は約20人でつくる特殊詐欺グループの首謀者とみている。
再逮捕容疑は、氏名不詳者らと共謀し、昨年12月16日、三重県鈴鹿市の女性(79)宅に息子や医師を名乗り「カードをなくし、至急現金が必要」「息子さんが喉のがんになった」などとうその電話をかけて200万円を詐取。同様の手口で同17日、京都市上京区の女性(81)から140万円をだまし取った疑い。「一切関わっていない」と容疑を否認しているという。(後略)

(11月28日 京都新聞「 『息子ががん』と高齢女性にうその電話、現金だまし取る 詐欺容疑で暴力団員を再逮捕」より引用)

詐欺罪とは

刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

「人を欺いて財物を交付させた」というのは、①被害者を欺いて(欺罔行為)、②それにより被害者が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて被害者が処分行為を行い、④その処分行為により財物が行為者に移転する、ということを意味します。

欺罔行為とは?

人をだます行為がすべて、詐欺罪となりうる欺罔行為となるわけではありません。
詐欺罪となりうる欺罔行為とは、財物の交付に向けて人を錯誤に陥らせることをいい、その内容は財物の交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることであるとされています。
例えば、機械は錯誤に陥りませんから、他人のキャッシュカードを使ってATMからお金を引き出す行為は欺罔行為とならず、詐欺罪が成立することはありません。

本件報道によると、容疑者は氏名不詳者等と共謀し、被害者にうその電話をかけて金銭をだまし取ったとされています。
仮に被害者をだまして錯誤に陥らせることで金銭を交付させようとして、うその電話を掛けたのであれば、詐欺罪が規定する欺罔行為があったとし判断される可能性があります。

処分行為とは?

上述の通り、詐欺罪が成立するためには、欺罔行為により錯誤に陥った被害者が、錯誤に基づいて処分行為を行い、その処分行為により財物が加害者に移転する必要があります。
詐欺罪における処分行為とは、錯誤による瑕疵ある意思に基づいて財物を終局的に相手方に移転する行為のことをいいます。
例えば、試着した服を着て逃走する意図を有していた者に対して、店員がした試着の許可は、処分行為とはいえません。
店内で試着を許可するだけでは、店員の意思によって服を終局的に相手方に移転したとはいえないからです。

本件では詳細は不明ですが、金銭を被害者からだまし取ったとされています。
仮に、被害者宅にまでやってきた容疑者等に対し現金を手渡ししたのであれば、処分行為があったとして詐欺罪が成立する可能性があります。
一度金銭を加害者に渡した場合、簡単にその場から離れて持ち逃げすることができ、被害者が保持したり取り返すことは困難なため、金銭を終局的に加害者に移転したと評価される可能性があるためです。

なるべく早く弁護士に相談を

詐欺罪のように被害者のいる犯罪では、被害者との間で示談を成立させることが重要となります。
というとのは、早期に示談が成立していれば不起訴となる可能性がありますし、起訴後に示談が成立した場合でも、罪の減軽や執行猶予付判決が得られる可能性があるからです。

もっとも加害者が独力で示談交渉をすすめることは通常困難です。
詐欺罪の嫌疑がかけられた場合、本件のように逮捕されることが多く、逮捕された状態で示談交渉を進めることは非常に困難です。
逮捕されずに在宅で捜査が行われる場合でも、被害者は自分をだました相手に強い処罰感情を有している可能性が高いですから、直接接触しようとしても交渉のテーブルに着くこと自体拒絶されかねません。

そこで、示談交渉は交渉のプロである弁護士に一任することをおすすめします。
直接加害者とやり取りすることに抵抗を感じる被害者でも、弁護士が相手であれば、示談交渉に応じてくれることは少なくありません。

弁護士弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、詐欺事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分や罪の減軽、執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】生後10か月の息子を暴行してケガを負わせた事件

2023-12-08

【事例紹介】生後10か月の息子を暴行してケガを負わせた事件

児童虐待

生後10か月の次男を暴行して意識不明となるケガを負わせた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

(前略)生後10カ月の次男に暴行し意識不明となるけがを負わせたとして傷害の疑いで、(中略)容疑者(28)を逮捕した。
容疑を認めており、県警は動機や、日常的に虐待がなかったかどうかを調べる。
逮捕容疑は11月30日午前、自宅で次男(中略)の頭をソファの肘かけに打ち付け、急性硬膜下血腫のけがを負わせた疑い。
(後略)

(12月1日 京都新聞「息子に障害疑い、28歳父親逮捕」より引用)

傷害罪とは

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪の行為は、人の身体を「傷害」することです。
判例によれば、傷害とは人の生理的機能に障害を加えることです(大判明治45年6月20日)
殴るなどして出血させたような外傷のある場合だけでなく、失神させたり、感染症にかからせる行為も傷害にあたります。

本件では、容疑者は、次男の頭をソファの肘かけに打ち付けて急性硬膜下血腫のケガを負わせたとされています。
急性硬膜下血腫とは、頭蓋骨の下にある硬膜と脳の間に出血が起こり、そこに出血した血液が急速にたまることいいます。
脳に損傷を与える可能性が高く、意識障害や記憶障害、身体の麻痺などの後遺障害を引き起こすおそれがあります。
本件報道のとおりであれば、次男は急性硬膜下血種を起こし意識不明の状態になったようですから、容疑者の行為は次男の生理的機能に障害を加えたものとして、傷害罪が成立する可能性があります。

逮捕されたらいつ家に帰れるの?

逮捕された場合、72時間以内勾留されるかどうかの判断が下されます。
勾留とは、逮捕に続く身体拘束であり、10日間に及ぶ上、場合によってさらに延長されることさえあります。
このように身体拘束期間が長引いた場合、学生の場合は学校に行けなくなり、社会人の場合には仕事に行くことができなくなってしまいます。
結果、犯罪の嫌疑がかけられていることが知られてしまい、退学解雇される可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

早い段階で弁護士に依頼した場合、早期釈放のための活動を適時に行うことができます。
釈放の判断材料として、弁護士が検察官や裁判官に意見書を提出することで、釈放が認められることがあります。
この意見書逮捕後72時間以内に提出する必要がありますから、時間との勝負となります。
可能な限り早い段階で一度弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までお電話ください。
お電話は、0120‐631‐881におかけください。

タバコを注意され逆上した男性が相手の自転車を破壊した事件

2023-12-06

タバコを注意され逆上した男性が相手の自転車を破壊した事件

ハンマーを振りかざす男性

タバコを注意され逆上した男性が、相手の自転車を蹴って壊した事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

京都市左京区にあるマンションの駐輪場でタバコを吸っていた住人(56)が、同マンションに住む大学生に喫煙を注意されて大声で激怒し、同大学生の自転車を蹴って前輪のホイールを変形させた。
加害者の住人は、騒ぎに気づいた周辺の住民からの通報でやってきた京都府下鴨警察署の警察官に器物損壊罪の容疑で現行犯逮捕された。
(事例はフィクションです。)

器物損壊罪とは

器物損壊罪を規定する刑法261条は、「他人の物を損壊し、または傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する」としています。
まず、ここでいう「他人の物」に公用文書、私用文書、建造物又は艦船は含まれません。
これらのものを壊すなどして使えなくした場合には、器物損壊罪ではない別の犯罪が成立します(刑法258条〜260条)。

次に、「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為のことを言います。
物理的にものを壊して使えなくさせる行為はもちろん、食器に尿をかける行為のように心理的に物を使えなくさせる行為も含まれます(大判明治42年4月16日)。

本件では、加害者は被害者の自転車を蹴って前輪を変形させたとされています。
前提として、自転車は公用文書等ではありませんから器物損壊罪の対象だと言えます。
自転車の前輪が変形した場合、前輪を左右から挟み込んでいるフロントフォークに引っかかり前に進めなくなったり、進めたとしても真っ直ぐ進めなくなります。
したがって、加害者が自転車を蹴った行為は、自転車を本来の用途通りに使えなくさせる行為、すなわち自転車を損壊する行為であり、器物損壊罪が成立する可能性があります。

親告罪とは

器物損壊罪は、親告罪といって、告訴がなければ起訴されない犯罪です(刑法264条)。
告訴とは、被害者をはじめとする告訴権者が捜査機関に対して、犯罪にあったことを申し出て犯罪者の処罰を求めるための手続きです。
被害届という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
被害届は、犯罪にあったことを捜査機関に申し出る点で告訴と共通しますが、犯人の処罰を求めているということまで意味するものではない点などで異なります。
本件では、被害にあった大学生が告訴をしない限り検察官は起訴することができないこととなります。

なるべく早く弁護士に相談を

起訴されなかった場合、有罪となることも前科がつくこともありません
したがって、器物損壊罪を犯してしまった場合、告訴されるかどうかが非常に大きな意味を持ちます。
仮に、一度告訴されたとしても、起訴される前に被害者が告訴を取り下げてくれれば、やはり検察官は起訴することができなくなります。
したがって、器物損壊罪を犯してしまった場合、被害者に謝罪や被害弁償をして告訴をしないように、仮にすでにされていた場合は取り下げてもらうようにお願いする必要があります。

もっとも、加害者本人が直接被害者側とこのような示談交渉をするのは望ましくありません。
被害者は通常、加害者に対して強い処罰感情を有していることが想像されますから、示談交渉に応じてもらえない可能性が高いです。
仮に、応じてもらえたとしても、相場より高い被害弁償の額を要求され、折り合いがつかず交渉が決裂し告訴される可能性もあります。

そこで、示談交渉のプロである弁護士にお任せすることをおすすめします。
第三者的立場から弁護士が被害者と交渉をすることで、被害者が感情的になり生産的でない言動をすることを避けることができるかもしれません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
逮捕前であれば、初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣させていただきます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
詳しくは0120-631-881までお電話ください。

【事例紹介】捜査先の民家から現金を盗んだ疑いで警部補を起訴

2023-12-03

【事例紹介】捜査先の民家から現金を盗んだ疑いで警部補を起訴

窃盗や強盗で手に入れたお金

事案

京都府警の警察官が職務で訪れた民家から現金を盗んだとされる事件で、京都地検は24日、窃盗の罪で、城陽市、府警捜査2課警部補(57)を起訴した。(後略)

(11月24日京都新聞「職務で訪れた民家から現金窃盗容疑 京都府警の警部補を起訴」より引用)

窃盗罪とは

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することを言います。
占有が認められるのは、客観的要件としての財物に対する事実的支配(客観的支配)と、主観的要件として財物に対する支配意思が必要です。
例えば、自宅で使っているデスクトップPCは、自宅という限られた人しか入れない閉鎖的な支配領域内にあるため、強い客観的支配が認められます。また、普段使っているのであれば、このデスクトップPCは自分の物だという支配意思も強いと言えるでしょうから、家主に占有が認められます。

本件報道によれば、容疑者である警察官は、民家に置いてあった現金を持ち出したようです。
現金は、民家の中に置いてあったようなので、上述のように家主には当該現金に対して強い客観的支配が認められます。
家主が当該現金のことをはっきり認識していた場合はもちろん、仮に当該現金の所在を忘れていたとしても、自宅内にあるわけですので当該現金を支配する抽象的な意思があったと言えます。
したがって、家主は当該現金を占有していたといえそうです。

そして、容疑者は当該現金を持ち出したようです。
被害者に無断で持ち出したのであれば、占有者である被害者の意思に反して自己の占有に移転したとして、窃盗罪が成立する可能性があります。

犯行時の内心

窃盗罪故意犯、すなわち自らの行為が犯罪であることをわかった上で行うと成立する犯罪です。
窃盗罪の場合、故意の内容は、他人の財物を窃取することを認識・認容していたことです。

このほかに、窃盗罪が成立するには不法領得の意思が必要であると解されています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用しまたは処分する意思」とされています(最判昭和26年7月13日)。
権利者を排除し他人の物を自己の所有物として振る舞う意思を権利者排除意思といい、経済的用法に従いこれを利用し処分する意思を利用処分意思と言います。

まず、権利者排除意思は、刑罰を科されない使用窃盗窃盗を区別するための概念です。
使用窃盗とは、他人の財物を無断で一時的に使用することであり、被害者の被る被害が軽微であることから不可罰とされています。
本件では、容疑者は現金を持ち出して返すつもりはなかったようですし、被害者が被る被害は軽微とは言えないでしょうから、権利者排除意思を認めてよいと思われます。

次に、利用処分意思は、毀棄・隠匿の罪と区別するために必要な概念です。
毀棄・隠匿の罪は、物を壊したり隠したりすることで利用を妨げる罪です。
現金の場合、利用処分意思が認められる代表例は、何かの購入代金として使おう思って現金を窃取した場合です。
本件報道では、そのあたりの情報は不明ですが、仮に民家から持ち出した現金を使って何かを購入等していた場合、利用処分意思があったと評価され、窃盗罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

本件では、容疑者は逮捕起訴されています。
逮捕は、容疑者が逃亡したり、証拠を隠滅したりする恐れがある場合にされる身体拘束で、逮捕中は、単に身体拘束されるだけでなく、捜査機関からの取調べが行われます。
取調べの結果は、調書として文書化されサインするよう求められます。
サインされた調書は、裁判が始まった際に証拠として用いられることがありますから、取調べ前に何をどのように供述するのか、しっかり考えておく必要があります。
もっとも、法律に詳しくない一般の方にとって、どのように受け答えするのが適切か判断することは困難です。
また、逮捕されたショックや不安の中、捜査機関から言われるがまま不利な供述の書かれた調書にサインしてしまうことがあります。

そこで、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
法律のプロである弁護士であれば、事件の内容を踏まえて取調べでどのように受け答えすれば良いのかアドバイスすることができますし、逮捕された不安を軽減して落ち着いて取調べに対応できる可能性が高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
逮捕前であれば、初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣する初回接見サービスをご利用できます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回無料法律相談初回接見サービスをご希望の方は、0120-631-881までお電話ください。

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件②

2023-12-01

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件②

人を刺そうとしている人の影

前回のコラムに引き続き、センター職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
今回のコラムでは、裁判員裁判について解説します。
殺人未遂罪については前回のコラムで解説していますので、殺人未遂罪に興味のある方は、前回のコラムをご覧ください。

事案

(前略)京都府警右京署によると、同日午前7時50分ごろ、同センターの男性職員(65)=西京区=が同僚の男にサバイバルナイフで左脇腹を刺されて重傷を負い、救急搬送された。同署は殺人未遂の疑いで、下京区小稲荷町、同センター職員の男(59)を緊急逮捕した。
(中略)「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認している。

(11月16日京都新聞「ごみ処理場の男性職員が同僚に刺され重傷 殺人未遂の疑いで緊急逮捕」より引用)

裁判員裁判って?

本件報道によると、容疑者は殺人未遂罪の疑いで逮捕されているとのことです。
仮にこのまま殺人未遂罪で起訴された場合、原則として裁判員裁判となります。

裁判員裁判では、国民の中から選ばれた裁判員6人が裁判官3人とともに、被告人が有罪かどうか、有罪の場合にはどのような刑にするのか決める制度です。
このような国民が裁判に参加する制度は、アメリカやフランスなど欧米でも行われており、司法に対する国民の信頼向上につながることが期待されています。

裁判員裁判になるのはどのような事件?

起訴された刑事事件の全てが裁判員裁判となるわけではありません。
裁判員裁判の対象事件は、①死刑又は無期の懲役・禁固にあたる事件もしくは②法定合議事件(裁判所法26条2項2号)のうち故意の犯罪行為によって被害者を死亡させた事件です(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項)。

具体的には、殺人罪現住建造物等放火罪傷害致死罪保護責任者遺棄致死罪など、国民の関心が高い重大な事件がこれに該当します。
ですので、本件容疑者が殺人未遂罪で起訴された場合には、原則として裁判員裁判によって裁かれることになります。

裁判員裁判に詳しい弁護士に相談を

上述のように、裁判員裁判では普通の国民が裁判員として審理に加わります。
裁判員は法律の専門家ではないため、専門用語を多用するのではなく、裁判員に向けてわかりやすく丁寧な説明をすることが必要不可欠です。

また、裁判員裁判では、裁判員がいることを踏まえて迅速な裁判の実現のため通常の刑事裁判とは手続きが異なる部分があります。

裁判員裁判の参加する刑事裁判に関する法律49条では、「裁判所は、対象事件については、第一回の公判期日前に、これを公判前整理手続に付さなければならない。」と規定しており、裁判員裁判が行われる場合には、公判前整理手続を行う必要があります。
公判前整理手続では、犯罪にあたる行為や罪名の明確化、争点や重要となる証拠の整理などが行われます。
公判前整理手続後に新たに証拠を提出することは原則できなくなりますので、公判前整理手続で、有利になるような証拠を集め証拠請求をする必要があります。
万が一、公判前整理手続で十分な証拠を得られない状態に陥ってしまいますと、裁判員裁判で窮地に立たされる可能性が非常に高いです。
そういった事態をさけるためにも、刑事事件に精通した弁護士に相談をすることが望ましいといえます。

加えて、裁判員裁判では、裁判官と裁判員の双方の意見を含む過半数の意見により決まります(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律67条1項)。
ですので、少しでも科される罪を軽くするためには、裁判官だけでなく、裁判員に対するアピールも必要になってきます。
先ほども述べましたが、裁判員は国民から選ばれた一般人ですので、法律の専門的な知識に触れたことがない方がほとんどだと思います。
そういった裁判員の方にも弁護士の主張を認めてもらうためには、わかりやすい弁論を行う必要があります。

公判前整理手続や弁論の仕方に工夫が必要など、裁判員裁判は通常の刑事裁判と比べて、非常に特殊ですので、裁判員裁判が控えている方は、裁判員裁判に詳しい経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
刑事事件に詳しい弁護士に依頼し、スピーディな裁判員裁判の手続を踏まえた弁護活動を行うことで、少しでも良い結果を得られるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は0120-631-881にて受け付けております。

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件①

2023-11-29

【事例紹介】ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪で逮捕された事件①

人を刺そうとしている人の影

ゴミ処理場の職員が同僚を刺したとして殺人未遂罪の容疑で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

(前略)京都府警右京署によると、同日午前7時50分ごろ、同センターの男性職員(65)=西京区=が同僚の男にサバイバルナイフで左脇腹を刺されて重傷を負い、救急搬送された。同署は殺人未遂の疑いで、下京区小稲荷町、同センター職員の男(59)を緊急逮捕した。
(中略)「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認している。

(11月16日京都新聞「ごみ処理場の男性職員が同僚に刺され重傷 殺人未遂の疑いで緊急逮捕」より引用)

殺人未遂罪

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

大まかに説明すると、殺人罪は人を殺した場合に成立する犯罪です。
ただ、人を殺せば必ずしも殺人罪が成立するわけではなく、殺人の故意がある場合にのみ成立します。
殺人罪の故意とは、簡単に言えば、人を殺そうとする意志です。
例えば、交通事故で人を死亡させてしまった場合、加害者は被害者を殺そうと思って事故を起こしたわけではないでしょうから、殺人罪ではなく過失運転致死罪などの別の罪が成立することになります。
一方で、殺す意思をもって車で人を轢き殺した場合には、故意が認められますから、殺人罪が成立することになります。

また、殺人罪未遂であっても罰せられます(刑法第203条)ので、殺す意思を持って人に危害を加えた結果、その人が死に至らなかった場合でも殺人未遂罪として罰せられることになります。

本件では、容疑者が同僚の左脇腹をサバイバルナイフで刺し、殺人未遂罪の容疑で逮捕されたようです。
本件の容疑者は「殺してやろうと思って刺したのではない」と容疑を否認していると報道されていますが、容疑者に被害者を殺そうとする意志があったかどうかは、どのように判断するのでしょうか。

繰り返しになりますが、殺人罪殺人未遂罪が成立するためには、人を殺そうとする意志が必要です。
ですが、加害者が人を殺そうと思って危害を加えたのかについては、加害者以外知りようがないことです。
であれば、加害者が殺す意思を持っていたかどうかは加害者にしか判断できず、加害者が殺す意思はなかったと容疑を否認すれば、故意がないことを否定できませんから、殺人罪は成立しないことになってしまいます。

ですので、殺す意思があったかどうかについては、加害者の供述以外にも、動機や凶器の有無、危害を加えた箇所や回数、加えた力の強さなど客観的な部分も含めて総合的に判断されます。
例えば、ハンマーで人の頭を数十回殴って殺してしまった場合に、殺すつもりはなかったと、殺す意思を否定した場合であっても、ハンマーで頭を数十回殴れば人が死ぬことは誰でもわかることですから、殺す意思があったとして殺人罪が成立する可能性が高いです。

本件では、容疑者が被害者の脇腹をサバイバルナイフで刺したとされています。
腹部には重要な臓器が多数ありますし、サバイバルナイフであれば1度刺されただけでも致命傷を負いかねません。
ですので、本件では、殺す意思があったと判断され殺人未遂罪が成立するおそれがあります。
また、殺す意思があったかどうかについては、様々な観点から複合的に判断されますので、本件も含め、ナイフで腹部を刺した場合でも殺人罪殺人未遂罪は成立せず、傷害罪傷害致死罪にとどまる可能性もあります。

殺人罪と釈放

殺人罪殺人未遂罪は、他の犯罪と比べて科される量刑が重くなる可能性が高いため、逃亡のおそれがあるとして釈放や保釈が認められづらい犯罪です。

刑事事件では、逮捕されてから72時間以内に、検察官が勾留請求をする必要があるかを判断します。
勾留請求が必要だと判断された場合には、検察官によって勾留請求がなされ、裁判官が勾留の判断を行います。
弁護士には検察官が勾留請求を行う前と裁判官が勾留の判断を行う前の計2回、勾留請求に対する意見書を提出する機会、すなわち釈放を求める機会があります。
この2回の機会を失ってしまうと、勾留満期である勾留決定後10日までに釈放を求めることができるのは勾留決定後に行う裁判所への準抗告の申し立ての1回のみになってしまいます。

勾留満期を迎える際には、一度だけ勾留期間10日間延長することができます。
この際にも弁護士は勾留延長請求に対する意見書を検察官や裁判官に提出することで、釈放を求めることができますし、勾留延長が決定した後に準抗告を申し立てることが可能です。

また、釈放されずに起訴された場合には、裁判所に対して保釈請求を行うことになります。
保釈の場合には、勾留中釈放とは異なり、保釈金を納める必要があります。
保釈が認められた後に保釈金を納めることで、身体拘束が解かれることになります。

先ほども述べたように、殺人罪殺人未遂罪の場合は釈放が認められづらく、一度も釈放保釈がされないまま裁判に突入してしまう可能性が高いです。
釈放保釈が認められづらいとはいえ、必ずしも釈放保釈が認められないわけではありません。
弁護士が釈放保釈の必要性、家族の監督により逃亡のおそれがないことを訴えることで、釈放保釈が認められる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
弁護士に相談をすることで釈放保釈を実現できる可能性がありますので、ご家族が逮捕された方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービスのご予約は、0120-631-881までご連絡くださいませ。

3歳男児を浴槽に放置し溺死させた容疑で保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件

2023-11-26

3歳男児を浴槽に放置し溺死させた容疑で保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件

3歳男児を浴槽に放置し溺死させた容疑で保護責任者遺棄致死罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

交際相手の息子を浴槽に放置して溺死させたとして、京都府警宇治署は30日、保護責任者遺棄致死の疑いで、宇治市の建設業の男(29)を逮捕した。
逮捕容疑は30日未明、男の自宅浴室で、交際相手の女性の長男(3)と入浴した際、湯が張られた浴槽内で男児を放置したまま立ち去り、溺死させた疑い。
同署によると、男は、入浴していた男児が玩具を欲しがり、取りに浴室から約20分間離れ、見つからずに戻ったところ、男児がうつぶせで溺れていたと話している。(中略)男は「間違いない」と容疑を認めているという。

(京都新聞7月31日「3歳男児を浴槽に放置し溺死させた疑い」より引用)

保護責任者遺棄致死罪とは

保護責任者遺棄致死罪(刑法219条)とは、保護責任者遺棄罪を犯した結果、意図せず被害者を死亡させてしまった場合に成立する犯罪です。
保護責任者遺棄罪は、218条に規定されています。

刑法218条
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

保護責任者遺棄罪は、客体と主体が限定されています。
まず、客体は「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」です。
幼年者が何歳までを指すのか明確ではないですが、旧刑法336条1項は8歳未満と規定しており、裁判例を見ると2歳から14歳までの実子4人を家に置き去りにした事案で遺棄罪の成立を認めたものがあります(東京地裁昭和63年10月26日)。
本件報道では、死亡した被害者は3歳とのことですから、幼年者にあたると言えるでしょう。

次に主体は「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者」です。
「保護する責任」はどのような場合に発生するのでしょうか?
通説や判例では、法律契約条理などが保護責任が生じる根拠としてが挙げられます。
例えば、幼児の世話をしている親は保護責任者に該当しますし、実の親でなくとも子供の世話を依頼しているベビーシッターなども保護責任者にあたります。

本件では、容疑者が交際相手の3歳の息子を浴槽に放置したとされています。
本件の容疑者は保護責任者に該当するのでしょうか。

先ほども述べたように、通説や判例では、法律契約条理などの観点から保護責任の有無を判断します。
法律は民法などの法律で規定されているものを指します。
例えば民法第730条では、直系親族は互いに扶け合わなければならないと定めていますので、親は子供について保護責任があると解すことができます。
契約については、委任契約などが当たりますので、ベビーシッターなど子供の世話を委任する契約を結んだ場合には、ベビーシッターにも保護責任があると考えられます。
次に条理ですが、これは社会通念などを指します。
ですので、世間一般的に見て保護責任があると認められるような状況であれば保護責任が認められることになります。
例えば、交際相手の連れ子の面倒を頻繁に見ていた場合、実子や契約に基づいた関係でなくとも、他所から見ると保護責任があるように映るでしょうから、連れ子の場合でも保護責任があると考えられます。

本件報道では、容疑者は3歳の交際相手の息子との入浴途中に当該被害男児を放置して、自分だけ外に出たとされているようです。
報道から察するに、容疑者は被害男児をお風呂にいれていたようですので、被害男児の世話をしていたと解されます。
条理の観点からみて、被害男児の世話をしていたと考えられる容疑者は保護責任者に該当する可能性があります。

「遺棄」とは

保護責任者遺棄罪の行為は「遺棄」「不保護」です。
両者の違いは、主体と客体との間に場所的離隔が生じるものかどうかで区別されます。
場所的離隔を要する遺棄は、さらに移置置き去りに分類されます。
移置とは、要扶助者を危険な場所に移転させることをいい、置き去りは行為者が離れていき要扶助者を危険な場所に放置することを言います。
不保護とは、間近にいて世話をしないことです。

本件報道によりますと、容疑者は入浴中に、3歳の被害男児を湯が張られた浴槽内に放置して一人だけ浴室の外に出て行ったようです。
浴槽にどれくらいのお湯が張られていたのかはわかりませんが、3歳の子供では少量のお湯でも溺れる可能性は十分にあります。
1分目を離しただけでもその間に浴槽で溺れてしまうおそれもあり、大人の目がない場所で子供を浴槽に放置する行為は子供の命を脅かす可能性がある危険な行為だといえます。
ですので、本件報道の、3歳の被害男児を浴槽に20分放置したとされている行為は「置き去り」、つまり「遺棄」に該当する可能性があります。

以上より、本件では保護責任者遺棄罪が成立する可能性があります。
そして、本件では遺棄の結果、被害男児は死亡しているとのことなので、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があります。

なるだけ早く弁護士にご相談を

保護責任者遺棄致死罪の罰則は、3年以上20年以下の有期懲役であり(刑法219条、218条、205条、12条1項)、非常に重たいです。
また、保護責任者遺棄致死罪が問題となる事件では、殺人の故意があると評価され保護責任者遺棄致死罪ではなく殺人罪が成立してしまう可能性があります。
殺人罪の法定刑は、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役です(刑法199条)。
殺人の故意がなかったのであれば、取調べ段階で警察官や検察官に対して、その旨をはっきり主張する必要があります。
もし、取調べ殺人の故意があったと受け取られかねない言動をしてしまった場合、それが証拠として用いられて殺人罪が成立してしまうかもしれません。

取調べでどのように対処するかによって、量刑だけでなく成立する犯罪まで変わってしまう可能性がありますから、取調べ前に何をどのように話すか精査する必要があります。
もっとも法律の知識がない人にとって、何をどう話すか精査することは非常に困難です。
そこで、法律のプロである弁護士になるべく早く相談することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
経験豊富な弁護士になるべく早い段階で会うことで、今後の見通しや取調べに対して的確なアドバイスを受けることができます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談のご予約は0120―631―881にて受け付けております。

【事例紹介】ウェブスキミングによりクレジットカード情報を不正取得し逮捕された事例

2023-11-24

【事例紹介】ウェブスキミングによりクレジットカード情報を不正取得し逮捕された事例

サイバー犯罪をする男性

ウェブスキミングによりミュージシャンの公式サイトからクレジットカードの情報を不正取得したとして、不正指令電磁的記録供用罪割賦販売法違反の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

ミュージシャンの公式サイトに不正なプログラムを仕組み、商品を通販で購入しようとした利用者のクレジットカード情報を盗み取ったとして、京都府警サイバー捜査課と奈良県警などは11月15日、不正指令電磁的記録供用と割賦販売法違反の疑いで、埼玉県草加市、無職の男(26)を逮捕した。サイトに不正なプログラムを仕掛けて利用者のカード番号を盗み出す行為は「ウェブスキミング」と呼ばれ、府警によると、摘発は全国初という。
逮捕容疑は、(中略)ミュージシャンの公式サイトにあるオンライン決済ページに不正なプログラムを仕組み、商品を通販で購入しようとした京都市下京区の50代男性ら3人のカード情報を盗み取った疑い。「興味本位でサイトに不正プログラムを設置し、他人のカード情報を盗んだ」と容疑を認めている。
府警によると、サイト利用者が商品の購入手続きに必要なカード番号や名前などの個人情報を入力すると不正なプログラムが作動し、男が個人情報を取得していたという。府警はサイバーパトロールで事件を把握し、捜査していた。
(後略)

(11月15日 京都新聞 「グッズ販売サイトからクレカ情報盗んだ疑い 全国初摘発、公式サイトに不正仕掛ける「ウェブスキミング」」より引用)

不正指令電磁的記録供用罪

刑法第168条の2
1項 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録
2号 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録
2項 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。

不正指令電磁的記録供用罪とは、正当な理由がないのに、他人の電子計算機(パソコンなど)で使用者の意図に沿う動作をさせずに、または、意図に反する動作をさせるような不正な指令を実行できる状態にした場合に成立します。
例えば、他人のパソコンやスマートフォンにその人の許可なく、パソコンやスマートフォン内のデータが消えるようなウイルスを仕込んだ場合には、電子計算機(パソコンやスマートフォン)に不正な指令(データを消去するという電子計算機の使用者の意図とは違う指令)を実行するウイルスを仕込んでいる(データを消去するという不正な指令を実行できるような状態にしている)といえるので、不正指令電磁的記録供用罪は成立します。

今回の事例では、不正指令電磁的記録供用罪は成立するのでしょうか。

報道によると、容疑者はとあるミュージシャンの公式サイト上のオンライン決済ページに、サイト利用者がクレジットカード番号などを入力すると容疑者のもとに入力された内容が送信されるような不正なプログラムを仕込んだとされています。
報道だけでは手口は明らかではありませんが、ウェブページ不正なプログラムを仕込む方法として、不正なプログラムをミュージシャンの公式サイトを構成するサーバーコンピューター内に組み込む手口が考えられます。
この手口の場合には、クレジットカード番号などの個人情報を第三者に送信するという意図しない動作をするように、電子計算機ウェブサイトを構成するサーバーコンピューター)に不正な指令を送り込んでいる(ウェブサイトを使用することで不正な指令を実行できるような状態にしている)ことになります。
ですので、実際に容疑者が不正なプログラムウェブサイトに仕込み情報を得ていたのであれば、不正指令電磁的記録供用罪が成立する可能性があります。

クレジット番号の不正取得

クレジットカードを利用する販売方法などを割賦販売といいます。
割賦販売法では、クレジットカードに関する事項が定められており、クレジットカード番号不正取得についても規定されています。

割賦販売法第49条の2
1項 クレジットカード番号等取扱業者若しくはクレジットカード番号等取扱受託業者又はこれらの役員若しくは職員若しくはこれらの職にあつた者が、その業務に関して知り得たクレジットカード番号等を自己若しくは第三者の不正な利益を図る目的で、提供し、又は盗用したときは、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
2項 人を欺いてクレジットカード番号等を提供させた者も、前項と同様とする。クレジットカード番号等を次の各号のいずれかに掲げる方法で取得した者も、同様とする。
1号 クレジットカード番号等が記載され、又は記録された人の管理に係る書面又は記録媒体の記載又は記録について、その承諾を得ずにその複製を作成すること。
2号 不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)を行うこと。

割賦販売法第49条の2第2項第2号では、不正アクセス行為によりクレジットカード番号等の情報を入手することを禁止しており、これに反した場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることになります。

今回の事例では、容疑者がミュージシャンの公式サイトに不正なプログラムを仕込んでクレジットカードの情報を不正取得したとされています。
実際に容疑者が不正なプログラムを公式サイトに仕込んだのであれば、そのウェブページを構成するプログラム不正アクセスしたことになりますので、不正アクセスによりクレジットカードの情報を入手したことになります。
ですので、今回の事例では、不正指令電磁的記録供用罪だけでなく、割賦販売法違反も成立するおそれがあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
不正指令電磁的記録供用罪割賦販売法違反などでお困りの方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
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【事例紹介】不法就労をあっせんしたとして逮捕された事例

2023-11-22

【事例紹介】不法就労をあっせんしたとして逮捕された事例

警察官に逮捕、連行される男性の画像

不法就労あっせんしたとして、入管難民法違反(出入国管理及び難民認定法違反)の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警組対1課と下鴨署は(中略)、入管難民法違反(不法就労あっせん)などの容疑で、コンサルティング会社役員の男(中略)、ベトナム国籍の人材派遣会社役員の女(中略)ら計3人を逮捕した。
3人の逮捕容疑は、(中略)ベトナム国籍の20代女性2人を、在留資格で認められていない仕事をさせる目的で京都市左京区の飲食店にあっせんした疑い。

(11月17日 京都新聞 「ベトナム人の20代女性2人に不法就労あっせん 容疑で男女3人逮捕」より引用)

在留外国人と不法就労

外国人が日本に在留するためには、原則として、上陸許可や在留資格が必要になります。(出入国管理及び難民認定法(以下では、「入管難民法」といいます。)第2条の2第1項)
在留資格を取得していれば自由に就労することができるわけではなく、取得した在留資格によって就ける職種などが限定されています。(入管難民法第19条第1項)
ですので、取得している在留資格で許可されていない仕事を行った場合には、不法就労になってしまいます。
例えば、「法律・会計業務」在留資格を持っている人が、弁護士の職に就くことは可能ですが、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を必要とする通訳の職に就くことはできませんし、もしも通訳人として報酬を得ていたのであれば、不法就労になってしまいます。

今回の事例では、ベトナム国籍の女性2人を在留資格で認められていない仕事をさせる目的で飲食店あっせんしたとされています。
飲食店で働くのに必要な在留資格とはなんでしょうか。

厚生労働省によると、外食業などの特定産業分野の各業務従業者は、特定技能在留資格が必要だとしています。
今回の事例の報道だけでは、実際にどのような仕事だったのか明らかではないため、一概に特定技能在留資格が必要だったとはいえませんが、あっせん先が飲食店であることから、特定技能在留資格が必要だった可能性があります。
その場合には、特定技能以外の在留資格を所持していた場合には、不法就労にあたりますので、入管難民法違反が成立する可能性があります。
また、特定技能以外の在留資格が必要な仕事であった場合にも、その仕事内容にあった在留資格を有していない場合には、当然、不法就労にあたりますので、入管難民法違反が成立するおそれがあります。

不法就労を行い、入管難民法違反で有罪になった場合には、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは200万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科されます。(入管難民法第73条)
また、不法就労に専念していたと判断される場合には、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科されます。(入管難民法第70条第1項第4号)

不法就労のあっせん

入管難民法では、業として外国人に不法就労をさせる行為のあっせん不法就労目的で自己の支配下へ置こうとしている者へのあっせんは禁止されています。
今回の事例の容疑者らが、上記の行為に該当するようなあっせんを行っていたのであれば、入管難民法違反が成立するおそれがあります。
あっせん行為により入管難民法違反で有罪になった場合には、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。(入管難民法第73条の2第1項)
また、過失のない場合を除いて、不法就労にあたることを知らなかった場合にも入管難民法違反は成立し、上記の刑罰を受けることになります。(入管難民法第73条の2第2項)

共犯と釈放

今回の事例では3人の容疑者が逮捕されています。
刑事事件では共犯が疑われる場合には、証拠隠滅の観点から、釈放が認められづらい場合が多いです。

証拠をイメージする場合には、犯行に使用した物など、いわゆる物的証拠を思い浮かべる方が多いと思います。
実は、刑事事件では、そういった物的証拠以外にも供述証拠と呼ばれるものが存在します。
供述証拠は、容疑者らの取り調べでの供述や、事件関係者の証言などの話した内容が証拠となります。
容疑者を釈放することで、容疑者らが連絡を取り合うことができるようになれば、容易に口裏合わせができてしまうことになります。
供述内容も証拠になりますから、口裏合わせにより、容疑者らの都合のいいように供述内容をすり合わせる行為は、証拠隠滅になってしまいます。
こういった事態を避けるためにも、共犯者がいるような事件では、釈放が認められづらくなっています。

しかし、共犯者がいれば絶対に釈放が認められないわけではありません。
例えば、弁護士が検察官や裁判官に働きかけを行うことで、釈放を認めてもらえる可能性があります。

刑事事件では、逮捕後72時間以内に、勾留の判断が行われます。
この勾留の判断前に、弁護士が検察官や裁判官に意見書を提出し証拠隠滅のおそれがないことを訴えることで、釈放される可能性があります。
また、勾留が決定してしまった後でも、弁護士は裁判所に準抗告の申し立てを行うことができます。
この申し立てが裁判所に認められれば、勾留満期を待たずに釈放されることになります。

勾留請求に対する意見書は、勾留が判断されるまでの間にしか提出できません。
ですので、遅くとも逮捕後72時間までには提出をする必要があります。
この機会を逃してしまうと、釈放を求める機会を3回のうち2回も逃してしまうことになります。
意見書の提出には入念な準備が必要になりますので、早期釈放を目指す場合には、早期に弁護士に相談をすることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービスを行っています。
ご家族が逮捕された方、釈放を目指している方は、お早めに、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

傷害罪で逮捕された家族と面会できないケース

2023-11-19

傷害罪で逮捕された家族と面会できないケース

警察に逮捕される男性

傷害罪の疑いで逮捕された家族と面会ができない場合にどうしたらいいのかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

京都市中京区に通勤する会社員のAさん(45)が、傷害罪の疑いで京都府下京警察署逮捕されました。
Aさんの逮捕容疑は、仕事帰りに何軒か居酒屋をはしごした後、京都駅近くのコンビニにおいて、通りすがりの男性と口論になり手に持っていたカバンで相手の顔面を殴打した疑いです。
Aさんの逮捕を知った家族は、すぐにAさんと面会したいと思い、京都府下京警察署に連絡しましたところ、「今は会うことはできない」と回答され途方にくれています。
Aさんのために何かできることはないのでしょうか?
(フィクションです。)

逮捕された家族との面会ができない場合の問題点

警察官の裁量によりご家族等が留置中のAさんと面会できる場合もありますが、基本的に逮捕直後の被疑者と家族・友人等は面会することができません。
逮捕に続く身体拘束である勾留が決定された後になって面会できるようになるケースもありますが(刑事訴訟法80条)、接見禁止決定がなされた場合には、ご家族等は面会はおろか手紙のやりとりや物品の受け渡しすら許されないことがあります(刑事訴訟法81条)。
接見禁止は、会社ぐるみの犯罪や暴力団組織関与事件、共犯者がいる事件などにおいて、事件関係者の中に逮捕者に影響を及ぼしうる者がいる場合に、自由な接見等を許すと証拠隠滅が行われる恐れがあるとして、証拠隠滅を防ぐために発せられます。

接見禁止が決定し、捜査関係者以外のものと面会することができない状態が続くと、逮捕されたAさん自身は不安が募るでしょう。
また、会社への連絡などAさんの判断が必要な身の回りの事柄についても対処しようがなくご家族も困ってしまう可能性が高いです。

弁護士なら逮捕された人と会うことができます

身柄を拘束されたご家族と面会できない場合には、弁護士に接見を依頼することをおすすめします。
というのは、弁護士であれば、逮捕直後接見禁止決定がなされているといった場合であっても、身体拘束を受けた被疑者と会うことができるからです(刑事訴訟法39条)。

どうやって弁護士に頼めばいいの?

刑事事件に精通した信頼できる弁護士が身近にいる場合、その弁護士に接見に行ってもらえばいいのですが、そうでない場合はどうしたら良いのでしょか?
ここでは、①弁護士会が実施する当番弁護士制度と、②各法律事務所が独自に用意している接見サービスをご紹介します。

①当番弁護士とは、被疑者が逮捕されてしまった場合において、一度だけ無料で接見を受けられる弁護士です。
被疑者本人だけでなく、その家族も依頼することができます。
被疑者の家族が依頼する場合には、弁護士会に連絡する必要があります。
被疑者本人が呼ぶ場合には、警察官や検察官、裁判官などに当番弁護士を呼ぶよう依頼すれば、呼んでもらうことができます。

国選弁護人という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
当番弁護士制度と国選弁護人制度は異なる制度です。
国選弁護人は、被疑者に対して勾留決定がなされ、資力要件を満たしている場合に、被疑者の請求によって、国が付ける弁護士です。
原則として弁護士費用がかからないのが特長ですが、前述の通り、勾留決定がなされた後に利用できる制度となるため、逮捕後ただちに弁護士の接見を実現したいという場合には、活用することができません。

②法律事務所が実施している接見サービスについて
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所などの法律事務所の中には、逮捕されてしまった方に弁護士を派遣する接見サービスを実施しているところがあります。
私選弁護人の選任を検討している場合には、通常、このようなサービスを利用することになるでしょう。
接見サービスの一環として、被疑者の様子や認否、逮捕されるに至った経緯を知るだけでなく、今後の進展についても説明してもらえることがあります。

また、逮捕されているご家族への伝言をお預かりすることができる場合もあります。
弁護士を通じて、逮捕されたご家族に伝言を伝えることで、少しでも不安を取り除けるかもしれません。

弊所では、初回接見サービス後に、別途委任契約を締結することで引き続き身柄解放活動や捜査・裁判対応などの弁護活動をスムーズに行うことができます。
また、接見禁止が付いていた場合では、弁護士が裁判所に対して、接見禁止の一部解除を求めることで、ご家族への面会が許可される場合があります。

なるだけ早く弁護士にご相談を

刑事事件を有利に解決するためには、早期に弁護活動へ着手することが極めて重要です。
弁護活動は、接見の際に被疑者本人から直接話を聞いて事件の詳細を知ることで効果的に開始することができます。
ご家族が逮捕されてしまった場合には、速やかに接見を行ってもらえる弁護士を探し出し、弁護活動を依頼することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、傷害罪などの暴力事件をはじめ刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
経験豊富な弁護士に早い段階で相談し、今後の見通しや取り調べに対するアドバイスを受けることで、ご本人の不安を軽減することができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

初回接見サービスのご予約は24時間365日0120‐631‐881にて受け付けております。

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