※2025年6月1日より、改正刑法に基づき懲役刑および禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されました。当ページでは法改正に基づき「拘禁刑」と表記していますが、旧制度や過去の事件に関連する場合は「懲役」「禁錮」の表現も含まれます。
1.人身事故・死亡事故を起こした場合に成立する犯罪は何ですか?
「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(自動車運転死傷行為処罰法)により処罰されます。
以前、交通事故を起こした場合に適用された犯罪は業務上過失致死罪(5年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金)のみでした。
しかし、酒酔い運転や無免許運転、などで事故を起こして相手を死亡させたにもかかわらず、わずかの数年の刑期で済んでしまうことに疑問と怒りが生じ、厳罰化が要請されました。
その結果、刑法典の中で危険運転致死傷罪が設けられました。
もっとも、危険運転致死傷罪を適用できるケースが限定されており、処罰すべきである事案にもかかわらず、同規定が適用されないため軽い罪で済んだ事例も散見されました。
そこで、処罰の間隙を埋めるとともに妥当な処罰を行うべく、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(略称:自動車運転死傷処罰法)」が平成26年5月20日に施行されました。
具体的には、①これまで刑法211条2項に定められていた自動車運転過失致死傷罪と、刑法208条の2に定められていた危険運転致死傷罪を刑法から削除して自動車運転死傷行為処罰法に組み込む、②従来の危険運転致死傷罪の対象類型に、「通行禁止道路の高速走行」と、「アルコール・薬物及び政令で定める病気の影響により、走行中に正常な運転に支障が生じるおそれある状態での運転」を追加、③アルコールや薬物の影響の有無や程度が発覚することを免れる目的で、さらにアルコールや薬物を摂取したり、事故現場を離れて濃度を減少させたりなど、捜査を免れる目的で免脱行動をとった場合に対する罰則を新設、④危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪を犯した者が、そのときに無免許運転だった場合には免許ある場合に比べ刑罰を加重することが規定されました。
なお、従来人身事故により業務上過失致傷罪で処罰されていたものは、「過失運転致死傷」(自動車運転死傷行為処罰法5条)として処罰されます。
自動車運転死傷行為処罰法のまとめ
| 罪名 | 結果 | 刑罰・法定刑 | |
| 無免許運転以外の場合 | 無免許運転の場合 (6条) | ||
| 危険運転致死傷罪 (2条) | 死亡 | 1年以上の有期拘禁刑 (最高20年) | |
| 負傷 | 15年以下の拘禁刑 | 6月以上の有期拘禁刑 (1項) (最高20年) | |
| 準危険運転致死傷罪 (3条) アルコール・薬物・病気 | 死亡 | 15年以下の拘禁刑 | 6月以上の有期拘禁刑 (最高20年) |
| 負傷 | 12年以下の拘禁刑 | 15年以下の拘禁刑(2項) | |
| 発覚免脱罪(4条) | 死亡・負傷 | 12年以下の拘禁刑 | 15年以下の拘禁刑(3項) |
| 過失運転死傷罪 (5条) | 死亡・負傷 | 7年以下の拘禁刑 又は 100万円以下の罰金 | 10年以下の拘禁刑(4項) |
2.危険運転致傷罪とは何ですか?
前述のように、従前刑法に規定されていた危険運転致死傷罪は適用するためのハードルが高く、悪質な運転者であっても、適用することができないケースが多かったため、同罪は自動車運転死傷行為処罰法に組み込まれ、軽度の飲酒でも危険運転致死傷罪が適用できることになりました。
また、飲酒の発覚を免れるために、事故後さらに飲酒してごまかそうとした場合や、逃げて血中のアルコール濃度を減少させたような場合も処罰されることになりました。
また、無免許の場合は、刑が加重される規定も加わりました。
3.具体的な類型について
(1)危険運転致死傷罪
危険運転致死傷罪については令和8年7月21日に改正法が施行され要件の明確化が図られています。改正法での危険運転の類型と要件については以下の通りです。
① アルコール影響正常運転困難状態での走行数値(基準を明確化)
身体に血液1mlにつき1.0mg以上、または呼気1Lにつき0.5mg以上のアルコールを保有する状態、その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させること。
数値基準を満たさない場合でも、酩酊の程度など具体的な事情から「正常な運転が困難な状態」と認められれば対象になり得ます。
② 薬物影響正常運転困難状態での走行(条文上の要件を区分)
薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させること。
薬物は種類により影響の出方が異なるため、アルコールのような数値基準は設けられていません。
③ 進行の制御が困難な高速度での走行(要件に変更なし)
道路の形状や車両の性能等に照らし、ハンドルやブレーキの僅かな操作ミスでも自車が進路を逸脱するような速度で走行すること。
具体的な数値基準はなく、事故ごとの道路状況・車両性能などから個別に判断されます(類型4の数値基準とは別の規定です)。
④ 数値基準を超える高速度での運転新設(数値基準を導入)
最高速度が時速60km以下の道路では最高速度を時速50km超える速度、時速60kmを超える道路では最高速度を時速60km超える速度、またはこれに準ずる危険な速度で運転すること。
基準値をわずかに下回る場合でも、見通しの悪さや路面凍結、児童の通学時間帯など道路状況によっては対象になり得ます。
⑤ 運転技能を有しない状態での走行(要件に変更なし)
ハンドルやブレーキなど、自動車を安全に走行させるための基本的な操作技能を有しないまま自動車を走行させること。
無免許運転そのものではなく、「実際に安全に走行させる技能があったか」が問われます。
⑥ ドリフト走行・ウィリー走行(新設)
殊更にタイヤを滑らせ、または浮かせることにより、車の進行の制御が困難な状態にさせて走行すること。
改正前は条文上の規定がなく、いわゆるドリフト走行やウィリー走行による事故は本罪の対象外でした。
⑦ あおり運転①(割り込み・接近)(要件に変更なし)
人や車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、または通行中の人・車に著しく接近し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転すること。
⑧ あおり運転②(前方への割り込み停止)(要件に変更なし)
車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な危険が生じる速度で走行中のもの)の前方で停止し、またはこれに著しく接近する方法で運転すること。
⑨ あおり運転③(高速道路上での停止・徐行強要)(要件に変更なし)
高速自動車国道または自動車専用道路において、通行を妨害する目的で走行中の自動車の前方で停止する等の方法により、当該自動車を停止・徐行させること。
⑩ 殊更な信号無視(要件に変更なし)
赤色信号またはこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転すること。
⑪ 通行禁止道路での高速走行(要件に変更なし)
道路標識等により自動車の通行が禁止されている道路(政令で定めるもの)を進行し、かつ重大な交通の危険を生じさせる速度で運転すること。
(2)準危険運転致死傷罪(3条1項)
新法により追加されました。
アルコールや薬物、あるいは一定の病気による影響により、正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物、あるいはその病気の影響により、正常な運転が困難な状態に陥り、人を死傷させた場合に成立します。
人を負傷させた場合には、12年以下の拘禁刑が、人を死亡させた場合には、15年以下の拘禁刑が科されます(自動車運転死傷行為処罰法3条)。
「正常な運転が困難な状態」までいかなくとも、「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」で「正常な運転が困難な状態に陥り」人を死傷させた場合に成立します。
危険運転致死傷罪の適用のハードルが高かったことから、飲酒や薬物による影響が比較的軽度であっても同罪が成立しうることになりました。
(3)アルコール等影響発覚免脱罪
新法により追加されました。
アルコール又は薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で事故を起こし、人を死傷させた場合に、運転当時のアルコール又は薬物の影響の有無や程度が発覚することを免れる目的で、さらにアルコールを窃取、あるいは、その場から離れアルコール又は薬物の濃度を減少させること等をした場合に成立します。
例えば、飲酒運転をして、人身事故・死亡事故を起こし、その場から逃走した場合や、水を大量に摂取してアルコール濃度を減少させた場合などが、発覚免脱罪に当たる行為です。
これは、飲酒運転の逃げ得を許さないため、通常の場合に比べ、重い罰則を科しています。
(4)過失運転致死傷(5条)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が科されます(自動車運転死傷行為処罰法5条)。
前方不注視やスピード違反などの過失により、自動車事故で人を負傷させたり、死亡させたりする場合に成立します。
(5)無免許による加重(6条)
①から⑧までの罪を犯した者が、無免許だった場合、刑がさらに重くなることになりました。(「未熟運転)は除く)
人身事故・死亡事故における弁護活動
①人身事故・死亡事故に至る経緯・事件の全体像の把握
人身事故・死亡事故で警察に検挙・逮捕され刑事事件となった場合、初犯の過失運転致死傷罪で、かつ被害が軽微であったり、過失の態様が軽微であったりする場合は、罰金で済むことも考えられます。
しかし、危険運転致死傷罪や発覚免脱罪は、刑事事件の中でも重い法定刑が規定されています。
そのため、危険運転致死傷罪や発覚免脱罪の場合、起訴されると正式裁判になってしまいます。
裁判所での審理の結果、拘禁刑の実刑判決が言い渡されることになれば、刑務所に入ることとなります。
弁護士は、人身事故・死亡事故に至った経緯や動機、当時の状況、その他の事情を精査し全体像を把握した上、適切な弁護方針をご案内いたします。
逮捕直後から、人身事故・死亡事故に強い弁護士が弁護を引き受けることで、一貫した弁護活動を行うことができます。
②不起訴処分や刑の減軽・執行猶予の獲得
人身事故・死亡事故は、被害者がいる犯罪であるため示談解決がポイントとなります。
示談は契約ですので、被疑者と被害者が合意することにより作ることになりますが、被疑者が捜査機関に被害者の連絡先を聴いても教えてもらえないのが通常です。
また、仮に連絡先を知っていたとしても、相手方の被害感情が強い場合、直接被疑者が被害者と交渉を行うのは非常に困難であるといえます。
一方、弁護士を通じれば、検察官より被害者の連絡先を教えていただける場合が多々あります。
ですので、弁護士に依頼することにより被害者とコンタクトをとりやすくなります。
また、弁護士が間に入れば、冷静な交渉により妥当な金額での示談解決が図りやすくなります。
③早期の身柄解放
人身事故・死亡事故で警察に逮捕・勾留された場合、容疑者・被告人が反省しており逃亡したり証拠隠滅したりするおそれがないことを客観的な証拠に基づいて説得的に主張していきます。
早期に釈放されることで、会社や学校を長期間休まずに済み、その後の社会復帰がスムーズに行いやすくすることができます。
④環境調整
重大事故を起こした場合や交通事故の前科がある場合は、運転免許を返納した上で車を売却する等の検討も視野に入ってきます。
また、職場の近くに転居するなど車を使わなくても生活できるよう環境を調整していく必要があります。
環境調整のための様々なアドバイスを致します。
人身事故・交通事故でお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へお問い合わせください。
刑事事件を専門に取り扱う弁護士が、直接「無料相談」を行います。
被疑者が逮捕された事件の場合、最短当日に、弁護士が直接本人のところへ接見に行く「初回接見サービス」もご提供しています。
