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未成年の大麻取締法違反事件

2021-04-08

未成年の大麻取締法違反事件

未成年大麻取締法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市下京区に住む中学生です。
Aさんは、大麻について興味を持っており、SNSを通じて大麻を購入し、自分の部屋に購入した大麻を保管していました。
大麻を購入してしばらくした頃、Aさんに大麻を販売した売人が京都府下京警察署の捜査によって摘発され、購入履歴からAさんの自宅にも京都府下京警察署が家宅捜索に訪れました。
家宅捜索によってAさんの部屋から大麻が発見され、Aさんは大麻取締法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、まさか中学生であるAさんが違法薬物を所持していたとは思いもよらず、突然の逮捕に困り果ててしまいました。
そこでAさんの家族は、とにかく専門家の力を頼ろうと、京都府の逮捕や少年事件に対応している弁護士に接見を依頼し、詳しい話を聞いてみることにしました。
(※令和3年3月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・未成年の大麻所持事件

多くの方がご存知のように、大麻は所持しているだけでも犯罪となる違法薬物です。
以下のように、大麻取締法では原則として大麻の所持を禁止しており、大麻を所持することは大麻取締法違反となります。

大麻取締法第24条の2第1項
大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。

Aさんの家族が考えていたように、大麻のような違法薬物は簡単には手に入れられないだろう、未成年が大麻を所持することはできないだろうというイメージもあるでしょうが、実際には未成年による大麻所持事件は起きています。

法務省による令和2年版犯罪白書によると、令和元年に大麻取締法大麻に関連した麻薬特例法違反で検挙された20歳未満の者は609人とされています。
大麻に関連して検挙される未成年は平成26年から年々増加傾向にあり、令和元年は前年よりも42パーセント増加しているとのことでした。
さらに、大麻取締法違反で検挙された者で事件当時就学していた247人(20歳以上の者も含む)を就学状況別に見ると、大学生132人、高校生109人、中学生6人という内訳であったそうです。
これを見れば、たとえ「未成年だから」「まだ中学生/高校生だから」といって大麻取締法違反事件とかかわらないとは言えないということがお分かりいただけると思います。

それでも、「不良集団とかかわっていなければ大麻などの違法薬物に関わる機会もない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
ですが、先ほど挙げた令和2年版犯罪白書によると、令和元年に大麻取締法違反により鑑別所に入った少年441人のうち、57.1パーセントは暴力団や暴走族、地域的不良集団などの不良集団とのかかわりはない少年たちだったそうです。
つまり、普段から素行のよくないグループとつるんでいなくとも、大麻取締法違反事件に関わってしまう可能性もあるのです。
未成年による大麻取締法違反事件は件数が非常に多いというわけではありませんが、全くかかわりのない話でもないということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

・未成年の大麻取締法違反事件と弁護士

では、実際に自分の子供が大麻取締法違反事件に関わってしまったらどうすべきかというと、まずは弁護士に相談し、迅速に弁護活動・付添人活動に取りかかってもらうことをおすすめします。

令和2年版犯罪白書では、鑑別所に入った少年451人の終局処分の内訳が、少年院送致が47.5%、保護観察が30.2%、検察官送致(年齢超過含む)が1.8%、不処分・審判不開始が0.7パーセント、未決が20パーセントとなっています。
当然少年が鑑別所に入らずに終局処分まで進む少年事件もあるため、未成年による大麻取締法違反事件全てを含めての処分結果ではありませんが、それでも少年院送致が半数程度を占めていることからも、大麻取締法違反事件が重く考えられていることが分かります。
だからこそ、少年事件刑事事件に詳しい弁護士のサポートを受けながら、適切な処分を目指していくことが有効と考えられるのです。

さらに、令和2年版犯罪白書によれば、令和元年に大麻取締法違反で検挙された20歳未満の者609人のうち、59人は以前大麻取締法違反で検挙されたことがあり、再度大麻取締法違反で再非行をした少年だとされています。
約10パーセントの少年が同じ犯罪を繰り返してしまっていることからも、再犯防止の対策を具体的に立てた上で実行していく必要があることが分かります。
少年事件では、少年が更生するために適切な環境を用意することが非常に重要ですから、そういった意味でも再犯防止策に取り組むことは大切です。
ただし、当事者だけではなかなか取り組みづらいということも事実ですから、専門家である弁護士にアドバイスをもらいながら取り組んでいくことが望ましいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、大麻取締法違反のような薬物事件にも対応しています。
成人の刑事事件だけでなく、少年事件にも数多く対応している弁護士だからこそ、少年事件の始まりから終わりまで丁寧なサポートが可能です。
まずはお気軽にご相談ください。

友人の危険ドラッグで逮捕されてしまったら

2021-04-05

友人の危険ドラッグで逮捕されてしまったら

友人の危険ドラッグ逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市下京区に住むAさんは、友人であるBさんがいわゆる危険ドラッグをたびたび使用しているという話を聞きました。
そして、Aさん自身は危険ドラッグを使用することはありませんでしたが、Bさんが置き忘れていった危険ドラッグをAさんの自宅に預かったり、Bさんが保管できない分の危険ドラッグをAさんの自宅で保管したりしていました。
Aさんは、「自分は危険ドラッグを使っていないし、あくまで友人Bさんの危険ドラッグなのだから自分が大事になることはないだろう」と考えていましたが、Bさんが京都府下京警察署に摘発されたことをきっかけに、Aさんも危険ドラッグを所持していたことによる薬機法違反の容疑で京都府下京警察署逮捕されてしまいました。
Aさんは、「自分の物ではない危険ドラッグ逮捕されるのか」と疑問に思い、家族の依頼を受けて接見にやってきた弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・友人の危険ドラッグでも「所持」になる?

今回のAさんは、友人Bさんの危険ドラッグを預かったり保管したりしていたことで危険ドラッグの所持による薬機法違反の容疑で逮捕されているようです。
このように元々自分の物ではない友人の危険ドラッグを預かっていたような場合でも「所持」となってしまうのでしょうか。

まずは危険ドラッグの所持について定めている薬機法の条文を確認してみましょう。

薬機法第76条の4
指定薬物は、疾病の診断、治療又は予防の用途及び人の身体に対する危害の発生を伴うおそれがない用途として厚生労働省令で定めるもの(以下この条及び次条において「医療等の用途」という。)以外の用途に供するために製造し、輸入し、販売し、授与し、所持し、購入し、若しくは譲り受け、又は医療等の用途以外の用途に使用してはならない。

薬機法のいう「指定薬物」がいわゆる危険ドラッグのことを指します。
つまり、危険ドラッグを厚労省令で定めるもの以外に所持したり使用したりすることが薬機法で禁止されているわけです。
当然、今回の事例に出てくるAさんの友人Bさんのように、自分に使用する目的で危険ドラッグを所持・使用することはこの薬機法に違反することになります。

では、Aさんのように、他人の危険ドラッグを預かっていたような場合はどうでしょうか。
薬機法でいう危険ドラッグの「所持」とは、危険ドラッグを自分の支配・管理下に置いておくことを指します。
ですから、危険ドラッグを持ち歩いているといった物理的に危険ドラッグを「持って」いる場合だけでなく、例えば自宅のどこかに危険ドラッグを保管しているといった場合でも「所持」していることになります。

今回の事例のAさんは、友人Bさんの危険ドラッグを、危険ドラッグであると知りながら自宅に預かったり保管したりしています。
このことから、Aさんは危険ドラッグを自分の支配・管理下に置いていた=危険ドラッグを「所持」していたと考えられたのでしょう。
こうした場合、たとえ元々はAさんの物でなかったとしても、危険ドラッグと知りながら自分の支配・管理下に置いていたことから薬機法違反となると考えられます。

危険ドラッグ所持による薬機法違反は「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」(薬機法第84条第28号)となっているため、非常に重い犯罪です。
「元々自分の物ではないから」といって危険ドラッグと知りながら預かったり保管したりすることを避けることはもちろん、もしもそういった行為をしてしまったことで薬機法違反の被疑者となってしまったら、すぐに弁護士に相談することが望ましいでしょう。

なお、ここで注意が必要なのは、今回のAさんのようなケースでも、Bさんから預かったものが危険ドラッグだと分からなかったような場合には話が異なるということです。
この場合、「危険ドラッグ(違法薬物)を所持する」という認識=薬機法違反の故意がないことになりますから、状況によっては冤罪を主張していくことになるでしょう。
ただし、「危険ドラッグだと知らなかった」と言えばその主張がそのまま通るというわけではありません。
Aさん自身の主張だけでなく、その時の客観的な事情、例えばAさんが預かったものが危険ドラッグであると分からないような状況だったのか、Bさんとの関係やBさんの危険ドラッグ使用をAさんが把握していたのかなどを踏まえてAさんに薬機法違反の故意があったのかどうか判断されることになるでしょう。
こうした場合は特に取調べなどに慎重に対応することが求められますから、より弁護士に相談・依頼するメリットが大きいといえるでしょう。

危険ドラッグなどに関連した違法薬物事件では、違法薬物自体の証拠隠滅が容易なことや関係者が多数存在することなどから、Aさんのように逮捕されて捜査されることも少なくありません。
逮捕などの身体拘束が伴う捜査には時間の制約があるため、早急に弁護活動が開始されることが望ましいです。
だからこそ、逮捕を知ったその時から、弁護士への相談をご検討ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、お問い合わせを24時間いつでも受け付けています。
専門スタッフがご相談者様それぞれの状況に合わせたサービスをご案内いたします(0120-631-881)。
まずはお気軽にお電話ください。

飲酒運転を隠そうと逃げたら犯罪?

2021-04-01

飲酒運転を隠そうと逃げたら犯罪?

飲酒運転を隠そうと逃げたら犯罪となるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市中京区にある自宅で飲酒していましたが、いつも飲んでいる飲料水を切らしていたことを思い出しました。
そこでAさんは、「そんなに遠い距離ではないし大丈夫だろう」と思い、飲酒運転をして近所のスーパーへに向かいました。
するとその道中で、Aさんの運転する自動車は歩行者Vさんと接触する事故を起こしてしまい、Vさんに怪我をさせてしまいました。
このままでは飲酒運転に問われてしまうと焦ったAさんは、そのまま自動車で走り去り、スーパーで飲料水を購入して大量に飲料水を飲んでアルコールの数値が出ないようにするなど、飲酒運転の事実を隠そうとしました。
しかし、すぐにVさんからの通報を受けて捜査していた京都府中京警察署の警察官によりAさんが発見され、Aさんはひき逃げなどの容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんは飲酒運転を隠そうとしたことも犯罪になると聞いて驚き、接見に訪れた弁護士に犯罪の内容を相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・飲酒運転を隠そうとすることは犯罪?

そもそもAさんが行った飲酒運転人身事故、事故を起こしたにもかかわらずその場から立ち去るというひき逃げといった行為は、それぞれが犯罪となることに疑問はないでしょう。
飲酒運転やひき逃げは道路交通法違反に、人身事故は過失運転致傷罪などに問われる行為です。
しかしこれだけではなく、上記事例のAさんは、飲酒運転をしていたことが発覚することを防ぐために事故現場から逃げてスーパーでで飲料水を購入して飲むといった行動をしています。
どうやら今回は、こういったAさんの飲酒運転を隠そうとした行為についても犯罪が成立するようです。
自動車運転処罰法の条文を確認してみましょう。

自動車運転処罰法4条(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)
アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。

この条文で定めている犯罪は、通称「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」という犯罪です。
大まかに説明すると、ある程度の飲酒運転で人身事故を起こしたにも関わらず、飲酒運転の発覚やその程度を分からなくするために、事故後にあえてアルコールを摂取したり、事故現場を離れてアルコール濃度を下げるための行為等をしたときに成立する犯罪がこの「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」ということになります。
この犯罪は、いわゆる「逃げ得」を防止するために規定された犯罪です。

飲酒運転をして人身事故を起こしてしまった場合、その飲酒運転の程度によっては、自動車運転処罰法内に規定されている危険運転致死傷罪にあたる可能性があります。
例えば、酩酊状態で飲酒運転をして人身事故を起こして危険運転致死傷罪が適用された場合、被害者が怪我をしていれば15年以下の懲役、被害者が死亡していれば1年以上の有期懲役(上限20年)となることになります(自動車運転処罰法第2条)。

しかし、その場を立ち去り酔いがさめたりアルコール濃度が下がったりするまで待ったり、水を飲む等してアルコール濃度を下げる行為をして、事故の際のアルコール濃度を検知できないようにしたり酩酊状態でないようにしたりすれば、危険運転致死傷罪の成立要件である「アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ」たと確認できず、ひき逃げによる道路交通法違反と過失運転致死傷罪が成立するにとどまることになります。
事故後にアルコールを摂取した場合でも「得」になるのかと疑問に思われる方もいるかもしれませんが、検知されたアルコールが事故前に飲まれていたものなのか、事故後に飲まれたものなのか分からなくなってしまえば、飲酒運転をしていたかどうかの確認ができなくなってしまいます。
そうなると、ひき逃げと過失運転致死傷罪では最高でも15年の懲役となりますので、最高20年の懲役となる危険運転致死傷罪よりも軽くなってしまいます。
これが許されてしまえば、逃げて飲酒運転を隠した方が「得」である、「逃げ得」であるとされてきたのです。

そういった「逃げ得」を防止するため、今回取り上げた「過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」が規定されたのです。
過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪」が認められた場合、ひき逃げと合わせて最高18年の懲役が科される可能性があります。

今回のAさんは、飲酒運転の発覚を免れるために、事故現場から逃亡して飲料水を飲み、アルコール数値を分からないようにしようとしています。
ですから、Aさんは過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪とひき逃げに問われる可能性が考えられます。
ただし、もしもAさんが、実は飲酒運転発覚を避けるために逃げたり飲料水を飲んだりしていたわけではなかったような場合、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪については冤罪であることになります。
先ほど触れたように、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪はひき逃げと合わさると非常に重い刑罰が科せられる可能性があります。
冤罪である場合はもちろん、そうでない場合も、弁護士の助言を逐一受けながら、取調べに臨むことが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部には、飲酒運転に関連した刑事事件のご相談も数多く寄せられています。
刑事事件専門の弁護士が、それぞれの事件ごとの事情をお伺いし、丁寧に対応や見通しをお話いたします。
初回の法律相談は無料、初回接見サービスは最短即日対応です。
まずはお気軽にお電話ください(0120-631-881)。

喧嘩から共犯者のいる殺人事件・傷害致死事件に

2021-03-29

喧嘩から共犯者のいる殺人事件・傷害致死事件に

喧嘩から共犯者のいる殺人事件傷害致死事件に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、友人Bさんと一緒に京都府宮津市内で食事をしていました。
その帰り、Aさんらは路上で通行人VさんとぶつかったことがきっかけとなりVさんと喧嘩になりました。
Aさんらは2人がかりでVさんに暴行を加えてVさんに怪我をさせてしまいましたが、VさんがAさんらを罵倒したことからBさんが激しく怒り、Bさんは「そんなことを言うなら殺してやる」と言ってナイフを取り出すとVさんを刺してしまいました。
通行人の通報によって救急車と京都府宮津警察署の警察官が駆け付

け、Vさんは病院に搬送されましたが間もなくナイフで刺された傷がもとで死亡してしまいました。
AさんとBさんは共に殺人罪の容疑で京都府宮津警察署に逮捕されたのですが、AさんとしてはBさんと一緒に喧嘩をしていただけで、自分にVさんを殺すつもりはなかったと困っています。
そこでAさんは、家族の依頼によって接見にやってきた弁護士に、自分も殺人罪になってしまうのか相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・殺人罪と傷害致死罪

殺人罪は、名前のとおり人を殺してしまった場合に成立する犯罪です。

刑法第199条(殺人罪)
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

殺人罪が成立するには、殺人罪の故意=人を殺すという認識や意思を持って人を死なせることが求められます。
「殺してやる」と殺意をもって人を殴ったり刺したりして死なせてしまえば殺人罪が成立するということです。
では、例えば殴るだけにとどめるつもりだった(殺意はなかった)のに人を死なせてしまったような場合はどのような罪に問われるのかというと、傷害致死罪という犯罪が挙げられます。

刑法第205条(傷害致死罪)
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、3年以上の有期懲役に処する。

傷害致死罪は、簡単に言えば「殺すつもりはなかったが死なせてしまった」といった場合に成立する犯罪で、暴行罪や傷害罪の延長線上にある犯罪ともいえます。
殺人罪の故意はなかったものの、人に対して暴行し怪我をさせたりして死なせてしまったような場合には傷害致死罪に問われることになります。

・共犯と「意思の連絡」

2人以上の人が一緒になって犯罪をすれば、いわゆる「共犯」となります。
このうち、「共同して犯罪を実行した」場合には「共同正犯」としてすべて正犯=自らがその犯罪をした者と同じ扱いとなります。

刑法第60条
二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

つまり、共同正犯に当たる場合は、たとえ犯罪の一部しか実行していなかったとしてもその全部についての責任を負うことになります。
この原則を「一部実行全部責任の原則」といいます。

今回のケースについて考えてみましょう。
AさんとBさんは、一緒になってVさんに暴行を加えてVさんに怪我をさせ、最終的にはVさんを死亡させています。
共同正犯の考え方を踏まえれば、AさんとBさんは一緒にVさんに暴行をした上でVさんを殺してしまったわけですから、その一部を実行しているAさんは殺人罪の共同正犯となるかのように思われます。
しかし、AさんにはVさんを殺害する意思はなかったのにBさんが殺意をもってVさんをナイフで刺してしまったという事情もあります。
こうした場合にもAさんも殺人罪の共同正犯として扱われてしまうのでしょうか。

ここで問題となるのが、共同正犯が成立する際に必要だと考えられている「意思の連絡」という要素です。
共同正犯が成立するためには、「一緒にその犯罪を実行する」という意思をそれぞれが有していなければなりません。
これが「意思の連絡」と呼ばれるものです。
判例では、意思の連絡があって故意が異なる場合ではそれぞれの行為が該当する構成要件の重なる範囲でのみ共同正犯の成立が認められるとしています。

今回のケースで考えてみましょう。
AさんとBさんは、「Vさんに暴行を加える」ということについては共通の認識があったようです。
ですから、暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)といった範囲では「意思の連絡」があったと考えられます。
しかし、Vさんを死なせてしまった部分については、Aさんは殺意がなかったにもかかわらず、Bさんは殺意を持ってナイフでVさんを刺しているというずれが生じています。
つまり、AさんとBさんは、「Vさんへ暴行を加える」という範囲では重なり合っているものの、殺意の有無=殺人罪の故意の有無に違いがあるという状態なのです。
ですから、AさんとBさんはそれぞれの行為が該当する構成要件の重なる範囲でのみ共同正犯が成立することになります。
すなわち、AさんはVさんを殺すつもりはなかったがBさんと一緒にしていた暴行(ナイフで刺すという行為自体は暴行に含まれます。)によってVさんを死なせてしまったという状況のため、「身体を傷害し、よって人を死亡させた」という傷害致死罪の範囲で共同正犯となると考えられます。
対して、殺意をもってVさんを死なせたBさんは「人を殺した」という殺人罪が成立するということになると考えられます。

共犯者のいる刑事事件では、今回取り上げた「意思の連絡」の問題など、専門的な部分で様々な検討が必要となります。
共同正犯となるかどうかによって刑罰の重さが大きく異なることもあるため、十分な検討と対応が必要ですが、刑事事件の知識や経験がなければそれも困難です。
だからこそ、弁護士に相談・依頼することが大切です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事手続きや容疑をかけられている犯罪について丁寧に解説・アドバイスを行います。
まずはお気軽にご相談ください。

学校内の盗撮事件を弁護士に相談

2021-03-25

学校内の盗撮事件を弁護士に相談

学校内盗撮事件弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市東山区内にある高校に通う高校1年生です。
Aさんは、インターネット上で盗撮された画像や映像を見るうちに、自分でも盗撮をしてみたいと思うようになり、自分の通っている学校内にある教室、更衣室やトイレに度々小型のカメラを仕掛けては盗撮するようになりました。
しかしある日、Aさんが仕掛けたカメラを女子生徒が発見したことから学校内盗撮事件が発覚。
被害の届け出を受けた京都府東山警察署が捜査をすることになりました。
捜査の結果、Aさんが盗撮行為をしていたことが判明し、Aさんは京都府東山警察署に取調べのために呼び出されることになりました。
Aさんの両親は、まさか自分の子供が通っている学校で盗撮事件を起こすとは思ってもおらず、今後どうしたらよいのか分かりません。
そこでAさんの両親は、Aさんと一緒に、少年事件に対応している弁護士に今後について相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・学校内の盗撮事件

今回のAさんは、自分の通う高校の教室や更衣室、トイレにカメラを仕掛け、盗撮していたようです。
こうした行為は、京都府の迷惑防止条例(「京都府迷惑行為等防止条例」)で禁止されている行為です。

京都府迷惑防止条例第3条
第2項 何人も、公共の場所、公共の乗物、事務所、教室、タクシーその他不特定又は多数の者が出入りし、又は利用する場所又は乗物にいる他人に対し、前項に規定する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
第1号 通常着衣等で覆われている他人の下着等を撮影すること。
第3項 何人も、住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、第1項に規定する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
第1号 当該状態にある他人の姿態を撮影すること。

「前項に規定する方法」とは、京都府迷惑防止条例第3条第1項にある「他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法」のことを指します。
一般的な盗撮事件の場合、下着姿や裸の姿を盗撮するという方法自体が「他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法」であることが多いと言えるでしょう。

そして、京都府迷惑防止条例の第3条で禁止している盗撮行為は、盗撮が行われた場所が「公共の場所、公共の乗物、事務所、教室、タクシーその他不特定又は多数の者が出入りし、又は利用する場所又は乗物」(第2項)であることや「住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」(第3項)であることに限定されています。
今回のAさんの事例では、学校内の更衣室やトイレが盗撮が行われた場所となっていますが、それぞれ「教室」「更衣室、便所」という京都府迷惑防止条例が帰省している場所に当てはまります。
そのため、Aさんの盗撮行為は京都府迷惑防止条例違反にあたると考えられるのです。

なお、もしもAさんが仕掛けたカメラが仮に撮影できていなかったとしても、京都府では盗撮目的でカメラを仕掛けること自体も迷惑防止条例で禁止されていますから、たとえ盗撮が出来ていなかった場合でもAさんの行為は京都府迷惑防止条例違反となります。

京都府迷惑防止条例第3条第4項
何人も、第1項に規定する方法で第2項に規定する場所若しくは乗物にいる他人の着衣等で覆われている下着等又は前項に規定する場所にいる着衣の全部若しくは一部を着けない状態にある他人の姿態を撮影しようとして、みだりに撮影機器を設置してはならない。

・学校内の盗撮事件を起こしてしまったら

今回のAさんは未成年であることから、刑罰を受けることは原則ありません。
しかし、場合によっては被害者との接触を考慮され逮捕されてしまう可能性もあります。
さらに、学校内盗撮事件を起こしてしまったということから、学校から何かしらの処分を下されることも考えられます。
刑事手続きの面でも、今後の学校への対応の面でも、少年事件だから、学校内の出来事だからといって放置することは望ましくありません。

弁護士に相談・依頼することで、逮捕・勾留されている場合の身体解放活動や取調べへのアドバイスをしてもらったり、学校への対応やそのサポートをしてもらったりすることが期待できます。
もちろん、被害者の方やその保護者の方への謝罪や示談交渉も、弁護士を間にはさむことで円滑に行うことが期待できますから、まずは少年事件に対応している弁護士に相談してみることがおすすめです。

たとえ学校内の出来事であっても、法律に違反すれば当然刑事事件少年事件として捜査・立件されうることになります。
「子供のやったことだから」「学校内のことだから」と軽視せず、まずは専門家に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、少年事件も取り扱っている弁護士初回無料法律相談を受け付けています。
逮捕・勾留されている事件向けのサービスもございますので、まずは遠慮なくご相談ください。

窃盗事件と略式罰金

2021-03-22

窃盗事件と略式罰金

窃盗事件略式罰金について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

〜事例〜

京都府宮津市に住んでいるAさんは、近所のスーパーで万引きをしたことによる窃盗事件により、京都府宮津警察署で捜査を受けていました。
Aさんは以前にも万引きをしたことがあり、その時は不起訴処分となったものの、「今回は不起訴では終わらないぞ」と警察官に言われてしまいました。
Aさんは、自分がどういった処分を受けるのか不安になり、弁護士に相談したところ、予想される処分に略式罰金という処分があると言われました。
そこでAさんは、略式罰金がどういった処分なのか弁護士に詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・刑事事件の流れと略式罰金

窃盗事件を含む刑事事件では、まず警察が事件を発見して捜査することが多いでしょう。
そして警察が捜査を完了したところで、事件は警察から検察へ移される(送られる)ことになります。
ニュースなどでもよく耳にする「送検」とは、その刑事事件を警察から検察に移すことをいいます。
事件が送検されたら、今度はその刑事事件の担当となった検察官が、被疑者を起訴するかどうかを判断することとなります。

刑事事件で被疑者となり、起訴されると裁判となります。
よく言われることではありますが、日本では起訴された刑事事件の99%は有罪となっています。
ですから、前科を回避したいと考える方などは、被疑者となってしまったら第一に起訴を回避する=不起訴処分を獲得するために弁護士に弁護活動をしてもらうなどすることになります。

ここで今回のポイントとなる「略式罰金」に関わることですが、通常、検察官は地方裁判所に公訴提起=起訴をすることになるのですが、一部の比較的軽微な犯罪については簡易裁判所に公訴提起=起訴をすることができます。
一部の比較的軽微な罪とは、裁判所法第33条第1項第2号に規定されている以下の犯罪です。

裁判所法第33条第1項
簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
第2号 罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第186条、第252条若しくは第256条の罪に係る訴訟

まとめると、罰金以下の刑に当たる犯罪や、選択刑として罰金が定められている犯罪がこの対象とされていることになります。

例えば、今回の事例のAさんは、万引きによる窃盗罪(刑法第235条)の被疑者となっています。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」となっていますので、窃盗罪は「選択刑として罰金が定められている犯罪」に当たります。
つまり、Aさんの事例では、Aさんの窃盗事件は簡易裁判所に起訴される可能性があるといえます。

検察官が簡易裁判所に起訴する場合には、検察官は略式命令請求書を提出して書面審査のみによる簡便な手続を請求することができます。
この手続を略式手続といいます。
略式手続による起訴が略式起訴と呼ばれるもので、よくドラマなどで見る公開の法廷で行われる正式な裁判に対して簡単な手続きであることから略式起訴、略式手続きなどと呼ばれてい流のです。
この略式手続では、後述のように罰金刑しか科せないことから、略式手続を経て罰金刑となることを略式罰金と呼んだりもします。
今回のAさんも、略式手続を経て罰金刑となる可能性があるため、弁護士から略式罰金の可能性があると言われたのでしょう。

この略式罰金の手続きでは、正式起訴されて行われる裁判と異なり、公開の法廷で行われることもなく、何日も裁判所に行く必要がないことから、正式裁判を避けて略式罰金にしてほしいと考える方もいらっしゃいます。
しかし、略式罰金の手続きをするにも希望すればできるというわけではなく、いくつかの条件があります。

①簡易裁判所が管轄する事件であること
先ほど挙げたように、容疑をかけられている犯罪が上記の裁判所法第33条第1項第2号に当てはまらなければなりません。

②100万円以下の罰金・科料に当たる事件であること
①に該当する犯罪であっても、事件の重大さなどから罰金刑以下の刑では不適当と判断される場合があります。
略式罰金を行うためには、相当であると考えられる刑が100万円以下の罰金または科料でなければいけません(それ以上の金額は簡易裁判所が取り扱いできないため。)。

③被疑者が容疑を認めていること
検察官は略式罰金の手続を行う前に被疑者に略式手続について説明し、略式罰金の手続によることに異議がない場合に限って略式命令を請求できることとなっています。
略式罰金の手続きでは、公開の裁判は開かれず、書面のみで審理が行われます。
迅速で行われる上、被告人として公開の法廷に立つ必要がないことはメリットでもありますが、同時に裁判の場で反論することができないため、デメリットでもあるのです。
ですから、容疑を認めているいわゆる「認め」の事件にしか略式罰金の手続きは適用できないのです。

そして、罰金刑であっても有罪となり刑罰を受けることに変わりはありませんから、略式罰金を受けるということは前科がつくことになります。
略式罰金によるメリット・デメリットを弁護士とよく相談しながらどのような処分を目指していくのか、どういった処分を受け入れるのか決めていくことが良いでしょう。

刑事事件の処分や手続きはさまざまで、一般に浸透していないことも多いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、略式罰金の手続きなど、刑事手続きについてのご相談も多く承っています。
窃盗事件などの刑事事件にお悩みの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。

DVから過剰防衛をして殺人罪に

2021-03-18

DVから過剰防衛をして殺人罪に

DVから過剰防衛をして殺人罪に問われてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

〜事例〜

京都市上京区に住んでいるAさんは、同棲中している恋人の男性Vさんから、日常的に殴られたり蹴られたりと言ったDVを受けていました。
このままDVが続けば自分が殺されてしまうのではないかと怖くなったAさんは、ある日、暴行を加えようとしてきたVさんに対して咄嗟に包丁を突き出しました。
包丁はVさんの腹部に深く突き刺さってしまい、Vさんは倒れ込みましたが、その後Aさんはさらに包丁でVさんを突き刺しました。
しばらくしてからとんでもないことをしてしまったとAさんが通報したことにより、Vさんは病院に運ばれたものの、これが致命傷となりVさんは後日死亡しました。
Aさんは殺人罪の容疑で京都府上京警察署に逮捕され、Aさんの家族はDVに反撃した結果の事件だという話を聞き、どうにかAさんの弁護をしてやれないかと弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです)

・過剰防衛とは?

今回のAさんは、日常的にDVを受けており、そこから自分を守るために殺人行為をしてしまったようです。
ここで、「AさんはDVから身を守るためにVさんを刺したのだから正当防衛となり、殺人罪にならないのではないか」「なぜAさんは殺人罪に問われているのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
今回のAさんは、過剰防衛と呼ばれるケースに相当すると考えられたのだと思われます。
過剰防衛とは、正当防衛になりうる状況で行われた防衛行為が防衛の程度を超えた場合を指します。

刑法第36条
第1項 急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
第2項 防衛の程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

ご存知の方も多い正当防衛は、刑法第36条第1項の部分に規定されているものです。
今回問題になる過剰防衛は、同じ条文の第2項の部分に定められています。
防衛の程度を超えたかどうかは、侵害を排除するのに必要と考えられる程度以上の侵害性を備えていた場合(質的過剰)と、急迫不正の侵害に対して行われた反撃が継続されるうちに量的に必要以上の侵害性を伴ってしまった場合(量的過剰)の2つの場合に分けられます。

質的過剰を具体的な例で表すと、素手での侵害行為(殴りかかるなど)に対して日本刀や拳銃などで反撃した場合が挙げられます。
判例では質的過剰の事例について過剰防衛が認められることとなっています。

対して、量的過剰の場合については必ずしも過剰防衛の成立が肯定されるわけではありません。
複数の暴行(反撃)が加えられる量的過剰の事案については、これらの暴行を一連一体のものとして捉えられる場合に過剰防衛が認められるとされているものがあります(最判昭和34.2.5)。
複数の暴行が一連一体のものとして捉えられるかどうかについては、判例では「防衛の意思」の同一性を基準にしていると考えられます(最決平成20.6.25など)。

防衛の意思とは、正当防衛の成立要件のうち、反撃行為が「自己又は他人の権利を防衛するため」にされたものかどうかという部分です。
防衛の意思が認められれば反撃行為は防衛行為と認められます。
対して、正当防衛になりうるだからといって相手を積極的に加害する意思(積極的加害意思)が認められれば、その意思のもとに行われた行為は防衛行為とはいえないことになります。
例えば、「相手が殴りかかってきたのだから正当防衛になりうる。これを理由にして日頃の恨みを晴らして痛い目を見せてやろう」と相手を殴り返すと場合には、防衛の意思はないと考えられるのです。

この防衛の意思の同一性による判断とは、複数の暴行いずれもが同一の防衛の意思によるものであることかどうか(=複数の暴行のどれにも加害意思がないかどうか)という判断ということになります。

もし複数の暴行のうち後の方の暴行が防衛の意思によるものでなければ、防衛の意思に基づいて行った暴行のみについて正当防衛あるいは過剰防衛が成立し、そのほかの暴行については暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)に問われる可能性があります。

ここで注意しなければならないのは、相手の侵害行為が終了していても反撃行為が継続していた状況であることが量的過剰の前提とされていることです。

あくまで侵害者に向けられた複数の行為の時間的・場所的連続性を前提として、防衛の意思の同一性が認められれば過剰防衛となりうるということです。

ここでAさんのケースを見てみましょう。
Aさんは倒れ込んだVさんにも複数回包丁を刺していることから、やりすぎている=量的過剰による過剰防衛が成立するのではないか、と考えられます。
ですからAさんによる複数の暴行に先ほどまで見てきた「防衛の意思」が一貫しているかどうかと言ったことが問題になるでしょう。

AさんはVからのDV(=侵害)に対する反撃として咄嗟に包丁を突き出し、Vさんに傷害を負わせています。
さらに、倒れ込んだVさんはもうAさんに暴行をすることはできませんが、それでもAさんは再度包丁でVさんを突き刺し致命傷を与えました。
最初にAさんが包丁を突き出した行為と2回目にVさんに包丁を突き刺した行為との間には時間的・場所的連続性は認められそうです。

次に、これらが同一の防衛の意思のもとにとられた行為であるかが問題となります。
最初にAさんが包丁を突き出した行為は、VさんによるDVから身を守るための行為であると考えられます。
VさんのDVが素手で殴るという手段だったことから、包丁で対抗したのは質的過剰であることも考えられますが、積極的加害意思を認めるような事情なく、防衛の意思はあったと考えられそうです。

しかし、その後再びVさんに包丁を突き刺した行為については、Aさんの内心が事例からは不明であるため一概には言えません。
ですが、この行為が最初の行為と一連一体のものとして認められれば、全体について過剰防衛が成立する可能性があります。

このように、正当防衛や過剰防衛が認められるかどうかといった判断は容易なものではなく専門家の分析を必要とします。
自身あるいは他人を守るためにとった行為について被疑者となってしまった場合には刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼することがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が被疑者やそのご家族に直接刑事事件やその手続き、かけられている容疑や検討すべき事項を丁寧にご説明します。
専門家から詳しい話を聞くことで解消できる不安もあるでしょう。
まずはお気軽にご相談ください。

電車での過失傷害事件

2021-03-15

電車での過失傷害事件

電車での過失傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

〜事例〜

Aさんは、京都府舞鶴市内を走る電車内で、大きなスーツケースを荷物棚からおろす際、不注意からそのスーツケースを隣に座っていた利用客Vさんの顔に激しくぶつけてしまいました。
Vさんは鼻血を出すほど強く顔面を打ち付けており、駅に着いた際にAさんとVさんは一緒に駅員の元へ向かいました。
その際、Aさんがさほど反省した様子を見せていなかったことからVさんは激怒し、京都府舞鶴警察署に被害を届け出ると言ってきました。
Aさんは、「わざとぶつけたわけではないがそれでも犯罪になるのか」と不安に思い、京都府内の刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・不注意で人に怪我をさせてしまった…犯罪になる?

人に暴行をして怪我をさせたり、怪我をさせるに至らなくても人に暴行をしたりすれば、刑法の傷害罪暴行罪に当たることは皆さんご存知の通りでしょう。

刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法第208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

では、今回のAさんのように、不注意で暴行を加えてしまい、相手に怪我をさせたような場合、これらの犯罪は成立するのでしょうか。
傷害罪や暴行罪は故意犯と呼ばれる犯罪であり、暴行の故意=相手に暴行をするという意思や認識が認められなければ犯罪として成立しません。
つまり、今回のAさんがスーツケースをVさんにぶつけてやろうという意思をもっていない限り、傷害罪や暴行罪は成立しないということになります。
ただし、スーツケースがぶつかりそうであることを分かっていながらあえて「ぶつかってもいいだろう」と思ってぶつけたような場合には、いわゆる「未必の故意」が認められ傷害罪や暴行罪が成立する可能性もあるため、詳細な状況を専門的に検討することは必要です。

・過失傷害罪

では、Aさんのように不注意で人に怪我をさせた場合には、なんの犯罪も成立する可能性はないのかというと、そうではありません。
刑法には、過失傷害罪という犯罪が規定されています。

刑法第209条第1項(過失傷害罪)
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。

過失傷害罪は、過失=不注意によって人を傷害してしまった時に成立する犯罪です。
つまり、今回のAさんのケースのような場合には、過失傷害罪が問題となるのです。

では、どんな時に過失傷害罪の「過失」(不注意)が認められるかというと、結果の発生が予見でき、さらに、その結果を回避する義務に違反した場合に限って過失が認められるとされています。
例えば今回の事例の場合、荷物棚からスーツケースをとる際に、スーツケースを落とすなどして他の乗客にぶつかってしまうことが予想できたか、その結果を回避するためにAさんはなんらかの対策を取っていたか、といったことが検討されることになるでしょう。
単に「不注意だった」というだけで過失傷害罪の成否が判断されるわけではないため、やはり専門家の弁護士に詳細な事情とともにアドバイスをもらうことが必要とされるでしょう。

なお、過失傷害罪は親告罪(刑法第209条第2項)となっていますので、告訴がなければ起訴されません。
ですから、過失傷害事件では迅速に示談を締結することによって不起訴処分の獲得など、寛大な処分を得ることができます。
そういった点からも、早めに弁護士に相談・依頼することが重要と言えるでしょう。

ふとした不注意から刑事事件の当事者になってしまうこともあります。
弁護士のサポートを受けることで、突然の刑事手続きへの不安や疑問を解消することにつながります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士刑事事件の始まりから終わりまでフルサポートいたします。
まずはお気軽にご相談ください。

品物を預かって盗品保管罪に

2021-03-11

品物を預かって盗品保管罪に

品物を預かって盗品保管罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

〜事例〜

京都市左京区に住んでいるAさんは、骨董品店を営んでいるBさんから「店が手狭になったから品物を数店預かってくれないか」と骨董品を数点渡されました。
Aさんは、「預かるくらいならいいか」と思い、自宅で骨董品を預かり、しばらく保管していました。
しかし、実はこの骨董品は数日前にBさんが京都市左京区にあるVさん宅から盗んだ盗品だったのでした。
後日、Vさん宅の窃盗事件京都府川端警察署に捜査され、Bさんが窃盗罪の容疑で捜査されることになり、そこでBさんが盗品をAさんに預けたと供述したことから、Aさんは盗品保管罪の容疑で話を聞かれることになってしまいました。
困ったAさんは、弁護士に対応を相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・盗品関与罪〜盗品保管罪

今回Aさんが疑われている盗品保管罪は、盗品関与罪と呼ばれる犯罪の1つです。
盗品等関与罪は、刑法第256条に定められている犯罪です。

刑法第256条
第1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
第2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪(刑法第235条)や詐欺罪(刑法第246条第1項)などの財産罪を犯した人が、これらの犯罪によって得た財物をどう処分しようと、そのことによって改めて盗品等関与罪で処罰されることはありません(このような行為を不可罰的事後行為といいます。)。
しかし、窃盗罪を犯した本人や詐欺罪を犯した本人以外の人については、この盗品等関与罪が成立する可能性があります。

盗品等関与罪は、盗品等を譲り受けることなどによって本犯の被害者が盗品等の回復を行うことを困難にしたり、本犯により生じた違法な財産状態を維持・継続させることになるために処罰されます。
例えば、窃盗罪の被害を受けた人(盗まれた人)からすれば、被害品=盗品が盗んだ本人から別の人に移ってしまえばそれを取り戻しにくくなるということです。

盗品等関与罪が成立し得る具体的な態様としては、譲り受け、有償処分のあっせん、運搬、保管があります。
このうち、今回のAさんが疑われているのは盗品保管罪ということになります。

盗品等関与罪は故意犯ですから、目的物が盗品等であることを認識・予見していなければ処罰されることはありません。
今回のケースでは、AさんはBさんからのしばらく預かっていてほしいという依頼を受け、盗品である骨董品を保管しています。
しかし、Bさんから骨董品を預かり保管していた時点で、Aさんがこの骨董品が盗品であることを認識・予見していたかどうかは事例からはわかりません。
もしもAさんがBさんが売買などによって正当に所有している骨董品であると認識していた場合、盗品保管罪の故意はないことになり盗品保管罪は成立しません。

ただし、判例によれば、保管開始後、保管中に盗品であることを知った場合にも故意を認め盗品保管罪が成立するとされています。
ここでの故意は、譲り受けや保管などの目的物が盗品等であることを確定的に知っていることまでは必要ではなく、もしかしたら盗品かもしれないと思いながら敢えて譲り受けたり保管するなどの意思を有していた場合(いわゆる未必の故意)にも認められます。
ですから、今回のケースでは、Aさんの認識や当時の状況を詳しく聞いた上で主張を組み立てていく必要があると言えます。

取調べなどで主張をしていくには、自分にかけられた容疑の犯罪がどのような犯罪であるのか、自分の認識はどのようなものなのか、客観的な事情はどういったものがあるのかといった詳しい事情を専門的に検討しなければいけません。
だからこそ、弁護士に細かく相談することがお勧めです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回無料法律相談も受け付けています。
預かり物から盗品保管事件に巻き込まれてしまった方は、まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。

官製談合事件で逮捕されたら

2021-03-08

官製談合事件で逮捕されたら

官製談合事件逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

〜事例〜

京都府福知山市の市役所の土木建築部に勤務しているAさんは、土木建設会社を経営しているBさんから、「今度京都府福知山市である浄水場工事の入札情報を教えてくれないか」と言われ、非公表のはずの情報を事前に教えました。
そしてBさんは、落札できる最低限価格で工事を落札し、受注しました。
しかし、こうしたことが連続して起きたために調査が入り、Aさんが入札情報を漏らしていたことが発覚。
京都府福知山警察署が捜査を開始し、Aさんは官製談合防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和3年2月12日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・官製談合防止法

官製談合とは、公共事業の入札で、発注者側の人間と業者側の人間で事前に話し合い、落札価格などを決めてしまうことを指します。
例えば、今回のAさんとBさんは、工事を発注する京都府福知山市に属するAさんと、入札に参加する工事を受注したい業者のBさんという関係にあり、その2人が入札情報をやり取りしてBさんが落札できるようにしていることから、まさに官製談合をしていると言えるでしょう。

この官製談合については、官製談合防止法(正式名称「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」)で禁止され、刑罰も定められています。

官製談合防止法第8条
職員が、その所属する国等が入札等により行う売買、貸借、請負その他の契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

今回の事例のAさんに当てはめて考えてみましょう。
Aさんは京都府福知山市の職員であり、土木建築部に所属していることから、入札等の業務を外部に漏らさないことが職務上求められていると考えられます。
AさんはBさんに対して入札情報を漏らしていることから「その職務に反し」「事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること」によってBさんに落札させていますから、この行為によって工事の入札は不公平に行われてしまったと言えるでしょう。
ですから、Aさんは「当該入札等の公正を害すべき行為」をしたと考えられ、官製談合防止法第8条に該当する官製談合防止法違反となると考えられるのです。

・「職員」でない業者は何罪に?

ここで注意すべきなのは、官製談合防止法では国などの「職員が」談合を唆したり入札に関しての情報を漏らしたりして入札の公正を害する行為をした場合について定めているということです。
つまり、官製談合防止法では官製談合の発注者側を取り締まっていると言えます。
では、官製談合防止法のいう「職員」ではない業者側(今回の事例でいうBさん)には犯罪は成立しないのでしょうか。

実は、官製談合防止法違反とは別に、刑法には公契約関係競売等妨害罪という犯罪が規定されています。

刑法第96条の6
第1項 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第2項 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。

刑法第96条第2項では、「公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した」者について「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」という刑罰を定めています。
今回の事例のBさんのような官製談合の業者側については、この公契約関係競売等妨害罪が成立すると言えます。

官製談合をしたことによる官製談合法違反事件では、犯行態様によってこの他の犯罪が成立する可能性があります。
例えば、賄賂によって官製談合が行われたような場合には、発注側・業者側(今回の事例ではそれぞれAさん・Bさん)共に収賄罪や贈賄罪が成立する可能性があります。
そして、発注側が公務員という立場ながらその職務に反する形で官製談合をしているのであれば、地方公務員法違反や国家公務員法違反といった犯罪も成立すると考えられます。
官製談合自体も検討が複雑になりがちですが、官製談合によって成立する犯罪も多くなる可能性があるため、より複雑で対応しづらい刑事事件となるおそれがあるのです。

だからこそ、官製談合防止法違反事件では、様々な刑事事件に対応可能な弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件専門の法律事務所だからこそ、様々な種類の犯罪に対応が可能です。
まずはお気軽にご相談ください。

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