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お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)②
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)②
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年事件と捜査段階の身体拘束
逮捕が行われるには、その犯罪の嫌疑がかかる相当性と逮捕の必要性(逃走や証拠隠滅のおそれがあること)があることが必要です。
例えば、今回のAさんのケースでは、傷害事件の加害者(今回ではAさん)と被害者(今回ではVさん)が同居しているという状態です。
刑事事件・少年事件では、加害者と被害者は接触しないようにするのが通常です。
というのも、加害者と被害者が容易に接触できてしまえば、加害者から被害者へ証言の変更を迫る等できてしまうおそれがあると考えられるからです。
刑事事件・少年事件での「証拠」とは、物としてある証拠品だけではなく、関係者の証言も「証拠」の扱いとなります。
そういったことから、Aさんのような状況では証拠隠滅のおそれがあると判断されたと考えられます。
この逮捕が警察によって行われた場合、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を検察へ送るか釈放するかを決めます。
検察へ送る(これを「送検」と言います。)場合、検察官は送致を受けた時からさらに24時間以内に勾留という逮捕に引き続くより長い身体拘束をする必要があるかどうか判断します。
検察官が勾留の必要があると判断すれば、検察官は裁判所へ勾留請求を行います。
逆に、勾留の必要はないと検察官が判断すれば、被疑者はそこで釈放されることとなります。
弁護士が釈放を求める活動の中で最も早く働きかけられるのはおそらくこの段階でしょう。
検察官が勾留請求をするかしないかの判断前であれば、検察官に向けて勾留請求をせずに釈放してほしいと主張する活動をすることができます。
特に少年事件においては、成人の刑事事件と違い、勾留請求は「やむを得ない場合」でなければできないことになっています。
少年法43条3項
検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできない。
ですから、この「やむを得ない場合」に本当に当たるのかどうかを確認してもらい、勾留請求をしないよう求めていくことが考えられます。
検察官が勾留請求をした場合、その勾留請求を認めて勾留するかどうか判断するのは裁判所の裁判官です。
ここでも、弁護士は検察官の勾留請求を認めないよう裁判官に主張していくことができます。
少年事件においては、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことだけでなく、前述の「やむを得ない」場合に当たらない事情についても主張していくことになるでしょう。
勾留がついたということになれば、まずは最大10日間の身体拘束を受けることになり、さらに最大で10日間勾留を延長することができます。
つまり、被疑者として警察や検察で捜査される場合、逮捕と勾留合わせて最大23日間の身体拘束を受ける可能性があるということになります。
また、少年事件の場合、この勾留について、「勾留に代わる観護措置」という措置が取られることもあります。
これは少年法に定められている措置で、成人の刑事事件にはない措置です。
少年法43条1項前段
検察官は、少年の被疑事件においては、裁判官に対して、勾留の請求に代え、第17条第1項の措置を請求することができる。
※注:「第17条第1項の措置」とは、観護措置のことを指します。
少年法44条
3項 前項の措置の効力は、その請求をした日から10日とする。
※注:「前項の措置」は勾留に代わる観護措置のことを指します。
簡単に言えば、被疑者段階で取られる勾留の手続きの代わりに、少年法の「観護措置」(詳しくは次回の記事で説明します。)を取る措置ということです。
勾留に代わる観護措置となった場合、被疑者である少年は、警察署の留置所ではなく少年鑑別所に留置されることになり、先述した勾留の延長はできず、最大10日間の身体拘束をされることになります。
そして、その10日間が経過し家庭裁判所に送致された後は、自動的に今度は少年法のいう「観護措置」に切り替わることになります。
少年事件では、被疑者段階でも勾留に「やむを得ない場合」という条件が加えられていたり、勾留に代わる観護措置という独特な措置があったりと、成人の刑事事件とはところどころ異なる部分があります。
だからこそ、少年事件は少年事件に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件だけでなく少年事件も専門に扱う弁護士が迅速な対応を行っています。
まずはお気軽にご相談ください。
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)①
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)①
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・兄弟喧嘩でも犯罪になる?
クリスマスも過ぎ、いよいよ年の瀬となり、もうすぐお正月という雰囲気も出てきたのではないでしょうか。
今回の事例では、そのお正月の風物詩の1つであるお年玉をきっかけに兄弟喧嘩が起き、そこから少年事件へと発展してしまったようです。
今回の事例のBさんらは、Aさんが兄弟喧嘩の末に逮捕されてしまったことに驚き、困ってしまっています。
兄弟喧嘩に限らず、夫婦喧嘩や親子喧嘩など、家族で暮らしていれば家族同士で喧嘩をしてトラブルとなってしまうこともあるでしょう。
「身内の喧嘩・トラブルなのだから大事にはならないだろう」と思っている方もいるかもしれませんが、こうした家族内の喧嘩でも刑事事件・少年事件となってしまうことがあるということにも注意が必要です。
たしかに、刑法に定められている一部の犯罪については、いわゆる身内で起こった場合は刑罰を免除する、という規定があります。
例えば、有名なものとして刑法244条の親族相盗例といわれる規定が挙げられます。
刑法244条
1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
この親族相盗例が適用される犯罪は、刑法235条の窃盗罪、刑法235条の2の不動産侵奪罪、刑法246条の詐欺罪、刑法246条の2の電子計算機使用詐欺罪、刑法247条の背任罪、刑法248条の準詐欺罪、刑法249条の恐喝罪、刑法252条の横領罪、刑法253条の業務上横領罪、刑法254条の遺失物等横領罪とこれらの未遂罪です。
親族相盗例があるため、これらの犯罪については配偶者や直系血族、同居の親族の間で起こったとしても刑罰に処せられることはありません(ただし、あくまでも「刑の免除」であるため、有罪となった場合には前科が付くことになりますし、刑事事件・少年事件となる可能性自体はあります。)。
他にも、犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪等についても、以下のような特例が定められています。
刑法105条
前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
※注:「前二条の罪」とは、刑法103条の犯人蔵匿等罪、刑法104条の証拠隠滅等罪を指します。
こうした規定もあることから、「身内での犯罪は大事にはならないだろう」と考える方も少なくありません。
しかし、こうした規定はあくまで特例、例外であり、特別に規定がなければたとえ身内で起こったものであったとしても逮捕を伴う刑事事件・少年事件となり、処罰・処分される可能性が十分あることになります。
今回のAさんらのケースでは、兄弟喧嘩でAさんがVさんに怪我をさせてしまったようですから、傷害罪がAさんの逮捕容疑となっているようですが、傷害罪には親族相盗例のような特例は規定されていません。
刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
ですから、たとえ兄弟喧嘩や親子喧嘩、夫婦喧嘩であったとしても、相手に怪我をさせてしまえば傷害罪として処罰・処分されることが考えられるのです。
しかし、今回のAさんに関しては未成年であるため、刑罰を受けることは原則考えられません。
少年事件では、基本的に最終的な処分として刑罰とは別の保護処分=少年の更生のための処分を下すことになるからです。
家族内で犯罪が起こってしまった時、それが刑事事件・少年事件となってしまった時、どうしてよいかわからず慌ててしまう方も多いでしょう。
そんなときにも、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士にご相談ください。
刑事事件・少年事件専門だからこそ、迅速かつ丁寧に対応いたします。
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された②
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された②
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府亀岡市に住んでいるAさん(高校3年生)は、インターネットサイトでアダルトビデオを見るうちに、路上で女性を襲うという設定のアダルトビデオに魅力を感じるようになりました。
次第にアダルトビデオの内容のようなことを自分でやってみたいと思うようになったAさんは、ある日、京都府亀岡市内の路上を歩いていた女性Vさんを後ろから羽交い絞めにして路地裏に連れ込むと、Vさんの服を脱がせその体を触るなどしました。
Aさんは無理矢理性交をしようと嫌がるVさんの体を押さえて胸や臀部を触っていたのですが、Vさんが大声を上げて人を呼んだため、「このままでは見つかってしまう」と思い、その場から逃走しました。
後日、Aさんの自宅に京都府亀岡警察署の警察官がやってきて、Aさん自宅の家宅捜索を行うとともに、Aさんに逮捕状を見せました。
Aさんの両親は、自分たちの子どもが逮捕される事態となったことに驚き、警察官にAさんの容疑を聞きましたが、詳しく教えてもらえませんでした。
困ったAさんの両親は、刑事事件と少年事件を取り扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪へ?
前回の記事で取り上げた通り、現段階でAさんが容疑をかけられているのは強制性交等未遂罪です。
しかし、実はこの後、Aさんが容疑をかけられる罪名が変更される可能性があります。
それが強制性交等致傷罪です。
刑法180条2項(強制性交等致死傷罪)
第177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。
実は、Aさんの暴行によりVさんが負傷していた場合、Aさんの容疑が強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪に切り替わる可能性があるのです。
前回の記事で触れたように、AさんはVさんと性交等をするまでに至っていません。
しかし、強制性交等致傷罪を定める刑法180条2項の条文を見ると分かるように、強制性交等致傷罪は強制性交等罪の犯人が被害者に傷害を与えた時だけでなく、「第177条(略)の罪の未遂罪を犯し」た者が被害者に傷害を与えた場合も強制性交等致傷罪が成立するとしています。
刑法第177条は先ほど挙げた通り強制性交等罪のことを指しますから、強制性交等未遂罪が成立する者も強制性交等致傷罪の主体となりえるのです。
そして、前回の記事で取り上げた通り、強制性交等未遂罪はたとえ性交等に取り掛かっていなかったとしても、性交等を目的とした暴行又は脅迫に取り掛かった段階で成立します。
すなわち、たとえ性交等に取り掛かっていない段階であったとしても、性交等を目的とした暴行又は脅迫を開始し、それによって被害者を傷害すれば、性交等は未遂であったとしても強制性交等致傷罪が成立することになるのです。
今回のAさんは、事件当日から時間が経って逮捕されていますが、事例の内容だけではVさんが怪我をしているのかどうかはわかりません。
ある程度時間が経ってから診断書が提出され、被害者が怪我をしていることが分かったということもあり得ますから、容疑をかけられている罪名が強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪に切り替わる可能性も視野に入れつつ、弁護活動を行うことが必要となるでしょう。
・弁護士の活動
未遂とはいえ、強制性交等罪は法定刑からも分かる通り非常に重い犯罪です。
少年事件の場合、原則として少年は刑罰によって処罰されることはありません。
少年事件の手続きでは、その少年の更生にはどういった処分が適切なのかが調査され、判断されます。
ですから、法定刑の軽重で一概にその処分が決まるというわけではありません。
しかし、これだけ重い刑罰が定められているほど重大な犯罪をしてしまうということは、それだけの原因が少年自身の内部やその周囲の環境にある可能性がある、と判断されることは十分考えられます。
だからこそ、少年による強制性交等事件では、その少年本人だけでなく、その周囲のご家族等が協力して更生のための環境づくりをしていく必要があります。
少年事件に強い弁護士がいれば、そのサポートを行うことができます。
例えば、被害者の方への謝罪は、少年自身やその家族がどういったことをしてしまったのか反省し受け止めることにつながると考えられますが、特に強制性交等事件のような暴力や脅迫をともなう性犯罪事件では、被害者の方へ直接連絡を取りお詫びをすることは非常に難しいです。
弁護士が間に入ることで、少しでも被害者の方の不安を軽減し、かつ少年やその家族の謝罪や反省を伝えられることが期待できます。
また、少年が再犯をしない環境づくりのためには、少年自身の反省だけでなく、その原因を探り対策を立てることも重要です。
第三者であり少年事件の知識・経験のある弁護士であれば、家族には相談しづらいことも相談しやすく、客観的なアドバイスをもらうことも可能です。
強制性交等事件で子どもが逮捕されてしまったら、まずは一度、少年事件に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕されてしまった少年に弁護士が直接会いに行く初回接見サービスもございます。
未成年の少年が逮捕されてしまえば、その不安は大きいものでしょう。
弁護士が直接少年に会って、少年事件の流れやアドバイスを伝えることで、その不安を軽減することもできます。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された①
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された①
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府亀岡市に住んでいるAさん(高校3年生)は、インターネットサイトでアダルトビデオを見るうちに、路上で女性を襲うという設定のアダルトビデオに魅力を感じるようになりました。
次第にアダルトビデオの内容のようなことを自分でやってみたいと思うようになったAさんは、ある日、京都府亀岡市内の路上を歩いていた女性Vさんを後ろから羽交い絞めにして路地裏に連れ込むと、Vさんの服を脱がせその体を触るなどしました。
Aさんは無理矢理性交をしようと嫌がるVさんの体を押さえて胸や臀部を触っていたのですが、Vさんが大声を上げて人を呼んだため、「このままでは見つかってしまう」と思い、その場から逃走しました。
後日、Aさんの自宅に京都府亀岡警察署の警察官がやってきて、Aさん自宅の家宅捜索を行うとともに、Aさんに逮捕状を見せました。
Aさんの両親は、自分たちの子どもが逮捕される事態となったことに驚き、警察官にAさんの容疑を聞きましたが、詳しく教えてもらえませんでした。
困ったAさんの両親は、刑事事件と少年事件を取り扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・強制性交等未遂罪
刑法に定められていた強姦罪が刑法の改正によって強制性交等罪となったのは、一昨年の平成29年7月のことです。
すでに刑法改正から2年が経過しているため、強制性交等罪という名前に違和感もなくなってきたのではないでしょうか。
強制性交等罪は、刑法177条に規定されている犯罪です。
刑法177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法改正前の旧強姦罪では、被害者が女性に限定されていたり、対象となる行為が性交のみであったりしたのに対し、強制性交等罪となってからは、被害者に男女の限定が無くなり、さらに対象とされる行為も性交だけではなく肛門性交や口腔性交も含まれるようになりました。
また、今回の事例のAさんの事件は少年事件として扱われるため、原則として刑務所へ行くということはありませんが、法定刑も変更されていることに注目が必要です。
旧強姦罪は有罪となった場合「3年以上の有期懲役」に処せられることとなっていましたが、強制性交等罪ではその法定刑も引き上げられ、「5年以上の有期懲役」に処せられることとなりました。
現在の日本の制度では、執行猶予は言い渡された刑が3年以下の懲役でなければつけることができませんから、この法定刑の引き上げも非常に大きな変更であったといえるでしょう。
さて、この強制性交等罪には、未遂罪も規定されています。
刑法180条(未遂罪)
第176条から前条までの罪の未遂は、罰する。
未遂罪とは、その犯罪を実現しようと実行に取り掛かったものの、完遂することができなかったという場合を処罰する犯罪です。
刑法43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
未遂罪は通常、この刑法43条の条文の前段部分を指します。
後段部分はそれとは別に「中止犯(中止未遂)」と呼ばれたりします。
全ての犯罪に未遂罪があるわけではなく、未遂罪は個々の犯罪ごとに特別に規定されています。
強制性交等罪については、前述した刑法180条により未遂罪が規定されていることから、強制性交等罪を実現しようとして実行に取り掛かったがやり遂げなかった、という場合には強制性交等未遂罪が成立することになるのです。
では、具体的にどのような場合に強制性交等未遂罪が成立するのでしょうか。
先ほど記載したように、未遂罪が成立するには犯罪の実行に取り掛かったということ(「実行の着手」と呼ばれます。)が必要です。
強制性交等罪においては、性交等の行為を開始すること、もしくは性交等をするための手段としての「暴行又は脅迫」を開始した時点で、強制性交等罪の実行に取り掛かった=「実行の着手」があったと考えられています。
つまり、たとえ性交等に取り掛かっていなかったとしても、性交等をするために暴行や脅迫を行っていればその時点で強制性交等未遂罪は成立するということになります。
今回のAさんは、性交等をする目的でVさんを羽交い絞めにして路地裏に連れ込み、嫌がるVさんを抑えて体を触っています。
こうしたことから、Aさんは少なくとも強制性交等罪のいう「暴行」を用いてVさんと性交等をしようとしていると考えられ、「暴行」に取り掛かっていると考えられます。
しかし、結果としてAさんはVさんと性交等をすることはなく、体を触るにとどまっていますから、強制性交等罪に定められている行為を完遂したというわけではありません。
つまり、Aさんには強制性交等未遂罪が成立すると考えられるのです。
ここまで強制性交等未遂罪についてみてきましたが、実はAさんにかけられた容疑は、強制性交等未遂罪から変更される可能性もあります。
そちらについては、次回以降の記事で取り上げます。
刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、強制性交等未遂事件に関するご相談や少年事件に関するご相談をいつでも受け付けております。
子どもが逮捕されてしまって困っている、子どもが起こしてしまった少年事件で悩んでいるという場合には、まずは一度弊所弁護士までご相談ください。
向日市の公衆トイレで建造物侵入盗撮事件
向日市の公衆トイレで建造物侵入盗撮事件
向日市の公衆トイレでの建造物侵入盗撮事件について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府向日市に住むAさん(高校2年生)は,アダルトサイトを見ているうちに,自分でも盗撮をしてみたいと考えるようになりました。
そこでAさんは,近所にある公園の公衆トイレに盗撮カメラを仕掛けて盗撮をしようと考え,自宅近くにある公園の女子トイレに侵入してカメラを設置しました。
しかし後日,Vさんがトイレを利用しようとした際,Aさんが仕掛けたカメラを発見し,京都府向日町警察署へ通報しました。
捜査の結果,Aさんは京都府向日町警察署の警察官に建造物侵入罪と京都府迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されました。
(フィクションです。)
今回のAさんは,建造物侵入罪と京都府迷惑防止条例違反の容疑で逮捕されていますが,この2つの犯罪についてみていきましょう。
~建造物侵入罪~
正当な理由がないのに建造物に侵入した者には,建造物侵入罪(刑法130条前段)が成立し,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科せられます。
刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物侵入罪の対象となる「建造物」は,住居と邸宅以外の建物を広く含みます。
ですから,今回Aさんが立ち入った公園の女子トイレも「建造物」に当たると考えられます。
そして,建造物侵入罪の「侵入」とは,管理権者の意思に反した立ち入りをいいます(最決昭和31年8月22日)。
Aさんは,盗撮目的という不当な目的で女子トイレに入っています。
そのような立ち入りは,公園の管理権者の意思に反するものといえるでしょう。
こうしたことから,Aさんの行為は建造物侵入罪に当たると考えられます。
~京都府迷惑防止条例違反~
京都府迷惑防止条例では,盗撮行為自体はもちろんのこと,盗撮するためにカメラを設置したり差し出したりする行為も禁止しています。
京都府迷惑防止条例3条2項
何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1号 みだりに,着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
2号 みだりに,前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み,又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
※注:「前項に規定する方法」とは,「他人を著しく羞恥させ,又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法」のことを指します。
今回,Vさんはトイレを利用する前にAさんの盗撮カメラに気づいたためにおそらくVさんの下着等については盗撮ができていないでしょう。
しかし,このように盗撮行為自体ができていない場合であっても,上記の京都府迷惑防止条例によって規制されているのです。
今回のAさんも,女子トイレ内に盗撮用のカメラを設置していますから,「着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等」しているといえます。
そのため,Aさんは京都府迷惑防止条例違反になると考えられるでしょう。
~少年の盗撮事件と弁護活動~
少年の盗撮事件の場合,性犯罪であるために,少年自身が保護者に犯行について話したくないがために否認してしまったり,保護者の手前正直な理由や態様を話せなかったりすることもあります。
少年事件では,少年が再犯をしないために,更生をするためにどのような処分とすべきかが重視されます。
そのため,少年が事件について周囲ときちんと話し合えないということは,この更生のための環境を作る上でデメリットとなってしまう可能性が出てきます。
ですから,そういった場合には,第三者的立場であり,さらに少年事件の知識のある弁護士がサポートとして入ることに効果が期待できるのです。
第三者であるからこそ,少年が相談しやすい立場であり,少年事件の手続きの上でもアドバイスを送ることができます。
また,少年事件といえど,被害者の方に対する謝罪や弁償を行うこと,示談締結は大切なことです。
建造物侵入罪の示談の相手方は建造物の管理者となりますが,今回のVさんのように実際に盗撮被害に遭いそうになった女性がいるような場合には,そのような実質的な被害者と示談することもあり得ます。
こうした被害者や被害に遭いそうになった方への謝罪により,少年自身やその家族が事件について受け入れ,反省していることを示すことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では,少年事件についてのご相談・ご依頼も承っております。
まずはお気軽にご連絡ください(0120-631-881)。
のぞきで少年事件②
のぞきで少年事件②
~前回からの流れ~
Aくんは、京都市下京区の中学校に通っている15歳です。
ある日の下校途中、Aくんは自分の好みの女性がすぐそばのマンションの1階の部屋に入っていくのを目撃しました。
Aくんは女性のことが気になり、しばらくその姿を見ていると、ちょうどマンションの脇道部分に面している窓が風呂場の窓であることに気がつきました。
興味が出てきてしまったAくんは、その風呂場の窓の方へ行き、女性が風呂に入っている様子をのぞくようになりました。
後日、ついに女性がAくんののぞき行為に気づき、京都府下京警察署に通報しました。
その後の捜査でAくんがのぞき事件の犯人であることが発覚し、Aくんは京都府下京警察署に呼ばれることになりました。
Aくんの両親は寝耳に水のことで驚き、Aくんになぜそんなことをしたのか問い詰めましたが、Aくんはやましい気持ちがありなかなか両親に話すことができず悩んでいます。
そこで、AくんとAくんの両親は少年事件に精通している弁護士に相談し、のぞき事件への対応や、これからどういった活動をすべきなのかを相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・のぞき事件と住居侵入罪・建造物侵入罪
前回は、のぞき行為自体がどういった犯罪に抵触するのかについて取り上げましたが、のぞき事件では他にも犯罪が成立する可能性があります。
のぞきをするためにマンションの部屋やベランダ、敷地内に入っていたような場合には、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する可能性が出てくるのです。
刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
住居侵入罪・建造物侵入罪は刑法の同じ条文に定められており、どこに侵入したかで罪名が変わります。
今回のようなのぞき事件の場合、女性の部屋やベランダに侵入したような場合は住居侵入罪が、マンションの敷地内に侵入したような場合は建造物侵入罪が成立すると考えられます。
これは、住居侵入罪や建造物侵入罪は、その住居や建造物の管理者の意思に反して侵入することで成立すると解されていることからで、マンションの個別の部屋やそれに付随するベランダはそこの住人が管理しており、そうでないマンションの共用部分や敷地内についてはマンションの管理人やオーナーが管理していることから、罪名が変化するのです。
こうした場合、示談交渉の相手も侵入した場所の管理者になるため、住居侵入罪となるか建造物侵入罪となるかでは示談交渉の相手も異なってくることにも注意が必要です。
また、住居侵入罪・建造物侵入罪については、実際にのぞき行為が達成されていなかったとしてものぞき目的で部屋内やベランダ内、マンションの敷地内に入っただけで成立してしまうことにも注意が必要となります。
・のぞきと少年事件
特に、今回のAくんがそうであるように、少年事件、とりわけ性犯罪にかかわるようなものでは、なかなか少年自身が家族に素直に話ができないケースも多く見られます。
実際にはやってしまったことに間違いがないにもかかわらず親の手前容疑を認められずに話がこじれてしまった、少年事件を起こした原因を正直に話すことができずに再犯防止のための対策が立てられなかった、というケースも少なくありません。
だからこそ、第三者である弁護士のサポートを受けながら少年事件に対応していくことで、スムーズな解決を目指すことができます。
親などの身近な人にはなかなか話しにくいことであっても、他人だからこそ打ち明けやすいというケースもあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱ってきていますから、まだ発展途上の少年が当事者だからこそ悩むポイントも多い少年事件への対応も心得ています。
まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の初回無料法律相談は土日祝日も対応していますから、平日は仕事や学校があって相談しづらい、という少年やそのご家族の方でも安心です。
ご予約・お問い合わせも24時間いつでも受け付けていますから、遠慮なく0120-631-881までお電話ください。
のぞきで少年事件①
のぞきで少年事件①
Aくんは、京都市下京区の中学校に通っている15歳です。
ある日の下校途中、Aくんは自分の好みの女性がすぐそばのマンションの1階の部屋に入っていくのを目撃しました。
Aくんは女性のことが気になり、しばらくその姿を見ていると、ちょうどマンションの脇道部分に面している窓が風呂場の窓であることに気がつきました。
興味が出てきてしまったAくんは、その風呂場の窓の方へ行き、女性が風呂に入っている様子をのぞくようになりました。
後日、ついに女性がAくんののぞき行為に気づき、京都府下京警察署に通報しました。
その後の捜査でAくんがのぞき事件の犯人であることが発覚し、Aくんは京都府下京警察署に呼ばれることになりました。
Aくんの両親は寝耳に水のことで驚き、Aくんになぜそんなことをしたのか問い詰めましたが、Aくんはやましい気持ちがありなかなか両親に話すことができず悩んでいます。
そこで、AくんとAくんの両親は少年事件に精通している弁護士に相談し、のぞき事件への対応や、これからどういった活動をすべきなのかを相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・のぞき事件と軽犯罪法
のぞき事件の場合、その態様によっては成立する犯罪が分かれます。
上記のAくんのように他人の風呂場をのぞき見した場合、まずは軽犯罪法違反とされる可能性があります。
軽犯罪法1条23号では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を軽犯罪法違反とすることが規定されており、これに違反すると、拘留又は科料に処せられる可能性があります(ただし、Aくんの事件は少年事件となるため、原則として刑罰を受けることはありません。)。
なお、この「拘留」は、1日以上30日未満刑事施設に収容される刑罰のことで、捜査段階で逮捕に引き続いて行われる身体拘束である「勾留」とは別物です。
そして、「科料」は1,000円以上1万円未満を徴収する財産刑です。
・のぞき事件と迷惑防止条例違反
今回のAくんのように他人の風呂場をのぞき見た場合は、先述のように、軽犯罪法違反事件とされるケースが多いです。
しかし、その一方で、のぞきをした場所や態様が違えば、成立する犯罪も変わる可能性があるのです。
例えば、デパートや公園など、不特定多数の人が出入りする、いわゆる「公共の場所」で他人の下着等に対してのぞきを行った場合、軽犯罪法違反事件ではなく、各都道府県に定めのある、迷惑防止条例違反事件とされる可能性もあります。
京都府の迷惑防止条例(京都府迷惑行為防止条例)では、以下のような規定があります。
京都府迷惑防止条例3条1項
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1~3号 (略)
4号 みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
5号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に鏡等を差し出し、置く等をすること。
6号 みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を見ること。
2項
何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
2号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
こうしたのぞき行為であった場合、以上の京都府迷惑防止条例違反となり、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(ただし、先ほど触れた通り、Aくんののぞき事件は少年事件として扱われるため、原則として刑罰が科せられることはありません。)。
このように、のぞき行為自体でも、その態様や状況で成立する犯罪が変わってきます。
少年事件では原則として刑罰を受けることはありませんが、成人の刑事事件の場合では刑罰の重さも異なってきますし、軽犯罪法違反なのか京都府迷惑防止条例違反なのかによって逮捕される可能性も異なってきます。
こうした違いやそれぞれに行うべき対応は、事案によって変わるものですから、まずは弁護士に相談し、適切な対応の仕方や見通しを聞いてみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、のぞき事件についてのご相談ももちろんお任せいただけます。
刑事事件・少年事件にお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士にご相談ください。
ご来所いただいての法律相談は初回無料でご利用いただけます。
少年鑑別所での面会も弁護士へ
少年鑑別所での面会も弁護士へ
15歳のAさんは、京都市下京区で複数痴漢事件を起こし、京都府下京警察署に逮捕されました。
その後、釈放されたAさんでしたが、事件が京都家庭裁判所に送致されると、観護措置となることになり、少年鑑別所に収容されることになりました。
警察署から釈放されていたため、たいしたことにはならないと考えていたAさんとその両親は、少年鑑別所に収容となったことに不安を覚え、少年事件にも対応している弁護士に相談し、まずはAさんに面会に行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年鑑別所
少年鑑別所とは、少年の資質や環境などを専門家が専門的に調査するための施設です。
少年事件を起こした少年が少年鑑別所に収容されるパターンは主に2つあります。
まずは、捜査段階=被疑者として警察や検察に捜査されている段階で行われる「勾留に代わる観護措置」となった場合です。
「勾留に代わる観護措置」となった場合、被疑者である少年の留置場所は、警察署の留置所ではなく少年鑑別所となります。
「勾留に代わる観護措置」とは、逮捕後の10日間、少年鑑別所に身体拘束をして捜査を行うもので、少年事件独特の手続きです。
この「勾留に代わる観護措置」となった場合、成人の刑事事件に見られるような勾留の延長は認められず、最大10日間の身体拘束期間の後は事件はすぐに家庭裁判所に送致されることになります。
そして、「勾留に代わる観護措置」の後、家庭裁判所に事件が送致された場合、次に説明する「観護措置」に自動的に切り替わり、引き続き少年鑑別所に身体拘束されることになります。
次に、事件が捜査機関から家庭裁判所に送致された後、「観護措置」となって、少年鑑別所に入ることになった場合です。
この場合の観護措置とは、通常4週間~8週間程度、少年鑑別所において、少年の性格等を専門的に調査するものを言います。
最初に触れた少年鑑別所の役割は、この「観護措置」の際に発揮されます。
「観護措置」中、少年は少年鑑別所に収容され、家庭裁判所調査官や少年鑑別所の技師等から調査されます。
・少年鑑別所での面会
少年事件を起こした少年が少年鑑別所に収容された場合、警察署で面会するのとは何が異なるのでしょうか。
まず、少年鑑別所では、警察署のようにアクリル板の仕切りなしで面会することが可能となります(ただし、少年鑑別所によっては、勾留に代わる観護措置の場合はアクリル板のある部屋で面会させる場所もあります。)。
少年本人と遮るものなくコミュニケーションを取ることができるため、ご家族にとっても少年にとっても、ストレスの少ない面会ができます。
また、警察署での一般面会は近親者以外も可能ですが、少年鑑別所での一般面会は、近親者や保護者に限られており、誰でも面会できるというわけではありません。
なお、面会時間が10分~20分と限られていたり、受付が平日の昼間のみであったりすることは、警察署での一般面会と同様です。
しかし、土日祝日の面会については、弁護士であっても予約が必要であったりできなかったりするため、そういった点では警察署等の留置とは異なります。
どちらにせよ、ご家族の面会の際には事前に少年鑑別所や警察署にその日・その時間帯の面会が可能かどうか確認されてから面会に向かわれることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年鑑別所への接見依頼も承っております(初回接見サービス)。
少年事件も多く取り扱う弁護士が、少年本人はもちろんそのご家族にも、丁寧にご相談に乗らせていただきます。
接見のご依頼は、0120-631-881までお問い合わせください。
カツアゲ恐喝事件で少年逮捕
カツアゲ恐喝事件で少年逮捕
京都府綾部市に住んでいるAさん(17歳)は、素行の好くない友人たちと付き合っており、夜遊びや学校をさぼることを頻繁にしていました。
ある日、Aさんがその友人といたところ、後輩のVさんとその友人が歩いてきました。
Vさんらがおこづかいをたくさんもらったという話をしていたことから、AさんらはVさんらからお金を巻き込んでやろうと数人でVさんらを取り囲み、「金を渡さないと痛い目を見る」などと言ってカツアゲを行いました。
VさんらはAさんらにリンチされるのではないかと怯え、持っていたお金をAさんらに渡しました。
その後、Vさんらが帰宅して親に相談をしたことからこのカツアゲが発覚し、後日、Aさんは京都府綾部警察署に恐喝罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、まさか息子が逮捕されるような事態になるとは思わず、慌てて少年事件を取り扱っている弁護士に相談に行きました。
(※この事例はフィクションです。)
・カツアゲで恐喝罪
カツアゲとは、脅して金品を巻き上げる行為を指す言葉で、カツアゲは刑法上の恐喝罪にあたるとされています。
恐喝罪は、刑法249条に規定されている犯罪で、「人を恐喝して財物を交付させた者」に成立します。
今回のAさんの起こした事件は少年事件として処理されるため、原則として刑罰を受けることにはなりませんが、成人の刑事事件で恐喝罪として検挙された場合には、10年以下の懲役という刑罰を受ける可能性が出てきます。
そもそも「恐喝」するとは、財物を交付させるために暴行又は脅迫によって相手を畏怖させることを言います。
今回のAさんも、Vさんらからお金を巻き上げるために不良仲間とVさんらを取り囲んで脅していることから、恐喝をしていると言えそうです。
そして、Vさんらはその脅し怯え、Aさんらにお金を渡していることから、AさんらはVさんらに「財物」を「交付させた」と言えそうです。
このことから、Aさんには恐喝罪が成立すると考えられるのです。
ただし、注意すべきは恐喝罪の「恐喝」にあたる暴行又は脅迫は、相手の反抗を抑圧しない程度のものであることが必要とされるという点です。
もしも相手の反抗を抑圧するほどの暴行又は脅迫であると認められれば、恐喝罪ではなく、強盗罪が成立する可能性が出てきます。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役となっていますから、恐喝罪と比べても重い犯罪であることが分かります。
Aさんの場合は少年事件ですから、原則こうした刑罰は受けませんが、それでもより重い犯罪が成立することで、処分に影響が出てくる可能性があります。
・少年のカツアゲ恐喝事件
今回のように、20歳未満の者が法律に触れる事件を起こした場合には、少年事件として扱われ、最終的に家庭裁判所の判断によって処分が決められることになります。
繰り返し記載しているように、少年事件では、法定刑の重い犯罪だから必ず少年院に行くとも限りませんし、逆に法定刑の軽い犯罪だから何も処分を下されないとも限りません。
通常の成人の刑事事件とは違い、少年事件ではその少年のその後の更生が第一に考えられるためです。
しかし、では少年事件において、通常の成人の刑事事件と同じような弁護活動は不要か、というとそういうわけでもありません。
例えば、今回のAさんのカツアゲによる恐喝事件では、Vさんという被害者がいます。
この被害者に対して謝罪をする、被害に遭った分について賠償をする、ということは、少年事件であっても全く不要というわけではありません。
確かに、起訴・不起訴を決める成人の刑事事件に比べれば、少年事件では示談は必須というわけではありませんが、少年が反省しているのかどうか、少年自身やその家族・周囲の人がどのように事件について受け止めているのか、といった事情を示す1つの材料として、被害者に謝罪をしていることや示談をしていることは有効であるのです。
ただし、今回の事件のように、子どもの間で起きてしまった少年事件では、示談するにも困難が伴うことも多々見られます。
未成年者との示談では、示談交渉の相手は親となりますが、自分のお子さんが被害に遭ったとなれば、当然のことながら被害感情も小さくありません。
そうしたことから当事者同士の示談交渉で逆に話がこじれてしまうケースもあります。
だからこそ、少年事件の弁護活動にも専門家であり第三者である弁護士を介入させることが望ましいと言えるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
被害者との示談交渉だけでなく、釈放を目指した身柄解放活動や取調べ対応のアドバイスまで、一貫した弁護活動をご提供いたします。
京都府の少年事件にお困りの際は、少年事件の取り扱いも多い弊所弁護士に、ぜひご相談下さい。
夏休みに大麻所持で逮捕
夏休みに大麻所持で逮捕
京都市右京区に住んでいる高校1年生のAさんは、夏休み中、自由な時間が増えたことで、「何かもっと楽しいことはないか」とインターネットサーフィンをしていました。
すると、とあるSNSで知り合ったBさんから「楽しい気持ちになれるものがある」と言われ、Aさんはそれを譲り受けることにしました。
その後、AさんはBさんと会い、Bさんから「楽しい気持ちになれるもの」を受け取りました。
自宅に帰ってからAさんがBさんから渡されたものを開封してみると、乾燥させた植物とパイプが入っていました。
Aさんは、その植物が何なのかは分かりませんでしたが、なんとなくよくないとされている類のものであろうと思いました。
しかし、Aさんは、どうせ少しの間しか使わないのだからばれないだろうと考え、同封されていたパイプを利用してその植物を吸っていました。
後日、Aさん宅に京都府右京警察署の警察官が訪れ、Aさんは大麻取締法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさんは大麻の売人であり、その連絡先等からAさんへの大麻譲渡が露見したようです。
(※この事例はフィクションです。)
・大麻取締法違反
ご存知の方も多いように、大麻は違法薬物です。
大麻については、その所持や譲渡等が大麻取締法によって規制されており、これに違反すれば大麻取締法違反という犯罪になります。
大麻の使用自体は、麻の生産者や研究者が偶然その成分を摂取してしまう可能性があること等から大麻取締法で禁止されてはいませんが、大麻を使用するのに所持はしない、ということは物理的に不可能であるため、大麻の使用をしても大麻所持の大麻取締法違反となることが多いです。
なお、今回のAさんの事件は少年事件であるため、Aさんは基本的には刑罰を受けることはありませんが、営利目的でない大麻所持については、「5年以下の懲役」(大麻取締法24条の2 1項)という刑罰が定められています。
ここで、今回のAさんは、「大麻である」というはっきりした認識を持って大麻を所持したわけではありません。
こうした場合でも、大麻取締法違反は成立するのでしょうか。
実は、一般にこうした違法薬物事件では、犯罪が成立するにあたって違法薬物名まではっきり認識している必要はなく、「何らかの違法薬物だろう」という程度の認識があればよいと考えられています。
Aさんも、よくないものであろうと認識しながら大麻を所持しているため、大麻取締法違反の故意があると認められる可能性があります。
・少年の大麻取締法違反事件
SNSの発達・普及等により、たとえ未成年者であっても、大麻等違法薬物の売人にコンタクトを取りやすくなっています。
実際に、最近では中学生や高校生が大麻取締法違反の容疑で逮捕される事件も起きています。
大麻は他の違法薬物よりも比較的安価なことが多いことから、こうした若年層でも手が出しやすくなってしまっているのかもしれません。
しかし、一度大麻という違法薬物に手を出してしまうと、違法薬物に手を出すという行為のハードルが下がり、大麻や他の違法薬物に手を出しやすくなってしまうといわれています。
それ自体への依存症の危険等もあることから、やはり違法薬物には触れないよう注意していくべきでしょう。
先ほど触れたように、Aさんは20歳未満であるため、この大麻取締法違反事件は少年事件として扱われます。
ただし、家庭裁判所へ事件が送られるまでは、成人の刑事事件とほぼ同じ扱いを受けるため、逮捕や勾留といった身体拘束がなされる可能性が高いでしょう。
大麻取締法違反事件などの違法薬物事件では、証拠隠滅が容易であったり関係者がいたりする性質上、逮捕等の身体拘束を伴う捜査が行われやすいといわれています。
また、少年が薬物に依存している可能性があったり、大麻に手を出した経緯に調査すべき点があれば、家庭裁判所に行ってからも、観護措置という形で少年鑑別所に収容されての調査が行われることも考えられます。
さらに、依存が深ければ、最終的には医療少年院に送致され、治療を受けるということになる可能性もあります。
こうした身体拘束や処分を回避したい場合には、少年が社会内でも更生可能であるということを主張していかなければなりませんが、そのためにはそれが可能であると客観的に認められる環境を作っていかなければなりません。
そのために、刑事事件だけでなく少年事件に強い弁護士に相談・依頼してみることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年による違法薬物事件のご相談・ご依頼も受け付けております。
夏休み中の少年事件にお困りの方、大麻取締法違反事件にお悩みの方はお気軽にご相談ください。