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夫婦喧嘩で逮捕されたら

2021-08-12

夫婦喧嘩で逮捕されたら

夫婦喧嘩逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

~事例~

京都府宇治市に住んでいるAさんは、妻であるVさんと2歳娘であるBちゃんとともに暮らしていました。
Bちゃんの世話はVさんが主になって行っていましたが、Aさんも平日の家事や食事の支度を積極的に行うなして生活していました。
しかしある日、酒を飲んだAさんとVさんはBちゃんの教育方針について言い争いになり、夫婦喧嘩に発展してしまいました。
そして、カッとなったAさんは、勢いにまかせてVさんの首をしめてしまいました。
Vさんは痛みを感じ、大声で助けを呼びました。
Vさんの悲鳴を聞いた近所の人が110番したことで、京都府宇治警察署の警察官が駆け付けました。
Vさんの首には爪のひっかき跡ができたのみで他に怪我は残りませんでしたが、VさんがAさんから首を狙われたと言っていたことから、Aさんは殺人未遂罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、Aさんが殺人未遂罪逮捕されたと聞いて驚き、急いで刑事事件に対応している弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・夫婦喧嘩から殺人未遂事件に?

今回のAさんは、殺人未遂罪の容疑で逮捕されてしまっています。

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期もしくは7年以上の懲役に処する。

殺人罪で問題とされる行為のことを、殺人の実行行為といいます。
この殺人の実行行為は、死亡結果を生じさせる現実的危険性を有する行為をいいます。
この行為に当たるかは、その行為の態様、創傷した部位や程度などを考慮して判断されます。
典型的には、人の腹の中心をナイフで刺すような行為は、人を死亡させる危険性の高い行為といえますから、殺人の実行行為と認められます。

今回のAさんの事例で考えてみましょう。
体の生命維持の中でも最も大事な器官の一つである首を力のある男性=Aさんが絞めたとなれば、被害者=Vさんが死んでしまう可能性は否定できないと思われます。
そうなると、AさんがVさんの首を絞めた力や時間などにもよりますが、Aさんの行為が殺人罪の実行行為であると捉えられる可能性もあるということになります。

ここで、未遂犯について確認しておきましょう。
未遂犯は、その犯罪の実行行為をしたものの、その犯罪の構成要件的結果が発生しなかった場合に成立します。

刑法第43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。

未遂犯は全ての犯罪に成立するわけではなく、個別に定められます。
つまり、未遂犯の規定がない犯罪では、未遂犯は成立しないということです(例えば、暴行罪に未遂犯は規定されていませんから、暴行未遂罪はありません。)。
殺人罪については、以下のように未遂犯が規定されています。

刑法第203条
第199条及び前条の罪の未遂は、罰する。

今回のAさんの逮捕容疑である殺人罪では、犯罪の結果となるのは被害者の死亡事実です。
Aさんの行為が殺人罪の実行行為に当たると仮定しても、今回の事例でVさんは軽傷を負ったのみで死亡していません。
つまり、被害者の死亡という殺人罪の結果が発生していませんので、条文の条件だけ見れば、Aさんには殺人未遂罪が成立する可能性があるということになります。

しかし、今回の事例では、AさんとVさんのトラブルはあくまで夫婦喧嘩であり、Aさんには殺意がない=殺人罪の故意がなかったと考えられます。
殺人罪殺人未遂罪も、成立するには故意が必要ですから、Aさんに殺人罪の故意がないのであれば殺人未遂罪は成立しないことになります。

ですが、Aさんの逮捕容疑は殺人未遂罪ですから、捜査機関としてはひとまずAさんに殺人未遂罪が成立するとして事件を捜査することになるでしょう。
ですから、Aさんに殺人罪の故意がなかったことなどからAさんには殺人未遂罪が成立しないことや、成立するにしてもVさんに怪我を負わせたことによる傷害罪にとどまることなどをきちんと主張し対応していく必要があると考えられます。
そのためには、逮捕直後から始まると予想される取調べへの対応や、再犯防止策の構築などに早期から取り組んでいくことが必要です。
だからこそ、事件が起こってからなるべく早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要なのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、夫婦喧嘩から刑事事件に発展したケースについてのご相談・ご依頼も承っています。
夫婦喧嘩が発端とはいえ、事件態様によっては今回のAさんのケースのように殺人未遂罪という重大犯罪の容疑がかかってしまうこともあります。
そういった時こそ専門家のサポートを受けることが大切ですから、まずはお気軽にお問い合わせください。

クレジットカード詐欺事件で逮捕されたら

2021-08-09

クレジットカード詐欺事件で逮捕されたら

クレジットカード詐欺事件逮捕されてしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは京都市右京区にある商業施設で、他人名義のクレジットカードを自己名義のものであると偽って勝手に利用し、合計約10万円分の商品を購入しました。
購入する際に、一部の商品についてAさんはクレジットカードの裏に書いてある、本来のクレジットカードの名義人の氏名を利用してクレジットカード売上票に署名していました。
その後、Aさんは詐欺罪の容疑で京都府右京警察署逮捕され、取調べを受けることになりました。
警察からAさんが逮捕されたと聞いたAさんの家族は、京都市内の逮捕に対応してくれるという弁護士に相談し、ひとまずAさんに会って事情を聞いてきてもらうと同時に、Aさんに対して刑事手続きに関するアドバイスをしてもらうよう依頼しました。
(※この事例はフィクションです。)

・他人名義のクレジットカードを利用すると…

まず、他人名義のクレジットカードを利用する行為は詐欺罪(刑法第246条)に問われる可能性があります。

刑法第246条
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪が適用されるのは、店員など人に自身が名義人であると誤信させ財物の交付を受けたり財産上の利益を得たりした場合です。

ただし、店舗で直接店員と対面して販売を受けた場合などと異なり、クレジットカードの加盟ATMでキャッシング機能を利用したり、インターネットショッピングでクレジットカード決済をしたり、コンピュータの自動処理システムなどによって人を経由せずに他人名義のクレジットカードを利用し財物や財産上の利益を得た場合は、詐欺罪はではなく電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)が適用される可能性も考えられます。
電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、詐欺罪と同じ10年以下の懲役です。

注意しなければいけないのは、クレジットカードの本来の名義人の許諾や了承を得て他人名義のクレジットカードを利用した場合であっても、この詐欺罪電子計算機使用詐欺罪に問われる可能性があるということです。
たとえクレジットカードの名義人の了承を得ていたとしても、自らが名義人本人であると装ってしまえば人を欺いていることに変わりはないと考えられるからです。
また、クレジットカードを名義人以外の者に使用させることは、ほとんどの場合利用規約などによって禁止されています。
民事上も違法行為とされるおそれがあることから、他人名義のクレジットカードの利用は避けることが無難でしょう。

・他人名義の署名をすると…

今回の事例のAさんは、他人名義のクレジットカードで商品を購入する際に、名義人になりすましてクレジットカード売上票に署名しています。

このように、クレジットカード売上票に名義人の氏名を冒用する=本人になりすまして署名する行為は、先ほど確認した詐欺罪の「人を欺」く行為となり得るほかに、有印私文書偽造罪(刑法第159条第1項)、および同行使罪(刑法第161条第1項)になりうると評価されるおそれがあります。

刑法第159条第1項
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

刑法第161条第1項
前2条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。

有印私文書偽造罪にいう「偽造」とは、作成名義人と実際の作成者との間に人格の同一性の齟齬がある=名義人と実際に署名した人が違う場合を指します。
今回のケースを例に考えてみると、売上票に氏名を記入されたカードの名義人とAさんとは別人格であり、Aさんが名義人の氏名を記入した行為はこの文書偽造罪の「偽造」に当たる可能性があります。

次に、クレジットカード売上票が「権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画」に当たるかどうかですが、クレジットカード売上票に署名する行為は、カードの名義人であるカード会員がそのカードを利用して商品を購入し代金相当額が指定した口座から引き落とされることを確認する機能などを有するもので、名義人とカード会社や加盟店との間の権利・義務に関する文書あるいはこれに準じる事実証明に関する文書と考えることができます。

よって、Aさんが名義人になりすましてクレジットカード売上票に署名した行為は有印私文書偽造罪・同行使罪に問われる可能性があります。

他人名義のクレジットカードを利用したことによる刑事事件では、名義人、加盟店、カード会社との間に様々な権利・義務などの変動が生じます。
それぞれに対してどのような犯罪が成立するのかを見極めることは容易ではない一方で、明らかにされなければ被害者の特定ができないことにもなりますので示談等の対応も難しくなります。
こうした複雑になりやすい財産犯罪の被疑者となってしまったら、お早めに刑事事件に強い弁護士に事件を相談・依頼し早急に適切な対応を図ることが重要になります。

詐欺罪電子計算機使用詐欺罪有印私文書偽造罪・同行使罪の被疑者となってしまった方、京都府右京警察署逮捕され取調べを受けることになってしまった方は、お早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
0120-631-881では、専門スタッフがご相談者様に合ったサービスのご案内を行っております。
お気軽にお電話ください。

殺人未遂事件の逮捕も弁護士へ

2021-08-05

殺人未遂事件の逮捕も弁護士へ

殺人未遂事件逮捕弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府向日市に住んでいるVさんのことをひどく恨んでいました。
ある日、AさんはついにVさんを殺してやろうと思い立ち、毒物を混入したワインをVさん宛に発送しました。
宅配業者が預かったワインは、配達当日にVさんが不在のため宅配業者の事業所で保管されていましたが、後日、Vさんのもとに届けられました。
受け取ったワインを飲んだVさんは、混入していた毒物のせいで病院に入院する事態に陥りましたが、命に別状はありませんでした。
後の警察の捜査では、ワインに混入された毒は致死量の9割しかありませんでした。
その後、捜査の結果、Aさんがワインに毒物を入れたことが発覚し、Aさんは殺人未遂罪の容疑で京都府向日町警察署逮捕されました。
(※この事例はフィクションです)

・隔離犯

今回のAさんの事例では、Aさんがワインに毒物を仕込み、それを宅配業者に配達させ、後日そのワインを受け取って飲んだVさんを殺そうとしています。
こうしたケースを隔離犯と呼ぶこともあります。
離隔犯とは、行為と結果発生との間に時間的・場所的な間隔が存在する場合のことをいいます。

離隔犯に関わる刑事事件では、行為者が意図しない客体を巻き込んでしまったり、結果の発生時期が前後することなどが考えられます。

・不能犯

不能犯とは、およそ結果が発生する可能性のない行為を行うことで犯罪を実現しようとする場合のことをいいます。
例えば、塩を劇薬であると勘違いして毒殺を図るような場合が不能犯のケースに当たります。
行為者が構成要件に該当する行為を行ったつもりでも、もし不能犯であると認められれば未遂も成立せず処罰されることはありません。

今回のケースでは、Aさんは毒物を混入したワインをVさんに飲ませることで殺害しようとしています。
しかし、ワインに混入された毒の量は致死量の9割にとどまるものでした。
AさんはVさんを殺害しようと考えていますので、殺人未遂罪(刑法第199条、同法第203条)の適用が考えられます。
殺人未遂罪の量刑は殺人罪の法定刑である死刑または無期もしくは5年以上の懲役のうち、刑法第43条によって減軽されたものが言い渡されます。
もっとも、未遂犯だからといって刑法第43条によって必ず減免されるわけではありません。

繰り返しになるかもしれませんが、不能犯に当たるかどうかは、基本的にはある行為が構成要件的結果を発生させる具体的な危険を有するかどうかによって判断されます。
今回のケースでも、毒が致死量の9割にすぎないとはいえ、実際にVさんが入院する事態にまで至っていることから、Vさんの体調などの状況によって死亡するリスクも考えられるというような場合には、特にAさんがVさんに毒入りのワインを飲ませた行為が殺人罪の実行行為に当たるとして殺人未遂罪の成立が肯定される可能性は十分にあります。

・「実行の着手」

先ほど「AさんがVさんに毒入りのワインを飲ませた行為が殺人罪の実行行為に当たる可能性がある」と触れましたが、刑法上、具体的にどの行為が実行行為の始まり=「実行の着手」に当たるかが重要になります。

犯罪は行為について成立するものなので、まだ構成要件該当行為がなされていない実行の着手以前の段階では、未遂犯を含めて犯罪が成立し処罰されることはありません。
ただし、殺人罪や強盗罪といった一部の犯罪については実行の着手前であっても準備行為を処罰するものとして予備罪が設けられています。
殺人予備罪(刑法第201条)の法定刑は2年以下の懲役で、但し書きにより刑を免除することができるとされています。

実行の着手時期については学説上様々な見解があり、大きく主観説と客観説の2つに分類されます。
主観説は、客観的事情によって犯意の存在を確定的に認定できる行為が行われた時点を実行の着手時期とする考えです。
客観説は、さらに形式的客観説と実質的客観説に分けられます。
形式的客観説は、実行行為そのものに先行しこれと密接不可分な行為の開始時点を実行の着手時期とします。
例えば、物を盗むためにその物に手を伸ばす行為が行われた時点などが実行の着手時期となります。
対して、実質的客観説は、構成要件の実現や法益侵害の現実的危険性が認められるときに実行の着手があるものとする考えです。

従来の判例の考え方は形式的客観説の立場に立ったものでしたが、実質的客観説に従ったものと考えられるような判例も存在します(最決昭和40.3.9)。

今回のケースについて客観説をベースに検討すると、Aさんが毒入りワインを発送し宅配業者の下で保管されている段階では、まだVさんが死亡する現実的危険性がなく、Vさんを死亡させるに密接な行為とも言い難いため、殺人罪の「実行の着手」は認められないでしょう。
殺人罪の「実行の着手」が認められるのは、Vさんがワインを受け取りいつでも飲める状態になった段階あるいは実際に飲もうとしている段階に求められることになります。
いずれにせよ、Vさんはワインを飲んでしまっているので殺人未遂罪が成立するものと考えられます。

不能犯として不可罰となるか可罰的未遂となるのか、あるいは実行の着手前であるとして不可罰となるのか実行の着手ありとして可罰的となるのかは大きな違いです。
これらの判断は法律の専門家でも難しい場合が多く、事件の解決や処罰を回避できる可能性を高めるためには刑事事件を数多く扱った経験のある弁護士の知識や分析の提供を受けることが必要になります。

殺人未遂罪の被疑者となってしまった方、京都府向日町警察署で取調べを受けることになってしまった方は、お早めに、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

公務執行妨害事件の逮捕に対応

2021-08-02

公務執行妨害事件の逮捕に対応

公務執行妨害事件逮捕に対応するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府京丹後市でタクシー運転手として働いています。
ある日、Aさんがタクシーの乗客をおろすために交差点内で停止したところ、それを見ていた巡回中の京都府京丹後警察署の警察官から注意を受けました。
Aさんは注意されたことに腹を立てると、警察官に向かって複数回タクシーを前進させました。
警察官は転倒したものの怪我はありませんでした。
しかし、Aさんはその場で公務執行妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが逮捕されたことを知り、Aさんのために何かできないかと弁護士に相談することにしました。
(※令和3年7月25日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・公務執行妨害罪と逮捕

今回のAさんは、公務執行妨害罪の容疑で逮捕されていますが、公務執行妨害罪は刑法に以下のように定められている犯罪です。

刑法第95条第1項
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若し
くは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害罪は、ざっくりと大まかにいえば、公務員が仕事をしているところに暴行や脅迫を加えた者に成立するという犯罪です。
刑法における「公務員」とは「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員」とされていることから(刑法第7条第1項)、今回のAさんの事例で相手となっている警察官も刑法上の「公務員」となります。
そして、今回の事例では、Aさんは巡回中の警察官に対してタクシーを前進させています。
警察官が巡回することは警察官の仕事の1つであり、今回の事例の警察官はその仕事の最中であることから、公務執行妨害罪の「職務を執行するに当たり」という部分にも該当することになります。
さらに、Aさんは警察官に対してタクシーを前進させており、それによって警察官を転倒させていますが、これは「暴行」であると考えられます。
ですから、今回のAさんには公務執行妨害罪が成立すると考えられるのです。

そのAさんは、冒頭でも触れたように公務執行妨害罪の容疑で逮捕されていますが、公務執行妨害事件では現行犯逮捕される事例も少なくありません。
というのも、今回の事例のAさんのように、公務執行妨害罪の「公務員」に当たる人が警察官であることが少なくないからです。
警察官が事件の当事者としてその場にいる場合、犯行を現認してすぐに現行犯逮捕に結びつくため、公務執行妨害事件現行犯逮捕されるというケースがよく見られるのです。

こうした警察官相手の公務執行妨害事件では、基本的には示談締結ができません。
これは、法律上公務執行妨害罪の被害者は国や自治体となっているため、国や自治体相手に示談することは難しいということによります。
後述のように、公務執行妨害罪とは別の犯罪が成立した場合には、その犯罪に関しては被害者となる個人と示談交渉をするというケースもありますが、公務執行妨害罪自体は被害者対応をすることが難しいのが実情です。
だからこそ、それ以外の部分、例えば再犯防止策の構築や反省の深まりを表す反省文や贖罪寄付などに早い段階から取り組み、証拠化していくことが重要となります。

・公務執行妨害罪以外の犯罪

今回のAさんは公務執行妨害罪の容疑で逮捕されていますが、例えばAさんの暴行によって警察官が怪我をしていた場合には、公務執行妨害罪とは別に傷害罪(刑法第204条)が成立することになります。
さらに、Aさんが警察官を殺してしまうつもりでタクシーを前進させ、実際に警察官を殺してしまったり、殺す危険性のある行為に及んでいたりする場合には、殺人罪(刑法第199条)や殺人未遂罪(刑法第203条)の成立も考えられます。

公務執行妨害事件では、暴行が用いられることも多いため、その暴行行為から派生して別の犯罪が成立してしまう可能性があることにも注意が必要です。

公務執行妨害事件、特にAさんの事例のような警察官相手の事件では、逮捕などの身体拘束を受けやすく、さらに示談締結も難しいという事情がありますから、一般の方だけで手続に臨むことは負担が大きいでしょう。
刑事事件に強い弁護士に早めに相談することで、刑事事件に臨むことへの不安・負担の軽減が期待できます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、公務執行妨害事件を含む刑事事件全般に対応しています。
京都府公務執行妨害事件逮捕にお困りの際は、お気軽にご相談下さい。

パスワードの販売で不正競争防止法違反

2021-07-26

パスワードの販売で不正競争防止法違反

パスワードの販売で不正競争防止法違反に問われた事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市山科区に住んでいるAさんは、会社Vが提供しているXという音楽・映像編集ソフトの有料版を利用していました。
Xは、IDとパスワードによって管理されており、有料版を利用している人はそのIDとパスワードを入れることで有料版の機能を使えるようになっていました。
Aさんは、「IDとパスワードをネットオークションに出せば小遣い稼ぎになる」という話を聞きつけ、有料版のXを利用できるIDとパスワードを会社Vに無断でネットオークションに出品し、合計で50人程度の相手にIDやパスワードをメールやメッセージアプリを通じて教えました。
しばらくして、Aさんの自宅に京都府山科警察署の警察官が訪れ、Aさんに不正競争防止法違反の容疑がかかっていることを告げると、Aさんは逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、自分にかかっている不正競争防止法違反という犯罪の中身と、今後の手続について詳しく相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・パスワードの販売と不正競争防止法違反

前回の記事で取り上げた通り、不正競争防止法では、特定の人以外に利用できないように営業上パスワードや暗号化などを用いて制限しているプログラムなどについて、その制限を効果を妨げるような指令符号(パスワード等)をインターネット等を通じて相手に渡す行為などが不正競争防止法の「不正競争」の1つとされ、いわゆる「プロテクト破り」などとも呼ばれています(不正競争防止法第2条第18号)。

今回のAさんの事例にあてはめて考えてみましょう。
まず、今回のAさんが利用していたソフトXの有料版は、有料版を利用している人がIDとパスワードを入れることで有料版の機能を利用できるようになっています。
つまり、有料版Xは、有料版の会員でない人が有料版を利用できないように制限しているものと考えられます。
不正競争防止法第2条第18号の条文と照らし合わせていくと、「他人」=会社Vが、「特定の者以外の者」=有料版の会員でない人に、有料版Xという「影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限」しているものと考えられます。

AさんによってパスワードがXの有料会員でない人に販売され渡されれば、その有料版の会員しか利用できないという制限は妨げられることになります。
すなわち、Aさんのパスワード提供によって本来特定の人以外に制限されているはずのプログラムの利用等が「当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能と」されることになります。
そしてAさんは、そのパスワードを販売してメール等によって販売相手にパスワードを送る=「指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為」をしています。
したがって、Aさんの行為は不正競争防止法のいう「不正競争」に当たると考えられるのです。

では、パスワードの販売によってAさんに不正競争防止法違反が成立するとして、Aさんにはどういった刑罰が考えられるのでしょうか。

不正競争防止法第21条第2項
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第4号 不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、第2条第1項第17号又は第18号に掲げる不正競争を行った者

今回の事例のAさんは、有料版Xのパスワードを販売することでお金を稼ごうとしたようです。
パスワードの販売によって出た利益は、会社Vに無断で不法に取得した利益ということになりますから、Aさんは「不正の利益を得る目的」があったといえるでしょう。
そのため、Aさんが不正競争防止法第2条第18号に違反したとすると、不正競争防止法第21条第2項第4号により、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金、又はこれの併科という刑罰が科せられると考えられるのです。

刑罰を見ていただければわかる通り、不正競争防止法違反は非常に重い犯罪です。
だからこそ、被害者対応や取調べ対応などに早い段階から慎重かつスピーディーに活動していくことが重要なのですが、事件内容が複雑なことや、被害者である企業相手に対応しなければならないことに不安を抱える方もいらっしゃいます。
だからこそ、専門家である弁護士に相談・依頼するメリットも大きい刑事事件と言えるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部刑事事件専門の法律事務所ですから、不正競争防止法違反事件も安心してお任せいただけます。
まずはお気軽に、弊所弁護士までご相談ください。

不正競争防止法違反と「プロテクト破り」

2021-07-22

不正競争防止法違反と「プロテクト破り」

不正競争防止法違反と「プロテクト破り」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市山科区に住んでいるAさんは、会社Vが提供しているXという音楽・映像編集ソフトの有料版を利用していました。
Xは、IDとパスワードによって管理されており、有料版を利用している人はそのIDとパスワードを入れることで有料版の機能を使えるようになっていました。
Aさんは、「IDとパスワードをネットオークションに出せば小遣い稼ぎになる」という話を聞きつけ、有料版のXを利用できるIDとパスワードを会社Vに無断でネットオークションに出品し、合計で50人程度の相手にIDやパスワードをメールやメッセージアプリを通じて教えました。
しばらくして、Aさんの自宅に京都府山科警察署の警察官が訪れ、Aさんに「プロテクト破り」をしたことによる不正競争防止法違反の容疑がかかっていることを告げると、Aさんは逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、自分にかかっている不正競争防止法違反という犯罪の中身と、今後の手続について詳しく相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・不正競争防止法と「プロテクト破り」

今回のAさんは、有料版のソフトウェアXを利用できるパスワード等をネットオークション等で販売していたようです。
一見するとどんな犯罪が成立するのか分かりづらい事例ですが、こういった事例では、Aさんの逮捕容疑でもある不正競争防止法違反という犯罪が成立することが考えられます。

不正競争防止法は、簡単に言えば、文字通り事業者間での不正な競争を防止し、公正な競争を確保するための法律です。
事業者同士は、お互い市場におけるライバルのように競い合っていますが、その競争が不正に行われるようになるとなんでもやり放題になってしまって企業や経済の信用が失われてしまったり、消費者が被害を受けてしまったり、経済の成長が滞ってしまったりすることが考えられます。
そういったことを防止するために、不正競争防止法では公正な競争を確保するための決まりやそれを破った時の罰則などを定めているのです。

こうした不正競争防止法の目的等を見ると、今回のAさんの行為のように、一個人の行動によって不正競争防止法違反になるようなことはなさそうに見えます。
しかし、不正競争防止法の中には、以下のような規定があります。

不正競争防止法第2条
第1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
第18号 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為

第8項 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

長くて分かりづらいかもしれませんが、簡単にまとめると、特定の人以外に利用できないように営業上パスワードや暗号化などを用いて制限しているプログラムなどについて、その制限を効果を妨げるような指令符号(パスワード等)をインターネット等を通じて相手に渡す行為などが不正競争防止法の「不正競争」の1つとされています。
このような行為は、プログラム等にかかっている制限(いわゆる「プロテクト」)を妨害することから、いわゆる「プロテクト破り」と呼ばれ、不正競争防止法第2条第17号・第18号(今回取り上げているのは第18号の条文)は、この「プロテクト破り」を助長する不正競争行為を禁止しています。
プロテクト破り」という呼び方から、物理的に制限を破ったり、いわゆるクラッキングしてシステムに侵入したりするイメージがわくかもしれませんが、先ほど挙げたようにパスワードを提供するといった行為でも「プロテクト破り」による不正競争防止法違反となることに注意が必要です。

次回は、今回のAさんの事例がこの「プロテクト破り」に当てはまるのかどうか、条文とAさんの行為を照らし合わせながら具体的に検討していきます。

プロテクト破り」などの不正競争防止法違反は、条文が複雑なこともあり、どういった容疑をかけられているのか理解するにも大変に感じられることもあるでしょう。
だからこそ、早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要です。
京都府不正競争防止法違反事件にお困りの際は、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。

相手が同意していても強制わいせつ罪?

2021-07-19

相手が同意していても強制わいせつ罪?

相手が同意していても強制わいせつ罪に問われたという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府宮津市に住んでいる24歳のAさんは、近所に住んでいる小学生のVさん(12歳)と度々挨拶や立ち話をする仲でした。
ある日、Vさんからキスをしてほしいと言われたAさんは、Vさんにキスをして抱きしめたり、Vさんの胸や臀部といった身体を触ったりするようになりました。
AさんとVさんがキスなどの行為をするようになってしばらくしてから、Vさんの両親が、Vさんが何か隠している様子であることに気が付き、Vさんを問い詰めたことで、AさんとVさんの関係が発覚しました。
Vさんの両親が京都府宮津警察署に相談し、Aさんは強制わいせつ罪の容疑で話を聞かれることになりました。
Aさんは、「キスやハグなどは全てVさんから言い出したことで、相手のVさんは同意していた。それでも犯罪になるのか」と思い、刑事事件に対応している弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・「相手の同意がある=強制わいせつ罪にならない」ではない?

強制わいせつ罪という名前から、強制わいせつ罪は「強制的にわいせつな行為をする」という犯罪のイメージがある方も多いのではないでしょうか。
そのため、「わいせつな行為に対して相手の同意がない=強制わいせつ罪が成立する」、「わいせつな行為に対して相手の同意がある=強制わいせつ罪が成立しない」というイメージの方も少なくありません。

しかし、今回のAさんは、相手であるVさんの同意があった上でキスなどをしているにもかかわらず、強制わいせつ罪に問われているようです。
このように、相手の同意があったにも関わらず強制わいせつ罪に問われることがあるのでしょうか。
まずは、強制わいせつ罪の条文を確認してみましょう。

刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪の条文の前段では、「暴行又は脅迫を用いて」わいせつな行為をした者に強制わいせつ罪が成立する旨が定められています。
これは先ほど挙げたような、「相手の同意を得ないわいせつな行為に強制わいせつ罪が成立する」といった、世間一般の強制わいせつ罪のイメージと重なるものではないでしょうか。
ただし、ここで注意しなければいけないのは、この「暴行又は脅迫を用いて」わいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪が成立するのは、「13歳以上の者」への行為と限定されているということです。

これに対して、相手が13歳未満の者であった場合については、強制わいせつ罪の条文の後段に定められています。
13歳未満の者が相手であった場合、強制わいせつ罪は「わいせつな行為をした」だけで成立します。
つまり、被害者の年齢次第では、「暴行又は脅迫」という手段が用いられなくとも、わいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立することになるのです。
「わいせつな行為をした」だけで成立するのですから、相手がわいせつな行為に同意していたとしても強制わいせつ罪が成立することになるのです。
当然、13歳未満の者に対して暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をした場合にも強制わいせつ罪は成立しますが、相手の同意があったからといって必ずしも強制わいせつ罪にはならないというわけではないのです。

今回の事例のAさんは、12歳のVさん相手にキスなどをしているようです。
AさんはVさんの同意を得てした行為だと考えているようにですが、先ほど確認したように、相手が13歳未満の場合、相手に同意があったとしても、わいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立します。
ですから、Vさんの同意の有無に関係なく、Aさんには強制わいせつ罪が成立すると考えられるのです。

・被害者が未成年の強制わいせつ事件

強制わいせつ事件は被害者の存在する刑事事件ですから、被疑者・被告人が容疑を認めているのであれば、被害者への謝罪や被害弁償は、重要な弁護活動の1つとなってきます。

しかし、加害者である被疑者・被告人やその家族など近しい人たちが被害者に直接接触することは、刑事手続上よくないと考えられることが多いです。
被疑者・被告人やその家族が被害者に謝罪したいと捜査機関に申し出ても、連絡先等を教えられないと断られることが多いです。

というのも、加害者である被疑者・被告人が直接被害者に接触することで、証拠隠滅(例えば証言の変更を迫るなど)や被害者へ危害を加えるといったおそれが考えられるためです。
被害者側としても、当然加害してきた被疑者・被告人に怒りや恐怖の感情を抱いていることが多く、直接接触することは避けたいという意向であることも多いです。
特に、被害者が未成年である場合には、被害者本人ではなく、その両親などの保護者が謝罪等の相手となります。
自分の子供が性被害にあった状況ですから、被害感情が強いことが当然予想されます。
もしも当事者同士で謝罪の場を設けられたとしても、余計にこじれてしまう可能性も考えられます。

だからこそ、謝罪・被害弁償・示談交渉には、弁護士を間にはさむことがおすすめされます。
被害者の側からしても、直接加害者本人と接触せずに済むため、安心して話を聞くことができます。
被疑者・被告人の側からしても、法律の専門家であり第三者である弁護士が間に入ってくれることは安心できる要素でしょう。
早い段階から弁護士に相談・依頼することが望ましいといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、強制わいせつ事件などの性犯罪事件も承っています。
京都府の強制わいせつ事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。

ポイ捨てが不法投棄事件に発展

2021-07-15

ポイ捨てが不法投棄事件に発展

ポイ捨て不法投棄事件に発展してしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市伏見区に住んでいるAさんは、自宅へ帰る途中にあるマンションVの植え込みに、中身を飲み切ったペットボトルや菓子の袋などをポイ捨てしていました。
するとある日、植え込みに「不法投棄禁止」という看板が立っていることに気が付きましたが、Aさんは「ポイ捨て程度大丈夫だろう」と大して気にもせずポイ捨てを継続していました。
後日、Aさんがいつものように帰宅している途中、京都府伏見警察署の警察官がAさんに声をかけ、「不法投棄の容疑がかかっています。警察署で話を聞かせてください」と言ってきました。
その日は話を聞かれて帰されたAさんですが、その後自分がどうなるのか不安になり、京都市刑事事件に対応している弁護士初回無料法律相談を利用し、弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・ポイ捨てが刑事事件に?

不法投棄という単語を聞くと、会社が産業廃棄物を山等に大量に捨てていたり、個人が家具や家電といった大型のごみを捨てたりといった不法投棄事件を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
今回のAさんのような、小さなごみを捨てるいわゆる「ポイ捨て」と不法投棄という言葉はなかなか結び付かないという方も少なくないでしょう。
しかし、実は「ポイ捨て」も不法投棄となる行為であり、廃掃法違反という犯罪行為であることに注意が必要です。

廃掃法とは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」という法律の略称です。
廃掃法は、名前の通り、ごみの適切な処理やそれによって生活環境を清潔に保つことを目的として定められている法律です。
今回問題となっている不法投棄についても、この廃掃法によって規制されています。

廃掃法第16条
何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

条文を見てみると、非常にシンプルなものであることが分かります。
条文の中に「不法投棄」という言葉自体は登場しませんが、この条文に違反する=「不法」な状態で廃棄物を捨てる=「投棄」することから、この条文に違反して廃棄物を捨てることを「不法投棄」と呼んでいるということになります。
廃掃法第16条に出てくる「みだりに」とは、「むやみやたらに」という意味ですから、この条文は「自治体などによる規定に背いてむやみやたらとごみを捨ててはいけない」と言っていることになります。

今回のAさんは、マンションの植え込みにペットボトルや菓子の袋といったごみをポイ捨てしています。
当然、ポイ捨てをすることは自治体などによる決まりを守らずにごみを捨てることになりますから、廃掃法のいう「みだりに廃棄物を捨て」ることになるといえます。
ですから、やろうと思えば誰でも気軽にできてしまうポイ捨てであっても、不法投棄となり犯罪となりうるということなのです。

ここで、最初に記載したような「不法投棄」という言葉のイメージから、「廃棄物」とは産業廃棄物や大型のごみを指すのではないか、ペットボトルやお菓子の袋などの小さく軽いごみ程度では「廃棄物」ではないのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、私たちがニュースなどでよく目にする不法投棄事件は、業者や会社が産業廃棄物を捨てるという態様のものが多いかもしれません。
しかし、廃掃法のいう「廃棄物」とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)」のことであるとされています(廃掃法第2条柱書)。
つまり、企業が出した産業廃棄物以外のごみ、例えば家庭ごみでも、廃掃法の「廃棄物」に該当することになります。
このことから、Aさんがポイ捨てしたペットボトルや菓子の袋といった軽かったり小さかったりするごみも、廃掃法上の「廃棄物」であると言えます。
すなわち、こうしたごみのポイ捨て廃掃法の規制対象ということになるのです。

なお、不法投棄をして廃掃法違反となれば、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はこれらの併科に処せられる可能性があります(廃掃法第25条第1項第14号)。

こうした不法投棄による廃掃法違反事件では、例えば不法投棄先に対して迷惑料を支払って謝罪したり、不法投棄した物を処理して原状回復を行ったりする活動が考えられます。
ただし、相手方との交渉を行ったり、そうした活動を効果的に主張に取り入れていくためには、経験や専門的知識が必要となってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、不法投棄による廃掃法違反事件のご依頼も承っています。
たかがポイ捨てと軽く考えず、まずは刑事事件専門の弁護士にご相談ください。

強盗致傷事件の逮捕に対応

2021-07-12

強盗致傷事件の逮捕に対応

強盗致傷事件逮捕に対応する弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、宝石を盗み出して儲けようと計画し、京都府舞鶴市にある宝石店Xに侵入し、宝石を物色していました。
しかし、宝石店Xの警備員であるVさんが巡回にやってきて、Aさんは宝石を物色しているところを発見されてしまいました。
Aさんは、こっそり宝石を盗み出すことは諦めて、警備員Vさんを脅して宝石を奪い取って逃げようと計画を変更し、携行していたナイフをチラつかせてVさんを脅すと、宝石を自分のカバンにしまい、逃げようとしました。
ところが、VさんはAさんが目を離したすきに警棒を持ち、Aさんをつかまえようと立ち上がりました。
ポケットにしまったナイフを取り出すのに手間取ったAさんは、とにかく逃げなければいけないと逃げ出しましたが、Vさんの追跡から逃げきれず、Vさんに追いつかれてしまいました。
この時点で、AさんがナイフでVさんを脅迫した時から10分が経過し、宝石店Xから150mほど離れた地点に来ていましたが、AさんはVさんの顔面を殴りつけるなどの暴行を加えて怪我を負わせると、逃亡を再開しました。
ですが、これらのやり取りを目撃した通行人が通報したことで京都府舞鶴警察署の警察官が駆け付け、Aさんは強盗致傷罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・強盗致傷罪と「強盗の機会」

Aさんは元々宝石をこっそり盗み出すという窃盗行為を計画していたようですが、犯行の途中で警備員Vさんを脅して宝石を奪うように計画を変更しています。
このように、当初窃盗行為を意図しながら被害者などに発見されたために、暴行や脅迫をを加えたうえで財物奪おうとする犯人のことを「居直り強盗」と呼ぶことがあります。
居直り強盗というだけあって、こうした行為には刑法の強盗罪が成立すると考えられます。

刑法第236条第1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

強盗罪の「暴行又は脅迫」とは、相手の反抗を抑圧するに足りる程度の強さのある暴行又は脅迫を指しています。
今回のAさんは、警備員Vさんに対してナイフを向けていますが、ナイフを向けられたVさんからすれば反抗するとナイフで刺されるなどする深刻な危害が加えられるおそれがあるため、Aさんの行為はVさんの反抗を抑圧するに足りる脅迫といえるでしょう。
そして、Aさんはそのような脅迫によって生じた状況を利用して宝石をカバンに入れているので「他人の財物を強取した」といえます。
以上から、Aさんには強盗罪が成立すると考えられるのです。

さらに、刑法には以下の規定があります。

刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

これは、強盗致傷罪強盗致死罪と呼ばれる犯罪であり、強盗犯が人に怪我をさせたり死亡させたりしたときに成立する犯罪です。
しかし、条文からは強盗犯が「いつ」人に怪我をさせたり死亡させたりしたときにこの強盗致死傷罪が成立するか明示されていません。
となると、強盗犯が人に怪我をさせればいつのことであっても強盗致傷罪が成立してしまうのではないか、と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

強盗犯が「いつ」人に怪我をさせた場合強盗致傷罪が成立するのかということについて、判例では、傷害の結果が「強盗の機会」に行われた行為から生じたものであればよいとしています(最判昭和24.5.28)。
どういった行為が「強盗の機会」における行為といえるかは事案ごとの事情を全て考慮した上で判断せざるを得ませんが、多くの判例は、犯意の継続性、強盗行為との時間的場所的近接性、強盗行為との関連性を考慮して判断しています(最判昭和32.7.18、東京高判平成23.1.25など)。
つまり、簡単に言えば、強盗行為と全く関係のないところで強盗犯が人を死傷したとしても強盗致死傷罪は成立しないということです。

本件では、AさんはVさんの顔面を殴る暴行を加えて怪我をさせているようです。
この暴行行為は、Vさんに捕まる=逮捕されることなく強盗行為を無事終えるためになされたのものであって、いまだ当初の強盗の犯意が継続しているといえます。
また、これは通常の強盗にも認められるような性質の行為であって強盗行為と関連性があります。
加えて、この暴行はAさんがナイフで警備員を脅迫した時から10分が経過し、宝石店Xから150m離れた地点でなされているなど、強盗行為と場所的時間的近接性が認められます。
これらの事情から、AさんがVさんを殴って怪我をさせたことは「強盗の機会」に行われたと考えられ、Aさんには強盗致傷罪が成立すると考えられるのです。

・強盗致傷事件と弁護活動

強盗致傷事件では、当然被害者が存在します。
今回のAさんのケースでは、宝石を奪われた宝石店Xと、Aさんから暴行を受けたVさんが被害者ということになるでしょう。
この被害者に対して、謝罪や被害弁償をしていくことも重要な弁護活動の1つです。

また、強盗致傷罪は法定刑に無期懲役を含む重大な犯罪であることから、逮捕・勾留による身体拘束を伴って捜査が進められることも十分予想されます。
釈放・保釈を求めて随時活動していくことも必要となるでしょう。

そして、強盗致傷事件は裁判員裁判対象事件でもあるため、起訴されれば裁判員裁判への対応が必要となります。
一般の刑事裁判とは異なる手続きも多い裁判員裁判に対応していくためには、入念な準備が必要となりますから、早期に弁護士と連携して備えることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件専門の弁護士事務所です。
強盗致傷事件逮捕にも迅速に対応し、被疑者・被告人やそのご家族のお悩みや疑問の解消をサポートいたします。
京都府逮捕強盗致傷事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。

勾留決定に対する準抗告で釈放を目指す

2021-07-08

勾留決定に対する準抗告で釈放を目指す

勾留決定に対する準抗告で釈放を目指すケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市左京区に住んでいる大学生のAさんは、近所のスーパーマーケットで万引きをしてしまいました。
スーパーを出たところで店員に呼び止められたAさんは、店員の呼んだ京都府下鴨警察署の警察官に窃盗罪の容疑で逮捕されてしまい、その後勾留されてしまいました。
Aさんは7日後に大学の卒業に関わる試験を控えていたため、どうにかして釈放してもらえないかと困っています。
こうしたAさんの状況を知ったAさんの家族は、京都府の刑事事件に対応している弁護士に相談し、Aさんの釈放を求める活動ができないかと聞きました。
そこでAさんの家族は、弁護士から、勾留決定に対する準抗告という不服申し立ての制度があることをききました。
(※この事例はフィクションです。)

・窃盗罪

窃盗罪は、刑法に定められている犯罪です。
刑法において窃盗罪は以下の様に定められています。

刑法第235条 
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪とは、他人が合理的に占有している財物を、その他人の意思に反して自分や第三者の占有の下に移すことを言います。
今回のAさんについては、商品を万引きしていますから、窃盗罪が成立する可能性が高いと思われます。

・勾留

勾留とは、刑事訴訟法に定められた身体拘束を伴う刑事手続きの1つです。
刑事訴訟法では、以下の様に定められています。

刑事訴訟法第60条第1項
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
第1号 被告人が定まった住居を有しないとき。
第2号 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第3号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

刑事訴訟法第207条第1項
前3条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。

これらの2つの規定は、前者が起訴後の勾留(被告人勾留)、後者が起訴前の勾留(被疑者勾留)を指していますが、今回Aさんに行われた勾留は、後者の起訴前の勾留です。

起訴前の勾留が認められるためには、
①犯罪をしたと疑う相当な理由があること
②以下のどれかの事由に当たること
(1)住所不定であること
(2)証拠の隠滅のおそれがあること
(3)逃亡のおそれがあること
③勾留の必要性があること
が必要とされています。

いずれの要件も条文から導かれています。
①と②は起訴後の勾留について定めた刑事訴訟法第60条第1項に定められている要件ですが、刑事訴訟法第207条第1項において、裁判間に同様の権限が与えられているため、起訴前の勾留でも必要と考えられています。

対して、③の要件は、刑事訴訟法第207条第1項には、直接記載されていません。
ただし、「前3条」による請求がそもそも勾留の必要性がある場合に限定していることや、刑事訴訟法第87条において勾留の必要性がなくなった場合には釈放をしなければならないとされている点から、起訴前の勾留請求を行う時点においても必要であると考えられています。
また、この必要性は必要なものがあるだけではなく、勾留によって生じる不利益を超える必要性があると考えられています。

・勾留決定に対する準抗告

先ほど挙げた要件に当てはまる際に勾留がつけられ、身体拘束されますが、裁判所から勾留決定が出たからといってそこから必ず10日間出れなくなったというわけではありません。
刑事訴訟法には、準抗告という制度があり、以下の条文に定められています。

刑事訴訟法第429条 
第1項 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
第1号 忌避の申立を却下する裁判
第2号 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
(以下略)

要するに、この場合の準抗告とは、勾留決定に対する不服申立ての手段です。
そのため、たとえ勾留決定が出た場合であっても、準抗告によって不服を申し立ててその準抗告が認められれば、勾留決定が取り消され、釈放が実現できるということになります。

本件のAさんの場合は、試験を受けることができなくなれば卒業できなくなってしまう可能性があるという重大な不利益がありますので、そういった事情を含めて準抗告などにより釈放を求めていくことになるでしょう。
勾留決定に対する準抗告の申し立ては経験や専門知識が必要になってきますので、刑事事件専門の弁護士に早い段階から相談・依頼することが望ましいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
窃盗事件にお悩みの方、勾留からの釈放活動をお考えの方は、まずは一度ご相談ください。

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