殺人未遂事件の逮捕も弁護士へ

殺人未遂事件の逮捕も弁護士へ

殺人未遂事件逮捕弁護士に相談するケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府向日市に住んでいるVさんのことをひどく恨んでいました。
ある日、AさんはついにVさんを殺してやろうと思い立ち、毒物を混入したワインをVさん宛に発送しました。
宅配業者が預かったワインは、配達当日にVさんが不在のため宅配業者の事業所で保管されていましたが、後日、Vさんのもとに届けられました。
受け取ったワインを飲んだVさんは、混入していた毒物のせいで病院に入院する事態に陥りましたが、命に別状はありませんでした。
後の警察の捜査では、ワインに混入された毒は致死量の9割しかありませんでした。
その後、捜査の結果、Aさんがワインに毒物を入れたことが発覚し、Aさんは殺人未遂罪の容疑で京都府向日町警察署逮捕されました。
(※この事例はフィクションです)

・隔離犯

今回のAさんの事例では、Aさんがワインに毒物を仕込み、それを宅配業者に配達させ、後日そのワインを受け取って飲んだVさんを殺そうとしています。
こうしたケースを隔離犯と呼ぶこともあります。
離隔犯とは、行為と結果発生との間に時間的・場所的な間隔が存在する場合のことをいいます。

離隔犯に関わる刑事事件では、行為者が意図しない客体を巻き込んでしまったり、結果の発生時期が前後することなどが考えられます。

・不能犯

不能犯とは、およそ結果が発生する可能性のない行為を行うことで犯罪を実現しようとする場合のことをいいます。
例えば、塩を劇薬であると勘違いして毒殺を図るような場合が不能犯のケースに当たります。
行為者が構成要件に該当する行為を行ったつもりでも、もし不能犯であると認められれば未遂も成立せず処罰されることはありません。

今回のケースでは、Aさんは毒物を混入したワインをVさんに飲ませることで殺害しようとしています。
しかし、ワインに混入された毒の量は致死量の9割にとどまるものでした。
AさんはVさんを殺害しようと考えていますので、殺人未遂罪(刑法第199条、同法第203条)の適用が考えられます。
殺人未遂罪の量刑は殺人罪の法定刑である死刑または無期もしくは5年以上の懲役のうち、刑法第43条によって減軽されたものが言い渡されます。
もっとも、未遂犯だからといって刑法第43条によって必ず減免されるわけではありません。

繰り返しになるかもしれませんが、不能犯に当たるかどうかは、基本的にはある行為が構成要件的結果を発生させる具体的な危険を有するかどうかによって判断されます。
今回のケースでも、毒が致死量の9割にすぎないとはいえ、実際にVさんが入院する事態にまで至っていることから、Vさんの体調などの状況によって死亡するリスクも考えられるというような場合には、特にAさんがVさんに毒入りのワインを飲ませた行為が殺人罪の実行行為に当たるとして殺人未遂罪の成立が肯定される可能性は十分にあります。

・「実行の着手」

先ほど「AさんがVさんに毒入りのワインを飲ませた行為が殺人罪の実行行為に当たる可能性がある」と触れましたが、刑法上、具体的にどの行為が実行行為の始まり=「実行の着手」に当たるかが重要になります。

犯罪は行為について成立するものなので、まだ構成要件該当行為がなされていない実行の着手以前の段階では、未遂犯を含めて犯罪が成立し処罰されることはありません。
ただし、殺人罪や強盗罪といった一部の犯罪については実行の着手前であっても準備行為を処罰するものとして予備罪が設けられています。
殺人予備罪(刑法第201条)の法定刑は2年以下の懲役で、但し書きにより刑を免除することができるとされています。

実行の着手時期については学説上様々な見解があり、大きく主観説と客観説の2つに分類されます。
主観説は、客観的事情によって犯意の存在を確定的に認定できる行為が行われた時点を実行の着手時期とする考えです。
客観説は、さらに形式的客観説と実質的客観説に分けられます。
形式的客観説は、実行行為そのものに先行しこれと密接不可分な行為の開始時点を実行の着手時期とします。
例えば、物を盗むためにその物に手を伸ばす行為が行われた時点などが実行の着手時期となります。
対して、実質的客観説は、構成要件の実現や法益侵害の現実的危険性が認められるときに実行の着手があるものとする考えです。

従来の判例の考え方は形式的客観説の立場に立ったものでしたが、実質的客観説に従ったものと考えられるような判例も存在します(最決昭和40.3.9)。

今回のケースについて客観説をベースに検討すると、Aさんが毒入りワインを発送し宅配業者の下で保管されている段階では、まだVさんが死亡する現実的危険性がなく、Vさんを死亡させるに密接な行為とも言い難いため、殺人罪の「実行の着手」は認められないでしょう。
殺人罪の「実行の着手」が認められるのは、Vさんがワインを受け取りいつでも飲める状態になった段階あるいは実際に飲もうとしている段階に求められることになります。
いずれにせよ、Vさんはワインを飲んでしまっているので殺人未遂罪が成立するものと考えられます。

不能犯として不可罰となるか可罰的未遂となるのか、あるいは実行の着手前であるとして不可罰となるのか実行の着手ありとして可罰的となるのかは大きな違いです。
これらの判断は法律の専門家でも難しい場合が多く、事件の解決や処罰を回避できる可能性を高めるためには刑事事件を数多く扱った経験のある弁護士の知識や分析の提供を受けることが必要になります。

殺人未遂罪の被疑者となってしまった方、京都府向日町警察署で取調べを受けることになってしまった方は、お早めに、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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