Archive for the ‘財産事件’ Category
強盗致傷事件で示談交渉
強盗致傷事件で示談交渉
強盗致傷事件とその示談交渉について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは,京都市右京区にある中古車販売の事務所に侵入し,経営者のVさんを刃物で刺して現金約100万円を奪いました。
Vさんは,刃物で刺されたことにより,全治1カ月のけがを負いました。
Vさんが通報したことで,京都府右京警察署の警察官が駆け付け,Aさんは強盗致傷罪の容疑で京都府右京警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです。)
~強盗致傷罪~
強盗犯人が人を負傷させた場合には,強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立し,無期又は6年以上の有期懲役が科せられます。
刑法240条
強盗が,人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し,死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
強盗致傷罪の条文を見ていただければわかる通り,強盗致傷罪が成立するためには「強盗が,人を負傷させた」と認められることが必要です。
しかし,「強盗が,人を負傷させた」に当てはまるかどうかは,単に強盗罪を犯した人が誰かに怪我をさせたかどうかということだけで判断できません。
怪我の結果がいかなる行為から発生した場合に強盗致傷罪が成立するかというと,判例では,強盗の機会に結果が生じた場合に強盗致傷罪が成立するとしています(大判昭和6年10月29日)。
つまり,強盗罪を犯した人が強盗行為とは離れたところで人に怪我をさせたとしても強盗致傷罪とはならず,強盗をしたその機会に人に怪我をさせたような場合にのみ強盗致傷罪となるということです。
また,強盗致傷罪が成立するために,どの程度の傷害結果が発生する必要があるかについても争いがあります。
判例は,傷害における傷害と同程度で足りるとしています(大判大正11年12月22日)。
傷害罪における傷害とは,人の生理的機能に障害を加えることであるとされています。
例えば,骨折してしまったりどこかから出血させてしまったりといったわかりやすい怪我はもちろんのこと,気絶させてしまうことで意識障害を引き起こしたり,PTSDを引き起こしたりすることも傷害であるとされています。
今回のAさんは,Vさんを刃物で刺すという暴行を加え,Vさんが反抗できないようにして現金約100万円を奪っているので,強盗犯人です。
そして,Aさんの強盗行為の際に行われた暴行行為そのものによってVさんが怪我をしているので,Aさんには強盗致傷罪が成立すると考えられます。
~建造物侵入罪~
先ほど触れた強盗致傷罪に加え,今回のAさんは中古車販売の事務所に侵入しているので,建造物侵入罪も成立します。
強盗致傷罪と建造物侵入罪は,目的手段の関係に立ちます。
つまり,強盗致傷行為をするために建造物侵入行為をしているという関係になります。
複数の犯罪をしてしまった際にその犯罪がこういった目的手段の関係になるときには「牽連犯」という考え方によって処断されることとなり,重い強盗致傷罪で処断されることになります(刑法54条1項後段)。
~強盗致傷事件と示談交渉~
強盗致傷罪が成立することに争いがない場合,弁護士を通じで早期に被害者の方に対する謝罪や被害弁償,示談交渉を進めることが重要です。
すでに警察が介入している事案であっても,前科前歴や犯行の態様,被害の大きさなどの事情によっては,被害者と示談をすることで早期の釈放や不起訴処分を獲得することができる可能性もあります。
早期の釈放や不起訴処分の獲得により,職場復帰や社会復帰をスムーズに行いやすくなります。
不起訴とならなくとも,被害者への謝罪や弁償が行われ示談が締結できていれば,刑罰を判断する際に有利に考慮してもらえる材料とすることができます。
ただし,強盗致傷事件は先ほど触れたように非常に重い刑罰が定められている犯罪ですから,逮捕されてしまい,身体拘束されてしまうことが多いです。
そうなれば,自分自身で謝罪等を行い示談交渉することはできません。
さらに,強盗致傷事件の被害者の方の中には,強盗致傷事件の加害者へ恐怖を感じている方も多く,被疑者本人やその周囲の人と直接やり取りをすることや自分の情報を伝えることを望まない方も多いです。
だからこそ,弁護士に示談交渉を依頼するメリットがあるといえるでしょう。
強盗致傷罪で家族,友人が逮捕された,今後が不安という方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士へご相談ください。
弊所は刑事事件専門の法律事務所です。
逮捕直後からスピーディーに活動に移れるよう,0120-631-881でいつでもお問い合わせを受け付けております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
詐欺事件と窃盗事件で逮捕
詐欺事件と窃盗事件で逮捕
詐欺事件と窃盗事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府宇治市に住む高齢者Vさん宅を訪れ、X銀行の職員を装って「キャッシュカードの切り替えが必要です。切り替えのためには今まで使っていたキャッシュカードと暗証番号を預けてください」と伝え、Vさんからキャッシュカードを受け取り、暗証番号を教えてもらいました。
そしてAさんは、Vさんのキャッシュカードを使ってX銀行のATMからVさんの預金を引き出しました。
後日、VさんがX銀行に問い合わせたことでAさんの行為が発覚し、Vさんは京都府宇治警察署に被害を届け出ました。
京都府宇治警察署の捜査の結果、Aさんは詐欺罪と窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、自分のした行為によって詐欺罪が成立することはなんとなく理解していましたが、まさか窃盗罪まで成立するとは思いもよらず、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談することにしました。
(※令和元年10月15日朝日新聞DIGITAL配信記事を基にしたフィクションです。)
・詐欺事件と窃盗事件
今回のAさんの行為が詐欺罪にあたることには疑いがないでしょう。
刑法246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、簡単に言えば、財物を引き渡させるために相手をだます行為をして、それによってだまされた相手が財物を引き渡すことで成立します。
そして、このだます行為=「人を欺」く行為は、相手が財物を引き渡す際の判断に重要な事項を偽ることであるといわれています。
つまり、その事実が嘘であるなら財物を引き渡さなかった、と考えられる事実について嘘をつくことが「人を欺」く行為であるとされているのです。
今回のAさんで言えば、AさんはX銀行の職員を装ってキャッシュカードの切り替えが必要であるとVさんに伝えています。
VさんはAさんが本物のX銀行の職員であり、キャッシュカードの切り替えが必要なのであると信じてキャッシュカードを渡しているのであって、Aさんが偽物のX銀行の職員であり、キャッシュカードの切り替えの話が嘘であると知っていればキャッシュカードを渡すことはなかったでしょう。
ですから、AさんがX銀行の職員を装ってキャッシュカードの切り替えが必要であるとVさんに伝えた行為は、詐欺罪の「人を欺」く行為にあたるのです。
さらに、今回のVさんはAさんの「人を欺」く行為によってだまされ、キャッシュカードという財物をAさんに引き渡しています。
ですから、Aさんは詐欺罪にあたると考えられます。
ここまでは、詐欺罪について詳しく知らなくともなんとなく予想のつくことではないでしょうか。
しかし、Aさんにはこの詐欺罪だけでなく、窃盗罪の容疑もかけられて逮捕されています。
それはなぜなのでしょうか。
実は、AさんがVさんのキャッシュカードを利用して、X銀行のATMから預金を引き出した行為については、銀行に対する窃盗罪が成立する可能性があるのです。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
詐欺行為をしているのになぜ窃盗罪が出てきて、どうして銀行が被害者となる窃盗罪なのでしょうか。
まず、ATMなどにある預金は、銀行が管理・支配をしているお金です。
通常、その預金を引き出すのは、その銀行に預金をしている預金者本人や、その預金者の同意を得た人であり、その人たちは銀行の管理・支配するお金を引き出す正当な権利に基づいてお金を引き出しているといえるでしょう。
しかし、今回のAさんのケースでは、AさんはVさんからだまし取ったキャッシュカードを用いて、Vさんの同意のないままに預金を引き出していることになります。
つまり、Aさんは銀行の管理・支配するお金を正当な権利のないまま、銀行の管理・支配するお金を自分の物としてしまっているのです。
窃盗罪は、簡単に言えば、他人の管理・支配している物を管理・支配している人の意思に反して自分の物としてしまう犯罪ですから、Aさんの一連の行為がこの窃盗罪に当てはまる可能性が出てくるというわけなのです。
特に今回のケースのようなキャッシュカードをだまし取る形態の詐欺事件では、このように詐欺罪だけでなく窃盗罪の成立も考えられることが多々あります。
どういった犯罪が成立しうるのか、どれほどの重さとなるのか、弁護士に相談し、今後の活動方針を決定することをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、詐欺事件・窃盗事件やその逮捕のご相談も受け付けています。
まずはお気軽に、弊所弁護士までご相談ください。
窃盗罪の逮捕からの釈放
窃盗罪の逮捕からの釈放
京都市東山区在住のAさんは,近所にある牛丼店で,牛丼を持ち帰りで注文し,1万円札で支払いました。
Aさんは,店員が釣りの用意でレジを離れた際,カウンターに残された1万円札を持ち去りました。
店員が通報し,Aさんは,窃盗罪の容疑で京都市東山区を管轄する京都府東山警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです。)
~窃盗罪~
人の財物を盗んだ(窃取した)者には,窃盗罪(刑法235条)が成立します。
その場合,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が科せられます。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
条文にある通り,窃盗罪は他人の財物を窃取した場合に成立します。
「窃取」とは,他人の占有している財物の占有を侵害し,その占有を自分又は第三者に移転することをいいます。
簡単に言えば,他人が支配・管理している物を,その支配・管理をしている人の意思に反して支配・管理を破って奪い,自分又は第三者の支配・管理のもとに置くことを指します。
この時に暴行や脅迫を手段として財物を奪った場合には窃盗罪ではなく強盗罪が成立する可能性が出てきます。
さて,今回のケースについて考えてみましょう。
1万円札は,Aさんが牛丼の代金として牛丼店に支払ったものであり,その占有=管理・支配は牛丼店にあったといえます。
Aさんはその1万円を牛丼店の意思に反して無断で持ち去っているわけですから,1万円札を窃取したものといえ,Aさんには牛丼店に対する窃盗罪が成立する可能性が高いでしょう。
~窃盗事件で釈放を目指す弁護活動~
窃盗罪で逮捕され,刑事事件化し,身体拘束が続く可能性がある場合には,弁護士に依頼して釈放のために活動してもらうのがよいでしょう。
弁護士は,早期の釈放に向けて活動をしていくことができます。
逮捕直後であれば,検察官や裁判所に対し,勾留の必要性がないことを主張することができます。
例えば,被疑者が反省していること,家族の監督が期待できること,被疑者が職場で責任ある立場にあること,被疑者に扶養家族がいること,被害者と示談が成立しそうであることなどの事情があれば,こうした事情を利用して釈放を求めていくことが考えられます。
特にその中でも,窃盗罪の成立に争いがない場合,弁護士を通じて早期に被害者の方に対する被害弁償や示談交渉を進めることが重要です。
窃盗事件の被害届が提出される前に示談が成立した場合,刑事事件化を回避できますし,刑事事件化した後であっても不起訴処分によって早期の職場復帰や社会復帰を実現できる可能性が高くなります。
裁判が始まった後の示談であっても,執行猶予付き判決や減刑など効果があります。
さらに,今回のように逮捕されている場合であっても,示談により被害感情のおさまりや被疑者本人の逃亡・証拠隠滅の意思のないことを表すことができ,釈放を実現するための大きな一歩となり得ます。
いずれにせよ,なるべく弁護士に相談し,示談をして解決するのが望ましいといえます。
ただし,今回のケースのように示談交渉の相手方がお店であるような場合には,そもそも示談交渉をしてもらえないということも少なくありません。
だからこそ弁護士に相談し,示談交渉に取り掛かってもらうと同時に,示談ができなかった場合に備えての活動も行ってもらいましょう。
0120-631-881では,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士による初回接見サービスや初回無料法律相談のお問い合わせを365日24時間いつでも受け付けております。
窃盗事件で逮捕されてしまってお困りの方,刑事事件で釈放を目指したいという方は,弊所弁護士まで一度ご相談ください。
詐欺のような窃盗事件?②
詐欺のような窃盗事件?②
~前回からの流れ~
Aさんは、京都市左京区に住んでいるVさん(84歳)の家を銀行員を装って訪ね、「銀行の者ですが、現在キャッシュカードの悪用が相次いでいるので、システムの変更が必要となりました。それまでキャッシュカードを使用せずに厳重に保管してもらいたいのです」などと言って、Vさんにキャッシュカードを封筒に入れさせ封をさせました。
そして、「開けていないという証拠のために封の部分に印鑑を押してもらいたいので取ってきてください」などと言ってVさんにいったん席を外させ、その隙に偽物のカード状のものが入った別の封筒とVさんのキャッシュカードの入った封筒をすり替えました。
さらにVさんに「システムの変更に必要です」と言ってキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、「2週間程度でシステム変更のお知らせをしますので、それまでカードはこのまま封筒に入れておいて使わないでください」と言ってVさん宅を後にしました。
後日、いつまでたっても連絡がこないと不審に思ったVさんが封筒を確認すると、偽物のカードが入っていたため、京都府下鴨警察署に通報。
捜査の結果、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月2日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・詐欺のような窃盗事件?
前回の記事では、今回のAさんのケースにかかわりがあると考えられる2つの犯罪、窃盗罪と詐欺罪を取り上げました。
今回の記事では、具体的にAさんのケースがなぜ窃盗罪に問われたのか、検討していきます。
前回の記事でも取り上げたように、窃盗罪・詐欺罪はそれぞれ刑法に規定されている犯罪です。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
窃盗罪と詐欺罪は、どちらも財産に対する犯罪ですが、窃盗罪は相手の意思に反して物を自分の管理・支配下におくことで成立し、詐欺罪は相手をだますことで相手の意思で財物を引き渡させることで成立する点に違いがあります。
この点を頭に置きながら、今回のAさんのケースを見てみましょう。
Aさんは、たしかにVさんに銀行員を装ってシステム変更のためにキャッシュカードの保管と暗証番号が必要だという嘘をつき、Vさんをだましています。
ここだけ見ると、人をだましているのだから詐欺罪のようにも思えますが、AさんはVさんにキャッシュカードを引き渡させているのではなく、Vさんが印鑑を取りに行っている間にカードの入った封筒をすり替えることでキャッシュカードを取っています。
つまり、Aさんのケースでは、AさんはVさんのことをだましてはいますが、キャッシュカードをVさんの意思で「交付させ」ているのではなく、Vさんの意思に反して奪い取ってしまったということになります。
ですから、Aさんには詐欺罪ではなく窃盗罪が成立すると考えられるのです。
・詐欺のような窃盗事件の量刑
窃盗罪と詐欺罪では、その刑罰に罰金刑のみの規定がある分、窃盗罪の方が軽い刑罰の定められている犯罪であるといえます。
詐欺罪の場合、刑罰として定められているのが懲役刑のみですから、罰金刑のみで処罰する規定がない=起訴されるということは必ず正式な刑事裁判を受けることになり、そこで有罪となれば執行猶予が付かない限り刑務所へ行くことになるのです。
では、詐欺罪で起訴されれば必ず刑事裁判になるのであれば、詐欺罪にならないように、Aさんのような詐欺のような窃盗事件を起こせば軽い処分で済むのでしょうか。
たしかに、窃盗罪は先ほど触れたように罰金刑のみで処罰することが可能であり、万引きなどの軽微な窃盗事件では、事件にもよりますが不起訴処分や略式罰金(罰金を支払うことで事件を終了させる手続き)となる場合も多いです。
しかし、窃盗罪であれば必ず不起訴や罰金刑で終了するわけではありません。
条文にもある通り、窃盗罪にも懲役刑は規定されており、個々の窃盗事件の被害額や犯行態様といった様々な事情を考慮して科せられる刑罰が決められます。
特に今回のような、詐欺に近い手段を用いての窃盗事件では、より悪質な犯行態様であるとみなされ、窃盗罪の中でも重く、詐欺罪に近い量刑で判断されることも十分考えられます。
ですから、成立する罪名が窃盗罪だからと言って軽く考えることはせず、まずは弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕・勾留された方向けの初回接見サービスや、在宅捜査を受けている方向けの初回無料法律相談を実施しています。
詐欺事件・窃盗事件にお困りの際は、遠慮なく0120-631-881までお問い合わせください。
詐欺のような窃盗事件?①
詐欺のような窃盗事件?①
Aさんは、京都市左京区に住んでいるVさん(84歳)の家を銀行員を装って訪ね、「銀行の者ですが、現在キャッシュカードの悪用が相次いでいるので、システムの変更が必要となりました。それまでキャッシュカードを使用せずに厳重に保管してもらいたいのです」などと言って、Vさんにキャッシュカードを封筒に入れさせ封をさせました。
そして、「開けていないという証拠のために封の部分に印鑑を押してもらいたいので取ってきてください」などと言ってVさんにいったん席を外させ、その隙に偽物のカード状のものが入った別の封筒とVさんのキャッシュカードの入った封筒をすり替えました。
さらにVさんに「システムの変更に必要です」と言ってキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、「2週間程度でシステム変更のお知らせをしますので、それまでカードはこのまま封筒に入れておいて使わないでください」と言ってVさん宅を後にしました。
後日、いつまでたっても連絡がこないと不審に思ったVさんが封筒を確認すると、偽物のカードが入っていたため、京都府下鴨警察署に通報。
捜査の結果、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月2日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・窃盗罪
まずは今回のAさんの逮捕容疑である窃盗罪がどういった犯罪が確認してみましょう。
皆さんがご存知のように、窃盗罪は誰かの物を盗むことで成立し、身近なところでは万引きや置引き、ひったくり(例外あり)などが代表的な窃盗罪にあたる行為として挙げられます。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は、その物を占有している人=その物を管理・支配している人の意思に反してその物を奪取=奪う犯罪です。
こうしたことから窃盗罪は「奪取罪」というくくりでくくられたりもします。
ここでポイントとなるのは、窃盗罪はその物の占有者の意思に反してその物を自分の管理・支配下においてしまうことで成立するのだということです。
・詐欺罪
今回のAさんの事例を見て、「Vさんをだましてキャッシュカードを取っているのに窃盗罪で逮捕されているのはなぜなのだろう」「窃盗罪ではなく詐欺罪なのではないか」と不思議に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、そもそも詐欺罪とはどういった犯罪なのでしょうか。
こちらも確認してみましょう。
刑法246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
つまり、詐欺罪の成立には、「人を欺」き、さらに「財物を交付させ」ることが必要とされます。
「人を欺」くとは、大まかに言えば人をだますことではありますが、この行為は「財物を交付させ」るために行われている必要があります。
単純に嘘をついただけ、人をだましただけでは詐欺罪にはなりません。
そして「財物を交付させ」るとは、簡単に言えば財物を引き渡させるということです。
すなわち、詐欺罪の場合、窃盗罪のようにその物の占有者の意思に反して物を奪い取る犯罪ではなく、相手をだますことで相手の意思でこちらに物を受け渡させる=交付させる犯罪なのです。
こうした点が窃盗罪と詐欺罪の異なる点の1つであり、窃盗罪が「奪取罪」というくくりに入るのに対し、詐欺罪が「交付罪」というくくりに入るゆえんでもあります。
今回の記事では、今回のAさんの事例にかかわりそうな窃盗罪と詐欺罪という2つの犯罪とその違いを詳しく確認しました。
次回は具体的にAさんのケースを考えていきます。
京都府の詐欺事件・窃盗事件にお困りの際は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
弊所の刑事事件専門の弁護士が、複数の犯罪でどれが成立するのか分からない、似たような犯罪の違いが分からない、見通しを教えてほしいといったご相談にも丁寧に対応いたします。
ご予約・お問い合わせは0120-631-881でいつでも受け付けております。
盗品等関与事件で逮捕②盗品等保管罪
盗品等関与事件で逮捕②盗品等保管罪
京都市左京区に住んでいるAさんは、知人であるBさんから、「引っ越しをするのだがその準備のために一時的に荷物を預かってほしい」と頼まれ、Bさんから時計のコレクションや高級バッグなど複数の荷物を預かりました。
Aさんは、その頼みを受け入れ、Bさんからの荷物を預り、自宅で保管していました。
すると後日、京都府下鴨警察署の警察官が来て、Aさんは盗品等保管罪の容疑で逮捕されてしまいました。
警察官の話では、Bさんが預かってくれと言ってきていた荷物は、Bさんが強盗をして奪ったものであるとのことでした。
Aさんは、家族が接見を依頼した弁護士に面会し、無実を訴えています。
(※この事例はフィクションです。)
・盗品等関与罪の「盗品等」
今回のAさんが容疑をかけられているのは、盗品等関与罪のうち、盗品等保管罪です。
刑法256条1項
盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
刑法256条2項
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。
この条文のうち、刑法256条2項の「前項に規定する物」(=刑法256条1項の「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって両得された物」)を「保管」しているという部分にあたると考えられたのでしょう。
ここで、Aさんが預かっていた物は、Bさんが強盗事件を起こして奪ってきたものです。
盗品等保管罪という犯罪名から、「強盗で奪われた被害品も対象となるのか」「あくまで窃盗で盗まれた物のみが対象なのではないか」と不思議に思う方もいるでしょう。
しかし、盗品等関与罪の対象と定められている物は、刑法256条1項で「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」とされています。
「盗品」は窃盗によって盗まれた被害品であることに不思議はないでしょう。
問題は、「その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」の部分です。
財産に対する罪とは、一般的に「財産犯」とも呼ばれ、窃盗罪のほか、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪、背任罪が挙げられます。
さらに、盗品等関与罪では、それらの犯罪によって「領得」された物を盗品等関与罪の客体としています。
「領得」とは、簡単に言えば、他人の財物を自分又は第三者の物にするために取得することを言います。
そのような「領得」が可能な財産犯は、先ほど挙げた財産犯のうち、窃盗罪、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪となります。
つまり、盗品等関与罪の客体としては、窃盗罪の被害品である「盗品」だけではなく、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪の被害品も含まれることになるのです。
今回、Aさんが預かっていたBさんの荷物は、強盗事件の被害品でした。
その荷物を自宅で預かる=保管していたわけですから、客観的に見れば、Aさんは盗品等関与罪のうちの盗品等保管罪を犯してしまっていたことになります。
・盗品等保管罪と否認
しかし、前回の記事の事例同様、Aさんは盗品であると知っていたわけではありません。
こうした場合、事実を争っていくことになるでしょう。
刑事事件で容疑を否認して事実を争っていくとなると、裁判で有罪か無罪かを判断してもらうのだから、裁判の場で主張をすればいいと思われがちです。
ですが、実はこうした否認事件の場合、裁判当日に自分自身の主張を証言すればそれだけでよいというわけではありません。
なぜなら、裁判では今まで受けた取調べで作成された供述調書などが証拠として出され、そうした証拠も含めて有罪なのか無罪なのかが判断されるからです。
すなわち、逮捕され取調べを受ける段階から、その供述が裁判で証拠として出されるかもしれないということを考えながら対応を行っていかなければ、意図せずして自分に不利な証拠を自分で作ってしまう可能性があるということなのです。
逮捕や勾留がつらいからとりあえず認めて、後で裁判の時に弁解しようなどと思っても、容疑を認めている供述調書があれば、それを裁判当日の証言のみで撤回するのは至難の業です。
そうした事態を避けるためにも、逮捕されてしまった時にはすぐに弁護士のサポートを受けることが望ましいでしょう。
逮捕・勾留されるということは身体拘束され、周りとの自由な連絡もできなくなるということですから、誰にも助けを求めることができません。
ただでさえ容疑を否認し続けるということは精神的にも大きな負担のかかることです。
弁護士にこまめに面会し、取調べのアドバイスや見通しだけでなく、周囲の人たちとの橋渡しをしてもらうことで、事件の面だけでなく、精神的な面でもケアしてもらうことができます。
前回の記事でも述べたように、盗品等保管罪など、盗品等関与罪のうち刑法256条2項に規定されている犯罪は、罰金刑と懲役刑が併科される前提の法定刑であり、非常に重い犯罪です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、事例のような否認事件はもちろん、容疑を認めているような事件についてもご相談・ご依頼をお待ちしています。
逮捕・勾留・呼び出しにお困りの際は、遠慮なく0120-631-881までお電話ください。
盗品等関与事件で逮捕①盗品運搬罪
盗品等関与事件で逮捕①盗品運搬罪
京都府南丹市に住むAさんは、友人のBさんから「少し運んでほしいものがある。自分の車では積み込むスペースが足りないので、Aさんの車で運んでほしい。お礼はするから指示した場所まで来て荷物を積み込み、目的地まで運んでほしい」と頼まれました。
Bさんがお礼はするといっていたため、Aさんは快く引き受け、Bさんが指定した場所でAさんの持ってきていた荷物を積み込むと、Aさんから聞いていた目的地まで自動車を運転して荷物を運び、Aさんに引き渡しました。
すると後日、京都府南丹警察署の警察官がBさんのもとを訪れ、盗品運搬罪の容疑で逮捕してしまいました。
警察官から聞いたところ、AさんがBさんから頼まれて運んだ荷物は全て盗品で、Bさんは窃盗罪の容疑で逮捕されているとのことでした。
Bさんは寝耳に水であるとして容疑を否認しています。
(※この事例はフィクションです。)
・盗品等関与罪
窃盗行為によって盗まれた物(被害品)や、そのほか財産犯罪によって奪われた物に関連する犯罪として、盗品等関与罪と呼ばれる犯罪があります。
この盗品等関与罪は刑法256条1項・2項に規定されています。
刑法256条1項
盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
刑法256条2項
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。
この2つの条文が規定している犯罪を盗品等関与罪と呼ぶのですが、その形態により、より細かく分けた犯罪名で呼ばれることもあります。
今回の記事から複数回にわたって、この盗品等関与罪について取り上げていきます。
・なぜ盗品等関与罪は罰せられる?
そもそも、なぜ盗品等関与罪は罰せられるのでしょうか。
盗品等関与罪では、窃盗行為や財産犯罪をした人ではなく、その被害品である盗品等にかかわった人が罰せられます。
窃盗行為等をしていない人が罰せられるのに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。
盗品等関与罪が犯罪とされている理由については、一般に、窃盗罪等の財産犯罪の被害を受けた被害者(「盗品等」を盗まれてしまったり奪われてしまったりした被害者)が盗品を取り返そうと思っても、盗品等関与罪に規定されているような行為をされてしまえば、盗品の追求が困難になってしまうからだ、と言われています。
そのほか、学説によっては、財産犯罪によって発生した違法な状態(例えば盗品が盗まれたままの状態)を継続させてしまう行為だからであるという説や、盗品等関与罪に定められている行為が認められてしまえば財産犯罪が起こることを助長してしまうからであるという説もあります。
こうしたことから、窃盗行為等をした本人でなくとも、盗品等関与罪に定められた行為をしてしまえば罰せられることになるのです。
・盗品運搬罪
では、今回のAさんは盗品等関与罪のうちどういった罪に当たるのでしょうか。
Aさんは、盗品をBさんの指示に従って運搬していることから、いわゆる「盗品運搬罪」に該当するおそれがあります。
先ほど挙げた条文で言えば、刑法256条2項の「前項に規定する物を運搬し」という部分が当てはまります。
盗品運搬罪で有罪となれば、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金となります。
ここで注意すべきなのは、盗品運搬罪の法定刑は10年以下の懲役「及び」50万円以下の罰金であるという点です。
つまり、懲役刑と罰金刑が併科されることが前提となっているのです。
ですから、罰金刑が規定されてはいるものの、罰金刑のみで処罰されることはありませんので、盗品運搬罪で起訴されるということは正式な刑事裁判を受けるということになるのです(つまり、罰金だけ払って事件終了となる略式手続は利用できません。)。
だからこそ、公判弁護活動も見据えて、早め早めに弁護士に相談することが求められるのです。
今回の事例では、Aさんは盗品であることを知らずに運搬を行ってしまっています。
こうした場合、盗品運搬罪の故意がないとして争うことも考えられます。
先ほど触れたように、盗品運搬罪で起訴されるということは公開の法廷に立って刑事裁判を受けることを意味します。
裁判本番での対応はもちろんのこと、そこできちんと自分の言い分を主張するためには、取調べ段階から慎重な対応をしていくことが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が、取調べ段階から公判弁護活動まで、一貫して丁寧な弁護活動で被疑者・被告人本人やそのご家族をサポートします。
盗品運搬事件等の盗品等関与事件の逮捕にお困りの際は、お気軽に弊所までお問い合わせください。
カツアゲ恐喝事件で少年逮捕
カツアゲ恐喝事件で少年逮捕
京都府綾部市に住んでいるAさん(17歳)は、素行の好くない友人たちと付き合っており、夜遊びや学校をさぼることを頻繁にしていました。
ある日、Aさんがその友人といたところ、後輩のVさんとその友人が歩いてきました。
Vさんらがおこづかいをたくさんもらったという話をしていたことから、AさんらはVさんらからお金を巻き込んでやろうと数人でVさんらを取り囲み、「金を渡さないと痛い目を見る」などと言ってカツアゲを行いました。
VさんらはAさんらにリンチされるのではないかと怯え、持っていたお金をAさんらに渡しました。
その後、Vさんらが帰宅して親に相談をしたことからこのカツアゲが発覚し、後日、Aさんは京都府綾部警察署に恐喝罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、まさか息子が逮捕されるような事態になるとは思わず、慌てて少年事件を取り扱っている弁護士に相談に行きました。
(※この事例はフィクションです。)
・カツアゲで恐喝罪
カツアゲとは、脅して金品を巻き上げる行為を指す言葉で、カツアゲは刑法上の恐喝罪にあたるとされています。
恐喝罪は、刑法249条に規定されている犯罪で、「人を恐喝して財物を交付させた者」に成立します。
今回のAさんの起こした事件は少年事件として処理されるため、原則として刑罰を受けることにはなりませんが、成人の刑事事件で恐喝罪として検挙された場合には、10年以下の懲役という刑罰を受ける可能性が出てきます。
そもそも「恐喝」するとは、財物を交付させるために暴行又は脅迫によって相手を畏怖させることを言います。
今回のAさんも、Vさんらからお金を巻き上げるために不良仲間とVさんらを取り囲んで脅していることから、恐喝をしていると言えそうです。
そして、Vさんらはその脅し怯え、Aさんらにお金を渡していることから、AさんらはVさんらに「財物」を「交付させた」と言えそうです。
このことから、Aさんには恐喝罪が成立すると考えられるのです。
ただし、注意すべきは恐喝罪の「恐喝」にあたる暴行又は脅迫は、相手の反抗を抑圧しない程度のものであることが必要とされるという点です。
もしも相手の反抗を抑圧するほどの暴行又は脅迫であると認められれば、恐喝罪ではなく、強盗罪が成立する可能性が出てきます。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役となっていますから、恐喝罪と比べても重い犯罪であることが分かります。
Aさんの場合は少年事件ですから、原則こうした刑罰は受けませんが、それでもより重い犯罪が成立することで、処分に影響が出てくる可能性があります。
・少年のカツアゲ恐喝事件
今回のように、20歳未満の者が法律に触れる事件を起こした場合には、少年事件として扱われ、最終的に家庭裁判所の判断によって処分が決められることになります。
繰り返し記載しているように、少年事件では、法定刑の重い犯罪だから必ず少年院に行くとも限りませんし、逆に法定刑の軽い犯罪だから何も処分を下されないとも限りません。
通常の成人の刑事事件とは違い、少年事件ではその少年のその後の更生が第一に考えられるためです。
しかし、では少年事件において、通常の成人の刑事事件と同じような弁護活動は不要か、というとそういうわけでもありません。
例えば、今回のAさんのカツアゲによる恐喝事件では、Vさんという被害者がいます。
この被害者に対して謝罪をする、被害に遭った分について賠償をする、ということは、少年事件であっても全く不要というわけではありません。
確かに、起訴・不起訴を決める成人の刑事事件に比べれば、少年事件では示談は必須というわけではありませんが、少年が反省しているのかどうか、少年自身やその家族・周囲の人がどのように事件について受け止めているのか、といった事情を示す1つの材料として、被害者に謝罪をしていることや示談をしていることは有効であるのです。
ただし、今回の事件のように、子どもの間で起きてしまった少年事件では、示談するにも困難が伴うことも多々見られます。
未成年者との示談では、示談交渉の相手は親となりますが、自分のお子さんが被害に遭ったとなれば、当然のことながら被害感情も小さくありません。
そうしたことから当事者同士の示談交渉で逆に話がこじれてしまうケースもあります。
だからこそ、少年事件の弁護活動にも専門家であり第三者である弁護士を介入させることが望ましいと言えるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
被害者との示談交渉だけでなく、釈放を目指した身柄解放活動や取調べ対応のアドバイスまで、一貫した弁護活動をご提供いたします。
京都府の少年事件にお困りの際は、少年事件の取り扱いも多い弊所弁護士に、ぜひご相談下さい。
花火大会でチケット不正転売防止法違反
花火大会でチケット不正転売防止法違反
Aさんは、京都府宮津市で開催される人気の花火大会の有料席のチケットを、行く気がないにも関わらず何枚も取得し、SNSなどで定価よりかなり高額の値段で買い取りを募集しました。
実はAさんはこの花火大会以外にもこうした手口でチケットの高額転売を繰り返しており、今回もチケットの転売により利益を得るつもりでした。
すると、京都府宮津警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんはチケット不正転売防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・花火大会でチケット不正転売防止法違反
夏も真っ盛りの時期となり、各地で花火大会も開催されています。
人気の花火大会では、有料席のチケットも販売されており、座って花火を見ることができたり、いい位置で花火を見ることができたりするところもあるようです。
今回は、この花火大会の有料席のチケットについて、刑事事件となってしまったようです。
Aさんに容疑がかけられているチケット不正転売防止法違反という犯罪は、つい先日、令和元年6月14日に施行された、チケット不正転売防止法(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)に違反する犯罪です。
この法律では、主に①チケットの不正転売、②チケットの不正転売を目的にしたチケットの取得が禁止されています。
・チケット不正転売防止法の対象は
チケット不正転売防止法が対象としているチケットは、全てのチケットというわけではありません。
チケット不正転売防止法では、①「興行主等(興行主(興行の主催者をいう。以下この条及び第5条第2項において同じ。)又は興行主の同意を得て興行入場券の販売を業として行う者をいう。以下同じ。)が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該興行入場券の券面に表示し又は当該興行入場券に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたもの」(2条3項1号)であり、②「興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者(興行主等が当該興行を行う場所に入場することができることとした者をいう。次号及び第5条第1項において同じ。)又は座席が指定されたもの」(2条3項2号)であり、③「興行主等が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項を確認する措置を講じ、かつ、その旨を第1号に規定する方法により表示し又は表示させたもの」(2条3項3号)を満たすチケットが対象とされています。
③については、入場資格者が指定されているチケットについては入場資格者の氏名及び電話番号、電子メールアドレス、その他の連絡先(2条3項3号イ)、座席が指定されたチケットについては購入者の氏名及び連絡先(2条3項3号ロ)が「次に定める事項」とされています。
多くの大手チケットサイトでは、チケット購入の際には①や③の確認を求められることが多いため、チケットサイトを通じて購入したようなチケットの多くが当てはまると考えられます。
また、今回のAさんの花火大会の有料席の場合には、日時や場所の指定はもちろんしてあると考えられます。
ですから、入場資格者や席が指定されていれば、Aさんの転売した花火大会のチケットもチケット不正転売防止法の対象になる可能性が高いと考えられます。
・チケットの不正転売とは
チケット不正転売防止法では、チケットの不正転売について、「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」(チケット不正転売防止法2条4項)とされています。
つまり、興行主に無断で、反復継続の意思をもって、販売価格を超える価格でチケットの転売をした場合に、チケット不正転売防止法のいうチケットの不正転売にあたるのです。
今回のAさんの場合、公式のリセールサービスなどを使っていないことから、興行主に許可を取って転売をしているとは考えにくいです。
また、過去にも同様のチケットの転売をしていることや、花火大会のチケットを複数取得していることから、花火大会のチケットの転売について反復継続の意思があるとも考えられます。
さらに、Aさんは定価よりも高額にチケットを転売していますから、チケット不正転売防止法のいうチケットの不正転売をしていると考えられます。
チケットの不正転売をしてしまった場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくはその両方が科されます(チケット不正転売防止法9条1項)。
なお、チケットの不正転売目的にチケットを取得した場合にも、同様の刑罰を受ける可能性があることにも注意が必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうしたチケット不正転売事件のご相談も受け付けております。
チケット不正転売防止法はまだ施行されて日が浅い法律ですが、刑事事件を専門に扱う弁護士だからこそ、迅速で丁寧な対応が可能です。
まずはお気軽に0120-631-881までお問い合わせください。
(京都府亀岡市)振り込め詐欺とだまされたふり作戦②
(京都府亀岡市)振り込め詐欺とだまされたふり作戦②
~前回からの流れ~
京都府亀岡市に住んでいるVさんは、Aさんから、Vさんの息子を装った電話を受けました。
AさんはVさんに「事故を起こしてしまって示談金100万円が必要だ。今から友人を向かわせるから100万円を渡してくれ」と伝えました。
Vさんは、とりあえず話を聞きましたが、よく報道されている振り込め詐欺だと思い、相手にしないようにしようと考えました。
すると、今度は京都府亀岡警察署の警察官を名乗るBさんから電話が入りました。
Bさんは、「私は京都府亀岡警察署の警察官です。今捜査している振り込め詐欺グループの電話番号リストにこの番号があったので電話させてもらいました。もし振り込め詐欺グループから電話があれば、だまされた作戦にご協力ください」と言ってきました。
Vさんは、警察官が張り込んでいるのでだまされたふりをしてお金を渡してほしいというBさんの言葉を信じて、自宅にやってきた息子の友人を名乗る人物に100万円を渡しました。
しかし、その後いくら待っても警察から連絡が来ないことを不審に思ったVさんが、京都府亀岡警察署に連絡すると、Aさんという警察官がいないこと、現在だまされたふり作戦を頼んでいる事件がないことを知りました。
そこでVさんは、今までの経緯を京都府亀岡警察署に話し、被害届を出しました。
その後の捜査により、AさんとBさん、友人役をしたCさんが、詐欺罪の容疑で逮捕されました。
(※この事例はフィクションです。)
・だまされたふり作戦を装った詐欺事件
前回の記事では、振り込め詐欺とだまされたふり作戦について触れました。
今回は、Aさんらの詐欺事件のような、だまされたふり作戦を装った詐欺事件について取り上げます。
振り込め詐欺事件は、複数人が一緒になって役割分担をして、詐欺を計画・実行していることも多い詐欺事件です。
だまされたふり作戦を装った詐欺事件でも、被害者にあたかもだまされたふり作戦に協力しているかのように思わせるため、典型的な振り込め詐欺を装った電話をかける役(今回の事例で言えばAさん)と、その詐欺についてだまされたふり作戦を提案する警察の役(今回の事例であればBさん)、さらに現金やキャッシュカードを受け取るいわゆる「受け子」の役(今回の事例で言えばCさん)といった役割分担がなされていることが多いです。
だまされたふり作戦を装った詐欺事件では、先に詐欺らしき怪しい電話がかかってきた後で警察を名乗る電話が来ることから、後でかかってきた警察を装った電話を信じてしまいやすく、さらにだまされたふり作戦に協力して犯人を検挙するのだという善意からも信じてしまうこともあるようです。
だまされたふり作戦を装った詐欺の場合、「警察に協力してだまされたふりをしているだけなので犯人はすぐに検挙され、お金等はすぐに返ってくる」と被害者に信じ込ませることで、お金等をだまし取っていることから、ほかの手口の詐欺同様、刑法の詐欺罪にあたります。
刑法246条(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪の「人を欺いて」とは、簡単に言えば「人をだまして」ということになりますが、このだます内容については、その事実が嘘であると知っていれば(その事実についてだまされていると知っていれば)、被害者が財物を渡さなかったであろう内容である必要があるとされています。
今回のようなだまされたふり作戦を装った詐欺事件では、被害者が本物の警察のだまされたふり作戦に協力しているのであって、犯人の検挙やお金の返還がなされると思って財物であるお金を渡しているということになります。
もしもこれが本物のだまされたふり作戦でないと知っていれば、お金を渡さなかったでしょうから、詐欺罪の「人を欺いて」にあたることになるのです。
・だまされたふり作戦を装った詐欺事件の弁護活動
先ほど触れたように、だまされたふり作戦を装った詐欺事件では、複数人共犯者が存在することが多いです。
そうなれば、口裏合わせを防止するために、逮捕・勾留といった身体拘束を伴う捜査が行われる可能性も高く、さらに弁護士以外との接見を禁止する接見禁止処分も付される可能性があります。
そうなれば、身体拘束によって会社や学校にいけないだけでなく、ご家族とも面会できずに1人で長期間の身体拘束期間を乗り切らなければなりません。
これは被疑者にとって非常に負担の重いことです。
弁護士に依頼することで、ご家族との伝言のやり取りを行えるだけでなく、この接見禁止処分自体をご家族に限って解除する活動もしてもらうことができます。
さらに、詐欺事件には被害者が存在するため、弁護士を通じて謝罪と弁償を行い、示談締結を目指すことも重要な活動の1つです。
だまされたふり作戦を装った詐欺事件は計画性もあり、悪質であると判断される可能性があります。
きちんと謝罪を行い、被害弁償を行うことで、反省の意を伝えることができます。
こうした活動にも、専門家である弁護士の力が大きな助けとなります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が詐欺事件にも迅速に対応いたします。
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