ペットの連れ去りで刑事事件に

2021-05-31

ペットの連れ去りで刑事事件に

ペット連れ去りから刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

~事例~

京都府京田辺市に住んでいるAさんが自宅付近を散歩していると、赤い首輪を付けた小型犬がスーパーマーケットのすぐ前にある柵にリードで繋いであるところを見つけました。
その小型犬は、飼い主であるVさんがスーパーマーケットで買い物をする10分程度の間、外に繋いでおいた犬でした。
Aさんは、もともと犬を飼いたいと思っていたこともあり、一目を盗んで犬のリードを外すと犬を抱えて持ち帰り、自分のペットとして飼育し始めました。
その後5分ほどして買い物を終えてスーパーマーケットを出てきたVさんは、繋いでおいたはずの犬がいなくなっていることに気が付き周囲を探しましたが、犬が見つからないことから、京都府田辺警察署に相談。
その後の捜査で、AさんがVさんの犬を連れ去ったことが発覚し、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されるに至りました。
Aさんの家族は、まさかAさんが他人のペットを連れ去って逮捕されるとは思わず、刑事事件を取り扱っている弁護士に相談し、Aさんに成立する犯罪やその見通し、可能な弁護活動について詳しく聞くことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・ペットの法律上の立ち位置

犬や猫に代表されるペットを、自分の家族と同じように大事な存在として大切に飼育されている方も多いでしょう。
しかし、法律上、ペットのような動物は「物」として扱われます。
したがって、誰かがペットが傷つけても人を傷つけたときのように傷害罪(刑法第208条)は成立しませんし、ペットを連れ去ったとしても人を誘拐したときのように誘拐罪(刑法第224条)は成立しません。
大切にしているペットだからこそ、こういった扱いが腑に落ちないという方もいらっしゃるかもしれませんが、現在の法律上、ペットの扱いはそのようになっているのです。

・ペットの連れ去りで成立する犯罪?

今回の事例では、AさんはVさんのペットの犬を勝手に連れ帰っています。
こうしたケースでは、今回のAさんの逮捕容疑でもある窃盗罪が問題となります。

刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

条文を確認すると、窃盗罪が成立するためには①「他人の財物を」、②「窃取」することが必要です。

まず①について、他人の財物とは他人が「占有」する「他人の財物」を意味します。
先ほど触れた通り、法律上ペットは「物」ですから、Vさんのペットの犬も法律上は「物」と考えられます。
そして、窃盗罪の「財物」は、財産的価値がなくとも、社会通念上刑法的価値に値する主観的・感情的価値があるものであればよいとされます(大判明治44.8.15)。
したがって、例えばVさんのペットの犬が血統書付きの犬などではなくとも、窃盗罪の「財物」といえるでしょう。

そして、②「窃取」するということは、持ち主の意思に反してその物の占有を自分や第三者に移転することです。
「占有」とは、財物に対する事実上の支配をいいます。
今回のAさんの事例の場合、犬の飼い主であるVさんは犬のもとを離れてスーパーマーケットの中に行っていることから、Vさんが犬を占有しているかどうか疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、Vさんが犬のもとを離れたのは10分程度という短い時間であり、Vさんとしてもすぐに戻るつもりで犬を柵に繋いでおり、距離的にも近い位置にいます。
こうしたことから、一時的に犬と離れていたとしても、Vさんは犬を占有している状態であったと考えられるでしょう。
その状況からAさんはVさんの意思に反して勝手に犬を連れ去り自分のペットとして扱っている=犬の支配をAさんのもとに移していると考えられるため、窃盗罪の「窃取」に該当する行為をしていると考えられます。

なお、窃盗罪には条文にある条件以外にも「不法領得の意思」という意思が必要とされています。
「不法領得の意思」を簡単に言えば、持ち主の権利を排除して自分が持ち主のようにその物を利用したり処分したりする意思のことを指します。
今回のAさんは、Vさんのもとからペットの犬を連れ去り、自分のペットとする=Vさんを排除して自分が犬の持ち主のようにふるまう意思をもって行動しているので、この「不法領得の意思」もあったと考えられます。

こうしたことから、Aさんのペットの連れ去り行為は窃盗罪にあたると考えられるのです。

先ほども触れた通り、法律上ペットは「物」として扱われますが、飼い主からすれば家族同然であったりします。
そうしたペットを連れ去られたとなれば、被害感情が大きいことも当然考えられます。
被害者対応なども慎重に行うことが求められますから、刑事事件の専門家である弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、窃盗事件を含む刑事事件を専門的に取り扱っています。
お悩みの際はお気軽に弊所弁護士までご相談ください。