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窃盗罪と住居侵入罪
窃盗罪と住居侵入罪
窃盗罪と住居侵入罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市山科区に住むAは近所に住むVが出かけているのに家の鍵が開いていることに気が付きました。
お金に困っていたAは、Vの家に空き巣に入ることに決め、Vの家に侵入し、現金約10万円と腕時計など数点を盗みました。
帰宅したVが部屋を見ると、明らかに荒らされており、Vはすぐに京都府山科警察署に連絡しました。
周囲の防犯カメラの映像や部屋に残された指紋や靴跡などからAの犯行であることが特定され、Aは、窃盗罪と住居侵入罪の疑いで逮捕されることになってしまいました。
Aが逮捕されてしまったと聞いたAの両親は窃盗罪と住居侵入罪という2つの罪を犯してしまったAがどうなってしまうのか不安になり、刑事事件に強い弁護士に初回接見を依頼することにしました。
(この事例はフィクションです)
~窃盗罪と住居侵入罪~
今回のAは、窃盗罪と住居侵入罪という二つの罪に該当する行為をしています。
このような場合、どのような範囲で処罰されることになってしまうのでしょうか。
まずは、住居侵入罪と窃盗罪の条文を確認してみましょう。
刑法第130条 住居侵入罪
「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。」
刑法第235条 窃盗罪
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」
単純に考えると二つの罪に規定されている罰則を足してしまうという方法が思いつくかもしれません。
しかし、それでは不当に重い刑罰となってしまう可能性が高まってしまいます。
そこで、刑法では二つ以上の罪にあたる場合についていくつかの規定をおいています。
~牽連犯~
二つの罪名にあたる行為のうち、今回の事例の窃盗罪と住所侵入罪のような関係となるような場合は牽連犯と呼ばれます。
牽連犯は刑法第54条に規定されています。
刑法第54条
「一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。」
上記条文の前段にある「一個の行為が二個以上の罪名に触れ」る場合を観念的競合といい、後段に規定されている「犯罪の手段又は結果である行為」を牽連犯といいます。
そして、この観念的競合や牽連犯だとされる場合については、複数ある罪名のうち、「最も重い刑により処断する」とされています。
今回の事例である侵入等事件の場合、窃盗罪の手段として住居侵入罪をしていますので、牽連犯の代表的な態様であるといえます。
そして、こうした場合の処断刑の範囲は住居侵入罪と窃盗罪を比べたときに重い罪である窃盗罪の「10年以下の懲役又は50万以下の罰金」の範囲で処断されることになります。
このように、法律の規定自体は条文を見ればわかるかもしれませんが、実際の事例においてどのように運用されていくのかについては、刑事事件に強い弁護士の見解を聞いたほうがよいでしょう。
なお、二つ以上の罪についての規定は、このほかにも併合罪などがありますので、詳しくは刑事事件に強い弁護士の見解を聞くようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では刑事事件に強い弁護士が無料法律相談、初回接見サービスを行っています。
初回無料での対応となる法律相談、逮捕されている方のもとへ弁護士を派遣する初回接見サービスのご予約はフリーダイヤル0120-631-881にて24時間体制で専門スタッフが受付を行っています。
京都市山科区の窃盗罪・住居侵入罪やその他刑事事件でお困りの方がおられましたらまずはお気軽にお問い合わせください。
自宅出産後の死体遺棄事件で逮捕されたら
自宅出産後の死体遺棄事件で逮捕されたら
自宅出産後の死体遺棄事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府京丹後市に住むAさんは、妊娠していることを誰にも言い出せず、そうこうしているうちに自宅で出産してしまいました。
しかし、産まれてきた赤ちゃんはすでに亡くなっており、どうしてよいか分からなくなったAさんは、自宅に赤ちゃんの遺体を隠してしまいました。
Aさんの様子がおかしいとAさんの自宅を訪ねてきたAさんの知人が隠されていた赤ちゃんの遺体を発見し、京都府京丹後警察署に通報。
Aさんは死体遺棄事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんの状況を知ると驚き、Aさんの手助けができないかと刑事事件に対応している弁護士に相談することにしました。
(※令和3年4月24日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)
・自宅出産後の死体遺棄事件
妊娠していた女性が自宅や外出先などの病院以外で出産してしまい、赤ちゃんやその遺体を遺棄してしまうという痛ましい事件は、度々報道されているところです。
こうしたケースでは、まず今回の事例のAさんの逮捕容疑でもある死体遺棄罪の容疑で捜査が行われることが多いでしょう。
刑法第190条(死体損壊等)
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。
刑法第190条では、今回問題となっている死体遺棄罪のみでなく、死体損壊罪なども定められており、1つの条文で複数の犯罪が規定されています。
このうち、死体遺棄罪は「死体」「を」「遺棄」することで成立する犯罪となります。
死体遺棄罪の定義で一般の方に伝わり辛いのは「遺棄」という部分でしょう。
一般に「遺棄」というと捨てることであるというイメージが強いでしょう。
ですが、死体遺棄罪の「遺棄」は捨てることだけを意味しているのではありません。
死体遺棄罪の「遺棄」とは、人間の遺体を葬儀に絡む社会通念や法規に沿わない状態で放置することを指します。
つまり、「死体をどこかへ捨てる」といった行為はもちろん、社会通念に沿ったきちんとした埋葬をせずに放置するだけでも死体遺棄罪の「遺棄」行為になります。
ですから、例えば死体を勝手に山に埋めたというケースでは、埋めた本人の認識では死体を埋葬したものであったとしても、それが社会通念上・法規上の埋葬に当たらないのであれば、死体遺棄罪の「遺棄」行為をしたことになるのです。
今回のAさんは、赤ちゃんの死体を自宅に隠しているだけで、どこかへ捨てているというわけではありません。
しかし、死体を自宅に隠すということは、社会通念や法規に沿わない状態で放置している状態=死体遺棄罪の「遺棄」行為をしているということになります。
そのため、Aさんには死体遺棄罪が成立すると考えられるのです。
・出産後の死体遺棄事件と弁護活動
今回のAさんのような、出産した赤ちゃんの死体を遺棄してしまったという死体遺棄事件では、死体遺棄罪の刑罰が重いことも影響し、逮捕・勾留によって身体拘束が行われた上で捜査されることも多いです。
出産した赤ちゃんの死体遺棄行為をしてしまった被疑者本人は、精神的なショックを抱えていることも多く、細やかなサポートが必要ですが、逮捕・勾留されていればご家族に会うことも難しいです。
だからこそ、弁護士を通じて伝言のやり取りをする、取調べへの対応や被疑者の権利を把握しておくといったことが重要となります。
早い段階から弁護士を通じて被疑者本人と意思疎通を図ることが大切でしょう。
また、こうした出産に絡む死体遺棄事件では、赤ちゃんが生まれてきてから亡くなったという場合、殺人罪の容疑がかかる可能性もあります。
そうした場合、取調べが厳しくなることも考えられますし、殺人罪で起訴されれば裁判も裁判員裁判という特殊な形態となります。
当然有罪となった場合に予想される刑罰も重くなります(殺人罪(刑法第199条)の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」)。
死体遺棄罪だけでなく、他の犯罪の容疑がかかることも見据えて早め早めの対策が必要なのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、出産後の死体遺棄事件などの刑事事件を専門とする法律事務所です。
出産の絡む死体遺棄事件では、被疑者本人のサポートはもちろん、その後同じことが起こらないように周囲の方と協力して環境を整えることも重要です。
刑事事件の専門家である弁護士の力を借りながら、刑事事件への対応と同時に、その環境調整についても進めていくことがおすすめです。
まずは遠慮なく弊所弁護士までご相談ください。
窃盗事件と略式罰金
窃盗事件と略式罰金
窃盗事件と略式罰金について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
京都府宮津市に住んでいるAさんは、近所のスーパーで万引きをしたことによる窃盗事件により、京都府宮津警察署で捜査を受けていました。
Aさんは以前にも万引きをしたことがあり、その時は不起訴処分となったものの、「今回は不起訴では終わらないぞ」と警察官に言われてしまいました。
Aさんは、自分がどういった処分を受けるのか不安になり、弁護士に相談したところ、予想される処分に略式罰金という処分があると言われました。
そこでAさんは、略式罰金がどういった処分なのか弁護士に詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・刑事事件の流れと略式罰金
窃盗事件を含む刑事事件では、まず警察が事件を発見して捜査することが多いでしょう。
そして警察が捜査を完了したところで、事件は警察から検察へ移される(送られる)ことになります。
ニュースなどでもよく耳にする「送検」とは、その刑事事件を警察から検察に移すことをいいます。
事件が送検されたら、今度はその刑事事件の担当となった検察官が、被疑者を起訴するかどうかを判断することとなります。
刑事事件で被疑者となり、起訴されると裁判となります。
よく言われることではありますが、日本では起訴された刑事事件の99%は有罪となっています。
ですから、前科を回避したいと考える方などは、被疑者となってしまったら第一に起訴を回避する=不起訴処分を獲得するために弁護士に弁護活動をしてもらうなどすることになります。
ここで今回のポイントとなる「略式罰金」に関わることですが、通常、検察官は地方裁判所に公訴提起=起訴をすることになるのですが、一部の比較的軽微な犯罪については簡易裁判所に公訴提起=起訴をすることができます。
一部の比較的軽微な罪とは、裁判所法第33条第1項第2号に規定されている以下の犯罪です。
裁判所法第33条第1項
簡易裁判所は、次の事項について第一審の裁判権を有する。
第2号 罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪又は刑法第186条、第252条若しくは第256条の罪に係る訴訟
まとめると、罰金以下の刑に当たる犯罪や、選択刑として罰金が定められている犯罪がこの対象とされていることになります。
例えば、今回の事例のAさんは、万引きによる窃盗罪(刑法第235条)の被疑者となっています。
窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」となっていますので、窃盗罪は「選択刑として罰金が定められている犯罪」に当たります。
つまり、Aさんの事例では、Aさんの窃盗事件は簡易裁判所に起訴される可能性があるといえます。
検察官が簡易裁判所に起訴する場合には、検察官は略式命令請求書を提出して書面審査のみによる簡便な手続を請求することができます。
この手続を略式手続といいます。
略式手続による起訴が略式起訴と呼ばれるもので、よくドラマなどで見る公開の法廷で行われる正式な裁判に対して簡単な手続きであることから略式起訴、略式手続きなどと呼ばれてい流のです。
この略式手続では、後述のように罰金刑しか科せないことから、略式手続を経て罰金刑となることを略式罰金と呼んだりもします。
今回のAさんも、略式手続を経て罰金刑となる可能性があるため、弁護士から略式罰金の可能性があると言われたのでしょう。
この略式罰金の手続きでは、正式起訴されて行われる裁判と異なり、公開の法廷で行われることもなく、何日も裁判所に行く必要がないことから、正式裁判を避けて略式罰金にしてほしいと考える方もいらっしゃいます。
しかし、略式罰金の手続きをするにも希望すればできるというわけではなく、いくつかの条件があります。
①簡易裁判所が管轄する事件であること
先ほど挙げたように、容疑をかけられている犯罪が上記の裁判所法第33条第1項第2号に当てはまらなければなりません。
②100万円以下の罰金・科料に当たる事件であること
①に該当する犯罪であっても、事件の重大さなどから罰金刑以下の刑では不適当と判断される場合があります。
略式罰金を行うためには、相当であると考えられる刑が100万円以下の罰金または科料でなければいけません(それ以上の金額は簡易裁判所が取り扱いできないため。)。
③被疑者が容疑を認めていること
検察官は略式罰金の手続を行う前に被疑者に略式手続について説明し、略式罰金の手続によることに異議がない場合に限って略式命令を請求できることとなっています。
略式罰金の手続きでは、公開の裁判は開かれず、書面のみで審理が行われます。
迅速で行われる上、被告人として公開の法廷に立つ必要がないことはメリットでもありますが、同時に裁判の場で反論することができないため、デメリットでもあるのです。
ですから、容疑を認めているいわゆる「認め」の事件にしか略式罰金の手続きは適用できないのです。
そして、罰金刑であっても有罪となり刑罰を受けることに変わりはありませんから、略式罰金を受けるということは前科がつくことになります。
略式罰金によるメリット・デメリットを弁護士とよく相談しながらどのような処分を目指していくのか、どういった処分を受け入れるのか決めていくことが良いでしょう。
刑事事件の処分や手続きはさまざまで、一般に浸透していないことも多いです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、略式罰金の手続きなど、刑事手続きについてのご相談も多く承っています。
窃盗事件などの刑事事件にお悩みの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。
電車での過失傷害事件
電車での過失傷害事件
電車での過失傷害事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
Aさんは、京都府舞鶴市内を走る電車内で、大きなスーツケースを荷物棚からおろす際、不注意からそのスーツケースを隣に座っていた利用客Vさんの顔に激しくぶつけてしまいました。
Vさんは鼻血を出すほど強く顔面を打ち付けており、駅に着いた際にAさんとVさんは一緒に駅員の元へ向かいました。
その際、Aさんがさほど反省した様子を見せていなかったことからVさんは激怒し、京都府舞鶴警察署に被害を届け出ると言ってきました。
Aさんは、「わざとぶつけたわけではないがそれでも犯罪になるのか」と不安に思い、京都府内の刑事事件に対応している弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・不注意で人に怪我をさせてしまった…犯罪になる?
人に暴行をして怪我をさせたり、怪我をさせるに至らなくても人に暴行をしたりすれば、刑法の傷害罪や暴行罪に当たることは皆さんご存知の通りでしょう。
刑法第204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法第208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
では、今回のAさんのように、不注意で暴行を加えてしまい、相手に怪我をさせたような場合、これらの犯罪は成立するのでしょうか。
傷害罪や暴行罪は故意犯と呼ばれる犯罪であり、暴行の故意=相手に暴行をするという意思や認識が認められなければ犯罪として成立しません。
つまり、今回のAさんがスーツケースをVさんにぶつけてやろうという意思をもっていない限り、傷害罪や暴行罪は成立しないということになります。
ただし、スーツケースがぶつかりそうであることを分かっていながらあえて「ぶつかってもいいだろう」と思ってぶつけたような場合には、いわゆる「未必の故意」が認められ傷害罪や暴行罪が成立する可能性もあるため、詳細な状況を専門的に検討することは必要です。
・過失傷害罪
では、Aさんのように不注意で人に怪我をさせた場合には、なんの犯罪も成立する可能性はないのかというと、そうではありません。
刑法には、過失傷害罪という犯罪が規定されています。
刑法第209条第1項(過失傷害罪)
過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。
過失傷害罪は、過失=不注意によって人を傷害してしまった時に成立する犯罪です。
つまり、今回のAさんのケースのような場合には、過失傷害罪が問題となるのです。
では、どんな時に過失傷害罪の「過失」(不注意)が認められるかというと、結果の発生が予見でき、さらに、その結果を回避する義務に違反した場合に限って過失が認められるとされています。
例えば今回の事例の場合、荷物棚からスーツケースをとる際に、スーツケースを落とすなどして他の乗客にぶつかってしまうことが予想できたか、その結果を回避するためにAさんはなんらかの対策を取っていたか、といったことが検討されることになるでしょう。
単に「不注意だった」というだけで過失傷害罪の成否が判断されるわけではないため、やはり専門家の弁護士に詳細な事情とともにアドバイスをもらうことが必要とされるでしょう。
なお、過失傷害罪は親告罪(刑法第209条第2項)となっていますので、告訴がなければ起訴されません。
ですから、過失傷害事件では迅速に示談を締結することによって不起訴処分の獲得など、寛大な処分を得ることができます。
そういった点からも、早めに弁護士に相談・依頼することが重要と言えるでしょう。
ふとした不注意から刑事事件の当事者になってしまうこともあります。
弁護士のサポートを受けることで、突然の刑事手続きへの不安や疑問を解消することにつながります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事事件の始まりから終わりまでフルサポートいたします。
まずはお気軽にご相談ください。
品物を預かって盗品保管罪に
品物を預かって盗品保管罪に
品物を預かって盗品保管罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
京都市左京区に住んでいるAさんは、骨董品店を営んでいるBさんから「店が手狭になったから品物を数店預かってくれないか」と骨董品を数点渡されました。
Aさんは、「預かるくらいならいいか」と思い、自宅で骨董品を預かり、しばらく保管していました。
しかし、実はこの骨董品は数日前にBさんが京都市左京区にあるVさん宅から盗んだ盗品だったのでした。
後日、Vさん宅の窃盗事件が京都府川端警察署に捜査され、Bさんが窃盗罪の容疑で捜査されることになり、そこでBさんが盗品をAさんに預けたと供述したことから、Aさんは盗品保管罪の容疑で話を聞かれることになってしまいました。
困ったAさんは、弁護士に対応を相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・盗品関与罪〜盗品保管罪
今回Aさんが疑われている盗品保管罪は、盗品関与罪と呼ばれる犯罪の1つです。
盗品等関与罪は、刑法第256条に定められている犯罪です。
刑法第256条
第1項 盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
第2項 前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪(刑法第235条)や詐欺罪(刑法第246条第1項)などの財産罪を犯した人が、これらの犯罪によって得た財物をどう処分しようと、そのことによって改めて盗品等関与罪で処罰されることはありません(このような行為を不可罰的事後行為といいます。)。
しかし、窃盗罪を犯した本人や詐欺罪を犯した本人以外の人については、この盗品等関与罪が成立する可能性があります。
盗品等関与罪は、盗品等を譲り受けることなどによって本犯の被害者が盗品等の回復を行うことを困難にしたり、本犯により生じた違法な財産状態を維持・継続させることになるために処罰されます。
例えば、窃盗罪の被害を受けた人(盗まれた人)からすれば、被害品=盗品が盗んだ本人から別の人に移ってしまえばそれを取り戻しにくくなるということです。
盗品等関与罪が成立し得る具体的な態様としては、譲り受け、有償処分のあっせん、運搬、保管があります。
このうち、今回のAさんが疑われているのは盗品保管罪ということになります。
盗品等関与罪は故意犯ですから、目的物が盗品等であることを認識・予見していなければ処罰されることはありません。
今回のケースでは、AさんはBさんからのしばらく預かっていてほしいという依頼を受け、盗品である骨董品を保管しています。
しかし、Bさんから骨董品を預かり保管していた時点で、Aさんがこの骨董品が盗品であることを認識・予見していたかどうかは事例からはわかりません。
もしもAさんがBさんが売買などによって正当に所有している骨董品であると認識していた場合、盗品保管罪の故意はないことになり盗品保管罪は成立しません。
ただし、判例によれば、保管開始後、保管中に盗品であることを知った場合にも故意を認め盗品保管罪が成立するとされています。
ここでの故意は、譲り受けや保管などの目的物が盗品等であることを確定的に知っていることまでは必要ではなく、もしかしたら盗品かもしれないと思いながら敢えて譲り受けたり保管するなどの意思を有していた場合(いわゆる未必の故意)にも認められます。
ですから、今回のケースでは、Aさんの認識や当時の状況を詳しく聞いた上で主張を組み立てていく必要があると言えます。
取調べなどで主張をしていくには、自分にかけられた容疑の犯罪がどのような犯罪であるのか、自分の認識はどのようなものなのか、客観的な事情はどういったものがあるのかといった詳しい事情を専門的に検討しなければいけません。
だからこそ、弁護士に細かく相談することがお勧めです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回無料法律相談も受け付けています。
預かり物から盗品保管事件に巻き込まれてしまった方は、まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。
官製談合事件で逮捕されたら
官製談合事件で逮捕されたら
官製談合事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
京都府福知山市の市役所の土木建築部に勤務しているAさんは、土木建設会社を経営しているBさんから、「今度京都府福知山市である浄水場工事の入札情報を教えてくれないか」と言われ、非公表のはずの情報を事前に教えました。
そしてBさんは、落札できる最低限価格で工事を落札し、受注しました。
しかし、こうしたことが連続して起きたために調査が入り、Aさんが入札情報を漏らしていたことが発覚。
京都府福知山警察署が捜査を開始し、Aさんは官製談合防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和3年2月12日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・官製談合防止法
官製談合とは、公共事業の入札で、発注者側の人間と業者側の人間で事前に話し合い、落札価格などを決めてしまうことを指します。
例えば、今回のAさんとBさんは、工事を発注する京都府福知山市に属するAさんと、入札に参加する工事を受注したい業者のBさんという関係にあり、その2人が入札情報をやり取りしてBさんが落札できるようにしていることから、まさに官製談合をしていると言えるでしょう。
この官製談合については、官製談合防止法(正式名称「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」)で禁止され、刑罰も定められています。
官製談合防止法第8条
職員が、その所属する国等が入札等により行う売買、貸借、請負その他の契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは、5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。
今回の事例のAさんに当てはめて考えてみましょう。
Aさんは京都府福知山市の職員であり、土木建築部に所属していることから、入札等の業務を外部に漏らさないことが職務上求められていると考えられます。
AさんはBさんに対して入札情報を漏らしていることから「その職務に反し」「事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること」によってBさんに落札させていますから、この行為によって工事の入札は不公平に行われてしまったと言えるでしょう。
ですから、Aさんは「当該入札等の公正を害すべき行為」をしたと考えられ、官製談合防止法第8条に該当する官製談合防止法違反となると考えられるのです。
・「職員」でない業者は何罪に?
ここで注意すべきなのは、官製談合防止法では国などの「職員が」談合を唆したり入札に関しての情報を漏らしたりして入札の公正を害する行為をした場合について定めているということです。
つまり、官製談合防止法では官製談合の発注者側を取り締まっていると言えます。
では、官製談合防止法のいう「職員」ではない業者側(今回の事例でいうBさん)には犯罪は成立しないのでしょうか。
実は、官製談合防止法違反とは別に、刑法には公契約関係競売等妨害罪という犯罪が規定されています。
刑法第96条の6
第1項 偽計又は威力を用いて、公の競売又は入札で契約を締結するためのものの公正を害すべき行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第2項 公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した者も、前項と同様とする。
刑法第96条第2項では、「公正な価格を害し又は不正な利益を得る目的で、談合した」者について「3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科」という刑罰を定めています。
今回の事例のBさんのような官製談合の業者側については、この公契約関係競売等妨害罪が成立すると言えます。
官製談合をしたことによる官製談合法違反事件では、犯行態様によってこの他の犯罪が成立する可能性があります。
例えば、賄賂によって官製談合が行われたような場合には、発注側・業者側(今回の事例ではそれぞれAさん・Bさん)共に収賄罪や贈賄罪が成立する可能性があります。
そして、発注側が公務員という立場ながらその職務に反する形で官製談合をしているのであれば、地方公務員法違反や国家公務員法違反といった犯罪も成立すると考えられます。
官製談合自体も検討が複雑になりがちですが、官製談合によって成立する犯罪も多くなる可能性があるため、より複雑で対応しづらい刑事事件となるおそれがあるのです。
だからこそ、官製談合防止法違反事件では、様々な刑事事件に対応可能な弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件専門の法律事務所だからこそ、様々な種類の犯罪に対応が可能です。
まずはお気軽にご相談ください。
サイバーパトロールで麻薬特例法違反が発覚したら
サイバーパトロールで麻薬特例法違反が発覚したら
サイバーパトロールで麻薬特例法違反が発覚したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
京都府南丹市に住んでいるAさんは、SNSを通じて大麻を購入したいという人を募り、自身の持っている大麻を販売していました。
ある日、AさんはいつものようにSNSに「チョコ(大麻の隠語)の入荷あります」「営業しています」などと書き込み、大麻の買取手を募り、SNSの閲覧者に大麻の買取を持ちかけました。
すると、サイバーパトロールをしていた京都府南丹警察署の警察官がその書き込みを発見。
Aさんは、大麻の取引を持ちかけたことによる麻薬特例法違反の容疑で、京都府南丹警察署に逮捕されてしまいました。
Aさんは、SNSに書き込んだことで逮捕されたことを疑問に思い、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に相談することにしました。
(※令和3年1月30日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)
・大麻の所持・販売
まず、今回の事例のAさんは大麻の所持や販売といった行為をしているようです。
これらは大麻取締法に違反する行為ですから、現在Aさんが麻薬特例法違反の容疑で捜査されていたとしても、後々大麻取締法違反についても捜査される可能性は十分考えられます。
大麻取締法第24条の2
第1項 大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。
第2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。
第3項 前二項の未遂罪は、罰する。
大麻の所持行為等は、その目的が営利目的であればより重く処罰されることになりますが、今回のAさんは大麻を販売しており、大麻を所持しているのも販売目的であると考えられます。
ですから、Aさんの行為は大麻取締法第24条の2第2項に当てはまり、大麻をただ単純に所持していた場合よりも重く処罰されるものと考えられます。
・麻薬特例法とサイバーパトロール
今回の事例のAさんが麻薬特例法違反で摘発されたきっかけは、サイバーパトロールによってSNSで大麻の取引を持ちかけているところを発見されたことです。
大麻の取引きを持ちかけただけにも関わらず犯罪として摘発されることに疑問を感じられる方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、今回のAさんの逮捕容疑である麻薬特例法には、以下のような条文があります。
麻薬特例法第9条
薬物犯罪(前条及びこの条の罪を除く。)、第6条の罪若しくは第7条の罪を実行すること又は規制薬物を濫用することを、公然、あおり、又は唆した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
麻薬特例法では、薬物犯罪や違法薬物の濫用をあおるだけでも犯罪とされていることがわかります。
今回のAさんは、SNSで大麻の買い取り手を募り、大麻の取引を持ちかけていることから、大麻取締法違反となる行為=「薬物犯罪」をあおり唆していると考えられるのです。
この麻薬特例法違反に該当する行為は大麻などの違法薬物を直接渡したり使用したりするわけではないことから見落とされがちですが、こうした行為も犯罪となるのです。
大麻などの薬物犯罪は、直接違法薬物に関わる犯罪だけでなく、今回のようなあおり・唆しに関わる犯罪まで多岐にわたります。
近年では、サイバーパトロールを積極的に行なっている捜査機関も少なくないことから、今回のAさんのようにSNSの投稿などから刑事事件に発展することも十分考えられます。
サイバーパトロールによって検挙された場合、住んでいる土地から離れた場所の警察署で逮捕されるなど、当事者だけではなかなか対応しづらいケースとなることも考えられますから、専門家の弁護士の力を早めに借りることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、サイバーパトロールによって検挙された刑事事件や、麻薬特例法違反や大麻取締法違反といった薬物事件にも対応しています。
まずはお早めにご相談ください。
覚醒剤取締法違反事件と執行猶予中の再犯
覚醒剤取締法違反事件と執行猶予中の再犯
覚醒剤取締法違反事件と執行猶予中の再犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
京都府木津川市に住むAさんは、2年ほど前に覚醒剤を使用したことで、覚醒剤取締法違反で逮捕・起訴され、京都地方裁判所で懲役1年6月執行猶予3年の有罪判決を受けました。
しかし、Aさんは執行猶予期間中に、再び覚醒剤を売人から購入し、使用してしまいました。
京都府木津警察署が覚醒剤の売人を摘発したことをきっかけとしてAさんにも捜査の手が伸び、Aさんは京都府木津警察署の警察官に、覚醒剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族はAさんと離れて暮らしていましたが、再びAさんが覚醒剤を使用して逮捕されたと知り、どうにかもう一度執行猶予を獲得して家族で再犯防止に取り組めないかと考え、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・覚醒剤の使用と刑罰
多くの方がご存知の通り、覚醒剤を使用することは覚醒剤取締法違反となる犯罪行為です。
覚醒剤取締法では、その第19条に覚醒剤の使用禁止が定められています。
覚醒剤取締法第19条
次に掲げる場合のほかは、何人も、覚醒剤を使用してはならない。
第1号 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合
第2号 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合
第3号 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合
第4号 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
第5号 法令に基づいてする行為につき使用する場合
覚醒剤取締法第41条の3第1項
次の各号の一に該当する者は、10年以下の懲役に処する。
第1号 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者
条文をみておわかりいただける通り、覚醒剤の使用については罰金のみの刑はありません。
すなわち、覚醒剤を使用した覚醒剤取締法違反で起訴された場合、必ず正式裁判を受けることになりますし、執行猶予がつかない有罪判決では必ず懲役刑が科される=刑務所に行くこととなります。
・執行猶予中の再犯と再度の執行猶予
執行猶予とは、刑を言い渡すにあたって、犯情により一定の期間その刑の執行を猶予し、猶予期間に犯罪を犯すことなく無事に経過したときは、刑罰権の消滅を認める=刑の免除を行うという制度のことをいいます。
執行猶予期間中何事もなく過ごすことができれば、言い渡された懲役刑等を受ける必要はなくなりますが、執行猶予期間中に犯罪を犯してしまった場合、執行猶予が取り消されいい渡されていた刑罰を受けることとなってしまいます。
執行猶予は、前科として禁錮以上の刑に処せられたことのない者や、もし禁錮以上の刑に処せられたことがあったとしてもその刑の執行終了や免除から5年以上を経ている者を主に対象としています。
執行猶予中の再犯者の場合は、言い渡される刑罰が1年以下の懲役又は禁錮である必要があります。
ですから、再度の全部執行猶予を目指す場合には、まずは言い渡される刑罰を減軽してもらうような事情や、「特に酌量すべき」情状、例えば本格的な薬物に対する治療などを主張してくことが考えられます。
刑法第25条
第1項 次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
第1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
第2項 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。
ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
ですが、執行猶予中の再犯で執行猶予を獲得することは非常に困難なことです。
一部執行猶予などの制度も考慮に入れながら、刑事事件の専門家である弁護士のサポートを受けつつ目指すことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、覚醒剤取締法違反事件や執行猶予中の再犯にお困りの方のご相談をお待ちしています。
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治療費水増し請求による詐欺事件
治療費水増し請求による詐欺事件
治療費水増し請求による詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
Aさんは、京都市山科区で個人病院を経営しています。
Aさんは、患者の通院日数を実際よりも多く記載された診療報酬明細書(レセプト)を保険会社に提出して、実際よりも多い治療費を受け取る、いわゆる治療費の水増しをしていました。
しかし、保険会社の調査によりAさんの水増し請求行為が発覚。
保険会社は京都府山科警察署に被害を届け出て、京都府山科警察署が捜査を開始しました。
その後、Aさんは詐欺罪の容疑で京都府山科警察署に逮捕され、Aさんの逮捕を心配したAさんの家族は、京都府の詐欺事件に対応している弁護士に、Aさんの元に接見に行ってもらうことにしました。
(※令和3年1月19日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・治療費の水増し請求
治療費の水増し請求は、今回のAさんの事例のように病院や整骨院など、治療をする側の人が行うことによって実際の治療費よりも多い治療費を得る行為です。
そもそも、治療費は病院等で治療を受けた患者から全額を受け取るわけではありません。
患者が負担して病院等へ支払う分だけでなく、保険から病院等へ支払われる分があるのです。
患者が負担する分の治療費は、患者が病院等へ行った際に支払われることになるでしょう。
これに対し、保険が負担している分の治療費については、病院等が該当患者の診療内容等を診療報酬明細書(レセプト)に記載し、保険が負担する分の治療費を支払う機関に提出し、審査を受けることで病院側へ支払われます。
すなわち、この流れを悪用し、提出する診療報酬明細書(レセプト)に実際の診療内容よりも多い診療内容を記載し、本来受け取れる治療費よりも多い治療費を受け取るというのが、治療費の水増し請求の手口なのです。
・治療費の水増し請求は詐欺罪になる
治療費の水増し請求行為は、刑法の詐欺罪に当たると考えられます。
刑法第246条第1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪の条文には、「人を欺いて」「財物を交付させ」るという詐欺罪が成立するための条件が定められています。
「人を欺」く行為は欺もう行為とも呼ばれ、ただ単に嘘をつくだけではなく、相手が財物を交付するかどうか判断する時に重要な事項について偽ることだとされています。
詐欺罪が成立するには、この欺もう行為によって相手が騙され、騙されたことで相手が財物を交付するという判断を下し、財物が交付されるという流れを辿ることになります。
なお、欺もう行為をした時点で詐欺罪の実行に着手したと判断され、詐欺未遂罪が成立するとされています。
今回のAさんの行ったような治療費の水増し請求行為は、診療報酬明細書(レセプト)に嘘の内容を書いて治療費を請求することになります。
治療費を支払う側としては、診療報酬明細書(レセプト)の内容が異なっているのであれば、当然その分の治療費を支払うことはありません。
ですから、Aさんは詐欺罪の「人を欺」く行為=欺もう行為をしていることになります。
今回の事例の場合、Aさんは保険会社から水増し請求した治療費をもらっていることから、「財物を交付させた」こととなり、詐欺罪が成立すると考えられるのです。
ここで、もしもAさんが水増しした内容の診療報酬明細書(レセプト)を提出したものの、保険会社の審査でその水増しが発覚したような場合も考えておきましょう。
先ほど触れたように、詐欺罪は欺もう行為をした時点で詐欺未遂罪が成立します。
確認したように、Aさんが水増しした内容の診療報酬明細書(レセプト)を提出して水増しされた治療費を請求する行為自体が欺もう行為に当たるため、たとえ保険会社の審査で水増し請求が発覚して治療費が支払われるところまでに至らなくても、詐欺未遂罪が成立すると考えられます。
治療費水増し請求による詐欺事件では、被害額が大きくなってしまうことや、余罪の詐欺事件が複数存在することも考えられます。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、そうした詐欺事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
被害者対応の円滑化や、複数ある事件の取り調べ対応のポイント把握など、弁護士のサポートを受けることで得られるメリットは大きいでしょう。
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監護者わいせつ事件で逮捕が不安
監護者わいせつ事件で逮捕が不安
監護者わいせつ事件で逮捕が不安である場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
〜事例〜
会社員の男性Aさんは、妻のBさんと娘である中学3年生のVさんと京都府京田辺市で暮らしていました。
Aさんは、Vさんが成長するごとにVさんに性的興味を持つようになり、Vさんが抵抗しなかったことをいいことに、Vさんの体を触るなどしていました。
しかしある日、Vさんが通学している中学校でAさんからわいせつな行為をされていることを相談したことをきっかけに、Vさんは児童相談所に保護され、Aさんは京都府田辺警察署に監護者わいせつ罪の容疑で取り調べられることになりました。
Aさんは、自分がもしかしたら逮捕されるかもしれないと思うと今後どのように対応していくべきなのかわからなくなり、刑事事件を取り扱っている弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・監護者わいせつ罪
監護者わいせつ罪は、2017年に刑法が改正された際に新設された犯罪の1つです。
刑法第179条第1項(監護者わいせつ罪)
18歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為をした者は、第176条の例による。
監護者わいせつ罪の中にある「第176条」とは、刑法第176条に定のある強制わいせつ罪のことを指しています。
刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
強制わいせつ罪は「13歳以上の者に対し」「暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為」をするか、「13歳未満の者に対し」「わいせつな行為」をすることで成立する犯罪で、強制わいせつ罪となると「6月以上10年以下の懲役」に処されます。
これに対し、監護者わいせつ罪は、「18歳未満の者に対し」「その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてわいせつな行為」をすることで成立し、「第176条(=強制わいせつ罪)の例による」=「6月以上10年以下の懲役」に処せられるということになります。
強制わいせつ罪が被害者に対して暴行又は脅迫を用いることを成立要件としているのに対し、監護者わいせつ罪は暴行又は脅迫を用いることを要件としておらず、監護者(被害者の親であることが多いです。)がその影響力に乗じてわいせつな行為をすることが成立要件となっています。
というのも、監護者わいせつ罪の被害者となるのは18歳未満で加害者に監護されている者ですから、精神的に未熟で、監護者との関係で精神的・経済的に依存していると考えられます。
そうした場合、被害者が全く抵抗できないとまでは言えなくとも、被害者の有効な同意に基づく行為であるとは考えにくいだろうという趣旨から監護者わいせつ罪が制定されたのです。
刑法改正前、監護者わいせつ罪が制定される前は、例えば親が子供に対してわいせつ行為をしたというケースでも暴行・脅迫が用いられていなければ強制わいせつ罪が適用されず、児童に淫交をさせたことよる児童福祉法違反(児童福祉法第34条第1項第6号、10年以下の懲役又は300万円以下の罰金)という強制わいせつ罪よりも軽い刑罰となる犯罪が適用されていました。
しかし、先ほど記載したように、暴行・脅迫がなくとも、監護者からわいせつな行為をされた場合、被害者となる18歳未満の者の有効な同意に基づく行為であるとは考えにくく、強制わいせつ罪と実質的に違法性の高さは変わらないということから監護者わいせつ罪ができたという経緯があるのです。
・監護者わいせつ罪で逮捕が不安なら
監護者わいせつ事件の場合、今回のAさんの事例のように被害者が同じ家庭内にいるというケースが多く、被害者との接触を避けるために逮捕・勾留による身体拘束をした上で捜査されることも珍しくありません。
今回の事例のAさんの監護者わいせつ事件はVさんが保護されていることもあるのか在宅捜査で進められているようですが、事件の性質上、途中から逮捕されてしまう可能性もないとは言えません。
監護者わいせつ事件に限らず、逮捕が不安である場合には早めに弁護士に相談・依頼しておくことが重要です。
そもそも逮捕されるリスクがどの程度あるのかは、刑事事件自体の種類・状況や被疑者となっている方の周囲の環境など、様々な事情を合わせて考えなければいけません。
そして、逮捕の可能性がある場合には、事前に弁護士から取調べへの対応方法や逮捕後の手続き、被疑者が持っている権利を聞いて把握しておくことで不安の軽減や嘘の自白をしてしまうリスクの軽減が期待できます。
だからこそ、早めに刑事事件の専門家である弁護士の話を聞いておくことが望ましいのです。
元々旧強姦罪という似た犯罪があった強制性交等罪とは異なり、監護者わいせつ罪は全く新しい犯罪として新設されたため、もしかするとまだ一般には周知されていない犯罪かもしれません。
しかし、監護者わいせつ罪は非常に重い犯罪であり、当事者となってしまった場合は早めの活動が求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、監護者わいせつ事件についても刑事事件専門の弁護士がご相談・ご依頼を受け付けています。
まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。