Archive for the ‘暴力事件’ Category

文化財への落書きで文化財保護法違反①

2020-03-05

文化財への落書きで文化財保護法違反①

文化財への落書き文化財保護法違反となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

東京都在住のAさんは、京都府に観光に来ていました。
観光していく中で、Aさんは京都市左京区内にある寺を訪れました。
寺を見ていくうち、Aさんはその寺をいたく気に入り、寺に来た記念を残したいと考えました。
そこでAさんは、寺の壁に持っていたスプレーで自身の名前やイラストを描き残しました。
その後、他の観光客がAさんの残した落書きを発見し、京都府川端警察署に通報。
残された名前や防犯カメラの映像などから、Aさんは京都府川端警察署に、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・落書きから文化財保護法違反事件に

前回の記事で取り上げたように、落書きであっても刑事事件に発展することが考えられます。
今回のAさんは、落書きをしたことで文化財保護法違反の容疑をかけられ逮捕されるに至っています。

文化財保護法では、重要文化財の損壊等について、以下のように定めています。

文化財保護法195条
1項 重要文化財を損壊し、き棄し、又は隠匿した者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
2項 前項に規定する者が当該重要文化財の所有者であるときは、2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金若しくは科料に処する。

今回のAさんは、寺の壁に落書きをして文化財保護法違反の容疑をかけられ逮捕されていますから、おそらくこの寺が重要文化財であったのでしょう。
なお、文化財保護法では、「文化財」について以下のように定義づけられています。

文化財保護法2条
1項 この法律で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
1号 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)
2号 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
3号 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)
4号 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
5号 地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(以下「文化的景観」という。)
6号 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)
2項 この法律の規定(第27条から第29条まで、第37条、第55条第1項第4号、第153条第1項第1号、第165条、第171条及び附則第3条の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。
3項 この法律の規定(第109条、第110条、第112条、第122条、第131条第1項第4号、第153条第1項第7号及び第8号、第165条並びに第171条の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする。

文化財保護法27条
1項 文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2項 文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。

つまり、有形文化財のうち、重要なものとして文部科学大臣に指定されたものが「重要文化財」となり、それを損壊等すると文化財保護法違反となるのです。
文化財保護法で言われている「損壊」とは、刑法の器物損壊罪にいう「損壊」同様、その物の効用を害する一切の行為を指すと考えられます。

今回のAさんは、重要文化財である寺の壁に落書きすることで、その景観を害したり、文化財としての価値を下げてしまったりしていると考えられます。
こうしたことから、Aさんは重要文化財を損壊したとして、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまったのでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまった刑事事件のご相談にも迅速に対応いたします。
次回の記事では、弁護活動やその他の犯罪との関係について、詳しく触れていきます。

神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪

2020-03-03

神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪

神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪となった事例について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

東京都在住Aさんは,京都府福知山市に観光に訪れていました。
京都府福知山市内を観光していた際,Aさんはとある神社に立ち寄ったのですが,その神社の狛犬に,勝手に自分の名前を彫りました。
翌日,神社の神主が狛犬に傷がついていることを発見し,京都府福知山警察署に相談したことから,器物損壊事件として捜査が開始されました。
防犯カメラの映像や彫られた名前から,Aさんの犯行が発覚し,Aさんは器物損壊罪の容疑で京都府福知山警察署の警察官に逮捕されました。
東京都に住むAさんの両親は,京都府福知山警察署から逮捕の連絡を受けましたが,どうしていいのかわからず,全国展開している刑事事件に強い弁護士事務所に相談してみることにしました。
(フィクションです。)

~器物損壊罪~

他人の物を損壊した者には,器物損壊罪(刑法261条)が成立し,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。

刑法261条
前三条に規定するもののほか,他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪の「損壊」とは,その物の効用を害する一切の行為をいいます。
つまり,器物損壊罪の「損壊」は,ガラスの置物を粉々にするといった,物理的に破壊してしまう行為だけを指しているわけではないということです。

例えば,今回の事例の神社の狛犬は,神社の所有している物ですから,器物損壊罪の条文にある「他人の物」であるといえます。
Aさんは,神社の狛犬=「他人の物」に勝手に自分の名前を彫っています。
これにより,狛犬の見栄えが悪くなる,文化的価値が下がるといった形で狛犬の効用が害されているといえます。
こうしたことから,Aさんの行為には,器物損壊罪が成立する可能性が高いです。

~器物損壊事件と示談交渉~

器物損壊事件を起こしてしまった場合の対応としては,まずは弁護士に依頼して示談交渉をするというものが挙げられます。
器物損壊事件の弁護の依頼を受けた弁護士は,器物損壊事件を起こしたことに争いがない場合,被疑者・被告人に代わって被害者に謝罪と被害弁償をして,示談交渉をすることが考えられます。
というのも,器物損壊罪は,被害者の告訴がなければ起訴ができない親告罪です。
つまり,起訴前に示談を成立させ,告訴を取り下げてもらったり,告訴をしないように約束してもらえれば,不起訴処分となり,前科を回避することができるのです。

仮に起訴までに示談締結をすることができず,告訴され,器物損壊罪で起訴されることになった場合でも,弁護士器物損壊事件の被害者との間で示談や被害弁償を行うことで,略式罰金での事件の終息や,執行猶予獲得の可能性を上げることが可能です。
略式罰金となれば罰金を支払うことで事件を終息させることができますし,執行猶予となれば,執行猶予中に新たな犯罪を犯さないかぎり刑務所に入らないで済むことになります。

逮捕されている場合,もちろんご自身で示談交渉を行うことはできません。
さらに,今回の事例のように,ご家族も離れた土地に住んでいるような場合には,ご家族が代わりに示談交渉を行う,ということも難しいでしょう。
だからこそ,こういったケースでは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部弁護士までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,京都支部を含め,全国13都市に展開している刑事事件専門の弁護士事務所です。
離れた土地で逮捕されてしまっても,逮捕されてしまった警察署に一番近い支部の弁護士が接見に向かうことで,迅速に事件の内容や見通しをご報告することが可能です。
ご相談者様の状況に応じたサービスをご案内しますので,まずはお気軽にフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

公務執行妨害罪と業務妨害罪①

2020-02-20

公務執行妨害罪と業務妨害罪①

公務執行妨害罪業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市中京区に住んでいます。
Aさんは、たびたび京都市中京区役所に住民が受けられるサービスについて説明を受けていましたが、その説明がわかりづらく、また区役所職員の態度も悪いと感じていました。
そこでAさんは、自身の携帯電話から区役所に連続して電話をかけ、「職員の態度が悪い」「きちんと礼儀を教えろ」などとクレームを入れ続けました。
区役所からは、意見は分かったので同じ内容の電話を多数かけるのを控えてほしいといった旨を伝えられましたが、Aさんは電話をかけることをやめず、半年間で600回以上にわたり区役所に電話をかけ続けました。
するとある日、Aさんは京都府中京警察署に、偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年2月17日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・区役所への大量のクレーム電話…公務執行妨害罪にならない?

今回のAさんは区役所に大量の電話をかけ続けたことで偽計業務妨害罪の容疑をかけられ逮捕されています。
ここで、Aさんが業務妨害行為をしたのは区役所という公の機関に対してのことであることから、Aさんに成立する犯罪は公務執行妨害罪なのではないか、と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、なぜAさんにかけられている容疑が公務執行妨害罪ではないのか確認してみましょう。

刑法95条(公務執行妨害罪)
1項 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

公務執行妨害罪は、この条文にあるように、「公務員が職務を執行するに当たり」「(これに対して)暴行又は脅迫を加え」ることで成立する犯罪です。
公務執行妨害罪のいう「公務員」の定義は、刑法7条に書かれています。

刑法7条
この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。

つまり、今回の事例でいえば、区役所の職員などはこの公務執行妨害罪の「公務員」に当てはまることになります。
しかし、公務執行妨害罪の「公務員が職務を執行するに当たり」という条文の「職務」については、「漫然と抽象的・包括的に捉えられるべきものではなく、具体的・個別的に特定されていることを要するものと解すべき」とされています(最判昭和45年12月22日)。
つまり、公務員の仕事中であればその全ての行為に対して公務執行妨害罪のいう「公務員が職務を執行するに当たり」という条件に当てはまるものと判断されるとは限らないということです。
今回の事例でも、Aさんの大量の電話によって妨害された、もしくは妨害の危険が発生したのが「具体的・個別的に特定されている」公務である場合には、公務執行妨害罪の「公務員が職務を執行するに当たり」という文言に当てはまる可能性も出てくるかもしれませんが、そうでない場合はAさんの行為は公務執行妨害罪には当てはまらないということになるのです。

さらに、Aさんが今回した行為としては、区役所に大量に電話をかけ続け、クレームを入れ続けたという行為になります。
ですが、公務執行妨害罪が成立するには「暴行又は脅迫を加え」ることが必要です。
電話でクレームを入れ続けるという行為は「暴行」ではないでしょう。
加えて、Aさんの電話の内容はクレームであり、文句であることから、「脅迫」であるとも考えづらいです。
こうしたことから、Aさんは公務執行妨害罪の成立条件を満たさず、公務執行妨害罪には問われていないのだと考えられるのです。

次回の記事ではAさんの逮捕容疑である業務妨害罪について詳しく見ていきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、公務執行妨害事件業務妨害事件のご相談・ご依頼も受け付けております。
0120-631-881では、専門スタッフが現在のご相談者様にニーズにあったサービスをご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。

半グレに所属して傷害事件

2020-02-18

半グレに所属して傷害事件

半グレに所属して傷害事件を起こしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府京丹後市に住む18歳のAさんは、自身の通う高校の卒業生であるBさんらが所属する、いわゆる「半グレ」の集団に所属していました。
Aさんは半グレの仲間たちとたびたび夜間に外出したり学校をさぼったりしていましたが、Aさんとしては悪ぶりたいだけであり、実際に犯罪に手を貸したり参加したりということはしていませんでした。
しかしある日、京都府京丹後市内の路上で、通行人のVさんと口論になると、半グレの仲間たちと一緒になってVさんを殴りました。
他の通行人が通報したことにより、Aさんは半グレの仲間たちと一緒に京都府京丹後警察署傷害罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんは自身が逮捕されるほどの大事を起こしてしまったことに動揺し、両親が逮捕を知って悲しんでいることを知って、半グレから抜けて更生したいと思っているようです。
(※この事例はフィクションです。)

・半グレ

ニュースなどで「半グレ」「半グレ集団」といった言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
半グレは、暴力団に所属せずに犯罪を繰り返す不良集団のことを指しているとされています。
半グレの「グレ」は、不良などになることを指す「グレる」という言葉や、暴力団に所属していないながらも犯罪を繰り返すことから「グレーゾーン」であることなどによるとされています。

さて、この半グレですが、暴力団とは異なりその構成は若者が中心となっているといわれています。
暴力団のように上下関係がはっきりしてピラミッドのように組織が作られているわけではなく、暴走族等からそのまま半グレに移行したり、年代でまとまったりして半グレになったりということもあるようです。
そのため、先輩後輩関係から10代で半グレ集団と関わってしまうこともあると考えられるのです。

・傷害事件

人に暴力をふるえば刑法の暴行罪が、それによって相手に怪我をさせてしまえば傷害罪が成立することはすでにご存じの方も多いでしょう。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

今回のAさんは18歳であるため基本的に刑罰を受けることにはならないと考えられますが、成人の刑事事件として考えれば、複数人で暴行をくわえた傷害事件は悪質性・危険性の高い犯行であると判断され、厳しい処分が下される可能性も考えられます。

なお、集団で暴行をしている場合や常習的に暴行・傷害行為をしている場合などには、暴力行為処罰法違反という犯罪になるかもしれないことにも注意が必要です。

・半グレと少年事件

先ほど触れたように、半グレの構成は若者が多いことから、10代の未成年者であっても半グレに所属してしまう可能性はあります。
Aさんも半グレに所属しており、そこで傷害事件を起こしてしまっているようです。

未成年者が犯罪をしてしまった場合には、少年事件として処理されていくことになりますが、そこで重要なポイントとなるのは、少年自身が更生するのに適切な環境が整えられるのか否かということです。
例えば、半グレに所属して少年事件を起こしてしまったのに、その半グレとの関係を断ち切れない、断ち切る気がないといった環境のままでは、少年を現在の環境に戻して更生させることは難しいと判断されてしまいやすいと考えられます。
今回のAさんのような少年事件では、Aさん自身がやってしまったことを反省し、被害者への謝罪の気持ちをもつことはもちろんですが、これからの生活でどのような点を改めて再犯を防止していくのかということも重要なのです。

そうした環境の調整やその調整活動の証拠化には、少年事件に強い弁護士のサポートが心強いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、少年事件も専門に扱う弁護士初回無料法律相談初回接見サービスも行っておりますので、まずはお問い合わせください(0120-631-881)。

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)④

2020-01-01

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)④

お年玉兄弟喧嘩から少年事件傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・兄弟喧嘩事件と釈放を求める活動

前回までの記事で、少年事件全体を通しての身体拘束について説明してきました。
では、Aさんの事例を見ながら、どういった形で釈放を求めていく活動をしていけるのか考えてみましょう。

まず、Aさんはお正月の冬休みのうちに傷害事件を起こしてしまい、逮捕されてしまっているようです。
前回の記事で取り上げた通り、逮捕を伴う少年事件の場合、捜査段階では最大23日間の身体拘束が考えられます。
事例の中でBさんらが心配しているように、Aさんは通っている学校がありますから、どうにかそれまでに釈放をしたいということになるでしょう。
冬休みがどれほどの期間取られているかは学校にもよりますが、捜査段階の最大23日間は冬休み期間中であったとしても、観護措置を取られて加えて4週間も身体拘束されるとなれば、高確率で学校にも影響が出てしまうことになります。
ですから、Aさんらの要望を叶えるためには、逮捕・勾留の段階で釈放を求めることはもちろん、観護措置ともならないよう活動をしていく必要があるということになります。

しかし、前回までの記事で取り上げた通り、少なくとも捜査期間中に関しては、傷害事件の加害者であるAさんと被害者であるVさんが同居している状態であることを、証拠隠滅のおそれがあるととらえられてしまう可能性があります。
ですから、釈放を求めていく場合には、例えば両親であるBさん・CさんのどちらかがAさん・Vさんそれぞれにつき、捜査が落ち着くまではAさん・Vさんが別々の場所で過ごすなど、証拠隠滅のおそれがないといえる状況を作り、釈放を求めることが考えられます。
また、家庭裁判所に送られた段階で観護措置を避ける活動でも、Aさん・Vさんが同じような状況を作り出さない環境を整えられていることや、今回事件を起こしてしまった原因を考えられていることを主張する必要が出てくるでしょう。

こうした事情や環境を作り出すことだけでなく、作り出したことを証拠として適切に主張するためには、少年事件に強い弁護士のサポートが重要となります。
少年事件に強い弁護士であれば、どういった環境をどのように整えるべきなのかといったアドバイスが可能です。
逮捕・勾留の伴う刑事事件少年事件では厳しい時間制限があるために、弁護士への早めの相談・依頼をすることで釈放を求める機会を多く得ることができますから、子どもが逮捕されてしまった場合にはお早めに弁護士へ相談されることをお勧めいたします。

・年末年始に相談できる弁護士

さて、今回のAさんの傷害事件はお正月に起きた事件です。
早めに弁護士に相談したいと思っても、年末年始はなかなか営業している法律事務所が見つからない、ということも考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、年末年始も通常通り、無料法律相談の受付や初回接見サービスの受付を行っています。
京都府少年事件にお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士までご相談ください。

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)③

2019-12-30

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)③

お年玉兄弟喧嘩から少年事件傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・少年事件と観護措置

前回の記事では、少年事件が警察と検察に捜査されている段階での身体拘束について触れましたが、今回の記事ではまず、少年事件が家庭裁判所に送られた後の身体拘束について触れていきます。
少年事件の手続きとしては、警察や検察での捜査の後、家庭裁判所に事件が送致され、そこで調査や審判が行われ、少年の処分が決まるという流れが原則です。

前回の記事で、捜査段階では最大23日間の身体拘束が考えられると触れましたが、実は少年事件で考えられる身体拘束はこれだけではありません。
少年事件では家庭裁判所に送致された後も身体拘束をされる可能性があり、それが「観護措置」という措置です。

少年法17条
1項 家庭裁判所は、審判を行うため必要があるときは、決定をもつて、次に掲げる観護の措置をとることができる。
1号 家庭裁判所調査官の観護に付すること。
2号 少年鑑別所に送致すること。
2項 同行された少年については、観護の措置は、遅くとも、到着のときから24時間以内に、これを行わなければならない。
検察官又は司法警察員から勾留又は逮捕された少年の送致を受けたときも、同様である。
3項 第1項第2号の措置においては、少年鑑別所に収容する期間は、2週間を超えることができない。
ただし、特に継続の必要があるときは、決定をもつて、これを更新することができる。
4項 前項ただし書の規定による更新は、1回を超えて行うことができない。
ただし、第3条第1項第1号に掲げる少年に係る死刑、懲役又は禁錮こに当たる罪の事件でその非行事実(犯行の動機、態様及び結果その他の当該犯罪に密接に関連する重要な事実を含む。以下同じ。)の認定に関し証人尋問、鑑定若しくは検証を行うことを決定したもの又はこれを行つたものについて、少年を収容しなければ審判に著しい支障が生じるおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある場合には、その更新は、更に2回を限度として、行うことができる。
5項 第3項ただし書の規定にかかわらず、検察官から再び送致を受けた事件が先に第1項第2号の措置がとられ、又は勾留状が発せられた事件であるときは、収容の期間は、これを更新することができない。
(略)

観護措置は、その少年事件で適切な処分を決めたり審判をスムーズに進めたりするために、少年本人の資質やその周囲の環境について専門家が調査や検査を行ったりするために、少年を少年鑑別所に収容する措置です。
少年法では原則2週間とされていますが、通常4週間程度とられることが多いです。
逮捕・勾留されたまま家庭裁判所に送られた少年事件ではそのまま観護措置に移行することも多いです。
特に、前回の記事で取り上げた勾留に代わる観護措置をされていた場合には、基本的にそのまま少年法の観護措置が取られることになっています。

説明したように、観護措置は少年に適切な処分を判断するためのものですから、少年本人にとって悪いことだけの措置というわけではありません。
しかし、4週間身体拘束されてしまうということは、約1か月学校や就業先と連絡は取れず出勤・出席することもできないということになります。
逮捕・勾留されている場合、最大で約2か月近くの期間就業先や学校に行けないということは少年にとって大きな不利益となりかねません。
ですから、逮捕・勾留から釈放を求める活動や、観護措置をせずに在宅での調査を求める活動を望まれる方も多いでしょう。
そうした時に頼りになるのが弁護士です。
弁護士と協力することで、釈放を求める活動を効率的に行っていくことができます。
刑事事件少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部でも少年事件での釈放を求める活動についてのご相談・ご依頼を受け付けていますので、まずはお気軽にご相談ください。

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)②

2019-12-28

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)②

お年玉兄弟喧嘩から少年事件傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・少年事件と捜査段階の身体拘束

逮捕が行われるには、その犯罪の嫌疑がかかる相当性と逮捕の必要性(逃走や証拠隠滅のおそれがあること)があることが必要です。
例えば、今回のAさんのケースでは、傷害事件の加害者(今回ではAさん)と被害者(今回ではVさん)が同居しているという状態です。
刑事事件少年事件では、加害者と被害者は接触しないようにするのが通常です。
というのも、加害者と被害者が容易に接触できてしまえば、加害者から被害者へ証言の変更を迫る等できてしまうおそれがあると考えられるからです。
刑事事件少年事件での「証拠」とは、物としてある証拠品だけではなく、関係者の証言も「証拠」の扱いとなります。
そういったことから、Aさんのような状況では証拠隠滅のおそれがあると判断されたと考えられます。

この逮捕が警察によって行われた場合、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を検察へ送るか釈放するかを決めます。
検察へ送る(これを「送検」と言います。)場合、検察官は送致を受けた時からさらに24時間以内に勾留という逮捕に引き続くより長い身体拘束をする必要があるかどうか判断します。
検察官が勾留の必要があると判断すれば、検察官は裁判所へ勾留請求を行います。
逆に、勾留の必要はないと検察官が判断すれば、被疑者はそこで釈放されることとなります。

弁護士釈放を求める活動の中で最も早く働きかけられるのはおそらくこの段階でしょう。
検察官が勾留請求をするかしないかの判断前であれば、検察官に向けて勾留請求をせずに釈放してほしいと主張する活動をすることができます。
特に少年事件においては、成人の刑事事件と違い、勾留請求は「やむを得ない場合」でなければできないことになっています。

少年法43条3項
検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできない。

ですから、この「やむを得ない場合」に本当に当たるのかどうかを確認してもらい、勾留請求をしないよう求めていくことが考えられます。

検察官が勾留請求をした場合、その勾留請求を認めて勾留するかどうか判断するのは裁判所の裁判官です。
ここでも、弁護士は検察官の勾留請求を認めないよう裁判官に主張していくことができます。
少年事件においては、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことだけでなく、前述の「やむを得ない」場合に当たらない事情についても主張していくことになるでしょう。

勾留がついたということになれば、まずは最大10日間の身体拘束を受けることになり、さらに最大で10日間勾留を延長することができます。
つまり、被疑者として警察や検察で捜査される場合、逮捕と勾留合わせて最大23日間の身体拘束を受ける可能性があるということになります。

また、少年事件の場合、この勾留について、「勾留に代わる観護措置」という措置が取られることもあります。
これは少年法に定められている措置で、成人の刑事事件にはない措置です。

少年法43条1項前段
検察官は、少年の被疑事件においては、裁判官に対して、勾留の請求に代え、第17条第1項の措置を請求することができる。
※注:「第17条第1項の措置」とは、観護措置のことを指します。

少年法44条
3項 前項の措置の効力は、その請求をした日から10日とする。
※注:「前項の措置」は勾留に代わる観護措置のことを指します。

簡単に言えば、被疑者段階で取られる勾留の手続きの代わりに、少年法の「観護措置」(詳しくは次回の記事で説明します。)を取る措置ということです。
勾留に代わる観護措置となった場合、被疑者である少年は、警察署の留置所ではなく少年鑑別所に留置されることになり、先述した勾留の延長はできず、最大10日間の身体拘束をされることになります。
そして、その10日間が経過し家庭裁判所に送致された後は、自動的に今度は少年法のいう「観護措置」に切り替わることになります。

少年事件では、被疑者段階でも勾留に「やむを得ない場合」という条件が加えられていたり、勾留に代わる観護措置という独特な措置があったりと、成人の刑事事件とはところどころ異なる部分があります。
だからこそ、少年事件少年事件に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件だけでなく少年事件も専門に扱う弁護士が迅速な対応を行っています。
まずはお気軽にご相談ください。

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)①

2019-12-26

お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)①

お年玉兄弟喧嘩から少年事件傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・兄弟喧嘩でも犯罪になる?

クリスマスも過ぎ、いよいよ年の瀬となり、もうすぐお正月という雰囲気も出てきたのではないでしょうか。
今回の事例では、そのお正月の風物詩の1つであるお年玉をきっかけに兄弟喧嘩が起き、そこから少年事件へと発展してしまったようです。
今回の事例のBさんらは、Aさんが兄弟喧嘩の末に逮捕されてしまったことに驚き、困ってしまっています。
兄弟喧嘩に限らず、夫婦喧嘩や親子喧嘩など、家族で暮らしていれば家族同士で喧嘩をしてトラブルとなってしまうこともあるでしょう。
「身内の喧嘩・トラブルなのだから大事にはならないだろう」と思っている方もいるかもしれませんが、こうした家族内の喧嘩でも刑事事件少年事件となってしまうことがあるということにも注意が必要です。

たしかに、刑法に定められている一部の犯罪については、いわゆる身内で起こった場合は刑罰を免除する、という規定があります。
例えば、有名なものとして刑法244条の親族相盗例といわれる規定が挙げられます。

刑法244条
1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。

この親族相盗例が適用される犯罪は、刑法235条の窃盗罪、刑法235条の2の不動産侵奪罪、刑法246条の詐欺罪、刑法246条の2の電子計算機使用詐欺罪、刑法247条の背任罪、刑法248条の準詐欺罪、刑法249条の恐喝罪、刑法252条の横領罪、刑法253条の業務上横領罪、刑法254条の遺失物等横領罪とこれらの未遂罪です。
親族相盗例があるため、これらの犯罪については配偶者や直系血族、同居の親族の間で起こったとしても刑罰に処せられることはありません(ただし、あくまでも「刑の免除」であるため、有罪となった場合には前科が付くことになりますし、刑事事件・少年事件となる可能性自体はあります。)。

他にも、犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪等についても、以下のような特例が定められています。

刑法105条
前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
※注:「前二条の罪」とは、刑法103条の犯人蔵匿等罪、刑法104条の証拠隠滅等罪を指します。

こうした規定もあることから、「身内での犯罪は大事にはならないだろう」と考える方も少なくありません。
しかし、こうした規定はあくまで特例、例外であり、特別に規定がなければたとえ身内で起こったものであったとしても逮捕を伴う刑事事件少年事件となり、処罰・処分される可能性が十分あることになります。
今回のAさんらのケースでは、兄弟喧嘩でAさんがVさんに怪我をさせてしまったようですから、傷害罪がAさんの逮捕容疑となっているようですが、傷害罪には親族相盗例のような特例は規定されていません。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

ですから、たとえ兄弟喧嘩や親子喧嘩、夫婦喧嘩であったとしても、相手に怪我をさせてしまえば傷害罪として処罰・処分されることが考えられるのです。
しかし、今回のAさんに関しては未成年であるため、刑罰を受けることは原則考えられません。
少年事件では、基本的に最終的な処分として刑罰とは別の保護処分=少年の更生のための処分を下すことになるからです。

家族内で犯罪が起こってしまった時、それが刑事事件少年事件となってしまった時、どうしてよいかわからず慌ててしまう方も多いでしょう。
そんなときにも、刑事事件・少年事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部弁護士にご相談ください。
刑事事件少年事件専門だからこそ、迅速かつ丁寧に対応いたします。

強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された②

2019-12-24

強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された②

強制性交等未遂事件で子どもが逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府亀岡市に住んでいるAさん(高校3年生)は、インターネットサイトでアダルトビデオを見るうちに、路上で女性を襲うという設定のアダルトビデオに魅力を感じるようになりました。
次第にアダルトビデオの内容のようなことを自分でやってみたいと思うようになったAさんは、ある日、京都府亀岡市内の路上を歩いていた女性Vさんを後ろから羽交い絞めにして路地裏に連れ込むと、Vさんの服を脱がせその体を触るなどしました。
Aさんは無理矢理性交をしようと嫌がるVさんの体を押さえて胸や臀部を触っていたのですが、Vさんが大声を上げて人を呼んだため、「このままでは見つかってしまう」と思い、その場から逃走しました。
後日、Aさんの自宅に京都府亀岡警察署の警察官がやってきて、Aさん自宅の家宅捜索を行うとともに、Aさんに逮捕状を見せました。
Aさんの両親は、自分たちの子どもが逮捕される事態となったことに驚き、警察官にAさんの容疑を聞きましたが、詳しく教えてもらえませんでした。
困ったAさんの両親は、刑事事件少年事件を取り扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪へ?

前回の記事で取り上げた通り、現段階でAさんが容疑をかけられているのは強制性交等未遂罪です。

しかし、実はこの後、Aさんが容疑をかけられる罪名が変更される可能性があります。

それが強制性交等致傷罪です。

刑法180条2項(強制性交等致死傷罪)
第177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。

実は、Aさんの暴行によりVさんが負傷していた場合、Aさんの容疑が強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪に切り替わる可能性があるのです。
前回の記事で触れたように、AさんはVさんと性交等をするまでに至っていません。
しかし、強制性交等致傷罪を定める刑法180条2項の条文を見ると分かるように、強制性交等致傷罪強制性交等罪の犯人が被害者に傷害を与えた時だけでなく、「第177条(略)の罪の未遂罪を犯し」た者が被害者に傷害を与えた場合も強制性交等致傷罪が成立するとしています。
刑法第177条は先ほど挙げた通り強制性交等罪のことを指しますから、強制性交等未遂罪が成立する者も強制性交等致傷罪の主体となりえるのです。
そして、前回の記事で取り上げた通り、強制性交等未遂罪はたとえ性交等に取り掛かっていなかったとしても、性交等を目的とした暴行又は脅迫に取り掛かった段階で成立します。
すなわち、たとえ性交等に取り掛かっていない段階であったとしても、性交等を目的とした暴行又は脅迫を開始し、それによって被害者を傷害すれば、性交等は未遂であったとしても強制性交等致傷罪が成立することになるのです。

今回のAさんは、事件当日から時間が経って逮捕されていますが、事例の内容だけではVさんが怪我をしているのかどうかはわかりません。
ある程度時間が経ってから診断書が提出され、被害者が怪我をしていることが分かったということもあり得ますから、容疑をかけられている罪名が強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪に切り替わる可能性も視野に入れつつ、弁護活動を行うことが必要となるでしょう。

・弁護士の活動

未遂とはいえ、強制性交等罪は法定刑からも分かる通り非常に重い犯罪です。
少年事件の場合、原則として少年は刑罰によって処罰されることはありません。
少年事件の手続きでは、その少年の更生にはどういった処分が適切なのかが調査され、判断されます。
ですから、法定刑の軽重で一概にその処分が決まるというわけではありません。
しかし、これだけ重い刑罰が定められているほど重大な犯罪をしてしまうということは、それだけの原因が少年自身の内部やその周囲の環境にある可能性がある、と判断されることは十分考えられます。

だからこそ、少年による強制性交等事件では、その少年本人だけでなく、その周囲のご家族等が協力して更生のための環境づくりをしていく必要があります。
少年事件に強い弁護士がいれば、そのサポートを行うことができます。

例えば、被害者の方への謝罪は、少年自身やその家族がどういったことをしてしまったのか反省し受け止めることにつながると考えられますが、特に強制性交等事件のような暴力や脅迫をともなう性犯罪事件では、被害者の方へ直接連絡を取りお詫びをすることは非常に難しいです。
弁護士が間に入ることで、少しでも被害者の方の不安を軽減し、かつ少年やその家族の謝罪や反省を伝えられることが期待できます。
また、少年が再犯をしない環境づくりのためには、少年自身の反省だけでなく、その原因を探り対策を立てることも重要です。
第三者であり少年事件の知識・経験のある弁護士であれば、家族には相談しづらいことも相談しやすく、客観的なアドバイスをもらうことも可能です。
強制性交等事件で子どもが逮捕されてしまったら、まずは一度、少年事件に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕されてしまった少年に弁護士が直接会いに行く初回接見サービスもございます。
未成年の少年が逮捕されてしまえば、その不安は大きいものでしょう。
弁護士が直接少年に会って、少年事件の流れやアドバイスを伝えることで、その不安を軽減することもできます。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。

たき火から燃え移って失火罪③

2019-11-24

たき火から燃え移って失火罪③

たき火から燃え移って失火罪となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~前回からの流れ~

京都市中京区に住んでいるAさんは、自宅の裏に空地を所有していました。
Aさんは、落ち葉や枯葉を集めてその空地でたき火をし、簡単に水をかけ、火が見えなくなったために深く確認することもなく帰宅しました。
しかし、Aさんが消火できたと思っていたたき火の火が消え切ってお

らず、空地内に建っていたAさん所有の小屋に燃え移り、火事となってしまいました。
通報により消防車が駆け付け、他の家に火が燃え移る前に消し止められ、当時小屋には誰もいなかったためけが人もいなかったものの、Aさんは京都府中京警察署に呼ばれ、話を聞かれることになりました。
Aさんは、自分がどのような犯罪にあたる可能性があるのか、どういった処罰を受ける可能性があるか不安になり、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・重過失失火罪

前々回から2回にわたって取り上げてきた失火罪ですが、実は失火罪の中でも重く処罰されるものがあります。
それが、刑法117条の2に規定されている、重過失失火罪です。

刑法117条の2
第116条又は前条第1項の行為が業務上必要な注意を怠ったことによるとき、又は重大な過失によるときは、3年以下の禁錮又は150万円以下の罰金に処する。

「第116条」は前回から取り上げている失火罪のことを指します。
そして、その失火罪にあたる行為が「重大な過失によるとき」には、重過失失火罪となる、と定めているのがこの条文なのです。
なお、失火行為が「業務上必要な注意を怠ったことによるとき」には、業務上失火罪となります。

では、重過失失火罪の「重大な過失」とはいったいどういうことを指すのでしょうか。
「重大な過失」とは、「建造物等の焼損や人の死傷の結果がその具体的な状況下において通常椹として容易に予見できたのにこれを怠り、あるいは結果を予見しながらその回避の措置を取ることが容易であったのにこれを怠ったというような注意義務の懈怠の著しい場合」をいうとされています(東京高判昭和62.10.6)。
つまり、「重大な過失」とは、その文字通り、非常に大きな不注意・落ち度のことを指しており、焼損等の危険が簡単に予想できたにもかかわらずそれを回避をしようとしなかったり、回避する行動を取ることが簡単であったのにその行動を取らなかったりといった、注意すべきことであることについて著しく不注意であったことを指すのです。
過去の例では、盛夏晴天の日ガソリン給油場内においてライターを使用して火災を引き起こしたケースで重過失失火罪が認められたもの(最判昭和23.6.8)や、多量の飲酒により高度の異常酩酊状態になり粗暴な行為に出る習癖があると自覚のある被告人が飲酒をして酩酊状態となり、燃焼中のストーブに椅子を乗せかけて火災を引き起こしたケースで重過失失火罪が認められたもの(最決昭和48.9.6)などが挙げられます。

Aさんのケースの場合、Aさんはたき火を消火しようと水をかける行為をしています。
そしてたき火の火が見えなくなったことからAさんは消火しきったと勘違いをしてその場を立ち去っていることから、Aさんとしては消火する措置をしてはいることになります。
ですから、Aさんとしては火事が起こると容易に予想できる状態で全く回避行動を取らなかった、というわけではありません。
こうしたことから、Aさんに「重大な過失」があったとは考えにくく、重過失失火罪となる可能性は低いように思われます。

しかし、当時の詳細な状況やAさんの行動によっては、「重大な過失」があると判断され、失火罪よりも重い重過失失火罪で処罰される可能性もないわけではありません。
そして、実際には失火罪で処罰されることが妥当なケースであっても、重過失失火罪を疑われてしまう可能性もあります。
ですから、まずは弁護士に事件当時の細かな事情まで話したうえで、見通しや取調べの対応を聞いていくことが望ましいでしょう。

~失火事件と弁護活動~

先述した通り、失火事件での弁護士の弁護活動の1つとして、取調べへの対応のアドバイスをすることが挙げられます。
実際には失火罪にあたる行為であっても、捜査機関が重過失失火罪や放火罪の容疑をかける可能性もあります。
そうした場合には、意図せず自分の主張を異なる供述をしてしまわないよう、細心の注意を払わなければなりません。
刑事事件に精通する弁護士に、どういった点を注意すべきか、どのように話すことできちんと自分の意図を伝えられるのか、相談してから取調べに臨みましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士による初回無料法律相談のご予約をいつでも承っています。
寒くなり、空気が乾燥してくる季節だからこそ、思わぬ失火事件に巻き込まれてしまうことも考えられます。
もしもそうなってしまった場合には、すぐに弊所弁護士までご相談ください。

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