Archive for the ‘暴力事件’ Category

殴らなくても暴行罪で逮捕

2020-04-11

殴らなくても暴行罪で逮捕

殴らなくても暴行罪逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、以前から度々ご近所トラブルを起こしていた相手である隣人のVさんを、京都府城陽市にあるファミレスで見かけました。
AさんはVさんに対する恨みを募らせていたため、Vさんに嫌がらせをしてやろうと、ファミレスに置いてあった塩を手に取り、Vさんに向かって塩を振りかけました。
その塩はVさんの頭や顔にかかり、Vさんは驚き、店員に京都府城陽警察署に通報するよう頼みました。
突然の店内トラブルに驚いた店員が京都府城陽警察署に通報した結果、Aさんは駆け付けた警察官により、暴行罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが暴行罪の容疑で逮捕されたと聞き急いで刑事事件を取り扱っている弁護士逮捕されたAさんのもとへ行ってもらうことにしました。
逮捕され京都府城陽警察署に留置されていたAさんは、弁護士に直接殴っているわけでもないのに暴行罪逮捕されたことに不満があると相談しましたが、弁護士から暴行罪にあたる旨を説明されました。
(※この事例は福岡高判昭和46.10.11を基にしたフィクションです。)

~塩をかけて暴行罪の「暴行」に?~

刑事事件となる犯罪の中でも、暴行罪は比較的耳にしやすい犯罪のうちの1つではないでしょうか。
法律上の暴行罪は、「暴行を加えたものが人を傷害するに至らなかったとき」に成立します。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

では、その暴行罪の「暴行」とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。
一般的にイメージされるであろう、殴る・蹴るといった直接的な暴力については、もちろん暴行罪の「暴行」に含まれます。
そして、それだけではなく、加害者の行為が被害者の身体に直接触れていなくとも、暴行罪は成立します。
例えば、今回のようなケースでは、Aの行った行為は、Vに塩を振りかけるというもので、直接殴ったり叩いたりしたわけではありませんが、このような場合でも暴行に含まれる可能性があります。
他にも髪の毛を不法に切断したり、拡声器を使って耳元で大声を叫んだりする行為も暴行罪とみなされた例もあります。
つまり、被害者の身体に触れていなくとも、被害者の身体に向けられた行為がその相手に不法に不快や苦痛を与えていれば、暴行罪は認められうるのです。

しかし、今回取り上げたような塩を振りかける行為が必ず暴行罪の「暴行」として認められるわけではありません。
暴行罪に当たるかの判断は難しく、一概にどの行為が「暴行」になるかは断定できないのです。
ですから、もし暴行罪の容疑で逮捕されてしまった、取調べを受けることになったという場合には、一度、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

~暴行事件を起こしてしまったら~

暴行事件の場合、今回のVさんのように被害者が存在します。
終局処分で有利な結果を得るためにも、Aさんのように逮捕され身体拘束をされている場合には釈放を求めるためにも、被害者の方への謝罪や弁償を行い、示談を締結することは非常に重要なことです。
ですが、こういった暴行事件などの被害に遭われた場合、いくら謝罪をしたいと言われても、直接会ったり個人情報を教えたりするのは怖いと考える被害者の方も多くいらっしゃいます。

そうした場合であっても、弁護士が間に入ることで、被害者の方の不安を軽減しながら示談交渉を行うことが期待できます。
弁護士が示談交渉を行う場合、被害者の方の個人情報は弁護士限りでとどめられるため、被害者の方は上記のような心配をすることなく謝罪や弁償の話を聞くことができるため、話を聞いていただくハードルを下げることができるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部弁護士は、刑事事件専門の暴行事件にも強い弁護士です。
京都府刑事事件逮捕に対応していますので、京都府暴行事件やその逮捕にお困りの際は、一度ご相談ください。

新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に

2020-04-06

新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に

新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市伏見区に住むAさんは、ニュース番組で、新型感染症が流行しているニュースを知りました。
Aさんは、日頃から近所にあるコンビニエンスストアの接客態度が気に食わないと思っていたことから、「新型感染症にかかっていると言って迷惑をかけてやろう。営業できなくなって痛い目を見ればいい」と思い、京都市伏見区にあるコンビニエンスストアに行くと、店員に向かって「俺は新型感染症にかかっている」「うつるから消毒した方がいい」などと告げました。
Aさんの言動により、コンビニエンスストアは保健所へ連絡をするなどしたうえで、店内を消毒するために数時間閉店するなどの対応を取りました。
しかし、その後、Aさんが嘘をついていたことが発覚し、Aさんは偽計業務妨害罪の容疑で京都府伏見警察署に逮捕されることとなりました。
(※令和2年4月5日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

・新型感染症を偽って偽計業務妨害罪

新型感染症が流行しており、連日関連したニュースが報道されています。
その中で、今回のAさんのように新型感染症にかかったと偽って来店し、その業務を妨害するという業務妨害事件もいくつか報道されています。
たとえ本人が軽い気持ちでいたずら感覚で行っていたとしても、こうした行為は犯罪となります。

今回のAさんの逮捕容疑となっているのは、刑法に規定されている偽計業務妨害罪という犯罪です。

刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

この条文によると、偽計業務妨害罪が成立するには、「偽計を用いて」「その業務を妨害した」ことが必要とされています。
今回のAさんの事例と当てはめながらその条件を確認していきましょう。

まず、偽計業務妨害罪の罪名にも入っている「偽計を用いて」という部分ですが、これは「人を欺罔・誘惑し、または他人の無知・錯誤を利用すること」であると言われています。
簡単に言えば、他人を騙したり、他人が知らないことや勘違いしていることを利用したりすることです。
今回のAさんは、実際は新型感染症にかかっていませんが、あたかも新型感染症にかかっているようなふりをしてコンビニエンスストアの店員を騙しています。
新型感染症にかかっているという嘘を利用しているわけですから、Aさんの行為は偽計業務妨害罪の条文にある通り、「偽計を用いて」いると判断できそうです。

では、偽計業務妨害罪の「業務を妨害した」とはどういった状態を指すのでしょうか。
一般に「業務妨害だ」という場合には、「仕事を邪魔した」ということを指すことが多いでしょう。
偽計業務妨害罪の「業務を妨害した」という言葉も、大まかにはそういった認識で間違っていません。
しかし、いくつか注意すべき点もあります。

例えば、偽計業務妨害罪のいう「業務」とは、「自然人または法人、その他の団体が社会生活上の地位において、あるいはこれと関連しておこなう職業その他の継続して従事することを必要とする事務」を指すとされています。
この「業務」には、一般に言う職業的な意味での「仕事」も含まれますが、経済的に収入を得る目的のもの以外も含むため、例えば継続的に行われているボランティア活動なども偽計業務妨害罪の「業務」になりえることに注意が必要です。

また、条文では「業務を妨害した」とあるため、偽計業務妨害罪の成立には実際に業務妨害された事実があることが必要なように見えますが、偽計業務妨害罪の成立には、実際に業務を妨害されたという事実までは不要で、業務を妨害される具体的な危険が発生していればよいとされています。
偽計業務妨害罪の成立を考える際には、こういった点にも注意が必要なのです。

今回のAさんですが、Aさんが新型感染症であると偽ったことによって、コンビニエンスストアは消毒作業などの対応に追われることになり、通常の営業時間内に閉店するという措置も取っています。
通常であれば営業で来ていた時間に閉店し、不要な業務をしなければならなくなったわけですから、十分「業務を妨害」されたと考えられます。
こうしたことから、Aさんには偽計業務妨害罪の成立が考えられるのです。

なお、今回は実際に業務妨害をされたという事実がありますが、先述のように、例えば消毒作業や閉店等をする前にAさんの嘘が分かったとしても、その嘘によって消毒作業や閉店といった業務妨害の危険性が発生していると判断されれば、実際に店側が業務を妨害されていなくとも偽計業務妨害罪の成立が考えられます。

今回の事例のように、偽計業務妨害事件などで実際に施設や店等の業務を妨害した事実がある場合、被害弁償などが多額になることも予想されます。
被害者との謝罪や示談交渉も、施設や店等についている弁護士と行うことになる場合もあり、当事者だけで対応することに不安が大きいという場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、偽計業務妨害事件のご相談・ご依頼も受け付けていますので、まずはお気軽にご相談ください。

連続した電話のパワハラで傷害事件に

2020-04-04

連続した電話のパワハラで傷害事件に

連続した電話のパワハラ傷害事件になった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府八幡市にある会社Xに勤務する会社員です。
ある日、Aさんは部下のVさんが気に食わず、業務中にVさんを叱責するだけでなく、Vさんが会社を退勤した後の深夜や出勤前の早朝、Vさんの休日に関わらず、Aさんはほとんど毎日何回にもわたってVさんの携帯電話に電話をかけ、Vさんに対して仕事の出来の悪さを叱責するなどし、Vさんが電話に出ないと長時間コール音を鳴らし続けたり、その後「なぜ上司の電話に出ないんだ」とさらに叱責するなどしました。
Vさんは、Aさんに対し連日時間を問わず電話をするのはやめてほしい旨を何度も伝えましたが、Aさんは取り合いませんでした。
そうした状況が半年以上続いたところ、Vさんは不眠症や神経衰弱症の症状が出てきたことから病院へ行き、さらに京都府八幡警察署にも相談しました。
すると、後日Aさんのところに京都府八幡警察署から「傷害事件の被疑者として話を聞きたい」と連絡が入りました。
(※この事例はフィクションです。)

・パワハラと刑事事件

パワーハラスメント、略してパワハラという言葉は、ここ最近でかなり浸透してきた言葉でしょう。
簡単に言えば、パワハラとは、職場内で社会的地位の高い者が、その優位性を利用して、自分より立場の弱いものへ嫌がらせを行うことを指します。
パワハラ問題等が報道されることも少なくなく、世間のパワハラへの関心も高まっているといえるでしょう。
今回のAさんの事例も、Aさんが上司としての立場を利用してVさんへ嫌がらせをしているようですから、このパワハラに関連していると考えられます。

このパワハラですが、「パワハラ」としての犯罪があるわけではありませんが、その行為の内容によっては犯罪になることも十分考えられます。
学校等での「いじめ」と同様、「いじめ罪」「パワハラ罪」といった罪名がついていないからといって犯罪が成立しないということはありません。
その行為の態様1つで、犯罪となり刑事事件となる可能性があるということを知っておかなければなりません。

・電話で傷害罪?

今回、Aさんにかけられている容疑は刑法に規定されている傷害罪という犯罪のようです。

刑法204条
人の身体を傷害した者は、10五年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪の典型例としては、人に殴る蹴るといった暴行を加えて怪我をさせてしまったような場合が挙げられます。
ですから、今回のAさんのような、電話を連続してかけ続けるといった行為と傷害罪がなかなか結び付きづらい方もいるかもしれません。
しかし、傷害罪の条文にある、「人の身体を傷害」するということは、人の身体の生理的機能を害することであると考えられています。
その「人の身体の生理的機能を害する」ということは、何も外傷だけに限ったことではありません。
例えば、PTSDのように精神に障害を与えるようなことでも、「人の身体の生理的機能を害する」といえると考えられているのです。
そして、傷害罪の「人の身体を傷害」するという行為にあたり、その手段として物理的に殴る蹴るといった手段に限定されているわけでもありませんから、例えば騒音や強い光などによって人に傷害を与えた場合でも、傷害罪は成立しうるとされています。

ここで、今回のAさんの事例を考えてみましょう。
Aさんは、Vさんに連日何回にもわたって電話をかけ続け、Vさんがやめてほしい旨を伝えてもその電話を継続しています。
その結果、Vさんは不眠症や神経衰弱症を患うことになっているようですから、「人の身体を傷害した」という傷害罪の条文に当てはまりそうです。
そして、AさんはVさんに電話をかけ続けるという行為によってVさんを「傷害」しているのですから、傷害罪にあたりうると考えられるのです。

ただし、犯罪が成立するには「故意」が必要です。
簡単に言えば、その犯罪に当たる行為をするという認識があったかどうか、ということですが、今回の場合は少し特殊です。
暴行によって相手に傷害を与えた場合、傷害罪の成立には、その暴行の認識があればよく、相手に傷害を与えるという認識までは不要とされています。
つまり、「殴るだけで怪我をさせるつもりはなかった」と言っても傷害罪は成立することになるのです。
ですが、今回のような場合、傷害を負わせる手段は暴行ではありません。
こうした場合、傷害罪の成立には、相手が傷害を負う可能性があることまで認識している必要があると考えられています。
ですから、今回のAさんで言えば、電話をかけ続けるパワハラ行為によってVさんに精神疾患を負わせるかもしれないという可能性を認識していたかどうか、といった事情が、Aさんに傷害罪が成立するかどうかの重要な事情となってくると考えられます。

なお、今回のAさんの行為は、傷害罪が成立しなかったとしても、各都道府県に規定されている迷惑防止条例に違反したり、侮辱罪になったりする可能性もあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、パワハラに関連した刑事事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
0120-631-881では、初回無料法律相談のご予約が24時間可能です。
まずはお気軽にご予約ください。

脅迫事件と示談交渉

2020-03-11

脅迫事件と示談交渉

脅迫事件示談交渉について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさん(17歳)は,京都市西京区にある飲食店でアルバイトをしていました。
Aさんは常々,アルバイトの同僚であるVさん(16歳)の態度に腹を立てていたのですが,ある日,どうにもVさんの態度に我慢ならなくなってしまいました。
そこでAさんは,Vさんに対してメッセージアプリで「お前のことなんてもう知らん」「俺はその筋の人と交流があるんや。もうその人に頼んだから,どうなるか覚悟しとき」などのメッセージを送りました。
このメッセージを見て恐怖を抱いたVさんが両親に相談したことをきっかけに,Vさんらは京都府西京警察署に相談。
京都府西京警察署が捜査を開始し,Aさんは京都府西京警察署の警察官に脅迫罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は,Vさんへの謝罪やAさんの釈放を求め,弁護士に何かできる活動はないかと相談することにしました。
(フィクションです。)

~脅迫罪~

人の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し,害を加える旨を告知して人を脅迫した場合,脅迫罪(刑法222条1項)が成立します。

刑法222条1項(脅迫罪)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

脅迫罪の条文にある「脅迫」とは,一般に人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。
脅迫罪の成立には,告知が相手方に到達して認識されたことは必要ですが,実際に相手方が畏怖したことまでは必要ありません。
脅迫罪の「脅迫」に当たるかどうかは,具体的諸事情を勘案して判断されます。

今回のAさんは,Vさんに対してメッセージを送っていますが,そのメッセージの内容から,そういった内容のメッセージを受け取れば,一般的に生命,身体等を害されるのではと畏怖するのに十分といえ,脅迫罪に当たる可能性が高いといえるでしょう。

~脅迫罪と示談交渉~

成人の刑事事件であれば,初犯であれば執行猶予判決が見込まれますが,示談が成立すれば前科を回避できる可能性もあります。
ですから,脅迫をしたことに争いがないのであれば,刑事事件に強い弁護士に依頼し,示談をすべきといえるでしょう。
脅迫事件において早期に示談が成立すれば,不起訴となり,前科がつかない可能性もあります。
また,示談が成立していれば,起訴されたとしても,略式起訴で,罰金を納付するだけですむ可能性もあります。

しかし,少年事件の場合,成人の刑事事件とは処分の種類も重視する部分も異なるため,示談が成立したからといって「不起訴」のような扱いにはならないことが多いです。
少年事件は原則的に全ての事件が家庭裁判所に送られることになります。

では少年事件として扱われる脅迫事件で示談交渉が全く不必要なのかというと,そうではありません。
謝罪や示談ができていることは,少年自身の反省や,その家族の事件への向き合い方を主張する1つの材料となります。

さらに,今回のAさんのように捜査段階で逮捕されてしまっている場合には釈放を求める活動をしていくことが考えられますが,この際,被害者との示談ができている=謝罪・賠償ができているという事情があれば,釈放を求める際に有利な事情となりえます。
被害者との示談ができている,もしくはその意向で活動しているということは,被害者に対して証拠隠滅等の働きかけをしない意思であるといえる事情となりえるからです。

しかし,示談交渉を自分たちのみで行うことには困難が伴うことも多いです。
弁護士示談交渉を任せるメリットとしては,例えば以下のようなものが考えられます。
まず,相手の連絡先を知らなくても,弁護士であれば,捜査機関に問い合わせ連絡先を取得できる可能性が高まるということが挙げられます。

次に,示談交渉は当事者だけだと揉めてしまいがちですが,弁護士という第三者を介在させることで,スムーズにまとまる可能性があることです。
特に今回のような,加害者も被害者も未成年という少年事件では,親同士の話し合いとなることから,ヒートアップしてしまうことも考えられますから,適切な知識のある第三者を挟むことは有効であると考えられます。

そして,弁護士が示談書を作成して,示談が成立したことを明確化するとともに,紛争の蒸し返しを防ぐことができることもメリットの1つです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は,刑事事件だけでなく少年事件の弁護活動・付添人活動も行っています。
脅迫事件の示談交渉等にお悩みの際は,まずはご相談ください。

学生同士の強要事件で逮捕

2020-03-09

学生同士の強要事件で逮捕

学生同士の強要事件逮捕された場合について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

高校2年生のAさんは,京都府綾部市の路上を通行中,違う高校に通うVさんと肩をぶつけてしまいました。
Vさんの名札から自分より年下であることが分かったにも関わらず,Vさんが自分に誤りもせずにいたことに腹を立て,AさんはVさんの胸倉をつかむなどした上で,「殺すぞ。謝れ」などと言ってVさんを土下座させました。
様子を見ていた通行人が通報し,Aさんは駆け付けた京都府綾部警察署の警察官に,強要罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの両親は,Aさんが帰宅しないことを心配し,最寄の京都府綾部警察署に相談したところ,Aさんが逮捕されたことを知りました。
対応した警察官から,「すくなくとも今日明日は家族でも会えない」と言われたAさんの両親は困り果て,どうすればよいのかを少年事件も取り扱う弁護士に相談してみることにしました。
(フィクションです。)

~強要罪~

生命等に害悪を加える旨を告知して脅迫し,人に義務のないことを行わせた場合,強要罪が成立し,3年以下の懲役が科せられます(ただし,今回のAさんのように20歳未満の者の場合は少年事件となるので原則刑罰を受けることはありません。)。

刑法223条(強要罪)
1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。
2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者も,前項と同様とする。
3項 前二項の罪の未遂は,罰する。

強要罪は,暴行・脅迫によって人に「義務のないこと」をさせた場合に既遂となります。
脅迫又は暴行により意思活動の自由を現実に侵害しなければ,強要罪は既遂とはなりません。
「義務のないこと」とは,法律上の義務がないことをいいます。
法的に強制されない限り,行動の自由は保護されるべきだからです。

今回の事例を考えてみましょう。
Aさんは,Vさんの胸倉をつかむなどしたうえで,「殺すぞ。謝れ」と言ってVさんを脅迫し,Vさんに義務がないのに土下座することを強要しています。
胸倉をつかむ行為は強要罪の「暴行」に当たると考えられますし,「殺すぞ」と言った言葉は「生命…に対し害を加える旨を告知して脅迫」していると考えられます。
そして,もちろんVさんがAさんに土下座をする義務はありません。
このように,暴行・脅迫行為の結果,Vさんは義務のない土下座をさせられていますから,Aさんの行為は強要罪(刑法223条1項)となる可能性が高いと考えられるのです。

成人が起こした強要事件においては,早期に被害者と示談することで,不起訴となったり,裁判で執行猶予判決を受けることのできる可能性が高まります。
しかし,Aさんのような少年事件では,不起訴という考え方はなく,原則としてすべての少年事件が家庭裁判所へ送られます。
それでも,被害者への謝罪・弁償ができているのかどうか,少年本人や家族の事件との向き合い方はどのようなものか,といった事情は処分を決めるうえで考慮されますから,少年事件に強い弁護士にサポートしてもらいながら,少年事件の手続きに対応していくことが望ましいといえるでしょう。

~子どもが逮捕されてしまった~

Aさんの両親がそうであったように,基本的に逮捕されてからすぐは,ご家族であっても逮捕された本人と会うことはできません。
ごくまれに,捜査機関が事情を酌んで短時間だけ面会を許可することもあるようですが,これはあくまで例外的なものであり,原則としては逮捕に引き続く身体拘束である「勾留」がつくか,勾留されずに釈放されるまでは面会はできません。
だからこそ,逮捕直後に取調べ対応のアドバイスをしたり,本人の言い分を把握したりするためには,弁護士に面会に行ってもらうことが効果的なのです。

今回のAさんの強要事件のように,被害者への対応や釈放を求める活動,その後の家庭裁判所へ送致された時のための準備等,逮捕を伴う少年事件には行うべき活動が多くあります。
まずはお早めに,少年事件も専門に取り扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご連絡ください。
ご相談者様にぴったりのサービスを,専門スタッフがご案内いたします(0120-631-881)。

文化財への落書きで文化財保護法違反②

2020-03-07

文化財への落書きで文化財保護法違反②

文化財への落書き文化財保護法違反となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

東京都在住のAさんは、京都府に観光に来ていました。
観光していく中で、Aさんは京都市左京区内にある寺を訪れました。
寺を見ていくうち、Aさんはその寺をいたく気に入り、寺に来た記念を残したいと考えました。
そこでAさんは、寺の壁に持っていたスプレーで自身の名前やイラストを描き残しました。
その後、他の観光客がAさんの残した落書きを発見し、京都府川端警察署に通報。
残された名前や防犯カメラの映像などから、Aさんは京都府川端警察署に、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・文化財保護法違反事件と弁護活動

Aさんのように、落書きによって重要文化財を損壊してしまって文化財保護法違反となってしまった場合には、まずはその重要文化財の修復等で出た損害を賠償したり、謝罪したりすることで、示談交渉を行うことが考えられます。
刑法の器物損壊罪が親告罪(被害者などの告訴権者による告訴=被害申告と処罰を求める申告がなければ起訴することのできない犯罪)であるのに対し、文化財保護法違反は親告罪ではありません。
ですから、たとえ起訴前に示談ができたとしても、親告罪とは異なり必ずしも不起訴処分になるとは限りません。
しかし、謝罪ができていたり被害賠償ができているという事情があれば、起訴・不起訴の判断をする際や量刑を判断する際などに有利に働く可能性が高いです。
当事者だけで示談交渉をすることには不安が伴うでしょうし、どのように進めるべきか、どういった話し合いをすべきなのかもわからないことが多いでしょう。
弁護士を通じて示談交渉をしてもらうことで、そういった不安を解消することができます。

また、今回のAさんは逮捕されてしまっています。
逮捕から引き続いて身体拘束をされる「勾留」が決定すれば、その延長も含め、逮捕から数えて最大23日間も外部との接触ができなくなります。
1か月弱の間身体拘束されてしまえば、就業先・就学先・家庭などに大きな影響を及ぼしてしまいます。
Aさんのように旅行先で逮捕されてしまった場合、家族が面会に来ることも一苦労です。
そうしたことから、逮捕を伴う捜査を受けた場合、上述の示談交渉等の活動に加え、弁護士釈放を求める活動も並行して行ってもらうことがよいでしょう。

・重要文化財でなければ犯罪にならない?

今回のAさんは、重要文化財に落書きをしたことで文化財保護法違反の容疑をかけられているようですが、この落書きをした寺が重要文化財でなければ犯罪にならないのでしょうか。
実は、そう簡単に済むことはではなく、たとえ落書きをした寺が重要文化財ではなくとも、文化財保護法違反以外の犯罪が成立する可能性があります。
それが、刑法の建造物損壊罪器物損壊罪です。

刑法260条
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

刑法261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

建造物損壊罪の「損壊」は、器物損壊罪の「損壊」でもあったように、物理的にその建造物を壊してしまうだけでなく、その建造物の効用をなくしたり減損したりすることも含んでいます。
建造物損壊罪と器物損壊罪の大まかな違いとしては、「損壊」される対象が「建造物」なのかそれ以外なのかという点が挙げられます。
一般的に、「建造物」かそれ以外かは、その建て物から取り外せるのかどうか、また、その部分がその建て物の重要な役割を負っている部分かどうかといったことを考慮され判断されます。
例えば、今回のAさんのような建て物の壁への落書きの場合、壁は建て物から取り外すことはできませんから、「建造物」への損壊行為であると考えられる可能性があるということになるのです。

なお、建造物損壊罪と器物損壊罪は、親告罪ではないか親告罪であるかという点も異なります。

建て物への落書きは、どういった建て物のどの部分にどのように落書きをしたのかによって、成立する犯罪が異なります。
自分の行為がどういった犯罪になるのか、どういった見通しなのかを早めに弁護士に相談し、対応を練ることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士刑事事件へのご不安やお悩みを解消できるよう、丁寧に対応いたします。
まずはお気軽にご相談ください(お申込:0120-631-881)。

文化財への落書きで文化財保護法違反①

2020-03-05

文化財への落書きで文化財保護法違反①

文化財への落書き文化財保護法違反となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

東京都在住のAさんは、京都府に観光に来ていました。
観光していく中で、Aさんは京都市左京区内にある寺を訪れました。
寺を見ていくうち、Aさんはその寺をいたく気に入り、寺に来た記念を残したいと考えました。
そこでAさんは、寺の壁に持っていたスプレーで自身の名前やイラストを描き残しました。
その後、他の観光客がAさんの残した落書きを発見し、京都府川端警察署に通報。
残された名前や防犯カメラの映像などから、Aさんは京都府川端警察署に、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・落書きから文化財保護法違反事件に

前回の記事で取り上げたように、落書きであっても刑事事件に発展することが考えられます。
今回のAさんは、落書きをしたことで文化財保護法違反の容疑をかけられ逮捕されるに至っています。

文化財保護法では、重要文化財の損壊等について、以下のように定めています。

文化財保護法195条
1項 重要文化財を損壊し、き棄し、又は隠匿した者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
2項 前項に規定する者が当該重要文化財の所有者であるときは、2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金若しくは科料に処する。

今回のAさんは、寺の壁に落書きをして文化財保護法違反の容疑をかけられ逮捕されていますから、おそらくこの寺が重要文化財であったのでしょう。
なお、文化財保護法では、「文化財」について以下のように定義づけられています。

文化財保護法2条
1項 この法律で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
1号 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)
2号 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
3号 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)
4号 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
5号 地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(以下「文化的景観」という。)
6号 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)
2項 この法律の規定(第27条から第29条まで、第37条、第55条第1項第4号、第153条第1項第1号、第165条、第171条及び附則第3条の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。
3項 この法律の規定(第109条、第110条、第112条、第122条、第131条第1項第4号、第153条第1項第7号及び第8号、第165条並びに第171条の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする。

文化財保護法27条
1項 文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2項 文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。

つまり、有形文化財のうち、重要なものとして文部科学大臣に指定されたものが「重要文化財」となり、それを損壊等すると文化財保護法違反となるのです。
文化財保護法で言われている「損壊」とは、刑法の器物損壊罪にいう「損壊」同様、その物の効用を害する一切の行為を指すと考えられます。

今回のAさんは、重要文化財である寺の壁に落書きすることで、その景観を害したり、文化財としての価値を下げてしまったりしていると考えられます。
こうしたことから、Aさんは重要文化財を損壊したとして、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまったのでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまった刑事事件のご相談にも迅速に対応いたします。
次回の記事では、弁護活動やその他の犯罪との関係について、詳しく触れていきます。

神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪

2020-03-03

神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪

神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪となった事例について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

東京都在住Aさんは,京都府福知山市に観光に訪れていました。
京都府福知山市内を観光していた際,Aさんはとある神社に立ち寄ったのですが,その神社の狛犬に,勝手に自分の名前を彫りました。
翌日,神社の神主が狛犬に傷がついていることを発見し,京都府福知山警察署に相談したことから,器物損壊事件として捜査が開始されました。
防犯カメラの映像や彫られた名前から,Aさんの犯行が発覚し,Aさんは器物損壊罪の容疑で京都府福知山警察署の警察官に逮捕されました。
東京都に住むAさんの両親は,京都府福知山警察署から逮捕の連絡を受けましたが,どうしていいのかわからず,全国展開している刑事事件に強い弁護士事務所に相談してみることにしました。
(フィクションです。)

~器物損壊罪~

他人の物を損壊した者には,器物損壊罪(刑法261条)が成立し,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。

刑法261条
前三条に規定するもののほか,他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪の「損壊」とは,その物の効用を害する一切の行為をいいます。
つまり,器物損壊罪の「損壊」は,ガラスの置物を粉々にするといった,物理的に破壊してしまう行為だけを指しているわけではないということです。

例えば,今回の事例の神社の狛犬は,神社の所有している物ですから,器物損壊罪の条文にある「他人の物」であるといえます。
Aさんは,神社の狛犬=「他人の物」に勝手に自分の名前を彫っています。
これにより,狛犬の見栄えが悪くなる,文化的価値が下がるといった形で狛犬の効用が害されているといえます。
こうしたことから,Aさんの行為には,器物損壊罪が成立する可能性が高いです。

~器物損壊事件と示談交渉~

器物損壊事件を起こしてしまった場合の対応としては,まずは弁護士に依頼して示談交渉をするというものが挙げられます。
器物損壊事件の弁護の依頼を受けた弁護士は,器物損壊事件を起こしたことに争いがない場合,被疑者・被告人に代わって被害者に謝罪と被害弁償をして,示談交渉をすることが考えられます。
というのも,器物損壊罪は,被害者の告訴がなければ起訴ができない親告罪です。
つまり,起訴前に示談を成立させ,告訴を取り下げてもらったり,告訴をしないように約束してもらえれば,不起訴処分となり,前科を回避することができるのです。

仮に起訴までに示談締結をすることができず,告訴され,器物損壊罪で起訴されることになった場合でも,弁護士器物損壊事件の被害者との間で示談や被害弁償を行うことで,略式罰金での事件の終息や,執行猶予獲得の可能性を上げることが可能です。
略式罰金となれば罰金を支払うことで事件を終息させることができますし,執行猶予となれば,執行猶予中に新たな犯罪を犯さないかぎり刑務所に入らないで済むことになります。

逮捕されている場合,もちろんご自身で示談交渉を行うことはできません。
さらに,今回の事例のように,ご家族も離れた土地に住んでいるような場合には,ご家族が代わりに示談交渉を行う,ということも難しいでしょう。
だからこそ,こういったケースでは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部弁護士までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,京都支部を含め,全国13都市に展開している刑事事件専門の弁護士事務所です。
離れた土地で逮捕されてしまっても,逮捕されてしまった警察署に一番近い支部の弁護士が接見に向かうことで,迅速に事件の内容や見通しをご報告することが可能です。
ご相談者様の状況に応じたサービスをご案内しますので,まずはお気軽にフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

公務執行妨害罪と業務妨害罪①

2020-02-20

公務執行妨害罪と業務妨害罪①

公務執行妨害罪業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都市中京区に住んでいます。
Aさんは、たびたび京都市中京区役所に住民が受けられるサービスについて説明を受けていましたが、その説明がわかりづらく、また区役所職員の態度も悪いと感じていました。
そこでAさんは、自身の携帯電話から区役所に連続して電話をかけ、「職員の態度が悪い」「きちんと礼儀を教えろ」などとクレームを入れ続けました。
区役所からは、意見は分かったので同じ内容の電話を多数かけるのを控えてほしいといった旨を伝えられましたが、Aさんは電話をかけることをやめず、半年間で600回以上にわたり区役所に電話をかけ続けました。
するとある日、Aさんは京都府中京警察署に、偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年2月17日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・区役所への大量のクレーム電話…公務執行妨害罪にならない?

今回のAさんは区役所に大量の電話をかけ続けたことで偽計業務妨害罪の容疑をかけられ逮捕されています。
ここで、Aさんが業務妨害行為をしたのは区役所という公の機関に対してのことであることから、Aさんに成立する犯罪は公務執行妨害罪なのではないか、と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、なぜAさんにかけられている容疑が公務執行妨害罪ではないのか確認してみましょう。

刑法95条(公務執行妨害罪)
1項 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。

公務執行妨害罪は、この条文にあるように、「公務員が職務を執行するに当たり」「(これに対して)暴行又は脅迫を加え」ることで成立する犯罪です。
公務執行妨害罪のいう「公務員」の定義は、刑法7条に書かれています。

刑法7条
この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。

つまり、今回の事例でいえば、区役所の職員などはこの公務執行妨害罪の「公務員」に当てはまることになります。
しかし、公務執行妨害罪の「公務員が職務を執行するに当たり」という条文の「職務」については、「漫然と抽象的・包括的に捉えられるべきものではなく、具体的・個別的に特定されていることを要するものと解すべき」とされています(最判昭和45年12月22日)。
つまり、公務員の仕事中であればその全ての行為に対して公務執行妨害罪のいう「公務員が職務を執行するに当たり」という条件に当てはまるものと判断されるとは限らないということです。
今回の事例でも、Aさんの大量の電話によって妨害された、もしくは妨害の危険が発生したのが「具体的・個別的に特定されている」公務である場合には、公務執行妨害罪の「公務員が職務を執行するに当たり」という文言に当てはまる可能性も出てくるかもしれませんが、そうでない場合はAさんの行為は公務執行妨害罪には当てはまらないということになるのです。

さらに、Aさんが今回した行為としては、区役所に大量に電話をかけ続け、クレームを入れ続けたという行為になります。
ですが、公務執行妨害罪が成立するには「暴行又は脅迫を加え」ることが必要です。
電話でクレームを入れ続けるという行為は「暴行」ではないでしょう。
加えて、Aさんの電話の内容はクレームであり、文句であることから、「脅迫」であるとも考えづらいです。
こうしたことから、Aさんは公務執行妨害罪の成立条件を満たさず、公務執行妨害罪には問われていないのだと考えられるのです。

次回の記事ではAさんの逮捕容疑である業務妨害罪について詳しく見ていきましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、公務執行妨害事件業務妨害事件のご相談・ご依頼も受け付けております。
0120-631-881では、専門スタッフが現在のご相談者様にニーズにあったサービスをご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。

半グレに所属して傷害事件

2020-02-18

半グレに所属して傷害事件

半グレに所属して傷害事件を起こしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府京丹後市に住む18歳のAさんは、自身の通う高校の卒業生であるBさんらが所属する、いわゆる「半グレ」の集団に所属していました。
Aさんは半グレの仲間たちとたびたび夜間に外出したり学校をさぼったりしていましたが、Aさんとしては悪ぶりたいだけであり、実際に犯罪に手を貸したり参加したりということはしていませんでした。
しかしある日、京都府京丹後市内の路上で、通行人のVさんと口論になると、半グレの仲間たちと一緒になってVさんを殴りました。
他の通行人が通報したことにより、Aさんは半グレの仲間たちと一緒に京都府京丹後警察署傷害罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんは自身が逮捕されるほどの大事を起こしてしまったことに動揺し、両親が逮捕を知って悲しんでいることを知って、半グレから抜けて更生したいと思っているようです。
(※この事例はフィクションです。)

・半グレ

ニュースなどで「半グレ」「半グレ集団」といった言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
半グレは、暴力団に所属せずに犯罪を繰り返す不良集団のことを指しているとされています。
半グレの「グレ」は、不良などになることを指す「グレる」という言葉や、暴力団に所属していないながらも犯罪を繰り返すことから「グレーゾーン」であることなどによるとされています。

さて、この半グレですが、暴力団とは異なりその構成は若者が中心となっているといわれています。
暴力団のように上下関係がはっきりしてピラミッドのように組織が作られているわけではなく、暴走族等からそのまま半グレに移行したり、年代でまとまったりして半グレになったりということもあるようです。
そのため、先輩後輩関係から10代で半グレ集団と関わってしまうこともあると考えられるのです。

・傷害事件

人に暴力をふるえば刑法の暴行罪が、それによって相手に怪我をさせてしまえば傷害罪が成立することはすでにご存じの方も多いでしょう。

刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

今回のAさんは18歳であるため基本的に刑罰を受けることにはならないと考えられますが、成人の刑事事件として考えれば、複数人で暴行をくわえた傷害事件は悪質性・危険性の高い犯行であると判断され、厳しい処分が下される可能性も考えられます。

なお、集団で暴行をしている場合や常習的に暴行・傷害行為をしている場合などには、暴力行為処罰法違反という犯罪になるかもしれないことにも注意が必要です。

・半グレと少年事件

先ほど触れたように、半グレの構成は若者が多いことから、10代の未成年者であっても半グレに所属してしまう可能性はあります。
Aさんも半グレに所属しており、そこで傷害事件を起こしてしまっているようです。

未成年者が犯罪をしてしまった場合には、少年事件として処理されていくことになりますが、そこで重要なポイントとなるのは、少年自身が更生するのに適切な環境が整えられるのか否かということです。
例えば、半グレに所属して少年事件を起こしてしまったのに、その半グレとの関係を断ち切れない、断ち切る気がないといった環境のままでは、少年を現在の環境に戻して更生させることは難しいと判断されてしまいやすいと考えられます。
今回のAさんのような少年事件では、Aさん自身がやってしまったことを反省し、被害者への謝罪の気持ちをもつことはもちろんですが、これからの生活でどのような点を改めて再犯を防止していくのかということも重要なのです。

そうした環境の調整やその調整活動の証拠化には、少年事件に強い弁護士のサポートが心強いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、少年事件も専門に扱う弁護士初回無料法律相談初回接見サービスも行っておりますので、まずはお問い合わせください(0120-631-881)。

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