連続した電話のパワハラで傷害事件に

連続した電話のパワハラで傷害事件に

連続した電話のパワハラ傷害事件になった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、京都府八幡市にある会社Xに勤務する会社員です。
ある日、Aさんは部下のVさんが気に食わず、業務中にVさんを叱責するだけでなく、Vさんが会社を退勤した後の深夜や出勤前の早朝、Vさんの休日に関わらず、Aさんはほとんど毎日何回にもわたってVさんの携帯電話に電話をかけ、Vさんに対して仕事の出来の悪さを叱責するなどし、Vさんが電話に出ないと長時間コール音を鳴らし続けたり、その後「なぜ上司の電話に出ないんだ」とさらに叱責するなどしました。
Vさんは、Aさんに対し連日時間を問わず電話をするのはやめてほしい旨を何度も伝えましたが、Aさんは取り合いませんでした。
そうした状況が半年以上続いたところ、Vさんは不眠症や神経衰弱症の症状が出てきたことから病院へ行き、さらに京都府八幡警察署にも相談しました。
すると、後日Aさんのところに京都府八幡警察署から「傷害事件の被疑者として話を聞きたい」と連絡が入りました。
(※この事例はフィクションです。)

・パワハラと刑事事件

パワーハラスメント、略してパワハラという言葉は、ここ最近でかなり浸透してきた言葉でしょう。
簡単に言えば、パワハラとは、職場内で社会的地位の高い者が、その優位性を利用して、自分より立場の弱いものへ嫌がらせを行うことを指します。
パワハラ問題等が報道されることも少なくなく、世間のパワハラへの関心も高まっているといえるでしょう。
今回のAさんの事例も、Aさんが上司としての立場を利用してVさんへ嫌がらせをしているようですから、このパワハラに関連していると考えられます。

このパワハラですが、「パワハラ」としての犯罪があるわけではありませんが、その行為の内容によっては犯罪になることも十分考えられます。
学校等での「いじめ」と同様、「いじめ罪」「パワハラ罪」といった罪名がついていないからといって犯罪が成立しないということはありません。
その行為の態様1つで、犯罪となり刑事事件となる可能性があるということを知っておかなければなりません。

・電話で傷害罪?

今回、Aさんにかけられている容疑は刑法に規定されている傷害罪という犯罪のようです。

刑法204条
人の身体を傷害した者は、10五年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪の典型例としては、人に殴る蹴るといった暴行を加えて怪我をさせてしまったような場合が挙げられます。
ですから、今回のAさんのような、電話を連続してかけ続けるといった行為と傷害罪がなかなか結び付きづらい方もいるかもしれません。
しかし、傷害罪の条文にある、「人の身体を傷害」するということは、人の身体の生理的機能を害することであると考えられています。
その「人の身体の生理的機能を害する」ということは、何も外傷だけに限ったことではありません。
例えば、PTSDのように精神に障害を与えるようなことでも、「人の身体の生理的機能を害する」といえると考えられているのです。
そして、傷害罪の「人の身体を傷害」するという行為にあたり、その手段として物理的に殴る蹴るといった手段に限定されているわけでもありませんから、例えば騒音や強い光などによって人に傷害を与えた場合でも、傷害罪は成立しうるとされています。

ここで、今回のAさんの事例を考えてみましょう。
Aさんは、Vさんに連日何回にもわたって電話をかけ続け、Vさんがやめてほしい旨を伝えてもその電話を継続しています。
その結果、Vさんは不眠症や神経衰弱症を患うことになっているようですから、「人の身体を傷害した」という傷害罪の条文に当てはまりそうです。
そして、AさんはVさんに電話をかけ続けるという行為によってVさんを「傷害」しているのですから、傷害罪にあたりうると考えられるのです。

ただし、犯罪が成立するには「故意」が必要です。
簡単に言えば、その犯罪に当たる行為をするという認識があったかどうか、ということですが、今回の場合は少し特殊です。
暴行によって相手に傷害を与えた場合、傷害罪の成立には、その暴行の認識があればよく、相手に傷害を与えるという認識までは不要とされています。
つまり、「殴るだけで怪我をさせるつもりはなかった」と言っても傷害罪は成立することになるのです。
ですが、今回のような場合、傷害を負わせる手段は暴行ではありません。
こうした場合、傷害罪の成立には、相手が傷害を負う可能性があることまで認識している必要があると考えられています。
ですから、今回のAさんで言えば、電話をかけ続けるパワハラ行為によってVさんに精神疾患を負わせるかもしれないという可能性を認識していたかどうか、といった事情が、Aさんに傷害罪が成立するかどうかの重要な事情となってくると考えられます。

なお、今回のAさんの行為は、傷害罪が成立しなかったとしても、各都道府県に規定されている迷惑防止条例に違反したり、侮辱罪になったりする可能性もあります。

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