新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に

2020-04-06

新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に

新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市伏見区に住むAさんは、ニュース番組で、新型感染症が流行しているニュースを知りました。
Aさんは、日頃から近所にあるコンビニエンスストアの接客態度が気に食わないと思っていたことから、「新型感染症にかかっていると言って迷惑をかけてやろう。営業できなくなって痛い目を見ればいい」と思い、京都市伏見区にあるコンビニエンスストアに行くと、店員に向かって「俺は新型感染症にかかっている」「うつるから消毒した方がいい」などと告げました。
Aさんの言動により、コンビニエンスストアは保健所へ連絡をするなどしたうえで、店内を消毒するために数時間閉店するなどの対応を取りました。
しかし、その後、Aさんが嘘をついていたことが発覚し、Aさんは偽計業務妨害罪の容疑で京都府伏見警察署に逮捕されることとなりました。
(※令和2年4月5日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)

・新型感染症を偽って偽計業務妨害罪

新型感染症が流行しており、連日関連したニュースが報道されています。
その中で、今回のAさんのように新型感染症にかかったと偽って来店し、その業務を妨害するという業務妨害事件もいくつか報道されています。
たとえ本人が軽い気持ちでいたずら感覚で行っていたとしても、こうした行為は犯罪となります。

今回のAさんの逮捕容疑となっているのは、刑法に規定されている偽計業務妨害罪という犯罪です。

刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

この条文によると、偽計業務妨害罪が成立するには、「偽計を用いて」「その業務を妨害した」ことが必要とされています。
今回のAさんの事例と当てはめながらその条件を確認していきましょう。

まず、偽計業務妨害罪の罪名にも入っている「偽計を用いて」という部分ですが、これは「人を欺罔・誘惑し、または他人の無知・錯誤を利用すること」であると言われています。
簡単に言えば、他人を騙したり、他人が知らないことや勘違いしていることを利用したりすることです。
今回のAさんは、実際は新型感染症にかかっていませんが、あたかも新型感染症にかかっているようなふりをしてコンビニエンスストアの店員を騙しています。
新型感染症にかかっているという嘘を利用しているわけですから、Aさんの行為は偽計業務妨害罪の条文にある通り、「偽計を用いて」いると判断できそうです。

では、偽計業務妨害罪の「業務を妨害した」とはどういった状態を指すのでしょうか。
一般に「業務妨害だ」という場合には、「仕事を邪魔した」ということを指すことが多いでしょう。
偽計業務妨害罪の「業務を妨害した」という言葉も、大まかにはそういった認識で間違っていません。
しかし、いくつか注意すべき点もあります。

例えば、偽計業務妨害罪のいう「業務」とは、「自然人または法人、その他の団体が社会生活上の地位において、あるいはこれと関連しておこなう職業その他の継続して従事することを必要とする事務」を指すとされています。
この「業務」には、一般に言う職業的な意味での「仕事」も含まれますが、経済的に収入を得る目的のもの以外も含むため、例えば継続的に行われているボランティア活動なども偽計業務妨害罪の「業務」になりえることに注意が必要です。

また、条文では「業務を妨害した」とあるため、偽計業務妨害罪の成立には実際に業務妨害された事実があることが必要なように見えますが、偽計業務妨害罪の成立には、実際に業務を妨害されたという事実までは不要で、業務を妨害される具体的な危険が発生していればよいとされています。
偽計業務妨害罪の成立を考える際には、こういった点にも注意が必要なのです。

今回のAさんですが、Aさんが新型感染症であると偽ったことによって、コンビニエンスストアは消毒作業などの対応に追われることになり、通常の営業時間内に閉店するという措置も取っています。
通常であれば営業で来ていた時間に閉店し、不要な業務をしなければならなくなったわけですから、十分「業務を妨害」されたと考えられます。
こうしたことから、Aさんには偽計業務妨害罪の成立が考えられるのです。

なお、今回は実際に業務妨害をされたという事実がありますが、先述のように、例えば消毒作業や閉店等をする前にAさんの嘘が分かったとしても、その嘘によって消毒作業や閉店といった業務妨害の危険性が発生していると判断されれば、実際に店側が業務を妨害されていなくとも偽計業務妨害罪の成立が考えられます。

今回の事例のように、偽計業務妨害事件などで実際に施設や店等の業務を妨害した事実がある場合、被害弁償などが多額になることも予想されます。
被害者との謝罪や示談交渉も、施設や店等についている弁護士と行うことになる場合もあり、当事者だけで対応することに不安が大きいという場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、偽計業務妨害事件のご相談・ご依頼も受け付けていますので、まずはお気軽にご相談ください。