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金庫の金を脅し取った男を強盗罪で逮捕
金庫の金を脅し取った男を強盗罪で逮捕
金庫の金を脅し取った男が強盗罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府上京警察署は、無職の男性(34)を強盗罪の疑いで逮捕した。
男は、深夜に包丁を持って一人暮らしの女性宅に侵入し、物音に気づいて起床した女性に刃物を突きつけながら「家にある現金を全てだせ。出すまで刺すぞ」と脅し、金庫に入っていた50万円を奪って逃走した疑いが持たれている。
(フィクションです。)
強盗罪とは
刑法236条1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
強盗罪は、量刑が5年以上の有期懲役ですから、非常に重たい犯罪の1つです。
例えば、他人を凶器で殴ったり、脅したりして抵抗することを難しくさせ、無理やりに財産を奪うような行為が強盗罪にあたります。
このような行為がなされると、被害者が死亡したり怪我をしたりといったことが非常に発生しやすいと言えますから、とても危険で悪質な犯罪と言えます。
強盗罪に当たる行為が、単に人の財産に対する侵害行為にとどまらず人の生命・身体・自由に対する侵害行為という側面も有するため重い刑が課されます。
手段としての「暴行又は脅迫」
一般に暴行とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を意味し、脅迫とは害悪の告知を言います。
しかし、暴行・脅迫を犯罪行為の一部としている犯罪は暴行罪や恐喝罪などたくさんあり、各犯罪によってその意味は微妙に異なるものと理解されています。
強盗罪の場合、暴行・脅迫は財物を無理やり奪い取る手段として規定されていますから、本罪における暴行とは、反抗を抑圧するに足りる程度の不法な有形力の行使を意味し、脅迫とは、反抗を抑圧するに足りる程度の害悪の告知を言います。
また、反抗を抑圧するに足りる程度とは、簡単にいうと、抵抗することが困難な程度のことをいいます。
問題となった行為が、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行又は脅迫であるか否かは、「社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうか」という客観的基準によって決せられます(最判昭和24年2月8日)。
この判断は、暴行又は脅迫の態様、行為者及び被害者の状況、日時や場所などを総合考慮して判断されます。
特に暴行又は脅迫の態様が重視されます。
例えば、加害者が殺傷能力の高い凶器を使用した場合には、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行又は脅迫と判断される可能性が高くなります。
本件では、男は、現金という財物を手に入れようとして、被害者の女性に対し包丁を突きつけています。
寝起きの無防備な女性が、自分よりも力の大きい男性に包丁という殺傷能力の高い凶器を突きつけられた場合、反抗するのは困難と言えます。
したがって、男の包丁を突きつける行為は、反抗を抑圧するに足りる程度の有形力の行使、すなわち強盗罪における暴行にあたりそうです。
また、男は被害女性に対し、現金を出さないと包丁で刺すと脅しています。
包丁で刺すというのは身体に対する害悪の告知であり、上述のように、被害女性が男に反抗するのは困難でしょうから、強盗罪における脅迫にもあたりそうです。
結局、本件で男は、暴行と脅迫を用いて現金50万という他人の財物を奪ったと言えそうですから、強盗罪が成立する可能性があります。
できるだけ早く弁護士に相談を
強盗罪の量刑は5年以上の有期懲役です。
執行猶予がつくためには懲役刑の場合は下される量刑が3年以下である必要がありますから、本件の男のように強盗罪を犯した場合、執行猶予がつくことは諦めざるを得ないのでしょうか?
実は、被害者に真摯に謝罪して示談が成立していれば、刑の減軽がされ、3年以下の懲役が下される可能性があります。
この場合には、執行猶予がつく可能性があります。
したがって、示談を成立させることができるかどうかが重要となります。
もっとも、本件のように、凶器を突きつけてきた加害者から謝罪がしたいと言われたとしても、被害者はこれに応じてくれる可能性は低いでしょう。
被害者としては、非常に怖いと思っているでしょうし、加害者に対する処罰感情も強いでしょうから、加害者が直接接触しようとするのは得策ではありません。
そこで、弁護士に示談交渉を一任されることをおすすめいたします。加害者を断固拒絶している被害者も、弁護士とであれば連絡を取ることに応じてくれるかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、強盗事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を減軽させたり、執行猶予付判決を得たりすることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
美容サロン7店に侵入し約130万円を盗み出した事例
美容サロン7店に侵入し約130万円を盗み出した事例
ポストに置かれていた合鍵を使用して美容サロンに進入し、約130万円等を盗んだとして、窃盗罪、建造物侵入罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都府警捜査3課と下京署などは11日、建造物侵入と窃盗の疑いで、(中略)を逮捕、追送検し、7件、計約131万円の被害を裏付け、捜査を終結したと発表した。
(1月11日 京都新聞 「ポストの合鍵使い、美容サロンで窃盗繰り返す 容疑の男「生活のため」」より引用)
府警によると、(中略)夜間帯に京都市下京区(中略)など7府県で、店舗関係者がテナントビルの集合ポストに置いたままにしていた合鍵を使い、美容サロン7店舗に侵入し、売上金や釣り銭計131万円と、鍵やポーチなど計4点を盗んだ疑いがある。「生活のためにやった」と供述しているという。
窃盗罪
窃盗罪は刑法第235条で規定されています。
刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は簡単に説明すると、お金などの財物を持ち主の許可なく、自分など持ち主以外の人の所有物にすると成立する犯罪です。
今回の事例では、容疑者がテナントビルの集合ポストに置かれていた合鍵を使用して美容サロンに進入し、売上金や鍵、ポーチなどを盗んだと報道されています。
本来の売上金の持ち主は美容サロンですし、鍵やポーチは美容サロンかその従業員の持ち物でしょう。
容疑者が美容サロンの責任者やポーチ等の持ち主の許可なく美容サロンから持ち去ったのであれば、窃盗罪が成立する可能性があります。
建造物侵入罪
建造物侵入罪は刑法第130条で規定されています。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
住居とは人が普段生活している家などを指し、邸宅は現在人が生活していない空き家や使用していない別荘などを指します。
住居や邸宅以外の建物を建造物といい、お店や学校などの公共施設がこの建造物にあたります。
大まかに説明すると、建造物に正当な理由や管理者の許可なく立ち入ると建造物侵入罪が成立します。
今回の事例では、容疑者は集合ポストに置いたままにされていた合鍵を使用して夜間に美容サロンに進入したとされています。
おそらく容疑者は合鍵を使用する許可や、夜間に施錠された美容サロンに立ち入る許可を得ていないでしょう。
また、物を盗むために立ち入る行為は正当な理由にはならないでしょう。美容サロンは建造物にあたりますから、実際に容疑者が合鍵を用いて美容サロンに入ったのであれば、建造物侵入罪が成立する可能性があります。
窃盗罪と裁判
窃盗罪は身近な犯罪の一つだと思います。
そのため、初犯であれば、実刑判決は下されずに執行猶予が付くと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、悪質性が高かったり、被害額が高額な場合には、初犯であっても実刑になる可能性は十分にあります。
ですので、執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動が重要になってくる場合があります。
今回の事例では、報道によると被害額は130万円を超えているようですし、7店舗で侵入盗をしているそうなので、悪質性が高いと判断され、もしかすると実刑判決を下されてしまうかもしれません。
では、実刑判決を回避するためにはどういったことをすればいいのでしょうか。
執行猶予付き判決の獲得を目指すうえで、一番初めにしてもらいたいことは弁護士に相談をすることです。
事件の見通しは事案ごとによって異なってきます。
ですので、一度弁護士に相談をして科される可能性のある量刑など、今後の見通しを聞いておくことがかなり重要になります。
また、執行猶予付き判決の獲得を目指すうえで、示談の締結が有利に働くことがあります。
当事者だけで示談をすることは不可能ではありませんが、法律の知識が乏しい中で、示談書を作成することはかなり大変な作業になることが予想されます。
何とか示談書を作成し被害者と交渉を行い示談書に署名等をもらったものの、示談書の内容に法的な穴が散見され示談書としての効力を有しない示談書になってしまうおそれもあります。
そういった事態を避けるためにも、弁護士に示談を任せることをおすすめします。
弁護士が代理人として示談交渉を行うことで、トラブルの回避につながることもありますので、そういった面でも示談交渉を行う際には、弁護士を介して行うことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
窃盗事件や建造物侵入事件の豊富な弁護経験を持つ弁護士による弁護活動で、執行猶予付き判決を獲得できる可能性がありますので、示談を考えている方、窃盗罪、建造物侵入罪でお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120―631―881で受け付けております。
後輩に対してカツアゲした疑いで大学生を逮捕
後輩に対してカツアゲした疑いで大学生を逮捕
後輩に対してカツアゲした疑いで大学生が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府北警察署は、京都市内の大学に通う男子大学生A(22)を恐喝罪の疑いで逮捕した。
体育会系の部活の4回生であるAは、同じ部活に所属する後輩の1回生Vが部活に遅刻した際に、「部活舐めてんのか!?遅刻した罰金として3万よこせ!金払わないならケツバットな!」などと言って、後輩の財布に入っていた2万円と、銀行から下ろさせてきた1万円の計3万円を受け取ったとされている。
京都府北警察署の取調べに対し、Aは「パチンコの新台を打ちたかったが、お金がなかったので、後輩からカツアゲしようと思った」と容疑を認めている。
カツアゲは犯罪?
刑法249条
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
カツアゲは恐喝罪になる可能性があります。
本件では、Aは、同じ部活に所属する後輩Vに3万円を差し出させています。
3万円という財物を交付させていますから、Aの発言が恐喝に当たるのであれば、恐喝罪が成立する可能性があります。
恐喝とは、①財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫または暴行であって、②その反抗を抑圧するに至らない程度の行為を言います。
本件で、Aは、Vに対し、金銭をよこさないとケツバットすると言って後輩を怖がらせています。
ケツバットするというのは、身体に対する害悪の告知ですから、Aの発言は、財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫に該当しそうです(①)。
では、②についてはどうでしょうか?
Aの上記行為は、Vの反抗を抑圧するに至らない程度と言えるでしょうか?
反抗を抑圧する程度の脅迫というのは、例えば、拳銃の銃口を突きつけながら「金を出さないと殺す」などと脅すような場合がこれに当たります。
銀行強盗をイメージするとわかりやすいかもしれません。
この場合、要求に応じないと殺されそうなので、言われた通りお金を差し出すほかないでしょうから、上記脅迫は、反抗を抑圧する程度の脅迫と言えます。
これに対し、本件でのAのケツバットするぞという害悪の告知は、大学に入ったばかりの1回生を怖がらせるのには十分かもしれませんが、反抗を抑圧する程度に至ってはいないと考えられます(②)。
以上より、Aのケツバットするぞという発言は恐喝に当たり、Aには恐喝罪が成立する可能性があります。
恐喝から現金の交付までの因果関係
加えて、恐喝罪の成立には、次の因果関係が必要です。
①相手方を恐喝し、②それにより相手方が畏怖し、③その畏怖に基づいて相手方が交付行為を行い、④その交付行為によって財物が行為者に移転するという因果関係が必要です。
本件では、AがケツバットするぞとVを恐喝し(①)、それによりVが畏怖し(②)、その畏怖に基づいてVは3万円をAに差し出し、(③)、その交付行為によって財物がAに移転(④)しています。
以上より、Aには恐喝罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
カツアゲと聞くと大した犯罪ではないと思われるかもしれせんが、恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役と非常に重たくなっています。
執行猶予がつくためには、量刑が3年以下であることが条件の1つですから、カツアゲをすると実刑判決が下される可能性があります。
仮に執行猶予がつかず実刑判決が下った場合、刑務所に拘束されるため大学に通ったり会社に出勤したりすることはできず、解雇や退学処分となることが珍しくありません。
したがって、刑務所での拘束を避けるためには、科される量刑を3年以内に抑えて執行猶予付判決を獲得する必要があります。
では、量刑を3年以内に抑えるには、どうすれば良いのでしょうか?
この点については、被害者との間で示談を成立させることで、量刑を抑えることができる可能性があります。
ただし、カツアゲをした当の加害者が、直接被害者と示談交渉を進めることは通常困難です。
被害者は強い処罰感情を有していることは珍しくありません。
示談交渉のテーブルにつくことすらできないかもしれません。
そこで、交渉のプロである弁護士に第三者的立場から示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
さらに、検察官に起訴される前に示談を締結できた場合には不起訴処分となる可能性も存在しますから、できる限り早い段階で弁護士に相談することが極めて重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、恐喝事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を軽くしたり執行猶予付判決や不起訴処分を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
相談のご予約のお電話は0120-631-881で承っています。
書店で本を万引きして逮捕された事件
書店で本を万引きして逮捕された事件
書店で本を万引きして逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事案
大学生のAは、京都市中京区の書店Bで、週刊誌で連載中の漫画の単行本を鞄の中に入れてお金を支払わずに店の外に出た。
一部始終を見ていた私服警備員はAを呼び止めたところ、Aは、「自分は単行本派なので、最新刊が出たらすぐ読みたいとずっと思っていたが財布にお金がなった。どうしても前刊の続きが気になっていたが、週間連載には手を出さずに我慢していたところなので、つい万引きしてしまった。」と万引きしたことを認めた。
書店Bは、京都府中京警察署に通報し、その後Aは逮捕された。
(フィクションです)
窃盗罪とは
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することを言います。
大まかに説明すると、占有とは物の支配や管理のことを指し、占有者は物の所有者を指します。
占有が認められるのは、客観的要件としての財物に対する事実的支配(客観的支配)と、主観的要件として財物に対する支配意思が必要です。
例えば、自宅に置いてあるゲーム機は、自宅という限られた人しか入れない閉鎖的な支配領域内にあるため、強い客観的支配が認められます。
また、すぐ使えるようにテレビの前などの目に入る場所に置いてあるのであれば、このゲーム機は自分の物だという支配意思も強いと言えるでしょうから、家主に占有が認められます。
本件では、Aは、書店で販売されていた単行本を鞄にいれて店外に持ち出したようです。
Aが持ち出した単行本は、書店の中に置かれていたようですので、書店Bには当該単行本に対して強い客観的支配が認められます。
書店Bは、店内に置いてある商品である単行本に対して、自店舗のものだという強い支配意思を有しているでしょう。
したがって、書店Bは、当該単行本を占有していたと言えそうです。
そして、Aは、当該単行本を代金を支払うことなく外に持ち出したようです。
書店Bは、代金を支払わずに商品を店外に持ち出すことを許してはいないでしょうから、Aは、占有者である書店の意思に反して自己の占有に移転したといえます。
したがって、本事案では窃盗罪が成立する可能性があります。
犯行時のAの認識
窃盗罪は故意犯、すなわち自らの行為が犯罪であることをわかった上で行うと成立する犯罪です。
窃盗罪の場合、故意の内容は、他人の財物を窃取することを認識・認容していたことです。
Aは書店に商品として置いてある本を鞄に入れて意識的に店外に持ち出していますから故意は認められそうです。
このほかに、条文には明記されていないものの、窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要であると解されています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用しまたは処分する意思」とされています(最判昭和26年7月13日)。
権利者を排除し他人の物を自己の所有物として振る舞う意思を権利者排除意思といい、経済的用法に従いこれを利用し処分する意思を利用処分意思と言います。
まず、権利者排除意思は、刑罰を科されない使用窃盗と窃盗を区別するための概念です。
使用窃盗とは、他人の財物を無断で一時的に使用することであり、被害者の被る被害が軽微であることから不可罰とされています
本件では、Aは、万引きを認めており、持ち出した単行本を書店Bに返すつもりはなかったようです。
仮にあったとしても商品を持ち出されては商売することができなくなるため、被害者の被る損害は軽微とは言えず、権利者排除意思が認められそうです。
次に、利用処分意思は、毀棄・隠匿の罪と区別するために必要な概念です。
毀棄・隠匿の罪は、物を壊したり隠したりすることで利用を妨げる罪です。
単行本の場合、利用処分意思は、単行本を読むつもりだった場合などに認められると考えられます。
本件では、Aは、前刊の続きが気になっていて最新刊がどうしても読みたかったから万引きしたと言っているので、利用処分意思が認められそうです。
以上より本件では、窃盗罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
本件では、Aは逮捕されています。
逮捕中は、ただ身体拘束されるだけでなく、警察官や検察官からの取調べが行われます。
取調べの結果は、調書として文書化されて、被疑者はそれにサインするよう求められます。
サインされた調書は、裁判が始まった際に証拠として用いられることがあり、仮に、証拠として提出された場合、被告人のサインがあるため不利な調書の内容を覆すのは非常に困難です。
したがって、取調べ前に何をどのように供述するのか、しっかり考えておく必要があります。
もっとも、法律に詳しくない一般の方にとって、どのように受け答えするのが適切か判断することは困難です。
そこで、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
法律のプロである弁護士に相談すれば、事件の内容を踏まえて取調べでどのように受け答えすれば良いのかについてアドバイスを得ることができます。
また、逮捕されたことによる不安を軽減して落ち着いて取調べに対応できる可能性が高まります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗罪を含む豊富な刑事弁護の経験を持つ法律事務所です。
逮捕前であれば、弊所にて初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣する初回接見サービスがございます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回無料法律相談、初回接見サービスをご希望の方は、0120-631-881までお電話ください。
特殊詐欺事件で捜査を受けたら弁護士に相談を
特殊詐欺事件で捜査を受けたら弁護士に相談を
日々、特殊詐欺事件のニュースを目にします。
特殊詐欺事件を起こした場合には、どのような犯罪が成立するのでしょうか。
今回のコラムでは、特殊詐欺事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
特殊詐欺事件
特殊詐欺事件は、高度な欺罔手段を用いて被害者から財物を騙し取る犯罪です。
これらの事件は、被害者の信頼を悪用し、金銭的な損失だけでなく、精神的な苦痛も引き起こします。
特殊詐欺事件の被害に遭うのは高齢の方が多いイメージですが、年々手口が巧妙化しており、年齢に限らず特殊詐欺事件にひっかかってしまうおそれがあります。
また、闇バイトなどで社会問題になったように、気づけば特殊詐欺事件に加担してしまっていたなど、特殊詐欺事件の被害に遭わないように注意するのと併せて特殊詐欺事件に加担しないために警戒することも重要になります。
詐欺罪
特殊詐欺事件で成立する犯罪として一番に思い浮かぶのは詐欺罪なのではないでしょうか。
詐欺罪は、刑法第246条1項に定められており、人を欺いて財物を交付させると成立します。
この犯罪は、相手に虚偽の事実を伝え、その虚偽を信じさせることで、財物を不当に得ることを目的としています。
詐欺罪の成立には、欺罔行為(人を欺く行為)、錯誤(相手に誤信させる)、財物の交付が必要です。
例えば、存在しない商品を販売することを偽って金銭を受け取る行為は、典型的な詐欺罪に該当します。
詐欺罪は、被害者の財産権を侵害する重大な犯罪であり、最悪の場合、10年の懲役に処される可能性があります。
窃盗罪
窃盗罪は、刑法第235条によって規定されており、大まかに説明すると他人の所有する財物を、その人の意志に反して盗むことで成立します。
窃盗罪の要件には、対象が他人の財物であること、盗む意図があること、所有者の意思に反していることが必要になります。
例えば、店舗から商品をこっそり持ち去る行為や、人の財布から金銭を抜き取る行為は、窃盗罪に該当します。
窃盗罪は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。
詐欺罪と窃盗罪
特殊詐欺事件では、詐欺罪だけでなく窃盗罪の罪に問われる可能性があります。
例えば、キャッシュカードをだまし取り、そのカードを使用してATMから現金を引き出す行為は、詐欺罪と窃盗罪の両方が成立するおそれがあります。
詐欺罪では、被害者を欺いて財物を交付させる行為が問題となり、窃盗罪では、その財物(例えば現金)を所有者の意思に反して取得する行為が問題となります。
特殊詐欺事件と弁護活動
弁護活動は、特殊詐欺事件において非常に重要な役割を果たします。
刑事事件では、捜査を受けると取調べが行われることになります。
取調べでは供述の内容を基に供述調書が作成されるのですが、警察官や検察官による供述の誘導や自白の強要などで、意に反した供述調書が作成される可能性があります。
また、刑罰を科されるかもしれないといった不安の中、ストレスにより判断が鈍り、不利になるような供述をしてしまうおそれもあります。
こういった事態を避けるためにも、あらかじめ供述すべき内容とそうでない内容を整理し、余裕をもって取調べに挑むことが重要になります。
とはいえ、何が供述すべき内容で何が供述しない方が良い内容なのかわからない方がほとんどだと思います。
ですので、取調べを受ける前に弁護士に相談をし、取調べの対策を練っておくことをお勧めします。
弁護士に相談をして供述すべき内容を精査することで、気持ちに余裕ができ、不利な内容の供述調書の作成を防げるかもしれません。
また、特殊詐欺事件では、初犯であっても実刑判決を下される可能性があります。
実刑判決を避けるためには、不起訴処分や執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動が重要になります。
特殊詐欺事件では、被害者と示談を締結することで、不起訴処分や執行猶予付き判決の獲得に有利に働く可能性があります。
加害者が直接被害者と示談交渉を行うことは不可能ではありませんが、トラブルに発展する可能性が高く、あまりおすすめできません。
また、加害者本人が被害者と直接連絡をとることで、証拠隠滅を疑われてしまう可能性もありますので、示談締結を考えている場合は、弁護士に相談をしてみることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、詐欺罪、窃盗罪の弁護経験が豊富な法律事務所です。
数々の詐欺事件、窃盗事件で不起訴処分を獲得してきた弁護士に相談をすることで、不起訴処分や執行猶予付き判決の獲得などより良い結果を得られる可能性があります。
特殊詐欺事件など、詐欺罪、窃盗罪でお困りの方は、年末年始も即日対応可能な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談は、0120-631-881で受け付けております。
【事例紹介】心霊スポットに訪れた人からお金を脅し取った事例
【事例紹介】心霊スポットに訪れた人からお金を脅し取った事例
心霊スポットに立ち入った人から、示談金の名目でお金を脅し取ったとして恐喝罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
「心霊スポット」とされるホテル跡地に立ち入った若者から示談金名目で現金を脅し取ったなどとして、京都府警木津署は19日、恐喝などの疑いで(中略)容疑者(32)と(中略)容疑者(40)と(中略)容疑者(30)を逮捕した。(中略)容疑者は容疑を認め、(中略)容疑者と(中略)容疑者は否認している。
(12月19日 産経新聞 「廃ホテル侵入者に「前科がつく」 120万円恐喝容疑でユーチューバーら3人逮捕」より引用)
逮捕容疑は共謀し今年8~9月、京都府笠置町にあるホテル跡地に立ち入った20代男性ら4人に対し「不法侵入です」「前科がつく」などと脅し、示談金として計120万円を脅し取ったなどとしている。
木津署によると(中略)容疑者は今夏から、ホテル跡地の所有者から現場の管理業務を任されていた。(後略)
恐喝罪
刑法第249条1項
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
恐喝罪は、簡単に説明すると、強盗罪にいたらない程度の暴行や脅迫を用いてお金などを受け取ると成立する犯罪です。
大まかに説明すると、強盗罪は抵抗できないような暴行や脅迫を用いてお金などを奪うと成立します。
ですので、恐喝罪が規定する暴行や脅迫は、強盗罪が成立するような抵抗できない程度には至らない程度のものになります。
暴行は、殴る、蹴るはもちろんのこと、腕をつかむ行為や髪の毛を引っ張る行為なども暴行にあたります。
また、相手に恐怖を感じさせる害を与える告知が脅迫にあたります。
今回の事例では、容疑者らが心霊スポットに訪れた被害者らに対して、「不法侵入です」「前科がつく」などと脅して計120万円を脅し取ったとされています。
他人の敷地に無断で侵入して「不法侵入です」や「前科がつく」などと言われれば、前科がついて将来を棒に振ってしまうのではないかと恐怖を感じるのではないでしょうか。
また、「不法侵入です」や「前科がつく」と言われただけでは、その場から逃げ出すなどできそうですから、抵抗できない程度とはいえないでしょう。
ですので、被害者に対して「不法侵入です」や「前科がつく」と言う行為は、恐喝罪で規定する脅迫にあたりそうです。
報道によると、容疑者らは示談金の名目でお金を受け取っているようですので、実際に容疑者らが被害者に対して「前科がつく」などと脅してお金を受け取ったのであれば、恐喝罪が成立する可能性があります。
肝試しと建造物侵入罪
今回の事例では、事件現場が心霊スポットされているホテル跡地のようです。
報道によれば、容疑者らは被害者に「前科がつく」などと脅していたようです。
実際に被害者に前科がつくことはあるのでしょうか。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
大まかに説明すると、人が現在暮らしている家や宿泊しているホテルの一室などを住居、人が住んでいない空き家や使用していない別荘などを邸宅、住居や邸宅にあてはまらない建物を建造物といいます。
住んでいる人や管理している人の許可や正当な理由がなく、住居や邸宅、建造物に進入すると、住居侵入罪、邸宅侵入罪、建造物侵入罪がそれぞれ成立することになります。
今回の事例では、被害者はホテル跡地に立ち入っているようです。
このホテル跡地にはホテルだった建物が残っているようですから、建造物にあたると考えられます。
ですので、管理者に無断で侵入したり、侵入する正当な理由がない場合には、建造物侵入罪が成立する可能性があります。
今回の事例では、容疑者の一人がホテル跡地の所有者から管理を任されているようですので、許可を得て立ち入ったわけではなさそうです。
また、立ち入った理由は報道からでは明らかではありませんが、仮に肝試し目的での侵入だった場合は侵入するための正当な理由とはいえないでしょうから、被害者は建造物侵入罪に問われる可能性があります。
もしも、今回の事例で建造物侵入罪が成立した場合には、有罪になれば前科がつくことになります。
このように、心霊スポットで廃墟などに進入する行為は建造物侵入罪など、何らかの犯罪が成立する可能性があります。
罪に問われたり、トラブル生まないようにするためにも、他人が所有する敷地内には無断で立ち入らないようにしましょう。
容疑をかけられたら弁護士に相談を
恐喝罪や建造物侵入罪は、被害者と示談を締結することで、不起訴処分を得られる可能性があります。
不起訴処分を獲得することができれば、罰金刑や懲役刑は科されませんし、前科がつくこともありません。
示談を締結するためには示談交渉を行う必要がありますが、加害者本人が示談交渉を行う場合には、被害者の連絡先を教えてもらえない場合があります。
ですが、加害者には連絡先を教えたくないが弁護士であれば教えてもいいと思われる被害者の方もいらっしゃいますので、示談交渉を行う場合には、弁護士に相談をすることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
恐喝罪や建造物侵入罪などの刑事事件でお困りの方は、年末年始も即日対応可能な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
【事例紹介】息子の知人を装い、高齢女性から現金をだまし取ったとされる事件
【事例紹介】息子の知人を装い、高齢女性から現金をだまし取ったとされる事件
息子の知人を装い、高齢女性から現金をだまし取ったとされる事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
高齢者から多額の現金をだまし取ったとして、京都府警組対2課と東山署は11月28日、詐欺の疑いで、(中略)再逮捕した。府警は約20人でつくる特殊詐欺グループの首謀者とみている。
(11月28日 京都新聞「 『息子ががん』と高齢女性にうその電話、現金だまし取る 詐欺容疑で暴力団員を再逮捕」より引用)
再逮捕容疑は、氏名不詳者らと共謀し、昨年12月16日、三重県鈴鹿市の女性(79)宅に息子や医師を名乗り「カードをなくし、至急現金が必要」「息子さんが喉のがんになった」などとうその電話をかけて200万円を詐取。同様の手口で同17日、京都市上京区の女性(81)から140万円をだまし取った疑い。「一切関わっていない」と容疑を否認しているという。(後略)
詐欺罪とは
刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
「人を欺いて財物を交付させた」というのは、①被害者を欺いて(欺罔行為)、②それにより被害者が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて被害者が処分行為を行い、④その処分行為により財物が行為者に移転する、ということを意味します。
欺罔行為とは?
人をだます行為がすべて、詐欺罪となりうる欺罔行為となるわけではありません。
詐欺罪となりうる欺罔行為とは、財物の交付に向けて人を錯誤に陥らせることをいい、その内容は財物の交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることであるとされています。
例えば、機械は錯誤に陥りませんから、他人のキャッシュカードを使ってATMからお金を引き出す行為は欺罔行為とならず、詐欺罪が成立することはありません。
本件報道によると、容疑者は氏名不詳者等と共謀し、被害者にうその電話をかけて金銭をだまし取ったとされています。
仮に被害者をだまして錯誤に陥らせることで金銭を交付させようとして、うその電話を掛けたのであれば、詐欺罪が規定する欺罔行為があったとし判断される可能性があります。
処分行為とは?
上述の通り、詐欺罪が成立するためには、欺罔行為により錯誤に陥った被害者が、錯誤に基づいて処分行為を行い、その処分行為により財物が加害者に移転する必要があります。
詐欺罪における処分行為とは、錯誤による瑕疵ある意思に基づいて財物を終局的に相手方に移転する行為のことをいいます。
例えば、試着した服を着て逃走する意図を有していた者に対して、店員がした試着の許可は、処分行為とはいえません。
店内で試着を許可するだけでは、店員の意思によって服を終局的に相手方に移転したとはいえないからです。
本件では詳細は不明ですが、金銭を被害者からだまし取ったとされています。
仮に、被害者宅にまでやってきた容疑者等に対し現金を手渡ししたのであれば、処分行為があったとして詐欺罪が成立する可能性があります。
一度金銭を加害者に渡した場合、簡単にその場から離れて持ち逃げすることができ、被害者が保持したり取り返すことは困難なため、金銭を終局的に加害者に移転したと評価される可能性があるためです。
なるべく早く弁護士に相談を
詐欺罪のように被害者のいる犯罪では、被害者との間で示談を成立させることが重要となります。
というとのは、早期に示談が成立していれば不起訴となる可能性がありますし、起訴後に示談が成立した場合でも、罪の減軽や執行猶予付判決が得られる可能性があるからです。
もっとも加害者が独力で示談交渉をすすめることは通常困難です。
詐欺罪の嫌疑がかけられた場合、本件のように逮捕されることが多く、逮捕された状態で示談交渉を進めることは非常に困難です。
逮捕されずに在宅で捜査が行われる場合でも、被害者は自分をだました相手に強い処罰感情を有している可能性が高いですから、直接接触しようとしても交渉のテーブルに着くこと自体拒絶されかねません。
そこで、示談交渉は交渉のプロである弁護士に一任することをおすすめします。
直接加害者とやり取りすることに抵抗を感じる被害者でも、弁護士が相手であれば、示談交渉に応じてくれることは少なくありません。
弁護士弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、詐欺事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分や罪の減軽、執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
【事例紹介】捜査先の民家から現金を盗んだ疑いで警部補を起訴
【事例紹介】捜査先の民家から現金を盗んだ疑いで警部補を起訴
事案
京都府警の警察官が職務で訪れた民家から現金を盗んだとされる事件で、京都地検は24日、窃盗の罪で、城陽市、府警捜査2課警部補(57)を起訴した。(後略)
(11月24日京都新聞「職務で訪れた民家から現金窃盗容疑 京都府警の警部補を起訴」より引用)
窃盗罪とは
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することを言います。
占有が認められるのは、客観的要件としての財物に対する事実的支配(客観的支配)と、主観的要件として財物に対する支配意思が必要です。
例えば、自宅で使っているデスクトップPCは、自宅という限られた人しか入れない閉鎖的な支配領域内にあるため、強い客観的支配が認められます。また、普段使っているのであれば、このデスクトップPCは自分の物だという支配意思も強いと言えるでしょうから、家主に占有が認められます。
本件報道によれば、容疑者である警察官は、民家に置いてあった現金を持ち出したようです。
現金は、民家の中に置いてあったようなので、上述のように家主には当該現金に対して強い客観的支配が認められます。
家主が当該現金のことをはっきり認識していた場合はもちろん、仮に当該現金の所在を忘れていたとしても、自宅内にあるわけですので当該現金を支配する抽象的な意思があったと言えます。
したがって、家主は当該現金を占有していたといえそうです。
そして、容疑者は当該現金を持ち出したようです。
被害者に無断で持ち出したのであれば、占有者である被害者の意思に反して自己の占有に移転したとして、窃盗罪が成立する可能性があります。
犯行時の内心
窃盗罪は故意犯、すなわち自らの行為が犯罪であることをわかった上で行うと成立する犯罪です。
窃盗罪の場合、故意の内容は、他人の財物を窃取することを認識・認容していたことです。
このほかに、窃盗罪が成立するには不法領得の意思が必要であると解されています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用しまたは処分する意思」とされています(最判昭和26年7月13日)。
権利者を排除し他人の物を自己の所有物として振る舞う意思を権利者排除意思といい、経済的用法に従いこれを利用し処分する意思を利用処分意思と言います。
まず、権利者排除意思は、刑罰を科されない使用窃盗と窃盗を区別するための概念です。
使用窃盗とは、他人の財物を無断で一時的に使用することであり、被害者の被る被害が軽微であることから不可罰とされています。
本件では、容疑者は現金を持ち出して返すつもりはなかったようですし、被害者が被る被害は軽微とは言えないでしょうから、権利者排除意思を認めてよいと思われます。
次に、利用処分意思は、毀棄・隠匿の罪と区別するために必要な概念です。
毀棄・隠匿の罪は、物を壊したり隠したりすることで利用を妨げる罪です。
現金の場合、利用処分意思が認められる代表例は、何かの購入代金として使おう思って現金を窃取した場合です。
本件報道では、そのあたりの情報は不明ですが、仮に民家から持ち出した現金を使って何かを購入等していた場合、利用処分意思があったと評価され、窃盗罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
本件では、容疑者は逮捕・起訴されています。
逮捕は、容疑者が逃亡したり、証拠を隠滅したりする恐れがある場合にされる身体拘束で、逮捕中は、単に身体拘束されるだけでなく、捜査機関からの取調べが行われます。
取調べの結果は、調書として文書化されサインするよう求められます。
サインされた調書は、裁判が始まった際に証拠として用いられることがありますから、取調べ前に何をどのように供述するのか、しっかり考えておく必要があります。
もっとも、法律に詳しくない一般の方にとって、どのように受け答えするのが適切か判断することは困難です。
また、逮捕されたショックや不安の中、捜査機関から言われるがまま不利な供述の書かれた調書にサインしてしまうことがあります。
そこで、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
法律のプロである弁護士であれば、事件の内容を踏まえて取調べでどのように受け答えすれば良いのかアドバイスすることができますし、逮捕された不安を軽減して落ち着いて取調べに対応できる可能性が高まります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
逮捕前であれば、初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣する初回接見サービスをご利用できます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回無料法律相談、初回接見サービスをご希望の方は、0120-631-881までお電話ください。
物品を水増し請求させて勤務先の病院に損害を与えた事例
物品を水増し発注し、自身の勤務する病院に損害を与えた事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都府南警察署は、京都市中京区に住む医師の男(47)を背任罪の疑いで逮捕した。
男は、知人の経営する医療機器メーカーに、自身が勤務する京都市南区にあるK病院に対して水増し請求させて、病院におよそ2470万の損害を与えたとして背任罪の疑いで逮捕された。
男は常勤医師として、院内で必要な物品の購入及び管理を院長から任されていた。
男と知人は、水増し請求分を分配しギャンブルに使っていたとのこと。
(2022年11月16日中国新聞デジタル「背任の疑いで再逮捕 広署など」を参考にしたフィクションです)
背任罪とは?
刑法247条が規定する背任罪は、他人のためにその事務を処理する者(①)が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的(②)で、その任務に背く行為(③)をし、本人に財産上の損害を加える(④)犯罪です。
背任罪の主体は、「他人のためにその事務を処理する者(①)」です。
本件の男は、K病院の常勤医師として、院内で必要な物品の購入及び管理を院長から任されていたようです。
したがって、男は背任罪が規定する、「他人のためにその事務を処理する者」にあたる可能性があります。
また、背任罪が成立するためには、図利・加害目的すなわち「自己もしくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的(②)」が必要です。
ここでの「本人」とは背任行為の行為者に事務処理を委託した者を言います。
本件では、K病院の院長が男に物品購入及び管理を頼んでいたようなので、K病院が本人にあたります。
そして男は、「本人」である病院に支払わせた水増し請求分を、知人と分配していたようです。
したがって、自己と知人(第三者)の利益を図ったとして図利・加害目的があったと評価されそうです。
次に、背任行為すなわち「任務に背く行為(③)」が背任罪の成立に必要です。
背任行為について、判例は信任関係の違背による財産の損害と考えているようです。
実際に、大審院の判決では、質物の保管者が信任関係に違背し、質物を債務者に返還することで財産上の損害を与えた事例では、背任行為にあたると判断されました(大判明治44年10月13日、大判大正3年6月20日)。
そのほかにも、信任関係の違背の例としては、銀行員が回収見込みがないに相手に対して、本来得るべき十分な担保や保証なしに、金銭を貸し付ける不良貸付や、保管を任されていた物を壊す行為などが挙げられます。
本件では、男は、院内の物品の発注担当者として、必要な物品を然るべき金額で購入することを病院に任されているにもかかわらず、それに反して知人に水増し請求させ過大な代金を病院に支払わせているので、背任行為があったと言えそうです。
最後に、「本人に財産上の損害を加えたこと(④)」も必要となります。
本件では、本人すなわち病院は、水増し請求により本来払う必要のない2470万円の金額の支払いをすることとなりましたので、男は本人に財産上の損害を与えたと言えそうです。
以上より、本件では背任罪が成立する可能性が高いと言えそうです。
なるべく早く弁護士に相談を
背任罪は被害者のいる犯罪です。
早い段階で被害者との間で示談を成立させ、真摯な謝罪と背任行為により与えてしまった損害を弁償することができれば、不起訴処分になる可能性があります。
仮に不起訴処分にならなかったとしても、判決前に被害者との間で示談を成立させることができれば、量刑が軽くなったり執行猶予付判決が得られるかもしれません。
もっとも、加害者が自力で被害者とスムーズに示談交渉を進められるとは限りません。
逮捕など身柄拘束された場合には、被害者含む外部の人とコンタクトを取ることは困難です。
逮捕されなかった場合にも、被害者は、信任関係を壊した加害者に対して強い処罰感情を有している可能性がありますから、示談交渉に応じてくれないこともあります。
そこで、なるべく早い段階で交渉のプロである弁護士に示談交渉を一任されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、背任事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分の獲得のほか、量刑を軽くしたり執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
神社で休憩中の会社員が被害にあった恐喝事件
神社で休憩中の会社員が被害にあった恐喝事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都府下京警察署は、恐喝罪の疑いで京都市下京区に住む大学生3人を逮捕した。
事件現場は平安時代の歌人を祭る由緒ある神社。
容疑者の大学生等は、遊ぶ金を手にいれるため、お昼休憩で散歩していた会社員の男性(49)を取り囲んで胸ぐらを掴むなど暴行し、恐怖を覚えた男性に現金24万9000円と時計を差し出させた疑いが持たれている。
逮捕された大学生等は容疑を認めているという。
(11月2日 京都新聞「専門学校生を暴行、43歳会社員に金品要求 恐喝や強要など疑い、少年5人逮捕・送検」を参考にしたフィクションです。)
恐喝罪とは
刑法249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する」としています。
まず、恐喝罪の行為である「恐喝」とは、①財産を交付させる手段として行われる暴行又は脅迫であって、②相手方の反抗を抑圧するに至らない程度のもの(相手方を畏怖させる程度で足りる)を言います。
本件では、大学生等は被害男性から金品を巻き上げるための手段として、暴行を加えたとされています(①)。
また、悪意を持った複数人の男性に取り囲まれて胸ぐらを掴まれるなどの暴行を受ければ、抵抗できない状態にまではならなくとも、恐怖を感じるでしょう(②)。
したがって、本件での大学生等の行為は「恐喝」に該当する可能性があります。
続いて、恐喝罪における財物を「交付させた」とは、恐喝行為を受けて怖がった被害者に、本意でなく財物を加害者(またはその仲間)に差し出させることを言います。
本件では、被害男性は、恐喝により恐怖を覚えて金品を差し出したようなのですから、恐喝罪の「交付」があったと評価される可能性があります。
以上より、本件では恐喝罪が成立する可能性があります。
なるだけ早く弁護士に相談を
恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役です。
執行猶予がつくためには、量刑が3年以下であることが条件の1つです。
執行猶予がつかず実刑判決が下った場合、刑務所に拘束されるため大学に通ったり会社に出勤したりすることはできず、解雇や退学処分となることが珍しくありません。
したがって、刑務所での拘束を避けるためには、科される量刑を3年以内に抑えたうえで執行猶予付判決を獲得する必要があります。
執行猶予付判決を獲得するにあたって、被害者との間に示談が成立していることが大きな意味を持ちます。
ただし、金品を巻き上げた当の加害者が、直接被害者と示談交渉を進めることは通常困難です。
被害者は強い処罰感情を有していることは珍しくありませんから示談交渉のテーブルにつくことすらできないかもしれません。
そこで、交渉のプロである弁護士に第三者的立場から示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
加えて、検察官に起訴される前に示談を締結できた場合には不起訴処分となる可能性も存在しますから、できる限り早い段階で弁護士に相談することが極めて重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、恐喝事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を軽くしたり執行猶予付判決や不起訴処分を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。