書店で本を万引きして逮捕された事件

書店で本を万引きして逮捕された事件

万引き

書店で本を万引きして逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事案

大学生のAは、京都市中京区の書店Bで、週刊誌で連載中の漫画の単行本を鞄の中に入れてお金を支払わずに店の外に出た。
一部始終を見ていた私服警備員はAを呼び止めたところ、Aは、「自分は単行本派なので、最新刊が出たらすぐ読みたいとずっと思っていたが財布にお金がなった。どうしても前刊の続きが気になっていたが、週間連載には手を出さずに我慢していたところなので、つい万引きしてしまった。」と万引きしたことを認めた。
書店Bは、京都府中京警察署に通報し、その後Aは逮捕された。
(フィクションです)

窃盗罪とは

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することを言います。
大まかに説明すると、占有とは物の支配や管理のことを指し、占有者は物の所有者を指します。

占有が認められるのは、客観的要件としての財物に対する事実的支配(客観的支配)と、主観的要件として財物に対する支配意思が必要です。
例えば、自宅に置いてあるゲーム機は、自宅という限られた人しか入れない閉鎖的な支配領域内にあるため、強い客観的支配が認められます。
また、すぐ使えるようにテレビの前などの目に入る場所に置いてあるのであれば、このゲーム機は自分の物だという支配意思も強いと言えるでしょうから、家主に占有が認められます。

本件では、Aは、書店で販売されていた単行本を鞄にいれて店外に持ち出したようです。
Aが持ち出した単行本は、書店の中に置かれていたようですので、書店Bには当該単行本に対して強い客観的支配が認められます。
書店Bは、店内に置いてある商品である単行本に対して、自店舗のものだという強い支配意思を有しているでしょう。
したがって、書店Bは、当該単行本を占有していたと言えそうです。

そして、Aは、当該単行本を代金を支払うことなく外に持ち出したようです。
書店Bは、代金を支払わずに商品を店外に持ち出すことを許してはいないでしょうから、Aは、占有者である書店の意思に反して自己の占有に移転したといえます。
したがって、本事案では窃盗罪が成立する可能性があります。

犯行時のAの認識

窃盗罪は故意犯、すなわち自らの行為が犯罪であることをわかった上で行うと成立する犯罪です。
窃盗罪の場合、故意の内容は、他人の財物を窃取することを認識・認容していたことです。
Aは書店に商品として置いてある本を鞄に入れて意識的に店外に持ち出していますから故意は認められそうです。

このほかに、条文には明記されていないものの、窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要であると解されています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用しまたは処分する意思」とされています(最判昭和26年7月13日)。
権利者を排除し他人の物を自己の所有物として振る舞う意思を権利者排除意思といい、経済的用法に従いこれを利用し処分する意思を利用処分意思と言います。

まず、権利者排除意思は、刑罰を科されない使用窃盗窃盗を区別するための概念です。
使用窃盗とは、他人の財物を無断で一時的に使用することであり、被害者の被る被害が軽微であることから不可罰とされています
本件では、Aは、万引きを認めており、持ち出した単行本を書店Bに返すつもりはなかったようです。
仮にあったとしても商品を持ち出されては商売することができなくなるため、被害者の被る損害は軽微とは言えず、権利者排除意思が認められそうです。

次に、利用処分意思は、毀棄・隠匿の罪と区別するために必要な概念です。
毀棄・隠匿の罪は、物を壊したり隠したりすることで利用を妨げる罪です。
単行本の場合、利用処分意思は、単行本を読むつもりだった場合などに認められると考えられます。
本件では、Aは、前刊の続きが気になっていて最新刊がどうしても読みたかったから万引きしたと言っているので、利用処分意思が認められそうです。
以上より本件では、窃盗罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

本件では、Aは逮捕されています。
逮捕中は、ただ身体拘束されるだけでなく、警察官や検察官からの取調べが行われます。
取調べの結果は、調書として文書化されて、被疑者はそれにサインするよう求められます。
サインされた調書は、裁判が始まった際に証拠として用いられることがあり、仮に、証拠として提出された場合、被告人のサインがあるため不利な調書の内容を覆すのは非常に困難です。

したがって、取調べ前に何をどのように供述するのか、しっかり考えておく必要があります。
もっとも、法律に詳しくない一般の方にとって、どのように受け答えするのが適切か判断することは困難です。

そこで、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
法律のプロである弁護士に相談すれば、事件の内容を踏まえて取調べでどのように受け答えすれば良いのかについてアドバイスを得ることができます。
また、逮捕されたことによる不安を軽減して落ち着いて取調べに対応できる可能性が高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗罪を含む豊富な刑事弁護の経験を持つ法律事務所です。
逮捕前であれば、弊所にて初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣する初回接見サービスがございます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回無料法律相談初回接見サービスをご希望の方は、0120-631-881までお電話ください。

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