Archive for the ‘財産事件’ Category
不倫発覚から刑事事件~恐喝罪②
不倫発覚から刑事事件~恐喝罪②
~前回からの流れ~
京都府向日市に住んでいるAさんは、ある日、夫のBさんと知人であるVさんが不倫していることを知りました。
Aさんは怒り心頭となって、Vさんを自宅に呼び出すと、「今回のことを許してほしいと思うなら払えるだけ慰謝料を支払え。そうでなければVさんの職場にでも近所にでも不倫のことをばらまいてそれ相応の代償を払ってもらうから」と言い放ちました。
Vさんが「今は手持ちのお金がない」と言ったところ、Aさんは「では車でATMまで連れて行くからそこでお金をおろして支払え」と言い、Vさんを車に乗せると近くのATMまで連れていき、そこでVさんに預金を引き出させ、慰謝料として300万円を支払わせました。
Aさんの夫であるBさんは、一連の出来事の最中ずっとAさんのそばにいましたが、Aさんの剣幕を見て、特に止めることもせずに黙ってみていました。
その後、Vさんが京都府向日町警察署に相談したことから、Aさんは恐喝罪と監禁罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Bさんも恐喝罪と監禁罪のほう助の容疑で話を聞かれることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・不倫相手への慰謝料請求で恐喝罪?
前回の記事では、恐喝罪という犯罪について詳しく検討しました。
今回の記事では、Aさんが恐喝罪にあたるのかどうかについて考えていきます。
さて、今回のAさんですが、夫Bさんの不倫相手であるVさんに対し、慰謝料を請求しています。
ここで、「不倫相手に対して慰謝料を請求することは正当なことなのではないのか」とも思えます。
確かに、実際に不倫の事実があった場合には、不倫相手に対して慰謝料を請求できる場合があります。
しかし、問題はその請求等のやり方です。
過去の事案では、借金の取り立てについて恐喝罪の成否が争われたものがあります。
貸したお金を返してもらうことや、その催促をすることは正当な行為であるといえるでしょう。
しかし、その事案では、たとえ権利行使の手段として行った恐喝行為であったとしても、その権利の範囲内を超えた行為であったり、その権利行使の方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められるべき程度を超えているような場合には、恐喝罪が成立するとされました(最判昭和30.10.14)。
つまり、不倫の慰謝料を請求するという正当な権利があったとしても、その方法次第では恐喝罪になってしまうおそれがあるのです。
今回のAさんの言動を具体的に見てみましょう。
Aさんは、「不倫を許されたければ慰謝料を払え。さもなくば職場や近所に不倫の事実を広める」という旨をVさんに伝えています。
職場や近所に不倫の事実を広められるということは、Vさんにとって自身の社会的評価を下げる可能性のあること=害を加えられることであるといえます。
ですから、Aさんは害悪の告知=脅迫という手段を用いてVさんに慰謝料=財物を要求していることになり、恐喝行為をしていることになります。
そしてAさんは、その脅し文句に基づき、Vさんから慰謝料として300万円を受け取っています。
不倫の事実を広めることを脅し文句に慰謝料を請求することは、社会通念上一般に認容すべきものとは言い難いでしょうから、Aさんには恐喝罪が成立する可能性が高いと考えられるのです。
京都府・滋賀県の刑事事件にお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
不倫のトラブルが絡んだ刑事事件では、その性質上、なかなか他人には相談しづらいでしょう。
しかし、弁護士が相手であれば、相談内容が漏洩する心配もありませんし、専門知識に基づいて見通しやアドバイスをもらうことができます。
まずはお気軽にご相談ください。
(京都府向日警察署までの初回接見費用:3万7,200円)
不倫発覚から刑事事件~恐喝罪①
不倫発覚から刑事事件~恐喝罪①
京都府向日市に住んでいるAさんは、ある日、夫のBさんと知人であるVさんが不倫していることを知りました。
Aさんは怒り心頭となって、Vさんを自宅に呼び出すと、「今回のことを許してほしいと思うなら払えるだけ慰謝料を支払え。そうでなければVさんの職場にでも近所にでも不倫のことをばらまいてそれ相応の代償を払ってもらうから」と言い放ちました。
Vさんが「今は手持ちのお金がない」と言ったところ、Aさんは「では車でATMまで連れて行くからそこでお金をおろして支払え」と言い、Vさんを車に乗せると近くのATMまで連れていき、そこでVさんに預金を引き出させ、慰謝料として300万円を支払わせました。
Aさんの夫であるBさんは、一連の出来事の最中ずっとAさんのそばにいましたが、Aさんの剣幕を見て、特に止めることもせずに黙ってみていました。
その後、Vさんが京都府向日町警察署に相談したことから、Aさんは恐喝罪と監禁罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Bさんも恐喝罪と監禁罪のほう助の容疑で話を聞かれることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
上記事例のように、不倫発覚からトラブルとなり、それが刑事事件となってしまった、というケースもまま見られます。
今回の記事から複数回、恐喝罪と監禁罪の容疑で逮捕されてしまったAさんと、ほう助犯として取調べを受けているBさんのケースについて取り上げていきます。
・恐喝罪
まず、Aさんが容疑をかけられている犯罪の1つである恐喝罪について詳しく見ていきましょう。
刑法249条(恐喝罪)
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
刑法を見てみると、恐喝罪については以上のように規定されています。
文面だけ見れば非常に短く単純なものではあるのですが、では具体的にどういったことが「恐喝」に当たるのかどうかということは、専門知識がなければ検討することは難しいです。
だからこそ、恐喝罪に限らず、犯罪の容疑をかけられた際には専門知識を有する弁護士に相談することが望ましいのですが、以下では簡単に恐喝罪の内容を説明します。
恐喝罪のいう「恐喝」とは、脅迫または暴行を用いて相手を畏怖させ、財物の交付を要求することを言います。
脅迫は害悪の告知(害悪を加えることの告知)、暴行は有形力の行使を言います。
この時、脅迫または暴行の程度が相手の犯行を抑圧しない程度であることが求められます(もしも相手の犯行を抑圧するほどの脅迫または暴行であった時には、恐喝罪ではなく強盗罪が成立することになります。)。
例えば、ナイフなどの凶器を手にして相手を脅迫し金銭を要求したような場合には、相手はそれに対して反抗することはできないと考えられますから、恐喝罪ではなく強盗罪が成立すると考えられます。
そして、恐喝して「財物を交付させた」とは、先述の恐喝行為によって畏怖した相手が処分行為をすることで、その財物の支配(占有)を得ることを言います。
つまり、恐喝罪が成立するには、恐喝行為と交付行為の間に因果関係がなければならないことになります。
例えば、恐喝行為を受けたものの、被害者が全く畏怖しておらず、逆に恐喝をしてきた者を憐れんで金銭を渡してやった、という場合には、恐喝行為と財物の受け渡しの間に因果関係がないことになりますから、恐喝罪は成立せず、恐喝未遂罪が成立するにとどまることになります。
なお、恐喝行為をしたものの、財物の交付まで達成されなかった場合には、恐喝未遂罪となります。
恐喝未遂罪となった場合には、「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる」という刑法43条の規定により、恐喝罪が成立した時よりも刑罰が減軽される可能性があります。
では、今回のAさんはこの恐喝罪にあたるのでしょうか。
次回の記事で詳しく当てはめていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、恐喝事件の取り扱いももちろん行っています。
逮捕されてしまっている方にも安心して、かつ迅速にご相談いただけるように、初回接見サービスなどのお問い合わせを24時間365日いつでも受け付けています(0120-631-881)。
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(京都府向日町警察署までの初回接見費用:3万7,200円)
改元詐欺事件で自首②
改元詐欺事件で自首②
~前回からの流れ~
Aさんは、京都市伏見区に住んでいる高齢者Vさんの元を訪れ、「私はX銀行の銀行員です。改元される影響で、現在お使いのキャッシュカードが利用できなくなります。更新手続きを行いますので、いったんカードを預ります。更新手続きに必要になるので、暗証番号も教えてください」と言い、Vさんからキャッシュカードと暗証番号の情報を受け取りました。
しかし、Aさんは銀行員でもなんでもなく、改元に便乗してキャッシュカードをだまし取り、お金を手に入れようと実行に移しただけでした。
その後、AさんはVさんのキャッシュカードを利用してX銀行のATMでVさんの口座から現金を引き出したのですが、ニュースで改元詐欺が取り上げられているところを見て、自分も逮捕されたり刑務所に入ったりすることになるのではないかと怖くなりました。
そうであれば自首をして謝りたいと考えたAさんは、刑事事件に強い弁護士に自首について相談することにしました。
(※平成31年4月11日NHK NEWS WEB配信記事を基にしたフィクションです。)
・自首
前回の記事では、改元詐欺について、そしてAさんに詐欺罪だけでなく窃盗罪も成立する可能性があることについて触れました。
Aさんは改元詐欺をしてしまい、自首を考えているようです。
今回の記事ではこの「自首」について触れていきます。
刑法42条1項
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
自首は、犯罪が発覚する前、もしくはその犯罪の犯人が誰であるのか発覚する前に犯人が自ら捜査機関に犯人であることを申し出ることを言います。
世間一般のイメージでは、何か犯罪をした人が自ら警察などの捜査機関に出頭することを自首であるとされているかもしれませんが、自首は犯罪自体かその犯罪の犯人(被疑者)が発覚する前に自発的に申告をしなければ成立しません。
上記条文の「捜査機関に発覚する前に」とはそういうことなのです。
ですから、例えばAさんの事例でいうと、すでにVさんが京都府伏見警察署に被害申告をしており、改元詐欺事件として捜査が始まっており、さらにAさんが被疑者として捜査線上に上がっていたような場合には、Aさんが自発的に警察署に出頭したとしても自首は成立しないということになります。
つまり、Aさんが自首を成立させるためには、改元詐欺事件が発覚する前に自ら出頭するか、改元詐欺事件の被疑者としてAさんが捜査線上に上がる前に出頭することが必要になるのです。
・自首のメリット
ではそもそも、自首が成立することによってどういったメリットがあるのでしょうか。
刑法の条文には、「その刑を減軽することができる」と書いてあります。
つまり、自首の成立によって、最終的に受ける刑罰が減軽されることが期待できるのです。
ただし、ここで注意しなければならないのは条文上は「することができる」という表現になっているため、自首が成立したからといって必ずしも刑罰の減軽に繋がるわけではないということです。
自首が成立するかどうかのタイミングや、自首後の対応の仕方、自首をしたという事情の主張を含め、弁護士に詳しく相談してみることがおすすめです。
また、自首のメリットはそれだけではありません。
自首をするということは、自ら罪を認めて捜査機関に申し出るということですから、逃亡するおそれや証拠隠滅をするおそれがないと主張する事情の1つとなります。
これにより、自首をしたということは逮捕や勾留といった身体拘束を避けるために有利に働くことが考えられるのです。
・自首にならない出頭はメリットがない?
では、先ほど触れたような、犯罪が発覚して被疑者として特定された後に自ら出頭するような、自首にはならない出頭にはメリットがないのでしょうか。
実は、自首が成立しなくとも、罪を認めて自ら申し出てきたという事情は、逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを主張したり、情状酌量の余地がある旨を主張したりする事情となりえます。
ですから、「自首が成立しないならメリットはない」と決めつけず、まずは弁護士に手続きを含めて詳しい話を聞いてみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士による初回無料の法律相談を行っています。
自首や出頭を考えているという方も、まずは弁護士の法律相談を受けることによって、その後の流れや見通しを把握しながら自首や出頭に臨むことができます。
弁護活動をご依頼いただいた場合には、弁護士に逐一助言をもらいながら対応していくことも、場合によっては弁護士と一緒に自首・出頭をしてもらうこともできます。
改元詐欺事件などの刑事事件で自首や出頭を迷っている方は、遠慮なく弊所弁護士にご相談ください。
(お問い合わせ:0120-631-881)
改元詐欺事件で自首①
改元詐欺事件で自首①
Aさんは、京都市伏見区に住んでいる高齢者Vさんの元を訪れ、「私はX銀行の銀行員です。改元される影響で、現在お使いのキャッシュカードが利用できなくなります。更新手続きを行いますので、いったんカードをこちらで預ります。更新手続きに必要になるので、暗証番号も教えてください」と言い、Vさんからキャッシュカードと暗証番号の情報を受け取りました。
しかし、AさんはX銀行の銀行員というわけではなく、改元に便乗して嘘をついてキャッシュカードを騙し取り、お金を手に入れようと実行に移しただけでした。
その後、AさんはVさんのキャッシュカードを利用してX銀行のATMでVさんの口座から現金を引き出したのですが、ニュースで改元詐欺が取り上げられているところを見て、似たようなことをした自分も京都府伏見警察署に逮捕されたり刑務所に入ったりすることになるのではないかと怖くなりました。
そうであれば自首をして謝りたいと考えたAさんは、刑事事件に強い弁護士に自首について相談することにしました。
(※平成31年4月11日NHK NEWS WEB配信記事を基にしたフィクションです。)
・改元詐欺
今年の5月から元号が改められ、改元されることになりますが、その改元に便乗した詐欺、いわゆる改元詐欺が広まっているようです。
改元詐欺では、上記の事例のAさんのように、改元によってカードや口座が利用できなくなる、改元の際には更新が必要だなどと言ってキャッシュカードやクレジットカード、通帳などをだまし取る手口が用いられることが多いようです。
改元詐欺は、刑法上の詐欺罪にあたる犯罪です。
刑法246条1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
改元詐欺は、改元に便乗して嘘の情報で相手を騙し、騙されたことによって相手がキャッシュカード等を引き渡すという流れをたどりますから、詐欺罪が成立する要件を満たすことになると考えられるのです。
そして、今回のAさんの改元詐欺の流れの中で、AさんはVさんから騙し取ったキャッシュカードを利用して、Vさんの口座から現金を引き下ろしていますが、この行為についても犯罪が成立することが考えられます。
騙し取ったキャッシュカードを利用して現金を引き出した場合、銀行に対する窃盗罪が成立する可能性が出てきます。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
銀行のATMに保管されている現金は、銀行が管理・支配しているものです。
窃盗罪は、他人が管理・支配しているものをその相手の意志に反して奪ってしまうという犯罪です。
今回のAさんのように、騙し取ったキャッシュカードを利用して預金を下ろす行為は、銀行の管理・支配するお金を不正に引き出す行為となります。
ですから、自分で改元詐欺をしてその騙し取ったキャッシュカードを利用して預金を引き出した場合に限らず、詐欺事件でいわゆる「出し子」をした場合にも、銀行に対する窃盗罪が成立する可能性があるのです。
改元詐欺は、全国的に被害が出始めている詐欺の手口です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、全国に13の支部展開を行っている刑事事件専門の法律事務所です。
改元詐欺事件の被疑者として捜査されることとなって不安を抱えている方、ご家族・ご友人が逮捕されてしまってお困りの方は、まずは弊所弁護士までご相談ください。
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試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?④
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?④
~前回からの流れ~
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※平成31年4月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・Aさんの事例と窃盗罪・詐欺罪
では、Aさんの事例に戻りましょう。
事例ではAさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてはいますが、Aさんは試着を装って指輪を付けたまま持ち逃げしていることから、今まで見てきた詐欺罪の、人を騙して財物を渡させる、という行為に当てはまるのではないでしょうか。
ここで、詐欺罪の成立に必要な条件とAさんの行動を照らし合わせてみましょう。
前回の記事でも触れたように、詐欺罪は①「人を欺」き、②それに基づいて相手が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて相手が処分行為をし、④それによって「財物」の占有が移転、⑤財産的損害が生じることによって成立します。
Aさんが本当は指輪を持ち逃げするつもりであるのに試着を装って店員に指輪の試着を申し出たことは、①の「人を欺」く行為と言えそうです。
指輪の持ち逃げという本当の理由を知っていれば、店員側も指輪の試着を許可しなかったと考えられます。
そして、店員はAさんの試着をしたいという理由を信じて=錯誤に陥っていますから、②の要件も満たすと考えられるでしょう。
問題になるのは次に続く③④です。
③は錯誤に基づいた処分行為、④は処分行為による財物の占有の移転、となるのですが、今回のAさんの事例では、指輪の試着の際、すぐそばに店員はついていたようです。
すぐそばに指輪を管理している店員がついている状況から、店員がAさんに指輪を引き渡し、その事実上の支配をAさんに移したとは考えにくく、すなわち、店員による処分行為がないと考えられるため、③④の要件を満たさないと考えられるのです。
Aさんは店員から少し離れる際に、電話がかかってきたフリをして距離を取っているようですが、この嘘は店員に指輪を引き渡させるように動機づけるためのものとは言えないでしょうし、これによって店員が指輪の事実上の支配をAさんへ渡したというわけでもありません。
実際に、店員と距離を取っていたとはいえAさんが店から逃げてすぐに店員が通報を行っていることからも、店員が全くAさんを気にしておらず、指輪の支配をAさんに渡してしまっていたということではなさそうですから、やはり詐欺罪に必要な①~⑤の要件を全て満たすことはなさそうです。
ではAさんに成立する犯罪は何かというと、逮捕容疑である窃盗罪が考えられます。
繰り返しになりますが、窃盗罪は相手の意思に反して財物の占有を自分に移してしまう犯罪です。
先ほど詐欺罪について検討した際に触れたように、指輪を占有していた店員はAさんに対して指輪の占有を移したわけではありません。
ですが、Aさんは勝手に指輪を持ち逃げ=指輪を自分の占有下に置いたのですから、窃盗罪が成立すると考えられるのです。
なお、では店員を騙して試着をして持ち逃げをする、というケースでは必ず詐欺罪ではなく窃盗罪となるのかというと、そうではないこともあります。
例えば、持ち逃げをするつもりで試着を頼み、別の店員に試着したものはすでに買い取っている、もともと自分の物だ、などと言って店を出て持ち逃げをしたような場合には、人を欺く行為や店員の処分行為が認められるとして詐欺罪になる可能性も考えられます。
つまり、似たようなケースであっても必ずしも詐欺罪が成立せずに窃盗罪になるとは限らず、事案の細かな点を突き合わせていく必要があるということです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が年中無休で刑事事件のご相談を承っています。
窃盗事件で逮捕されてしまった方、詐欺事件の容疑をかけられてしまった方は、お問い合わせ用フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
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試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?③
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?③
~前回からの流れ~
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
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・窃盗罪と詐欺罪の違い
前回までの2回の記事で、窃盗罪と詐欺罪がどういった犯罪であるのか詳しくみてきました。
では、この2つの犯罪は具体的にどういった部分が異なるのでしょうか。
窃盗罪と詐欺罪の2つの犯罪の大きな違いは、財物の占有(事実上の支配)の移転の際、相手方の処分行為があるかないかという点です。
窃盗罪は、財物の占有者、つまり財物を事実上支配している人の意思によらずにその支配を自分の方へ移してしまう犯罪です。
それに対して、詐欺罪は、相手を騙して相手方の錯誤に基づいた処分行為によって財物の占有が移転しますから、財物の占有の移転に際して相手方の行為が挟まる形になります。
つまり、窃盗罪と詐欺罪は財物の占有の移転の仕方に違いがあるということになります。
こうしたことから、窃盗罪が「奪取罪」、詐欺罪が「交付罪」と分類されています。
また、窃盗罪と詐欺罪では、法定刑が全く違うことにも注意が必要です。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
窃盗罪であれば、略式罰金手続による正式裁判の回避も考えられるのですが、詐欺罪となると懲役刑しか規定されていませんから、詐欺罪で起訴される場合には、法廷に立って正式裁判を受けることになります。
100万円以下の罰金であれば、略式罰金手続という手続きに基づき、罰金の納付によって刑事事件を終息させることができますが、詐欺罪には罰金の規定がないため、この略式罰金手続を利用することはできないのです。
そして、詐欺罪で有罪となるということは、執行猶予がつかなければ刑務所へ入ることになります。
これらも、窃盗罪と詐欺罪の大きな違いの1つと言えるでしょう。
なお、こうした刑罰の重さの違いもあることから、窃盗罪で処罰されるべきである事案で詐欺罪として処罰されるような事態は避けなければなりません。
成立する犯罪が窃盗罪なのか詐欺罪なのかという事案では、特に慎重に検討しなければなりません。
しかし、刑事事件の知識・経験がない一般の方のみでこうした検討をすることは困難ですし、そもそも事案を聞いて「もしかしたら成立すべきは詐欺罪ではなく窃盗罪の方なのではないか」と思うことすら難しいのが現実でしょう。
だからこそ、窃盗事件や詐欺事件に関わらず刑事事件の容疑をかけられてしまったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談することで、自分たちだけでは気づけなかった可能性に気づけたり、判断できなかった見通しが見えたりする可能性も出てきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回無料の法律相談も行っています。
初回無料だからこそ、お気軽にご利用いただけます。
逮捕・勾留された方向けの初回接見サービスでも、当事者ご本人と弁護士が直接話すことができます。
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試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?②
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?②
~前回からの流れ~
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
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・詐欺罪ってどんな犯罪?
前回の記事では、窃盗罪がどういった犯罪なのか詳しく確認しました。
では、次に詐欺罪がどういった場合に成立する犯罪なのか確認してみましょう。
刑法246条1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、①「人を欺」き、②それに基づいて相手が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて相手が処分行為をし、④それによって「財物」の占有が移転、⑤財産的損害が生じることによって成立します。
詐欺罪の条文と突き合わせると、①②部分が「人を欺いて」、③④部分が「財物を交付させた」という部分に対応することになるでしょう。
① 「人を欺」き
詐欺罪の言う「欺」くという行為は、一般人に財物を処分させるような錯誤(=勘違い、誤信)に陥らせることを指します。
また、「欺」く行為については、その財物の処分の判断に際して基礎となる重要な事項を偽ることであるとされています。
つまり、その事項が嘘であれば財物の交付をしなかっただろうという重要事項を偽れば、詐欺罪の言う「人を欺」く行為になることになります。
② ①に基づいて相手が錯誤に陥り
「錯誤」とは、事実と認識が一致しないことを言い、簡単に言えば勘違いや誤信をすることを言います。
詐欺罪においては、①の「欺」く行為によって騙され、嘘を信じて財物を交付する(処分する)ように動機づけられてしまった場合に錯誤に陥ったということができるでしょう。
③ ②の錯誤に基づいて相手が処分行為をし
ここでいう処分行為とは、対象となっているその財物を処分する意思をもって財物を処分することをいいます。
詐欺罪の条文にある「財物を交付させ」る、つまり、「財物を相手に引き渡す」という処分を、騙されたことによる勘違いに基づいて行ってしまうということが必要とされます。
反対に言えば、たとえ相手に財物を引き渡したとしても、それが②の錯誤に基づく行為でなかった場合には、この③の要件を満たさず、詐欺罪は成立せず、詐欺未遂罪が成立するにとどまるということになります(例えば、嘘には騙されなかったものの、詐欺をしようとする人を憐れんで騙されたフリをしてお金を渡すなど。)。
④ ③によって「財物」の占有が移転
前回の窃盗罪の記事で説明した通り、「占有」とは、その物を事実上支配していることを指します。
つまり、詐欺罪では、③の処分行為によって引き渡された財物の事実上の支配が、相手方から詐欺を行った人へ移らなければならないということになります。
⑤ 財産的損害が生じる
前回の記事でも取り上げた通り、詐欺罪は財産犯と呼ばれる、財産に対する犯罪の1つです。
そのため、詐欺罪の成立には財産的損害が発生したことが必要であるとされています。
詐欺罪の場合、騙されなければ渡さなかっただろう財物・財産を引き渡してしまっていることから財産的損害が発生するといえます。
前回の記事で取り上げた窃盗罪も細かい部分が多かったと思いますが、詐欺罪も条文は短いものの、成立にはこのような条件が必要となっているのです。
窃盗罪・詐欺罪に限らず、犯罪は条文だけ見てもどの成立するのか否かが分からないことも多いです。
そういった専門知識や経験が必要な判断は、専門家である弁護士に任せましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が窃盗事件・詐欺事件のご相談にも多く対応しております。
京都の窃盗事件・詐欺事件にお困りの際は、まずは弊所弁護士までご相談ください。
次回は窃盗罪と詐欺罪の具体的な違いについて触れていきます。
(お問い合わせフリーダイヤル:0120-631-881)
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?①
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?①
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※平成31年4月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
今回の事例のAさんは、指輪を試着したまま逃走して宝飾店から指輪を奪っています。
Aさんには何らかの犯罪が成立するだろうということは明らかですが、いったいどういった犯罪が成立するのでしょうか。
Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されているものの、ここで、Aさんは試着中に電話がかかってきたフリをして店員から逃げていることから、「嘘を言って持ち逃げをしていることになるのだから詐欺罪になるのではないか」と考える方もいるかもしれません。
窃盗罪も詐欺罪も、いわゆる財産犯と呼ばれる財産に対する犯罪ですが、窃盗罪と詐欺罪はどういったことが異なり、Aさんに成立すると考えられる犯罪はどちらなのでしょうか。
窃盗罪と詐欺罪、それぞれを細かく確認しながら検討していきます。
・窃盗罪はどんな犯罪?
まずは窃盗罪がどういった場合に成立する犯罪なのか確認してみましょう。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は、①「他人の財物を」、②不法領得の意思をもって、③「窃取」することによって成立します。
このうち、①③は条文に書いてある条件となっていますが、②はそれらに加えて必要な意思であると言われています。
①「他人の財物を」
窃盗罪のいう「他人の財物」とは、他人が事実上支配したり、管理したりしている財物のことを指します。
この事実上の支配のことを、法律用語で「占有」と言います。
つまり、他人が占有している財物が窃盗罪の対象となっているのです。
②不法領得の意思をもって
不法領得の意思とは、一般には、他人を排除して自分がその物の所有者であるようにふるまい、その物の経済的な用法に従ってその物を利用・処分する意思のことを指します。
例えば、お金を盗んで使おうという場合には、盗んだお金について自分の所有しているお金と同様に、お金を利用しようという意思があると言えますので、不法領得の意思があると言えます。
③「窃取」する
窃盗罪の「窃取」とは、その物を占有している人の意思に反してその占有を排除し、その物を自分の占有下に置くことを指します。
この①②③を窃盗をするという認識を持ちながら行った場合に、窃盗罪が成立するのです。
つまり、窃盗罪は対象物を利用したりする目的で、対象物を事実上支配している人の意思に反して対象物を自分の支配下に置いてしまう犯罪といえます。
万引きなどでも取り上げられることも多く、刑事事件の中でも多くを占める窃盗罪ですが、詳しく見ていくと成立にはこのような細かい条件が必要とされていることが分かります。
さらに細かい条件や、特定の状況で考えなければならない事項も存在することから、よく聞く犯罪だからと油断することなく、窃盗罪の容疑をかけられたらますは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に取り扱っている弁護士が初回無料法律相談や初回接見サービスを通して、窃盗事件にお悩みの方のサポートを行っています。
まずは遠慮なく、0120-631-881までお電話ください。
専門スタッフがご相談者様に応じたサービスをご案内いたします。
次回の記事では詐欺罪について取り上げます。
滋賀県高島市の車両保険詐欺事件
滋賀県高島市の車両保険詐欺事件
滋賀県高島市に住んでいるAさんは、自分の所有している自動車が高級車であることから、近所に支店がある保険会社Vの車両保険に入っていました。
ある日Aさんは、わざと自分で車を傷つけ、修理費を水増しすることで多く保険金をもらって得をすることを思いつきました。
そこで、知り合いの修理業者Bさんにこの話をもちかけ、協力して保険金を多くもらえるように計画を立てました。
そしてAさんは、わざと自損事故を起こし、その後Bさんのところに車を修理に持ち込み、Bさんは実際にかかった修理費用よりも100万円以上多い金額を請求書に記載しました。
Aさんはこの請求書を保険会社Vに提出し、保険金を請求し、保険会社VからAさんに保険金が支払われることになりました。
しかし、それに味を占めたAさんとBさんが、数か月後に再度同じ手口で保険会社Vに保険金を請求したところ、保険会社Vが不審に思い、滋賀県高島警察署に相談しました。
そこから捜査が開始され、AさんとBさんは詐欺罪と詐欺未遂罪の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・車両保険詐欺
上記事例のAさんは、車両保険を利用した保険金詐欺事件を起こしています。
保険金詐欺と聞くと、自分の怪我の治療費を水増しして請求する手口のものが思い浮かばれやすいかもしれませんが、Aさんのように車両保険を悪用した保険金詐欺事件も多く起こっています。
車両保険は、自分の持っている自動車が傷ついてしまった時のための保険です。
保険会社や保険の種類によっても異なりますが、自損事故による自動車の破損に対しても保険金の支払われる車両保険もあります。
今回のAさんは、そうした車両保険を悪用して保険金を得ています。
さて、今回Aさん・Bさんが問われている詐欺罪は、刑法246条に規定されています。
刑法246条1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
簡単に言えば、詐欺罪は人を騙して(「欺いて」)金品等の財物を渡させることによって成立する犯罪です。
詐欺罪の成立は、人を騙すという行為をし、それによって騙された相手が金品等財物を渡す、という流れをたどります。
この「欺」く部分、つまり相手を騙す部分については、その財物を渡させるかどうかを相手が判断する際に重要な部分であることが求められます。
つまり、「この部分が嘘であるならば金品を渡さなかった」という部分が偽られているのであれば、詐欺罪のいう「人を欺」く行為であると言えるのです。
今回のAさんの件を考えてみましょう。
今回のAさんは、保険金を多くもらうためにわざと自損事故を起こしています。
本来、車両保険は自分の車が傷ついてしまった時のために使われるものですから、保険金目当てに故意に起こした事故の損害を支払うことは想定されていません。
さらに、修理費用についても、通常保険会社は実際にかかった修理費用を支払うはずですから、水増しされた分の修理費用を支払うことも考えられていないと思われます。
ですから、もし保険会社Vが最初からAさんの起こした事故が保険金目的のわざと起こした事故であり、さらにその修理費も水増しされたものであると分かっていれば、Aさんに保険金を支払うことはなかったと考えられます。
こうした事情から、Aさんは保険会社Vを「欺い」たと考えられます。
そして、今回保険会社VはAさん・Bさんの嘘を信じて保険金を交付していることから、Aさん・Bさんには詐欺罪が成立すると考えられるのです。
保険金詐欺事件では、事案によっては被害額が高額となる場合もあります。
詐欺事件では、被害額が高額になれば、起訴され刑事裁判となる可能性も上がります。
先ほど掲載した条文を見ていただければ分かる通り、詐欺罪には罰金刑の規定がなく、起訴されるということは法廷に立って刑事裁判を受けるということに直結します。
起訴されないように動くにしても、起訴されたとして刑事裁判をスムーズに進めるにしても、専門家のフルサポートが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件も含む刑事事件を専門に取り扱っています。
警察での捜査段階から、刑事裁判が終わるまで、刑事事件に強い弁護士が一貫して丁寧に対応を行います。
滋賀県の保険金詐欺事件、車両保険に絡んだ詐欺事件にお困りの際は、まずは弊所弁護士にご相談下さい。
~お問い合わせは0120-631-881まで~
滋賀県長浜市で窃盗 少年逮捕
滋賀県長浜市で窃盗 少年逮捕
滋賀県長浜市の公立高校に通っているA(17歳)は、体育の授業中、授業をさぼって更衣室に侵入し、授業を受けている同級生のカバンに入っていた財布を盗み、学校の近くにあるゲームセンターで、その財布に入っていたお金で遊んでいたところ、授業中の時間なのにゲームセンターにいることを不審に思った店員から通報され、駆けつけた滋賀県長浜警察署の警察官から職務質問をされ、持っていた財布を任意で提出しました。
警察官が財布の中身を確認したところ、Aとは別の生徒の身分証明書が入っていたため、警察官から問い詰められたAは、財布を盗んでしまったことを自白したため、警察官から窃盗罪の容疑で緊急逮捕されてしまいました。
滋賀県長浜警察署から逮捕の連絡を受けたAの両親は、Aが今後どのような処分を受けることになるのか心配になり、少年事件に強い、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです。)
~窃盗罪以外に犯罪が成立するか~
今回の事例のAは、同級生の財布を盗んでいるので、刑法235条に規定されている窃盗罪に当たる行為をしてしまったことになります。
では、Aはその後財布に入っていた現金を使用していますが、この行為は罪に問われるでしょうか。
Aが使用した現金は、Aが窃取して占有している財布の中に入っていたものですから、「自己が占有する他人の物」を処分したことになり、横領罪(刑法252条1項)が成立するように思えます。
しかし、Aは財布に入っている現金も含めて窃取しており、当然窃取した段階で財布に入っている現金を使用することも考えていたということができます。
このように、通常窃盗罪が成立する場合、その窃取した被害品を処分することは当然の帰結として考えられるため、その後の処分は処罰せず、窃盗罪のみで処罰するというのが一般的です。
この場合の窃取後の処分行為のことを専門的には「不可罰的事後行為」といいます。
したがって、本件のAの場合、現金を使用したことについては別途犯罪を構成することはなく、不可罰的事後行為として処罰されず、窃盗罪のみが成立することになります。
~少年事件手続(捜査)~
本件のAは窃盗罪の容疑で緊急逮捕されています。
緊急逮捕とは、重大犯罪でかつ緊急を要する場合に、逮捕状を示すことなく行う逮捕手続ですが、その後の身体拘束に関する手続きについては、通常の逮捕手続によった場合と異なることはありません。
成人の方の事件の場合には、逮捕に引き続き「勾留」という手続きが採られるのが一般的です。
少年事件でも勾留が採られることは変わりませんが、成人事件と違い、勾留の要件が加重されています。
具体的には、少年を勾留するためには成人事件の勾留の要件に加えて「やむを得ない場合」に当たることが必要とされています(少年法48条1項)。
もっとも、実際上は検察官が勾留請求をした場合、やむを得ない場合に当たるかどうかについては慎重に判断されることなく、勾留が決定されることが多いです。
そこで、裁判官に対して「やむを得ない場合」に当たるかどうかの慎重な判断を促し、さらに勾留の理由についても乏しいこと等を主張し、早期に釈放を求めていくことが必要です。
そのためには、少年事件に詳しい弁護士に依頼することが一番です。
早期の身体解放を目指したい場合には、少年事件を多く扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご依頼下さい。
~少年事件手続(家裁送致後)~
少年事件の特殊なところは、どのような事件であれ、家庭裁判所に送致されるところです。
家庭裁判所に事件が送致されると、捜査とは違う「調査」が行われます。
この調査に関しては、身体拘束せずに行う「在宅調査」と身体拘束を伴って調査を行う「観護措置」の2パターンがあります。
観護措置が採られた場合には、通常4週間、少年鑑別所に収容されて調査を受けることになります。
相当な長期間身体を拘束されてしまうことになるので、学校に事件が知られてしまったり、就職している方であれば、職場に事件のことが知られてしまい、退学や免職となってしまう可能性もあります。
そこで、捜査のときと同様に、少年事件に詳しい弁護士に依頼して、早期の釈放を目指してもらいましょう。
また、少年事件では、この調査期間にどのような改善が見られたかが最終的な処分に大きく影響します。
そこで、どのような事情について調査が行われ、どのような活動をしていけば改善を見せられるのかについて専門的なアドバイスを適宜受けていくことが、よりよい調査対応につながっていきます。
本件のAの場合であれば、勾留がついた状態で家庭裁判所に送致されると、観護措置がほぼ採られることになりますので、早めに身体解放に向けた活動をするとともに、調査に向けて反省文の作成などの活動を行っていくことが必要になります。
家庭裁判所送致後は、特に少年事件の特殊なところが出てくるところですので、刑事事件・少年事件を専門に扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご依頼ください。
(滋賀県長浜警察署までの初回接見費用:4万4,060円)