詐欺のような窃盗事件?②

2019-09-05

詐欺のような窃盗事件?②

前回からの流れ~
Aさんは、京都市左京区に住んでいるVさん(84歳)の家を銀行員を装って訪ね、「銀行の者ですが、現在キャッシュカードの悪用が相次いでいるので、システムの変更が必要となりました。それまでキャッシュカードを使用せずに厳重に保管してもらいたいのです」などと言って、Vさんにキャッシュカードを封筒に入れさせ封をさせました。
そして、「開けていないという証拠のために封の部分に印鑑を押してもらいたいので取ってきてください」などと言ってVさんにいったん席を外させ、その隙に偽物のカード状のものが入った別の封筒とVさんのキャッシュカードの入った封筒をすり替えました。
さらにVさんに「システムの変更に必要です」と言ってキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、「2週間程度でシステム変更のお知らせをしますので、それまでカードはこのまま封筒に入れておいて使わないでください」と言ってVさん宅を後にしました。
後日、いつまでたっても連絡がこないと不審に思ったVさんが封筒を確認すると、偽物のカードが入っていたため、京都府下鴨警察署に通報。
捜査の結果、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月2日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・詐欺のような窃盗事件?

前回の記事では、今回のAさんのケースにかかわりがあると考えられる2つの犯罪、窃盗罪詐欺罪を取り上げました。
今回の記事では、具体的にAさんのケースがなぜ窃盗罪に問われたのか、検討していきます。

前回の記事でも取り上げたように、窃盗罪詐欺罪はそれぞれ刑法に規定されている犯罪です。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

窃盗罪詐欺罪は、どちらも財産に対する犯罪ですが、窃盗罪は相手の意思に反して物を自分の管理・支配下におくことで成立し、詐欺罪は相手をだますことで相手の意思で財物を引き渡させることで成立する点に違いがあります。
この点を頭に置きながら、今回のAさんのケースを見てみましょう。

Aさんは、たしかにVさんに銀行員を装ってシステム変更のためにキャッシュカードの保管と暗証番号が必要だという嘘をつき、Vさんをだましています。
ここだけ見ると、人をだましているのだから詐欺罪のようにも思えますが、AさんはVさんにキャッシュカードを引き渡させているのではなく、Vさんが印鑑を取りに行っている間にカードの入った封筒をすり替えることでキャッシュカードを取っています。
つまり、Aさんのケースでは、AさんはVさんのことをだましてはいますが、キャッシュカードをVさんの意思で「交付させ」ているのではなく、Vさんの意思に反して奪い取ってしまったということになります。
ですから、Aさんには詐欺罪ではなく窃盗罪が成立すると考えられるのです。

・詐欺のような窃盗事件の量刑

窃盗罪詐欺罪では、その刑罰に罰金刑のみの規定がある分、窃盗罪の方が軽い刑罰の定められている犯罪であるといえます。
詐欺罪の場合、刑罰として定められているのが懲役刑のみですから、罰金刑のみで処罰する規定がない=起訴されるということは必ず正式な刑事裁判を受けることになり、そこで有罪となれば執行猶予が付かない限り刑務所へ行くことになるのです。

では、詐欺罪で起訴されれば必ず刑事裁判になるのであれば、詐欺罪にならないように、Aさんのような詐欺のような窃盗事件を起こせば軽い処分で済むのでしょうか。
たしかに、窃盗罪は先ほど触れたように罰金刑のみで処罰することが可能であり、万引きなどの軽微な窃盗事件では、事件にもよりますが不起訴処分や略式罰金(罰金を支払うことで事件を終了させる手続き)となる場合も多いです。

しかし、窃盗罪であれば必ず不起訴や罰金刑で終了するわけではありません。
条文にもある通り、窃盗罪にも懲役刑は規定されており、個々の窃盗事件の被害額や犯行態様といった様々な事情を考慮して科せられる刑罰が決められます。
特に今回のような、詐欺に近い手段を用いての窃盗事件では、より悪質な犯行態様であるとみなされ、窃盗罪の中でも重く、詐欺罪に近い量刑で判断されることも十分考えられます。
ですから、成立する罪名が窃盗罪だからと言って軽く考えることはせず、まずは弁護士に相談することが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕・勾留された方向けの初回接見サービスや、在宅捜査を受けている方向けの初回無料法律相談を実施しています。
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