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万引きすると何罪?将来に影響は?

2023-11-03

身近な犯罪の一つとして、万引きがあります。
万引きを行った場合、どのような罪が成立するのでしょうか。
今回のコラムでは、万引きについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

Aさんは、京都市東山区にあるコンビニでお菓子を万引きしました。
店を出た直後、Aさんはコンビニの店員に呼び止められ、店長と話しをすることになりました。
その後、店長は京都府東山警察署万引きがあったことを通報し、Aさんは京都府東山警察署の警察官に話を聞かれることになりました。
(事例はフィクションです。)

窃盗罪とは何か?

窃盗罪は、刑法第235条によって定義されています。
この法律には、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
簡単に言えば、他人の財物を無断で取る行為が窃盗罪とされています。

万引きと窃盗罪の関係

一般的には店舗で商品を買わずに無断で持ち出すこ行為を万引きといいます。
しかし、法的にはこの万引き行為は「窃盗罪」に該当します。
つまり、万引きを行った場合、独立した「万引き罪」というものは存在せず、窃盗罪が成立するのです。

今回の事例のAさんは、コンビニで万引きをしていますので、窃盗罪が成立することになります。

この点が一般的な認識と異なる場合が多く、万引きを軽い犯罪と考えがちですが、実際には窃盗罪として法的に厳しく取り扱われます。
窃盗罪の罰則は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
万引きの場合であっても窃盗罪として裁かれる以上、上記のような刑罰が科される可能性があります。
このように、万引きによって窃盗罪が成立した場合、その罰則は決して軽くはありません。

また、万引きをした状況や背景によっては、さらに厳しい罰が科される場合もあります。
例えば、高額な商品を狙った万引きや、転売目的での万引きは、一般的な万引きよりも罰が重くなる可能性があります。

このように、万引き窃盗罪は密接な関係にあり、万引き行為がどのような目的状況で行われたかによって、その後の法的処分が大きく変わることがあります。

万引きと悪影響

会社員が万引きをした場合に、万引きをしたことを会社に知られると、解雇されてしまう可能性があります。
万引きは軽い犯罪だと捉えられがちですが、被害額が高額だったり、世間の目を引くような物珍しい犯罪内容である場合には、万引きであっても報道される可能性が高いです。
報道されると会社に事件のことを知られるリスクがありますし、逮捕された場合には長期間会社に出勤できないことで万引きをしたことや逮捕されたことを会社に知られてしまうおそれがあります。

また、学生が万引きをした場合にも、学校に万引きしたことを知られることによって、退学停学になってしまうおそれがあります。

万引きをすることで、窃盗罪で有罪になった場合には、前科が付くことになりますから、就職転職活動にも悪影響を及ぼす可能性があります。

窃盗罪と罰則

窃盗罪に対する罰則は、刑法第235条に明確に規定されています。
具体的には、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」とされています。

懲役刑と罰金刑どちらが科されるのかは、前科前歴、余罪、被害額などから総合的に判断されます。
例えば、万引きしたものが高額な財物であった場合や、転売目的で万引きした場合、万引き前科がある場合には、科される罰則がより重くなる可能性があります。
また、被害者との示談が成立した場合や、初犯である場合などは、罰則が軽減される可能性も考えられます。

さらに、窃盗罪で有罪となった場合、その後の社会復帰も困難になることが多いです。
具体的には、前科があることが、就職転職の際に悪く評価される可能性が高いです。
企業は前科がある人を進んで取りたがらないでしょうから、就職転職活動が難航するおそれが非常に高く、希望する職種に就けない可能性があります。

事例のAさんはコンビニでお菓子を万引きしていますが、万引きしたものがお菓子であろうと、窃盗罪で有罪になる可能性がありますので、前科が付いてしまうおそれは十分にあります。
被害額が数百円だからといって窃盗罪が成立しなくなるわけではありませんので、上記のように会社の解雇や学校の退学処分、その後の就職転職活動に悪影響を及ぼす可能性は非常に高いです。

たった一度の万引きで将来を棒に振ってしまうおそれがありますので、万引きを軽い犯罪だと捉えるのは極めて危険だといえます。

被害弁償と示談の可能性

万引きなどの窃盗罪の場合は、被害者と示談を締結することで、不起訴処分の獲得を目指せる可能性があります。

万引きの場合、被害者は万引きをした店舗になるので、その店の責任者と示談を締結することになります。
店相手の示談交渉の場合、断られてしまうケースが多いです。
ですが、弁護士が連絡を取り、被害者がしっかりと反省をしていることを伝えることで、示談を締結してもらえる場合があります。
ですので、万引き示談を考えている場合は、弁護士に相談をすることをお勧めします。

転売目的の万引きとその重罪性

万引きが単なる衝動的な行動でなく、転売目的で行われた場合、その罪の重さは一層増します。
転売目的での万引きは、通常の万引きに比べて悪質性が高いと判断される可能性が高く、そのために法的な処分も厳しくなる傾向にあります。

具体的には、転売目的での万引きは、一般的な万引きよりも罰則が重くなる可能性が高いです。
これは、転売によって得られる利益が犯罪を助長すると考えられるため、より厳しい罰が科されるのです。

また、転売目的の万引きは、しばしば犯罪組織との関連が指摘されることもあります。
そのような場合、窃盗罪だけでなく、組織犯罪に関する法律に抵触する可能性も出てきます。
これによって、さらに罰則が重くなるケースも考えられます。

このように、転売目的での万引きは、多くのリスクと重大な法的影響を持っています。
そのため、この種の万引きが疑われる場合は、専門の弁護士のアドバイスが不可欠です。

窃盗罪に強い弁護士の重要性

窃盗罪、特に万引きなどの犯罪に関与した場合、専門の弁護士の支援が非常に重要です。
なぜなら、窃盗罪は一見単純に見えても、多くの法的要素が絡む複雑な犯罪であり、その対応には専門的な知識が必要だからです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、万引きなどの窃盗事件に精通した法律事務所です。
万引き窃盗罪に強い弁護士に相談をすることで、不起訴処分の獲得など、よりよい結果を得られるかもしれません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、無料法律相談を行っています。
万引きで捜査を受けた方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

いたずら電話が犯罪に⁈ 偽計業務妨害罪はどんな罪?

2023-11-01

いたずら電話をかけた場合にどのような犯罪が成立するのか、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

偽計業務妨害罪とは?

偽計業務妨害罪は、刑法第233条に規定されています。
刑法第233条では、偽計業務妨害罪「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。

「業務」と「偽計」の意味
業務: この文脈での「業務」とは、職業や社会生活上反復、継続して行う作業を指します。
例えば、病院の受付や、商店の販売活動などが該当します。

偽計: 「偽計」とは、人を欺く行為や、誤解を利用する行為を指します。
これには、虚偽の情報を提供する、誤った印象を与えるなどが含まれます。

大まかに説明すると、偽計業務妨害罪は、人を欺くことで業務を妨害するおそれがある場合に成立します。

いたずら電話で犯罪に⁈

事例

Aさんは京都市上京区にあるV店に100回以上のいたずら電話をかけました。
後日、Aさんは偽計業務妨害罪の疑いがあるとして、京都府上京警察署の警察官に話を聞かれることになりました。
(事例はフィクションです。)

この事例では偽計業務妨害罪が成立するのでしょうか。

通常、店に電話がかかってくれば、その店の従業員は店に用事があるのだと思い対応するでしょう。
当然、Aさんからのいたずら電話も電話にでるまでは内容がわからないため、店に何らかの用事があってかけてきた電話だと思って電話にでるはずです。
ですので、Aさんがいたずら電話をかける行為は、実際には店に対して用事があるわけではないのに、店側に用事があるかの装い、誤解させていることになります。

かかってくる電話がAさんからのいたずら電話だけとは限りませんから、すべての電話を無視するわけにはいかないでしょう。
100回以上かかってくるいたずら電話にでて、対応をするのにも時間がかかりますし、今後いたずら電話がかかってこないようにするための対策を練るなどの今後の対応も必要になるでしょう。
いたずら電話の対応に割いた時間があれば、客への対応や在庫の管理、新商品の開発などの業務が行えた可能性がありますから、Aさんのいたずら電話は業務を妨害するおそれがある行為だといえます。
偽計業務妨害罪は、偽計行為によって業務が妨害されるおそれがある場合に成立しますから、今回の事例のAさんに偽計業務妨害罪が成立する可能性が高いといえます。

偽計業務妨害罪と刑罰

偽計業務妨害罪は、有罪になると、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
懲役刑が科されるか、罰金刑が科されるのかは、被害の程度や犯罪の重大性、犯人の過去の犯罪歴などによって判断されます。

軽い気持ちでいたずら電話をかけた場合であっても、懲役刑が科される可能性があり、注意が必要です。

示談と弁護活動

偽計業務妨害罪などの刑事事件では、示談交渉などの弁護活動も重要な選択肢となる場合があります。
示談の可能性、その手続き、そして弁護士の役割について解説します。

示談の可能性
偽計業務妨害罪においては、被害者と加害者のあいだで示談を締結することで、不起訴処分を獲得できる場合があります。
示談は双方が納得する内容で締結するため、双方が納得できる条件を探るために示談交渉を重ねる必要があります。

示談手続き
示談を行う場合、加害者と被害者が直接示談交渉をすることもありますが、そのような場合にはトラブルが生じる可能性も考慮する必要があります。
特に、被害者が加害者に連絡先を知られることや直接なやりとりを避けたい場合、加害者が直接示談交渉を行っても示談を断られる可能性が高く、そもそも示談交渉すら行えない可能性があります。
弁護士を入れることで、そういった事態を避けられる可能性がありますので、弁護士を通して示談交渉を行うことが推奨されます。

弁護士の役割
弁護士は、示談交渉を円滑に進めるための専門的な知識と経験を持っています。
また、弁護士は検察官に対して処分交渉を行うことができ、示談を締結できなかった場合でも、不起訴処分の獲得など、より良い結果を得る可能性があります。

注意点と対策

偽計業務妨害罪は、犯罪になるとは知らなかった場合や軽い気持ちでやったとしても成立してしまうおそれがあります。
偽計業務妨害罪に問われないようにするためにも、以下の注意点について常日頃から注意し、対応していくことが重要になります。

注意点
誤解を招く情報の拡散: SNSや口コミでの情報共有は慎重に行いましょう。誤情報が拡散されると、偽計業務妨害罪の成立要件に該当する可能性があります。
業務妨害の可能性: いたずら電話や無用なクレームなど、他人の業務を妨害するおそれのある行為は避けましょう。
意図の確認: 何らかの行為をする前に、その行為が他人の業務にどのような影響を与えるかを考慮することが重要です。

対策
情報の確認: 情報を共有する前に、その情報が正確であるかを確認しましょう。
コミュニケーション: 業務に関わる人々とのコミュニケーションをしっかりと取ることで、誤解やトラブルを防げる可能性があります。
法的な相談: 何か問題が起きた場合は、早めに法的な相談を行い、適切な対応を取ることが推奨されます。

偽計業務妨害罪に強い弁護士

一見些細な行為でも、偽計業務妨害罪が成立してしまうおそれがあります。
犯罪にあたると知らなかったという言い訳は効きませんので、犯罪だと知らずに行った場合でも懲役刑や罰金刑が科される可能性があります。
懲役刑や罰金刑が科されれば前科が付きますので、軽はずみな行動が将来に悪影響を及ぼす可能性は十分にあります。
偽計業務妨害罪にあたるような行為をしてしまったとしても、示談交渉処分交渉などの弁護活動により不起訴処分を獲得できる可能性がありますから、弁護士に相談をすることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、偽計業務妨害罪など、刑事事件に強い法律事務所です。
初回接見サービス無料法律相談も行っていますので、偽計業務妨害罪などの刑事事件でお困りの方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

キャバクラで無銭飲食したらどうなるの?

2023-10-29

キャバクラで無銭飲食をしたとして、詐欺罪の疑いで逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

祇園のキャバクラで246万円分の無銭飲食をしたとして、京都府東山警察署は自称会社経営の男性(50)を詐欺罪の疑いで逮捕した。
男は、最初から支払いの意思がないにもかかわらず、祇園にあるキャバクラ店「まいこ祭り」に入店し、シャンパン数十本を注文した疑いがかけられている。

(2021年4月14日神戸新聞「出所翌日、一晩で63万円の無銭飲食 容疑で男逮捕」を参考にしたフィクションです。)

無銭飲食をすると何罪になる?

本件では、無銭飲食をした男が詐欺罪に問われています。
詐欺罪を規定する刑法246条1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」としています。
「人を欺いて財物を交付させた」というのは、①被害者を欺いて(欺罔行為)、②それにより被害者が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて被害者が交付行為を行い、④その交付行為により財物が行為者に移転する、ということを意味します。

欺罔行為とは?

嘘をつく行為が全て、詐欺罪となりうる欺罔行為となるわけではありません。
詐欺罪となりうる欺罔行為とは、財物の交付に向けて人を錯誤に陥らせることをいい、その内容は財物の交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることであるとされています。

本件では、男は店員に対して「飲み食いした分の料金を払うつもりだ」と明確に嘘をついたわけではなく、店員が勝手に料金を支払ってもらえると勘違いしたようです。
支払の意思がないことを店員に告知しなかったという点をとらえて、本件は不作為による欺罔行為のケースと思われるかもしれません。
※被害者がすでに錯誤に陥っていると知りながら、真実を告げない行為を不作為による欺罔行為といいます。
例えば、生命保険を契約する際に、今までにかかったことのある病気を申告しなかった場合などが、不作為による欺罔行為にあたります。

しかし、常識的に考えれば注文時に代金を支払うと明言しなくても、注文すれば当然、注文した分の代金を後で払うことを意味するでしょう。
したがって、社会通念上、男の行為は注文という作為によって、店員を「男が注文した分の代金を払ってくれる」という錯誤に陥れたということができます。
そして、代金を払ってもらえることは財物を交付(シャンパン等の提供)するうえで、大前提となる重要な事項です。
以上より、代金を支払うつもりがないことを秘してシャンパンを注文した行為は、欺罔行為と言えるでしょう。

実際に、最高裁の昭和30年7月7日決定も、所持金がなく、支払い意思もないのに料亭で宿泊、飲食した行為は、宿泊と飲食をした際に詐欺罪が既遂に達する=支払いの意思なく注文をする行為は欺罔行為にあたると解釈しており、支払い意思のない状態での飲食店での注文は作為による欺罔行為だと認定しています。

欺罔行為に続く因果経過

上述のように、詐欺罪が成立するためには、①被害者を欺いて(欺罔行為)、②それにより被害者が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて被害者が交付行為を行い、④その交付行為により財物が行為者に移転する、という因果経過が必要です。

本件では、代金を支払うつもりがないことを秘してシャンパンを注文し(①)、それにより被害者が注文分の料金を支払ってもらえると錯誤に陥り(②)、その錯誤に基づき被害者が男にシャンパン等を提供しており、これが交付行為に該当します(③)。
そしてこの交付行為によって、シャンパンという財物が被害者から男に移転しています(④)。
したがって、本件では詐欺罪が成立する可能性が高いと言えます。

弁護士に相談を

詐欺罪は被害者のいる犯罪です。
被害者との間で示談を成立することができれば、不起訴処分となる可能性があります。
起訴された場合にも示談が成立していることは、罪の減軽執行猶予付判決の獲得につながる可能性が高いです。

もっとも、本件のように、詐欺罪の容疑がかけられると逮捕されることが少なくなく、逮捕された状態で、示談を進めること非常に困難ですし、被害者が示談交渉に応じてくれるとも限りません。
そこで、弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。
加害者と直接示談交渉することに抵抗を感じる被害者でも、弁護士が相手であれば、示談交渉に応じてくれることは少なくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、詐欺事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分罪の減軽執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

覆面男によるスタンガンを使ったコンビニ強盗事件

2023-10-27

覆面男によるスタンガンを使ったコンビニ強盗事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都市北区の閑静な住宅街にある深夜のコンビニで、覆面を被った男が店員に対しスタンガンを突きつけてレジを開けろと脅して、現金10万円とタバコを奪って逃走した。
事件のタイミングで、店内にいた店員と客に怪我はなかった。
(10月18日 伊勢新聞「鈴鹿でコンビニ強盗 覆面包丁男 現金奪い逃走」を参考にしたフィクションです)

強盗罪とは

本件の現金・タバコのように、他人の財物を奪う行為について、刑法236条1項は、「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」と規定しています。

本件では強盗罪が成立するのでしょうか。

手段としての「暴行又は脅迫」

強盗罪が成立するかどうかを考えるうえで、強盗罪の手段とされる「暴行又は脅迫」の程度が問題となります。
というのは、刑法上、強盗罪の他にも恐喝罪公務執行妨害罪などで「暴行又は脅迫」という要件が課される犯罪類型が存在しています。
それぞれの罪が必要としている「暴行又は脅迫」の程度はそれぞれの罪によって異なります。

強盗罪は、被害者の財産を守る法律である一方で、被害者の生命・身体・自由を守る側面も持っています。
強盗罪における「暴行又は脅迫」は、被害者の反抗を抑圧するほどの強度の「暴行又は脅迫」であると解されています。
したがって、本罪の暴行は、反抗を抑圧するに足りる程度の不法な有形力の行使を意味し、本罪の脅迫は、反抗を抑圧するに足りる程度の害悪の告知を意味します。

問題となった加害者の行為が、被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行又は脅迫であるか否かは、「社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度のものかどうか」という客観的基準によって決せられます(最判昭和24年2月8日)。

この判断は、暴行又は脅迫の態様行為者及び被害者の状況日時や場所などを総合考慮して判断されます。
その中でもとりわけ重視されることが多いのが暴行又は脅迫の態様であり、加害者が殺傷能力の高い凶器を使用した場合には、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の暴行又は脅迫と判断される可能性が高くなります。
なお、暴行又は脅迫が反抗を抑圧する程度に至らない場合については、恐喝罪の成否が問題となります。

本件では、男はスタンガンを突きつけてレジを開けるように要求しています。
スタンガンは、海外では死亡事例も多数報告されている非常に危険な凶器です。
これを突きつけた状態でレジを開けることを要求する行為は、要求に従わなければスタンガンを体に当てるつもりであることを示していると言えます。
スタンガンは命を脅かすおそれがあるわけですから、社会通念上一般に被害者の反抗を抑圧するに足りる程度の害悪の告知、つまり強盗罪が規定する脅迫にあたると推測されます。

「強取」の意味

強取とは、被害者などの反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を手段として財物を奪取することを言います。
本件では、男はスタンガンを突きつけるという、反抗を抑圧するに足りる程度だと思われる脅迫を行った上で、10万円とタバコを奪い取っていますから、「強取」にあたると考えられます。
ですので、本件では強盗罪が成立する可能性が高いと言えます。

ところで、本件では、社会通念上反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫がされたと推測されますが、実際に被害者の反抗が抑圧されたのかは不明です。
例えば、被害者が柔道の有段者で、反抗が抑圧されるまでには至らなかったが、怖いとは思って財物を提供した場合、強盗罪は成立するのでしょうか?

この点について、判例は、社会通念上、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫がなされたが、実際には被害者は反抗が抑圧されなかった場合であっても、その暴行又は脅迫が原因で被害者が怖がって財物を提供した場合に関しても強盗罪が成立するとしています(最判昭和23年11月18日)。
したがって、上記の場合にも、強盗罪が成立する可能性があります。

執行猶予を付けてもらうためには

強盗罪の法定刑は、5年以上の有期懲役であり、非常に重い罪と言えます。
執行猶予がつくためには、裁判で下された刑が3年以下の懲役である必要がありますから、強盗罪の場合、刑の減軽がされない限り実刑判決は避けられません。

それでは、どのような場合に刑が減軽されるうるのでしょうか?
刑が減軽される場合として、被害者との示談が成立しているケースがあげられます。
したがって、強盗罪を犯してしまった場合には、被害者に被害弁償をして反省していることを伝えることで示談を成立させられるかどうかが重要になります。

弁護士に相談を

もっとも、加害者が独力で示談を成立させることは非常に困難です。
強盗罪のような重い刑罰が課される事件では、逃亡の恐れありとして身柄を拘束される可能性が高く、身体拘束を受けている状態では自ら示談交渉をすることはできません。
仮に自由に動けたとしても、被害者が知り合いでない場合には連絡先を知ることは困難ですし、入手できたとしても被害者が自分を攻撃してきた加害者と直接話し合いに応じてくれるでしょうか。

しかし、弁護士に依頼をすることで示談交渉を着実に進められる可能性があります。
また、加害者本人ではなく弁護士に対してであれば、被害者が連絡先を教えて話し合いの応じてくれることは少なくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、強盗事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、執行猶予付判決を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

不法領得の意思って? 転売目的窃盗で逮捕

2023-10-25

ロードバイクを盗んだ疑いで逮捕された事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都市中京警察署は、ロードバイクを盗んだ疑いで京都市内に住む会社員の男を逮捕した。
盗まれた自転車は、世界最大規模の自転車プロ競技大会として知られる「ツール・ド・フランス」で2023年に優勝した選手と同じ型のロードバイクで、100万以上の値がつくとのこと。
逮捕容疑は、京都市内で建設業を営む会社の駐輪場で、同社の代表取締役(58)が所有するロードバイクを盗んだ疑い。
男は盗んだバイクをネットのフリマサイトで売るつもりだったとして逮捕容疑を認めているという。

(2022年12月17日 京都新聞「自転車盗みネット出品→被害者知人発見し購入→担いで現れた容疑16歳逮捕」の記事を参考にしたフィクションです)

窃盗罪とは

窃盗罪について刑法235条は「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪」とする、と規定しています。
「窃取」とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することをいいます。
また、「占有」とは財物の事実的支配や管理のことをいいます。
簡単に説明すると、誰が見ても持ち主がいることが明らかであり、持ち主が自分の物だと意識している場合に占有があるとみなされます。

ある特定の財物を所有している所有者が、事実的に支配している領域内にその特定の財物を置いていた場合、その特定の財物は所有者に占有が認められます。
これは、所有者が事実的に支配している領域内に置かれた物なので、客観的に見ても所有者やその他特定の人物が所有している物だとわかりますし、おそらく所有者に占有の意思もあるでしょう。
ですので、基本的に、事実的に支配している領域内に置かれた物には占有が認められることになります。

本件では、盗まれたロードバイクは、その所有者が経営する会社の駐輪場に置かれていたようです。
ロードバイクの所有者が経営する会社の駐輪場ですので、事件現場の駐輪場はその所有者が事実的に支配している領域内だといえます。
そうであるならば、客観的に見てそのロードバイクは所有者の持ち物ないしは、その会社にいる人が所有している物と推測できるはずです。
また、そのロードバイクは所有者が自分の物だと思っているはずでしょうから、このロードバイクは所有者が占有していたといえるでしょう。

そして、逮捕された会社員は、占有者である持ち主(代表取締役)に無断で売ろうとして持ち去ったようなので、占有者の意思に反して自己の占有に移転したと言えるでしょう。
先ほど窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することと書きました。
ロードバイクは財物にあたりますので、占有者(代表取締役)に無断で自己(逮捕された会社員)の占有に移転させた行為は窃盗罪が成立する可能性があります。

不法領得の意思

条文に明記されていないものの、判例によれば、窃盗罪の成立には「不法領得の意思」、すなわち「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思」が必要とされます(最判昭和26年7月13日、大判大正4年5月21日)。

「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様に」部分を「権利者排除意思」、「その経済的用法に従いこれを利用し又は処分する意思」部分を「利用処分意思」といいます。
なぜ、判例はこのような条文に明記されていない要件を必要としているのでしょうか?

権利者排除意思

権利者排除意思は、窃盗罪使用窃盗を区別するために必要だとされています。

使用窃盗とは、他人の財物を無断で一時使用することであり、被害者の被る被害が軽微であることから不可罰(刑罰を科されない)とされています。
例えば、メモを取る際に他人のボールペンを一時的に使うような場合が使用窃盗にあたります。

上記の例の場合、ボールペンを使用した際に一時的に占有が移転しています。
占有が移転しているのであれば窃盗罪が成立するのではないかと思われるかもしれませんが、メモを取る目的でボールペンを使用したのであれば占有が移転していた時間はごくわずかでしょう。
ボールペンを一時使用した人は自分の物にしようとしたわけではありませんし、ボールペンの所有者が被る被害は極めて軽いといえます。
このように被害者が被る被害が軽微な場合に窃盗罪が成立しないようにするために、権利者排除意思が必要だといえます。

本件では、男はロードバイクを持ち去って転売しようとしており、被害者に返還する気はなかったようです。
被害者が被る被害は軽微だとはいえないでしょうから、本件は使用窃盗にあたらないでしょう。

利用処分意思

利用処分意思は、毀棄・隠匿の罪との区別のために必要だとされています。

毀棄・隠匿の罪は、簡単に説明すると、物を損壊したり隠すことで、利用を妨げる罪です。
例えば器物損壊罪信書隠匿罪などがこれにあたります。
これらの罪は窃盗罪占有侵害行為である点で共通します。
毀棄・隠匿の目的での占有侵害と区別するためにも、利用処分意思の有無で区別する必要があります。

本件では、男は、自己に占有を移転させたロードバイクをネットのフリマサイトで転売つまり処分しようとしています。
転売行為は自分が利用する目的だとはいえませんが、利用処分意思があるといえるのでしょうか。

不法領得の意思における経済的用法の解釈について裁判例は、「ここにいう「経済的用法」とは,その物を本来予定されている用法どおりに用いることを指すものでは必ずしもなく,窃取した財物をその財物として利用する意思があれば不法領得の意思があるといわざるを得ない」としています。(神戸地方裁判所 平成15年10月9日判決)
ロードバイクが本来予定されている用法はロードバイクに乗って走行することでしょう。
しかし、上記裁判例によると、本来の用法どおりに用いるだけでなく利用する意思があればいいと解されますので、本件のように転売目的でロードバイクを盗む行為について利用処分意思があったといえるでしょう。
また、転売する目的でロードバイクを盗んでいますので、毀棄・隠匿の目的にもあたらないと考えられます。

以上により、本件では不法領得の意思の観点から考えても、窃盗罪が成立しそうです。

逮捕された先に待ち受けているのは?

本件では、男は逮捕されて中京警察署にて身柄を拘束されています。
検察官は、勾留の必要があると判断すれば、逮捕後72時間以内に裁判官に勾留請求を行います。
勾留とは逮捕に続く身体拘束であり、最長で20日間拘束される可能性があります。
本件では、逮捕された男は会社員とのことなので、勾留された場合、会社に長期間にわたって出勤することができず、刑事事件を起こしたことが会社の知るところとなり、解雇される可能性があります。

また逮捕されている間、捜査機関は被疑者の取調べを行います。
逮捕されて不安な状態から解放されたいと思うがあまり、捜査機関の言われるままに不利な供述の書かれた調書にサインしてしまうことが少なくありません。
この調書は後の裁判で証拠として扱われますから、不利な供述の調書にサインをすることで、裁判で窮地に陥ることになるかもしれません。

できるだけ早くに弁護士に相談を

上述の通り、勾留された場合の不利益が大きいため、逮捕された場合には勾留されないことが非常に重要となります。
早期に弁護士に依頼することができた場合、弁護士から検察官や裁判官に対して勾留請求に対する意見書を提出することで、勾留を阻止できる可能性があります。
また、逮捕の初期の段階から弁護士のアドバイスを受けることで、逮捕され一人きりとなった不安を軽減し、取調べに適切に対応することができる可能性が高まります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
数多くの事件で勾留を阻止してきた弁護士が検察官・裁判官に対応することで、身柄拘束の長期化を防ぐことができる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

嘘の自白をして冤罪になりかけた事例

2023-10-22

冤罪事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都市中京区の家電量販店でパソコン周辺機器を盗んだとして、窃盗罪の疑いで京都市内の大学に通う大学生の男を逮捕、起訴された事件で、京都地方裁判所は無罪判決を言い渡した。
男は、取り調べの際に犯人は自分だとする供述をしているものの、法廷では無罪を主張したためその自白の信用性が争点となっていた。
男は、法廷で「逮捕されたショックから、早く解放されたいと思い嘘の自白をしてしまった。私はやってない」と主張。
弁護人は、男が犯行時刻に別の場所にいたとするアリバイ証拠を提出していた。
(京都新聞 9月8日「Tシャツ窃盗で無罪判決」の記事を参考にしたフィクションです)

証拠としての自白の重要性

刑事事件では、犯罪を証明する責任は検察官にあります。
したがって、検察官や警察官は、犯罪を証明するため全力で証拠を手に入れようとします。
その中でも、検察官や警察官が特に入手したいと思うのが、自白すなわち犯人が自らのした犯罪を認める供述です。
発生した犯罪について、その詳細を知る犯人の供述は証拠としての価値が非常に高いため、検察官や警察官は、自白を得るために時として違法な取り調べが行われることさえあります。

なお、検察官や警察官は、自白の内容を調書として文書にした後、被疑者にその読み聞かせるなどした上で、署名押印を求めてきます。
これに応じると、裁判で証拠として使用さる可能性があり、もし証拠として使用された場合には覆すのは非常に困難ですから、安易に署名押印しないことが重要です。

本事案では、男子大学生は取り調べの際に、パソコン周辺機器を盗んだのは自分だと嘘の自白をしてしまった上、調書に署名押印した結果、裁判で証拠として使用されたようです。

なぜ嘘の自白をしてしまうのか

そもそもなぜ嘘の自白をしてしまうのでしょうか?

本事案の男子大学生のように、逮捕されると冷静さを失い、「早くこの状況から解放されたい」と思ったり、「認めることで求刑が軽くしてもらえるのではないか」と考えて、やってもいないことをやったと嘘の自白をしまうことがあります。
繰り返しになりますが、自白の内容が嘘であったとしても、調書が作成されてしまいますと裁判で証拠として扱われますし、覆すことは容易ではありません。
ですので、嘘の自白をすることがないように、落ち着いた状態で取り調べに挑むことが重要になります。

なるべく早く経験豊富な弁護士に相談を

嘘の自白をしないためには、可能な限り取り調べ前の段階で弁護士に相談することが望ましいでしょう。
今後待ち受ける手続の見通しや、どのように取り調べに対処すれば良いのかを知っていれば、冷静さを欠いて嘘の自白をすることを防げる場合があるからです。

また、自白獲得のために違法な取り調べを行われる場合には、弁護士から捜査機関に対し直ちにやめるように抗議し阻止する必要があります。

仮に、嘘の自白をしてしまった場合、自白を覆さなければ冤罪で犯罪者となってしまう可能性がかなり高くなります。
それを阻止するためには、自白が真実でないことを証明する証拠を集める必要があります。
有用な証拠を集めるためにも、経験豊富な弁護士に任せた方が良いでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、冤罪事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
経験豊富な弁護士が取り調べ段階からサポートする行うことで、嘘の自白を未然に防いだり、法廷で自白が真実でないことを証明できる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

SNS上で犯罪者だと中傷した名誉棄損事件

2023-10-20

SNS上で特定の人物を「犯罪者で前科もある」などと中傷した名誉毀損事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都市上京区に住むAさんは「Bさんは犯罪者で前科もある」というようなBさんを中傷する内容をSNSに投稿しました。
その後Aさんは上京警察署の警察官に話をきかれ、名誉棄損罪の疑いで逮捕されることになりました。
(事件概要はフィクションです。)

名誉毀損罪とは

刑法230条1項は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」として名誉毀損罪を規定しています。

本罪の対象となる行為は、「公然と事実を摘示して、人の名誉を毀損」することです。

まず、男は「公然と」名誉を毀損したと言えるのでしょうか?

「公然と」というのは、不特定または多数人が認識しうる状態を意味します。
今回の事案では、AさんはBさんを中傷する内容をSNSに投稿しています。
SNSに投稿された内容は不特定の人の目に入ることになりますから、Aさんは「公然と」名誉を毀損したことになりそうです。

次に、男は「事実の摘示」をしたと言えるのでしょうか?

本条の「事実」は、日常用語として用いられる「事実」という言葉よりも広い概念であり、真実の事実に加えて虚偽の事実を含みます。
加えて、本条の「事実」は、人の社会的評価を低下させるに足る具体的なものでなければなりません。
今回の事案では、AさんはBさんについて、「Bさんは犯罪者で前科もある」などと投稿しています。
このような投稿をされたことによって、Bさんは犯罪を犯すような人物としてその社会的評価を低下させられる危険性があると考えられます。
上述の通り、この投稿内容が真実であっても名誉毀損罪の成立自体は妨げられません。

なお、本条の「人の名誉を毀損した」という文言は、現実に被害者の名誉が害されたことを要するかのように見えます。
しかし、被害者の社会的名誉が現実に害されたか否かの認定は極めて困難ですから、本罪は実際に社会的名誉が害されることを要しないものと解されます。
つまり、実際に社会的名誉が害されていなくても、社会的名誉が害される危険性がある内容であれば、名誉棄損罪が成立するおそれがあります。

名誉を毀損しても処罰されない場合

他人の名誉を毀損しうる行為をしても処罰されない場合がいくつかあります。

代表例は、起訴の時点で被害者からの告訴が存在しない場合です。
裁判になることで、かえって被害者の名誉を侵害する恐れがあることから、本罪は告訴を訴訟要件とする親告罪となっています(刑法232条)。
仮に、被害者が告訴をしていたとしても、起訴前に取り下げてもらうことができれば、不起訴処分となります。

弁護士に相談を

実際に他人の名誉を毀損する行為をして、被害者が告訴をした場合、起訴前に告訴を取り消してもらえるかどうかが非常に重要になってきます。
告訴の取下げに成功すれば、不起訴処分となり前科がつくこともないからです。

しかし、被害者は、当然ながら加害者に対して処罰感情を抱いている可能性が高いため、加害者が自ら示談交渉をして、告訴の取下げを含めた示談を成立させるのは困難です。
そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、告訴を取り下げてもらい不起訴処分を得ることができる可能性があります。
起訴されてしまった後では、告訴を取り下げることはできません。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】野球賭博による賭博開帳図利罪で逮捕

2023-10-18

野球賭博をしたとして、賭博開帳図利罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

プロ野球の公式戦の勝敗などを対象に野球賭博をしたとして、京都府警宇治署は26日、賭博開帳図利の疑いで、京都市伏見区深草(中略)会社員、(中略)と同市左京区高野(中略)の会社員、(中略)の両容疑者を逮捕した。(中略)容疑者は「身に覚えがない」などと供述し容疑を否認、(中略)容疑者は認めているという。
逮捕容疑は昨年8月、プロ野球の公式戦や第104回全国高校野球選手権大会の試合の勝敗を客の会社経営者の男(45)=京都府宇治市=に予想させ、計7180万円を賭けさせたとしている。
(後略)

(9月27日 産経新聞 THE SANKEI NEWS 「「野球賭博」で客に7千万円賭けさせる、容疑の男2人を逮捕」より引用)

野球賭博

刑法第185条では、「賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定されており、日本では賭博が禁止されていることがうかがえます。

今回の事例では、野球賭博が問題になっているようですが、野球賭博も禁止されているのでしょうか。

賭博とは、偶然に決まる勝ち負けに対してお金などの財物を賭け、利益を得させたり、賭けた財物を失わせたりすることで、賭けによる損得を争わせる行為をいいます。
野球賭博は、野球の試合の勝敗にお金などをかけて、賭けの結果で得た利益について損得を争わせます。
野球の試合の勝敗は偶然に決まりますので、野球賭博は刑法で規定する賭博にあたると考えられます。

賭博開帳図利罪

では、今回の事例の逮捕容疑である賭博開帳図利罪とはどのような犯罪なのでしょうか。

刑法第186条2項
賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

賭博開帳図利罪は、簡単に説明すると、利益を得る目的で、賭博の主催者となって賭博をさせる場所を提供した際に成立する犯罪です。

野球の試合の勝敗で賭け事を行う野球賭博は刑法で禁止する賭博にあたります。
ですので、容疑者らが野球賭博の主催者となり、野球賭博を行う場を設けたのであれば、賭博開帳図利罪が成立するかもしれません。

賭博開帳図利罪は罰金刑の規定がありません。
ですので、起訴され裁判で有罪になると執行猶予付き判決を得ない限り、刑務所に行くことになってしまいます。

賭博開帳図利罪では、執行猶予付き判決を獲得できる可能性があります。
弁護士が悪質性が高くないことや反省していることなどから執行猶予付き判決が妥当だと裁判官に訴えることで、執行猶予付き判決を獲得できる場合があります。
執行猶予付き判決を得るためには、有利になる証拠を集めることが重要になります。
有利な証拠を集めるためにも、裁判の準備に時間を要しますので、賭博開帳図利罪で捜査を受けている方は、早めに弁護士に相談をすることが望ましいです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
初回接見サービス無料法律相談を行っていますので、賭博開帳図利罪などの刑事事件でお困りの際は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約は、0120―631―881までご連絡ください。

【事例紹介】無断で合鍵作り同僚宅へ侵入

2023-10-15

同僚女性宅の合鍵を無断で作り侵入したとして、住居侵入罪の容疑で逮捕された事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します

事案概要

無断で合鍵を作り女性宅に侵入したとして、京都府警下鴨署は5日、住居侵入の疑いで、滋賀県草津市の大学生の男(21)を逮捕した。
逮捕容疑は昨年6月30日と7月9日の計2回、下着を撮影する目的で、同市の女子大学生(21)の集合住宅の部屋に侵入した疑い。
同署によると、男は(中略)「間違いありません」と容疑を認めている。(後略)

(9月5日 京都新聞 「無断で合鍵作り女性宅侵入、容疑の21歳男逮捕「鍵の番号盗み見てネット注文」下着を撮影」より引用)

不法侵入と侵入場所

不法侵入というワードを聞いたことがある方は多いかもしれません。

刑法を見てみますと不法侵入という罪名は存在せず、住居侵入罪建造物侵入罪という罪が規定されています。

住居侵入罪建造物侵入罪を規定する刑法130条は、「正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処する」としています。

同条は対象となる侵入場所として、①住居②人の看守する邸宅③建造物④艦船を挙げています。

本ケースの容疑者は被害者の集合住宅の部屋に侵入したとされています。
では本ケースの場合、①~④のどこに侵入したことになるのでしょうか?

結論から言うと、容疑者は住居(①)に侵入したことになります。

住居とは、起臥寝食すなわち、寝たり起きたり食事をするなど、日常生活に利用される建造物のことです。
具体的には家やマンションの部屋などが該当します。

今回の事案では、容疑者は集合住宅の部屋に侵入したとされています。
おそらく、被害者はこの集合住宅の部屋で日常生活を営んでいるでしょう。
したがって、報道が事実であれば、容疑者は住居に侵入したことになります。

ところで、住居(①)と邸宅(②)、建造物(③)の違いが文字だけ見ても分かりづらいかもしれません。

簡単に説明すると、邸宅(②)とは空家や閉鎖中の別荘といった居住用の建造物であって住居ではないものを言います。

そして、建造物(③)とは、住居邸宅にあたらない建造物を言います。
具体的には、官公庁の庁舎や学校、工場などがこれに当たります。

住居侵入罪と侵入

次に「侵入」の意義も問題となります。

というのは、本罪の保護法益(法律があることで保護される利益)をどう解するかによって、どのような立入り行為が規制の対象となる「侵入」に当たるかが異なるからです。

住居侵入罪の保護法益について、平穏説住居権説の2つの説があります。

平穏説は保護法益を「住居の事実上の平穏」と捉える立場です。
これに親和的な判例として最判昭和51年3月4日があります。

この立場にたてば、「侵入」とは、住居の平穏を害するような態様による立入りと言うことになります。
もっとも、平穏という法益の内容が漠然としていて不明確です。
立入りの方法が平穏である場合には、住居権者がたとえ立入りを許していない場合であっても住居侵入罪が成立しないことになってしまいますので、住居権者の承諾の意義を軽視しすぎていると言えるでしょう。

他方で、現在の判例は、本罪の保護法益を、住居に誰を立ち入らせるかの自由であるとしています(最判昭和58年4月8日)。

この保護法益の解し方を住居権説といいます。
この立場にたてば、「侵入」とは、住居権者の意思に反する立入りということになります。

本ケースの場合、下着を撮影する目的で被害者の生活する集合住宅の部屋に立ち入ったと報道されています。
おそらく容疑者は立入る許可を被害者に取っていないでしょうし、下着を撮影することは部屋に立入る正当な理由だとはいえません。
現在の裁判所の立場は住居権説に立っていますから、住居権者の意思に反する立入りであり、侵入にあたると評価される可能性が高いです。
侵入にあたると判断された場合は、容疑者に住居侵入罪が成立することになります。

弁護士に相談を

住居侵入罪を犯して逮捕されてしまった場合でも、被害者との示談ができれば、不起訴処分となる可能性があります。

示談は、真摯な反省・謝罪を伝えることに加えて、被害者宅から遠い場所に引越すなど、相手との約束ごとを決めることで示談を成立させることができる可能性があります。

もっとも、つい先日無断で家に侵入してきた加害者が、示談交渉のため接触しようと試みても、被害者は恐怖から示談のための話し合いを拒絶する可能性が高いです。
そこで、弁護士が第三者的立場から間に入ることで、スムーズに示談交渉を進められる場合があります。
ですので、示談交渉を行う際は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、住居侵入罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分を得ることができる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】『皆殺しにしてやる』?問い合わせフォームを使った脅迫文の送信

2023-10-13

問い合わせフォームを使って脅迫文を送信したとされる事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例概要

(前略)連合会(京都市北区)に脅迫文を送ったとして、京都府警北署は29日、威力業務妨害の疑いで、(中略)逮捕した。
逮捕容疑は(中略)、同連合会ホームページの問い合わせフォームに「全員機関銃で皆殺しにして殺るからな」などの内容を計4回送信し、正常な業務を妨害した疑い。「間違いない」と容疑を認めているという。
(後略)

(9月29日 京都新聞「部落解放同盟に4回脅迫文 容疑で神戸の男逮捕、差別的表現も」より引用)

威力業務妨害罪とは?

威力業務妨害とは、「威力を用いて人の業務を妨害」するおそれがある行為を言います(刑法234条)。

威力業務妨害罪が成立するためには、以下の3つの要件が必要です。
①手段として「威力」を用いたこと
②その妨害の対象が「業務」であること
③行為により業務が妨害されるおそれがあること

では、具体的には、どのような場合が①威力と②業務に該当するのでしょうか?

威力

まず、「威力」とは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことを意味します。
裁判例をみると、公然と脅迫暴行などを手段とした場合に「威力」を用いたとされます。

威力を用いて人の業務を妨害したとされる裁判例として、大阪拘置所に電話をかけ、元総理を殺害したことで同拘置所に収監されていたCの名前をあげて、「Cは殺さないといけないんですよ」「Cを殺しに行くつもりでいます」などと言って、同拘置所職員の正常な業務の遂行に支障を生じさせた事案があります。(大阪地裁 令和4年12月22日 判決)

業務

次に「業務」とは、職業その他の社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務とされています(大判大10年10月24日)。
典型的には職業としての経済活動が「業務」にあたります。
例えば、営業マンが得意先に向かう際の車の運転や、ラーメン屋がスープを作る行為は「業務」に該当します。
これに対して、ツーリング目的での自家用車の運転や、家族の夕食を作る行為などは社会生活上の活動ではないため「業務」には該当しません。

それでは、本事案で報道されたような、問い合わせホームへの殺害予告の送信は、「威力を用いて、人の業務の妨害」しうる行為にあたるのでしょうか?。

まず、殺害予告の送信は脅迫にあたると推測され、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すもの、つまり威力を用いたと評価されると考えられます。

次に、問い合わせ担当者は、当該殺害予告への対処を余儀なくされ、本来すべき問い合わせへの対応業務に支障をきたす危険性があります。
また、同連合会の上層部も、当該殺害予告がされた結果、警察への届出を含む今後の対応について時間を割くことを余儀なくされ、本来すべき管理業務や意思決定業務に費やす時間を犠牲にすることになりかねません。
ですので、本件の問い合わせフォームへの殺害予告の送信は、業務を妨害するおそれがあると判断される可能性が高いと思われます。

したがって、本件の問い合わせフォームを通じての殺害予告は、威力業務妨害罪が成立する可能性があります。

弁護士に依頼して事件の早期解決を

威力業務妨害罪のように被害者が存在する犯罪については、(被害があればその被害弁償をして)被害者と示談を成立させることが事件の早期解決にとって重要となります。
被害届が出される前に示談が成立していれば、警察沙汰になることも防げるかもしれません。
示談成立が事件化してしまった後であっても、起訴される前であれば、不起訴処分につながる可能性もあります。

もっとも、つい先日まで業務を妨害した当の加害者が被害者と接触を試みても、示談交渉のテーブルにつくこと自体を拒絶されかねません。
したがって、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉はお任せすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、威力業務妨害事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、警察沙汰になることを未然に防いだり、不起訴処分を得ることができる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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