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児童福祉法違反と売春防止法違反③
児童福祉法違反と売春防止法違反③
~前回からの流れ~
京都府在住のAさんは、滋賀県大津市において、女性Bさん(16歳)が18歳未満と知っていながら、出会い系サイトを通じて男性Cさんに紹介し、ホテルで売春させました。
ホテルでの性行為を終えたBさんとCさんが2人で歩いていたところに、巡回中の滋賀県大津北警察署の警察官がやってきて、職務質問を行いました。
そこからBさんCさんの売春行為が発覚し、Aさんが売春の仲介をしていたことも明らかとなりました。
その結果、Aさんは滋賀県大津北警察署に、児童福祉法違反と売春防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※平成31年4月3日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・Aさんに他の罪は成立する?
前2回の記事までは、今回のAさんの逮捕容疑である児童福祉法違反と売春防止法違反について触れてきましたが、児童福祉法違反や売春防止法違反以外にAさんに成立する可能性のある犯罪はあるのでしょうか。
実は今回の事例のような場合には、児童福祉法違反と売春防止法違反に加え、児童買春防止法違反という犯罪が成立する可能性が出てきます。
児童買春防止法は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」という法律です。
児童買春防止法では児童買春や児童ポルノの規制やそれらの行為の処罰、被害に遭った児童の保護などを定めており、この法律では、児童買春を周旋した者についての処罰も定めています。
児童買春防止法5条
児童買春の周旋をした者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
※注:業として行った場合には七年以下の懲役及び千万円以下の罰金
前回の売春防止法の部分で見た通り、「周旋」は仲立ちをすることを指します。
児童買春防止法では、児童買春を児童本人等に「対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすること」とされています(児童買春防止法2条2項)。
Aさんは、18歳未満の児童であるBさんとCさんの売春=対価を目的としての性交等を仲介していることから、児童買春の周旋をしていると考えられます。
ですから、Aさんには児童買春の周旋をしたという児童買春防止法違反が成立する可能性が出てくるのです。
しかし、ここで注意すべき点は、この児童買春を周旋したことによる児童買春防止法違反が成立するには、周旋した人(今回の事例であればAさん)だけでなく、児童買春の相手方(今回の事例であればCさん)が、これが児童買春である=相手(今回の事例であればBさん)が18歳未満であると認識している必要があるという点です。
過去の裁判例では、「児童買春周旋罪は、児童買春をしようとする者とその相手方となる児童の双方からの依頼又は承諾に基づき、両者の間に立って児童買春が行われるように仲介する行為をすることによって成立するもの」であることから、「被周旋者において児童買春をするとの認識を有していること、ずなわち、当該児童が18歳未満の者であるとの認識を有していることを前提にしていると解される」とされています(東京高判平15.5.19)。
つまり、今回の事例の場合でいえば、CさんがBさんについて18歳未満であることを知らなかった場合には、Aさんに児童買春防止法違反が成立しない可能性が出てくる、ということになります(その場合、Aさんには児童福祉法違反と売春防止法違反が成立するにとどまるということになります。)。
こうした事情から、18歳未満の者の売春を周旋したような刑事事件では、何罪が成立するのか又はしないのか、ということが非常に分かりづらく、さらに成立しうる犯罪も多いことから、その見通しや弁護活動についてもなかなか想像しづらいところがあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が刑事事件の専門知識や経験をフルに活用しながらご相談者様の対応に当たりますから、こうした複数の法律に抵触しうる刑事事件についても、安心してご相談いただけます。
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児童福祉法違反と売春防止法違反②
児童福祉法違反と売春防止法違反②
~前回からの流れ~
京都府在住のAさんは、滋賀県大津市において、女性Bさん(16歳)が18歳未満と知っていながら、出会い系サイトを通じて男性Cさんに紹介し、ホテルで売春させました。
ホテルでの性行為を終えたBさんとCさんが2人で歩いていたところに、巡回中の滋賀県大津北警察署の警察官がやってきて、職務質問を行いました。
そこからBさんCさんの売春行為が発覚し、Aさんが売春の仲介をしていたことも明らかとなりました。
その結果、Aさんは滋賀県大津北警察署に、児童福祉法違反と売春防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※平成31年4月3日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・売春防止法違反
前回の記事では、児童福祉法違反について触れましたが、Aさんのもう1つの逮捕容疑の売春防止法違反についても見ていきましょう。
売春防止法は、法律名の通り、売春を助長する行為等を処罰や売春をするおそれのある女子に対する補導処分や保護更生の措置を規定して、売春の防止を図るための法律です。
売春防止法では、売春を助長した者については処罰することを定めていますが、売春をした当人については処罰することは定めていません。
これは、売春防止法が売春をするようになった人については福祉的な救済が必要であるという立場に立っていること、売春自体がいわゆる「被害者なき犯罪」であること等が理由であると考えられています。
では、今回のAさんは売春防止法のどの部分に違反する容疑をかけられているのでしょうか。
該当すると思われる部分の売春防止法の条文を確認してみましょう。
売春防止法6条1項
売春の周旋をした者は、2年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
「周旋」とは、売買や交渉等の際に当事者の間に立って仲を取り持つことをいいます。
売春する者と買春する者の仲立ちをすることで、売春の周旋を行ったとして売春防止法違反となるのです。
Aさんの事例を考えてみると、AさんはBさんに対して、出会い系サイトを通じて男性Cさんを売春相手として紹介しています。
つまり、AさんはBさん・Cさんにその売春相手を紹介し、2人を売春の開いてとして引き合わせた形となりますから、売春の仲立ちをしていると言えるでしょう。
ですから、Aさんは売春の周旋をしているとして売春防止法違反となることが考えられるのです。
なお、実際に売春を周旋するまではいかなくとも、売春を周旋する目的で人を売春の相手方となるように勧誘したり、売春の相手方となるように勧誘するために道路等の公共の場所で人につきまとったり、広告等によって売春の相手方となるように誘引したりするだけでも売春防止法違反となり、2年以下の懲役又は5万円以下の罰金に処せられることにも注意が必要です(売春防止法6条2項)。
売春防止法違反は、いわゆる「被害者なき犯罪」であり、分かりやすく損害を受けた被害者の方が存在するわけではないため、多くの売春防止法違反事件では、示談交渉を経て示談を締結することによって有利な事情を得ることは難しいと考えられます。
ですから、贖罪寄付を行う、取調べ対応を綿密に行う、再犯防止策を具体的に構築する等、一般の方の思い浮かびにくい弁護活動がより必要となってくる場面も出てきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした示談交渉による解決の難しい刑事事件のご相談・ご依頼も承っております。
京都府・滋賀県の売春防止法違反事件にお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の刑事事件専門の弁護士までご相談ください。
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児童福祉法違反と売春防止法違反①
児童福祉法違反と売春防止法違反①
京都府在住のAさんは、滋賀県大津市において、女性Bさん(16歳)が18歳未満と知っていながら、出会い系サイトを通じて男性Cさんに紹介し、ホテルで売春させました。
ホテルでの性行為を終えたBさんとCさんが2人で歩いていたところに、巡回中の滋賀県大津北警察署の警察官がやってきて、職務質問を行いました。
そこからBさんCさんの売春行為が発覚し、Aさんが売春の仲介をしていたことも明らかとなりました。
その結果、Aさんは滋賀県大津北警察署に、児童福祉法違反と売春防止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※平成31年4月3日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・児童福祉法違反
今回のAさんは、児童福祉法違反と売春防止法違反の容疑で逮捕されています。
まずはAさんの逮捕容疑の1つである児童福祉法違反について見てみましょう。
児童福祉法は、18歳未満の者を「児童」とし、児童の健全な育成や生活の保障等を達成するための手続きや規制を定めた法律です。
今回のAさんに該当するであろう児童福祉法の条文は以下のものです。
児童福祉法34条1項
何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
6号 児童に淫行をさせる行為
児童福祉法60条1項
第34条第1項第6号の規定に違反した者は、10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
児童福祉法の「淫行」とは、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為」をいい、「児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又はこれに準ずる性交類似行為」もこれに含まれるとされています(最決平28.6.21)。
「性交又はこれに準ずる性交類似行為」とされていることから、性交だけでなく、肛門性交や口腔性交等の性交類似行為も児童福祉法の「淫行」に該当します。
また、児童福祉法ではその「淫行」について性別の定めはないため、児童と同性の者が相手であったとしても「淫行」となります。
次に、児童福祉法の淫行を「させる行為」は、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」(最決昭40.4.30)であるとされていますが、その「させる行為」に当たるかどうかの判断は、「行為者と児童の関係、助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断する」ことが相当とされています(最決平28.6.21)。
つまり、児童福祉法の条文には「させる行為」とあるため、児童が嫌がっているところを無理矢理させる行為だけが対象になるのではないかと思われるかもしれませんが、そういうわけでもないのです。
今回のAさんのケースを考えてみると、AさんはBさんが18歳未満の者=児童であると知っているにも関わらず、売春の仲介をしてBさんとCさんを引き合わせてBさんに売春させています。
売春でBさんは性交をしていることから、児童福祉法の「淫行」であると言えます。
AさんがBさんの売春を仲介する行為は、「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為」であると考えられますから、AさんとBさんの間の関係等の詳しい事情と照らして「させる行為」にあたるかどうかを判断されることになるでしょう。
児童福祉法違反は刑法上の犯罪と比べるとまだ一般に周知されていない犯罪でしょう。
ですから、たとえ自分や周りの方がが児童福祉法違反事件に細かな成立要件や見通しなどが分からないことも多いと思われます。
そうした時こそ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士にご相談ください。
在宅捜査の方にはご来所いただいての初回無料法律相談、逮捕・勾留されている方には初回接見サービスにて、弁護士がご相談に乗らせていただきます。
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試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?④
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?④
~前回からの流れ~
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※平成31年4月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・Aさんの事例と窃盗罪・詐欺罪
では、Aさんの事例に戻りましょう。
事例ではAさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてはいますが、Aさんは試着を装って指輪を付けたまま持ち逃げしていることから、今まで見てきた詐欺罪の、人を騙して財物を渡させる、という行為に当てはまるのではないでしょうか。
ここで、詐欺罪の成立に必要な条件とAさんの行動を照らし合わせてみましょう。
前回の記事でも触れたように、詐欺罪は①「人を欺」き、②それに基づいて相手が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて相手が処分行為をし、④それによって「財物」の占有が移転、⑤財産的損害が生じることによって成立します。
Aさんが本当は指輪を持ち逃げするつもりであるのに試着を装って店員に指輪の試着を申し出たことは、①の「人を欺」く行為と言えそうです。
指輪の持ち逃げという本当の理由を知っていれば、店員側も指輪の試着を許可しなかったと考えられます。
そして、店員はAさんの試着をしたいという理由を信じて=錯誤に陥っていますから、②の要件も満たすと考えられるでしょう。
問題になるのは次に続く③④です。
③は錯誤に基づいた処分行為、④は処分行為による財物の占有の移転、となるのですが、今回のAさんの事例では、指輪の試着の際、すぐそばに店員はついていたようです。
すぐそばに指輪を管理している店員がついている状況から、店員がAさんに指輪を引き渡し、その事実上の支配をAさんに移したとは考えにくく、すなわち、店員による処分行為がないと考えられるため、③④の要件を満たさないと考えられるのです。
Aさんは店員から少し離れる際に、電話がかかってきたフリをして距離を取っているようですが、この嘘は店員に指輪を引き渡させるように動機づけるためのものとは言えないでしょうし、これによって店員が指輪の事実上の支配をAさんへ渡したというわけでもありません。
実際に、店員と距離を取っていたとはいえAさんが店から逃げてすぐに店員が通報を行っていることからも、店員が全くAさんを気にしておらず、指輪の支配をAさんに渡してしまっていたということではなさそうですから、やはり詐欺罪に必要な①~⑤の要件を全て満たすことはなさそうです。
ではAさんに成立する犯罪は何かというと、逮捕容疑である窃盗罪が考えられます。
繰り返しになりますが、窃盗罪は相手の意思に反して財物の占有を自分に移してしまう犯罪です。
先ほど詐欺罪について検討した際に触れたように、指輪を占有していた店員はAさんに対して指輪の占有を移したわけではありません。
ですが、Aさんは勝手に指輪を持ち逃げ=指輪を自分の占有下に置いたのですから、窃盗罪が成立すると考えられるのです。
なお、では店員を騙して試着をして持ち逃げをする、というケースでは必ず詐欺罪ではなく窃盗罪となるのかというと、そうではないこともあります。
例えば、持ち逃げをするつもりで試着を頼み、別の店員に試着したものはすでに買い取っている、もともと自分の物だ、などと言って店を出て持ち逃げをしたような場合には、人を欺く行為や店員の処分行為が認められるとして詐欺罪になる可能性も考えられます。
つまり、似たようなケースであっても必ずしも詐欺罪が成立せずに窃盗罪になるとは限らず、事案の細かな点を突き合わせていく必要があるということです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が年中無休で刑事事件のご相談を承っています。
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(京都府木津警察署までの初回接見費用:3万8,900円)
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?③
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?③
~前回からの流れ~
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※平成31年4月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・窃盗罪と詐欺罪の違い
前回までの2回の記事で、窃盗罪と詐欺罪がどういった犯罪であるのか詳しくみてきました。
では、この2つの犯罪は具体的にどういった部分が異なるのでしょうか。
窃盗罪と詐欺罪の2つの犯罪の大きな違いは、財物の占有(事実上の支配)の移転の際、相手方の処分行為があるかないかという点です。
窃盗罪は、財物の占有者、つまり財物を事実上支配している人の意思によらずにその支配を自分の方へ移してしまう犯罪です。
それに対して、詐欺罪は、相手を騙して相手方の錯誤に基づいた処分行為によって財物の占有が移転しますから、財物の占有の移転に際して相手方の行為が挟まる形になります。
つまり、窃盗罪と詐欺罪は財物の占有の移転の仕方に違いがあるということになります。
こうしたことから、窃盗罪が「奪取罪」、詐欺罪が「交付罪」と分類されています。
また、窃盗罪と詐欺罪では、法定刑が全く違うことにも注意が必要です。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役又は50万円以下の罰金ですが、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。
窃盗罪であれば、略式罰金手続による正式裁判の回避も考えられるのですが、詐欺罪となると懲役刑しか規定されていませんから、詐欺罪で起訴される場合には、法廷に立って正式裁判を受けることになります。
100万円以下の罰金であれば、略式罰金手続という手続きに基づき、罰金の納付によって刑事事件を終息させることができますが、詐欺罪には罰金の規定がないため、この略式罰金手続を利用することはできないのです。
そして、詐欺罪で有罪となるということは、執行猶予がつかなければ刑務所へ入ることになります。
これらも、窃盗罪と詐欺罪の大きな違いの1つと言えるでしょう。
なお、こうした刑罰の重さの違いもあることから、窃盗罪で処罰されるべきである事案で詐欺罪として処罰されるような事態は避けなければなりません。
成立する犯罪が窃盗罪なのか詐欺罪なのかという事案では、特に慎重に検討しなければなりません。
しかし、刑事事件の知識・経験がない一般の方のみでこうした検討をすることは困難ですし、そもそも事案を聞いて「もしかしたら成立すべきは詐欺罪ではなく窃盗罪の方なのではないか」と思うことすら難しいのが現実でしょう。
だからこそ、窃盗事件や詐欺事件に関わらず刑事事件の容疑をかけられてしまったら、すぐに弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談することで、自分たちだけでは気づけなかった可能性に気づけたり、判断できなかった見通しが見えたりする可能性も出てきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回無料の法律相談も行っています。
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(京都府木津警察署までの初回接見費用:3万8,900円)
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?②
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?②
~前回からの流れ~
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※平成31年4月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・詐欺罪ってどんな犯罪?
前回の記事では、窃盗罪がどういった犯罪なのか詳しく確認しました。
では、次に詐欺罪がどういった場合に成立する犯罪なのか確認してみましょう。
刑法246条1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
詐欺罪は、①「人を欺」き、②それに基づいて相手が錯誤に陥り、③その錯誤に基づいて相手が処分行為をし、④それによって「財物」の占有が移転、⑤財産的損害が生じることによって成立します。
詐欺罪の条文と突き合わせると、①②部分が「人を欺いて」、③④部分が「財物を交付させた」という部分に対応することになるでしょう。
① 「人を欺」き
詐欺罪の言う「欺」くという行為は、一般人に財物を処分させるような錯誤(=勘違い、誤信)に陥らせることを指します。
また、「欺」く行為については、その財物の処分の判断に際して基礎となる重要な事項を偽ることであるとされています。
つまり、その事項が嘘であれば財物の交付をしなかっただろうという重要事項を偽れば、詐欺罪の言う「人を欺」く行為になることになります。
② ①に基づいて相手が錯誤に陥り
「錯誤」とは、事実と認識が一致しないことを言い、簡単に言えば勘違いや誤信をすることを言います。
詐欺罪においては、①の「欺」く行為によって騙され、嘘を信じて財物を交付する(処分する)ように動機づけられてしまった場合に錯誤に陥ったということができるでしょう。
③ ②の錯誤に基づいて相手が処分行為をし
ここでいう処分行為とは、対象となっているその財物を処分する意思をもって財物を処分することをいいます。
詐欺罪の条文にある「財物を交付させ」る、つまり、「財物を相手に引き渡す」という処分を、騙されたことによる勘違いに基づいて行ってしまうということが必要とされます。
反対に言えば、たとえ相手に財物を引き渡したとしても、それが②の錯誤に基づく行為でなかった場合には、この③の要件を満たさず、詐欺罪は成立せず、詐欺未遂罪が成立するにとどまるということになります(例えば、嘘には騙されなかったものの、詐欺をしようとする人を憐れんで騙されたフリをしてお金を渡すなど。)。
④ ③によって「財物」の占有が移転
前回の窃盗罪の記事で説明した通り、「占有」とは、その物を事実上支配していることを指します。
つまり、詐欺罪では、③の処分行為によって引き渡された財物の事実上の支配が、相手方から詐欺を行った人へ移らなければならないということになります。
⑤ 財産的損害が生じる
前回の記事でも取り上げた通り、詐欺罪は財産犯と呼ばれる、財産に対する犯罪の1つです。
そのため、詐欺罪の成立には財産的損害が発生したことが必要であるとされています。
詐欺罪の場合、騙されなければ渡さなかっただろう財物・財産を引き渡してしまっていることから財産的損害が発生するといえます。
前回の記事で取り上げた窃盗罪も細かい部分が多かったと思いますが、詐欺罪も条文は短いものの、成立にはこのような条件が必要となっているのです。
窃盗罪・詐欺罪に限らず、犯罪は条文だけ見てもどの成立するのか否かが分からないことも多いです。
そういった専門知識や経験が必要な判断は、専門家である弁護士に任せましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が窃盗事件・詐欺事件のご相談にも多く対応しております。
京都の窃盗事件・詐欺事件にお困りの際は、まずは弊所弁護士までご相談ください。
次回は窃盗罪と詐欺罪の具体的な違いについて触れていきます。
(お問い合わせフリーダイヤル:0120-631-881)
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?①
試着したまま逃げたら窃盗罪?詐欺罪?①
Aさんは、京都府木津川市の宝飾店を訪れた際、そこで販売されている指輪を試着することができるということを知りました。
そこでAさんは、指輪を試着したまま店から出て、指輪を自分の物にしてしまうことを思いつきました。
Aさんは、宝飾店の店員に100万円する指輪を試着したい旨を伝え、指輪を試着した上で、電話がかかってきたフリをして、「少し離れます、すぐ戻ります」と言って店員から距離を取りました。
そしてAさんは店員が離れていることをいいことに、指輪をつけたまま店外へ逃走しました。
店員がすぐに京都府木津警察署に通報したことから、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されることとなりました。
(※平成31年4月1日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
今回の事例のAさんは、指輪を試着したまま逃走して宝飾店から指輪を奪っています。
Aさんには何らかの犯罪が成立するだろうということは明らかですが、いったいどういった犯罪が成立するのでしょうか。
Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されているものの、ここで、Aさんは試着中に電話がかかってきたフリをして店員から逃げていることから、「嘘を言って持ち逃げをしていることになるのだから詐欺罪になるのではないか」と考える方もいるかもしれません。
窃盗罪も詐欺罪も、いわゆる財産犯と呼ばれる財産に対する犯罪ですが、窃盗罪と詐欺罪はどういったことが異なり、Aさんに成立すると考えられる犯罪はどちらなのでしょうか。
窃盗罪と詐欺罪、それぞれを細かく確認しながら検討していきます。
・窃盗罪はどんな犯罪?
まずは窃盗罪がどういった場合に成立する犯罪なのか確認してみましょう。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は、①「他人の財物を」、②不法領得の意思をもって、③「窃取」することによって成立します。
このうち、①③は条文に書いてある条件となっていますが、②はそれらに加えて必要な意思であると言われています。
①「他人の財物を」
窃盗罪のいう「他人の財物」とは、他人が事実上支配したり、管理したりしている財物のことを指します。
この事実上の支配のことを、法律用語で「占有」と言います。
つまり、他人が占有している財物が窃盗罪の対象となっているのです。
②不法領得の意思をもって
不法領得の意思とは、一般には、他人を排除して自分がその物の所有者であるようにふるまい、その物の経済的な用法に従ってその物を利用・処分する意思のことを指します。
例えば、お金を盗んで使おうという場合には、盗んだお金について自分の所有しているお金と同様に、お金を利用しようという意思があると言えますので、不法領得の意思があると言えます。
③「窃取」する
窃盗罪の「窃取」とは、その物を占有している人の意思に反してその占有を排除し、その物を自分の占有下に置くことを指します。
この①②③を窃盗をするという認識を持ちながら行った場合に、窃盗罪が成立するのです。
つまり、窃盗罪は対象物を利用したりする目的で、対象物を事実上支配している人の意思に反して対象物を自分の支配下に置いてしまう犯罪といえます。
万引きなどでも取り上げられることも多く、刑事事件の中でも多くを占める窃盗罪ですが、詳しく見ていくと成立にはこのような細かい条件が必要とされていることが分かります。
さらに細かい条件や、特定の状況で考えなければならない事項も存在することから、よく聞く犯罪だからと油断することなく、窃盗罪の容疑をかけられたらますは弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件を専門に取り扱っている弁護士が初回無料法律相談や初回接見サービスを通して、窃盗事件にお悩みの方のサポートを行っています。
まずは遠慮なく、0120-631-881までお電話ください。
専門スタッフがご相談者様に応じたサービスをご案内いたします。
次回の記事では詐欺罪について取り上げます。
選挙ポスターを破って器物損壊罪・公職選挙法違反②
選挙ポスターを破って器物損壊罪・公職選挙法違反②
~前回からの流れ~
京都市山科区に住んでいるAさんは、京都市の市議会選挙に出ている候補者のうち、Vさんのことを嫌悪していました。
そして選挙期間中、Aさんの通勤途中の道路脇に、いくつか選挙ポスターを貼っている看板があることに気が付きました。
Aさんは、Vさんの選挙ポスターを目にするのが嫌になり、通勤途中に貼ってあったVさんの選挙ポスターを合計5枚破り捨てました。
後日、Vさんが選挙ポスターが破り捨てられていることに気づき、京都府山科警察署に被害を届け出たことから捜査が始まり、Aさんは公職選挙法違反の容疑で逮捕されることとなりました。
Aさんは、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、器物損壊罪と公職選挙法違反では何が異なってくるのか、これからどのような活動が考えられるのかを聞くことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・器物損壊罪と公職選挙法違反の違い
前回の記事では、Aさんの行為は器物損壊罪にも当たるものの、公職選挙法が「特別法」(=特別な人や物、地域、期間に適用される法律)であるために、今回のAさんには自由妨害による公職選挙法違反が成立しうるということに触れました。
では、器物損壊罪ではなく自由妨害による公職選挙法違反が成立することによって、何が異なってくるのでしょうか。
①法定刑が異なる
まずは器物損壊罪と自由妨害による公職選挙法違反、2つの犯罪の条文を見てみましょう。
刑法261条(器物損壊罪)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
公職選挙法225条1項
選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
2号 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもって選挙の自由を妨害したとき。
この2つの条文を見比べていただくとお分かりいただけるように、器物損壊罪と自由妨害による公職選挙法違反では、規定されている法定刑、つまりはどの程度の刑罰を受けるのかという範囲が異なります。
器物損壊罪で有罪となった場合に受ける可能性のある刑罰が「3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料」であるのに対し、自由妨害による公職選挙法違反で有罪となった場合に受ける可能性のある刑罰は「4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」となっています。
つまり、器物損壊罪となるよりも、自由妨害による公職選挙法違反となった方が重く処罰されるということになります。
②親告罪かどうかが異なる
器物損壊罪は、刑法264条に規定されている通り、親告罪です。
刑法264条(親告罪)
第259条、第261条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
※注:器物損壊罪は刑法261条。
親告罪とは、被害者等による告訴(被害申告+処罰を希望する申し出)がなければ起訴できない犯罪のことをいいます。
つまり、器物損壊罪は、被害者等による告訴なしには起訴できない=裁判とすることができない犯罪ですので、被害者の方と示談を締結するなどして、告訴を出さないようにしてもらったり告訴を取り下げてもらったりすれば、不起訴となり事件を終息させることができます。
対して、公職選挙法違反は親告罪ではありません(非親告罪)。
すなわち、示談をして告訴をしないようにしてもらえば即終了、とはいかないのです。
しかし、実際に損害を被った選挙ポスターの持ち主等に謝罪し被害弁償をする等の活動は全く無駄になるわけではありません。
起訴・不起訴の判断の際や、量刑を決める際に有利な事情として考慮されることとなるでしょう。
このように、器物損壊罪と比べて公職選挙法違反は様々な面で厳しく判断される可能性があります。
だからこそ、刑事事件のプロである弁護士の力がより必要となってくるともいえるでしょう。
また、器物損壊罪と公職選挙法違反、どちらが成立するのか、詳しくどういった違いが出てくるのかといったことは、それぞれの事案に即して専門知識を照らし合わせて判断しなければなりません。
そうしたお悩みの解決のためにも、弁護士に相談・依頼されることをお勧めいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、0120-631-881で初回接見サービスや初回無料法律相談のご予約を24時間いつでも受け付けています。
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選挙ポスターを破って器物損壊罪・公職選挙法違反①
選挙ポスターを破って器物損壊罪・公職選挙法違反①
京都市山科区に住んでいるAさんは、京都市の市議会選挙に出ている候補者のうち、Vさんのことを嫌悪していました。
そして選挙期間中、Aさんの通勤途中の道路脇に、いくつか選挙ポスターを貼っている看板があることに気が付きました。
Aさんは、Vさんの選挙ポスターを目にするのが嫌になり、通勤途中に貼ってあったVさんの選挙ポスターを合計5枚破り捨てました。
後日、Vさんが選挙ポスターが破り捨てられていることに気づき、京都府山科警察署に被害を届け出たことから捜査が開始され、防犯カメラの映像などによりAさんの犯行が発覚、Aさんは公職選挙法違反の容疑で逮捕されることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・選挙ポスターと器物損壊罪
上記事例のAさんは、選挙ポスターを破り捨てたことで逮捕されていますが、ここで逮捕容疑が公職選挙法違反であることに疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。
物を壊す事件といえば、刑法上の器物損壊罪が適用されるイメージが強いかもしれません。
刑法261条(器物損壊罪)
前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
貼ってある選挙ポスターは「他人の物」ですし、それを破り捨てることは物の効用を害することになりますので「損壊」にも当たることになるでしょう。
こうしたことからも、選挙ポスターを破り捨てることは器物損壊罪になり、その罪によって逮捕されたり捜査されたりするのではないでしょうか。
もちろん、器物損壊罪に該当することに間違いはないのですが、実は公職選挙法という法律で、こうした選挙に関わる妨害行為について規定があるのです。
・選挙ポスターと公職選挙法違反
公職選挙法は、簡単に言えば選挙制度の確立やその選挙の自由・公正を守るための法律です。
そして公職選挙法の中には、以下のような条文があります。
公職選挙法225条1項
選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、4年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
2号 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもって選挙の自由を妨害したとき。
このうち「文書図画」には、社会一般で用いられる「文書図画」よりも非常に広い範囲のものが含まれるとされています。
公職選挙法の「文書図画」の例としては、書籍や新聞、挨拶状、ポスター、看板、プラカードなどが挙げられます。
そして「毀棄」とは、物を壊したり捨てたりすることでその物の効用を害することです。
ですから、選挙期間中に選挙ポスターを破り捨てるということは公職選挙法の「文書図画を毀棄し」ていることに当てはまります。
そしてこうした方法によって選挙の自由を妨害したと認められれば、いわゆる「自由妨害」をしたとして、公職選挙法違反となるのです(この公職選挙法違反を「自由妨害罪」と呼ぶこともあります。)。
今回のような選挙ポスターを複数枚破り捨てるという行為は、選挙運動の自由を害すことに繋がると考えられますから、公職選挙法違反となりうるのです。
そして、刑法と公職選挙法を考えた時、公職選挙法は選挙の時に関しての法律であり、いわゆる「特別法」の位置に当たることから、公職選挙法違反が成立するような場合にはこちらが優先して成立する、ということになるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、選挙ポスターに関連した刑事事件のご相談も安心してお任せいただけます。
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次回の記事では、器物損壊罪と自由妨害による公職選挙法違反の2つの違いを詳しく取り上げます。
滋賀県高島市の車両保険詐欺事件
滋賀県高島市の車両保険詐欺事件
滋賀県高島市に住んでいるAさんは、自分の所有している自動車が高級車であることから、近所に支店がある保険会社Vの車両保険に入っていました。
ある日Aさんは、わざと自分で車を傷つけ、修理費を水増しすることで多く保険金をもらって得をすることを思いつきました。
そこで、知り合いの修理業者Bさんにこの話をもちかけ、協力して保険金を多くもらえるように計画を立てました。
そしてAさんは、わざと自損事故を起こし、その後Bさんのところに車を修理に持ち込み、Bさんは実際にかかった修理費用よりも100万円以上多い金額を請求書に記載しました。
Aさんはこの請求書を保険会社Vに提出し、保険金を請求し、保険会社VからAさんに保険金が支払われることになりました。
しかし、それに味を占めたAさんとBさんが、数か月後に再度同じ手口で保険会社Vに保険金を請求したところ、保険会社Vが不審に思い、滋賀県高島警察署に相談しました。
そこから捜査が開始され、AさんとBさんは詐欺罪と詐欺未遂罪の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・車両保険詐欺
上記事例のAさんは、車両保険を利用した保険金詐欺事件を起こしています。
保険金詐欺と聞くと、自分の怪我の治療費を水増しして請求する手口のものが思い浮かばれやすいかもしれませんが、Aさんのように車両保険を悪用した保険金詐欺事件も多く起こっています。
車両保険は、自分の持っている自動車が傷ついてしまった時のための保険です。
保険会社や保険の種類によっても異なりますが、自損事故による自動車の破損に対しても保険金の支払われる車両保険もあります。
今回のAさんは、そうした車両保険を悪用して保険金を得ています。
さて、今回Aさん・Bさんが問われている詐欺罪は、刑法246条に規定されています。
刑法246条1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
簡単に言えば、詐欺罪は人を騙して(「欺いて」)金品等の財物を渡させることによって成立する犯罪です。
詐欺罪の成立は、人を騙すという行為をし、それによって騙された相手が金品等財物を渡す、という流れをたどります。
この「欺」く部分、つまり相手を騙す部分については、その財物を渡させるかどうかを相手が判断する際に重要な部分であることが求められます。
つまり、「この部分が嘘であるならば金品を渡さなかった」という部分が偽られているのであれば、詐欺罪のいう「人を欺」く行為であると言えるのです。
今回のAさんの件を考えてみましょう。
今回のAさんは、保険金を多くもらうためにわざと自損事故を起こしています。
本来、車両保険は自分の車が傷ついてしまった時のために使われるものですから、保険金目当てに故意に起こした事故の損害を支払うことは想定されていません。
さらに、修理費用についても、通常保険会社は実際にかかった修理費用を支払うはずですから、水増しされた分の修理費用を支払うことも考えられていないと思われます。
ですから、もし保険会社Vが最初からAさんの起こした事故が保険金目的のわざと起こした事故であり、さらにその修理費も水増しされたものであると分かっていれば、Aさんに保険金を支払うことはなかったと考えられます。
こうした事情から、Aさんは保険会社Vを「欺い」たと考えられます。
そして、今回保険会社VはAさん・Bさんの嘘を信じて保険金を交付していることから、Aさん・Bさんには詐欺罪が成立すると考えられるのです。
保険金詐欺事件では、事案によっては被害額が高額となる場合もあります。
詐欺事件では、被害額が高額になれば、起訴され刑事裁判となる可能性も上がります。
先ほど掲載した条文を見ていただければ分かる通り、詐欺罪には罰金刑の規定がなく、起訴されるということは法廷に立って刑事裁判を受けるということに直結します。
起訴されないように動くにしても、起訴されたとして刑事裁判をスムーズに進めるにしても、専門家のフルサポートが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、詐欺事件も含む刑事事件を専門に取り扱っています。
警察での捜査段階から、刑事裁判が終わるまで、刑事事件に強い弁護士が一貫して丁寧に対応を行います。
滋賀県の保険金詐欺事件、車両保険に絡んだ詐欺事件にお困りの際は、まずは弊所弁護士にご相談下さい。
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