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のぞきで少年事件①

2019-09-09

のぞきで少年事件①

Aくんは、京都市下京区の中学校に通っている15歳です。
ある日の下校途中、Aくんは自分の好みの女性がすぐそばのマンションの1階の部屋に入っていくのを目撃しました。
Aくんは女性のことが気になり、しばらくその姿を見ていると、ちょうどマンションの脇道部分に面している窓が風呂場の窓であることに気がつきました。
興味が出てきてしまったAくんは、その風呂場の窓の方へ行き、女性が風呂に入っている様子をのぞくようになりました。
後日、ついに女性がAくんののぞき行為に気づき、京都府下京警察署に通報しました。
その後の捜査でAくんがのぞき事件の犯人であることが発覚し、Aくんは京都府下京警察署に呼ばれることになりました。
Aくんの両親は寝耳に水のことで驚き、Aくんになぜそんなことをしたのか問い詰めましたが、Aくんはやましい気持ちがありなかなか両親に話すことができず悩んでいます。
そこで、AくんとAくんの両親は少年事件に精通している弁護士に相談し、のぞき事件への対応や、これからどういった活動をすべきなのかを相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・のぞき事件と軽犯罪法

のぞき事件の場合、その態様によっては成立する犯罪が分かれます。
上記のAくんのように他人の風呂場をのぞき見した場合、まずは軽犯罪法違反とされる可能性があります。
軽犯罪法1条23号では、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」を軽犯罪法違反とすることが規定されており、これに違反すると、拘留又は科料に処せられる可能性があります(ただし、Aくんの事件は少年事件となるため、原則として刑罰を受けることはありません。)。

なお、この「拘留」は、1日以上30日未満刑事施設に収容される刑罰のことで、捜査段階で逮捕に引き続いて行われる身体拘束である「勾留」とは別物です。
そして、「科料」は1,000円以上1万円未満を徴収する財産刑です。

・のぞき事件と迷惑防止条例違反

今回のAくんのように他人の風呂場をのぞき見た場合は、先述のように、軽犯罪法違反事件とされるケースが多いです。
しかし、その一方で、のぞきをした場所や態様が違えば、成立する犯罪も変わる可能性があるのです。
例えば、デパートや公園など、不特定多数の人が出入りする、いわゆる「公共の場所」で他人の下着等に対してのぞきを行った場合、軽犯罪法違反事件ではなく、各都道府県に定めのある、迷惑防止条例違反事件とされる可能性もあります。
京都府の迷惑防止条例(京都府迷惑行為防止条例)では、以下のような規定があります。

京都府迷惑防止条例3条1項
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1~3号 (略)
4号 みだりに、着衣で覆われている他人の下着又は身体の一部(以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
5号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に鏡等を差し出し、置く等をすること。
6号 みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を見ること。

2項
何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
2号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。

こうしたのぞき行為であった場合、以上の京都府迷惑防止条例違反となり、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります(ただし、先ほど触れた通り、Aくんののぞき事件少年事件として扱われるため、原則として刑罰が科せられることはありません。)。

このように、のぞき行為自体でも、その態様や状況で成立する犯罪が変わってきます。
少年事件では原則として刑罰を受けることはありませんが、成人の刑事事件の場合では刑罰の重さも異なってきますし、軽犯罪法違反なのか京都府迷惑防止条例違反なのかによって逮捕される可能性も異なってきます。
こうした違いやそれぞれに行うべき対応は、事案によって変わるものですから、まずは弁護士に相談し、適切な対応の仕方や見通しを聞いてみましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、のぞき事件についてのご相談ももちろんお任せいただけます。
刑事事件少年事件にお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士にご相談ください。
ご来所いただいての法律相談は初回無料でご利用いただけます。

少年鑑別所での面会も弁護士へ

2019-09-07

少年鑑別所での面会も弁護士へ

15歳のAさんは、京都市下京区で複数痴漢事件を起こし、京都府下京警察署に逮捕されました。
その後、釈放されたAさんでしたが、事件が京都家庭裁判所に送致されると、観護措置となることになり、少年鑑別所に収容されることになりました。
警察署から釈放されていたため、たいしたことにはならないと考えていたAさんとその両親は、少年鑑別所に収容となったことに不安を覚え、少年事件にも対応している弁護士に相談し、まずはAさんに面会に行ってもらうことにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・少年鑑別所

少年鑑別所とは、少年の資質や環境などを専門家が専門的に調査するための施設です。
少年事件を起こした少年が少年鑑別所に収容されるパターンは主に2つあります。

まずは、捜査段階=被疑者として警察や検察に捜査されている段階で行われる「勾留に代わる観護措置」となった場合です。
勾留に代わる観護措置」となった場合、被疑者である少年の留置場所は、警察署の留置所ではなく少年鑑別所となります。
勾留に代わる観護措置」とは、逮捕後の10日間、少年鑑別所に身体拘束をして捜査を行うもので、少年事件独特の手続きです。
この「勾留に代わる観護措置」となった場合、成人の刑事事件に見られるような勾留の延長は認められず、最大10日間の身体拘束期間の後は事件はすぐに家庭裁判所に送致されることになります。
そして、「勾留に代わる観護措置」の後、家庭裁判所に事件が送致された場合、次に説明する「観護措置」に自動的に切り替わり、引き続き少年鑑別所に身体拘束されることになります。

次に、事件が捜査機関から家庭裁判所に送致された後、「観護措置」となって、少年鑑別所に入ることになった場合です。
この場合の観護措置とは、通常4週間~8週間程度、少年鑑別所において、少年の性格等を専門的に調査するものを言います。
最初に触れた少年鑑別所の役割は、この「観護措置」の際に発揮されます。
観護措置」中、少年は少年鑑別所に収容され、家庭裁判所調査官や少年鑑別所の技師等から調査されます。

・少年鑑別所での面会

少年事件を起こした少年が少年鑑別所に収容された場合、警察署で面会するのとは何が異なるのでしょうか。

まず、少年鑑別所では、警察署のようにアクリル板の仕切りなしで面会することが可能となります(ただし、少年鑑別所によっては、勾留に代わる観護措置の場合はアクリル板のある部屋で面会させる場所もあります。)。
少年本人と遮るものなくコミュニケーションを取ることができるため、ご家族にとっても少年にとっても、ストレスの少ない面会ができます。

また、警察署での一般面会は近親者以外も可能ですが、少年鑑別所での一般面会は、近親者や保護者に限られており、誰でも面会できるというわけではありません。

なお、面会時間が10分~20分と限られていたり、受付が平日の昼間のみであったりすることは、警察署での一般面会と同様です。
しかし、土日祝日の面会については、弁護士であっても予約が必要であったりできなかったりするため、そういった点では警察署等の留置とは異なります。
どちらにせよ、ご家族の面会の際には事前に少年鑑別所や警察署にその日・その時間帯の面会が可能かどうか確認されてから面会に向かわれることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、少年鑑別所への接見依頼も承っております(初回接見サービス)。
少年事件も多く取り扱う弁護士が、少年本人はもちろんそのご家族にも、丁寧にご相談に乗らせていただきます。
接見のご依頼は、0120-631-881までお問い合わせください。

詐欺のような窃盗事件?②

2019-09-05

詐欺のような窃盗事件?②

前回からの流れ~
Aさんは、京都市左京区に住んでいるVさん(84歳)の家を銀行員を装って訪ね、「銀行の者ですが、現在キャッシュカードの悪用が相次いでいるので、システムの変更が必要となりました。それまでキャッシュカードを使用せずに厳重に保管してもらいたいのです」などと言って、Vさんにキャッシュカードを封筒に入れさせ封をさせました。
そして、「開けていないという証拠のために封の部分に印鑑を押してもらいたいので取ってきてください」などと言ってVさんにいったん席を外させ、その隙に偽物のカード状のものが入った別の封筒とVさんのキャッシュカードの入った封筒をすり替えました。
さらにVさんに「システムの変更に必要です」と言ってキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、「2週間程度でシステム変更のお知らせをしますので、それまでカードはこのまま封筒に入れておいて使わないでください」と言ってVさん宅を後にしました。
後日、いつまでたっても連絡がこないと不審に思ったVさんが封筒を確認すると、偽物のカードが入っていたため、京都府下鴨警察署に通報。
捜査の結果、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月2日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・詐欺のような窃盗事件?

前回の記事では、今回のAさんのケースにかかわりがあると考えられる2つの犯罪、窃盗罪詐欺罪を取り上げました。
今回の記事では、具体的にAさんのケースがなぜ窃盗罪に問われたのか、検討していきます。

前回の記事でも取り上げたように、窃盗罪詐欺罪はそれぞれ刑法に規定されている犯罪です。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

窃盗罪詐欺罪は、どちらも財産に対する犯罪ですが、窃盗罪は相手の意思に反して物を自分の管理・支配下におくことで成立し、詐欺罪は相手をだますことで相手の意思で財物を引き渡させることで成立する点に違いがあります。
この点を頭に置きながら、今回のAさんのケースを見てみましょう。

Aさんは、たしかにVさんに銀行員を装ってシステム変更のためにキャッシュカードの保管と暗証番号が必要だという嘘をつき、Vさんをだましています。
ここだけ見ると、人をだましているのだから詐欺罪のようにも思えますが、AさんはVさんにキャッシュカードを引き渡させているのではなく、Vさんが印鑑を取りに行っている間にカードの入った封筒をすり替えることでキャッシュカードを取っています。
つまり、Aさんのケースでは、AさんはVさんのことをだましてはいますが、キャッシュカードをVさんの意思で「交付させ」ているのではなく、Vさんの意思に反して奪い取ってしまったということになります。
ですから、Aさんには詐欺罪ではなく窃盗罪が成立すると考えられるのです。

・詐欺のような窃盗事件の量刑

窃盗罪詐欺罪では、その刑罰に罰金刑のみの規定がある分、窃盗罪の方が軽い刑罰の定められている犯罪であるといえます。
詐欺罪の場合、刑罰として定められているのが懲役刑のみですから、罰金刑のみで処罰する規定がない=起訴されるということは必ず正式な刑事裁判を受けることになり、そこで有罪となれば執行猶予が付かない限り刑務所へ行くことになるのです。

では、詐欺罪で起訴されれば必ず刑事裁判になるのであれば、詐欺罪にならないように、Aさんのような詐欺のような窃盗事件を起こせば軽い処分で済むのでしょうか。
たしかに、窃盗罪は先ほど触れたように罰金刑のみで処罰することが可能であり、万引きなどの軽微な窃盗事件では、事件にもよりますが不起訴処分や略式罰金(罰金を支払うことで事件を終了させる手続き)となる場合も多いです。

しかし、窃盗罪であれば必ず不起訴や罰金刑で終了するわけではありません。
条文にもある通り、窃盗罪にも懲役刑は規定されており、個々の窃盗事件の被害額や犯行態様といった様々な事情を考慮して科せられる刑罰が決められます。
特に今回のような、詐欺に近い手段を用いての窃盗事件では、より悪質な犯行態様であるとみなされ、窃盗罪の中でも重く、詐欺罪に近い量刑で判断されることも十分考えられます。
ですから、成立する罪名が窃盗罪だからと言って軽く考えることはせず、まずは弁護士に相談することが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、逮捕・勾留された方向けの初回接見サービスや、在宅捜査を受けている方向けの初回無料法律相談を実施しています。
詐欺事件窃盗事件にお困りの際は、遠慮なく0120-631-881までお問い合わせください。

詐欺のような窃盗事件?①

2019-09-03

詐欺のような窃盗事件?①

Aさんは、京都市左京区に住んでいるVさん(84歳)の家を銀行員を装って訪ね、「銀行の者ですが、現在キャッシュカードの悪用が相次いでいるので、システムの変更が必要となりました。それまでキャッシュカードを使用せずに厳重に保管してもらいたいのです」などと言って、Vさんにキャッシュカードを封筒に入れさせ封をさせました。
そして、「開けていないという証拠のために封の部分に印鑑を押してもらいたいので取ってきてください」などと言ってVさんにいったん席を外させ、その隙に偽物のカード状のものが入った別の封筒とVさんのキャッシュカードの入った封筒をすり替えました。
さらにVさんに「システムの変更に必要です」と言ってキャッシュカードの暗証番号を聞き出し、「2週間程度でシステム変更のお知らせをしますので、それまでカードはこのまま封筒に入れておいて使わないでください」と言ってVさん宅を後にしました。
後日、いつまでたっても連絡がこないと不審に思ったVさんが封筒を確認すると、偽物のカードが入っていたため、京都府下鴨警察署に通報。
捜査の結果、Aさんは窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年9月2日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・窃盗罪

まずは今回のAさんの逮捕容疑である窃盗罪がどういった犯罪が確認してみましょう。
皆さんがご存知のように、窃盗罪は誰かの物を盗むことで成立し、身近なところでは万引きや置引き、ひったくり(例外あり)などが代表的な窃盗罪にあたる行為として挙げられます。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪は、その物を占有している人=その物を管理・支配している人の意思に反してその物を奪取=奪う犯罪です。
こうしたことから窃盗罪は「奪取罪」というくくりでくくられたりもします。
ここでポイントとなるのは、窃盗罪はその物の占有者の意思に反してその物を自分の管理・支配下においてしまうことで成立するのだということです。

・詐欺罪

今回のAさんの事例を見て、「Vさんをだましてキャッシュカードを取っているのに窃盗罪で逮捕されているのはなぜなのだろう」「窃盗罪ではなく詐欺罪なのではないか」と不思議に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
では、そもそも詐欺罪とはどういった犯罪なのでしょうか。
こちらも確認してみましょう。

刑法246条
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

つまり、詐欺罪の成立には、「人を欺」き、さらに「財物を交付させ」ることが必要とされます。
「人を欺」くとは、大まかに言えば人をだますことではありますが、この行為は「財物を交付させ」るために行われている必要があります。
単純に嘘をついただけ、人をだましただけでは詐欺罪にはなりません。
そして「財物を交付させ」るとは、簡単に言えば財物を引き渡させるということです。
すなわち、詐欺罪の場合、窃盗罪のようにその物の占有者の意思に反して物を奪い取る犯罪ではなく、相手をだますことで相手の意思でこちらに物を受け渡させる=交付させる犯罪なのです。
こうした点が窃盗罪詐欺罪の異なる点の1つであり、窃盗罪が「奪取罪」というくくりに入るのに対し、詐欺罪が「交付罪」というくくりに入るゆえんでもあります。

今回の記事では、今回のAさんの事例にかかわりそうな窃盗罪詐欺罪という2つの犯罪とその違いを詳しく確認しました。
次回は具体的にAさんのケースを考えていきます。

京都府詐欺事件窃盗事件にお困りの際は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談ください。
弊所の刑事事件専門弁護士が、複数の犯罪でどれが成立するのか分からない、似たような犯罪の違いが分からない、見通しを教えてほしいといったご相談にも丁寧に対応いたします。
ご予約・お問い合わせは0120-631-881でいつでも受け付けております。

盗品等関与事件で逮捕②盗品等保管罪

2019-09-01

盗品等関与事件で逮捕②盗品等保管罪

京都市左京区に住んでいるAさんは、知人であるBさんから、「引っ越しをするのだがその準備のために一時的に荷物を預かってほしい」と頼まれ、Bさんから時計のコレクションや高級バッグなど複数の荷物を預かりました。
Aさんは、その頼みを受け入れ、Bさんからの荷物を預り、自宅で保管していました。
すると後日、京都府下鴨警察署の警察官が来て、Aさんは盗品等保管罪の容疑で逮捕されてしまいました。
警察官の話では、Bさんが預かってくれと言ってきていた荷物は、Bさんが強盗をして奪ったものであるとのことでした。
Aさんは、家族が接見を依頼した弁護士に面会し、無実を訴えています。
(※この事例はフィクションです。)

・盗品等関与罪の「盗品等」

今回のAさんが容疑をかけられているのは、盗品等関与罪のうち、盗品等保管罪です。

刑法256条1項
盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。

刑法256条2項
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

この条文のうち、刑法256条2項の「前項に規定する物」(=刑法256条1項の「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって両得された物」)を「保管」しているという部分にあたると考えられたのでしょう。

ここで、Aさんが預かっていた物は、Bさんが強盗事件を起こして奪ってきたものです。
盗品等保管罪という犯罪名から、「強盗で奪われた被害品も対象となるのか」「あくまで窃盗で盗まれた物のみが対象なのではないか」と不思議に思う方もいるでしょう。
しかし、盗品等関与罪の対象と定められている物は、刑法256条1項で「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」とされています。
盗品」は窃盗によって盗まれた被害品であることに不思議はないでしょう。
問題は、「その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」の部分です。

財産に対する罪とは、一般的に「財産犯」とも呼ばれ、窃盗罪のほか、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪、背任罪が挙げられます。
さらに、盗品等関与罪では、それらの犯罪によって「領得」された物を盗品等関与罪の客体としています。
「領得」とは、簡単に言えば、他人の財物を自分又は第三者の物にするために取得することを言います。
そのような「領得」が可能な財産犯は、先ほど挙げた財産犯のうち、窃盗罪、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪となります。
つまり、盗品等関与罪の客体としては、窃盗罪の被害品である「盗品」だけではなく、強盗罪、詐欺罪、恐喝罪、横領罪の被害品も含まれることになるのです。

今回、Aさんが預かっていたBさんの荷物は、強盗事件の被害品でした。
その荷物を自宅で預かる=保管していたわけですから、客観的に見れば、Aさんは盗品等関与罪のうちの盗品等保管罪を犯してしまっていたことになります。

・盗品等保管罪と否認

しかし、前回の記事の事例同様、Aさんは盗品であると知っていたわけではありません。
こうした場合、事実を争っていくことになるでしょう。
刑事事件で容疑を否認して事実を争っていくとなると、裁判で有罪か無罪かを判断してもらうのだから、裁判の場で主張をすればいいと思われがちです。
ですが、実はこうした否認事件の場合、裁判当日に自分自身の主張を証言すればそれだけでよいというわけではありません。

なぜなら、裁判では今まで受けた取調べで作成された供述調書などが証拠として出され、そうした証拠も含めて有罪なのか無罪なのかが判断されるからです。
すなわち、逮捕され取調べを受ける段階から、その供述が裁判で証拠として出されるかもしれないということを考えながら対応を行っていかなければ、意図せずして自分に不利な証拠を自分で作ってしまう可能性があるということなのです。
逮捕や勾留がつらいからとりあえず認めて、後で裁判の時に弁解しようなどと思っても、容疑を認めている供述調書があれば、それを裁判当日の証言のみで撤回するのは至難の業です。

そうした事態を避けるためにも、逮捕されてしまった時にはすぐに弁護士のサポートを受けることが望ましいでしょう。
逮捕・勾留されるということは身体拘束され、周りとの自由な連絡もできなくなるということですから、誰にも助けを求めることができません。
ただでさえ容疑を否認し続けるということは精神的にも大きな負担のかかることです。
弁護士にこまめに面会し、取調べのアドバイスや見通しだけでなく、周囲の人たちとの橋渡しをしてもらうことで、事件の面だけでなく、精神的な面でもケアしてもらうことができます。

前回の記事でも述べたように、盗品等保管罪など、盗品等関与罪のうち刑法256条2項に規定されている犯罪は、罰金刑と懲役刑が併科される前提の法定刑であり、非常に重い犯罪です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、事例のような否認事件はもちろん、容疑を認めているような事件についてもご相談・ご依頼をお待ちしています。
逮捕・勾留・呼び出しにお困りの際は、遠慮なく0120-631-881までお電話ください。

盗品等関与事件で逮捕①盗品運搬罪

2019-08-30

盗品等関与事件で逮捕①盗品運搬罪

京都府南丹市に住むAさんは、友人のBさんから「少し運んでほしいものがある。自分の車では積み込むスペースが足りないので、Aさんの車で運んでほしい。お礼はするから指示した場所まで来て荷物を積み込み、目的地まで運んでほしい」と頼まれました。
Bさんがお礼はするといっていたため、Aさんは快く引き受け、Bさんが指定した場所でAさんの持ってきていた荷物を積み込むと、Aさんから聞いていた目的地まで自動車を運転して荷物を運び、Aさんに引き渡しました。
すると後日、京都府南丹警察署の警察官がBさんのもとを訪れ、盗品運搬罪の容疑で逮捕してしまいました。
警察官から聞いたところ、AさんがBさんから頼まれて運んだ荷物は全て盗品で、Bさんは窃盗罪の容疑で逮捕されているとのことでした。
Bさんは寝耳に水であるとして容疑を否認しています。
(※この事例はフィクションです。)

・盗品等関与罪

窃盗行為によって盗まれた物(被害品)や、そのほか財産犯罪によって奪われた物に関連する犯罪として、盗品等関与罪と呼ばれる犯罪があります。
この盗品等関与罪は刑法256条1項・2項に規定されています。

刑法256条1項
盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。

刑法256条2項
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。

この2つの条文が規定している犯罪を盗品等関与罪と呼ぶのですが、その形態により、より細かく分けた犯罪名で呼ばれることもあります。
今回の記事から複数回にわたって、この盗品等関与罪について取り上げていきます。

・なぜ盗品等関与罪は罰せられる?

そもそも、なぜ盗品等関与罪は罰せられるのでしょうか。
盗品等関与罪では、窃盗行為や財産犯罪をした人ではなく、その被害品である盗品等にかかわった人が罰せられます。
窃盗行為等をしていない人が罰せられるのに疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

盗品等関与罪が犯罪とされている理由については、一般に、窃盗罪等の財産犯罪の被害を受けた被害者(「盗品等」を盗まれてしまったり奪われてしまったりした被害者)が盗品を取り返そうと思っても、盗品等関与罪に規定されているような行為をされてしまえば、盗品の追求が困難になってしまうからだ、と言われています。
そのほか、学説によっては、財産犯罪によって発生した違法な状態(例えば盗品が盗まれたままの状態)を継続させてしまう行為だからであるという説や、盗品等関与罪に定められている行為が認められてしまえば財産犯罪が起こることを助長してしまうからであるという説もあります。
こうしたことから、窃盗行為等をした本人でなくとも、盗品等関与罪に定められた行為をしてしまえば罰せられることになるのです。

・盗品運搬罪

では、今回のAさんは盗品等関与罪のうちどういった罪に当たるのでしょうか。
Aさんは、盗品をBさんの指示に従って運搬していることから、いわゆる「盗品運搬罪」に該当するおそれがあります。
先ほど挙げた条文で言えば、刑法256条2項の「前項に規定する物を運搬し」という部分が当てはまります。
盗品運搬罪で有罪となれば、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金となります。

ここで注意すべきなのは、盗品運搬罪の法定刑は10年以下の懲役「及び」50万円以下の罰金であるという点です。
つまり、懲役刑と罰金刑が併科されることが前提となっているのです。
ですから、罰金刑が規定されてはいるものの、罰金刑のみで処罰されることはありませんので、盗品運搬罪で起訴されるということは正式な刑事裁判を受けるということになるのです(つまり、罰金だけ払って事件終了となる略式手続は利用できません。)。
だからこそ、公判弁護活動も見据えて、早め早めに弁護士に相談することが求められるのです。

今回の事例では、Aさんは盗品であることを知らずに運搬を行ってしまっています。
こうした場合、盗品運搬罪の故意がないとして争うことも考えられます。
先ほど触れたように、盗品運搬罪で起訴されるということは公開の法廷に立って刑事裁判を受けることを意味します。
裁判本番での対応はもちろんのこと、そこできちんと自分の言い分を主張するためには、取調べ段階から慎重な対応をしていくことが求められます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に精通した弁護士が、取調べ段階から公判弁護活動まで、一貫して丁寧な弁護活動で被疑者・被告人本人やそのご家族をサポートします。
盗品運搬事件等の盗品等関与事件逮捕にお困りの際は、お気軽に弊所までお問い合わせください。

(京都市伏見区)直接殴らなくても公務執行妨害罪?①

2019-08-26

(京都市伏見区)直接殴らなくても公務執行妨害罪?①

Aさんは、京都市伏見区の路肩に運転していた自動車を停めて車内で休憩していたところ、あたりを巡回していた京都府伏見警察署の警察官から職務質問を受けました。
警察官は窓の外からAさんに職務質問をしていたのですが、Aさんは職務質問を受けることが億劫になり、車を急発進させました。
その結果、運転席のドアに手をかけていた警察官を引きずって転倒させ、軽傷を負わせる事態となりました。
Aさんは公務執行妨害罪と傷害罪の容疑で京都府伏見警察署に逮捕されることとなり、その知らせを聞いたAさんの家族は、急いで弁護士に相談することにしました。
相談を受けた弁護士は、まずは事件全体の詳細を知ると同時にAさんに今後の手続きや対応をアドバイスする必要があるとして、すぐに逮捕されているAさんに直接面会することにしました。
(※令和元年8月13日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・公務執行妨害罪

今回のAさんは公務執行妨害罪の容疑で逮捕されていますが、そもそも公務執行妨害罪は、刑法95条に規定のある犯罪です。

刑法95条
公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

公務執行妨害罪の客体は「公務員」です。
今回のAさんのケースのような警察官や、市役所や区役所の職員、公立学校の先生等が「公務員」の例として考えられます。
そしてその「公務員」が「職務を執行する」際に、暴行・脅迫をした者に成立するのが公務執行妨害罪です。

では、その「職務を執行する」とはどういうことかというと、簡単に言えば、公務員の仕事をするということです。
つまり、警察官や市役所職員といった「公務員」であっても、休日のプライベートな時間を過ごしている最中に暴行・脅迫された場合には、公務執行妨害罪ではなく暴行・傷害罪や脅迫罪、強要罪といった犯罪が成立するにとどまるということになります。

今回のAさんのケースで言えば、京都府伏見警察署の警察官は付近の見回りをしており、職務質問をしています。
職務質問は、警察官執務執行法という法律の2条に定められている行為で、警察官の職務の1つです。

警察官職務執行法2条
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問することができる。

この職務質問の最中の警察官は、まさに「公務員が職務を執行」しているところであるといえるでしょう。
なお、公務執行妨害罪にいう「職務」は適法な「職務」であることが要求されます。
違法な公務の執行は保護される必要がなく、これを保護してしまえば公務員の地位を保護することになってしまい、公務執行妨害罪の趣旨(=公務の執行の適正を保護すること)から外れてしまうからです。
ですから、万が一、Aさんのケースで職務質問が違法なものであったような場合には、Aさんは公務執行妨害罪を問われずに済む可能性もあります(ただし、自動車を急発進させて警察官に怪我をさせていることから、傷害罪等については問われる可能性が残ります。)。

また、判例では職務の執行中だけでなく、職務開始直前の、執務と密接に関連した待機状態も含むと認められている例もあることから、仕事の時間になっていない=必ず公務執行妨害罪となるわけではなく、その詳細な事情を考慮されて判断されるものであると注意するべきでしょう。

さて、この「公務員が職務を執行する」際に暴行・脅迫をすることで公務執行妨害罪が成立するのですが、今回のAさんのような場合でも公務執行妨害罪は成立するのでしょうか。
次回の記事で詳しく見ていきましょう。

0120-631-881では、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の専門スタッフがいつでもお問い合わせを受け付けています。
公務執行妨害事件の場合、警察官相手に暴行等を行い、その場で現行犯逮捕されてしまうというケースも多く見られます。
突然の逮捕にお困りの際は、刑事事件専門の弊所弁護士までご相談ください。

カツアゲ恐喝事件で少年逮捕

2019-08-24

カツアゲ恐喝事件で少年逮捕

京都府綾部市に住んでいるAさん(17歳)は、素行の好くない友人たちと付き合っており、夜遊びや学校をさぼることを頻繁にしていました。
ある日、Aさんがその友人といたところ、後輩のVさんとその友人が歩いてきました。
Vさんらがおこづかいをたくさんもらったという話をしていたことから、AさんらはVさんらからお金を巻き込んでやろうと数人でVさんらを取り囲み、「金を渡さないと痛い目を見る」などと言ってカツアゲを行いました。
VさんらはAさんらにリンチされるのではないかと怯え、持っていたお金をAさんらに渡しました。
その後、Vさんらが帰宅して親に相談をしたことからこのカツアゲが発覚し、後日、Aさんは京都府綾部警察署恐喝罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は、まさか息子が逮捕されるような事態になるとは思わず、慌てて少年事件を取り扱っている弁護士に相談に行きました。
(※この事例はフィクションです。)

・カツアゲで恐喝罪

カツアゲとは、脅して金品を巻き上げる行為を指す言葉で、カツアゲは刑法上の恐喝罪にあたるとされています。
恐喝罪は、刑法249条に規定されている犯罪で、「人を恐喝して財物を交付させた者」に成立します。
今回のAさんの起こした事件は少年事件として処理されるため、原則として刑罰を受けることにはなりませんが、成人の刑事事件で恐喝罪として検挙された場合には、10年以下の懲役という刑罰を受ける可能性が出てきます。

そもそも「恐喝」するとは、財物を交付させるために暴行又は脅迫によって相手を畏怖させることを言います。
今回のAさんも、Vさんらからお金を巻き上げるために不良仲間とVさんらを取り囲んで脅していることから、恐喝をしていると言えそうです。
そして、Vさんらはその脅し怯え、Aさんらにお金を渡していることから、AさんらはVさんらに「財物」を「交付させた」と言えそうです。
このことから、Aさんには恐喝罪が成立すると考えられるのです。
ただし、注意すべきは恐喝罪の「恐喝」にあたる暴行又は脅迫は、相手の反抗を抑圧しない程度のものであることが必要とされるという点です。
もしも相手の反抗を抑圧するほどの暴行又は脅迫であると認められれば、恐喝罪ではなく、強盗罪が成立する可能性が出てきます。
強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役となっていますから、恐喝罪と比べても重い犯罪であることが分かります。
Aさんの場合は少年事件ですから、原則こうした刑罰は受けませんが、それでもより重い犯罪が成立することで、処分に影響が出てくる可能性があります。

・少年のカツアゲ恐喝事件

今回のように、20歳未満の者が法律に触れる事件を起こした場合には、少年事件として扱われ、最終的に家庭裁判所の判断によって処分が決められることになります。
繰り返し記載しているように、少年事件では、法定刑の重い犯罪だから必ず少年院に行くとも限りませんし、逆に法定刑の軽い犯罪だから何も処分を下されないとも限りません。
通常の成人の刑事事件とは違い、少年事件ではその少年のその後の更生が第一に考えられるためです。

しかし、では少年事件において、通常の成人の刑事事件と同じような弁護活動は不要か、というとそういうわけでもありません。
例えば、今回のAさんのカツアゲによる恐喝事件では、Vさんという被害者がいます。
この被害者に対して謝罪をする、被害に遭った分について賠償をする、ということは、少年事件であっても全く不要というわけではありません。
確かに、起訴・不起訴を決める成人の刑事事件に比べれば、少年事件では示談は必須というわけではありませんが、少年が反省しているのかどうか、少年自身やその家族・周囲の人がどのように事件について受け止めているのか、といった事情を示す1つの材料として、被害者に謝罪をしていることや示談をしていることは有効であるのです。

ただし、今回の事件のように、子どもの間で起きてしまった少年事件では、示談するにも困難が伴うことも多々見られます。
未成年者との示談では、示談交渉の相手は親となりますが、自分のお子さんが被害に遭ったとなれば、当然のことながら被害感情も小さくありません。
そうしたことから当事者同士の示談交渉で逆に話がこじれてしまうケースもあります。
だからこそ、少年事件の弁護活動にも専門家であり第三者である弁護士を介入させることが望ましいと言えるのです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
被害者との示談交渉だけでなく、釈放を目指した身柄解放活動や取調べ対応のアドバイスまで、一貫した弁護活動をご提供いたします。
京都府少年事件にお困りの際は、少年事件の取り扱いも多い弊所弁護士に、ぜひご相談下さい。

傷害致死事件の情状弁護

2019-08-22

傷害致死事件の情状弁護

Aさんは,京都市山科区の飲食店で行われた職場の飲み会の際,同僚のVさんと口論になり,Vさんの顔面を数回殴りました。
飲み会に参加していたほかの人や飲食店の従業員がAさんを止め,救急車を呼びましたが,VさんはAさんに殴られたことが原因で外傷性くも膜下出血となってしまい,搬送先の病院で死亡してしまいました。
Aさんは,救急車と一緒に通報を受けてかけつけた京都府山科警察署の警察官に,傷害致死罪の容疑で逮捕されました。
Aさんは,口論をしていたとはいえVさんを殴ったことを非常に反省しており,その気持ちをどうにか表していきたいと考えています。
Aさんの家族は刑事事件に強いという弁護士に弁護活動を依頼し,情状弁護をしてもらうことにしました。
(フィクションです。)

~傷害致死罪~

人を傷害した場合に,その傷害を受けた人が死亡したときは,傷害致死罪(刑法205条)が成立し,3年以上の有期懲役が科せられます。
人の死の結果が生じたことについて過失がなくとも,人を傷害する故意があったのであれば,傷害致死罪は成立します(最判昭和26年9月20日)。
なお,人を殺す意思までもって人を傷害し,その結果傷害を受けた人が亡くなってしまった場合には,殺人の故意をもって人を殺してしまったわけですから,殺人罪が成立します。
つまり,傷害致死罪が成立するのは,大まかに言えば「殺すつもりはなかったが与えた暴行・傷害がもとになって亡くなってしまった」というような場合なのです。

ただし,傷害行為と人の死の結果について因果関係がなければ,傷害致死罪は成立しません。
Aさんは口論の結果Vさんを殴っているのですから,Aさんに傷害の故意があることは問題ないでしょう。
そしてAさんに殴られたためにVさんが外傷性くも膜下出血になって死亡したのですから,Aさんの傷害行為とVさんの死の結果には因果関係が認められます。
AさんはVさんを殺そうと思って殴ったり,死んでしまっても構わないと殴ったりしたわけでもなさそうですから,Aさんには傷害致死罪が成立すると考えられるのです。

~傷害致死事件と弁護活動~

傷害致死罪が成立することについて全く争いがなく刑事事件化して逮捕されてしまったような場合,被害者が亡くなっている事件であり,その法定刑が重いことからも,早期の釈放を実現させることは簡単ではありません。
被害者遺族と示談が成立しても,なかなか釈放されない場合も考えられます。
だからこそ,刑事事件に強い弁護士のサポートを受けながら,釈放を目指すと同時に身体拘束されている被疑者本人のケア,周囲のご家族のケアをしてもらうことが重要になってくるといえるでしょう。

また,傷害致死事件裁判員裁判の対象事件となります。
裁判員裁判は,刑事裁判に至るまでの過程や手続きも特殊であり,さらに刑事裁判に一般の方である裁判員が参加します。
そのような場合であっても,刑を軽くしてもらうように弁護活動を進めていくことは可能です。
例えば,刑事裁判の場で,犯行の悪質性が低いことや被害者遺族との示談締結など,判決を決めるうえで被告人の有利になるような事情があれば,その事情を主張していくことが考えられます。
これを情状弁護といいます。
弁護士は情状弁護を行うことで,執行猶予付き判決の獲得や刑罰の減軽を目指していきます。

刑事裁判の場で情状弁護をするためには,被害者遺族への謝罪・賠償を含めた示談交渉や,被告人の周囲の人と協力した再犯防止対策の構築,その傷害致死事件の犯行当時やその前後の詳細な事情の検討など、さまざまなことに専門的な視点をもって取り掛からなければなりません。
だからこそ,傷害致死事件でお困りの際は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士まで,お早めにご相談ください。
弊所の刑事事件専門の弁護士が,逮捕直後の弁護活動から刑事裁判での情状弁護活動まで,迅速に対応いたします。

覚せい剤所持事件で保釈を目指す

2019-08-20

覚せい剤所持事件で保釈を目指す

Aさんは、覚せい剤に興味を持ち、数か月前からインターネットを利用して覚せい剤を購入し、京都府福知山市の自宅で覚せい剤を使用していました。
しかし、Aさんの挙動がおかしいことに気づいた近隣住民が京都府福知山警察署に通報したことにより、Aさんは覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
その後、Aさんは勾留され、起訴されることも決まりました。
Aさんの家族は、どうにかAさんの身体拘束を解くことはできないかと、保釈について弁護士に相談することにしました。
相談後、Aさんの家族は弁護活動を依頼することにし、弁護士はAさんに速やかに接見を行い、保釈請求をするための準備を始めました。
(※この事例はフィクションです。)

・保釈とは

保釈とは、起訴後、保釈保証金の納付を条件に、被告人の身体拘束を解く制度のことを言います。
保釈は起訴後に可能となる制度であるため、逮捕段階や被疑者段階での勾留では利用することはできません。

そして、保釈の際に納付する保釈保証金とは、一般的に保釈金と呼ばれるもので、その額は事件や被告人の環境によって変動します。
保釈金は、保釈中に逃亡したり証拠隠滅をしたりしないようにするための担保とされるもので、それらの条件を破ってしまった場合に一部または全部没収されることになります。
そのため、その人の没収されてしまったら困るという額が保釈金とされるのです。
なお、保釈中に保釈の条件を守ることができれば、最終的に保釈金は戻ってきます。

そして、保釈金が払えれば保釈される、というわけではないことに注意が必要です。
保釈されるためには、逃亡や証拠隠滅等のおそれがないと認められる必要が出てきますから、客観的に見てそうしたおそれのない環境であることを主張していくことが求められます。
つまり、よくイメージされがちなように「お金をたくさん払えば保釈される」ということではないのです。

保釈には、3つの種類があり、それぞれ権利保釈、裁量保釈、義務的保釈と呼ばれています。
権利保釈は、保釈の要件(刑事訴訟法89条1~6号)を満たす場合は、保釈の請求があれば保釈しなければならないという保釈のことをいいます。
また、裁量保釈は、上記権利保釈に該当しない場合でも、裁判所が適当と認める場合には、保釈を許すことができるという保釈です。
最後の義務的保釈とは、勾留による身体拘束が不当に長くなった場合になされる保釈のことをいいます。

これらの保釈をするためには、裁判所に対して保釈請求を行わなくてはなりません。
保釈請求の際には、先ほど触れたように、被告人が逃亡しないことや証拠隠滅のおそれがないことなどを、具体的な事情にからめながら裁判官に主張する必要があります。
刑事事件に強い弁護士と被告人本人、被告人の周囲の方々が一丸となることで、この環境をつくり、保釈に向けた一歩を踏み出すことができます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所ですから、保釈に関連したご相談やご依頼も、多数承っております。
覚せい剤などの薬物事件は、逮捕・勾留といった身体拘束を受ける確率が高い事件であると言われています。
京都府の覚せい剤事件やその保釈請求についてお困りの際は、まずは弊所の弁護士まで、ご相談ください(お問い合わせフリーダイヤル:0120-631-881)。

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