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情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕③
情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕③
~前回からの流れ~
京都府木津川市を管轄する京都府木津警察署に勤務する警察官のAさんは、ある日、10年以上前から付き合いのある知人のBさんからの連絡を受けました。
実はBさんは、京都府木津川市で起こった恐喝事件の被疑者として京都府木津川警察署に捜査されており、Aさんもそのことを知っていました。
BさんはAさんに対し、「今の俺の捜査状況を教えてくれよ。10年来の仲だろう」などと言って自分の捜査の状況を教えるよう求め、Aさんはそれに応じ、Bさんの恐喝事件の捜査状況や、Bさんの逮捕予定日を連絡しました。
しかし、それが露見し、Aさんは地方公務員法違反(秘密漏示)、Bさんは地方公務員法違反(そそのかし)の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、取調べの中で、Bさんから金銭を受け取っていたのではないかと疑われていますが、そういった事実はないと否認しており、家族の依頼で接見に来た弁護士にもその内容を相談しました。
(※令和元年9月24日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・秘密漏示と金銭授受で収賄罪・贈賄罪に?
前回までの記事で、Aさんは秘密漏示行為による地方公務員法違反に、Bさんはそれをそそのかしたことによる地方公務員法違反になるだろうということに触れました。
今回の記事では、AさんやBさんがほかに容疑をかけられる可能性のある、もしくは他に成立する可能性のある犯罪について検討していきます。
今回のAさんは、取調べでBさんから金銭を受け取っていないかどうか疑われているようです。
実は、単純に秘密漏示行為をした場合と、金銭などの対価をもらって秘密漏示行為をした場合では、成立する犯罪が異なるのです。
刑法の以下の条文を見てみましょう。
刑法197条(収賄罪)
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。
刑法197条の3(加重収賄罪及び事後収賄罪)
1項 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。
2項 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
刑法198条(贈賄罪)
第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。
以上のように、公務員に対して金銭などの対価を渡した場合、渡した方は贈賄罪、受け取った公務員は収賄罪となりえます。
繰り返すように、今回のAさんは京都府警の警察官であるため、地方公務員です。
ですから、Aさん・Bさんの間に秘密漏示に関して金銭のやり取りがあった場合、地方公務員法違反ではなく、収賄罪・贈賄罪として捜査されることになるでしょう。
今回のケースでAさん・Bさんらの間に金銭のやり取りがあった場合、Aさんはお金をもらった見返りとして秘密漏示をしているというパターンになるでしょう。
となると、Aさん=「公務員」が、金銭を受け取り=「賄賂を収取し」、その見返りに秘密漏示をして=「よって不正な行為をし」ていることから、刑法197条の3の1項にある、加重収賄罪となる可能性が高いと考えられます。
対してBさんは、Aさんに金銭を渡していることから、刑法198条の贈賄罪となると考えられます。
ここで重要なのは、今回のようなケースにおいて金銭の授受の有無が成立する犯罪を変えてしまうということです。
もちろん、事実として金銭の授受があった場合には、贈賄罪・収賄罪の容疑で捜査されることは仕方のないことでしょう。
しかし、実際にはこうした金銭の授受がなかった場合にも、捜査機関としては金銭の授受があったのではないかと疑って捜査をする可能性が高いです。
最初は地方公務員法違反で逮捕され捜査されていたとしても、途中で容疑が収賄罪や贈賄罪に切り替わることもあります。
前回までの記事でご紹介した秘密漏示やそれのそそのかしによる地方公務員法違反の刑罰が「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対し、加重収賄罪の法定刑は「1年以上の有期懲役」、贈賄罪の法定刑は「3年以下の懲役又は250万円以下の罰金」であることから、地方公務員法違反よりも収賄罪・贈賄罪となった場合の方が重く処罰されうるということがわかります。
ですから、もしも本当に金銭の授受がない、地方公務員法違反にとどまる事実しかないにも関わらず、収賄罪や贈賄罪の容疑をかけられてしまったら、その部分についてはきちんと無実を主張していかなければ不当に重い刑罰を受けることになりかねません。
こういったことからも、地方公務員法違反や収賄罪・贈賄罪の容疑をかけられたら、まずは弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
地方公務員法違反・収賄罪・贈賄罪といった事件にももちろん対応が可能です。
逮捕や取調べにお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士にご相談ください。
情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕②
情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕②
~前回からの流れ~
京都府木津川市を管轄する京都府木津警察署に勤務する警察官のAさんは、ある日、10年以上前から付き合いのある知人のBさんからの連絡を受けました。
実はBさんは、京都府木津川市で起こった恐喝事件の被疑者として京都府木津川警察署に捜査されており、Aさんもそのことを知っていました。
BさんはAさんに対し、「今の俺の捜査状況を教えてくれよ。10年来の仲だろう」などと言って自分の捜査の状況を教えるよう求め、Aさんはそれに応じ、Bさんの恐喝事件の捜査状況や、Bさんの逮捕予定日を連絡しました。
しかし、それが露見し、Aさんは地方公務員法違反(秘密漏示)、Bさんは地方公務員法違反(そそのかし)の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、取調べの中で、Bさんから金銭を受け取っていたのではないかと疑われていますが、そういった事実はないと否認しており、家族の依頼で接見に来た弁護士にもその内容を相談しました。
(※令和元年9月24日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・地方公務員法違反(そそのかし)
前回の記事では、地方公務員である京都府警の警察官Aさんが捜査状況や逮捕の予定をBさんに漏らしたことは地方公務員法の秘密漏示にあたり、Aさんは地方公務員法違反となるだろうということに触れました。
では、今回はBさんの行為について触れていきます。
前回の記事でも触れた通り、地方公務員法は地方公務員の守るべき規律などを定めている法律です。
Aさんは地方公務員ですから、地方公務員法で決まっている規律を破れば地方公務員法違反となることにも納得がいきます。
しかし、今回のBさんは地方公務員ではありません。
地方公務員でないBさんでも、地方公務員法違反となることは考えられるのでしょうか。
実は、地方公務員法には、以下のような条文が存在します。
地方公務員法62条
第60条第2号又は前条第1号から第3号まで若しくは第5号に掲げる行為を企て、命じ、故意にこれを容認し、そそのかし、又はそのほう助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する。
前回の記事で取り上げた、Aさんが行った秘密漏示行為の罰則は、このうち地方公務員法60条2号に規定されています。
地方公務員法60条
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2号 第34条第1項又は第2項の規定(第9条の2第12項において準用する場合を含む。)に違反して秘密を漏らした者
※注:地方公務員法45条1項 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
つまり、地方公務員法62条では、地方公務員の秘密漏示行為をそそのかした者にも地方公務員法違反として刑罰を科すると決めているのです。
地方公務員法62条では、その対象を地方公務員(「職員」など)と限定していないことから、たとえ地方公務員ではなくとも秘密漏示行為をそそのかせば地方公務員法違反となり、秘密漏示行為をした地方公務員と同様の刑罰の範囲で処罰されます。
「そそのかし」とはどういった意味かというと、過去の判例では、「人に対し違法行為を実行する決意を新たに生じさせるに足る慫慂行為をすることをいい、これにより、相手方が新たに実行の決意を生じて実行に出る危険性がある限り、実際に相手方が実行の決意を生じたかどうか、あるいは既に生じている決意を助長されたかどうかを問わない」(最判昭和29.4.27)とされています。
つまり、刑法でいう教唆犯(刑法61条)同様、犯罪をする気のなかった人に犯罪をする意思を起こさせる行為をすることが「そそのかし」であり、地方公務員法では教唆犯についての規定も設けているということになります。
今回であれば秘密漏示行為をするつもりのなかった地方公務員に働きかけ、秘密漏示行為をしようと思い起こさせることがこの地方公務員法62条の規定に違反することになり、BさんはAさんに秘密漏示行為をするよう持ち掛け、元々秘密漏示行為をしようとは思っていなかったAさんに秘密漏示行為をさせる意思を生じさせ、秘密漏示行為をさせていますから、この規定に違反することになるのです。
ここで注意しなければならないのは、この地方公務員法62条では、刑法でいう幇助犯(刑法62条1項)=犯罪をやりやすくする手助けをした人であっても、秘密漏示行為をした公務員と同様の刑罰の範囲で処罰されるということです。
刑法の幇助犯の場合、その刑罰は実際に犯罪をした人や一緒になって計画を立てた人(いわゆる共謀共同正犯)が受ける可能性のある刑罰よりも軽い範囲で刑罰が科されます(刑法63条)。
しかし、地方公務員法62条では、「(略)そのほう助をした者は、それぞれ各本条の刑に処する」とされているため、こうした刑罰の減軽はなされず、手助けしただけであっても実際に秘密漏示行為をした人と同様の刑罰の範囲で罰せられることになります。
このように、たとえ地方公務員でなくとも地方公務員法違反として逮捕されることは考えられます。
刑事事件、特になかなか聞きなじみのない法律違反での刑事事件は、わかりづらいことも多いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士がそういった特殊な刑事事件のご相談も受け付けております。
まずはお気軽にお問い合わせください。
次回の記事では、Aさんらがほかに疑われる可能性のある犯罪について触れていきます。
情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕①
情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕①
京都府木津川市を管轄する京都府木津警察署に勤務する警察官のAさんは、ある日、10年以上前から付き合いのある知人のBさんからの連絡を受けました。
実はBさんは、京都府木津川市で起こった恐喝事件の被疑者として京都府木津川警察署に捜査されており、Aさんもそのことを知っていました。
BさんはAさんに対し、「今の俺の捜査状況を教えてくれよ。10年来の仲だろう」などと言って自分の捜査の状況を教えるよう求め、Aさんはそれに応じ、Bさんの恐喝事件の捜査状況や、Bさんの逮捕予定日を連絡しました。
しかし、それが露見し、Aさんは地方公務員法違反(秘密漏示)、Bさんは地方公務員法違反(そそのかし)の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、取調べの中で、Bさんから金銭を受け取っていたのではないかと疑われていますが、そういった事実はないと否認しており、家族の依頼で接見に来た弁護士にもその内容を相談しました。
(※令和元年9月24日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・地方公務員法違反(秘密漏示)
今回のAさん・Bさんは、どちらも地方公務員法違反という犯罪の容疑で逮捕されていますが、今回の記事ではまずAさんの逮捕容疑である、秘密漏示による地方公務員法違反について取り上げます。
そもそも、地方公務員法とは、地方公務員の守るべき規律等について定めた法律であり、地方公務員はみんなこの法律を守らなければいけません。
今回のAさんの逮捕容疑にある「秘密漏示」とは、公務員が守るべき秘密を漏らしてしまったという犯罪です。
地方公務員法34条1項
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。
その職を退いた後も、また、同様とする。
この義務はいわゆる守秘義務というもので、地方公務員の仕事上知り得た秘密を他に漏らしてはいけないというものです。
この「秘密」がどういったものかというと、地方公務員法と同様、国家公務員の規律を定めた国家公務員法の「秘密」について、国家機関が単にある事項につき形式的に秘密扱いをしただけでは足りず、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものをいう(最決昭和52.12.19)とされている判例があります。
地方公務員法にいう「秘密」についても、この国家公務員法の「秘密」と同義であると考えられるため、地方公共団体が形式的に秘密であるとしているだけではなく、公にされていない、実質的に秘密として取り扱う必要のある事実が「秘密」であるとされるでしょう。
そして、「漏ら」すとは、秘密を知らない他人にその秘密を知らせることを指します。
その方法や人数は指定されていないことから、書面での通知や電話口で口頭で伝えるといった方法のいずれでも、秘密を知らない他人に知らせれば「漏ら」したことになります。
今回のAさんについて考えてみましょう。
Aさんは京都府警の警察官であり、地方公務員です。
そして、警察の捜査情報や逮捕予定日といったものは当然公にされるものではなく、警察の中でも秘密扱いされているものでしょう。
さらに、そうしたものが警察外に知られれば、捜査に支障をきたす可能性が出てくるため、秘密として保護されるべき事実でしょう。
こうしたことからBさんの捜査情報は地方公務員法の「秘密」であるということができ、それをBさんに知らせたAさんは秘密漏示行為による地方公務員法違反をしてしまったと考えられます。
こうした秘密漏示行為による地方公務員法違反は、以下の法定刑が定められています。
地方公務員法60条
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2号 第34条第1項又は第2項の規定(第9条の2第12項において準用する場合を含む。)に違反して秘密を漏らした者
次回の記事では、Bさんがどういった犯罪に問われうるのかについて触れていきます。
地方公務員法違反事件などの刑事事件にお困りの際は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
捜索差押時にパスワード聞き出し黙秘権侵害?②
捜索差押時にパスワード聞き出し黙秘権侵害?②
~前回からの流れ~
Aさんは京都市上京区内を走る電車内で、自身のスマートフォンを用いて乗客であるVさんのスカート内を盗撮しました。
VさんはAさんから盗撮されていることに気付いたため、Aさんが停車駅で降りようとした際に「この人盗撮してました」と大声で叫びました。
慌てたAさんはその場から逃走しましたが、事件の3日後、Aさんの自宅に京都府上京警察署の警察官が、捜索差押許可状を持ってやって来ました。
警察官は捜索差押許可状に基づき、Aさんの携帯電話を差し押さえました。
しかし、Aさんの携帯電話にはロックがかかっていたため、警察官はAさんに対しパスワードを質問し、Aさんは警察官に正直にパスワードを教えました。
警察官はそのパスワードをも用いてAさんの携帯電話のロックを解除し、Aさんの携帯電話内に多数の盗撮画像が保存されていることを発見しました。
そしてそれらの盗撮画像や動画を詳しく調べたところそのうちの1本の動画がVさんのスカート内を撮影していた物であることが判明しました。
本件でパスワードを教えた際にはAさんに対する警察官からの黙秘権の告知はありませんでした。
この直後に、警察官は逮捕状をAさんに示し、Aさんは京都府迷惑防止条例違反で通常逮捕されました。
Aさんの家族は直ちに刑事事件専門の弁護士事務所に初回接見を依頼し、接見に来た弁護士にAさんは上記経過について相談しました。
(この事案はフィクションです)
・パスワードを聞く際に黙秘権を告知しないことは違法?
前回の記事では、なぜパスワードを聞く際に黙秘権告知がないことが問題となりうるのか、そもそも黙秘権とは何か、といった点に触れていきました。
今回の記事では、具体的に今回の事案に沿って検討を行います。
本件のように、捜索差押中に黙秘権の告知を行わずパスワードを聞き出した事案につき裁判例があります(東京高裁平成31年2月19日決定)。
以下、その裁判例から引用を行います。
「そこで検討すると、上記のような捜索差押えの現場で警察官が質問する際に黙秘権告知を義務付ける規定はない上、上記質問の際、被告人が実際に逮捕されるなどして外部との連絡を絶たれて供述を迫られたり、警察官が被告人に供述義務があると積極的に誤信させたりした状況はなかったのであるから、本件捜査が違法であるとはいえず所論は採用できない」
裁判例では以上のように述べて、黙秘権の告知を行わなかったことは違法ではなかったと結論付けています。
したがって、本件のAさんのような場合でも違法を主張しても、違法性は認められない可能性が高いと思われます。
しかしながら、この裁判例でパスワードを聞き出すことが違法になる場合にも言及することには注目する必要があります。
すなわち、パスワードを聞き出す状況が「逮捕されるなどして外部との連絡を絶たれた状況」であるとか、「警察官が被告人に供述義務があると積極的に誤信させたりした状況」がある場合には、黙秘権を告知せずにパスワードを聞き出すことが違法であると判断される場合があることが考えられます。
本件に当てはめれば、聞き出した状況が何時間も周囲を複数人の警察官に囲まれ実質的に見れば逮捕されているのと変わらない状況であったり、一度はAさんがパスワードを答えることを拒否したにもかかわらず、警察官から「パスワードは伝えなければならない義務がある」と強く迫って言わせた場合には、黙秘権を告知せずパスワードを聞き出したことが違法と判断される可能性もあるといえます。
よって、黙秘権を告知しないことが違法になるかは、聞き出した際の警察官とのやり取りや当時の状況が重要であるということになります。
・初回接見の重要性
本件では、逮捕されたAさんのもとに直ちに弁護士が接見に向かっています。
逮捕されてから1回目の接見のことを初回接見といいます。
逮捕されれば、外部との連絡を遮断され、捜査機関の下に身体を置かれることになります。
したがって、初回接見は多くの場合逮捕された方が最初に外部の人と接触を持つ機会になります。
初回接見では、弁護士が事実を聴き取った上で、被疑者に黙秘権などの権利を説明します。
法律の専門家である弁護士が直ちに逮捕された方に面会することで被疑者を安心させるとともに、被疑者が適切に捜査機関に対し対応できるようにアドバイスをすることができます。
本件でも、弁護士が初回接見でAさんに面会したことで、黙秘権の説明を行い、Aさんが黙秘権を告知されないままパスワードを聞き出された違和感に気付くことができました。
本件では、違法と判断される可能性が低いケースでしたが、仮に具体例で挙げた違法と判断される可能性が高いケースでは迅速な証拠収集も重要になってきます。
警察官の対応が問題になるケースでは、直ちに逮捕された方から事情を聴き取った上で証拠化することが必要になります。人の記憶はどんどん薄れるのでスピードが重要になります。
刑事事件専門の弁護士であれば、捜査の違法が問題になるケースについても経験が豊富であり、被疑者から丁寧な聞き取りを行い、的確なアドバイスをすることができます。
また違法捜査が疑われる場合であれば、直ちに証拠化に動き、その後問題になる場合に備えることもできます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、初回接見サービスのお問い合わせ・受付を24時間365日いつでも受け付けております(0120-631-881)。
土日祝日でも対応を行っていますから、逮捕直後から弁護士を手配することができ、今後の刑事手続きへ備えることが可能です。
「とりあえず弁護士の接見だけ」といったご相談でも結構です。
お気軽にお問い合わせください。
捜索差押時にパスワード聞き出し黙秘権侵害?①
捜索差押時にパスワード聞き出し黙秘権侵害?①
Aさんは京都市上京区内を走る電車内で、自身のスマートフォンを用いて乗客であるVさんのスカート内を盗撮しました。
VさんはAさんから盗撮されていることに気付いたため、Aさんが停車駅で降りようとした際に「この人盗撮してました」と大声で叫びました。
慌てたAさんはその場から逃走しましたが、事件の3日後、Aさんの自宅に京都府上京警察署の警察官が、捜索差押許可状を持ってやって来ました。
警察官は捜索差押許可状に基づき、Aさんの携帯電話を差し押さえました。
しかし、Aさんの携帯電話にはロックがかかっていたため、警察官はAさんに対しパスワードを質問し、Aさんは警察官に正直にパスワードを教えました。
警察官はそのパスワードを用いてAさんの携帯電話のロックを解除し、Aさんの携帯電話内に多数の盗撮画像が保存されていることを発見しました。
そしてそれらの盗撮画像や動画を詳しく調べたところそのうちの1本の動画がVさんのスカート内を撮影していた物であることが判明しました。
本件でパスワードを教えた際にはAさんに対する警察官からの黙秘権の告知はありませんでした。
この直後に、警察官は逮捕状をAさんに示し、Aさんは京都府迷惑防止条例違反で通常逮捕されました。
Aさんの家族は直ちに刑事事件専門の弁護士事務所に初回接見を依頼し、接見に来た弁護士にAさんは上記経過について相談しました。
(この事案はフィクションです)
・パスワードを聞き出したことは黙秘権侵害?
本件で法的に問題になることはいくつかありますが、この記事では警察官が本件のような場合に、黙秘権の告知を行わずにパスワードを聞きだしたことが違法かについて検討します。
まず、パスワードを聞き出したことの違法性が問題になる理由について説明します。
刑事裁判では「違法収集証拠排除法則」というルールがあります。
詳細な説明は省きますが、簡単に言えば捜査機関が違法に集めた証拠は、刑事裁判において事件の証拠として使えない場合があるというルールです。
現に裁判で「違法収集証拠排除法則」により、ある証拠が裁判での証拠として認められなかったために無罪になったケースもあります。
ここで、本当はある人が犯人であることを示す証拠があるのに、その証拠を裁判で使えないから処罰されないというのは正義に反すると思われる方がいるかもしれません。
しかし、日本の刑事事件では、適正なルールに基づいた捜査を経ているからこそ適正に処罰できるという考えに基づいており、違法に集めた証拠は裁判で証拠として使うことができない場合があるというルールが用いられているのです。
本件のような盗撮事件では、盗撮した画像や動画が重要な証拠となります。
したがって、これらが証拠として使えるかどうかはAさんの処分において重要な意味を持ちます。
ですから、本件でAさんが盗撮した画像や動画を発見した過程であるパスワードの聞き出し行為が違法かどうかが問題となるのです。
・黙秘権の告知
まず、一般的な黙秘権について説明します。
黙秘権は簡単に言えば、自分の意思に反して発言しなくてもよいという権利です。
憲法38条1項でも「何人も自己に不利益な供述を強要されない」とあり、黙秘権は憲法でも国民に保障された重要な権利であるといえます。
例えば、今回のパスワードを伝えることも、言いたくないとして黙秘権を行使し、何も言わないこともできたわけです。
そしてこの権利を保障するために、被疑者を取り調べる場合には黙秘権を告知しなければならないことが刑事訴訟法で定められています(刑事訴訟法198条2項)。
仮に黙秘権を告知しなければいけない場合に、黙秘権の告知がされていない場合には、被疑者の黙秘権を侵害したとして違法な捜査であるといえます。
本件では、取り調べの場面ではなく捜索差押の場面での黙秘権の告知が問題となっています。
本件のような場面で黙秘権を告知していないことが違法といえるかどうかにつき、次に検討していくことにします。
黙秘権という言葉は比較的一般に知られている言葉ですが、それが一体どういった権利でどのように使われるのか、また、どのような場合に侵害といえるのかはなかなか浸透していません。
だからこそ、少しでも疑問や不安を感じたら、刑事事件に詳しい専門家、弁護士に相談してみましょう。
刑事事件専門の弁護士が所属する弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、24時間いつでもお問い合わせが可能です(0120-631-881)。
専門スタッフがお困りの方の状況それぞれに合った弊所弁護士によるサービスをご案内いたしますので、遠慮なくお電話ください。
脅迫罪・暴力行為処罰法違反で逮捕
脅迫罪・暴力行為処罰法違反で逮捕
Aさんは,京都府亀岡市の自宅で交際相手のVさんと口論になり,「いい加減にしないと痛い目にあわすぞ」などと言ってVさんに包丁を突きつけました。
恐怖を感じたVさんが京都府亀岡市を管轄する京都府亀岡警察署に通報し,Aさんは暴力行為処罰法違反の容疑で京都府亀岡警察署の警察官に逮捕されました。
その後,Aさんの両親が逮捕を知り,どうにかAさんの釈放や刑罰の軽減を実現できないかと,刑事事件専門の弁護士へ相談しました。
その結果,ひとまず弁護士がAさんのもとへ接見へ向かい,事件の詳細を聞くと同時に,今後の手続きの流れや取りうる弁護活動について話をしてくることとなりました。
(フィクションです。)
~脅迫罪~
今回のAさんは暴力行為処罰法違反の容疑で逮捕されていますが,こういった人を脅す行為によって成立する犯罪として耳なじみのある犯罪としては,脅迫罪が挙げられるのではないでしょうか。
人の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し,害を加える旨を告知して人を脅迫した場合,脅迫罪(刑法222条1項)が成立します。
その場合,2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。
刑法222条
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
脅迫罪の「脅迫」とは,一般に人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。
告知が相手方に到達して認識されたことは必要であるが,実際に相手方が畏怖したことまでは必要ありません(大判明治43年11月15日)。
脅迫に当たるかどうかは,具体的諸事情を勘案して判断される必要があります(最判昭和35年3月18日)。
Aさんの行為は,包丁という危険な武器を突きつけるものであり,「いい加減にしないと痛い目にあわすぞ」という威圧的な発言も相まって,Vさんが包丁で刺されて身体・生命を害されるのではと畏怖するのに十分といえますし,実際にVさんはそれに恐怖を感じて通報しているようです。
したがって,Aさんの行動は脅迫罪に当たる可能性が高いといえるでしょう。
~脅迫罪と暴力行為処罰法違反~
先ほどAさんには脅迫罪が成立する可能性が高いといいましたが,実際のAさんの逮捕容疑は暴力行為処罰法違反です。
実は,凶器を用いて脅迫を行った場合,より重い暴力行為処罰法(正式名称:暴力行為等処罰に関する法律)が適用される可能性があるのです(暴力行為処罰法1条)。
暴力行為処罰法は,暴力団などの集団的暴力行為や,銃や刀剣による暴力的行為,常習的暴力行為を,刑法の暴行罪,脅迫罪よりも重くかつ広範囲に処罰するための法律です。
暴力行為処罰法違反の場合,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられることとなり,脅迫罪よりも重い刑罰が設定されていることがわかります。
暴力行為処罰法1条
団体若ハ多衆ノ威力ヲ示シ、団体若ハ多衆ヲ仮装シテ威力ヲ示シ又ハ兇器ヲ示シ若ハ数人共同シテ刑法(明治40年法律第45号)第208条、第222条又ハ第261条ノ罪ヲ犯シタル者ハ3年以下ノ懲役又ハ30万円以下ノ罰金ニ処ス
※注:脅迫罪は刑法222条
Aさんは包丁という凶器を用いて脅迫罪にあたる行為をしていたわけですから,暴力行為処罰法のこの条文に該当し,暴力行為処罰法違反となる可能性があるのです。
~脅迫事件・暴力行為処罰法違反事件の弁護活動~
脅迫事件や凶器を用いて脅迫したことによる暴力行為処罰法違反事件を起こした場合で,特にAさんのように見知った近しい人を相手としてこうした事件を起こしてしまったような場合には,逮捕や勾留といった身体拘束を伴う捜査となりやすいです。
というのも,被害者が見知った人である場合,被疑者(加害者)自身が被害者に接触し,その証言を変えさせてしまう=証拠隠滅をしてしまうおそれがあると判断されやすいからです。
このように逮捕されてしまったような場合には,なるべく早く弁護士に依頼すべきです。
脅迫罪や暴力行為処罰法違反の容疑で逮捕された事件で依頼を受けた弁護士の活動としては,まずは身体拘束からの解放を目指すことが考えられます。
先ほど触れたような証拠隠滅のおそれのない環境をご家族などと協力して作り上げ,それを検察官や裁判官へ訴えるなどして釈放を求めていくことになるでしょう。
また,脅迫罪や暴力行為処罰法違反事件では,先ほど触れたように被害者が存在します。
事実に争いがないのであれば,速やかに被害者へ謝罪・弁償を行い,示談締結をすることで,早期釈放や刑罰の軽減が期待できます。
ただし,何度も繰り返すようですが,被疑者本人が被害者へ直接連絡することは,証拠隠滅のおそれがあるとみられやすいですし,被害者側からも恐怖や怒りから避けられがちです。
こういった場面でも,第三者である弁護士のサポートを受けることが望ましいでしょう。
京都の脅迫事件・暴力行為処罰法違反事件やその逮捕・勾留にお悩みの際は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
事例のAさんのように逮捕されている場合には,まずは弁護士が被疑者本人のもとへ行き,事件の詳細や伝言を聞き取り,アドバイスを行う初回接見サービスがおすすめです。
まずは0120-631-881までお電話ください。
窃盗罪の逮捕からの釈放
窃盗罪の逮捕からの釈放
京都市東山区在住のAさんは,近所にある牛丼店で,牛丼を持ち帰りで注文し,1万円札で支払いました。
Aさんは,店員が釣りの用意でレジを離れた際,カウンターに残された1万円札を持ち去りました。
店員が通報し,Aさんは,窃盗罪の容疑で京都市東山区を管轄する京都府東山警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです。)
~窃盗罪~
人の財物を盗んだ(窃取した)者には,窃盗罪(刑法235条)が成立します。
その場合,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が科せられます。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
条文にある通り,窃盗罪は他人の財物を窃取した場合に成立します。
「窃取」とは,他人の占有している財物の占有を侵害し,その占有を自分又は第三者に移転することをいいます。
簡単に言えば,他人が支配・管理している物を,その支配・管理をしている人の意思に反して支配・管理を破って奪い,自分又は第三者の支配・管理のもとに置くことを指します。
この時に暴行や脅迫を手段として財物を奪った場合には窃盗罪ではなく強盗罪が成立する可能性が出てきます。
さて,今回のケースについて考えてみましょう。
1万円札は,Aさんが牛丼の代金として牛丼店に支払ったものであり,その占有=管理・支配は牛丼店にあったといえます。
Aさんはその1万円を牛丼店の意思に反して無断で持ち去っているわけですから,1万円札を窃取したものといえ,Aさんには牛丼店に対する窃盗罪が成立する可能性が高いでしょう。
~窃盗事件で釈放を目指す弁護活動~
窃盗罪で逮捕され,刑事事件化し,身体拘束が続く可能性がある場合には,弁護士に依頼して釈放のために活動してもらうのがよいでしょう。
弁護士は,早期の釈放に向けて活動をしていくことができます。
逮捕直後であれば,検察官や裁判所に対し,勾留の必要性がないことを主張することができます。
例えば,被疑者が反省していること,家族の監督が期待できること,被疑者が職場で責任ある立場にあること,被疑者に扶養家族がいること,被害者と示談が成立しそうであることなどの事情があれば,こうした事情を利用して釈放を求めていくことが考えられます。
特にその中でも,窃盗罪の成立に争いがない場合,弁護士を通じて早期に被害者の方に対する被害弁償や示談交渉を進めることが重要です。
窃盗事件の被害届が提出される前に示談が成立した場合,刑事事件化を回避できますし,刑事事件化した後であっても不起訴処分によって早期の職場復帰や社会復帰を実現できる可能性が高くなります。
裁判が始まった後の示談であっても,執行猶予付き判決や減刑など効果があります。
さらに,今回のように逮捕されている場合であっても,示談により被害感情のおさまりや被疑者本人の逃亡・証拠隠滅の意思のないことを表すことができ,釈放を実現するための大きな一歩となり得ます。
いずれにせよ,なるべく弁護士に相談し,示談をして解決するのが望ましいといえます。
ただし,今回のケースのように示談交渉の相手方がお店であるような場合には,そもそも示談交渉をしてもらえないということも少なくありません。
だからこそ弁護士に相談し,示談交渉に取り掛かってもらうと同時に,示談ができなかった場合に備えての活動も行ってもらいましょう。
0120-631-881では,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士による初回接見サービスや初回無料法律相談のお問い合わせを365日24時間いつでも受け付けております。
窃盗事件で逮捕されてしまってお困りの方,刑事事件で釈放を目指したいという方は,弊所弁護士まで一度ご相談ください。
京都府迷惑防止条例違反(痴漢)で勾留回避
京都府迷惑防止条例違反(痴漢)で勾留回避
京都府南丹市在住のAさんは,京都府南丹市内を走行中の電車内で,偶然乗り合わせたVさんのお尻を右掌で触りました。
Aさんは,Vさんに右手を掴まれ,電車が停車した駅の駅員に突き出されました。
駅員が通報し,Aさんは臨場した警察官と京都府南丹警察署まで任意同行された後,取調べを受け,痴漢行為を認めたため逮捕されました。
Aさんの妻は,京都府南丹警察署からAさんを痴漢事件の被疑者として逮捕したと聞き,急いで弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
~迷惑防止条例違反(痴漢)~
迷惑防止条例は,市民に迷惑を与えるさまざまな行為を禁止し,罰則を定めたもので,都道府県ごとに定められています。
迷惑防止条例では,性犯罪についても規定しており,いわゆる痴漢にも罰則が定められているので,痴漢をした場合,その痴漢事件の発生地の迷惑防止条例違反として刑事事件となりえます(なお,態様によっては各都道府県の迷惑防止条例違反ではなく,刑法上の強制わいせつ罪となる可能性もあります。)。
京都府の迷惑防止条例=京都府迷惑行為防止条例では,以下のようにして痴漢行為を禁止しています。
京都府迷惑防止条例3条
何人も,公共の場所又は公共の乗物において,他人を著しく羞恥させ,又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で,次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(1) みだりに,他人の身体の一部に触ること(着衣の上から触ることを含む。)。
(2) みだりに,物を用いて他人の身体に性的な感触を与えようとすること。
(以下略)
Aさんは電車内でVさんのお尻を右の掌で触るという行為をしていますが,このAさんの行為はいわゆる痴漢であり,典型的な迷惑防止条例違反といえます。
そして,京都府の迷惑防止条例違反のうち,この痴漢行為に当てはまった場合には,「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」(京都府迷惑防止条例10条1項)となります。
ただし,常習としてこうした痴漢行為をしていたと認められた場合には,より重い「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」となります(京都府迷惑防止条例10条3項)。
なお,この常習であるかどうかは単に痴漢の余罪や回数が多いかどうかということだけではなく,前科前歴の有無や期間といった様々な事情から判断されます。
迷惑防止条例違反(痴漢)の法定刑は前述のとおりであり,他の犯罪と比較して軽い部類といえます。
しかし,現行犯であった場合やAさんのように被害者や目撃者がその場で駅員や警察へ通報したような場合には,逮捕されてしまうことも十分考えられます。
迷惑防止条例違反(痴漢)で逮捕されてしまった場合,何もしないでいると,勾留されてしまい,長期間身体拘束されてしまう可能性もありますが,特に現行犯逮捕のような場合には,弁護士が身柄解放活動をすることで釈放される場合も少なくありません。
ですから,こうした痴漢事件で逮捕されてしまった際には,なるべく早く弁護士に依頼して,刑事事件化や勾留を避けるために動くべきでしょう。
逮捕に引き続く身体拘束である勾留をするためには,被疑者に逃亡の可能性と証拠隠滅の可能性があることが必要です。
そのため,弁護士の活動としては,検察官や裁判所に対し,逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを主張することが考えられます。
例えば,同居家族の監督が期待できること,被疑者に扶養家族がいること,被疑者が職場で責任ある立場にあること,被疑者と被害者が全くの他人であること,駅の1日の乗降客数が多く被害者に接触することは現実的ではないこと,被疑者が反省し謝罪の意思を有していること,示談が成立しそうであることなどの事情があれば,それらを的確に主張していくことになるでしょう。
また,弁護士は示談のために動き,被疑者に代わって被疑者に対して謝罪の意思を伝え,損害を賠償する示談交渉を行うこともできます。
電車内での痴漢事件では,被害者がどこのどなたかということが分からないことが圧倒的に多いです。
そのため,示談交渉をするには被害者の同意のもとに捜査機関から被害者の方の連絡先を教えてもらう必要がありますが,通常被疑者本人やその関係者に直接被害者の方の情報を教えるということは考えにくいです。
それは,痴漢行為を受けた被害者の方の恐怖感情や処罰感情が強いことも多く,その被害者の方が被疑者に個人情報を知られることをよしとしないことが多いためです。
だからこそ,弁護士を間に入れ,直接のやり取りをしなくてよい状況を作ることで示談交渉を受けてもらいやすくしていくことができるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は痴漢事件も含む刑事事件専門の法律事務所です。
京都府の痴漢事件にお困りの際は弊所弁護士までご相談ください。
京都市中京区で名誉毀損事件
京都市中京区で名誉毀損事件
京都市中京区に住むAさんは,会社の飲み会に参加しました。
飲み会の終盤で,上司のVさんが店員と揉めだし,その店員を殴り全治2週間の怪我を負わせました。
日頃からVさんによるパワハラに耐えかねていたAさんは,この事実を記載しVさんは乱暴者だという内容のビラを社内の掲示板に貼り出しました。
Vさんが警察に相談したことで,Vさんの社内関係者に対して名誉毀損罪による立件を念頭に京都府中京警察署の警察官による事情聴取が開始されました。
自身が被疑者になるかもと怖くなったAさんは弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
【名誉毀損罪】
人の名誉を傷つけたり,人を侮辱することはそれぞれ名誉毀損罪や侮辱罪などによって処罰の対象となります。
事実の適示によらず,単に軽蔑の価値判断を示すことによって名誉を害した場合には侮辱罪の適用が考えられますが,今回はVさんによる店員への暴行(傷害)行為という事実を示しているので,名誉毀損罪の適用が最も濃厚といえます。
刑法第230条第1項は,「公然と事実を適示し,人の名誉を毀損した者は,その事実の有無にかかわらず,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と名誉棄損罪を規定しています。
名誉毀損罪における名誉とは,人に対する社会的評価を意味します。
例えば,ある人が特定の女性と親密に交際しているという事実は,それを公表することによってその人の社会的評価を下げるものではないですが,その関係がいわゆる不倫であると示すときは倫理的・道徳的非難を含むことになり名誉毀損行為となる場合があります。
今回の事件のように,被害者が過去に犯した犯罪の事実についても,それが公になると被害者の社会的評価は下がるものと考えられますので,名誉棄損行為に当たるとされる場合が多いです。
名誉棄損罪の成立において,示された事実は,それが真実であることを要しません。
つまり,本当にあったことでなくとも,あるいは本当であったことでも,その事実を述べることにより被害者の社会的評価が害される危険を持つものであれば名誉棄損罪の処罰の対象となり得るということです。
また,名誉棄損罪の成立の際,実際に被害者の名誉が害される必要はありません。
それは,名誉を害するような行為があったとしても,その行為によって被害者の社会的評価が低下したことを確認するのはほとんど不可能だからです。
そこで,名誉毀損罪が成立するためには,名誉が実際に侵害されたことは必要とされず,侵害の危険が生じたことで十分とされています。
加えて,社会的評価を下げるのに適した行為をすることで侵害の危険が生じたものとされ,実際に具体的な侵害の危険が生じることは必要とされません。
一方,名誉毀損罪の成立要件となる行為には公然性が必要とされています。
公然とは,不特定または多数の人が知ることのできる状態をいいます。
ただし,判例によれば,事実を示した相手が特定かつ少数人に止まる場合であっても,そこから他の人に伝播し最終的に不特定多数者が認識し得る可能性があれば公然性が認められるとされています(最判昭和34・5・7刑集13巻5号641頁)。
加えて,名誉棄損罪の成立には事実を適示されることによって社会的評価が害される人物が特定されていることも必要です。
つまり,「日本人」や「京都府民」などといった漠然とした表示では特定性を欠くことになり,被害者の氏名やその者とはっきりと分かる属性が示されていなければ名誉毀損罪は成立しません。
さて,今回のAさんはVさんの店員に対する暴行を示しています。
暴行行為は暴行罪等で処罰される犯罪にあたりうるので,この事実を示されたVさんの社会的評価は害されたものといえます。
AさんはVさんの暴行行為に関するビラを社内の掲示板のみに貼っており,公然性が問題になり得ますが,会社には社外の人間も多く出入りし,さらには判例の理論に則れば,ビラを見た人物が周囲の人物に拡散してしまう可能性も否定できず公然性も認められるでしょう。
したがって,Aさんの行為は名誉毀損罪に当たり得るものといえます。
【真実性の証明】
刑法第230条の2は第1項で「前条(230条)第1項の行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には,事実の真否を判断し,真実であることの証明があったときは,これを罰しない」と定めています。
同条第2項によって,公訴前の犯罪行為に関する事実は公共の利害に関する事実とみなされるので,Aさんが起訴された場合はこの規定を利用することにより名誉毀損罪の成立を回避することが考えられます。
ただし,主たる目的が公益を図るところになければならないため,Aさんが既にパワハラへの報復目的であったことを示している場合は真実性を証明することによる処罰回避は難しくなります。
【活動の方針】
名誉毀損罪は親告罪なので,Vさんの告訴がなければ起訴されません。
Vさんは既に警察へ相談していますが,告訴されているかは不明です。
さらには,起訴される前であれば告訴を取り消すことができるので,Vさんと早めに示談をして告訴しない(あるいは取り下げる)ようにすることができれば起訴を回避することができます。
示談交渉を当事者のみで行う場合,成立までにかかる時間やその内容などで多くの負担を要します。
また,被害者が加害者と接触することを拒み,交渉を開始することができないケースも多いです。
お早めに弁護士に依頼していただくことで,そういった負担を軽減し,依頼者様により有利な内容で示談を成立させる可能性を飛躍的に高めることができます。
名誉毀損罪の被疑者となってしまった方,京都府中京警察署で取調べを受けることになってしまった方はお早めに刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
のぞきで少年事件②
のぞきで少年事件②
~前回からの流れ~
Aくんは、京都市下京区の中学校に通っている15歳です。
ある日の下校途中、Aくんは自分の好みの女性がすぐそばのマンションの1階の部屋に入っていくのを目撃しました。
Aくんは女性のことが気になり、しばらくその姿を見ていると、ちょうどマンションの脇道部分に面している窓が風呂場の窓であることに気がつきました。
興味が出てきてしまったAくんは、その風呂場の窓の方へ行き、女性が風呂に入っている様子をのぞくようになりました。
後日、ついに女性がAくんののぞき行為に気づき、京都府下京警察署に通報しました。
その後の捜査でAくんがのぞき事件の犯人であることが発覚し、Aくんは京都府下京警察署に呼ばれることになりました。
Aくんの両親は寝耳に水のことで驚き、Aくんになぜそんなことをしたのか問い詰めましたが、Aくんはやましい気持ちがありなかなか両親に話すことができず悩んでいます。
そこで、AくんとAくんの両親は少年事件に精通している弁護士に相談し、のぞき事件への対応や、これからどういった活動をすべきなのかを相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・のぞき事件と住居侵入罪・建造物侵入罪
前回は、のぞき行為自体がどういった犯罪に抵触するのかについて取り上げましたが、のぞき事件では他にも犯罪が成立する可能性があります。
のぞきをするためにマンションの部屋やベランダ、敷地内に入っていたような場合には、住居侵入罪や建造物侵入罪が成立する可能性が出てくるのです。
刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
住居侵入罪・建造物侵入罪は刑法の同じ条文に定められており、どこに侵入したかで罪名が変わります。
今回のようなのぞき事件の場合、女性の部屋やベランダに侵入したような場合は住居侵入罪が、マンションの敷地内に侵入したような場合は建造物侵入罪が成立すると考えられます。
これは、住居侵入罪や建造物侵入罪は、その住居や建造物の管理者の意思に反して侵入することで成立すると解されていることからで、マンションの個別の部屋やそれに付随するベランダはそこの住人が管理しており、そうでないマンションの共用部分や敷地内についてはマンションの管理人やオーナーが管理していることから、罪名が変化するのです。
こうした場合、示談交渉の相手も侵入した場所の管理者になるため、住居侵入罪となるか建造物侵入罪となるかでは示談交渉の相手も異なってくることにも注意が必要です。
また、住居侵入罪・建造物侵入罪については、実際にのぞき行為が達成されていなかったとしてものぞき目的で部屋内やベランダ内、マンションの敷地内に入っただけで成立してしまうことにも注意が必要となります。
・のぞきと少年事件
特に、今回のAくんがそうであるように、少年事件、とりわけ性犯罪にかかわるようなものでは、なかなか少年自身が家族に素直に話ができないケースも多く見られます。
実際にはやってしまったことに間違いがないにもかかわらず親の手前容疑を認められずに話がこじれてしまった、少年事件を起こした原因を正直に話すことができずに再犯防止のための対策が立てられなかった、というケースも少なくありません。
だからこそ、第三者である弁護士のサポートを受けながら少年事件に対応していくことで、スムーズな解決を目指すことができます。
親などの身近な人にはなかなか話しにくいことであっても、他人だからこそ打ち明けやすいというケースもあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、刑事事件・少年事件を専門に取り扱ってきていますから、まだ発展途上の少年が当事者だからこそ悩むポイントも多い少年事件への対応も心得ています。
まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の初回無料法律相談は土日祝日も対応していますから、平日は仕事や学校があって相談しづらい、という少年やそのご家族の方でも安心です。
ご予約・お問い合わせも24時間いつでも受け付けていますから、遠慮なく0120-631-881までお電話ください。