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チケット不正転売禁止法違反事件で逮捕されたら②

2019-06-17

チケット不正転売禁止法違反事件で逮捕されたら②

~前回からの流れ~
京都市伏見区に住んでいるAさんは、チケット転売により儲けようと考え、チケット会社Xから、人気アイドルグループYのコンサートのチケットを購入しました。
そして、定価より数倍高い値段をつけてインターネットで転売先を募ることを繰り返していました。
するとある日、Aさんの自宅に京都府伏見警察署の警察官がやってきて、Aさんはチケット不正転売禁止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・「不正転売」とは

前回の記事では、チケット不正転売禁止法の対象となるチケットについて詳しく触れましたが、今回の記事では、チケット不正転売禁止法のいうチケットの「不正転売」はどういった行為を指すのか見ていきます。

チケット不正転売禁止法2条4項
この法律において「特定興行入場券の不正転売」とは、興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいう。

「特定興行入場券」とは、いわゆるチケットのことを指していますから、この条文がチケットの不正転売について定義づけている条文であるといえます。
この条文によると、①「興行主の事前の同意を得ない」、②「業として行う有償譲渡であり」、③「興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とする」という条件を満たしたとき、チケットの不正転売とされることがわかります。

①「興行主の事前の同意を得ない」
その興行、例えばライブやコンサートの興行主の同意なしの転売を指します。
例えば、興行主が公式で行っているチケットのリセールシステムや交換サイトを利用した転売の場合、公式が運営しているわけですから、興行主は転売に同意しているものと考えられます。
しかし、フリマアプリやネットオークションで勝手にチケット転売することは、わざわざ興行主に連絡を取って許可を得ない限り、同意を得ていない転売であると考えられるでしょう。

②業として行う有償譲渡
この「業として」とは、反復継続の意思をもって、ということです。
つまり、チケット不正転売禁止法では、チケットの不正転売を、繰り返すつもりでする行為に限定しているのです。
この場合、反復継続の意思をもって行う行為であればよいので、たとえ1回目の不正転売であっても反復継続の意思が認められれば「業として」に該当すると考えられます。

③「興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とする」
簡単にいえば、これは定価より高い値段でチケット転売行為をすることを指します。
つまり、定価での取引はチケット不正転売禁止法のいうチケットの不正転売にはあたりません。

・チケット不正転売禁止法の禁止していること

では、チケット不正転売禁止法はどういったことを禁止しているのでしょうか。

チケット不正転売禁止法3条
何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない。

チケット不正転売禁止法4条
何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない。

チケット不正転売禁止法3条では、先ほど詳しく触れたチケットの不正転売そのものを禁止しています。
そして、同法4条は、チケットの不正転売そのものではなく、チケット転売目的でのチケットの購入を禁止しています。
ですから、たとえチケット転売行為を成し遂げていなかったとしても、チケット転売目的でチケットを購入しただけでチケット不正転売禁止法違反になるのです。
なお、これらの行為をしてチケット不正転売禁止法違反となれば、「1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれらの併科」となります(チケット不正転売禁止法9条)。

刑事事件では、一般の方のみで見通しを立てたり手続きへの対応を行ったりすることが難しい場面が多く存在します。
特にチケット不正転売禁止法はまだ施行されて日が浅く、過去の事例があるわけではないため、チケット不正転売禁止法違反事件逮捕された場合にどうしてよいかわからず困ってしまうということも想定されます。
そういった時こそ、刑事事件の専門家である弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士までご相談ください。
0120-631-881では、24時間いつでも弊所弁護士によるサービスをご案内しております。

チケット不正転売禁止法違反事件で逮捕されたら①

2019-06-15

チケット不正転売禁止法違反事件で逮捕されたら①

 

京都市伏見区に住んでいるAさんは、チケット転売により儲けようと考え、チケット会社Xから、人気アイドルグループYのコンサートのチケットを購入しました。
そして、定価より数倍高い値段をつけてインターネットで転売先を募ることを繰り返していました。
するとある日、Aさんの自宅に京都府伏見警察署の警察官がやってきて、Aさんはチケット不正転売禁止法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・チケット不正転売禁止法

先日、2019年6月14日に、チケット不正転売禁止法が施行されました。
チケット不正転売禁止法とは、正式名称を「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」という法律です。
昨今話題に上っている、アーティストのコンサートやライブ、展示会といったチケットの転売行為を取り締まる法律で、これに違反してチケット転売を行えば、刑事事件となり刑罰が科されます。
今回の記事では、チケット不正転売禁止法を詳しく見ていきましょう。

・チケット不正転売禁止法の対象

まず、チケット不正転売禁止法の対象となるチケットは、どのようなチケットなのでしょうか。
チケット不正転売禁止法の条文を見てみましょう。

チケット不正転売禁止法2条
1項 この法律において「興行」とは、映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツを不特定又は多数の者に見せ、又は聴かせること(日本国内において行われるものに限る。)をいう。

2項 この法律において「興行入場券」とは、それを提示することにより興行を行う場所に入場することができる証票(これと同等の機能を有する番号、記号その他の符号を含む。)をいう。

3項 この法律において「特定興行入場券」とは、興行入場券であって、不特定又は多数の者に販売され、かつ、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
1号 興行主等(興行主(興行の主催者をいう。以下この条及び第5条第2項において同じ。)又は興行主の同意を得て興行入場券の販売を業として行う者をいう。以下同じ。)が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該興行入場券の券面に表示し又は当該興行入場券に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器(入出力装置を含む。)の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたものであること。
2号 興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者(興行主等が当該興行を行う場所に入場することができることとした者をいう。次号及び第5条第1項において同じ。)又は座席が指定されたものであること。
3号 興行主等が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項を確認する措置を講じ、かつ、その旨を第1号に規定する方法により表示し又は表示させたものであること。
イ 入場資格者が指定された興行入場券 入場資格者の氏名及び電話番号、電子メールアドレス(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(平成14年法律第26号)第2条第3号に規定する電子メールアドレスをいう。)その他の連絡先(ロにおいて単に「連絡先」という。)
ロ 座席が指定された興行入場券(イに掲げるものを除く。) 購入者の氏名及び連絡先

つまり、チケット不正転売禁止法の対象とされているチケットは、①販売の際に興行主の同意のない有償譲渡が禁止されている旨を明示しており、それがチケットに記載されており、②興行日時・場所・座席又は入場資格者が特定されており、③チケット購入者の氏名や連絡先が確認できる措置が講じられており、それがチケットに記載されているものとなります。
ですから、例えば、開催日時の指定がされていないチケットや、販売時に購入者の連絡先等の確認のないチケットは、チケット不正転売禁止法の対象外となるのです。

現在、インターネットを利用して大手チケット会社からチケットを購入しようとすれば、チケット会社への会員登録を求められたり、その場限りの利用であってもメールアドレスや氏名等を登録する必要が出てくることが大半です。
さらに、そうしたチケットサイトの利用規約では、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する規約が定めてあることが多く、販売の際にはその利用規約の確認を求められることになっているでしょう。
そして、配信または発行されたチケットには、注意事項として、同意のない有償譲渡の禁止等が書いてあることがほとんどです。
そうなれば、上記①や③に当てはまるチケットが大半であることがわかります。
ですから、「このチケットは大丈夫だろう」と甘く考えてチケット転売行為をしてしまう、ということは避けた方がよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の弁護士の所属する法律事務所です。
刑事事件専門だからこそ、新しい法律・犯罪にも迅速に丁寧に対応をしていくことができます。
チケット不正転売禁止法違反事件でお困りの際は、弊所弁護士までご相談ください。

次回の記事では、チケットの「不正転売」とはどのようなことを指しているのか、法律を確認しながら見ていきます。

京都府南丹市の児童ポルノ製造事件

2019-06-13

京都府南丹市の児童ポルノ製造事件

Aさんは,SNSで知り合った京都府南丹市在住の小学6年生のVさんを,自宅に呼び,Vさんの裸の写真を撮りました。
帰宅したVさんがAさんに裸の写真を撮られたことを親に話したことで,親が京都府南丹警察署まで通報しました。
その後,Aさんは,捜査を開始した京都府南丹警察署の警察官に児童ポルノ規制法違反(製造)の容疑で逮捕されました。
Aさんの家族は,Aさんが警察に連れていかれたことで慌ててしまい,どうしたらよいのかわからなくなってしまいました。
そこで,Aさんの家族は,インターネットで弁護士を探し,すぐに対応をしてくれるという刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

~児童ポルノ規制法違反(製造)~

児童ポルノを製造することは,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律児童ポルノ規制法)で禁止されています。
児童ポルノを製造した場合,3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられます(児童ポルノ規制法7条4項,2項)。
児童ポルノ」には,衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって,殊更に児童の性的な部位が露出され又は強調されているものであり,かつ,性欲を興奮させ又は刺激するものを写した写真等が含まれます(児童ポルノ規制法2条3項)。
18歳未満の児童であるVさんの裸を撮影した写真は児童ポルノ(児童ポルノ規制法2条3項1号)に該当します。
ですから,その写真を作成することで児童ポルノ製造をしたAさんの行為は,児童ポルノ規制法違反となる可能性が高いのです。

なお,今回のAさんの場合,小学6年生のVさん相手に児童ポルノ製造を行っています。
もしもこの際,Vさんにわいせつな行為をしていれば,児童ポルノ製造による児童ポルノ規制法違反だけでなく,刑法上の強制わいせつ罪や,児童福祉法違反といった別の犯罪も成立しうることに注意が必要です。

~弁護活動~

児童ポルノ規制法違反(製造)の罪は,前述のとおり,決して軽い犯罪ではありません。
警察への相談や通報によって刑事事件化すれば,逮捕されてしまう可能性も低くありません。
もし,児童ポルノ規制法違反事件で警察の捜査を受け,逮捕され,刑事事件になれば,自宅や職場等を捜索され,事件が周囲に知れてしまうおそれがあります。
さらに,取調べでは,児童ポルノの入手先や余罪についても追及されることになるので,事前に信頼できる刑事事件専門の弁護士に相談する事をお勧めします。

また,児童ポルノを製造したことに争いがないのであれば,弁護士に相談して示談することをお勧めします。
示談ができれば,略式罰金等によって公の法廷に立たずに事件を収束させることができる可能性が出てくる他,裁判になったとしても有利な情状となります。
しかし,児童ポルノ製造事件での示談の相手方は,被害者本人が未成年であるため,被害者の親となりますが,自分の子供が被害に遭っているわけですから,被害感情を強く持っていらっしゃる方も多いです。
そうした場合,当事者同士のやりとりでは,示談交渉が難しい場合もあります。
その意味でも,第三者的立場で専門的な意見を述べることのできる弁護士に依頼すべきです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,児童ポルノ製造事件等,児童に関連する刑事事件のご相談も受け付けております。
事件の性質上,児童ポルノにかかわる刑事事件はなかなか人に相談しづらいという声も聴かれます。
弁護士であれば,相談内容が外に漏れる心配もありませんから,安心してご相談いただけます。
京都府児童ポルノ製造事件に御困りの際は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士までご相談ください。

軽犯罪法違反で逮捕?

2019-06-11

軽犯罪法違反で逮捕?

京都市山科区に住んでいるAさんは、ハードロックなどの音楽を聴くことを趣味としていました。
Aさんは朝早くや夜遅くという時間帯にも関わらず自宅の窓を開けて音楽を大音量で聞いており、周辺住民から苦情が入ることもありましたが、それを無視していました。
しばらくこうしたことが続き、周辺住民が京都府山科警察署に通報しました。
通報を受け、京都府山科警察署から警察官がやってきてAさんに注意をしましたが、Aさんは警察官に言い返し、注意に従わず無視したり、警察官を追い返したりしていました。
そうしたことが半年ほど続いたある日、Aさんはついに軽犯罪法違反の容疑で京都府山科警察署逮捕されてしまいました。
(※令和元年6月10日朝日新聞DIGITAL配信記事を基にしたフィクションです。)

・軽犯罪法違反

軽犯罪法とは、33個の行為を挙げ、それらについて取り締まっている法律です。
今回のAさんの場合、警察官の注意を無視して騒音を発生させていたことから、軽犯罪法1条14号「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」に該当すると判断され、軽犯罪法違反とされたのでしょう。
軽犯罪法では、こういったいわゆる静穏妨害の罪以外にも、虚偽通報の罪(1条16号)や覗きの罪(1条23号)などが規定されています。

なお、軽犯罪法の規定されている刑罰は全て拘留または科料とされています。
拘留は1日以上30日未満の刑事施設への拘置、科料は1,000円以上1万円未満の没収です。
これだけ見ると比較的軽い刑罰であるように見えますが、刑罰であることには変わりありませんから、軽犯罪法違反で有罪が確定し、これらの刑罰を受ければ前科となります。

・軽犯罪法違反では逮捕されない?

この記事を読まれている方の中には、もしかすると上記事例に疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
上記事例のAさんは、軽犯罪法違反の容疑で逮捕されていますが、インターネット等では、「軽犯罪法違反では逮捕されない」という情報が散見されるからです。
それでは、刑事訴訟法の逮捕についての規定を確認してみましょう。

刑事訴訟法199条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。
ただし、30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

先ほど触れたように、軽犯罪法違反の法定刑は拘留または科料ですので、刑事訴訟法の言う「拘留又は科料に当たる罪」であることになります。
ですから、軽犯罪法違反の場合、逮捕をするには「被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合」に限られることになるのです。
ここで「前条の規定」とは、刑事訴訟法198条の「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」という規定を指しています。
つまり、軽犯罪法違反の場合、住所不定の場合か正当な理由なく任意出頭を拒否した場合にのみ逮捕される可能性が出てくることになります。
こうしたことから軽犯罪法違反の容疑で逮捕されることが珍しくなり、「軽犯罪法違反逮捕されない」というイメージがついてしまう原因となったのだと考えられます。

しかし、住所不定もしくは正当な理由のない任意出頭の拒否という条件に当てはまれば、軽犯罪法違反であっても逮捕される可能性はあるわけですから注意が必要です。
上記事例のAさんは警察官を追い返すといった行為もしていることから、正当な理由なく任意出頭を拒否したと判断されたのではないかと考えられます。

逮捕されてしまえば一定期間身体拘束されることになりますし、逮捕されたことによって事件が報道され、世間に刑事事件を起こしたと知られてしまう可能性も出てきてしまいます。
ですから、そもそも逮捕をされないようにすること、逮捕されてしまったら釈放を求めていくこと、その後の取調べ等の手続きへの対応を知っておくことが重要となります。
そうしたことは、刑事事件に強い専門家である弁護士に早めに相談しましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、0120-631-881でいつでも専門スタッフが弊所弁護士によるサービスを案内しています。
逮捕が不安な方、ご家族ご友人が逮捕されてしまったという方は、まずは遠慮なくお電話ください。

同乗者相手でもひき逃げになる?②

2019-06-09

同乗者相手でもひき逃げになる?②

~前回からの流れ~
Aさん(20歳男性)は、自身の友人であるVさん(20歳男性)を後ろに乗せ、京都市右京区内の道路をバイクで走行していました。
すると、Aさんがよそ見運転をしてしまったことから、対向車と接触してしまいました。
対向車の運転手とAさんに怪我はありませんでしたが、Vさんはその事故により全治3週間の怪我を負ってしまいました。
Aさんは事故を起こしてしまったことに動揺して、Vさんと対向車の運転手をおいてその場から逃げてしまいました。
すると翌日、Aさん宅に京都府右京警察署の警察官がやってきて、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として、過失運転致傷罪と道路交通法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
話を聞いたAさんの家族は、対向車の運転手に怪我がないのにひき逃げとなってしまうのか不思議に思い、交通事件も扱う刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(※令和元年6月2日産経新聞配信記事をもとにしたフィクションです。)

・同乗者相手でもひき逃げ?

今回のAさんの起こした事故では、Aさん自身と対向車の運転手は怪我をせず、Aさんの運転していたバイクに同乗していたVさんが怪我をしています。
ひき逃げというと、事故に遭った相手側の運転手や同乗者、歩行者が被害者となるイメージが強いと思いますが、Aさんのような、自分の運転していた車やバイクに同乗していた同乗者が怪我をしたような場合でもひき逃げとなるのでしょうか。

結論から申し上げますと、Aさんのような、事故を起こした人が運転していた車の同乗者が怪我をした場合でも、その同乗者に対して救護等を行わなければ、ひき逃げとなります。
まずは人身事故を過失で引き起こしてしまった場合に適用される、いわゆる過失運転致死傷罪を見てみましょう。

自動車運転処罰法5条(過失運転致死傷罪)
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

過失運転致死傷罪の条文を見ると、単に「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者」に過失運転致死傷罪が成立するとされています。
ですから、その「死傷」という結果が、事故の相手の車に乗っていた人や歩行者でなくとも、この犯罪は成立するということになります。
つまり、自分の過失によって事故を起こし、その結果自分の車に乗っていた同乗者が怪我をしたり死亡したりした場合にも、過失運転致死傷罪が成立することになるのです。

そして、ひき逃げについて定めている道路交通法の条文も再度確認してみましょう。

道路交通法72条1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

こちらについても、定められている内容は負傷者を救護することや警察へ報告することだけであり、怪我を負った人がどういった人か=相手側の車に乗っていた人や歩行者なのか、同乗者なのか、といった区別・限定はされていません。
ですから、たとえ負傷者が同乗者だけであったとしても、救護しなかったり警察への報告をしなかったりすれば道路交通法の義務に違反し、ひき逃げとなるのです。
こうしたことから、Aさんの事件についてもひき逃げと認められると考えられます。

ひき逃げ事件では、一度現場から逃げていることから、逮捕や勾留といった身体拘束を伴う捜査が行われやすいといわれています。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げによって逮捕されてしまったというご相談ももちろん承っています。
まずは0120-631-881からお問い合わせください。

同乗者相手でもひき逃げになる?①

2019-06-07

同乗者相手でもひき逃げになる?①

Aさん(20歳男性)は、自身の友人であるVさん(20歳男性)を後ろに乗せ、京都市右京区内の道路をバイクで走行していました。
すると、Aさんがよそ見運転をしてしまったことから、対向車と接触してしまいました。
対向車の運転手とAさんに怪我はありませんでしたが、Vさんはその事故により全治3週間の怪我を負ってしまいました。
Aさんは事故を起こしてしまったことに動揺して、Vさんと対向車の運転手をおいてその場から逃げてしまいました。
すると翌日、Aさん宅に京都府右京警察署の警察官がやってきて、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として、過失運転致傷罪と道路交通法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
話を聞いたAさんの家族は、対向車の運転手に怪我がないのにひき逃げとなってしまうのか不思議に思い、交通事件も扱う刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(※令和元年6月2日産経新聞配信記事をもとにしたフィクションです。)

・そもそもひき逃げとは

最近は交通事故が報道される機会も多いですが、その中でもひき逃げ事件は、皆さんの目に触れることも多いでしょう。
しかし、ひき逃げという行為がどういった犯罪に当てはまるのか、具体的な犯罪名はなかなか知られていません。

ひき逃げはよく使われる単語ではありますが、「ひき逃げ」という犯罪名は存在しません。
よく言われる「ひき逃げ」は、交通事故の中でも人身事故を起こしてしまった場合に発生する道路交通法上の義務に違反したことを指しています(物損事故の場合は「当て逃げ」となります。)。
その義務とは、道路交通法の以下の条文に定められています。

道路交通法72条1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。

このうち、前段の規定については「救護義務」(負傷者の救護をする義務)、「危険防止措置義務」(道路上の危険を防止する措置をする義務)と呼ばれており、後段の規定については「報告義務違反」(事故について警察に報告する義務)と呼ばれています。
ひき逃げは、人身事故を起こしているにも関わらず、この義務を果たさずに逃げていることから、道路交通法上の義務に違反する道路交通法違反となるのです。

そして、ひき逃げの場合、そもそも人身事故を起こし、人を死傷させてしまっています。
この部分に関しては、道路交通法ではなく、いわゆる自動車運転処罰法(正式名称:自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)に定められています(今回は過失=不注意によって事故を起こしてしまった場合に限定して紹介します。)。

自動車運転処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

これがいわゆる過失運転致死傷罪と呼ばれる犯罪で、過失による人身事故の際に適用される犯罪です。
すなわち、ひき逃げの場合、多くはこの過失運転致死傷罪と、先ほど紹介した道路交通法違反の2つが成立することになるのです。

では、Aさんの場合、どういった経緯からひき逃げと判断されるのでしょうか。
次回の記事で詳しく検討します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、ひき逃げなど交通事故に関連した刑事事件も取り扱っています。
京都府ひき逃げ事件でお困りの際は、お問合せ用フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

電力小売りで特商法違反事件②

2019-06-01

電力小売りで特商法違反事件②

~前回からの流れ~
Aさんは、とある会社Xに、訪問販売を行う営業の社員として勤務しています。
ある日Aさんは、京都市南区に住むVさん(別の大手電力会社Yと契約中)の自宅を訪ねると、大手電力会社Yの社員であると偽って、「現在Vさんが契約している料金プランよりも別の料金プランの方が安くなるから料金プラン変更をした方がよい」などと言って、大手電力会社Yでの料金プラン変更に見せかけ、会社Xへの新規契約を結ばせました。
後日、大手電力会社Yからの通知で料金プランの変更がなされていないことや、全く別の会社Xとの新規契約がなされていることに気づいたVさんが京都府南警察署に相談したことにより、Aさんは特商法違反(不実告知)の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年5月29日産経新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・特商法の「不実告知」

先日の記事では、Aさんの行っている訪問販売が、消費者の利益の保護等を行っている「特定商取引に関する法律」、通称「特商法」に従わなければならない「特定商取引」であることに簡単に触れました。
では、そもそも今回のAさんは、特商法のどの部分に違反して特商法違反となり、逮捕されてしまったのでしょうか。
特商法では、訪問販売についてその6条で禁止する行為を定めているのですが、その一部を見てみましょう。

特商法6条
1項 販売業者又は役務提供事業者は、訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の締結について勧誘をするに際し、又は訪問販売に係る売買契約若しくは役務提供契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、次の事項につき、不実のことを告げる行為をしてはならない。
1号 商品の種類及びその性能若しくは品質又は権利若しくは役務の種類及びこれらの内容その他これらに類するものとして主務省令で定める事項
2号 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価
3号 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法
4号 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期
5号 当該売買契約若しくは当該役務提供契約の申込みの撤回又は当該売買契約若しくは当該役務提供契約の解除に関する事項(略)
6号 顧客が当該売買契約又は当該役務提供契約の締結を必要とする事情に関する事項
7号 前各号に掲げるもののほか、当該売買契約又は当該役務提供契約に関する事項であつて、顧客又は購入者若しくは役務の提供を受ける者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの

この規定に違反し、「不実のことを告げ」た場合には、特商法違反の中でも「不実告知」や「不実の告知」と言われる違反となります。
特商法にいう不実の告知とは、簡単に言えば虚偽の説明、実際とは異なる説明ということです。
つまり、訪問販売でこの1号~6号の事項について虚偽の説明をすれば不実告知による特商法違反ということになるのです。

・Aさんの場合

では、Aさんの場合を見てみましょう。
Aさんは訪問販売の際、実際にはXという会社の社員であるにも関わらず、大手電力会社Yの社員であると名乗り、実際には会社Xとの新規契約であるのに大手電力会社Yの料金プラン変更のように装って契約を結んでいます。
そもそも訪問販売に来た人の所属の会社が違うということになれば、商品の種類や品質に大きくかかわってくることは間違いないでしょう。
さらに、実際の契約の内容も大手電力会社Yの料金プラン変更と会社Xとの新規契約であれば、内容が全く異なることになります。
そうなればVさんが契約するかどうかという判断にも大きくかかわってくる事項であるともいえます。
ですから、Aさんの偽った事項は、少なくとも特商法6条1項の1号や7号に該当すると考えられ、不実の告知がなされているとされる可能性が高いでしょう。
そうなれば、これらは訪問販売時にAさんが契約を取るために行ったことであるので、特商法違反となることが考えられるのです。

特商法違反はたびたび報道されることもありますが、まだ世間一般に浸透しているとは言い難い犯罪です。
容疑をかけられて逮捕された方はもちろん、逮捕されたご家族・ご友人も、特商法違反事件の流れや見通しが分からずに困ってしまうということも多いでしょう。
そうした時こそ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談ください。
初回接見サービスでは、お申込みから24時間以内の弁護士接見をお約束しています。
刑事事件専門の弁護士が、逮捕されてしまったご本人から、ご依頼くださったご家族・ご友人の方まで丁寧なサポートを行います。
まずは0120-631-881までお電話ください。

電力小売りで特商法違反事件①

2019-05-31

電力小売りで特商法違反事件①

Aさんは、とある会社Xに、訪問販売を行う営業の社員として勤務しています。
ある日Aさんは、京都市南区に住むVさん(別の大手電力会社Yと契約中)の自宅を訪ねると、大手電力会社Yの社員であると偽って、「現在Vさんが契約している料金プランよりも別の料金プランの方が安くなるから料金プラン変更をした方がよい」などと言って、大手電力会社Yでの料金プラン変更に見せかけ、会社Xへの新規契約を結ばせました。
後日、大手電力会社Yからの通知で料金プランの変更がなされていないことや、全く別の会社Xとの新規契約がなされていることに気づいたVさんが京都府南警察署に相談したことにより、Aさんは特商法違反(不実告知)の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和元年5月29日産経新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・電力小売り自由化関連初の特商法違反事件

事例の基となった事件は、平成28年に電力小売り自由化となってから、初めて電力小売り自由化に関連して特商法違反として逮捕された事例として報道されたものです。

電力小売り自由化とは、平成28年(2016年)に行われたものを指しており、この電力小売り自由化後は、各家庭等の消費者が、各地域にある電力会社以外の会社から自由に電気を買うことができるようになりました(それまでは、各地域にある電力会社のみが電気を販売しており、消費者側でどの会社から電気を買うか自由に決められるわけではありませんでした。)。
この電力小売り自由化により、新規事業者が電力の小売り事業に参入することになり、新しい料金プランやサービスが生まれたり、消費者が自分の好みでそれらを選べたりするというメリットが出てきました。

しかし、上記事例のように、その電力小売り自由化を利用した特商法違反事件や詐欺事件も起きているようです。
事例以外にも、電力小売り自由化による契約の見直しだと言って個人情報を聞き出して詐欺に利用したり、電力小売り自由化によるサービス変更だと言って高額な機器を売りつけたりといった事件もあるようですから、こちらにも注意が必要と言えるでしょう。

・特商法と訪問販売

今回のAさんは、特商法違反の容疑で逮捕されてしまっています。
この「特商法」とは、「特定商取引に関する法律」という法律の略称です。
名前の通り、この特商法では、「特定商取引」と呼ばれる特定の方法による取引きについての決まりを定めており、消費者の利益を保護しています。
この「特定商取引」の中に、今回Aさんが行った訪問販売も含まれるため、訪問販売の際のAさんの行為は特商法に従ったものでなければいけない、ということになります。

なお、特商法の対象となる「特定商取引」には、訪問販売のほか、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提供、業務提供誘引販売、訪問購入に係る取引きが含まれます。

では、Aさんは具体的に特商法のどういった部分に違反し、逮捕されてしまったのでしょうか。
次回の記事で詳しく見ていきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件少年事件を専門に扱っている法律事務所です。
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京都府福知山市の青少年保護育成条例違反事件

2019-05-30

京都府福知山市の青少年保護育成条例違反事件

~京都府福知山市にお住まいのAさん(男性・20歳)からのご相談~
先日、SNSを通じて知り合った女性と京都府福知山市内のホテルで性交渉をしました。
私とその女性は共通の趣味があったのをきっかけに仲良くなったのですが、実際会ってみると女性は話し方や見た目から意外に幼く見え、私は、「もしかしたら相手は16~17歳くらいなのかもしれない」と思いましたが、深くは考えずに会ったその日に性的な関係を持ってしまいました。
ところが後日京都府福知山警察署から警察官が逮捕状を持って家に来て、京都府青少年保護育成条例違反で逮捕されてしまいました。
どうやら彼女は17歳だったようです。
私は彼女の年齢を知らなかったのですが、このような場合でも犯罪になるのでしょうか。
(※事例はフィクションです)

~青少年保護育成条例について~

京都府で18歳に満たない青少年(男性・女性)と性交あるいは性交類似行為などを行った場合、いわゆる京都府青少年保護育成条例(正式名称「青少年の健全な育成に関する条例」)に違反するかが問題となります。
京都府青少年保護育成条例第12条1号では、18歳未満の者をこの条例のいう「青少年」であるとしています。
そして以下に挙げる通り、「青少年」との性行為は青少年保護育成条例で禁止されています。

第21条
1項 何人も、青少年に対し、金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより、又は精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫行又はわいせつ行為をしてはならない。
2項 何人も、青少年に対し、淫行又はわいせつ行為を教え、又は見せてはならない。

第31条
1項 第21条の規定に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
6項 (略)、第21条、(略)の規定に違反した者は、当該青少年の年齢を知らないことを理由として、第1項、第2項、第3項(第4号に係る部分に限る。)及び第4項(第2号、第5号、第6号及び第10号に係る部分を除く。)の処罰を免れることができない。
ただし、当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは、この限りでない。

第33条
この条例の罰則は、青少年に対しては適用しない。
この条例に違反する行為をしたとき青少年であつた者についても、同様とする。

~「淫行」とは~

第21条では「淫行」を行ってはならないとありますが、ここでいう「淫行」とはどういうものを指すのでしょうか。
福岡県青少年保護育成条例違反の事例ですが、昭和60年の最高裁大法廷判決では「淫行」について次のように判示されました。

「淫行」とは,「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく,青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性行為類似をいうものと解する(昭和60年10月23日最高裁大法廷判決)

続けて、「例えば婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為」は処罰の対象に含まれないことが示されています。
条文と最高裁判決から考えると、婚姻・婚約関係あるいは単なる性的欲望を満足させるためだけの関係を超えた恋愛関係が当事者間にあれば、「淫行」には当たらないと考えられます。
しかし、この関係性の判断は客観的になされ、具体的には例えば当事者の年齢差、性行為にいたる過程、性交の態様などの事情を総合的に考慮されることになる事が多いため、当事者の間で事前に恋愛関係を結ぶ合意をした、婚約をした、というだけでは「淫行」と判断される可能性がありますので、注意が必要です。

~18歳未満だとは知らなかった場合~

この条例において、「青少年」は18歳未満の人を意味するものですが、ご相談にあったように、相手が18歳未満であることを知らなかった場合にはどうなるのでしょうか。
前述した通り、京都府青少年保護育成条例第31条6項では、相手の年齢を知らなかったからといって淫行での処罰を免れることはできない、とあります。
しかし、過失なく相手の年齢を知らなかった場合にはこの限りではない、とありますから、相手の女性の年齢が18歳未満であることを知らなかったことについてAさんの落ち度がなければ、Aさんは処罰されずに済む可能性が出てきます。

今回、Aさんは相手の女性から年齢を聞いていませんでしたが、しかし風貌や挙動から幼さを感じたと言っています。
年齢は、厳密に確認しなくとも、外観からある程度分かる場合も多いです。
「Aさんは相手女性の外観等から彼女が18歳未満であることを認識していたはずだ」と判断された場合には、18歳以上であることを認識したことを証明できなければ(例えば身分証で年齢を確認した、等)、「18歳未満」の認識があった、もしくは年齢を知らなかったことに過失があったとされる可能性があります。
ゆえに、単に「年齢を直接聞かなかった」というだけでは、青少年保護育成条例違反が成立してしまうことを防げない、というのが実情です。

青少年保護育成条例はあいまいな判断要素も含まれるため、自分が行った行為が実際に罪に問われるか、警察に捜査されるかをご自分で判断することは難しいと思われます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、各都道府県の青少年保護育成条例違反事件に関して詳しい弁護士が多数在籍しています。
青少年保護育成条例違反事件でお困りの方は、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所弁護士にご相談ください。

お問い合わせ:0120-631-881

(逮捕)滋賀県米原市の盗撮事件

2019-05-29

(逮捕)滋賀県米原市の盗撮事件

~滋賀県米原市にお住いのAさんからのご相談~
私は滋賀県米原市に住む会社員です。
ある日の午後、近所のスーパーマーケットに入り、店内にいる女性のスカートの中を盗撮しようとしました。
カメラ付携帯電話を膝ぐらいの高さに持ち、スカート内に差し入れようとする途中でその女性に気づかれてしまいました。
何も知らないふりをしてその場を立ち去ろうとしましたが、逃げようとしたところをその女性に通報され、その後滋賀県米原警察署から来た警察官に逮捕されてしまいました。
その日に釈放されましたが、警察官からはまた後日取調べをすると言われています。
私にはどのような犯罪が成立してしまうのでしょうか。
(この相談例はフィクションです。)

~「盗撮」が犯罪になるとき~

 まず、刑事事件として「盗撮」が犯罪となるときには、いわゆる「迷惑防止条例」(略称)違反となっていることが多いです(軽犯罪法にいう「のぞき見」に該当するとして軽犯罪法違反になる場合もありますが、以下では「迷惑防止条例」に限定して解説させていただきます)。
各都道府県ごとに制定されている「迷惑防止条例」は、地方公共団体によって制定される法である「条例」に当たります。
「条例」に違反した場合の罰則が規定されているならば、「条例」違反も刑法などの「法律」に違反した時と同じように、「犯罪」となります。
滋賀県では、「滋賀県迷惑行為等防止条例」が条例の正式名称となっていますが、以下では「滋賀県迷惑防止条例」と略称で表記して、検討していきたいと思います。

~「滋賀県迷惑防止条例」~

以下には、「滋賀県迷惑防止条例」の条文で今回の事件に関係ありそうな部分を抜粋しています。

第3条第1項
何人も、公共の場所または公共の乗物において、みだりに人を著しく羞恥させ、または人に不安もしくは嫌悪を覚えさせるような次に掲げる行為をしてはならない。
(1)直接または衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から人の身体に触れること。
(2)人の下着または身体(これらのうち衣服等で覆われている部分に限る。以下「下着等」という。)をのぞき見すること。
(3)前2号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。

第3条第2項
何人も、公共の場所、公共の乗物または集会所、事務所、学校その他の特定多数の者が集まり、もしくは利用する場所にいる人の下着等を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機、ビデオカメラその他撮影する機能を有する機器(以下「写真機等」という。)を人に向け、または設置してはならない。

第3条第3項
何人も、公衆または特定多数の者が利用することができる浴場、便所、更衣室その他の人が通常衣服の全部または一部を着けない状態でいる場所において、当該状態にある人の姿態を見、またはその映像を記録する目的で、みだりに写真機等を人に向け、または設置してはならない。

滋賀県迷惑防止条例の第3条第2項では、いわゆる「公共の場所」にいる人の、通常隠されている下着・身体を盗撮する、あるいは撮影機器等を差し向ける、あるいは設置することを禁止しています。
例えば、駅で女性のスカート内を盗撮する、レストランで下着を盗撮しようと携帯についているカメラを向ける、商業施設の階段に盗撮目的でカメラを設置する、などが該当します。
さらに、第3条第3項では、「公共の場所」でなくとも、公衆又は特定多数の者が利用できる特定の場所に関して、盗撮盗撮する目的でのカメラの設置やカメラを向けることを禁止しています。
例えば、特定の会社のトイレに盗撮目的でカメラを仕掛けることなどは、この条文に当てはまることになるでしょう。

では、盗撮の対象が下着などののぞき見るような部分ではなかった場合、例えば、胸やお尻といった部分を服の上から盗撮しようとしたような場合はどうなるのでしょうか。
この点については、第3条第1項の(3)にいう「卑猥な言動」に当たるかが問題となり、例えば隠れて至近距離で全身を撮影した場合、あるいは下半身などを接写した場合には「卑猥な言動」と判断される可能性があります。
「下着や裸じゃないから大丈夫」と思ったとしても、人に性的な羞恥心を与えるような撮影をすることは犯罪となりうる危険な行為ですので、控えた方がいいでしょう。

~罰則~

「滋賀県迷惑防止条例」で禁止される「盗撮」の罰則は、第11条に規定があります。
第11条によると、滋賀県では、盗撮しようとカメラを設置したり人に向けたりといった行為をした場合、さらには「卑わいな言動」をしたような場合には6月以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。
そして、第3条2項に違反して下着を盗撮し映像を記録した場合や、第3条第3項に違反して衣服の全部もしくは一部をつけていない人の状態を盗撮し映像を記録した場合には、さらに重い1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。

~Aさんのご相談に対する回答~

Aさんが盗撮しようとしたスーパーマーケットは様々な人が出入りする公共の場所であり、Aさんは撮影の目的をもってカメラをスカート内に差し向けたのですから、Aの行為は「滋賀県迷惑防止条例」で禁止される「盗撮」として条例違反となる可能性が高いです。
結果としてスカート内の映像は取れていないとしても、盗撮しようとカメラを向けているため、滋賀県迷惑防止条例の第3条2項に違反し、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」の処分を受ける可能性が出てくると考えられます。。

こうした盗撮事件にお困りの際は、各都道府県の迷惑防止条例に詳しい「弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」の無料の初回法律相談を是非ご利用ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所」の弁護士は、刑事専門弁護士の手腕を発揮し、事件の早期解決のために迅速かつ的確に行動します。
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