京都市左京区で準強制性交等事件
【事件】
Aさんは京都市左京区にある居酒屋で同じ部署の同僚数人と飲み会をしていました。
Aさんはその飲み会で以前から好意をもっていた後輩の女性社員Vさんといい雰囲気になりました。
飲み会の後、AさんはVさんに「これから一緒に飲み直さないか」などと言い、Vさんはこれに応じました。
しばらく二人で飲んだ後、かなり酔っていたVさんをAさんは自宅に送り届けようとしましたが、途中でVさんと一夜を共にしたいと思うようになりました。
AさんはそのままVさんを連れて駅近くのホテルに入りました。
AさんはVさんがベッドで熟睡しているのを確認した上でVさんと性交に及びました。
翌日、被害届を受けた京都府川端警察署の警察官によってAさんは準強制性交等罪の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)
【準強制性交等罪】
準強制性交等罪(刑法178条2項)は、人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、または心神喪失・抗拒不能にさせて、性交等に及んだ場合に成立する罪です。
準強制性交等罪の法定刑は5年以上の有期懲役(有期懲役刑の上限は20年で、加重によって30年)となっています。
この罪は平成29年の刑法改正によって新設された罪で、強制性交等罪(刑法177条)・準強制性交等罪が成立する前は強姦罪・準強姦罪がありました。
改正前の強姦罪の客体は女性に限定されていましたが、強制性交等罪への改正によって男性もこの罪の客体になれるようになりました。
準強制性交等罪の成立要件について詳しくみていきましょう。
準強制性交等罪の成立には、性交等に及ぶ時点で相手が心神喪失状態または抗拒不能に陥っていることが必要です。
心神喪失とは、精神的な障害によって正常な判断力を失った状態をいいます。
抗拒不能とは、精神的・物理的に抵抗できない状態をいいます。
心神喪失・抗拒不能の程度について、完全に抵抗が不可能であることまでは要求されません。
反抗が著しく困難な程度に至っていれば、心神喪失・抗拒不能であると認められます。
心神喪失にあたるとされた事例には、睡眠・飲酒酩酊のほか、著しい精神障害や、知的障害によって被害者が行為(性交等)の意味を理解できない場合などがあります。
抗拒不能にあたるとされた事例には、行為自体は認識しているものの、それが医療行為であると誤信していた場合など、勘違いによって抵抗する意思を失っている場合などがあります。
また、心神喪失や抗拒不能な状態を作るのに暴行・脅迫を用いた場合は、準強制性交等罪ではなく強制性交等罪の成立が考えられます。
次に、性交等についてです。
準強制性交等罪の「性交等」とは、性交、肛門性交または口腔性交を指します。
ちなみに、相手方が13歳未満の者の場合は、暴行・脅迫がなく、または双方の同意があったとしても強制性交等罪を構成します(刑法177条後段)。
今回の場合ですと、AさんがVさんを相手に性交に及んでしまった時点でVさんは酔って熟睡しています。
Vさんは心神喪失にあたり、Aさんはそれに乗じて性交に及んでいますので、準強制性交等罪にあたりそうです。
【準強制性交等事件の弁護活動の方針】
改正前の準強姦罪は、被害者(またはその法定代理人等)の告訴がなければ起訴できない親告罪でした。
親告罪の場合ですと、被害者と示談や弁償をすることによって告訴されないようにする、あるいは告訴を取り下げてもらうことによって起訴を回避することができます。
しかし、準強制性交等罪への改正によって、告訴がなくても検察官が起訴できる非親告罪となりました。
それでも、被害者が告訴しているかどうかは、検察官が起訴するかどうかを決めるうえで重要な要素となっています。
そのため、準強制性交等事件の弁護活動としては、被害者との示談締結が効果的といえます。
被害者が告訴する前に示談を締結することができれば、事件の内容や示談内容、タイミングによってはそもそも刑事事件化を避けられる場合もあります。
また、警察等の捜査当局に告訴された後であっても、起訴前に示談をすることによって被害者に告訴を取り下げてもらうことができれば、不起訴獲得の可能性も出てきます。
Aさんの場合、Vさんから警察へ被害届の提出はありますが、被害届はあくまで被害にあったことを申告するもので、処罰を求める性質はありません。
もっとも、被害届を提出する場合は被害者が犯人を見つけ出したいと思っていたり、さらには犯人を処罰してほしいと思っている場合が多いことも事実ですので、早急な対応が必要です。
可能な限り早く弁護士を通じて被害者に謝罪することによって、被害者感情を抑えることができ示談できる可能性があるので、このような事件でお困りの方は、一刻も早く刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
ご家族やご友人が準強制性交等罪によって逮捕されてしまった方、京都府川端警察署の捜査対象となってしまって困っている方は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談下さい。