情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕③

2019-09-29

情報漏洩の地方公務員法違反で逮捕③

前回からの流れ~
京都府木津川市を管轄する京都府木津警察署に勤務する警察官のAさんは、ある日、10年以上前から付き合いのある知人のBさんからの連絡を受けました。
実はBさんは、京都府木津川市で起こった恐喝事件の被疑者として京都府木津川警察署に捜査されており、Aさんもそのことを知っていました。
BさんはAさんに対し、「今の俺の捜査状況を教えてくれよ。10年来の仲だろう」などと言って自分の捜査の状況を教えるよう求め、Aさんはそれに応じ、Bさんの恐喝事件の捜査状況や、Bさんの逮捕予定日を連絡しました。
しかし、それが露見し、Aさんは地方公務員法違反(秘密漏示)、Bさんは地方公務員法違反(そそのかし)の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、取調べの中で、Bさんから金銭を受け取っていたのではないかと疑われていますが、そういった事実はないと否認しており、家族の依頼で接見に来た弁護士にもその内容を相談しました。
(※令和元年9月24日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)

・秘密漏示と金銭授受で収賄罪・贈賄罪に?

前回までの記事で、Aさんは秘密漏示行為による地方公務員法違反に、Bさんはそれをそそのかしたことによる地方公務員法違反になるだろうということに触れました。
今回の記事では、AさんやBさんがほかに容疑をかけられる可能性のある、もしくは他に成立する可能性のある犯罪について検討していきます。

今回のAさんは、取調べでBさんから金銭を受け取っていないかどうか疑われているようです。
実は、単純に秘密漏示行為をした場合と、金銭などの対価をもらって秘密漏示行為をした場合では、成立する犯罪が異なるのです。
刑法の以下の条文を見てみましょう。

刑法197条(収賄罪)
公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の懲役に処する。
この場合において、請託を受けたときは、7年以下の懲役に処する。

刑法197条の3(加重収賄罪及び事後収賄罪)
1項 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、1年以上の有期懲役に処する。
2項 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

刑法198条(贈賄罪)
第197条から第197条の4までに規定する賄賂を供与し、又はその申込み若しくは約束をした者は、3年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

以上のように、公務員に対して金銭などの対価を渡した場合、渡した方は贈賄罪、受け取った公務員は収賄罪となりえます。
繰り返すように、今回のAさんは京都府警の警察官であるため、地方公務員です。
ですから、Aさん・Bさんの間に秘密漏示に関して金銭のやり取りがあった場合、地方公務員法違反ではなく、収賄罪・贈賄罪として捜査されることになるでしょう。

今回のケースでAさん・Bさんらの間に金銭のやり取りがあった場合、Aさんはお金をもらった見返りとして秘密漏示をしているというパターンになるでしょう。
となると、Aさん=「公務員」が、金銭を受け取り=「賄賂を収取し」、その見返りに秘密漏示をして=「よって不正な行為をし」ていることから、刑法197条の3の1項にある、加重収賄罪となる可能性が高いと考えられます。
対してBさんは、Aさんに金銭を渡していることから、刑法198条の贈賄罪となると考えられます。

ここで重要なのは、今回のようなケースにおいて金銭の授受の有無が成立する犯罪を変えてしまうということです。
もちろん、事実として金銭の授受があった場合には、贈賄罪・収賄罪の容疑で捜査されることは仕方のないことでしょう。
しかし、実際にはこうした金銭の授受がなかった場合にも、捜査機関としては金銭の授受があったのではないかと疑って捜査をする可能性が高いです。
最初は地方公務員法違反逮捕され捜査されていたとしても、途中で容疑が収賄罪や贈賄罪に切り替わることもあります。

前回までの記事でご紹介した秘密漏示やそれのそそのかしによる地方公務員法違反の刑罰が「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」であるのに対し、加重収賄罪の法定刑は「1年以上の有期懲役」、贈賄罪の法定刑は「3年以下の懲役又は250万円以下の罰金」であることから、地方公務員法違反よりも収賄罪・贈賄罪となった場合の方が重く処罰されうるということがわかります。
ですから、もしも本当に金銭の授受がない、地方公務員法違反にとどまる事実しかないにも関わらず、収賄罪や贈賄罪の容疑をかけられてしまったら、その部分についてはきちんと無実を主張していかなければ不当に重い刑罰を受けることになりかねません。
こういったことからも、地方公務員法違反や収賄罪・贈賄罪の容疑をかけられたら、まずは弁護士に相談することが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所刑事事件専門の法律事務所です。
地方公務員法違反・収賄罪・贈賄罪といった事件にももちろん対応が可能です。
逮捕や取調べにお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士にご相談ください。