強盗致傷事件の逮捕に対応
強盗致傷事件の逮捕に対応する弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、宝石を盗み出して儲けようと計画し、京都府舞鶴市にある宝石店Xに侵入し、宝石を物色していました。
しかし、宝石店Xの警備員であるVさんが巡回にやってきて、Aさんは宝石を物色しているところを発見されてしまいました。
Aさんは、こっそり宝石を盗み出すことは諦めて、警備員Vさんを脅して宝石を奪い取って逃げようと計画を変更し、携行していたナイフをチラつかせてVさんを脅すと、宝石を自分のカバンにしまい、逃げようとしました。
ところが、VさんはAさんが目を離したすきに警棒を持ち、Aさんをつかまえようと立ち上がりました。
ポケットにしまったナイフを取り出すのに手間取ったAさんは、とにかく逃げなければいけないと逃げ出しましたが、Vさんの追跡から逃げきれず、Vさんに追いつかれてしまいました。
この時点で、AさんがナイフでVさんを脅迫した時から10分が経過し、宝石店Xから150mほど離れた地点に来ていましたが、AさんはVさんの顔面を殴りつけるなどの暴行を加えて怪我を負わせると、逃亡を再開しました。
ですが、これらのやり取りを目撃した通行人が通報したことで京都府舞鶴警察署の警察官が駆け付け、Aさんは強盗致傷罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・強盗致傷罪と「強盗の機会」
Aさんは元々宝石をこっそり盗み出すという窃盗行為を計画していたようですが、犯行の途中で警備員Vさんを脅して宝石を奪うように計画を変更しています。
このように、当初窃盗行為を意図しながら被害者などに発見されたために、暴行や脅迫をを加えたうえで財物奪おうとする犯人のことを「居直り強盗」と呼ぶことがあります。
居直り強盗というだけあって、こうした行為には刑法の強盗罪が成立すると考えられます。
刑法第236条第1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
強盗罪の「暴行又は脅迫」とは、相手の反抗を抑圧するに足りる程度の強さのある暴行又は脅迫を指しています。
今回のAさんは、警備員Vさんに対してナイフを向けていますが、ナイフを向けられたVさんからすれば反抗するとナイフで刺されるなどする深刻な危害が加えられるおそれがあるため、Aさんの行為はVさんの反抗を抑圧するに足りる脅迫といえるでしょう。
そして、Aさんはそのような脅迫によって生じた状況を利用して宝石をカバンに入れているので「他人の財物を強取した」といえます。
以上から、Aさんには強盗罪が成立すると考えられるのです。
さらに、刑法には以下の規定があります。
刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。
これは、強盗致傷罪や強盗致死罪と呼ばれる犯罪であり、強盗犯が人に怪我をさせたり死亡させたりしたときに成立する犯罪です。
しかし、条文からは強盗犯が「いつ」人に怪我をさせたり死亡させたりしたときにこの強盗致死傷罪が成立するか明示されていません。
となると、強盗犯が人に怪我をさせればいつのことであっても強盗致傷罪が成立してしまうのではないか、と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
強盗犯が「いつ」人に怪我をさせた場合強盗致傷罪が成立するのかということについて、判例では、傷害の結果が「強盗の機会」に行われた行為から生じたものであればよいとしています(最判昭和24.5.28)。
どういった行為が「強盗の機会」における行為といえるかは事案ごとの事情を全て考慮した上で判断せざるを得ませんが、多くの判例は、犯意の継続性、強盗行為との時間的場所的近接性、強盗行為との関連性を考慮して判断しています(最判昭和32.7.18、東京高判平成23.1.25など)。
つまり、簡単に言えば、強盗行為と全く関係のないところで強盗犯が人を死傷したとしても強盗致死傷罪は成立しないということです。
本件では、AさんはVさんの顔面を殴る暴行を加えて怪我をさせているようです。
この暴行行為は、Vさんに捕まる=逮捕されることなく強盗行為を無事終えるためになされたのものであって、いまだ当初の強盗の犯意が継続しているといえます。
また、これは通常の強盗にも認められるような性質の行為であって強盗行為と関連性があります。
加えて、この暴行はAさんがナイフで警備員を脅迫した時から10分が経過し、宝石店Xから150m離れた地点でなされているなど、強盗行為と場所的時間的近接性が認められます。
これらの事情から、AさんがVさんを殴って怪我をさせたことは「強盗の機会」に行われたと考えられ、Aさんには強盗致傷罪が成立すると考えられるのです。
・強盗致傷事件と弁護活動
強盗致傷事件では、当然被害者が存在します。
今回のAさんのケースでは、宝石を奪われた宝石店Xと、Aさんから暴行を受けたVさんが被害者ということになるでしょう。
この被害者に対して、謝罪や被害弁償をしていくことも重要な弁護活動の1つです。
また、強盗致傷罪は法定刑に無期懲役を含む重大な犯罪であることから、逮捕・勾留による身体拘束を伴って捜査が進められることも十分予想されます。
釈放・保釈を求めて随時活動していくことも必要となるでしょう。
そして、強盗致傷事件は裁判員裁判対象事件でもあるため、起訴されれば裁判員裁判への対応が必要となります。
一般の刑事裁判とは異なる手続きも多い裁判員裁判に対応していくためには、入念な準備が必要となりますから、早期に弁護士と連携して備えることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件専門の弁護士事務所です。
強盗致傷事件の逮捕にも迅速に対応し、被疑者・被告人やそのご家族のお悩みや疑問の解消をサポートいたします。
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