エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件①
エステのクーリングオフに関わる特商法違反事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府八幡市で個人経営のエステ店を経営しています。
ある日、Aさんは、自身のエステに来店した客Vさんに対し、10万円で半年間エステに20回通える長期コースを勧めました。
その際、AさんはVさんに対し、あえてクーリングオフの説明をせず、案内をしていました。
その後、VさんはAさんに勧められたエステの長期コースを契約し、帰宅しました。
しかし、帰宅したVさんが家族にエステのことを話したところ、クーリングオフの話題となりました。
Vさんがクーリングオフの話をされていないことを話すと、Vさんの家族がおかしいと気づき、京都府八幡警察署に相談。
その結果、Aさんは特商法違反の容疑で京都府八幡警察署に話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・クーリングオフとは?
そもそも、クーリングオフとは、特定の契約に限って、契約してから一定期間内であれば無条件で消費者側から一方的にその申込みや契約を撤回・解除できる制度のことを指します。
クーリングオフは、消費者が頭を冷やしてもう一度契約等について考え直すための制度なのです。
このクーリングオフは、法律に「クーリングオフ制度」という言葉や法律でまとめて決められているわけではなく、クーリングオフの対象となる販売方法や契約等について定めているそれぞれの法律に個別の形でクーリングオフに該当する条文が特別に定められています。
先述したように、クーリングオフは、全ての販売方法や契約等に適用されるわけではなく、特定の販売方法や契約等に適用される制度なのです。
・特商法と「特定継続的役務提供に係る取引」
Aさんが違反したという容疑をかけられている特商法(正式名称:特定商取引に関する法律)を確認してみましょう。
まず、特商法の規制の対象となるのは、「特定商取引」と呼ばれる商取引であり、「特定商取引」は「訪問販売」、「通信販売及び電話勧誘販売に係る取引」、「連鎖販売取引」、「特定継続的役務提供に係る取引」、「業務提供誘引販売取引並びに訪問購入に係る取引」であるとされています(特商法2条)。
このうち、「特定継続的役務提供に係る取引」について、特商法では以下のように定義しています。
特商法41条1項
この章及び第58条の22第1項第1号において「特定継続的役務提供」とは、次に掲げるものをいう。
1号 役務提供事業者が、特定継続的役務をそれぞれの特定継続的役務ごとに政令で定める期間を超える期間にわたり提供することを約し、相手方がこれに応じて政令で定める金額を超える金銭を支払うことを約する契約(以下この章において「特定継続的役務提供契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供
2号 販売業者が、特定継続的役務の提供(前号の政令で定める期間を超える期間にわたり提供するものに限る。)を受ける権利を同号の政令で定める金額を超える金銭を受け取つて販売する契約(以下この章において「特定権利販売契約」という。)を締結して行う特定継続的役務の提供を受ける権利の販売
つまり、サービスの提供をしている事業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを提供する内容であり消費者がその内容に応じて「政令」で決められた基準よりも多い料金を支払う契約(1項)や、サービスの販売業者が「政令」で決められた基準より長い期間にわたって「特定継続的役務」にあたるサービスを受けられる内容のものを消費者に「政令」で決められた基準よりも多い料金によって販売する契約(2項)が「特定継続的役務提供に係る取引」=特商法の対象となる特定商取引の1つであるとされているのです。
特商法のように、適用される範囲が限定されている法律を特別法と呼びます(特商法の場合は先述したように適用対象が「特定商取引」のみに限定されています。)。
特別法は、その適用範囲が非常に細かく分類されているがために分かりづらいこともあれば、範囲の定義が専門用語や解釈の必要な言葉によってなされているために分かりづらいということも多くあります。
だからこそ、特商法違反事件のような特別法に関わる刑事事件では、刑事事件に強い弁護士に早めに相談し、自分にかかっている容疑をきちんと理解し、見通しを把握することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が丁寧に相談対応をさせていただきます。
お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
次回以降の記事では、エステの長期コースが特商法の対象となるのか、クーリングオフの対象となるのか、詳しく触れていきます。