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恐喝罪と組織犯罪処罰法違反②
恐喝罪と組織犯罪処罰法違反②
~前回からの流れ~
京都府八幡市に住んでいる17歳のAさんは、不良仲間と恐喝行為をするためにグループを結成し、仲間であるBさんの指示のもと、役割分担をして恐喝行為を繰り返していました。
グループでの恐喝行為をしばらくの間続けていたAさんらでしたが、Aさんらの恐喝行為によって金品を巻き上げられたとして被害者の1人であるVさんが京都府八幡警察署に相談したことから、Aさんらは組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕されることとなりました。
Aさんの両親はAさんの逮捕を聞き、すぐに京都府・滋賀県周辺の少年事件に対応している弁護士に相談し、今後の見通しのほか、弁護士に依頼した場合どのような弁護活動が可能となるのか詳しく話を聞きました。
(※この事例はフィクションです。)
・Aさんの下される可能性のある処分は?
Aさんは20歳未満の少年であるため、Aさんの起こした恐喝行為による組織犯罪処罰法違反事件は、少年事件として扱われ、少年事件の手続きを踏んでいくことになります。
少年事件の終局処分としては、原則として以下のような処分が下されることが考えられます。
①審判不開始
家庭裁判所に送致された後、そもそも審判を開く必要がないと判断されたときに下されます。
審判が開かれることもなく、処分を受けることもなく事件終了となります。
事件が軽微で少年の環境調整がすでに不要である場合や、行ったとされる非行が確認できない場合等に審判不開始となることがあります。
②不処分
審判の結果、処分を下す必要がないと判断された場合には、不処分とされます。
少年事件の手続きの理念は、「少年の更生」に重きが置かれています。
少年の更生のための環境が十分整えられており、特に処分を加える必要がないと判断された場合などに、審判の結果不処分となることもあります。
③保護観察
保護観察は、ある一定期間、保護観察所や保護司等の指導を受ける処分です。
いわゆる「社会内処遇」と呼ばれる処遇で、少年は施設等に入ることなく、社会の中で生活しながら更生を目指します。
少年やその家族は、ある一定期間、保護司等の担当者と面会したり連絡を取ったりしながら生活します。
保護観察の期間は少年によってまちまちで、3か月程度の保護観察となる少年もいれば、1年2年と保護観察期間を過ごす少年もいます。
④少年院送致
少年院に収容され、少年院の中で生活しながら更生を目指す処分です(年齢の低い少年の場合は児童自立支援施設への送致となる場合もあります。)。
少年の環境等から、現在の環境から隔離した方が少年の更生に適切である、より専門的な教育・指導が必要である等と判断された場合に少年院送致となることが多く見られます。
これらの処分は、少年事件の手続きが理念としている少年の更生を目的に下されるものです。
今回のAさんの場合、不良仲間とつるんでいることや、その仲間と徒党を組んで恐喝行為を繰り返していることから、現在の環境が更生によいとは言えないでしょう。
もしもAさんをそのままの環境においておけば、また同じ仲間とつるんで同じことを繰り返してしまう可能性があるからです。
ですから、Aさんの場合、現在の環境から切り離して更生を目指すために「④少年院送致」という判断が下される可能性もあります。
少年事件の処分は起こしてしまった事件の重さだけでは決まりませんが、被害者の数が多かったり被害金額が大きかったり、罪名が重いものであったりすれば、それだけ重い犯罪をしてしまう環境の改善や、そうした重い犯罪をしてしまった少年に専門的な教育やケアが必要であるとされることも多く、そうした場合には少年院送致が選択されることも多いです。
しかし、逆を言えば、少年がきちんと更生できる環境が整っていると主張し、それが認められれば、社会内処遇が選択される可能性もあると言えます。
そのためには、少年事件の手続きやそのうえで重視する点をよく理解し、環境調整を行い、それを証拠化して主張をしていく必要があります。
こうした活動には、少年事件の専門知識や経験をもつ弁護士の力が必要となってくるでしょう。
また、今触れてきたのは家庭裁判所に事件が送られた後の活動のことですが、その前に少年は被疑者としての捜査を受ける段階があります。
この段階では、少年は成人の被疑者とほぼ同様の扱いを受けることになりますから、そのケアやサポートも重要です。
家庭裁判所へ事件が送られた後のことも踏まえて、この捜査段階から準備を進めていくことが必要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件だけでなく少年事件も多く取り扱っているからこそ、捜査段階から家庭裁判所へ送致された後まで、一貫して少年事件に丁寧な対応を行っていくことが可能です。
組織犯罪処罰法違反等、京都府の少年事件にお困りの際は、弊所弁護士までご相談ください。
(お問い合わせ:0120-631-881)
恐喝罪と組織犯罪処罰法違反①
恐喝罪と組織犯罪処罰法違反①
Aさんは、京都府八幡市に住んでいる17歳で、いわゆる不良仲間とよくつるんでいました。
ある日Aさんは、不良仲間のBさん(19歳)から、「何人かでグループになってこの辺りで金を巻き上げよう。年下や女ならちょっと脅せばすぐ金を出すだろう」と話を持ち掛けられました。
そこでAさんは、Bさんら数人とグループになって、Bさんの指揮のもと役割分担をして、京都府八幡市周辺で年下の者や女性を対象として恐喝をし、巻き上げた金品を仲間内で分け合っていました。
こうした恐喝行為をしばらくの間続けていたAさんらでしたが、Aさんらの恐喝行為によって金品を巻き上げられたとして被害者の1人であるVさんが京都府八幡警察署に相談したことから、Aさんらは組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕されることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・恐喝罪
Aさんらは、自分たちより年下の者や女性をターゲットに恐喝を繰り返していたようです。
ここで思い浮かばれるのは、刑法に規定されている恐喝罪でしょう。
刑法249条(恐喝罪)
人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
恐喝罪は、財物奪取に向けられた暴行・脅迫を行い、それに畏怖した相手から金品を交付させることで成立します(なお、この暴行・脅迫の程度が相手の反抗を抑圧する=相手が犯行できないほどのものである場合には、恐喝罪ではなく強盗罪が成立します。)。
Aさんらはこの恐喝行為をおこなって金品を巻き上げていたのですから、単純に考えれば恐喝罪の容疑で逮捕されるのではないでしょうか。
しかし、今回のAさんらは組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕されています。
これはどういった犯罪なのでしょうか。
・組織犯罪処罰法違反
組織犯罪処罰法は、正式名称を「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」と言います。
組織犯罪処罰法は、反社会的組織による犯罪や会社等にカムフラージュされた団体による犯罪など組織による犯罪についての加重規定を定めたり、いわゆるマネーロンダリングと呼ばれる資金洗浄行為を規制したりしている法律です。
最近では、オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺をグループとして行っている組織的詐欺に適用され報道されることも多いため、組織的詐欺が組織犯罪処罰法によって取り締まられているイメージのある方も多いのではないでしょうか。
しかし、組織犯罪処罰法が取り締まっている犯罪は、組織的詐欺だけではありません。
組織犯罪処罰法は、先ほど触れたように組織的に行われた犯罪についての加重規定を定めています。
つまり、組織的に行われた犯罪を、単に個人でその犯罪をしたときよりも重く処罰しようということです。
ですが、全ての犯罪がこの組織犯罪処罰法の対象となっているわけではなく、組織犯罪処罰法3条以降にその対象の犯罪や態様が挙げられています。
例えば、今回のAさんは恐喝行為を行って組織犯罪処罰法違反の容疑で逮捕されていますが、それは以下の条文に当てはまると判断されたからだと考えられます。
組織犯罪処罰法3条1項
次の各号に掲げる罪に当たる行為が、団体の活動(団体の意思決定に基づく行為であって、その効果又はこれによる利益が当該団体に帰属するものをいう。以下同じ。)として、当該罪に当たる行為を実行するための組織により行われたときは、その罪を犯した者は、当該各号に定める刑に処する。
14号 刑法第249条(恐喝)の罪 1年以上の有期懲役
組織犯罪処罰法のいう「団体」とは、「共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるもの」とされています(組織犯罪処罰法2条1項)。
今回の事例のAさんは、恐喝行為をするためにグループを結成し、Bさんの指示のもと役割分担をしながら恐喝行為を繰り返し、恐喝行為によって得た金品をグループ内で分け合っていました。
こうしたことから、単純な恐喝罪ではなく、組織犯罪処罰法違反であると判断されたのでしょう。
今回の事例のAさんは20歳未満の少年であることから、この組織犯罪処罰法違反事件は少年事件として扱われます。
Aさんに考えられる処分や弁護活動については、次回の記事で取り上げます。
組織犯罪処罰法違反はなかなかなじみのない犯罪であり、成立の可否や見通し等、分かりづらいことも多い犯罪です。
こうした犯罪の容疑をかけられてしまった時、それによって逮捕されてしまった時こそ、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
お問い合わせは0120-631-881でいつでも受け付けております。
(京都府八幡警察署までの初回接見費用:3万8,200円)
放火未遂罪で逮捕されたら
放火未遂罪で逮捕されたら
Aさんは、京都市右京区にあるとある販売店に勤務しています。
長い間待遇に不満を持っていたAさんは、ついにその不満を爆発させ、仕事場である店を燃やしてしまおうと思い立ちました。
そこでAさんは、深夜に無人となった店に向かうと、店の床に持参したガソリン7リットルを撒きました。
そこへちょうど付近を巡回していた警備員がAさんの行為を目撃し、Aさんを取り押さえて現行犯逮捕しました。
そしてAさんは、通報を受けて駆け付けた京都府右京警察署の警察官に引き渡され、非現住建造物等放火未遂罪の容疑で取調べを受けることになりました。
Aさんと離れて暮らしていたAさんの両親でしたが、報道をみて息子の逮捕を知り、すぐに刑事事件に対応してくれる弁護士に問い合わせを行いました。
(※この事例はフィクションです。)
・Aさんは放火未遂罪になる?
放火未遂罪は、簡単に言えば、放火しようとしたが放火を遂げることのなかった場合に成立する犯罪です。
放火未遂罪に限らず、何かの犯罪の未遂罪が成立するためには、しようとしていた犯罪を完全にやり遂げるということはなかったものの、犯罪行為を実行には移していたという事実が必要です。
これを「実行(行為)の着手」と呼んだりします。
つまり、放火未遂罪の成立には、「放火罪を実行し始めていたけど(放火罪の実行の着手はあったけど)放火は達成できなかった」という状況であることが必要なのです。
放火罪の「放火」とは、故意によって不正に火力を使用して物件を焼損することであるとされています。
そして、放火罪の実行の着手は、その目的物の「焼損」が発生する現実的な危険性がある行為を始めた時に認められる、とされています。
放火罪にいう「焼損」とは、争いはあるものの、一般に火が媒介物を離れて目的の物に移り、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達した時点のことをいうとしています。
つまり、火が放火目的のものに移って単独で燃え続けられるような状態が発生する危険を生じさせた段階で、放火罪の実行の着手が認められ、放火未遂罪が成立するということになります。
今回のAさんについて考えてみましょう。
Aさんは、店の床にガソリン7リットルを撒いた状態で現行犯逮捕されています。
火をつけているわけではありませんから、一見放火罪の実行の着手がなく、放火未遂罪が成立する余地はないようにも思えます。
しかし、今回のような大量のガソリンを床に撒いた時点で放火罪の実行の着手を認めた事例もあります。
それが、昭和58年7月20日の横浜地裁判決の事例です。
この事例では、ガソリン6.7リットルを家の床にまんべんなくまいたという行為について、放火罪の実行の着手を認めています。
判決では、ガソリンが揮発性・引火性の高いものであること、ガソリンの量が多いこと等から、放火のためにガソリンを撒く行為は発火する蓋然性も高く家屋を焼損させる切迫した危険を生じさせる行為であると判断し、放火罪の実行の着手があったものとしています。
今回の事例でも、Aさんが撒いたのは揮発性・引火性の高いガソリンであり、量も7リットルと多量です。
ですから、過去の裁判例のように放火罪の実行の着手があると認められ、放火未遂罪に問われる可能性もあるのです。
・放火未遂罪とならなくても犯罪?
では、今回のAさんの行為に放火罪の実行の着手がないと考えられるような場合でも、Aさんには放火罪の類は成立しないのでしょうか。
実は、放火罪には放火未遂罪以外にも規定されている犯罪があります。
それが放火予備罪です。
刑法113条(放火予備罪)
第108条(※現住建造物等放火罪)又は第109条第1項(※他人所有に係る非現住建造物等放火罪)の罪を犯す目的で、その予備をした者は、2年以下の懲役に処する。
ただし、情状により、その刑を免除することができる。
つまり、放火罪を犯そうと準備した者については放火予備罪が成立するのです。
今回のAさんの行為は放火目的でガソリンを撒くという方かの準備に他なりません。
ですから、放火罪の実行の着手が認められずに放火未遂罪は成立しないとしても放火予備罪が成立し、放火予備罪の限度で処罰される可能性があるのです。
放火行為をすれば放火罪になる、と簡単に考えがちかもしれませんが、このように刑事事件は何の犯罪がどのように成立するのか非常に複雑です。
このほかにも、放火罪は放火した(放火しようとした)対象がどういったものであるのかによっても成立する犯罪名が異なったりします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の弁護士が専門知識と経験を相談者様のお話と照らし合わせながらご相談に乗らせていただきます。
京都府の放火事件・放火未遂事件で逮捕されてお困りの方は、まずは弊所弁護士までご相談下さい。
(京都府右京警察署までの初回接見費用:3万6,300円)
営業秘密侵害による不正競争防止法違反②
営業秘密侵害による不正競争防止法違反②
~前回からの流れ~
滋賀県高島市にある会社V社で営業として勤務していたAさんは、競合他社であるB社に転職しようと、V社から業務のために開示されていたV社の顧客情報やV社の売上データ、統計などの情報を私物のUSBにコピーし、それをB社の面接の際に見せ、自分を売り込みました。
それらのデータには、限られた人しかアクセスできず、情報を閲覧するにはパスワードの入力が必要とされていました。
また、データの最初には「マル秘」のマークがついているものもありました。
そしてAさんはB社に転職し、V社のデータを利用して営業活動を行っていましたが、滋賀県高島警察署の警察官から営業秘密の侵害をした不正競争防止法違反の容疑で逮捕されてしまい、Aさんの両親は急いで滋賀県や京都府の刑事事件を扱う弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)
・不正競争防止法の「営業秘密」とは
前回は、営業秘密を不正の利益を得るため等に複製して領得することや、それを営業秘密の管理に係る任務に背いて私用・開示することが不正競争防止法違反に当たること、不正の利益を得る目的とは公序良俗や信義則に反するような行為によって不当な利益を得ることを目的とすることであるという内容を取り上げました。
今回は、ではそもそも不正競争防止法の言う「営業秘密」とは具体的にどういったものなのかを考えていきます。
不正競争防止法では、「営業秘密」について以下のように定義しています。
不正競争防止法2条6項
この法律において「営業秘密」とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものをいう。
つまり、「営業秘密」であると認められるためには、①「秘密として管理されている」こと(秘密管理性)、②「事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」であること(有用性)、③「公然と知られていない」こと(非行知性)の3点が必要であるということなのです。
そのため、会社がただ単に「これは営業秘密だ」と言うだけでは、不正競争防止法上の「営業秘密」とはならない可能性もあるのです。
では、これらの条件を詳しく見てみましょう。
①「秘密として管理されている」こと(秘密管理性)
「営業秘密」と言えるには、その情報が秘密として管理されていることが必要です。
これは社外には情報が開示されていないということでは足りず、その情報にアクセスできる者が限られているのかどうか、その情報が秘密であることが明確に分かるのかどうか(社員等が認識していたのかどうか)等の事情をもって判断されます。
ですから、例えば「社外秘」というスタンプが押してある書類であっても、それが社内のだれでも見られるものであれば、一般常識として「営業秘密」と判断されても、不正競争防止法上の「営業秘密」とはならない可能性もあるのです。
②「事業活動に有用な技術上又は営業上の情報」であること(有用性)
その情報が客観的に見て役に立つものである必要があるということです。
直接的に使えるものでなくとも、その情報があることによって経費の節約や将来の企画立案に役立つといった間接的に使えるものでも有用性があると認められます。
ですから、「その会社が成功したケース」というポジティブな情報だけでなく、「その会社が失敗したケース」というネガティブな情報であっても、有用性のある情報と認められます。
③「公然と知られていない」こと(非行知性)
「営業秘密」であるには、文字通り、その情報が公に知られていないことが必要であるとされています。
情報を保有している者の管理下以外でその情報を手に入れることができない状況であり、公に知られていない状況であることが必要です。
これらの①~③に該当する場合には不正競争防止法上の「営業秘密」であると認められ、不正競争防止法の保護を受けることとなります。
次回は、Aさんの行為について具体的に検討するとともに、考えられる弁護活動についても触れていきます。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士は、不正競争防止法違反のような複雑な経済犯罪についてもご相談を承っています。
触れてきたように、「営業秘密」であるかどうか等は、具体的な事情と法律知識を突き合わせて判断しなければいけません。
こうした場面でこそ、法律の専門家である弁護士のサポートが大切となります。
弊所の弁護士による初回接見サービスや初回無料法律相談のご予約・お問い合わせは24時間いつでも0120-631-881で受け付けておりますので、まずはお気軽にお電話ください。
(滋賀県高島警察署までの初回接見費用:3万9,200円)
営業秘密侵害による不正競争防止法違反①
営業秘密侵害による不正競争防止法違反①
滋賀県高島市にある会社V社に勤務しているAさんは、営業を担当していました。
Aさんは営業の仕事をするためにと、V社から顧客情報やV社の売上データ、統計などの情報を開示されていました。
それらのデータには、限られた人しかアクセスできず、情報を閲覧するにはパスワードの入力が必要とされていました。
また、データの最初には「マル秘」のマークがついているものもありました。
ある日、AさんはV社から競合他社であるB社へ転職しようと思い立ち、V社から開示されたデータを自身の私用USBにコピーすると、それを持ち出し、B社の面接の際に一部を見せて自分を売り込みました。
そしてAさんはB社に転職し、V社のデータを利用して営業活動を行っていました。
するとある日、滋賀県高島警察署の警察官がAさん宅を訪れ、「営業秘密の侵害をした不正競争防止法違反の容疑がかかっている。警察署で話を聞きたい」と言われました。
その後、Aさんは不正競争防止法違反の容疑で逮捕されてしまい、Aさんの両親は急いで滋賀県や京都府の刑事事件を扱う弁護士に相談しました。
(※この事例はフィクションです。)
・営業秘密と不正競争防止法
皆さんの中にも、「会社の営業秘密は漏らしてはいけないもの」というイメージは強いでしょう。
しかし、営業秘密を漏らすことで犯罪になってしまうのか、なるならばどういった犯罪になるかまでは知らないという方も多いのではないでしょうか。
今回は、営業秘密とそれに関連する不正競争防止法について取り上げます。
まず、Aさんは営業秘密を侵害した不正競争防止法違反の容疑で逮捕されていますが、営業秘密の侵害による不正競争防止法違反とはどういった犯罪なのでしょうか。
不正競争防止法の該当条文は以下のようなものになります。
不正競争防止法21条
次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の懲役若しくは2,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
3号 営業秘密を保有者から示された者であって、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、次のいずれかに掲げる方法でその営業秘密を領得した者
ロ 営業秘密記録媒体等の記載若しくは記録について、又は営業秘密が化体された物件について、その複製を作成すること。
4号 営業秘密を保有者から示された者であって、その営業秘密の管理に係る任務に背いて前号イからハまでに掲げる方法により領得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密の管理に係る任務に背き、使用し、又は開示した者
このように、不正の利益を得る目的で営業秘密を複製して領得したり、それを任務に背いて使用・開示してしまえば、不正競争防止法違反となってしまうのです。
では、具体的にどういったものがこの不正競争防止法違反に該当するのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
・「不正の利益を得る目的」
不正競争防止法違反となるには、「不正の利益を得る目的」若しくは「その保有者に損害を加える目的」で営業秘密の侵害をすることが必要です。
「その保有者に損害を加える目的」は文字通り、営業秘密を保有している会社や人に対して損害を与える意図で行うことを指します。
そしてもう一方の「不正の利益を得る目的」とは、公序良俗や信義則(相手の信頼を裏切らないように誠実に行動すべきであるという原則)に反するような形で不当な利益を得ようする意図で行うことを指します。
営業秘密を保有している側からすれば、営業秘密を業務以外で複製して持ち出すというようなことはしないと信頼してその人に開示しているはずですから、業務外に正当な理由がないにも関わらず、自分の利益のために営業秘密の持ち出しをしてしまえば、不当な利益を得ることを目的とした信義則に反する行いをしていると考えられるでしょう。
次回は、そもそもこの不正競争防止法の保護している「営業秘密」がどんなものであるのかを取り上げます。
京都府・滋賀県の不正競争防止法違反事件を含む刑事事件の逮捕にお困りの際は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
弊所の弁護士による初回接見サービスや初回無料法律相談のご予約・お問い合わせは24時間いつでも0120-631-881で受け付けております。
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スポーツ選手の偽計業務妨害事件
スポーツ選手の偽計業務妨害事件
Aさんは、とある企業の陸上部に所属して国内外の大会に出場している陸上選手です。
Aさんは、自分の記録が思うように伸びないにもかかわらず、同期であるBさんが記録を伸ばし大会で上位に入り続けていることに焦りを感じていました。
そこでAさんは、京都府京田辺市で開かれた大会の競技直前にBさんが競技で使用するシューズを隠したり、使用すればドーピングに引っかかる禁止薬物をこっそりBさんの飲み物に混ぜたりしました。
結果としてBさんはドーピング検査で異常があるとして大会出場ができなくなってしまいました。
その後、Bさんが自分は薬物を使用していないという主張をしたことから調査がなされ、Aさんの嫌がらせ行為が発覚しました。
そして、Aさんは京都府田辺警察署に偽計業務妨害罪の容疑で話を聞かれることになってしまいました。
(※平成30年7月27日産経新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・スポーツ選手の偽計業務妨害事件?
スポーツ選手への嫌がらせ行為と業務妨害罪は、なかなか結び付きづらいかもしれません。
しかし、スポーツ選手の仕事はまさにスポーツ・競技に取り組み、成績を残すことです。
例えば、AさんやBさんのような企業に所属する陸上選手の場合、競技に取り組んだり大会等で活躍したりすることで企業のPR活動を行うことが仕事の1つです。
今回Aさんが容疑をかけられている偽計業務妨害罪だけでなく、業務妨害罪における「業務」とは、人がその社会的地位に基づいて、もしくはその社会的地位と関連して行う職業等の継続して従事することを必要とする仕事を指します。
こう考えると、スポーツ選手という仕事も業務妨害罪のいう「業務」にあたると考えられるでしょう。
ですから、嫌がらせ行為によって競技をすることを妨害することは業務妨害罪となりえるのです。
では、具体的に今回のAさんが容疑をかけられている偽計業務妨害罪の内容を見ていきましょう。
刑法233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
偽計業務妨害罪が成立するには、「虚偽の風説を流布」するか、「偽計を用い」るかして「業務を妨害」していることが必要です。
「虚偽の風説を流布」するとは、文字通り、虚偽の事項を内容とする噂を不特定または多数の者に知れ渡るように伝えることを言います。
そして、「偽計」を用いるとは、人を騙したり誘惑したり、他人の無知や勘違いを利用することを指します。
今回のAさんは、Bさんに関する虚偽の噂を広めることでBさんの業務を妨害したわけではないので、「偽計」を用いたと考えられます。
Aさんの行った嫌がらせ行為は、Bさんのシューズを隠したり、Bさんに隠れてBさんの飲料に禁止薬物を混ぜて飲ませたりしたことです。
このうち、シューズを隠した行為については、Bさんにシューズがないと思わせている=Bさんを騙していると考えられますし、Bさんの飲料に禁止薬物を混ぜて飲ませたことも、Bさんを騙している、もしくはBさんが禁止薬物が入っている飲料であることを知らないことを利用していると言えそうです。
さらに、今回のAさんの嫌がらせ行為によって、Bさんは大会への出場ができなくなっていますから、業務を妨害されていると言えるでしょう。
なお、業務妨害罪は実際に業務を妨害されたかどうかではなく、業務妨害のおそれがあったかどうかで成否が判断されます。
仮に今回のAさんの嫌がらせ行為によってBさんが大会に出られないことにならなかったとしても、Bさんが大会に出られなかったり競技ができなかったりするおそれのある行為をしていれば、偽計業務妨害罪が成立すると考えられるのです。
こうした偽計業務妨害事件では、業務妨害を受けた被害者に対しての謝罪・弁償による示談交渉や、再犯防止対策の構築、取調べ等捜査機関への対応のサポート等の弁護活動が考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件専門の強みを生かして幅広い弁護活動を行っています。
京都府の偽計業務妨害事件でお困りの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。
(京都府田辺警察署までの初回接見費用:3万7,600円)
自転車の飲酒運転で道交法違反
自転車の飲酒運転で道交法違反
京都市南区に住んでいるAさん(30歳 会社員)は、自宅近くの居酒屋で開かれた飲み会に参加しました。
Aさんはその時、自転車で居酒屋まで向かって飲み会に出席したのですが、帰る際には酔っ払って足元がふらついていました。
Aさんは、「何も自動車を運転するわけではないのだから大丈夫だろう。」と考え、乗ってきた自転車にそのまま乗って帰路につきました。
しかし、道中Aさんは運転を誤って単独事故を起こし、骨折するけがを負ってしまいました。
通行人が救急車を呼んでくれ、Aさんは病院まで運ばれたのですが、その際、京都府南警察署の警察官から、「飲酒運転していたため、道交法違反となる。後日、警察署で話を聞きたい」と言われてしまいました。
Aさんは自転車の飲酒運転でも犯罪になるとは思っていなかったため、驚き、出頭の前に弁護士に話を聞いてみることにしました。
(※平成31年2月8日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・自転車で飲酒運転?
多くの方のイメージでは、飲酒運転という犯罪は自動車やバイクを運転した際のものであるのではないでしょうか。
しかし、態様によっては、Aさんのような自転車での飲酒運転でも犯罪となってしまうことに注意が必要です。
まずは、道交法(正式名称:道路交通法)の該当条文を見てみましょう。
道交法65条1項(酒気帯び運転)
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
道路交通法117条の2
次の各号のいずれかに該当する者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
1号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等を運転した者で、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態をいう。以下同じ。)にあったもの
この道交法117条の2の1項は、飲酒運転の中でも「酒酔い運転」と呼ばれる種類のものです。
酒酔い運転は、「酒に酔った状態」、つまり、千鳥足であったりろれつがまわっていなかったりする状態で「車両等」を運転した場合に成立するものです。
この条文の「車両等」という言葉からは、なかなか自転車というイメージが浮かびにくいでしょう。
しかし、道交法には次のように定義されています。
道路交通法2条
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
8号 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
11号 軽車両 自転車、荷車その他人若しくは動物の力により、又は他の車両に牽けん引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であつて、身体障害者用の車いす、歩行補助車等及び小児用の車以外のものをいう。
つまり、道交法の中の「車両」には「軽車両」が含まれており、「軽車両」の中には「自転車」が含まれているということなのです。
ですから、自転車であっても酒酔い運転にあたる飲酒運転をしてしまえば道交法違反になってしまうのです。
なお、飲酒運転のうち、酒気帯び運転(呼気アルコール1リットル中0.15mg以上)であった場合には、自転車の飲酒運転で道交法違反となることはありません(ただし、注意をされることはあるでしょうし、事故につながる可能性もありますから、注意が必要です。)。
道路交通法117条の2の2
次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
3号 第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反して車両等(軽車両を除く。次号において同じ。)を運転した者で、その運転をした場合において身体に政令で定める程度以上にアルコールを保有する状態にあったもの
そして、以前の道交法改正によって、自転車の酒気帯び運転等を2回行うと、安全講習を受ける義務が発生します。
自転車の飲酒運転が刑事事件化した際には、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください。
弊所の弁護士は、自動車だけでなく自転車の飲酒運転に関連した刑事事件の取り扱いも行っております。
(京都府南警察署までの初回接見費用:3万5,300円)
銀行員の融資で背任事件
銀行員の融資で背任事件
京都府木津川市の銀行で働く融資係のAさんは,得意先の雑貨屋を営むBさんから500万円の融資を頼まれました。
Aさんは,Bさんのお店が経営不振であることから融資しても返済が見込めないかもしれない,とも思いつつ,Bさんに融資しないままBさんが経営破たんしてしまうと,銀行が以前Bさんに融資したお金も回収できなくなるため,融資しないことは逆に銀行への不利益となってしまうのではないかと考えました。
また,BさんがBさんのお店の経営回復を行う対策をきちんと練っていることも伝えられていたため,Aさんはそうであれば銀行も返済を見込めるだろうし損にはならないはずだしそうなれば自分の銀行内での評価も上がるのではないかと考え,Bさんに500万円を貸し出しました。
しかし,Bさんは経営破たんし,銀行はBさんへのすべての融資金の回収が不可能になりました。
銀行は追加融資した500万円がAさんのずさんな融資のせいだと考え,京都府木津警察署に背任罪の被害を受けたとして被害届を出そうとしていますが,Aさんは銀行に損を指せようと思ったり自分が得をしようと思って融資を決めたわけではないと主張しています。
(フィクションです。)
【銀行のためを思っても背任?】
今回の場合,Aさんは背任罪(刑法247条)で処罰される可能性があります。
しかし,Aさんとしては,銀行のためを思っての融資でもあったといえます。
この場合,Aさんは背任罪の責任を負うのでしょうか。
刑法247条(背任)
他人のためにその事務を処理する者が,自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で,その任務に背く行為をし,本人に財産上の損害を加えたときは,5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
この背任罪が成立するには,図利加害目的が必要となります。
つまり,今回の場合であれば,自分の利益のために今回の融資をやったという動機があったり(図利),銀行を加害してやろうという動機があったこと(加害)が必要になります。
しかし,人間は様々な感情や動機の下に動いているため,今回のAさんの融資にしても,銀行のためでもあり自分のためでもあったといえる場合もあるでしょう。
そこで,判例では,Aさんのどちらが主たる動機,決定的動機だったかで図利加害目的があったか否かを判断する,という立場を採っています。
今回の場合だと,Aさんの主張ではこの図利加害目的がないということになりますから,銀行のために融資を行ったのであり,自分の成績につながることは二の次だったと銀行や裁判所等に訴えかけたりする必要が出てきます。
このような訴えかけは,弁護士のお任せすることをおすすめします。
取調べでこのような訴えかけを行ってもなかなかすぐに信用されることは難しいですし,そうした中で厳しい取調べが行われれば,自分の本意でない供述を行ってしまう可能性も出てきてしまうからです。
弁護士であれば,より効果的な対応の仕方をアドバイスすることもできますし,捜査機関や裁判所に依頼者の主張を適切に主張していくこともできます。
特に,今回のような融資が背任罪になるかという複雑なケースでは,刑事事件に強い弁護士の弁護活動が必要不可欠ともいえるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件を専門としている弁護士事務所ですので,一度,弊所フリーダイヤル0120-631-881までお電話下さい。
(初回接見費用は0120-631-881までお問い合わせください。)
文書偽造罪と詐欺罪②
文書偽造罪と詐欺罪②
~前回の流れ~
滋賀県長浜市に住んでいるAさんは、本来は収入額が借入条件を満たさないV銀行から住宅ローンの融資を受けるために、源泉徴収票や所得証明書を偽造して、実際の収入よりも多い収入のあるような偽の源泉徴収票や所得証明書を作成しました。
そしてAさんは、それらの偽の書類をV銀行に提出し、住宅ローン3,500万円を融資してもらいました。
しかしその後、Aさんの収入が嘘であったことや、提出された書類が偽物であることが発覚し、V銀行が滋賀県木之本警察署に届け出たことで、Aさんは詐欺罪や有印公文書偽造・同行使罪などの容疑で滋賀県木之本警察署に逮捕されてしまったため、Aさんの家族は京都府・滋賀県の刑事事件に対応している弁護士に相談しました。
(※平成31年2月6日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・文書偽造罪と詐欺罪
前回の記事では、Aさんが源泉徴収票や所得証明書を偽造した行為について文書偽造罪が成立することを取り上げました。
今回の記事では、その偽造文書を提出して、AさんがV銀行から住宅ローンの融資を受けた行為について検討します。
この行為でAさんに成立する可能性のある犯罪は、刑法に規定のある詐欺罪です。
刑法246条1項(詐欺罪)
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
銀行の住宅ローンなどの融資には、借入条件が設定されていて、その条件を満たして審査を通れば融資が受けられるということになります。
この借入条件には、一定以上の収入額があることが決められていることもあり、各銀行等のパンフレットやホームページに記載されていることもあります。
さて、ここで詐欺罪が成立する要件である「人を欺いて」という行為について確認してみましょう。
詐欺罪の言う「人を欺」くという行為は、財物交付における重要な事項を偽ることである、と解釈されています。
つまり、「その事実がなかったら(嘘であったら)財物を交付することはなかった」というような事実を偽れば、「人を欺」いたということになります。
Aさんの事例の場合、銀行側からしてみれば、借入条件を満たす収入額があるかどうかは、住宅ローンを融資するかどうか決定するために非常な重要な事項であると言えます。
借入条件を満たさないのであれば、そもそも住宅ローンを融資するということにならないからです。
しかしAさんは、その部分について偽造された源泉徴収票や所得証明書を提出することで偽っています。
それによって銀行は、Aさんが借入条件を満たしていると誤解し、住宅ローンを融資する=財物を交付するに至っていますから、このAさんの行動には詐欺罪が成立すると考えられるのです。
・Aさんに対する弁護活動
この通り、Aさんには文書偽造罪(・同行使罪)と詐欺罪が成立すると考えられますが、これらの弁護活動としてどのような活動が考えられるでしょうか。
まず考えられるのは、被害者との示談交渉です。
文書偽造・同行使行為によって損害が発生している被害者がいれば、そちらへの被害弁償を行うことや、詐欺行為の被害者への被害弁償を通して、示談を締結することを目指します。
示談が締結できていることは、起訴・不起訴の判断の際だけでなく、裁判での量刑を決める際にも有利に働く事情となります。
そして次に考えられるのが情状弁護です。
文書偽造罪も詐欺罪も、一部を除いて懲役刑のみの規定となる非常に重い犯罪です。
それだけに、起訴されて有罪となれば、執行猶予がつかずに刑務所に入る可能性も高いため、再犯防止対策が構築できていることや、自身の反省が深まっていることなどを主張していくことで執行猶予の獲得や刑の減軽を狙っていくことが考えられます。
文書偽造罪も詐欺罪も、複雑な刑事事件となりやすい犯罪です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、こうした知能犯についてのご相談も受け付けております。
刑事事件にお困りの際は、お気軽に弊所弁護士までご相談ください。
(滋賀県木之本警察署までの初回接見費用:0120-631-881までお問い合わせください)
文書偽造罪と詐欺罪①
文書偽造罪と詐欺罪①
滋賀県長浜市に住んでいるAさんは、V銀行から住宅ローンの融資を受けたいと考えていましたが、V銀行が融資をする借入条件の年収に届かない年収でした。
そこでAさんは、源泉徴収票や所得証明書を偽造して、実際の収入よりも多い収入のあるような偽の源泉徴収票や所得証明書を作成しました。
そしてAさんは、それらの偽の書類をV銀行に提出し、住宅ローン3,500万円を融資してもらいました。
しかしその後、Aさんの収入が嘘であったことや、提出された書類が偽物であることが発覚し、V銀行が滋賀県木之本警察署に届け出たことで、Aさんは詐欺罪や有印公文書偽造・同行使罪などの容疑で滋賀県木之本警察署に逮捕されてしまったため、Aさんの家族は京都府・滋賀県の刑事事件に対応している弁護士に相談しました。
(※平成31年2月6日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・文書偽造罪と詐欺罪
今回のAさんは、収入部分を偽った源泉徴収票や所得証明書を作成し、住宅ローンの融資を受けていますが、どの部分でどういった犯罪が成立しうるのでしょうか。
【文書偽造罪】
まず、Aさんは偽の源泉徴収票や所得証明書をV銀行に住宅ローンの審査のために提出する目的で作成しています。
この点につき、文書偽造罪が成立すると考えられます。
文書偽造罪の言う「偽造」とは、一般的に、その名義でその文書を作成する権限がないにもかかわらず、勝手に他人名義で文書を作ってしまうことを指します。
そして、単にすでに存在している他人名義の文書の内容を変更することは「偽造」ではなく「変造」と呼ばれるのですが、「変造」と呼ばれるのは文書の非本質的部分を変更した時だけです。
つまり、他人名義の文書の内容を変更した時でも、その変更された部分が文書の本質的部分である場合には「偽造」したと認められるのです。
今回のAさんの行為をこれに当てはめて考えてみましょう。
Aさんが変更したのは源泉徴収票と所得証明書の収入の部分です。
源泉徴収票とは給与等の支払額や源泉徴収額を証明する文書であり、所得証明書とは所得とそれに対する住民税の課税金額を証明する文書です。
両者のこうした性質からすれば、収入額は源泉徴収票と所得証明書の本質的な部分といえますから、それを勝手に偽ったAさんはこれらの文書を偽造したと言えそうです。
文書偽造罪といっても、偽造する文書の種類により、成立する犯罪名が異なります。
例として2つの文書偽造罪を挙げてみます。
刑法155条1項(有印公文書偽造罪)
行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
刑法159条1項(有印私文書偽造罪)
行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
この2つの違いは、文書の作成者が誰か、という点です。
公務員や公務所が作成する文書で印章を使用する文書を偽造した場合には、「有印公文書偽造罪」が成立しますし、私人の作成する文書で印章を使用する文書を偽造した場合には「有印私文書偽造罪」が成立します。
今回のAさんは、会社が発行する源泉徴収票と、役所が発行する所得証明書を偽造しています。
ですから、それぞれ「有印私文書偽造罪」と「有印公文書偽造罪」が成立すると考えられるのです。
なお、こうして偽造された文書を使用した場合には、文書偽造罪だけでなく、偽造文書を行使した罪も成立します。
このように、文書偽造罪はそもそも「偽造」になっているのかという点からも争われる可能性のある犯罪であり、何を偽造したかによっても罪名や法定刑の変わってくる複雑な犯罪です。
文書偽造罪でお悩みの際は、刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士までご相談ください(お問い合わせ:0120-631-881)。
次回はAさんについて成立しうるもう1つの罪である詐欺罪について取り上げます。