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お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)②
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)②
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年事件と捜査段階の身体拘束
逮捕が行われるには、その犯罪の嫌疑がかかる相当性と逮捕の必要性(逃走や証拠隠滅のおそれがあること)があることが必要です。
例えば、今回のAさんのケースでは、傷害事件の加害者(今回ではAさん)と被害者(今回ではVさん)が同居しているという状態です。
刑事事件・少年事件では、加害者と被害者は接触しないようにするのが通常です。
というのも、加害者と被害者が容易に接触できてしまえば、加害者から被害者へ証言の変更を迫る等できてしまうおそれがあると考えられるからです。
刑事事件・少年事件での「証拠」とは、物としてある証拠品だけではなく、関係者の証言も「証拠」の扱いとなります。
そういったことから、Aさんのような状況では証拠隠滅のおそれがあると判断されたと考えられます。
この逮捕が警察によって行われた場合、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を検察へ送るか釈放するかを決めます。
検察へ送る(これを「送検」と言います。)場合、検察官は送致を受けた時からさらに24時間以内に勾留という逮捕に引き続くより長い身体拘束をする必要があるかどうか判断します。
検察官が勾留の必要があると判断すれば、検察官は裁判所へ勾留請求を行います。
逆に、勾留の必要はないと検察官が判断すれば、被疑者はそこで釈放されることとなります。
弁護士が釈放を求める活動の中で最も早く働きかけられるのはおそらくこの段階でしょう。
検察官が勾留請求をするかしないかの判断前であれば、検察官に向けて勾留請求をせずに釈放してほしいと主張する活動をすることができます。
特に少年事件においては、成人の刑事事件と違い、勾留請求は「やむを得ない場合」でなければできないことになっています。
少年法43条3項
検察官は、少年の被疑事件においては、やむを得ない場合でなければ、裁判官に対して、勾留を請求することはできない。
ですから、この「やむを得ない場合」に本当に当たるのかどうかを確認してもらい、勾留請求をしないよう求めていくことが考えられます。
検察官が勾留請求をした場合、その勾留請求を認めて勾留するかどうか判断するのは裁判所の裁判官です。
ここでも、弁護士は検察官の勾留請求を認めないよう裁判官に主張していくことができます。
少年事件においては、証拠隠滅や逃亡のおそれがないことだけでなく、前述の「やむを得ない」場合に当たらない事情についても主張していくことになるでしょう。
勾留がついたということになれば、まずは最大10日間の身体拘束を受けることになり、さらに最大で10日間勾留を延長することができます。
つまり、被疑者として警察や検察で捜査される場合、逮捕と勾留合わせて最大23日間の身体拘束を受ける可能性があるということになります。
また、少年事件の場合、この勾留について、「勾留に代わる観護措置」という措置が取られることもあります。
これは少年法に定められている措置で、成人の刑事事件にはない措置です。
少年法43条1項前段
検察官は、少年の被疑事件においては、裁判官に対して、勾留の請求に代え、第17条第1項の措置を請求することができる。
※注:「第17条第1項の措置」とは、観護措置のことを指します。
少年法44条
3項 前項の措置の効力は、その請求をした日から10日とする。
※注:「前項の措置」は勾留に代わる観護措置のことを指します。
簡単に言えば、被疑者段階で取られる勾留の手続きの代わりに、少年法の「観護措置」(詳しくは次回の記事で説明します。)を取る措置ということです。
勾留に代わる観護措置となった場合、被疑者である少年は、警察署の留置所ではなく少年鑑別所に留置されることになり、先述した勾留の延長はできず、最大10日間の身体拘束をされることになります。
そして、その10日間が経過し家庭裁判所に送致された後は、自動的に今度は少年法のいう「観護措置」に切り替わることになります。
少年事件では、被疑者段階でも勾留に「やむを得ない場合」という条件が加えられていたり、勾留に代わる観護措置という独特な措置があったりと、成人の刑事事件とはところどころ異なる部分があります。
だからこそ、少年事件は少年事件に詳しい弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件だけでなく少年事件も専門に扱う弁護士が迅速な対応を行っています。
まずはお気軽にご相談ください。
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)①
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)①
お年玉の兄弟喧嘩から少年事件(傷害事件)に発展してしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
会社員のBさんは、妻のCさんと息子のAさん(17歳)・Vさん(15歳)の4人で京都市西京区に住んでいます。
年が明け、AさんとVさんはBさん・Cさんや親戚からお年玉をもらいました。
しかし、もらったお年玉の額の違いでAさんとVさんは口論になり、取っ組み合いの兄弟喧嘩となってしまいました。
そして結果的にAさんがVさんを一方的に殴る展開になってしまいました。
Bさん・Cさんは兄弟喧嘩を止めようとしましたが、Aさんが激しく怒っていた様子だったため、これ以上ひどいことにならないようにしなければいけないと考え、京都府西京警察署に通報しました。
Aさんは駆け付けた警察官に傷害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Bさん・Cさん・Vさんはまさか兄弟喧嘩でAさんが逮捕されることになるとは思わず、慌ててしまいました。
Bさんらは、Aさんの学校が始まる前になんとか釈放してもらえないか、兄弟喧嘩であることからどうにか穏便に済ますことはできないか、と少年事件を扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・兄弟喧嘩でも犯罪になる?
クリスマスも過ぎ、いよいよ年の瀬となり、もうすぐお正月という雰囲気も出てきたのではないでしょうか。
今回の事例では、そのお正月の風物詩の1つであるお年玉をきっかけに兄弟喧嘩が起き、そこから少年事件へと発展してしまったようです。
今回の事例のBさんらは、Aさんが兄弟喧嘩の末に逮捕されてしまったことに驚き、困ってしまっています。
兄弟喧嘩に限らず、夫婦喧嘩や親子喧嘩など、家族で暮らしていれば家族同士で喧嘩をしてトラブルとなってしまうこともあるでしょう。
「身内の喧嘩・トラブルなのだから大事にはならないだろう」と思っている方もいるかもしれませんが、こうした家族内の喧嘩でも刑事事件・少年事件となってしまうことがあるということにも注意が必要です。
たしかに、刑法に定められている一部の犯罪については、いわゆる身内で起こった場合は刑罰を免除する、という規定があります。
例えば、有名なものとして刑法244条の親族相盗例といわれる規定が挙げられます。
刑法244条
1項 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
2項 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
3項 前二項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。
この親族相盗例が適用される犯罪は、刑法235条の窃盗罪、刑法235条の2の不動産侵奪罪、刑法246条の詐欺罪、刑法246条の2の電子計算機使用詐欺罪、刑法247条の背任罪、刑法248条の準詐欺罪、刑法249条の恐喝罪、刑法252条の横領罪、刑法253条の業務上横領罪、刑法254条の遺失物等横領罪とこれらの未遂罪です。
親族相盗例があるため、これらの犯罪については配偶者や直系血族、同居の親族の間で起こったとしても刑罰に処せられることはありません(ただし、あくまでも「刑の免除」であるため、有罪となった場合には前科が付くことになりますし、刑事事件・少年事件となる可能性自体はあります。)。
他にも、犯人蔵匿罪や証拠隠滅罪等についても、以下のような特例が定められています。
刑法105条
前二条の罪については、犯人又は逃走した者の親族がこれらの者の利益のために犯したときは、その刑を免除することができる。
※注:「前二条の罪」とは、刑法103条の犯人蔵匿等罪、刑法104条の証拠隠滅等罪を指します。
こうした規定もあることから、「身内での犯罪は大事にはならないだろう」と考える方も少なくありません。
しかし、こうした規定はあくまで特例、例外であり、特別に規定がなければたとえ身内で起こったものであったとしても逮捕を伴う刑事事件・少年事件となり、処罰・処分される可能性が十分あることになります。
今回のAさんらのケースでは、兄弟喧嘩でAさんがVさんに怪我をさせてしまったようですから、傷害罪がAさんの逮捕容疑となっているようですが、傷害罪には親族相盗例のような特例は規定されていません。
刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
ですから、たとえ兄弟喧嘩や親子喧嘩、夫婦喧嘩であったとしても、相手に怪我をさせてしまえば傷害罪として処罰・処分されることが考えられるのです。
しかし、今回のAさんに関しては未成年であるため、刑罰を受けることは原則考えられません。
少年事件では、基本的に最終的な処分として刑罰とは別の保護処分=少年の更生のための処分を下すことになるからです。
家族内で犯罪が起こってしまった時、それが刑事事件・少年事件となってしまった時、どうしてよいかわからず慌ててしまう方も多いでしょう。
そんなときにも、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士にご相談ください。
刑事事件・少年事件専門だからこそ、迅速かつ丁寧に対応いたします。
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された②
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された②
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府亀岡市に住んでいるAさん(高校3年生)は、インターネットサイトでアダルトビデオを見るうちに、路上で女性を襲うという設定のアダルトビデオに魅力を感じるようになりました。
次第にアダルトビデオの内容のようなことを自分でやってみたいと思うようになったAさんは、ある日、京都府亀岡市内の路上を歩いていた女性Vさんを後ろから羽交い絞めにして路地裏に連れ込むと、Vさんの服を脱がせその体を触るなどしました。
Aさんは無理矢理性交をしようと嫌がるVさんの体を押さえて胸や臀部を触っていたのですが、Vさんが大声を上げて人を呼んだため、「このままでは見つかってしまう」と思い、その場から逃走しました。
後日、Aさんの自宅に京都府亀岡警察署の警察官がやってきて、Aさん自宅の家宅捜索を行うとともに、Aさんに逮捕状を見せました。
Aさんの両親は、自分たちの子どもが逮捕される事態となったことに驚き、警察官にAさんの容疑を聞きましたが、詳しく教えてもらえませんでした。
困ったAさんの両親は、刑事事件と少年事件を取り扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪へ?
前回の記事で取り上げた通り、現段階でAさんが容疑をかけられているのは強制性交等未遂罪です。
しかし、実はこの後、Aさんが容疑をかけられる罪名が変更される可能性があります。
それが強制性交等致傷罪です。
刑法180条2項(強制性交等致死傷罪)
第177条、第178条第2項若しくは第179条第2項の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯し、よって人を死傷させた者は、無期又は6年以上の懲役に処する。
実は、Aさんの暴行によりVさんが負傷していた場合、Aさんの容疑が強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪に切り替わる可能性があるのです。
前回の記事で触れたように、AさんはVさんと性交等をするまでに至っていません。
しかし、強制性交等致傷罪を定める刑法180条2項の条文を見ると分かるように、強制性交等致傷罪は強制性交等罪の犯人が被害者に傷害を与えた時だけでなく、「第177条(略)の罪の未遂罪を犯し」た者が被害者に傷害を与えた場合も強制性交等致傷罪が成立するとしています。
刑法第177条は先ほど挙げた通り強制性交等罪のことを指しますから、強制性交等未遂罪が成立する者も強制性交等致傷罪の主体となりえるのです。
そして、前回の記事で取り上げた通り、強制性交等未遂罪はたとえ性交等に取り掛かっていなかったとしても、性交等を目的とした暴行又は脅迫に取り掛かった段階で成立します。
すなわち、たとえ性交等に取り掛かっていない段階であったとしても、性交等を目的とした暴行又は脅迫を開始し、それによって被害者を傷害すれば、性交等は未遂であったとしても強制性交等致傷罪が成立することになるのです。
今回のAさんは、事件当日から時間が経って逮捕されていますが、事例の内容だけではVさんが怪我をしているのかどうかはわかりません。
ある程度時間が経ってから診断書が提出され、被害者が怪我をしていることが分かったということもあり得ますから、容疑をかけられている罪名が強制性交等未遂罪から強制性交等致傷罪に切り替わる可能性も視野に入れつつ、弁護活動を行うことが必要となるでしょう。
・弁護士の活動
未遂とはいえ、強制性交等罪は法定刑からも分かる通り非常に重い犯罪です。
少年事件の場合、原則として少年は刑罰によって処罰されることはありません。
少年事件の手続きでは、その少年の更生にはどういった処分が適切なのかが調査され、判断されます。
ですから、法定刑の軽重で一概にその処分が決まるというわけではありません。
しかし、これだけ重い刑罰が定められているほど重大な犯罪をしてしまうということは、それだけの原因が少年自身の内部やその周囲の環境にある可能性がある、と判断されることは十分考えられます。
だからこそ、少年による強制性交等事件では、その少年本人だけでなく、その周囲のご家族等が協力して更生のための環境づくりをしていく必要があります。
少年事件に強い弁護士がいれば、そのサポートを行うことができます。
例えば、被害者の方への謝罪は、少年自身やその家族がどういったことをしてしまったのか反省し受け止めることにつながると考えられますが、特に強制性交等事件のような暴力や脅迫をともなう性犯罪事件では、被害者の方へ直接連絡を取りお詫びをすることは非常に難しいです。
弁護士が間に入ることで、少しでも被害者の方の不安を軽減し、かつ少年やその家族の謝罪や反省を伝えられることが期待できます。
また、少年が再犯をしない環境づくりのためには、少年自身の反省だけでなく、その原因を探り対策を立てることも重要です。
第三者であり少年事件の知識・経験のある弁護士であれば、家族には相談しづらいことも相談しやすく、客観的なアドバイスをもらうことも可能です。
強制性交等事件で子どもが逮捕されてしまったら、まずは一度、少年事件に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕されてしまった少年に弁護士が直接会いに行く初回接見サービスもございます。
未成年の少年が逮捕されてしまえば、その不安は大きいものでしょう。
弁護士が直接少年に会って、少年事件の流れやアドバイスを伝えることで、その不安を軽減することもできます。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された①
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕された①
強制性交等未遂事件で子どもが逮捕されてしまったというケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府亀岡市に住んでいるAさん(高校3年生)は、インターネットサイトでアダルトビデオを見るうちに、路上で女性を襲うという設定のアダルトビデオに魅力を感じるようになりました。
次第にアダルトビデオの内容のようなことを自分でやってみたいと思うようになったAさんは、ある日、京都府亀岡市内の路上を歩いていた女性Vさんを後ろから羽交い絞めにして路地裏に連れ込むと、Vさんの服を脱がせその体を触るなどしました。
Aさんは無理矢理性交をしようと嫌がるVさんの体を押さえて胸や臀部を触っていたのですが、Vさんが大声を上げて人を呼んだため、「このままでは見つかってしまう」と思い、その場から逃走しました。
後日、Aさんの自宅に京都府亀岡警察署の警察官がやってきて、Aさん自宅の家宅捜索を行うとともに、Aさんに逮捕状を見せました。
Aさんの両親は、自分たちの子どもが逮捕される事態となったことに驚き、警察官にAさんの容疑を聞きましたが、詳しく教えてもらえませんでした。
困ったAさんの両親は、刑事事件と少年事件を取り扱う弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・強制性交等未遂罪
刑法に定められていた強姦罪が刑法の改正によって強制性交等罪となったのは、一昨年の平成29年7月のことです。
すでに刑法改正から2年が経過しているため、強制性交等罪という名前に違和感もなくなってきたのではないでしょうか。
強制性交等罪は、刑法177条に規定されている犯罪です。
刑法177条(強制性交等罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
刑法改正前の旧強姦罪では、被害者が女性に限定されていたり、対象となる行為が性交のみであったりしたのに対し、強制性交等罪となってからは、被害者に男女の限定が無くなり、さらに対象とされる行為も性交だけではなく肛門性交や口腔性交も含まれるようになりました。
また、今回の事例のAさんの事件は少年事件として扱われるため、原則として刑務所へ行くということはありませんが、法定刑も変更されていることに注目が必要です。
旧強姦罪は有罪となった場合「3年以上の有期懲役」に処せられることとなっていましたが、強制性交等罪ではその法定刑も引き上げられ、「5年以上の有期懲役」に処せられることとなりました。
現在の日本の制度では、執行猶予は言い渡された刑が3年以下の懲役でなければつけることができませんから、この法定刑の引き上げも非常に大きな変更であったといえるでしょう。
さて、この強制性交等罪には、未遂罪も規定されています。
刑法180条(未遂罪)
第176条から前条までの罪の未遂は、罰する。
未遂罪とは、その犯罪を実現しようと実行に取り掛かったものの、完遂することができなかったという場合を処罰する犯罪です。
刑法43条
犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。
ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
未遂罪は通常、この刑法43条の条文の前段部分を指します。
後段部分はそれとは別に「中止犯(中止未遂)」と呼ばれたりします。
全ての犯罪に未遂罪があるわけではなく、未遂罪は個々の犯罪ごとに特別に規定されています。
強制性交等罪については、前述した刑法180条により未遂罪が規定されていることから、強制性交等罪を実現しようとして実行に取り掛かったがやり遂げなかった、という場合には強制性交等未遂罪が成立することになるのです。
では、具体的にどのような場合に強制性交等未遂罪が成立するのでしょうか。
先ほど記載したように、未遂罪が成立するには犯罪の実行に取り掛かったということ(「実行の着手」と呼ばれます。)が必要です。
強制性交等罪においては、性交等の行為を開始すること、もしくは性交等をするための手段としての「暴行又は脅迫」を開始した時点で、強制性交等罪の実行に取り掛かった=「実行の着手」があったと考えられています。
つまり、たとえ性交等に取り掛かっていなかったとしても、性交等をするために暴行や脅迫を行っていればその時点で強制性交等未遂罪は成立するということになります。
今回のAさんは、性交等をする目的でVさんを羽交い絞めにして路地裏に連れ込み、嫌がるVさんを抑えて体を触っています。
こうしたことから、Aさんは少なくとも強制性交等罪のいう「暴行」を用いてVさんと性交等をしようとしていると考えられ、「暴行」に取り掛かっていると考えられます。
しかし、結果としてAさんはVさんと性交等をすることはなく、体を触るにとどまっていますから、強制性交等罪に定められている行為を完遂したというわけではありません。
つまり、Aさんには強制性交等未遂罪が成立すると考えられるのです。
ここまで強制性交等未遂罪についてみてきましたが、実はAさんにかけられた容疑は、強制性交等未遂罪から変更される可能性もあります。
そちらについては、次回以降の記事で取り上げます。
刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、強制性交等未遂事件に関するご相談や少年事件に関するご相談をいつでも受け付けております。
子どもが逮捕されてしまって困っている、子どもが起こしてしまった少年事件で悩んでいるという場合には、まずは一度弊所弁護士までご相談ください。
京都府迷惑防止条例の改正~盗撮③
京都府迷惑防止条例の改正~盗撮③
京都府迷惑防止条例の改正、特に盗撮行為に関する部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市左京区にある観光客が利用するホテルの従業員です。
Aさんは自身の働いているホテルの客室に盗撮用の小型カメラを仕掛け、ホテルの利用客の下着姿や裸姿を盗撮していました。
しかしある日、ホテルの利用客であるVさんがAさんの仕掛けた盗撮カメラの存在に気づき、ホテルに報告し、そこからAさんの盗撮行為が発覚しました。
ホテルやVさんが京都府川端警察署に通報したことにより、Aさんは盗撮事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・京都府迷惑防止条例の改正
前回までの記事で、京都府のホテルの客室での盗撮事件は、現在のところ京都府迷惑防止条例違反とはならないと考えられる、としていました。
しかし、つい先日、京都府迷惑防止条例の一部を改正する案が議会に提出されました。
参考として、現在の京都府迷惑防止条例の盗撮に関する条文を挙げておきます。
京都府迷惑防止条例3条
1項 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(略)
2項 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1号 みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
2号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
3号 みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
3項 何人も、みだりに、公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある他人の姿態を撮影してはならない。
この改正は、近年悪質・巧妙化する盗撮事件に対応するための改正であるとされており、盗撮に関する改正内容は以下のようなものです(今回の改正案ではつきまといに関する物もありますが、それは省略します。)。
・「卑わいな言動」の規制の追加
スマートフォンによる卑わいな画像の送り付け行為など、現在規制されている行為態様以外の卑わいな言動を規制するために、「これらのほか卑わいな言動をすること」として規制するようです。
・盗撮行為に対する規制の拡充
現在の京都府迷惑防止条例では、盗撮行為を規制している場所が、大まかに言って「公共の場所・乗り物」若しくは「公衆が利用することができる場所」に限定されています。
しかし、「事務所、教室、タクシーその他不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物」での下着等の盗撮行為を規制するほか、「住居、宿泊施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」での裸体や下着姿の人に対する盗撮行為も規制する予定のようです。
つまり、今まで京都府迷惑防止条例違反となはらず、軽犯罪法違反や建造物侵入罪で対処されてきた盗撮行為も、この改正によって京都府迷惑防止条例違反として対処されることになりうるのです。
・盗撮の準備行為に対する規制の拡充
現在の京都府迷惑防止条例では、盗撮をしようとしてカメラ等を差し出したり置いたりする行為が規制されていますが(京都府迷惑防止条例3条2項2号)、これに加え、盗撮目的でカメラを人に向ける行為やカメラを設置する行為も規制されるようです。
・罰則の新設・強化
先ほど挙げた「卑わいな言動」や盗撮目的で人にカメラを向けるといった行為の規制は新しく追加されるものですから、これらの罰則を新設することになります。
現在も、東京都などの迷惑防止条例では、公共の場所・乗り物以外の場所での盗撮を規制している条文が見られますが、京都府の場合、特に特徴的なのは盗撮の規制場所に「宿泊施設の客室」を明記していることでしょう。
「宿泊施設の客室」がこういった盗撮の規制場所として明記されるのは、全国でも初めてとのことです。
この改正京都府迷惑防止条例が施行されれば、京都府内の盗撮行為によって成立する犯罪や罰則が、今までとは異なるものになることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
例えば、Aさんのケースでも、現在では建造物侵入罪や軽犯罪法違反に問われることが考えられるのは前回の記事で触れた通りですが、もしもこの改正京都府迷惑防止条例が施行された後の盗撮事件であれは、京都府迷惑防止条例違反として対処されることになるでしょう。
このように、迷惑防止条例といっても各都道府県で特色がみられ、さらに、近年盗撮行為の規制については改正が行われて規制が拡充される動きが多いです。
盗撮事件を起こして捜査される場合には、一度刑事事件に強い弁護士に相談し、自分がその都道府県の迷惑防止条例違反となるのかどうか、他の犯罪に当たるのかどうか、見通しや活動を聞いてみることがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士がこうした刑事事件のお悩み・ご不安に対して丁寧にサポートを行います。
まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
京都府迷惑防止条例の改正~盗撮②
京都府迷惑防止条例の改正~盗撮②
京都府迷惑防止条例の改正、特に盗撮行為に関する部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市左京区にある観光客が利用するホテルの従業員です。
Aさんは自身の働いているホテルの客室に盗撮用の小型カメラを仕掛け、ホテルの利用客の下着姿や裸姿を盗撮していました。
しかしある日、ホテルの利用客であるVさんがAさんの仕掛けた盗撮カメラの存在に気づき、ホテルに報告し、そこからAさんの盗撮行為が発覚しました。
ホテルやVさんが京都府川端警察署に通報したことにより、Aさんは盗撮事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・ホテルの一室での盗撮行為は何罪?
前回の記事では、現在の京都府迷惑防止条例の盗撮の規制を見ると、Aさんのような盗撮行為は京都府迷惑防止条例違反とはならないと考えられるということに触れました。
では今回のAさんのような盗撮事件はどういった犯罪になるのかというと、刑法に規定されている建造物侵入罪や、軽犯罪法違反といった犯罪が考えられます。
刑法130条(建造物侵入罪)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
軽犯罪法1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
23号 正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
建造物侵入罪は、簡単に言えばその建造物の管理者の意思に反して建造物に入ることで成立する犯罪です。
今回のAさんはホテルの従業員ではありますが、ホテルの利用客の盗撮をするためにホテルに立ち入り、その客室に盗撮カメラを仕掛けています。
Aさんがホテルの管理者からホテルへの立ち入りを認められているのは、あくまでホテルの従業員としての仕事をするためであり、盗撮をする目的であると分かっていればホテルへの立ち入りは認められていなかったでしょう。
こうしたことから、Aさんには建造物侵入罪が成立する可能性があるのです。
また、軽犯罪法では、正当な理由なく人の住居をひそかにのぞき見た者が軽犯罪法違反とされますが、ホテルの客室も、一時とはいえ利用客が起臥寝食に利用する場所ですから、人の住居といえます。
そこを盗撮することでのぞき見ていることから、Aさんには軽犯罪法違反の可能性も出てきます。
このように、Aさんのような京都府迷惑防止条例違反にならないような盗撮行為については、他の犯罪によってカバーされてきたのですが、Aさんの立場にある人がその盗撮行為がなされた建造物の管理者自身だった場合、「管理者の意思に反して建造物に立ち入っている」とはいえないことから建造物侵入罪の適用はできず、軽犯罪法違反の適用のみになることがありました。
もちろん、軽犯罪法違反とはいえ犯罪は犯罪ですし、前科もつきますが、他の盗撮行為に比べて軽い処罰となってしまうという批判もありました。
そこで、多様な盗撮事件に対応するために、各都道府県で迷惑防止条例を改正する動きが出てきました。
京都府もつい先日、その動きがあったのです。
次回の記事では京都府迷惑防止条例改正について詳しく触れていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、盗撮事件についてのご相談もお受けしています。
都道府県ごとに規定の違う迷惑防止条例だからこそ、なかなかわかりづらい部分もあります。
ぜひ一度、刑事事件専門の弁護士にご相談ください。
京都府迷惑防止条例の改正~盗撮①
京都府迷惑防止条例の改正~盗撮①
京都府迷惑防止条例の改正、特に盗撮行為に関する部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市左京区にある観光客が利用するホテルの従業員です。
Aさんは自身の働いているホテルの客室に盗撮用の小型カメラを仕掛け、ホテルの利用客の下着姿や裸姿を盗撮していました。
しかしある日、ホテルの利用客であるVさんがAさんの仕掛けた盗撮カメラの存在に気づき、ホテルに報告し、そこからAさんの盗撮行為が発覚しました。
ホテルやVさんが京都府川端警察署に通報したことにより、Aさんは盗撮事件の被疑者として取調べを受けることになりました。
(※この事例はフィクションです。)
・盗撮と現在の京都府迷惑防止条例
痴漢行為と同様、盗撮行為も盗撮行為自体が「盗撮罪」として犯罪となっているわけではありません。
盗撮事件ごとの事情により、成立する犯罪が異なるのです。
そして盗撮事件が起きた際、よく適用される犯罪の1つが各都道府県の迷惑防止条例違反です。
京都府では、京都府迷惑行為等防止条例(以下「京都府迷惑防止条例」)という迷惑防止条例が規定されています。
現在の京都府迷惑防止条例での盗撮の規定は以下のようなものになっています。
京都府迷惑防止条例3条
1項 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
(略)
2項 何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、前項に規定する方法で、次に掲げる卑わいな行為をしてはならない。
1号 みだりに、着衣で覆われている他人の下着等を撮影すること。
2号 みだりに、前号に掲げる行為をしようとして他人の着衣の中をのぞき込み、又は着衣の中が見える位置に写真機その他の撮影する機能を有する機器を差し出し、置く等をすること。
3号 みだりに、写真機等を使用して透視する方法により、着衣で覆われている他人の下着等の映像を撮影すること。
3項 何人も、みだりに、公衆便所、公衆浴場、公衆が利用することができる更衣室その他の公衆が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある他人の姿態を撮影してはならない。
つまり、かいつまんで言うと、現在の京都府迷惑防止条例で規制されている盗撮行為は以下のようになります。
①公共の場所・乗り物での盗撮行為と、その盗撮行為のための機器の差出し・設置(京都府迷惑防止条例3条2項1~3号)
②公衆便所・公衆浴場などの講習が利用できる場所で通常衣服の一部または全部を身に着けない場所での、そこにいる一部または全部衣服を身に着けていない人に対する盗撮行為(京都府迷惑防止条例3条3項)
このような規定の仕方からすると、電車や駅での盗撮行為や、銭湯などでの盗撮行為は京都府迷惑防止条例違反となりえますが、今回の事例のAさんのような観光客向けホテルの一室で起きた盗撮行為については、「公共の場所」でもなく「公衆が利用できる」場所でもないため、京都府迷惑防止条例違反とはならないと考えられるのです。
では、Aさんのような京都府のホテルの一室での盗撮事件は、現在どのように対処されているのでしょうか。
次回の記事で詳しく触れていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が盗撮事件を含む刑事事件のご相談に初回無料で対応しています。
Aさんの事例のように、盗撮事件ではどこでどのように盗撮が行われたかによって、その場所の迷惑防止条例違反が適用されるのかどうかが異なります。
その判断を行うためには、迷惑防止条例を詳しく知っていることはもちろん、盗撮事件自体の経験・知識も必要です。
まずは一度、刑事事件に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。
京都市上京区内飲食店での食い逃げ
京都市上京区内飲食店での食い逃げ
京都市上京区内の飲食店での食い逃げについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~ケース~
Aさんは京都市上京区のレストランにてランチセットを注文し、その提供を受けました。
食事後に代金を支払いたくないと翻意したAさんは、会計時に従業員に対して「財布を忘れたので、車に取りに戻る」と言い、店を後にして逃走してしまいました。
その後、飲食店がAさんの食い逃げに気づいて京都府上京警察署に被害届を出した結果、Aさんは詐欺罪の容疑で逮捕され、京都府上京警察署に連行されました。
(事例はフィクションです。)
~食い逃げは何罪か?~
「食い逃げ」を行った場合どの罪に当たるのかという点については、
①注文時から代金を支払う意思が無かった場合
②料理の提供を受けた後に、代金を支払う意思が無くなった場合
イ)店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合
ロ)店員を欺いて、支払いを免れた場合
ハ)店員の隙を見て逃走した場合
のそれぞれの場合で何罪が成立するのか分かれることになります。
①注文時から代金を支払う意思が無かった場合
注文時から代金を支払う意思が無かった場合、詐欺罪が成立する可能性があります。
刑法第246条(詐欺罪)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
支払う意思がないにも関わらずあるかのように装って店員を騙し、飲食物(財物)の提供を受けているので、刑法第246条第1項の詐欺罪に当たるということになるのです。
②料理の提供を受けた後に、代金を支払う意思が無くなった場合
料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合については、さらにイ・ロ・ハの場合に分けられます。
イ)店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合
料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員に対して暴行・脅迫を用いて、支払いを免れた場合には、強盗罪や恐喝罪が成立する可能性が出てきます。
刑法第236条(強盗罪)
1.暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
刑法第249条(恐喝罪)
1.人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
②の場合、飲食物の提供を受けた人はその代金を支払う債務が発生しています。
そしてイ)では、暴行又は脅迫を用いた結果、かかる債務を免れており、かかる債務免除は「財産上」の「利益」といえます。
したがって、刑法第236条第2項の強盗利得罪又は第249条第2項の恐喝利得罪に当たります。
この2条のいずれかになるのかは、相手に加えた暴行・脅迫が「反抗を抑圧する程度」であれば強盗、至らなければ脅迫という区別になります。
ロ)店員を欺いて、支払いを免れた場合
料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員を欺いて支払いを免れた場合には、①同様に詐欺罪が成立する可能性が出てきます。
本件のケースもこのパターンとなるでしょう。
本件では、Aには代金支払債務があるにも関わらず、「車に財布を取りに行ってくる」と嘘を言い、Aの言葉を信じた店員がそれを承諾しています。
店員の承諾はAの支払債務の一時的に猶予すると言う旨の黙示の意思表示であると考えられ、Aにとってかかる債務の猶予を受けることは利益といえます。
ハ)店員の隙を見て逃走した場合
では、料理の提供を受けた後に代金を支払う意思が無くなった場合で、さらに店員の隙を見て逃走した場合にはどうなるのでしょうか。
食い逃げであるのだから窃盗罪が成立するのではないか、と考える方が多いのではないでしょうか。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
店員の隙を見て逃走したという行為は、Aに騙された店員がその(瑕疵ある)意思表示を以て支払債務を免除している訳ではなく、あくまで店員の意思に反して支払債務の免除という利益を得ているに過ぎません。
いわゆる利益窃盗という行為に当たりますが、刑法第235条は利益窃盗を処罰していません。
したがって、ハ)のケースは刑事事件としては不処罰となります。
もちろん、刑事事件にならないからといって民事上の責任が問われないわけではありませんし、今まで見てきた他の犯罪に当たるケースだと疑われてしまう場合もあります。
何より食い逃げはいけないことですから、絶対にやめましょう。
~食い逃げ事件を起こしてしまったら~
本件の場合のように被害届が出されてしまう前に弁護士に相談し、早い段階で謝罪や示談をすることができれば、刑事事件化することなく事態を解決することができる場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、詐欺罪や窃盗事件に関わる弁護の経験豊富な弁護士が多数在籍しております。
また、逮捕・勾留された方に対しての初回接見サービスの予約も24時間受け付けております。
事件化前であってもご自身がした行為について不安な方や、既にご家族が逮捕・勾留され会うことができない方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部へご連絡下さい。
罰則強化のながら運転で刑事事件②
罰則強化のながら運転で刑事事件②
罰則が強化されたながら運転について刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例①~
Aさんは、京都市東山区にある友人の家に向かう際、スマートフォンをカーナビ代わりにして運転していました。
しかし、友人宅への道がわかりづらかったため、Aさんはカーナビ画面を映していたスマートフォンを注視しながら運転していました。
すると、パトロールしていた京都府東山警察署の警察官がAさんのその様子を発見。
Aさんは、ながら運転をしていたとして、後日京都府東山警察署に呼び出されることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
~事例②~
Bさんは、京都市東山区内の道路で自動車を運転している際、スマートフォンでゲームアプリを起動し、ゲームをしながら運転する、いわゆるながら運転をしていました。
すると、赤信号に気づくのが遅れ、Aさんは横断歩道前で急ブレーキを踏みました。
交通違反を警戒していた京都府東山警察署の警察官にそれを見とがめられ、Aさんはながら運転で交通の危険を発生させたとして、道路交通法違反の容疑で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・どのながら運転がどの罰則になるか
前回の記事で触れた通り、今年の12月1日に道路交通法が改正され、ながら運転の罰則が強化されました。
該当条文は以下の通りです。
道路交通法71条5号の5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第118条第1項第3号の2において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。第118条第1項第3号の2において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
道路交通法117条の4
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号の2 第71条(運転者の遵守事項)第5号の5の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者
道路交通法118条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
4号 第75条(自動車の使用者の義務等)第1項第2号又は第5号の規定に違反した者
ながら運転の罰則は、ながら運転をして交通の危険を発生させたかどうかによって異なることも前回の記事で取り上げた通りです。
では、事例①②のAさんとBさんは、このうちどちらに当てはまるのでしょうか。
~Aさんの場合~
Aさんは、カーナビ代わりにしていたスマートフォンの画面を注視してしまっています。
これは、道路交通法71条5号の5でいう「当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(略)に表示された画像を注視」することにあたるながら運転です。
ですから、Aさんはながら運転をしてしまっていますが、具体的に交通の危険を発生させたわけではなさそうです。
そのため、Aさんは道路交通法118条4号の、ながら運転禁止の規定に違反したという道路交通法違反になりそうです。
こちらの道路交通法違反は、反則金制度(反則金を納付することで刑事手続にならない制度)の対象となっているため、例えばAさんがその容疑を否認している、何度も交通違反を繰り返しており前科前歴がある等の事情がなければ、反則金を納付することで刑事事件化を免れることができると考えられます。
~Bさんの場合~
Bさんは、スマートフォンのゲームをしながら運転しています。
ゲームをしていることから、スマートフォンの画面を注視しながら運転していたと考えられ、先ほどのAさんと同様、ながら運転禁止の規定に違反していることになります。
こうした態様は、典型的なながら運転といえるでしょう。
ここでBさんはながら運転をしたことで赤信号に気づくのが遅れ、急ブレーキを踏んでいることに注意が必要です。
これは一歩間違えば交通事故ともなりかねない行為であることから、道路交通法117条の4の1号の2にいうような「交通の危険を生じさせた」と判断される可能性があります。
実際に今回の事例②では、Bさんはながら運転により交通の危険を生じさせた道路交通法違反として話を聞かれることとなっています。
Aさんのながら運転の場合とは異なり、ながら運転で交通の危険を生じさせた場合には反則金制度の利用はできず、刑事事件となりますから、Bさんは被疑者として取調べられることになるでしょう。
こうした場合には、まずは刑事事件に強い弁護士へ相談することが望ましいでしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、弁護士が初回無料法律相談を行っています。
ながら運転は刑罰も強化され、世間からの注目も集まっている犯罪です。
ながら運転で刑事事件となってしまった際には、一度弁護士までご相談下さい。
罰則強化のながら運転で刑事事件①
罰則強化のながら運転で刑事事件①
罰則が強化されたながら運転について刑事事件化したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例①~
Aさんは、京都市東山区にある友人の家に向かう際、スマートフォンをカーナビ代わりにして運転していました。
しかし、友人宅への道がわかりづらかったため、Aさんはカーナビ画面を映していたスマートフォンを注視しながら運転していました。
すると、パトロールしていた京都府東山警察署の警察官がAさんのその様子を発見。
Aさんは、ながら運転をしていたとして、後日京都府東山警察署に呼び出されることになってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
~事例②~
Bさんは、京都市東山区内の道路で自動車を運転している際、スマートフォンでゲームアプリを起動し、ゲームをしながら運転する、いわゆるながら運転をしていました。
すると、赤信号に気づくのが遅れ、Aさんは横断歩道前で急ブレーキを踏みました。
交通違反を警戒していた京都府東山警察署の警察官にそれを見とがめられ、Aさんはながら運転で交通の危険を発生させたとして、道路交通法違反の容疑で話を聞かれることとなりました。
(※この事例はフィクションです。)
・ながら運転の罰則強化
つい先日のことですが、今年の12月1日、改正道路交通法が施行されました。
今回の道路交通法の改正では、スマートフォンなどを操作しながら自動車等を運転するいわゆる「ながら運転」の罰則が強化されました。
上記事例①②を見ながらその内容を見ていきましょう。
今回罰則が強化された道路交通法の条文は以下の条文です。
道路交通法71条5号の5
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第118条第1項第3号の2において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第41条第16号若しくは第17号又は第44条第11号に規定する装置であるものを除く。第118条第1項第3号の2において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
つまり、スマートフォンや携帯電話で通話をしたり、それらの操作をしたり、注視(その物をじっと見ていること)したりしながらの「ながら運転」を禁止しているのがこの条文であるということになります。
では、この条文に違反し、ながら運転をしてしまった時の罰則についての条文を確認してみましょう。
道路交通法117条の4
次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
1号の2 第71条(運転者の遵守事項)第5号の5の規定に違反し、よつて道路における交通の危険を生じさせた者
道路交通法118条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
4号 第75条(自動車の使用者の義務等)第1項第2号又は第5号の規定に違反した者
どちらも先ほど挙げた道路交通法に違反しながら運転をしてしまった時の罰則ですが、「交通の危険を生じさせた」かどうかによってその区別がなされています。
その刑罰の重さももちろんのこと、ながら運転をして交通の危険を発生させてしまった場合、反則金を支払うことで刑事事件化を免れることができる「反則金制度」の対象外となっていることにも注意が必要です。
つまり、ながら運転によって交通の危険を発生させてしまったら、すぐに刑事事件の手続きに乗ることになるということなのです。
このように、改正された法律違反の犯罪では、刑罰が重くなる以外にもそれまでと大きく違う点が出てきます。
刑事事件に詳しい弁護士に相談し、細かな変更点も一緒に確認していくことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、交通違反から刑事事件に発展してしまったケースについてもご相談をいただいています。
まずはお気軽に弊所弁護士までご相談ください。
次回の記事では事例①②に照らし合わせて検討を行います。
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