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文化財への落書きで文化財保護法違反①
文化財への落書きで文化財保護法違反①
文化財への落書きで文化財保護法違反となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
東京都在住のAさんは、京都府に観光に来ていました。
観光していく中で、Aさんは京都市左京区内にある寺を訪れました。
寺を見ていくうち、Aさんはその寺をいたく気に入り、寺に来た記念を残したいと考えました。
そこでAさんは、寺の壁に持っていたスプレーで自身の名前やイラストを描き残しました。
その後、他の観光客がAさんの残した落書きを発見し、京都府川端警察署に通報。
残された名前や防犯カメラの映像などから、Aさんは京都府川端警察署に、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・落書きから文化財保護法違反事件に
前回の記事で取り上げたように、落書きであっても刑事事件に発展することが考えられます。
今回のAさんは、落書きをしたことで文化財保護法違反の容疑をかけられ逮捕されるに至っています。
文化財保護法では、重要文化財の損壊等について、以下のように定めています。
文化財保護法195条
1項 重要文化財を損壊し、き棄し、又は隠匿した者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金に処する。
2項 前項に規定する者が当該重要文化財の所有者であるときは、2年以下の懲役若しくは禁錮又は20万円以下の罰金若しくは科料に処する。
今回のAさんは、寺の壁に落書きをして文化財保護法違反の容疑をかけられ逮捕されていますから、おそらくこの寺が重要文化財であったのでしょう。
なお、文化財保護法では、「文化財」について以下のように定義づけられています。
文化財保護法2条
1項 この法律で「文化財」とは、次に掲げるものをいう。
1号 建造物、絵画、彫刻、工芸品、書跡、典籍、古文書その他の有形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(これらのものと一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件を含む。)並びに考古資料及びその他の学術上価値の高い歴史資料(以下「有形文化財」という。)
2号 演劇、音楽、工芸技術その他の無形の文化的所産で我が国にとつて歴史上又は芸術上価値の高いもの(以下「無形文化財」という。)
3号 衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術及びこれらに用いられる衣服、器具、家屋その他の物件で我が国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの(以下「民俗文化財」という。)
4号 貝づか、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとつて歴史上又は学術上価値の高いもの、庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地で我が国にとつて芸術上又は観賞上価値の高いもの並びに動物(生息地、繁殖地及び渡来地を含む。)、植物(自生地を含む。)及び地質鉱物(特異な自然の現象の生じている土地を含む。)で我が国にとつて学術上価値の高いもの(以下「記念物」という。)
5号 地域における人々の生活又は生業及び当該地域の風土により形成された景観地で我が国民の生活又は生業の理解のため欠くことのできないもの(以下「文化的景観」という。)
6号 周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群で価値の高いもの(以下「伝統的建造物群」という。)
2項 この法律の規定(第27条から第29条まで、第37条、第55条第1項第4号、第153条第1項第1号、第165条、第171条及び附則第3条の規定を除く。)中「重要文化財」には、国宝を含むものとする。
3項 この法律の規定(第109条、第110条、第112条、第122条、第131条第1項第4号、第153条第1項第7号及び第8号、第165条並びに第171条の規定を除く。)中「史跡名勝天然記念物」には、特別史跡名勝天然記念物を含むものとする。
文化財保護法27条
1項 文部科学大臣は、有形文化財のうち重要なものを重要文化財に指定することができる。
2項 文部科学大臣は、重要文化財のうち世界文化の見地から価値の高いもので、たぐいない国民の宝たるものを国宝に指定することができる。
つまり、有形文化財のうち、重要なものとして文部科学大臣に指定されたものが「重要文化財」となり、それを損壊等すると文化財保護法違反となるのです。
文化財保護法で言われている「損壊」とは、刑法の器物損壊罪にいう「損壊」同様、その物の効用を害する一切の行為を指すと考えられます。
今回のAさんは、重要文化財である寺の壁に落書きすることで、その景観を害したり、文化財としての価値を下げてしまったりしていると考えられます。
こうしたことから、Aさんは重要文化財を損壊したとして、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまったのでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまった刑事事件のご相談にも迅速に対応いたします。
次回の記事では、弁護活動やその他の犯罪との関係について、詳しく触れていきます。
神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪
神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪
神社の狛犬に名前を彫って器物損壊罪となった事例について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
東京都在住Aさんは,京都府福知山市に観光に訪れていました。
京都府福知山市内を観光していた際,Aさんはとある神社に立ち寄ったのですが,その神社の狛犬に,勝手に自分の名前を彫りました。
翌日,神社の神主が狛犬に傷がついていることを発見し,京都府福知山警察署に相談したことから,器物損壊事件として捜査が開始されました。
防犯カメラの映像や彫られた名前から,Aさんの犯行が発覚し,Aさんは器物損壊罪の容疑で京都府福知山警察署の警察官に逮捕されました。
東京都に住むAさんの両親は,京都府福知山警察署から逮捕の連絡を受けましたが,どうしていいのかわからず,全国展開している刑事事件に強い弁護士事務所に相談してみることにしました。
(フィクションです。)
~器物損壊罪~
他人の物を損壊した者には,器物損壊罪(刑法261条)が成立し,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料が科せられます。
刑法261条
前三条に規定するもののほか,他人の物を損壊し,又は傷害した者は,3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
器物損壊罪の「損壊」とは,その物の効用を害する一切の行為をいいます。
つまり,器物損壊罪の「損壊」は,ガラスの置物を粉々にするといった,物理的に破壊してしまう行為だけを指しているわけではないということです。
例えば,今回の事例の神社の狛犬は,神社の所有している物ですから,器物損壊罪の条文にある「他人の物」であるといえます。
Aさんは,神社の狛犬=「他人の物」に勝手に自分の名前を彫っています。
これにより,狛犬の見栄えが悪くなる,文化的価値が下がるといった形で狛犬の効用が害されているといえます。
こうしたことから,Aさんの行為には,器物損壊罪が成立する可能性が高いです。
~器物損壊事件と示談交渉~
器物損壊事件を起こしてしまった場合の対応としては,まずは弁護士に依頼して示談交渉をするというものが挙げられます。
器物損壊事件の弁護の依頼を受けた弁護士は,器物損壊事件を起こしたことに争いがない場合,被疑者・被告人に代わって被害者に謝罪と被害弁償をして,示談交渉をすることが考えられます。
というのも,器物損壊罪は,被害者の告訴がなければ起訴ができない親告罪です。
つまり,起訴前に示談を成立させ,告訴を取り下げてもらったり,告訴をしないように約束してもらえれば,不起訴処分となり,前科を回避することができるのです。
仮に起訴までに示談締結をすることができず,告訴され,器物損壊罪で起訴されることになった場合でも,弁護士が器物損壊事件の被害者との間で示談や被害弁償を行うことで,略式罰金での事件の終息や,執行猶予獲得の可能性を上げることが可能です。
略式罰金となれば罰金を支払うことで事件を終息させることができますし,執行猶予となれば,執行猶予中に新たな犯罪を犯さないかぎり刑務所に入らないで済むことになります。
逮捕されている場合,もちろんご自身で示談交渉を行うことはできません。
さらに,今回の事例のように,ご家族も離れた土地に住んでいるような場合には,ご家族が代わりに示談交渉を行う,ということも難しいでしょう。
だからこそ,こういったケースでは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士までご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,京都支部を含め,全国13都市に展開している刑事事件専門の弁護士事務所です。
離れた土地で逮捕されてしまっても,逮捕されてしまった警察署に一番近い支部の弁護士が接見に向かうことで,迅速に事件の内容や見通しをご報告することが可能です。
ご相談者様の状況に応じたサービスをご案内しますので,まずはお気軽にフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
PTAでの業務上横領事件
PTAでの業務上横領事件
PTAでの業務上横領事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市上京区に、近所の小学校に通う息子と夫と暮らしています。
Aさんは息子の小学校のPTAで、会費を管理する係を3年ほど行っていたのですが、ある日、生活費が少ないことに悩んだAさんは、手元に管理していたPTAの会費に手を付けてしまいました。
しかし、他のPTA会員が帳簿を見て不審に思ったことからAさんの横領が発覚。
PTAは京都府上京警察署に業務上横領罪の被害届を提出し、Aさんは京都府上京警察署の警察官に業務上横領罪の疑いで逮捕されてしまいました。
Aさんは、逮捕されてから、取調べの対応をどうしたらよいのか、この身体拘束がいつまで続くのか等、ずっと困惑していますが、逮捕されていることから誰にも相談できず困り果てています。
そこに家族の依頼によってやってきた弁護士が接見。
Aさんは刑事事件の流れについて相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・仕事でなくても業務上横領罪?
業務上横領罪は、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」を、10年以下の懲役に処すると規定しています(刑法253条)。
刑法253条(業務上横領罪)
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
業務上横領罪と聞いて皆さんがイメージされるのは、銀行員や会社の経理係がお金を着服する、という犯行態様ではないでしょうか。
「業務上」という言葉がついていることから、業務上横領罪はどうしても「仕事中にその仕事をしている人が横領する犯罪」というイメージがつきやすいです。
しかし、Aさんのような、PTAの会費の管理をする係というような、私たちに身近なところにある役職であっても、お金を横領すればこの業務上横領罪が成立する可能性があるのです。
実は、業務上横領罪の「業務」とは、イコール仕事のことではないのです。
たとえ職業としてお金を管理していなくても、社会的立場に基づいて反復継続してお金の管理を行っていれば、この「業務」に当てはまるのです。
ですから、AさんのようにPTAの会費を管理する係として継続してお金の管理を行っていたような場合にも、この業務上横領罪の「業務」に当てはまる可能性が出てくるといえるのです。
他にも、大学のサークルや町内会の会計係としてお金を管理していて横領を行った場合なども、業務上横領罪に該当する可能性があります。
・逮捕されたらどうする?
Aさんのように、逮捕されてしまった人は、身体拘束されて外界とのコンタクトを絶たれた中で、取調べ等に対応していかなければなりません。
逮捕されることを何回も経験している、という方はそう多くないでしょうから、皆さん不安に思われるでしょう。
相談したくとも逮捕されていれば他の方に相談することもできませんし、家族とも自由に会うことはできません。
取調べでどう対応していいのか、刑事事件の流れはどんな風に進んでいくのか、把握しなければいけないけど分からない、ということは多いです。
そんな時こそ、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部をご利用ください。
弊所の弁護士は、初回接見サービス等を通して、被疑者・被告人の方やその周囲の方の不安を取り除けるよう活動いたします。
まずは0120-631-881までお問い合わせください。
専門スタッフがご相談者様の状況に合ったサービスをご案内いたします。
準強制性交等事件で逮捕されたら
準強制性交等事件で逮捕されたら
準強制性交等事件で逮捕されたケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府宮津市にある会社に勤めるAさんは,職場の同僚であるVさんに好意を持っていました。
Aさんは,せめてVさんと体の関係を持ちたいと思うようになり,ある日,Vさんと一緒に食事に行った際にVさんの飲み物に睡眠導入剤を飲ませ,意識を失ったVさんを京都府宮津市にあるホテルに連れ込んで,意識を失っているVさんと性交しました。
数日後,Vさんが通報し,Aさんは準強制性交等罪で京都府宮津警察署の警察官に逮捕されました。
Aさんの両親は,Aさんが逮捕されたということを報道で知りました。
まさか自分の息子が逮捕されたと報道されるとは夢にも思っておらず,驚き焦ったAさんの両親は,すぐに活動を開始できる弁護士を探し,ひとまずAさんのもとに行ってもらうことにしました。
(フィクションです。)
~準強制性交等罪~
人を心神喪失もしくは抗拒不能にさせて性交等をした場合,準強制性交等罪(刑法178条2項)が成立し,5年以上の有期懲役が科せられます。
刑法178条
1項 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2項 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
刑法178条2項の準強制性交等罪のいう「前条の例」とは,刑法177条の規定している強制性交等罪のことです。
刑法177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。
13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。
つまり,準強制性交等罪にあたる行為をした場合,強制性交等罪と同じように扱う=5年以上の有期懲役に処する,というのが,刑法178条2項の条文の意味なのです。
準強制性交等罪のいう「心神喪失」とは,責任能力がないという意味ではなく,意識喪失や高度の精神障害などにより,自己に対し性交等が行われていることの認識を欠く状態をいいます。
例えば,今回の事例のVさんは,睡眠導入剤を飲まされたために意識を失っていたのですから,「心神喪失」の状態だったといえます。
強制性交等罪の場合は,その成立に暴行又は脅迫を手段として性交をしたということが求められますが,準強制性交等罪では暴行や脅迫を用いることは求められず,この「心神喪失」等の状況に乗じて性交をするだけで成立する可能性が出てきます。
Aさんは,意識を失った状態=「心神喪失」状態のVさんと性交しているので,準強制性交等罪が成立すると考えられるのです。
~準強制性交等事件と弁護活動~
準強制性交等罪は,前述のとおり法定刑の下限が5年と刑事事件の中でも重い罪であるといえます。
執行猶予がつくのは3年以下の懲役や禁錮の言い渡しを受けた場合ですから,準強制性交等罪が成立する場合には,初犯であっても実刑が見込まれます。
ですから,事実関係に争いがない場合,被害者と示談をするなどして少しでも刑を軽くするために,刑事事件に強い弁護士に依頼すべきです。
まず,警察に被害届が提出される前であれば,被害者と示談をして,被害届の提出を阻止し,警察の介入を阻止して刑事事件化を防ぐことを目指すことができます。
被害届が提出されてしまった後であっても,示談により不起訴となる可能性もあります。
また,逮捕・勾留されて捜査されているような場合には,示談が成立すれば,早期に釈放となる可能性もあります。
起訴されて裁判となった場合には,示談成立など,被告人にとって有利な情状があればそれを主張することによって少しでも有利な量刑となるよう活動していくことになるでしょう。
例えば,再犯防止の取り組みとして,性犯罪を犯してしまった方向けのカウンセリング等を受けることも有効です。
自身の問題と向き合い,真摯に再犯防止を図ることが,量刑上有利に働きます。
こうした活動は,当事者のみで行うにはなかなか難しいことも多いですから,まずは弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士までご相談ください。
「とりあえず事件の見通しを聞きたい」「弁護士と話してから考えてみたい」という方も,まずは初回無料法律相談や初回接見サービスからご利用いただけます。
お問い合わせは0120-631-881で受け付けておりますので,お気軽にお電話ください。
公務執行妨害罪と業務妨害罪②
公務執行妨害罪と業務妨害罪②
公務執行妨害罪と業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市中京区に住んでいます。
Aさんは、たびたび京都市中京区役所に住民が受けられるサービスについて説明を受けていましたが、その説明がわかりづらく、また区役所職員の態度も悪いと感じていました。
そこでAさんは、自身の携帯電話から区役所に連続して電話をかけ、「職員の態度が悪い」「きちんと礼儀を教えろ」などとクレームを入れ続けました。
区役所からは、意見は分かったので同じ内容の電話を多数かけるのを控えてほしいといった旨を伝えられましたが、Aさんは電話をかけることをやめず、半年間で600回以上にわたり区役所に電話をかけ続けました。
するとある日、Aさんは京都府中京警察署に、偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年2月17日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・大量の電話と業務妨害罪
前回の記事では、Aさんに公務執行妨害罪が成立しないと考えられるということを取り上げましたが、今回はAさんの逮捕容疑である業務妨害罪について取り上げていきます。
刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
普段の会話や報道の中では、単なる「業務妨害」という単語として聞くことが多いかもしれませんが、業務妨害罪には2つの種類があります。
それが、刑法233条の偽計業務妨害罪と刑法234条の威力業務妨害罪です。
今回Aさんに容疑をかけられているのは刑法233条の偽計業務妨害罪の方ということになります。
偽計業務妨害罪とは、「偽計を用いて」「業務を妨害した」者に成立する犯罪です。
「偽計」とは難しい言葉のようにも思えますが、人を騙したり誘惑したり、あるいは人の錯誤(勘違い)や不知を利用したりすることを指すと言われています。
この「偽計」については、公然となされても秘密になされても偽計業務妨害罪の成立には関わらないとされています。
つまり、業務妨害行為の手段として、人を騙したり、人の勘違いや不知を利用したりしていれば偽計業務妨害罪となるのです。
一方、もう1つの業務妨害罪である威力業務妨害罪の場合、業務妨害行為の手段として「威力」が用いられることになります。
「威力」とは、「犯人の威勢、人数および四囲の状況からみて、被害者の自由意思を制圧するにたりる勢力」を指すとされています(最判昭和28.1.30)。
すなわち、業務妨害行為の手段として、相手の意思を制圧するような行為を用いた場合、威力業務妨害罪が成立しうるということです。
過去の裁判例や判例では、業務妨害事件の際、業務妨害行為の手段としてそれが外見的に見て明らかであれば威力業務妨害罪、外見的に見て明らかでなければ偽計業務妨害罪と判断していることも多いです。
これらの業務妨害罪は業務妨害行為の手段とするものが異なるのみであり、どちらもその成立には「業務を妨害した」ことが必要です。
しかし、実はこの「業務を妨害した」に該当するケースは、実際にその業務が妨害されたという事実のある時のみに限りません。
業務妨害罪の成立には現実に業務が妨害されたという事実は必ずしも必要なく、業務が妨害される危険が発生していれば、実際に業務が妨害されていなくてもよいとされているのです。
では、今回のAさんの行為について具体的に当てはめて考えてみましょう。
Aさんの場合、大量の同じ内容の電話をかけ続けたことが業務妨害行為の手段にあたる行為でしょう。
電話をかけ続ければ、当然区役所の職員はそれに対応しなければならないため、電話を取ることになります。
しかし、職員からしてみれば、電話を取って話を聞くまでは、多数同じ内容でクレームを入れ続けているAさんの電話なのか、他の住民や取引先などからの電話なのかもわかりません。
さらに、電話を受ければ当然その対応に時間が割かれることになり、その回数や時間が増えれば、その時間で行えていた他の業務や電話に対応することができなくなってしまいます。
こうしたことから、Aさんは「偽計」を用いて「業務を妨害した」と判断され、偽計業務妨害罪の容疑をかけられたのでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、業務妨害事件のご依頼・ご相談も受け付けています。
逮捕されてしまっている方向けの初回接見サービスだけでなく、在宅捜査を受けている方向けの初回無料法律相談も行っています。
まずはお電話にて、ご相談者様に適したサービスをご案内致しますので、お気軽にお電話ください(0120-631-881)。
公務執行妨害罪と業務妨害罪①
公務執行妨害罪と業務妨害罪①
公務執行妨害罪と業務妨害罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市中京区に住んでいます。
Aさんは、たびたび京都市中京区役所に住民が受けられるサービスについて説明を受けていましたが、その説明がわかりづらく、また区役所職員の態度も悪いと感じていました。
そこでAさんは、自身の携帯電話から区役所に連続して電話をかけ、「職員の態度が悪い」「きちんと礼儀を教えろ」などとクレームを入れ続けました。
区役所からは、意見は分かったので同じ内容の電話を多数かけるのを控えてほしいといった旨を伝えられましたが、Aさんは電話をかけることをやめず、半年間で600回以上にわたり区役所に電話をかけ続けました。
するとある日、Aさんは京都府中京警察署に、偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※令和2年2月17日京都新聞配信記事を基にしたフィクションです。)
・区役所への大量のクレーム電話…公務執行妨害罪にならない?
今回のAさんは区役所に大量の電話をかけ続けたことで偽計業務妨害罪の容疑をかけられ逮捕されています。
ここで、Aさんが業務妨害行為をしたのは区役所という公の機関に対してのことであることから、Aさんに成立する犯罪は公務執行妨害罪なのではないか、と不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、なぜAさんにかけられている容疑が公務執行妨害罪ではないのか確認してみましょう。
刑法95条(公務執行妨害罪)
1項 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
2項 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者も、前項と同様とする。
公務執行妨害罪は、この条文にあるように、「公務員が職務を執行するに当たり」「(これに対して)暴行又は脅迫を加え」ることで成立する犯罪です。
公務執行妨害罪のいう「公務員」の定義は、刑法7条に書かれています。
刑法7条
この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。
つまり、今回の事例でいえば、区役所の職員などはこの公務執行妨害罪の「公務員」に当てはまることになります。
しかし、公務執行妨害罪の「公務員が職務を執行するに当たり」という条文の「職務」については、「漫然と抽象的・包括的に捉えられるべきものではなく、具体的・個別的に特定されていることを要するものと解すべき」とされています(最判昭和45年12月22日)。
つまり、公務員の仕事中であればその全ての行為に対して公務執行妨害罪のいう「公務員が職務を執行するに当たり」という条件に当てはまるものと判断されるとは限らないということです。
今回の事例でも、Aさんの大量の電話によって妨害された、もしくは妨害の危険が発生したのが「具体的・個別的に特定されている」公務である場合には、公務執行妨害罪の「公務員が職務を執行するに当たり」という文言に当てはまる可能性も出てくるかもしれませんが、そうでない場合はAさんの行為は公務執行妨害罪には当てはまらないということになるのです。
さらに、Aさんが今回した行為としては、区役所に大量に電話をかけ続け、クレームを入れ続けたという行為になります。
ですが、公務執行妨害罪が成立するには「暴行又は脅迫を加え」ることが必要です。
電話でクレームを入れ続けるという行為は「暴行」ではないでしょう。
加えて、Aさんの電話の内容はクレームであり、文句であることから、「脅迫」であるとも考えづらいです。
こうしたことから、Aさんは公務執行妨害罪の成立条件を満たさず、公務執行妨害罪には問われていないのだと考えられるのです。
次回の記事ではAさんの逮捕容疑である業務妨害罪について詳しく見ていきましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、公務執行妨害事件や業務妨害事件のご相談・ご依頼も受け付けております。
0120-631-881では、専門スタッフが現在のご相談者様にニーズにあったサービスをご提案いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。
半グレに所属して傷害事件
半グレに所属して傷害事件
半グレに所属して傷害事件を起こしてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府京丹後市に住む18歳のAさんは、自身の通う高校の卒業生であるBさんらが所属する、いわゆる「半グレ」の集団に所属していました。
Aさんは半グレの仲間たちとたびたび夜間に外出したり学校をさぼったりしていましたが、Aさんとしては悪ぶりたいだけであり、実際に犯罪に手を貸したり参加したりということはしていませんでした。
しかしある日、京都府京丹後市内の路上で、通行人のVさんと口論になると、半グレの仲間たちと一緒になってVさんを殴りました。
他の通行人が通報したことにより、Aさんは半グレの仲間たちと一緒に京都府京丹後警察署に傷害罪の容疑で逮捕されることになりました。
Aさんは自身が逮捕されるほどの大事を起こしてしまったことに動揺し、両親が逮捕を知って悲しんでいることを知って、半グレから抜けて更生したいと思っているようです。
(※この事例はフィクションです。)
・半グレ
ニュースなどで「半グレ」「半グレ集団」といった言葉を耳にしたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
半グレは、暴力団に所属せずに犯罪を繰り返す不良集団のことを指しているとされています。
半グレの「グレ」は、不良などになることを指す「グレる」という言葉や、暴力団に所属していないながらも犯罪を繰り返すことから「グレーゾーン」であることなどによるとされています。
さて、この半グレですが、暴力団とは異なりその構成は若者が中心となっているといわれています。
暴力団のように上下関係がはっきりしてピラミッドのように組織が作られているわけではなく、暴走族等からそのまま半グレに移行したり、年代でまとまったりして半グレになったりということもあるようです。
そのため、先輩後輩関係から10代で半グレ集団と関わってしまうこともあると考えられるのです。
・傷害事件
人に暴力をふるえば刑法の暴行罪が、それによって相手に怪我をさせてしまえば傷害罪が成立することはすでにご存じの方も多いでしょう。
刑法204条(傷害罪)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
今回のAさんは18歳であるため基本的に刑罰を受けることにはならないと考えられますが、成人の刑事事件として考えれば、複数人で暴行をくわえた傷害事件は悪質性・危険性の高い犯行であると判断され、厳しい処分が下される可能性も考えられます。
なお、集団で暴行をしている場合や常習的に暴行・傷害行為をしている場合などには、暴力行為処罰法違反という犯罪になるかもしれないことにも注意が必要です。
・半グレと少年事件
先ほど触れたように、半グレの構成は若者が多いことから、10代の未成年者であっても半グレに所属してしまう可能性はあります。
Aさんも半グレに所属しており、そこで傷害事件を起こしてしまっているようです。
未成年者が犯罪をしてしまった場合には、少年事件として処理されていくことになりますが、そこで重要なポイントとなるのは、少年自身が更生するのに適切な環境が整えられるのか否かということです。
例えば、半グレに所属して少年事件を起こしてしまったのに、その半グレとの関係を断ち切れない、断ち切る気がないといった環境のままでは、少年を現在の環境に戻して更生させることは難しいと判断されてしまいやすいと考えられます。
今回のAさんのような少年事件では、Aさん自身がやってしまったことを反省し、被害者への謝罪の気持ちをもつことはもちろんですが、これからの生活でどのような点を改めて再犯を防止していくのかということも重要なのです。
そうした環境の調整やその調整活動の証拠化には、少年事件に強い弁護士のサポートが心強いでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、少年事件も専門に扱う弁護士が初回無料法律相談や初回接見サービスも行っておりますので、まずはお問い合わせください(0120-631-881)。
覚せい剤所持事件で逮捕されたら
覚せい剤所持事件で逮捕されたら
覚せい剤所持事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市下京区在住のAさんは、友人のBさんから「覚せい剤を預かってくれ。数日したら取りに来るから預かっておいてくれるだけでいい」と頼まれました。
Aさんは、「自分で覚せい剤を使うわけでもないし、人の物を預かって持っているだけなら大丈夫だろう」と考え、軽い気持ちで引き受けました。
しかし、覚せい剤を預かってすぐにBさんが京都府下京警察署に逮捕されたことをきっかけに、Aさんにも捜査の手が伸び、Aさんは覚せい剤を所持していた容疑で京都府下京警察署に逮捕されることとなってしまいました。
Aさんは、自分は覚せい剤を使っていたわけでもなく、Bさんの物を預かっていただけなのになぜ逮捕されてしまったのかと不思議に思い、家族の依頼で接見に来た弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・預かっただけでも覚せい剤取締法違反
覚せい剤という薬物が覚せい剤取締法で禁止されている違法薬物であることは、記事を読まれている皆さんもご存知でしょう。
覚せい剤取締法では、覚せい剤の使用だけでなく、その所持や、輸出入、製造等が禁止されています。
覚せい剤取締法41条の2
1項 覚せい剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第四十二条第五号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3項 前二項の未遂罪は、罰する。
このように、覚せい剤取締法では覚せい剤の所持自体も禁止されているので、覚せい剤を持っているだけでも覚せい剤取締法違反となり、犯罪となるのです。
上記事例のAさんのように、たとえ使用していなくとも、たとえ他人の覚せい剤を預かっていただけであったとしても、覚せい剤を所持することは法律違反なのです。
覚せい剤取締法では、覚せい剤を所持していた場合、10年以下の懲役に処するとしています(覚せい剤取締法41条の2 1項)。
さらに、その覚せい剤の所持が、営利目的だった場合には、さらに重い、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処するとされています(覚せい剤取締法41条の2 2項)。
さらに、これらには未遂罪の規定もあります。
覚せい剤を所持することは、これだけ重い犯罪なのです。
たとえ他人の覚せい剤を預かるだけでもこういった重い刑罰を受けることになってしまいますから、もしも覚せい剤所持の容疑で逮捕されてしまったら、なるべく早期に弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、24時間いつでも、初回接見サービスの受付を行っております(0120-631-881)。
初回接見サービスでは、弊所の刑事事件専門の弁護士が、逮捕されてしまったご本人に直接会って話をしてきます。
刑事事件では逮捕されてしまってから早期に取調べへのアドバイスを受けたり、釈放を求める活動などを開始してもらったりすることが重要です。
ご家族が覚せい剤事件で逮捕されてお困りの方は、まずは弊所の弁護士まで、ご相談ください。
未成年者の連れ回しで刑事事件②未成年者誘拐罪
未成年者の連れ回しで刑事事件②未成年者誘拐罪
未成年者の連れ回しで刑事事件となってしまったケースで、特に未成年者誘拐罪の容疑をかけられているケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府外に住む会社員のAさん(24歳)は、SNSを通じて知り合った京都府向日市在住のVさん(15歳)と仲良くなりました。
Vさんとやり取りをするうち、AさんはVさんから「家にいても親と喧嘩をすることが増えてきて不満だ。家出をしたい」という話を聞くようになりました。
そこでAさんは、「Vさんさえよければ春休みの間うちに来てもいいよ」とVさんに伝えました。
すると、Vさんは喜んでAさんの家に行くと返答し、Vさんは春休み中Aさんの家に遊びに来ることになりました。
しかしVさんがAさん宅に来て数日後、Aさんの自宅に京都府向日町警察署の警察官がやってきて、Aさんは未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼を受けてやってきた弁護士に「Vさんが来たいといったからうちに呼んだのに誘拐とは納得できない」と相談しました。
(※この事例はフィクションです。)
・相手の同意があっても未成年者誘拐罪に?
今回の事例では、Aさんは未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されてしまっています。
未成年者誘拐罪とは、刑法に定められている犯罪の1つです。
刑法224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
この刑法224条は、未成年者を「略取」した場合には未成年者略取罪、未成年者を「誘拐」した場合には未成年者誘拐罪と呼ばれます。
「略取」とは、略取される人(今回でいえば未成年者)の意思に反して、その人を自己又は第三者の支配下に置くことを指しており、この際、暴行や脅迫を手段とするものを指すとされています。
一方、今回のAさんの逮捕容疑にもなっている「誘拐」は、誘拐される人(今回でいえば未成年者)の意思に反しない態様でその人を自己又は第三者の支配下に置くことを指し、さらに欺罔・誘惑を手段とする場合を指します。
例えば、未成年者を無理矢理連れ去ったり、脅してついてこさせたような場合には未成年者略取罪となり、物で釣ったりだましたりして未成年者を連れ去ったりした場合には未成年者誘拐罪となると考えられるのです。
今回のAさんの場合、Aさんは家出をしたいというVさんに自宅へ来ることを提案してVさんをその生活している環境から離れさせ、自分の支配下に置いているため、未成年者誘拐罪の「誘拐」にあたると考えられたのでしょう。
しかし、今回のAさんの事例では、そもそもVさんが家出をしたいと言っていることがきっかけであり、Vさん自身が望んでAさんの家に来ています。
こうした場合でもAさんに未成年者誘拐罪の容疑がかかり、逮捕されているのはなぜなのでしょうか。
実は、未成年者誘拐罪が保護しているのは、誘拐される未成年者自身の自由だけではなく、その未成年者の親権者等がもつ、未成年者に対して保護監督する権利も保護しているとされています。
つまり、未成年者誘拐罪の被害者は、未成年者だけでなく、その親権者等の保護者も当てはまると考えられているのです。
ですから、たとえ未成年者自身が同意していたとしても、その保護者の同意がない状態で未成年者をその生活環境から連れ出して自分の監督下に置いてしまえば、未成年者誘拐罪が成立しうるのです。
今回のAさんも、未成年者であるVさん自身の同意は得ているようですが、その保護者までは話が通っていなかったために、未成年者誘拐罪の容疑で逮捕されるに至ったのでしょう。
・未成年者誘拐罪と逮捕
未成年者誘拐罪は前掲した条文の通り、その刑罰も非常に重い犯罪です。
また、未成年者を誘拐したという事件の内容としても、被害者への接触等の証拠隠滅のおそれがあると考えられ、逮捕され身体拘束されたうえで捜査が進められることも珍しくありません。
さらに、Aさんの事例のように、被害者である未成年者やその保護者が住んでいる地域を管轄する警察署に被害届等が出され、その警察署が捜査をしていることも多く、その場合は被疑者自身と縁もゆかりもない場所の警察署に逮捕・留置されてしまうこともあります。
こうした場合には、迅速に弁護士を派遣し、取調べへの対応やその後の弁護活動について、被疑者自身はもちろん被疑者の周りの人も把握するようにすることが望ましいでしょう。
逮捕されてしまえば周りの人に相談しながら取調べを受けるようなことはもちろんできませんし、現在の状況を自由に共有するといったことも難しいためです。
Aさんの事例のように、Aさんの住所地ではない警察署で逮捕されてしまったような場合には、ご家族が会いに行くにも一苦労となることが多いですから、その地域に対応が可能な弁護士のサポートを受けることで負担を軽減できます。
また、未成年者誘拐事件では、先ほど触れたように被害者が存在するため、被害者に対する謝罪・弁償や示談交渉も活動の1つとして考えられるところです。
当事者同士で謝罪・賠償などの示談交渉をすることは非常に難しいですし、そもそも被疑者に被害者の個人情報を捜査機関が教えることは非常にまれなことです。
こちらも弁護士を介して活動をしてもらうことで、示談交渉のできる可能性を上げることができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が未成年者誘拐事件などの重大な刑事事件にも対応しています。
京都支部を含め、全国13都市に支部展開していますから、遠方の警察署に逮捕されてしまったという場合にも対応可能です。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。
未成年者の連れ回しで刑事事件①青少年健全育成条例違反
未成年者の連れ回しで刑事事件①青少年健全育成条例違反
未成年者の連れ回しで刑事事件となってしまったケースで、特に青少年健全育成条例違反の容疑をかけられているケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市左京区に住んでいる30歳の会社員です。
ある時、AさんはSNSを通じて知り合ったVさん(16歳)と親しくなりました。
やり取りの中で、AさんはVさんがAさんと同じく京都市左京区内に住んでいること、年齢が16歳であることを聞きました。
ある日、AさんとVさんがやり取りをしている最中、実際の地図と連動しているスマホゲームのアイテムを一緒に集めようという話になりました。
そこで、AさんとVさんはお互いの仕事やバイトの終わった夜23時頃に落ち合うと、京都市左京区内を2人で歩きながらゲームをしていました。
すると、深夜1時頃、巡回していた京都府下鴨警察署の警察官がAさんとVさんに職務質問をしたことがきっかけとなり、Vさんが16歳未満であることが発覚しました。
その後、Aさんは京都府の青少年健全育成条例違反の容疑で話を聞かれることとなってしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・青少年健全育成条例
今回のAさんが違反したと容疑をかけられている青少年健全育成条例とは、各都道府県ごとに定められている条例の1つです。
京都府では、「青少年の健全な育成に関する条例」という条例が定められています。
この青少年健全育成条例が対象としている「青少年」とは、「18歳未満の者(婚姻により成年に達したとみなされる者を除く。)」とされています(京都府青少年健全育成条例12条1号)。
つまり、今回のVさんも16歳=18歳未満のため、この青少年健全育成条例の対象となる「青少年」であることになります。
青少年健全育成条例違反事件でよく報道で見かけるのは、青少年とみだらな行為をしたことによる、いわゆる「淫行事件」です。
京都府の青少年健全育成条例にも青少年との淫行を禁止する規定があります。
京都府青少年健全育成条例21条
何人も、青少年に対し、金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し、若しくはそれらの供与を約束することにより、又は精神的、知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて、淫行又はわいせつ行為をしてはならない。
しかし、青少年健全育成条例はこうした青少年に対する淫行を規制しているだけでなく、他のことに対する規制もあるのです。
・青少年の連れ回しと青少年健全育成条例
京都府の青少年健全育成条例では、以下のようにして青少年の深夜の連れ回しを禁止しています。
京都府青少年健全育成条例18条の2
1項 保護者は、通勤、通学その他の特別な理由がある場合を除き、深夜に青少年を外出させないよう努めなければならない。
2項 何人も、保護者の委託を受け、若しくは同意を得た場合又は深夜における勤務、緊急を要する特別な事情その他の正当な理由がある場合を除き、深夜に青少年を、その居所から連れ出し、その居所以外の場所において同伴し、又はその居所以外の場所にとどめてはならない。
3項 深夜に営業を営む者は、深夜に当該営業に係る施設内又は敷地内にいる青少年に対し、帰宅を促すよう自主的に努めなければならない。
京都府青少年健全育成条例18条の2の2項にあるように、京都府では、保護者から頼まれたり同意を得たりした場合や、深夜の勤務・緊急性のある場合等を除き、深夜に18歳未満の青少年を住んでいる家から連れ出したり、それ以外の場所にとどめたりしてはいけないとされています。
ここで、では「深夜」とはいつを指すのか疑問に思われる方もいるでしょう。
しかし、京都府青少年健全育成条例ではこちらについても以下のように定義しています。
京都府青少年健全育成条例12条
この章以下において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
8号 深夜 午後11時から翌日の午前4時までの時間をいう。
つまり、夜11時から翌日朝4時までは、青少年の親の同意なしに青少年を外出させてそれに同伴することは禁止されているのです。
これに違反し、青少年健全育成条例違反となった場合には、以下の刑罰を科せられる可能性があります。
京都府青少年健全育成条例31条5項
次の各号のいずれかに該当する者は、20万円以下の罰金に処する。
7号 第18条の2第2項の規定に違反した者
青少年の深夜連れ回しの青少年健全育成条例違反の場合、罰金のみの規定となっていることから、比較的軽い犯罪であるといえるでしょう。
しかし、刑務所に行くことがなくとも罰金刑を受ければ前科が付くことにもなりますし、深夜連れ回しだけでなく淫行などほかの犯罪の容疑をかけられてしまう可能性もあります。
刑事事件化してしまったら、まずは弁護士に相談し、見通しや対応の仕方を十分に聞いてから対応に臨むことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回無料法律相談のご予約が24時間いつでも可能です(0120-631-881)。
青少年健全育成条例違反事件でお困りの際は、まずはお気軽にご相談ください。