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当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?①
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?①
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にあるショッピングモールに自動車を運転して買い物に来ていました。
Aさんが帰ろうと駐車場から車を発進させた際、運転を誤って、前に停まっていた自動車に追突させてしまいました。
Aさんが車内から様子を伺ったところ、その車には誰も乗っていないように見えたため、「高速で走っているところをぶつかったわけではないのだし、車も大きく壊れたわけではない。放置しても大丈夫だろう」と考えたAさんは、そのまま車を運転して帰宅しました。
すると後日、Aさん宅に京都府田辺警察署の警察官がやってきました。
Aさんは、先日駐車場で車をぶつけてしまったことを思い出し、当て逃げの犯人として取調べを受けるのだろうと思っていました。
しかし、警察官は「ひき逃げ事件の被疑者として逮捕する」という旨を伝え、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・当て逃げとひき逃げの違い
今回のAさんは、自分では当て逃げをしてしまったと思っていたところ、ひき逃げの容疑で逮捕されてしまっています。
当て逃げもひき逃げも、交通事故を起こしてしまったところから義務を果たさずに逃げてしまった場合に成立しますが、実は「当て逃げ」「ひき逃げ」という犯罪があるわけではありません。
当て逃げやひき逃げは、道路交通法の条文に違反する、道路交通法違反という犯罪の通称なのです。
まず、道路交通法には、交通事故を起こしてしまった際の義務として、以下の義務が定められています。
道路交通法72条1項
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
簡単に言えば、交通事故を起こしたときにはすぐに運転をやめ、負傷者を救護する義務や道路上の危険を防止する義務、警察官等に交通事故について報告する義務を果たさなければならないということになっているのです。
これに違反するのが当て逃げや引き逃げ、ということになります。
道路交通法117条
1項 車両等(軽車両を除く。以下この項において同じ。)の運転者が、当該車両等の交通による人の死傷があつた場合において、第72条(交通事故の場合の措置)第1項前段の規定に違反したときは、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2項 前項の場合において、同項の人の死傷が当該運転者の運転に起因するものであるときは、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
道路交通法119条
次の各号のいずれかに該当する者は、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する。
10号 第72条(交通事故の場合の措置)第1項後段に規定する報告をしなかつた者
道路交通法117条1項・2項が定めているのが、いわゆる救護義務違反または危険防止措置義務違反、つまり、交通事故によって死傷者が出た場合に救護をしたり道路上の危険を防止する措置をしたりする義務を果たさなかったという道路交通法違反です。
多くの場合、これが一般に言われる「ひき逃げ」の罪です。
そして、道路交通法119条10号では、いわゆる報告義務違反、交通事故を起こしたときに警察等に事故を報告しなかったという道路交通法違反です。
交通事故による死傷者がいない物損事故を起こし逃げた場合=当て逃げの場合、この道路交通法違反となることが多いでしょう。
さて、こうした当て逃げとひき逃げですが、実際にAさんのように、当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕されることはありえるのでしょうか。
次回の記事で詳しく触れていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、交通事故に絡んだ刑事事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
当て逃げ事件・ひき逃げ事件の逮捕にお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士までご相談下さい。
違法マッサージ店経営で逮捕②
違法マッサージ店経営で逮捕②
違法マッサージ店経営で逮捕されてしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市右京区でマッサージ店を経営していました。
そのマッサージ店は、表向きは通常のマッサージをサービスとして提供するマッサージ店とされていましたが、実は性的サービスを地峡する違法マッサージ店であり、さらにそのマッサージ店のあるエリアは風俗営業が禁止されているエリアでした。
その日も、Aさんはいつもと同じようにマッサージ店を営業させていたのですが、京都府右京警察署の警察官が令状をもってやってきて、Aさんは違法マッサージ店を経営したとして、風営法違反の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
Aさんの家族は、Aさんがなかなか帰ってこないことから心配し、京都府右京警察署に問い合わせたところ、Aさんが逮捕されていることを知りました。
そこで、Aさんの家族は弁護士に依頼し、Aさんがどうして逮捕されているのかを聞いてくるとともに、Aさんに今後についてアドバイスしてもらうよう接見に行ってもらうことにしました。
(※令和2年3月24日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)
・風営法と風俗営業等の許可・届け出
前回の記事では、Aさんの経営していたような内容のマッサージ店、つまり風営法上の「店舗型性風俗関連特殊営業」などを営業させるには、営業禁止エリア外での営業が必要であること、営業禁止エリア内で営業してしまえば風営法違反となることに触れました。
しかし、風俗営業等を営業するには、こうしたエリアの制限を守ればよいだけではありません。
風営法に定められている風俗営業等を営業するには、風営法に定められているように許可を取ったり届出を提出したりしなければなりません。
例えば、今回のAさんの経営していたようなマッサージ店が該当するであろう「店舗型性風俗関連特殊営業」の場合、以下のように定められています。
風営法27条1項
店舗型性風俗特殊営業を営もうとする者は、店舗型性風俗特殊営業の種別(第2条第6項各号に規定する店舗型性風俗特殊営業の種別をいう。以下同じ。)に応じて、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。
(略)
つまり、この公安委員会への届け出を出さずに性的サービスを提供するマッサージ店を経営すれば、無許可営業をしていることとなり、違法マッサージ店を経営したことによる風営法違反となってしまうのです。
風営法52条
次の各号のいずれかに該当する者は、6月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
4号 第27条第1項、第31条の2第1項、第31条の7第1項、第31条の12第1項又は第31条の17第1項の届出書を提出しないで性風俗関連特殊営業を営んだ者
今回のAさんのように、風俗営業等を営業禁止エリア内で営業してしまっていたような場合には、この風営法上の届出の提出や許可を受けていない可能性が高いです。
そうなると、この風営法の条文にも違反してしまうということになります。
風営法違反事件では、店の関係者が存在することも多いことから、逮捕されて身体拘束されてしまう可能性も高いです。
Aさんのような経営者や、店で実際に働いていた従業員まで逮捕されてしまうことも多いですから、そのご家族などは事情が分からず困ってしまうこともあります。
だからこそ、逮捕されてしまったと知った時からできるだけ早く、弁護士に相談することが望ましいといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕直後から刑事事件専門の弁護士が活動を行います。
まずは初回接見サービスのご利用がおすすめです。
お気軽にご相談ください。
違法マッサージ店経営で逮捕①
違法マッサージ店経営で逮捕①
違法マッサージ店経営で逮捕されてしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都市右京区でマッサージ店を経営していました。
そのマッサージ店は、表向きは通常のマッサージをサービスとして提供するマッサージ店とされていましたが、実は性的サービスを地峡する違法マッサージ店であり、さらにそのマッサージ店のあるエリアは風俗営業が禁止されているエリアでした。
その日も、Aさんはいつもと同じようにマッサージ店を営業させていたのですが、京都府右京警察署の警察官が令状をもってやってきて、Aさんは違法マッサージ店を経営したとして、風営法違反の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
Aさんの家族は、Aさんがなかなか帰ってこないことから心配し、京都府右京警察署に問い合わせたところ、Aさんが逮捕されていることを知りました。
そこで、Aさんの家族は弁護士に依頼し、Aさんがどうして逮捕されているのかを聞いてくるとともに、Aさんに今後についてアドバイスしてもらうよう接見に行ってもらうことにしました。
(※令和2年3月24日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)
・マッサージ店と風営法
今回のAさんは、違法マッサージ店を経営したとして、風営法違反の容疑をかけられ逮捕されてしまっています。
通常のマッサージを提供するマッサージ店の場合は不要ですが、性的サービスを行うマッサージ店、いわゆる風俗エステや性感エステ、ファッションヘルスなどと呼ばれる店の場合、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の規制を受けることとなることから、風営法の規定に従って営業をしなければなりません。
風営法2条
5項 この法律において「性風俗関連特殊営業」とは、店舗型性風俗特殊営業、無店舗型性風俗特殊営業、映像送信型性風俗特殊営業、店舗型電話異性紹介営業及び無店舗型電話異性紹介営業をいう。
6項 この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
2号 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
今回のAさんが経営していたような形態のマッサージ店では、上記の風営法の条文に当てはまり、風営法の規制を受けることになると考えられます。
・風営法と風俗営業等禁止エリア
風営法の規制対象となる風俗営業等が受ける規制の1つに、営業禁止区域があるということが挙げられます。
風営法では、以下の条文で今回のAさんのマッサージ店が該当するであろう「店舗型性風俗特殊営業」の営業禁止区域について定めています。
風営法28条
1項 店舗型性風俗特殊営業は、一団地の官公庁施設(官公庁施設の建設等に関する法律(昭和26年法律第181号)第2条第4項に規定するものをいう。)、学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定するものをいう。)、図書館(図書館法(昭和25年法律第118号)第2条第1項に規定するものをいう。)若しくは児童福祉施設(児童福祉法第7条第1項に規定するものをいう。)又はその他の施設でその周辺における善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する必要のあるものとして都道府県の条例で定めるものの敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲200メートルの区域内においては、これを営んではならない。
2項 前項に定めるもののほか、都道府県は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、条例により、地域を定めて、店舗型性風俗特殊営業を営むことを禁止することができる。
(略)
つまり、風営法上の学校や図書館の周辺等については風営法で一括して営業の制限がされており、さらに都道府県ごとに営業禁止のエリアが設けられているという形になります。
この営業禁止区域内で風俗営業等を営業すれば、風営法違反になってしまいます。
風営法49条
次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
5号 第28条第1項(第31条の3第2項の規定により適用する場合及び第31条の13第1項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
6号 第28条第2項(第31条の3第2項の規定により適用する場合及び第31条の13第1項において準用する場合を含む。)の規定に基づく都道府県の条例の規定に違反した者
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕直後から初回接見サービスをご利用いただけます。
初回接見サービスをご利用いただくことで、事件の概要を把握し、今後の対応をどのように行っていくべきかより具体的に見通すことができます。
専門スタッフが丁寧にご案内致しますので、ますはフリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
万引きGメンに現行犯逮捕されたら
万引きGメンに現行犯逮捕されたら
万引きGメンに現行犯逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府木津川市に住むAさんは、生活費を節約したいとの思いから、ここ何か月か近所のスーパーで万引きをすることを繰り返していました。
その日もスーパーに行って万引きをしてしまったAさんでしたが、スーパーの出入り口から店を出たところ、スーパーの万引きGメンに腕をつかまれ、「万引きしましたよね」と言われ、逮捕されてしまいました。
その後、Aさんは京都府木津警察署の警察官に引き渡され、警察署の留置場に留置されることになりました。
Aさんの家族は、京都府木津警察署からAさんが現行犯逮捕されて警察署にいるということを聞き、慌てて弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・万引き
万引きと言ってしまえば聞こえは軽いかもしれません。
しかし、万引きは窃盗罪という立派な犯罪の一種です。
窃盗罪を犯した者は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます。
刑法235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
万引きという言葉の軽さや、初犯で被害額が少ない場合には弁償や謝罪をすることで微罪処分や不起訴処分となることも多いことから、万引きを繰り返してしまうという方も少なくありません。
確かに、万引きで長期の有期刑となることはなかなか多くなく、特に初犯の場合は大事にならずに済む場合も少なくないことから、「万引きくらいではたいしたことにならない」と思ってしまうかもしれません。
しかし、それはあくまで初犯であったり、被害額が少額であったり、謝罪や弁償やできて被害者・被害店舗が許してくれたりといった事情が重なったがためのことであることが多いです。
たとえ少額の万引きであろうと、前科・前歴があったり、余罪が大量にあったりした場合は、当然、刑罰も重い処分となってきます。
万引きだからと甘く考えずに、刑事事件に強い弁護士に早期に相談し、してしまった万引き行為の対処だけでなく、今後万引きを繰り返さないよう、当事者だけでなくその周囲の人と弁護士と協力して考えていくことが、真の事件解決への一歩となります。
・万引きGメンに逮捕されることがある?
警察の特集やテレビ番組などで、いわゆる万引きGメンと呼ばれる私服警備員を見たことのある方もいるでしょう。
万引きGメンは、あくまで警備員などの民間の企業の者です。
しかし、今回のAさんのように、万引きGメンに現行犯逮捕されることもあります。
一般人が警察などの捜査機関のように人を逮捕することはできるのでしょうか。
実は、現行犯人の逮捕=現行犯逮捕の場合、警察などの捜査機関でなくとも犯人を逮捕することは可能です。
刑事訴訟法213条(現行犯逮捕)
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
刑事訴訟法の現行犯逮捕の条文では、「何人でも」と書いてあります。
つまり、現行犯逮捕の場合、捜査機関に限らず、誰でも犯人を逮捕をすることができるのです。
したがって、今回のような私服警備員や万引きGメンであっても、万引きの現場を目撃していた場合、犯人を逮捕できる、ということになります。
万引きGメンなどの私人に逮捕された被疑者は、その後すみやかに警察などに引き渡されます(刑事訴訟法214条)。
そしてその後、今回のAさんのように警察署の留置場に留置され、取調べ等を受けることになるでしょう。
取調べに臨む際には、被疑者のもつ権利や手続きの流れなどをきちんと把握して臨む方が望ましいです。
弁護士に接見してもらい、アドバイスをもらっておくことがおすすめです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕直後から弁護士が接見へ向かう初回接見サービスのお申し込みも受け付けています。
専門スタッフがご案内しますので、現行犯逮捕の知らせを受けてお困りの際は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
マスクの高額転売で刑事事件②
マスクの高額転売で刑事事件②
マスクの高額転売で刑事事件へ発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市南区に住んでいるAさんは、新型の感染症が流行していることでマスクの品切れが続いていることに乗じて、マスクを転売して儲けようと考えました。
そこでAさんは、ドラッグストアやスーパーマーケットでマスクを買い占めると、通常販売価格の10倍以上の値段をつけてフリマアプリやショッピングサイトに出品・売買し、いわゆる高額転売を行いました。
すると後日、京都府南警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんはマスクの高額転売をしたことで警察から話を聞かれることとなってしまいました。
Aさんは、マスクの高額転売で刑事事件に発展するとは思いもよらず、刑事事件に強い弁護士に相談することとしました。
(※この事例はフィクションです。)
・国民生活安定緊急措置法施行令
前回の記事で触れた通り、国民生活安定緊急措置法では、指定物資の供給が著しく不足し、相当期間その需要と供給のバランスを回復させることが難しい場合には、国民生活安定緊急措置法施行令によって指定物資の譲渡等について制限等を設けることができるうえ、それに違反した物については刑罰を科すことを定めることができるとされています。
今回は、マスクの高額転売の規制のために国民生活安定緊急措置法施行令が改正されたということになります。
改正された国民生活安定緊急措置法施行令では、衛生マスクが指定物資(=「生活関連物資等」)とされています。
国民生活安定緊急措置法施行令1条
国民生活安定緊急措置法(以下「法」という。)第26条第1項の政令で指定する生活関連物資等は、衛生マスクとする。
経済産業省のホームページによると、衛生マスクには、一般に売られている使い捨てマスクから産業用マスクや医療用マスクまで含まれているとのことです。
このマスクの転売について定めているのが、国民生活安定緊急措置法施行令の以下の条文です。
国民生活安定緊急措置法施行令2条
衛生マスクを不特定の相手方に対し売り渡す者から衛生マスクの購入をした者は、当該購入をした衛生マスクの譲渡(不特定又は多数の者に対し、当該衛生マスクの売買契約の締結の申込み又は誘引をして行うものであつて、当該衛生マスクの購入価格を超える価格によるものに限る。)をしてはならない。
国民生活安定緊急措置法施行令7条
1項 第2条の規定に違反した場合には、当該違反行為をした者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2項 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は人の業務に関し、前項の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して同項の罰金刑を科する。
簡単にこのマスクの高額転売の規制を説明すると、
①スーパーやコンビニ、ドラッグストアやネットショップなど不特定の相手に販売している店や個人、業者からから購入したマスクを
②購入価格よりも高い値段で
③インターネットや店などを通じて不特定または多数の者に対して転売する
ことが規制されているということになります。
ですから、Aさんの行ったような高額転売行為はこの条文に違反することになるのです。
その時々の世情により、こうした聞きなれない法律や政令に違反する犯罪が出てくることもあります。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした目新しい犯罪についてのご相談ももちろん可能です。
刑事事件の手続き等、気になることは専門家である弁護士に聞いてみましょう。
初回無料法律相談のお申込みはいつでも可能ですから、まずはお気軽にお問い合わせください。
マスクの高額転売で刑事事件①
マスクの高額転売で刑事事件①
マスクの高額転売で刑事事件へ発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市南区に住んでいるAさんは、新型の感染症が流行していることでマスクの品切れが続いていることに乗じて、マスクを転売して儲けようと考えました。
そこでAさんは、ドラッグストアやスーパーマーケットでマスクを買い占めると、通常販売価格の10倍以上の値段をつけてフリマアプリやショッピングサイトに出品・売買し、いわゆる高額転売を行いました。
すると後日、京都府南警察署の警察官がAさん宅を訪れ、Aさんはマスクの高額転売をしたことで警察から話を聞かれることとなってしまいました。
Aさんは、マスクの高額転売で刑事事件に発展するとは思いもよらず、刑事事件に強い弁護士に相談することとしました。
(※この事例はフィクションです。)
・マスクの高額転売で刑事事件?
現在、新型肺炎の影響でマスクの品切れ状態が続いているところが多いようです。
そんな中、Aさんのようにマスクを買い占め、通常の販売価格以上の高額で転売する行為が多く見られています。
こうした事態を受け、つい先日、「国民生活安定緊急措置法施行令」という政令が改正され、3月11日に公布、3月15日に施行されました。
これにより、マスクの高額転売をした場合、刑事事件となる可能性が出てくることになったのです。
そもそも、国民生活安定緊急措置法とはどういった法律なのでしょうか。
国民生活安定緊急措置法は、第一次オイルショックの際にできた法律です。
なかなか聞くことのない法律名ですが、国民生活安定緊急措置法の目的は以下のように決められています。
国民生活安定緊急措置法1条
の法律は、物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態に対処するため、国民生活との関連性が高い物資及び国民経済上重要な物資の価格及び需給の調整等に関する緊急措置を定め、もつて国民生活の安定と国民経済の円滑な運営を確保することを目的とする。
第一次オイルショックでは、物価が急激に上昇し、トイレットペーパーの買い占め騒動が起こるなどしました。
こうした事態に対応するためにできたのが国民生活安定緊急措置法なのです。
国民生活安定緊急措置法では、物価の高騰やそのおそれによって生活と関連性が高い物についての価格の著しい上昇やそのおそれがあるとき、その生活と関連性が高い物について「生活関連物資等」として指定することができます。
第一次オイルショック時には、国民生活安定緊急措置法と国民生活安定緊急措置法施行令によってトイレットペーパーが指定物資とされ、標準価格が定められたことがあります。
今回のマスクの高額転売に関わるのも、この国民生活安定緊急措置法と国民生活安定緊急措置法施行令です。
国民生活安定緊急措置法では、先ほど触れたトイレットペーパーのように指定物資の標準価格を定めることだけでなく、指定物資の供給が著しく不足し、相当期間その需要と供給のバランスを回復させることが難しい場合には、国民生活安定緊急措置法施行令によって指定物資の譲渡等について制限等を設けることができるうえ、それに違反した物については刑罰を科すことを定めることができるとされています。
国民生活安定緊急措置法26条1項
物価が著しく高騰し又は高騰するおそれがある場合において、生活関連物資等の供給が著しく不足し、かつ、その需給の均衡を回復することが相当の期間極めて困難であることにより、国民生活の安定又は国民経済の円滑な運営に重大な支障が生じ又は生ずるおそれがあると認められるときは、別に法律の定めがある場合を除き、当該生活関連物資等を政令で指定し、政令で、当該生活関連物資等の割当て若しくは配給又は当該生活関連物資等の使用若しくは譲渡若しくは譲受の制限若しくは禁止に関し必要な事項を定めることができる。
国民生活安定緊急措置法37条
第26条第1項の規定に基づく政令には、その政令若しくはこれに基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反した者を5年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する旨の規定及び法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関して当該違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する旨の規定を設けることができる。
つまり、今回のマスクの高額転売に対する規制は、この国民生活安定緊急措置法26条1項と37条に基づいて国民生活安定緊急措置法施行令が改正されたことによるということなのです。
その詳しい内容については次回の記事で触れていきます。
新しく法律や政令が改正された場合、報道で「何をしたらどれだけの刑罰があるか」は簡単に触れられていても、具体的にどういった法律や政令に違反するのか、どのような行為がどういった条文に基づいて処罰されるのか、自分の行為のどこが違反するのか等、細かいことが分からないことも多いでしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、そういった刑事事件の細かい疑問にも、専門家である弁護士が丁寧にお答えいたします。
まずはお気軽に初回無料法律相談や初回接見サービスからご利用ください。
覚せい剤所持事件で釈放・保釈
覚せい剤所持事件で釈放・保釈
覚せい剤所持事件で釈放・保釈を狙う弁護活動について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府亀岡市に住むAさんは,数年前から覚せい剤を使用しており,いつでも覚せい剤を使えるよう,常に覚せい剤を持ち歩いていました。
ある日,Aさんがいつものように覚せい剤を持って京都府亀岡市の路上を歩いていたところ,京都府亀岡警察署の警察官に職務質問され,Aさんが所持していた覚せい剤が見つかりました。
簡易鑑定の結果,Aさんが持っていた物が覚せい剤であると判明し,Aさんは,覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕されました。
Aさんの家族は,何とかAさんを釈放することはできないかと,弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
~覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持・使用)~
覚せい剤は,医師や研究者が研究する場合など一部の場合を除いて,原則所持や使用が禁止されています(覚せい剤取締法14条,19条)。
覚せい剤取締法14条1項
覚せい剤製造業者,覚せい剤施用機関の開設者及び管理者,覚せい剤施用機関において診療に従事する医師,覚せい剤研究者並びに覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者の外は,何人も,覚せい剤を所持してはならない。
覚せい剤取締法19条
左の各号に掲げる場合の外は,何人も,覚せい剤を使用してはならない。
1号 覚せい剤製造業者が製造のため使用する場合
2号 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者が施用する場合
3号 覚せい剤研究者が研究のため使用する場合
4号 覚せい剤施用機関において診療に従事する医師又は覚せい剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
5号 法令に基いてする行為につき使用する場合
これに違反し,覚せい剤を所持・使用した者は,10年以下の懲役が科されます(覚せい剤取締法41条の2,41条の3)。
覚せい剤取締法41条の2
1項 覚せい剤を,みだりに,所持し,譲り渡し,又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は,10年以下の懲役に処する。
2項 営利の目的で前項の罪を犯した者は,1年以上の有期懲役に処し,又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3項 前二項の未遂罪は,罰する。
覚せい剤取締法41条の3
1項 次の各号の一に該当する者は,10年以下の懲役に処する。
1号 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者
(略)
2項 営利の目的で前項の違反行為をした者は,1年以上の有期懲役に処し,又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3項 前二項の未遂罪は、罰する。
~覚せい剤取締法違反事件と釈放・保釈~
覚せい剤取締法違反のような薬物事犯の場合,多くの場合は逮捕され,勾留延長満期まで勾留されてしまいます。
というのも,覚せい剤取締法違反のような薬物事犯では,覚せい剤を捨てるなどして物的証拠を隠滅してしまうことも,売買先等と口裏を合わせることで証言という証拠を隠滅してしまうことも容易であるとされているからです。
そのため,捜査段階で釈放を求める活動を行っても,覚せい剤取締法違反事件ではなかなか釈放が認められない傾向にあります。
もちろん,釈放のための環境を整え,それを主張していくことはできますし,後述する保釈の準備も同時に進めることにつながりますから,弁護士と協力しながら釈放を求めていくことが望ましいでしょう。
そして,勾留延長満期を迎え起訴されてしまえば,裁判が終わるまで勾留が続きます。
起訴後には,捜査段階とは異なり,保釈を請求することができます。
そのためには,身元引受人の確保や,帰住先の確保等を行う必要がありますから,釈放を求める活動と同様,弁護士のサポートを受けながら保釈を求めるための環境を作っていくことが大切です。
保釈のためには保釈保証金が必要ですが,保釈支援協会に立て替えてもらうこともできます。
保釈の場合,すでに起訴されて証拠が確保されていると考えられることや,保釈金を担保するという条件があることなどから,捜査段階よりもその請求が認められやすいと言われています。
また,保釈は理論上は何度でも請求できるため,一度保釈請求が認められなかったとしても,環境を整え直すなどすれば再度請求することができます。
弁護士に相談しながら粘り強く保釈を求める活動をしてもらうことも重要です。
釈放・保釈が認められることは,被疑者・被告人だけでなくその周囲の方の大きな手助けになります。
覚せい剤取締法違反の罪に問われてお困りの方,釈放・保釈にお悩みの方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士にご相談下さい。
脅迫事件と示談交渉
脅迫事件と示談交渉
脅迫事件と示談交渉について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさん(17歳)は,京都市西京区にある飲食店でアルバイトをしていました。
Aさんは常々,アルバイトの同僚であるVさん(16歳)の態度に腹を立てていたのですが,ある日,どうにもVさんの態度に我慢ならなくなってしまいました。
そこでAさんは,Vさんに対してメッセージアプリで「お前のことなんてもう知らん」「俺はその筋の人と交流があるんや。もうその人に頼んだから,どうなるか覚悟しとき」などのメッセージを送りました。
このメッセージを見て恐怖を抱いたVさんが両親に相談したことをきっかけに,Vさんらは京都府西京警察署に相談。
京都府西京警察署が捜査を開始し,Aさんは京都府西京警察署の警察官に脅迫罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの両親は,Vさんへの謝罪やAさんの釈放を求め,弁護士に何かできる活動はないかと相談することにしました。
(フィクションです。)
~脅迫罪~
人の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し,害を加える旨を告知して人を脅迫した場合,脅迫罪(刑法222条1項)が成立します。
刑法222条1項(脅迫罪)
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
脅迫罪の条文にある「脅迫」とは,一般に人を畏怖させるに足りる害悪の告知をいいます。
脅迫罪の成立には,告知が相手方に到達して認識されたことは必要ですが,実際に相手方が畏怖したことまでは必要ありません。
脅迫罪の「脅迫」に当たるかどうかは,具体的諸事情を勘案して判断されます。
今回のAさんは,Vさんに対してメッセージを送っていますが,そのメッセージの内容から,そういった内容のメッセージを受け取れば,一般的に生命,身体等を害されるのではと畏怖するのに十分といえ,脅迫罪に当たる可能性が高いといえるでしょう。
~脅迫罪と示談交渉~
成人の刑事事件であれば,初犯であれば執行猶予判決が見込まれますが,示談が成立すれば前科を回避できる可能性もあります。
ですから,脅迫をしたことに争いがないのであれば,刑事事件に強い弁護士に依頼し,示談をすべきといえるでしょう。
脅迫事件において早期に示談が成立すれば,不起訴となり,前科がつかない可能性もあります。
また,示談が成立していれば,起訴されたとしても,略式起訴で,罰金を納付するだけですむ可能性もあります。
しかし,少年事件の場合,成人の刑事事件とは処分の種類も重視する部分も異なるため,示談が成立したからといって「不起訴」のような扱いにはならないことが多いです。
少年事件は原則的に全ての事件が家庭裁判所に送られることになります。
では少年事件として扱われる脅迫事件で示談交渉が全く不必要なのかというと,そうではありません。
謝罪や示談ができていることは,少年自身の反省や,その家族の事件への向き合い方を主張する1つの材料となります。
さらに,今回のAさんのように捜査段階で逮捕されてしまっている場合には釈放を求める活動をしていくことが考えられますが,この際,被害者との示談ができている=謝罪・賠償ができているという事情があれば,釈放を求める際に有利な事情となりえます。
被害者との示談ができている,もしくはその意向で活動しているということは,被害者に対して証拠隠滅等の働きかけをしない意思であるといえる事情となりえるからです。
しかし,示談交渉を自分たちのみで行うことには困難が伴うことも多いです。
弁護士に示談交渉を任せるメリットとしては,例えば以下のようなものが考えられます。
まず,相手の連絡先を知らなくても,弁護士であれば,捜査機関に問い合わせ連絡先を取得できる可能性が高まるということが挙げられます。
次に,示談交渉は当事者だけだと揉めてしまいがちですが,弁護士という第三者を介在させることで,スムーズにまとまる可能性があることです。
特に今回のような,加害者も被害者も未成年という少年事件では,親同士の話し合いとなることから,ヒートアップしてしまうことも考えられますから,適切な知識のある第三者を挟むことは有効であると考えられます。
そして,弁護士が示談書を作成して,示談が成立したことを明確化するとともに,紛争の蒸し返しを防ぐことができることもメリットの1つです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は,刑事事件だけでなく少年事件の弁護活動・付添人活動も行っています。
脅迫事件の示談交渉等にお悩みの際は,まずはご相談ください。
学生同士の強要事件で逮捕
学生同士の強要事件で逮捕
学生同士の強要事件で逮捕された場合について,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
高校2年生のAさんは,京都府綾部市の路上を通行中,違う高校に通うVさんと肩をぶつけてしまいました。
Vさんの名札から自分より年下であることが分かったにも関わらず,Vさんが自分に誤りもせずにいたことに腹を立て,AさんはVさんの胸倉をつかむなどした上で,「殺すぞ。謝れ」などと言ってVさんを土下座させました。
様子を見ていた通行人が通報し,Aさんは駆け付けた京都府綾部警察署の警察官に,強要罪の容疑で逮捕されました。
Aさんの両親は,Aさんが帰宅しないことを心配し,最寄の京都府綾部警察署に相談したところ,Aさんが逮捕されたことを知りました。
対応した警察官から,「すくなくとも今日明日は家族でも会えない」と言われたAさんの両親は困り果て,どうすればよいのかを少年事件も取り扱う弁護士に相談してみることにしました。
(フィクションです。)
~強要罪~
生命等に害悪を加える旨を告知して脅迫し,人に義務のないことを行わせた場合,強要罪が成立し,3年以下の懲役が科せられます(ただし,今回のAさんのように20歳未満の者の場合は少年事件となるので原則刑罰を受けることはありません。)。
刑法223条(強要罪)
1項 生命,身体,自由,名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,又は暴行を用いて,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者は,3年以下の懲役に処する。
2項 親族の生命,身体,自由,名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し,人に義務のないことを行わせ,又は権利の行使を妨害した者も,前項と同様とする。
3項 前二項の罪の未遂は,罰する。
強要罪は,暴行・脅迫によって人に「義務のないこと」をさせた場合に既遂となります。
脅迫又は暴行により意思活動の自由を現実に侵害しなければ,強要罪は既遂とはなりません。
「義務のないこと」とは,法律上の義務がないことをいいます。
法的に強制されない限り,行動の自由は保護されるべきだからです。
今回の事例を考えてみましょう。
Aさんは,Vさんの胸倉をつかむなどしたうえで,「殺すぞ。謝れ」と言ってVさんを脅迫し,Vさんに義務がないのに土下座することを強要しています。
胸倉をつかむ行為は強要罪の「暴行」に当たると考えられますし,「殺すぞ」と言った言葉は「生命…に対し害を加える旨を告知して脅迫」していると考えられます。
そして,もちろんVさんがAさんに土下座をする義務はありません。
このように,暴行・脅迫行為の結果,Vさんは義務のない土下座をさせられていますから,Aさんの行為は強要罪(刑法223条1項)となる可能性が高いと考えられるのです。
成人が起こした強要事件においては,早期に被害者と示談することで,不起訴となったり,裁判で執行猶予判決を受けることのできる可能性が高まります。
しかし,Aさんのような少年事件では,不起訴という考え方はなく,原則としてすべての少年事件が家庭裁判所へ送られます。
それでも,被害者への謝罪・弁償ができているのかどうか,少年本人や家族の事件との向き合い方はどのようなものか,といった事情は処分を決めるうえで考慮されますから,少年事件に強い弁護士にサポートしてもらいながら,少年事件の手続きに対応していくことが望ましいといえるでしょう。
~子どもが逮捕されてしまった~
Aさんの両親がそうであったように,基本的に逮捕されてからすぐは,ご家族であっても逮捕された本人と会うことはできません。
ごくまれに,捜査機関が事情を酌んで短時間だけ面会を許可することもあるようですが,これはあくまで例外的なものであり,原則としては逮捕に引き続く身体拘束である「勾留」がつくか,勾留されずに釈放されるまでは面会はできません。
だからこそ,逮捕直後に取調べ対応のアドバイスをしたり,本人の言い分を把握したりするためには,弁護士に面会に行ってもらうことが効果的なのです。
今回のAさんの強要事件のように,被害者への対応や釈放を求める活動,その後の家庭裁判所へ送致された時のための準備等,逮捕を伴う少年事件には行うべき活動が多くあります。
まずはお早めに,少年事件も専門に取り扱っている弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご連絡ください。
ご相談者様にぴったりのサービスを,専門スタッフがご案内いたします(0120-631-881)。
文化財への落書きで文化財保護法違反②
文化財への落書きで文化財保護法違反②
文化財への落書きで文化財保護法違反となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
東京都在住のAさんは、京都府に観光に来ていました。
観光していく中で、Aさんは京都市左京区内にある寺を訪れました。
寺を見ていくうち、Aさんはその寺をいたく気に入り、寺に来た記念を残したいと考えました。
そこでAさんは、寺の壁に持っていたスプレーで自身の名前やイラストを描き残しました。
その後、他の観光客がAさんの残した落書きを発見し、京都府川端警察署に通報。
残された名前や防犯カメラの映像などから、Aさんは京都府川端警察署に、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・文化財保護法違反事件と弁護活動
Aさんのように、落書きによって重要文化財を損壊してしまって文化財保護法違反となってしまった場合には、まずはその重要文化財の修復等で出た損害を賠償したり、謝罪したりすることで、示談交渉を行うことが考えられます。
刑法の器物損壊罪が親告罪(被害者などの告訴権者による告訴=被害申告と処罰を求める申告がなければ起訴することのできない犯罪)であるのに対し、文化財保護法違反は親告罪ではありません。
ですから、たとえ起訴前に示談ができたとしても、親告罪とは異なり必ずしも不起訴処分になるとは限りません。
しかし、謝罪ができていたり被害賠償ができているという事情があれば、起訴・不起訴の判断をする際や量刑を判断する際などに有利に働く可能性が高いです。
当事者だけで示談交渉をすることには不安が伴うでしょうし、どのように進めるべきか、どういった話し合いをすべきなのかもわからないことが多いでしょう。
弁護士を通じて示談交渉をしてもらうことで、そういった不安を解消することができます。
また、今回のAさんは逮捕されてしまっています。
逮捕から引き続いて身体拘束をされる「勾留」が決定すれば、その延長も含め、逮捕から数えて最大23日間も外部との接触ができなくなります。
1か月弱の間身体拘束されてしまえば、就業先・就学先・家庭などに大きな影響を及ぼしてしまいます。
Aさんのように旅行先で逮捕されてしまった場合、家族が面会に来ることも一苦労です。
そうしたことから、逮捕を伴う捜査を受けた場合、上述の示談交渉等の活動に加え、弁護士に釈放を求める活動も並行して行ってもらうことがよいでしょう。
・重要文化財でなければ犯罪にならない?
今回のAさんは、重要文化財に落書きをしたことで文化財保護法違反の容疑をかけられているようですが、この落書きをした寺が重要文化財でなければ犯罪にならないのでしょうか。
実は、そう簡単に済むことはではなく、たとえ落書きをした寺が重要文化財ではなくとも、文化財保護法違反以外の犯罪が成立する可能性があります。
それが、刑法の建造物損壊罪や器物損壊罪です。
刑法260条
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
刑法261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
建造物損壊罪の「損壊」は、器物損壊罪の「損壊」でもあったように、物理的にその建造物を壊してしまうだけでなく、その建造物の効用をなくしたり減損したりすることも含んでいます。
建造物損壊罪と器物損壊罪の大まかな違いとしては、「損壊」される対象が「建造物」なのかそれ以外なのかという点が挙げられます。
一般的に、「建造物」かそれ以外かは、その建て物から取り外せるのかどうか、また、その部分がその建て物の重要な役割を負っている部分かどうかといったことを考慮され判断されます。
例えば、今回のAさんのような建て物の壁への落書きの場合、壁は建て物から取り外すことはできませんから、「建造物」への損壊行為であると考えられる可能性があるということになるのです。
なお、建造物損壊罪と器物損壊罪は、親告罪ではないか親告罪であるかという点も異なります。
建て物への落書きは、どういった建て物のどの部分にどのように落書きをしたのかによって、成立する犯罪が異なります。
自分の行為がどういった犯罪になるのか、どういった見通しなのかを早めに弁護士に相談し、対応を練ることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事事件へのご不安やお悩みを解消できるよう、丁寧に対応いたします。
まずはお気軽にご相談ください(お申込:0120-631-881)。