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放火罪の種類~建造物等以外放火罪
放火罪の種類~建造物等以外放火罪
放火罪の種類のうち、特に建造物等以外放火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市中京区の会社に勤めるAさんは、同寮のVさんを恨んでいました。
ある日、AさんはどうしてもVさんへの恨みを抑えることができなくなり、会社の駐車場に停めてあったVさんの自動車のタイヤ付近に火をつけました。
しかし、火がつけられてすぐに駐車場を警備していた警備員が火に気付き消し止めたため、火は燃え上がることなく、Vさんの自動車のタイヤを焦がした程度でした。
その後、Vさんからの被害届を受けて捜査をしていた京都府中京警察署がAさんの犯行であることを突き止め、Aさんは器物損壊罪の容疑で逮捕されました。
「Aさんが火をつけて逮捕された」と聞いたAさんの家族は、Aさんが容疑をかけられている罪名が放火罪ではなく器物損壊罪であることを不思議に思い、今後の手続きなども含めて弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・色々な「放火罪」~「建造物等以外」への放火
前回の記事では、「建造物等」への放火罪について取りあげましたが、今回の記事では「建造物等」以外への放火罪を紹介します。
「建造物等」以外=「建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」以外のものに対しての放火罪は、刑法第110条に規定されている建造物等以外放火罪です。
刑法第110条(建造物等以外放火罪)
第1項 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
建造物等以外放火罪の対象となるのは、刑法第108条・第109条のいう「建造物等」=「建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑」以外のものですから、今回のAさんがターゲットとした自動車なども含まれます。
では、この建造物等以外放火罪が前回の記事で紹介した放火罪と異なる点は対象とするもの以外にあるのでしょうか。
建造物等以外放火罪も、現住建造物等放火罪や非現住建造物等放火罪と同様、火をつけるだけで成立するものではありません。
条文を見れば分かる通り、建造物等以外放火罪の成立にも、放火して「焼損」することが必要とされています。
この「焼損」の意味は、他の放火罪同様、火が媒介物を離れて目的物に移り、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達した時点であるとされています(最判昭和23.11.2)。
しかし、建造物等以外放火罪の成立要件は、これだけではありません。
放火し、焼損したことに加え、それによって「公共の危険を生じさせた」必要があるのです。
これは現住建造物等放火罪や非現住建造物等放火罪にはない、建造物等以外放火罪独特の条件です。
「公共の危険」の発生とは、「放火行為によって一般不特定の多数人をして、所定の目的物に延焼しその生命、身体、財産に対し危害を感じせしめるにつき相当の理由がある状態」を指すとされています(大判明治44.4.24)。
つまり、たとえ「建造物等以外」のものに放火し、それが焼損したとしても、「公共の危険」が発生していないような場合には、建造物等以外放火罪は成立しないということになるのです。
では、建造物等以外放火罪が成立しないということになれば、何罪が成立することになるのでしょう。
次回の記事でAさんの事例と照らし合わせながら検討していきます。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、建造物等以外放火罪についてのご相談も安心してお任せいただけます。
「放火」という単語は知っていても、その種類や区別の仕方が分からず、どういった刑罰が見込まれるのか等悩まれる方も少なくないでしょう。
専門家の弁護士であれば、刑事事件の見通しや手続の注意点、適切な活動についてアドバイスをすることが可能です。
まずはご相談だけでも、お気軽にご利用ください。
放火罪の種類~2つの建造物等放火罪
放火罪の種類~2つの建造物等放火罪
放火罪の種類のうち、特に2つの建造物等放火罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市中京区の会社に勤めるAさんは、同寮のVさんを恨んでいました。
ある日、AさんはどうしてもVさんへの恨みを抑えることができなくなり、会社の駐車場に停めてあったVさんの自動車のタイヤ付近に火をつけました。
しかし、火がつけられてすぐに駐車場を警備していた警備員が火に気付き消し止めたため、火は燃え上がることなく、Vさんの自動車のタイヤを焦がした程度でした。
その後、Vさんからの被害届を受けて捜査をしていた京都府中京警察署がAさんの犯行であることを突き止め、Aさんは器物損壊罪の容疑で逮捕されました。
「Aさんが火をつけて逮捕された」と聞いたAさんの家族は、Aさんが容疑をかけられている罪名が放火罪ではなく器物損壊罪であることを不思議に思い、今後の手続きなども含めて弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
多くの方のイメージでは、「火をつけたら放火罪が成立する」という印象が強いのではないでしょうか。
しかし、放火罪とひと口にいっても、実は放火罪の中にも種類がある上、さらにただ「火をつけた」ということだけで放火罪が成立するわけではありません。
今回から複数回に分けて、放火罪とAさんの逮捕容疑でもある器物損壊罪について見ていきます。
・色々な「放火罪」~「建造物等」への放火
刑法には、単純な「放火罪」という犯罪は存在しません。
放火され、焼損した対象がどういったものだったかによって、どういった「放火罪」となるのか種類が分かれるのです。
刑法に定められている放火罪は、現住建造物等放火罪・非現住建造物等放火罪・建造物等以外放火罪です。
刑法第108条(現住建造物等放火罪)
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。
刑法第109条(非現住建造物等放火罪)
第1項 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。
第2項 前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。
ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。
刑法第110条(建造物等以外放火罪)
第1項 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、1年以上10年以下の懲役に処する。
第2項 前項の物が自己の所有に係るときは、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
刑法第108条・第109条に定められている放火罪は、どちらも「建造物等」に対して放火し、焼損した場合に成立する放火罪です。
この2つの放火罪は、放火・焼損した「建造物等」に放火時に人がいたか若しくは住居として使用されていた場合(=現住建造物等放火罪)か、放火・焼損した「建造物等」に放火時に人がいない上に住居としても使用されていなかった場合(=非現住建造物等放火罪)かで分かれます。
例えば、マンションに放火し焼損した場合、マンションは人の住居として使用されている建造物ですから、現住建造物等放火罪となります。
一方、閉店後で誰もいない飲食店に放火し焼損した場合、飲食店は住居として使用されていない上に誰もいない状態であることから、非現住建造物等放火罪の成立が考えられるということになります。
そして、この「建造物等」への放火罪は、どちらも建造物等に火をつけるだけで成立するものではありません。
これらの放火罪が成立するには、放火して「焼損」することが必要とされています。
「焼損」とは、火が媒介物を離れて目的物に移り、独立して燃焼作用を継続しうる状態に達した時点であるとされています(最判昭和23.11.2)。
つまり、家を燃やそうとして火をつけたとしても、火が家に燃え移って独立して燃え続ける程度にならなければ放火罪の成立には満たないということになるのです(その場合、放火未遂罪の成立や、態様によっては別罪の成立も考えられます。)。
「建造物等」への放火罪は、放火罪の中でも重い刑罰が定められており、特に現住建造物等放火罪は死刑も含まれている重大犯罪です。
だからこそ、もしも自身や家族が当事者となってしまったら、刑事事件に強い弁護士のサポートを受けることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が、重大犯罪の弁護活動についてのご相談・ご依頼も承っています。
まずはお気軽にご相談ください。
次回の記事では、建造物等以外放火罪について取りあげます。
18歳以上だと思っていても青少年健全育成条例違反?
18歳以上だと思っていても青少年健全育成条例違反?
18歳以上だと思っていても青少年健全育成条例違反になるのかということについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは,京都府南丹市のホテルで,SNSで知り合ったVさんと性交しました。
Aさんは,SNSのVさんのプロフィールに18歳以上であると記載されていたため,Vさんは18歳以上だと思っていました。
しかし,実際は,Vさんは16歳の高校生でした。
その後,AさんとVさんの関係を知ったVさんの母が京都府南丹警察署へ通報し,Aさんは,青少年健全育成条例違反の容疑で京都府南丹警察署の警察官に逮捕されました。
Aさんは,家族の依頼で接見に来た弁護士に,自分は18歳未満だと分かっていたわけではないこと,そうした状況でも青少年保護育成条例違反になるのかということを相談することにしました。
(フィクションです。)
~青少年保護育成条例違反~
18歳未満の者に対し,みだらな行為等をすると,各都道府県で定められている青少年健全育成条例違反(青少年保護育成条例違反)となる可能性があります。
よく報道で見られる「淫行」は,この青少年健全育成条例違反のことを指しています。
青少年健全育成条例の条文中で「(18歳未満の青少年と)淫らな行為」や「淫行」をすることを禁止していることから,「淫行」と言われているのです。
京都府にも青少年健全育成条例があり,正式名称は「青少年の健全な育成に関する条例」(以下、「京都府青少年健全育成条例」)と言います。
この条例により,京都府では18歳未満の青少年と淫らな行為,例えば性交や性交類似行為をすることは禁止されており(京都府青少年健全育成条例21条1項),18歳未満と淫行した場合には,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が科せられます(京都府青少年健全育成条例31条1項1号)。
京都府青少年健全育成条例21条1項
何人も,青少年に対し,金品その他財産上の利益若しくは職務を供与し,若しくはそれらの供与を約束することにより,又は精神的,知的未熟若しくは情緒的不安定に乗じて,淫行又はわいせつ行為をしてはならない。
京都府青少年健全育成条例31条1項
次の各号のいずれかに該当する者は,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
1号 第21条の規定に違反した者
~18歳未満と知らなくても青少年健全育成条例違反?~
犯罪が成立するためには,故意=犯罪に当たる行為の認識が必要です。
つまり,今回のような淫行による青少年健全育成条例違反が成立するには,「18歳未満と淫行をする」という認識がなければならないことになります。
しかし,今回のAさんは,Vさんが18歳未満であることを知りませんでした。
ですから,AさんにはVさんが18歳未満であるという認識=淫行による青少年健全育成条例違反の故意がなく,たとえAさんがVさんにした行為が青少年健全育成条例違反「淫行」に当たるとしても,犯罪は成立しないように思えます。
ですが,京都府青少年健全育成条例を確認すると,次のような条文があります。
京都府青少年健全育成条例31条7項
第13条の2第4項,…,第21条,…の規定に違反した者は,当該青少年の年齢を知らないことを理由として,第1項から第3項まで,第4項(第4号に係る部分に限る。)及び第5項(第2号,第5号,第6号及び第10号に係る部分を除く。)の処罰を免れることができない。
ただし,当該青少年の年齢を知らないことに過失がないときは,この限りでない。
つまり,京都府青少年健全育成条例の場合,相手が18歳未満であることを知らなかったとしても,必ずしも故意がなく京都府青少年健全育成条例違反にならないというわけではないということなのです。
「相手の年齢を知らなかった」と言えば処罰を受けずに済むというわけではないことに注意が必要です。
一方,但し書きにあるように,相手が18歳未満であることを知らなかったことに対し過失がない場合には処罰されずに済む可能性が出てきます。
過失があるかないかは,相手の見た目や相手とのやり取り等も含めて事件ごとに判断されることになりますから,弁護士に詳しい事情を伝えて見通しを立ててもらうことをおすすめします。
青少年健全育成条例違反の容疑を認めるにせよ否認するにせよ,取調べへの対応や,逮捕されている場合の身柄解放活動等の弁護活動は大切になってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では,青少年健全育成条例違反事件のご相談・ご依頼も多くいただいています。
まずはお気軽にフリーダイヤルよりお問い合わせください(0120-631-881)。
侵入盗事件で逮捕されたら
侵入盗事件で逮捕されたら
侵入盗事件で逮捕されたケースについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市北区に住むAさんは,ある日,近所に住んでいるVさんが,「今自宅には200万円の現金が保管してある」と話していたのを聞き,Vさん宅からその200万円を盗み出すことを思いつきました。
AさんはVさんが出かけた時間を狙ってVさん宅に侵入し,部屋内から金庫の合い鍵を見つけ金庫の鍵を開けて現金200万円を盗みました。
帰宅したVさんが金庫が開いていることに気づき,200万円の盗難が発覚。
Vさんの通報により,京都府北警察署が捜査を開始しました。
捜査の結果,防犯カメラの映像からAさんの犯行であると発覚し,Aさんは,住居侵入罪と窃盗罪の容疑で京都市北区を管轄する京都府北警察署の警察官に逮捕されました。
(フィクションです。)
~侵入盗事件~
他人の財物を盗んだ(窃取した)者には,窃盗罪(刑法235条)が成立します。
窃盗罪で有罪となれば,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が科せられます。
刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は,他人の財物を窃取した場合に成立します。
「窃取」とは,その物の持ち主の意思に反して財物の占有を移転し,それを取得することをいいます。
窃盗罪の典型例である万引きや,侵入盗・空き巣の手口を考えれば,持ち主の意思に反して勝手にその物を自分の物としてしまっていることがわかると思います。
もちろん,今回のAさんの行為も窃盗罪に当たると考えられます。
さて,この窃盗罪は様々な手口によって犯行が行われていますが,今回のAさんの手口は,人の家や建物に侵入して物を盗む,いわゆる侵入盗という分類にあたるでしょう。
侵入盗としては,空き巣や忍び込み,金庫破り,事務所荒らしや出店荒らしなどが挙げられます。
今回のAさんはVさんの留守中を狙って忍び込んで窃盗行為をしていることから,侵入盗のうち空き巣にあたるでしょう。
なお,窃盗事件の中には侵入盗とは反対に,家等に侵入せずに盗みをはたらく非侵入盗と呼ばれる分類もあります。
非侵入盗の手口としては,万引きやすりといった手口が挙げられます。
侵入盗事件の場合,窃盗行為をするためにどこかに侵入しているわけですから,窃盗罪だけでなく住居侵入罪や建造物侵入罪(刑法130条)にも問われることになります。
刑法130条
正当な理由がないのに,人の住居若しくは人の看守する邸宅,建造物若しくは艦船に侵入し,又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は,3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
例えば今回のAさんは,窃盗行為をする目的で勝手にVさん宅に侵入しています。
窃盗行為をする目的で立ち入っていることから,もちろん「正当な理由」とは言えませんし,家主であるVさんもこの立ち入りには同意しないでしょうから,Aさんには窃盗罪に加えて住居侵入罪も成立することになるでしょう。
Aさんのような侵入盗事件では,窃盗罪に当たる行為と住居侵入罪に当たる行為は,手段と目的の関係に立ちます(窃盗罪という目的のために住居侵入罪という手段を使ったということです。)。
そのため,牽連犯という考えが用いられ,重い窃盗罪の刑で処断されることになります(刑法54条1項前段)。
刑法54条1項
一個の行為が二個以上の罪名に触れ,又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは,その最も重い刑により処断する。
~侵入盗事件と弁護活動~
侵入盗事件を起こしたことに争いがない場合,弁護士を通じて早期に被害者の方に対する被害弁償や示談交渉を進めることが重要です。
侵入盗事件の被害届が提出される前であれば,示談締結により警察の介入を回避し,逮捕されたりすることなく,刑事事件化を阻止できる可能性もあります。
また,警察が介入して刑事事件化し,逮捕されてしまったような場合でも,示談締結ができれば早期釈放や不起訴処分など早期の職場復帰や社会復帰を実現できる可能性が高くなります。
なお,刑事事件化し,裁判が始まった後の示談であっても,示談締結の事実により執行猶予付き判決や減刑など効果が期待できます。
侵入盗事件では,窃盗罪だけでなく住居侵入罪も成立することから,犯行が悪質であると判断されやすく,厳しい処分がくだされることも考えられます。
なるべく早く弁護士に相談し,示談交渉等の活動に取り掛かってもらうのが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では,侵入盗事件の逮捕にお悩みの方のご相談も受け付けています。
まずはお気軽に,弊所弁護士までご相談ください。
置き引きで出頭要請
置き引きで出頭要請
置き引きで出頭要請を受けたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
京都府綾部市内の駅近くのファミリーレストランにいたAさんは、Vさんが同じフロアのトイレに行くために席を外したことに乗じて、Vさんの席に置いてあった財布を盗み店を後にした。
5分後、席に戻ったVさんは財布が盗まれたことに気付き、京都府綾部警察署に通報した。
通報を受けた京都府綾部警察署の警察官は捜査を開始し、店の防犯カメラからAさんを特定。
後日、Aさんへ京都府綾部警察署から連絡があり、Aさんは置き引き事件の事情聴取のために京都府綾部警察署へ出頭するように指示を受けました。
(事例はフィクションです。)
本件はいわゆる「置き引き」の事例ですが、刑法的には窃盗罪又は占有離脱物横領罪に該当する行為です。
この2つの犯罪はどのように区別されるのでしょうか。
(1)窃盗罪
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪にいう「窃取」とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反し自己又は第三者の占有に移転させる行為をいいます。
なお、騙したり脅すなどして占有者の(瑕疵ある)意思による財物の交付を受けた場合は、詐欺罪や恐喝罪になります。
ここでの「意思に反して」とは、占有者の隙を突いて財物を奪い取るひったくりのようなケースもあれば、被害者の目の届かないところに置いてある財物を持ち去る置き引きのようなケースもあります。
注意して頂きたいのは、窃盗罪の条文に「他人が占有する財物」とあるように、財物の所有権は問題とされていないことです。
したがって、一度盗られた自分の持ち物を取り返そうと犯人(占有者)から奪い返すことも、窃盗罪の実行行為に当たることになります。
(2)占有離脱物横領罪
刑法第254条(占有離脱物横領罪)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
他人の占有下にある財物を盗った場合は窃盗罪になりますが、占有下にない財物を盗った、つまり持ち主が財物を置いて完全に立ち去ってしまっていた時にその財物を盗った場合などには、占有離脱物横領罪に問われる可能性が出てきます。
占有離脱物横領罪の「横領」とは、不法領得の意思の発現行為一切をとされています。
そして、ここでの「不法領得の意思」とは、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。
したがって、端的にいえば、「横領」とは、その物を自分の所有物として扱うことを意味します。
所有物として扱うということは、壊したり、捨てたりすることもできますので、これらの目的での占有離脱物横領罪も罰せられることが考えられます。
この点は、壊したり隠す目的での行為は処罰されない窃盗罪とは異なります。
(3)窃盗罪?占有離脱物横領罪?
窃盗罪か占有離脱物横領罪のどちらかに該当するかは、財物に対して占有が及んでいるか否かで決まります。
過去の判例や裁判例では、どのように評価しているのでしょうか。
〇窃盗罪が成立したケース
バスの乗車待ちの列に並んでいたV1さんが、列を前進する際に傍に置いていたカメラを置きっ放しにしていた。途中で気付いて引き返したが、既にBさんに持ち去られた後だった。
このケースでは、置き忘れたカメラとV1さんが気付いて取りに戻ろうとした場所との距離が20メートル弱、置き忘れてから取りに戻るまでの時間が5分程度でした。
最高裁判所はカメラについて未だV1さんの占有下にあると判断して、Bさんの行為を窃盗罪に当たると判断しました。
〇占有離脱物横領罪が成立したケース
V2さんは、大規模スーパーの6階のベンチに財布を置いたまま地下1階に降りてしまった。約10分後そのことに気が付いたV2さんが取りに戻った時には、既にCさんが持ち去っていた。
高等裁判所は置き忘れた地点とV2さんが引き返そうとした地点との具体的な距離を明示せず、フロア数を示したのみでしたが、このケースの場合はV2さんの占有が及んでいないと判断しました。
さて、以上を踏まえて今回のケースを検討します。
通常ファミリーレストランの飲食スペースとトイレは本件と同様に同じフロア、離れていても1~2階程度の隔たりでしかないと判断できます。
距離としても数メートルでしょう。
Vさんが不在にしていた時間も5分程度であることを考慮して、財布にはVさんの占有が及んでいると判断できます。
つまり、Aさんの置き引き行為は窃盗罪であると判断される可能性が高いと考えられるのです。
今回のケースでは、逮捕による身柄拘束がされることはありませんでした。
もっとも、事件を早期に解決するためには被害者の方への一刻も早い謝罪や示談を進める必要があります。
実際は、被疑者自身が直接被害者の方と謝罪や接触をすることは難しく、接触できた場合にも被害感情が峻烈になる場合もあります。
被害者対応に関して、間に入る弁護士の有無は非常に重要です。
早期に上記の対応がなされれば、被害届の取下げや不起訴処分での終結になる可能性も十分にあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、窃盗・占有離脱物横領事件の経験豊富な弁護士による、身柄の早期解放や示談交渉について最善のアドバイスを受けることができます。
置き引き事件にお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士までご相談ください。
少年事件で退学阻止
少年事件で退学阻止
少年事件で退学阻止を目指す弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府舞鶴市に住んでいる高校生のAくん(17歳)は、少年事件を起こして、京都府舞鶴警察署に任意同行されました。
Aくんは、逮捕まではされなかったものの、後日再び取調べに京都府舞鶴警察署まで出頭するよう言われました。
Aくんの両親は、今回の少年事件によって、Aくんが退学になったりないかどうか不安に思い、少年事件に強い弁護士の初回無料法律相談を受け、今後の対策や可能な弁護活動について詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年事件を起こしたら退学?
上記事例のAくんは、逮捕まではされていないものの、少年事件を起こして警察にお世話になっている状態です。
逮捕されずに捜査が進む場合、在宅のまま過ごし、取調べ等の必要があるときだけ警察署などに呼ばれて捜査を受ける、という形で進んでいきます。
このような状態の時に、少年本人やそのご家族が心配することの1つとして挙げられるのが、学校はどうなるのか、という問題です。
実際に、少年事件を起こしてしまったことで、学校を退学になってしまうのではないか、と心配される少年やご両親は多くいらっしゃいます。
現在では、少年事件を起こして警察から取調べを受けたり逮捕されたり、ということになれば、原則として警察などから学校へ通知が行く制度になっています。
そのため、少年事件を起こしたことを学校へ知られないようにすることを完璧に防げる、というわけではありません。
しかし、弁護士が学校への通知を控えてもらえるように警察に働きかけることはできますから、まずは弁護士から警察へ打診してもらうことも1つの手でしょう。
さらに、弁護士が少年事件のサポートにつくことで、もしも学校への通知が行われたとしても、その後少年が更生し、再び少年事件を起こさないようにするための環境調整が行われていることなどを主張することで、退学といった厳しい処分を避けてもらえるよう、サポートすることもできます。
そもそも、今回のAさんは在宅で捜査を受けていますが、もしも逮捕されてしまっていた場合、釈放を目指さなければ学校に事件が露見してしまったり、欠席日数の超過により単位を落としてしまったり停学や留年となってしまったりすることも考えられますから、そういった場合にも退学回避のためには弁護士のサポートが必要になるでしょう。
少年事件によっては、弁護士が学校と協力し、少年の更生のための環境を整えることもありますから、在宅捜査なのか逮捕されているのかに関係なく、まずは弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。
少年にとって、自身の通う学校は、自分の生活の大きな部分を占める大切な場所です。
少年事件を起こしてしまっても、今まで頑張ってきた学校で更生に向けてやり直したいと考える少年やご両親は多いと思います。
少年事件の終局処分では、少年が再度犯罪をしないか、きちんと更生できる環境であるかどうかといったことが重視され、処分が決定されることから、就学先は重要な要素の1つとなります。
弁護士と協力しながら、就学先の確保や進路の決定などをすることで、少年事件でより適切な処分を判断してもらうことにもつながっていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件・少年事件専門の弁護士が、少年事件を起こしてしまった少年自身やそのご家族のサポートを行います。
学校を退学になるのを避けたいと御悩みの方は、一度、弊所の弁護士にご相談ください。
初回無料法律相談のお申込みや、逮捕されてしまった方向けの初回接見サービスのお申込みは、0120-631-881から受け付けておりますので、お気軽にお電話ください。
触らせて強制わいせつ罪
触らせて強制わいせつ罪
触らせて強制わいせつ罪になった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市北区に住んでいるAさんは、小さな女の子に興味を持っていました。
ある日Aさんが京都市北区内の道路を通行中、11歳のVさんがAさんの前を歩いていました。
Aさんは欲を抑えられなくなり、Vさんを人気のない路地裏に連れ込むと、Vさんの手を掴み、VさんにAさん自身の下半身を触らせました。
Vさんが帰宅後、両親に報告したことから京都府北警察署に通報され、その後の捜査でAさんの犯行が発覚。
Aさんは強制わいせつ罪の容疑で京都府北警察署に逮捕されました。
(※この事例はフィクションです。)
・触らせても強制わいせつ罪?
強制わいせつ罪は、刑法に規定されている犯罪です。
刑法176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
この強制わいせつ罪の条文を見ると、「加害者が被害者に触った」という態様の時に強制わいせつ罪が成立するように見えます。
しかし、今回の事例のように「相手に触らせた」という場合でも、「わいせつな行為をした」とみなされます。
というのも、強制わいせつ罪の「わいせつな行為」というのは、大まかに言えば被害者の性的羞恥心を害する行為であると解されているためです。
これは、強制わいせつ罪は、性的自由を守るための犯罪であるためです。
今回のAさんのように、自身の下半身を触らせるといった行為は、被害者の性的羞恥心を害する行為であると考えられますから、たとえ自分が相手の身体を触るようないわゆる「痴漢」の態様でなかったとしても、強制わいせつ罪の「わいせつな行為」となる可能性があるのです。
・暴行・脅迫がなくても強制わいせつ罪?
今回のAさんの行為が強制わいせつ罪の「わいせつな行為」に当たりうることは先ほど確認しましたが、ここで、「今回のAさんはVさんに対して暴行も脅迫もしていないのではないか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
たしかに、強制わいせつ罪の条文の前段には、「暴行又は脅迫を用いて」わいせつな行為をした者に強制わいせつ罪が成立する旨が書いてあります。
しかし、強制わいせつ罪の条文の但し書き部分を見てみると、被害者が13歳未満の者の場合には、わいせつな行為をするだけで強制わいせつ罪が成立すると決められていることが分かります。
すなわち、今回のAさんは、暴行や脅迫を加えていなくとも、被害者のVさんが13歳未満であることから、わいせつな行為をした時点で強制わいせつ罪の成立が考えられるということになるのです。
・強制わいせつ事件と弁護活動
強制わいせつ事件で考えられる弁護活動としては、まず被害者との示談交渉が考えられるでしょう。
しかし、強制わいせつ事件では、被害者の処罰感情が強いことが多く、当事者が謝罪の意向を示してもそもそも取り次いでもらえないということも多いです。
特に、今回のAさんのような被害者が幼い強制わいせつ事件では、謝罪・示談交渉の相手は被害者の親となることが多く、処罰感情が強くなるのも自然なことといえます。
こうした場合でも、専門家であり第三者である弁護士を通じての謝罪・示談交渉の意思を示すことで、話を聞いてくださる被害者やその親御さんもいらっしゃいます。
ですから、強制わいせつ事件の示談交渉や弁護活動については、まずは一度弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。
京都の強制わいせつ事件でお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士までご相談ください。
暴行事件で勾留回避
暴行事件で勾留回避
暴行事件での勾留回避活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府南丹市にある会社で経営者として働くAさんは、ある日の夜、酒に酔って暴行事件を起こしてしまいました。
その場で京都府南丹警察署に通報され、暴行事件の被疑者として現行犯逮捕されてしまったAさんでしたが、ひどく酒に酔っていたため、暴行事件を起こした当時のことを一切覚えてしませんでした。
逮捕後の取調べでも、事件当時のことを聞かれても記憶にないAさんに対し、警察官は「何も覚えていないのならこのまま勾留することになるかもしれない」と言いました。
しかし、Aさんは会社経営者として、連日多くの取引や商談を抱えており、逮捕・勾留によって身体拘束が続けば会社にダメージが出てしまうことになります。
Aさんの逮捕を知ったAさんの妻は、どうにかAさんを早期に釈放できないかと、弁護士を探しましたが、夜中であることもあって連絡がつく弁護士事務所がなかなかありません。
(※この事例はフィクションです。)
~勾留~
勾留とは、被疑者または被告人を刑事施設に拘禁することをいいます。
刑罰としての「拘留」と読み方が同じであるため、混同されがちですが、この勾留は刑罰ではなく、勾留をすることで被疑者・被告人の逃亡または罪証隠滅を防ぐのです。
勾留は、逮捕に引き続く身体拘束であり、逮捕されてから最大72時間以内に勾留がなされるかどうかが決まります。
逮捕された被疑者は、逮捕されたときから48時間以内に検察官のもとへと送られます。
これを「送検」といい、ニュースなどでも使われるワードです。
送検された被疑者は、検察官の取調べを経て、送検から24時間以内に勾留請求をされるかどうか決められます。
検察官が勾留の必要があると判断した場合には、裁判所に対して勾留請求がなされ、請求が認められれば最大10日間、延長されればさらに最大10日間、合計最大20日間の勾留となります。
勾留されてしまうと、家族はもちろんのこと、被疑者が普段働いている会社にも被害が及びます。
具体的には、勾留によって長期に家を空けることで逮捕・勾留の事実が外部に知られてしまったり、家事が回らなくなってしまったり、会社を欠勤してしまったりすることが挙げられます。
先述したように、勾留は延長を含めれば最大で20日間にも及びます。
1か月弱も外に出られず連絡もできない事態になってしまうわけですから、どうにか勾留を避けたいと考える方は多いでしょう。
~勾留回避の弁護活動~
勾留を回避する手段の1つとして、弁護士が検察官へ勾留請求をしないように求め、交渉することが挙げられます。
罪証の隠滅が不可能であることや家族の監督により逃亡が行えないことを理由に、勾留の必要がないことを訴えることが考えられるでしょう。
また、勾留により働いている会社に迷惑がかかることや失業により家族を養えなくなること等の事情についても訴え、勾留請求をしないよう求めることも考えられます。
それでも勾留請求がなされた場合には、勾留請求先の裁判官に対して勾留請求を認めないように求めることになります。
これらの勾留回避活動をしても、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれが認められれば、容疑者は勾留されることとなります。
しかし、勾留が決まったとしても勾留に対して準抗告という、不服申し立てを行うことができます。
釈放を求める場合には、ここで再度、勾留要件を充たさないことを説明していくことになります。
以上のような方法で、弁護士は勾留を避けたり、勾留を短くしたりすることを求めていくことができます。
ですが、これらの活動を充実して行うためには、早期の弁護士への相談・依頼が重要です。
今まで見てきたように、逮捕から勾留が決定されるまでは短い時間の間に行われることから、釈放を求める機会を全て生かすには、逮捕からなるべく早い段階で弁護士が活動を始める必要があるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、24時間いつでも弊所弁護士によるサービスの予約・申し込み受付を行っています。
夜中に起きた刑事事件や逮捕でも、すぐに弁護士のサービスを予約・申し込みできるため、活動を素早く開始することにつながります。
まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
チラシを貼って条例違反
チラシを貼って条例違反
チラシを貼って条例違反となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市東山区に住んでいるAさんは、報道で話題になっている感染症について、感染者数の多い国の人や感染者である人から自分が住んでいる地域にも感染が広まるのではないかと心配していました。
Aさんは心配の余り、京都市東山区の道路にある電柱に、「感染者の多いX国の人は来るな」といった内容のチラシを貼っていきました。
しかし、そのチラシを貼っているところを目撃した通行人とAさんがトラブルになり、さらにその様子を目撃した人が京都府東山警察署に通報。
駆け付けた警察官がAさんに事情を聞いたところ、Aさんがチラシを電柱に貼っていることがわかりました。
すると、Aさんは京都市屋外広告物条例違反の容疑で京都府東山警察署に現行犯逮捕されることになりました。
(※令和2年2月21日NHK NEWS WEB配信記事を基にしたフィクションです。)
・チラシを貼ったら刑事事件?
今回のAさんはチラシを貼ったことで逮捕までされてしまっています。
記事を読まれている方の中には、「チラシを貼ったくらいで逮捕されるなんて大袈裟だ」「チラシくらいで犯罪になるのか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実はこうした行為も犯罪となり、態様等によっては逮捕されてしまう可能性も否定できないのです。
京都市では、「京都市屋外広告物等に関する条例(以下、「京都市屋外広告物条例」)」という条例が定められています。
刑事事件に関連する条例というと、痴漢や盗撮等で適用される各都道府県の迷惑防止条例が思い浮かびやすいですが、条例は都道府県単位だけでなく、市町村単位でも制定することができます。
今回の京都市屋外広告物条例は、京都市で定められている条例ですから、その効力の及ぶ範囲は京都市内に限られるということになります。
この京都市屋外広告物条例では、以下のような条文が定められています。
京都市屋外広告物条例5条
何人も、次に掲げる物件に、屋外広告物を表示し、又は掲出物件を設置してはならない。
ただし、法定屋外広告物、管理用屋外広告物及び公益、慣例その他の理由によりやむを得ないものとして別に定める屋外広告物並びにこれらの掲出物件については、この限りでない。
(略)
6号 前各号に掲げるもののほか、電柱、公衆電話所、アーケードの支柱、擁壁、煙突、電波塔、高架水槽、彫像、観覧車その他の建築物等で、その物に屋外広告物を表示し、又は掲出物件を設置することにより都市の景観に悪影響を及ぼすおそれがあるものとして別に定めるもの
つまり、京都市内では、やむを得ない理由なしに電柱等に「屋外広告物」を表示等することは禁止されているのです。
では、その「屋外広告物」とは何かというと、以下のように決められています。
京都市屋外広告物条例2条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1号 屋外広告物 屋外広告物法(以下「法」という。)第2条第1項に規定する屋外広告物をいう。
屋外広告物法2条1項
この法律において「屋外広告物」とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。
このことから、京都市屋外広告物条例が電柱等に表示してはいけないとしている「屋外広告物」には、Aさんの貼り付けたようなチラシのような貼り紙も含まれるであろうことがわかります。
Aさんはこのチラシを無許可で電柱に貼り付けていますし、その理由も「法定屋外広告物、管理用屋外広告物及び公益、慣例その他の理由によりやむを得ないもの」でもないでしょう(この対象となる物は、具体的には京都市屋外広告物条例施行規則4条に定められています。)。
そのため、Aさんは京都市屋外広告物条例違反となると考えられるのです。
今回のAさんのように、電柱等にチラシを貼って京都市屋外広告物条例違反となった場合、30万円以下の罰金に処せられます(京都市屋外広告物条例47条1号)。
30万円以下の罰金という法定刑の犯罪であるため、原則として通常逮捕や緊急逮捕はされないのですが、今回のAさんのような現行犯逮捕の場合は逮捕されてしまうこともあり得ます。
自治体ごとに異なる法定刑や内容が決まっている条例違反事件では、どのような見通しであるのか、どういった犯罪であるのかといったこともなかなか分かりづらいでしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、条例違反事件のご相談・ご依頼も受け付けていますので、条例違反の刑事事件に関する不安や疑問もお気軽にご相談ください。
お問い合わせ・お申込みは0120-631-881でいつでも受け付けています。
殴らなくても暴行罪で逮捕
殴らなくても暴行罪で逮捕
殴らなくても暴行罪で逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、以前から度々ご近所トラブルを起こしていた相手である隣人のVさんを、京都府城陽市にあるファミレスで見かけました。
AさんはVさんに対する恨みを募らせていたため、Vさんに嫌がらせをしてやろうと、ファミレスに置いてあった塩を手に取り、Vさんに向かって塩を振りかけました。
その塩はVさんの頭や顔にかかり、Vさんは驚き、店員に京都府城陽警察署に通報するよう頼みました。
突然の店内トラブルに驚いた店員が京都府城陽警察署に通報した結果、Aさんは駆け付けた警察官により、暴行罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが暴行罪の容疑で逮捕されたと聞き急いで刑事事件を取り扱っている弁護士に逮捕されたAさんのもとへ行ってもらうことにしました。
逮捕され京都府城陽警察署に留置されていたAさんは、弁護士に直接殴っているわけでもないのに暴行罪で逮捕されたことに不満があると相談しましたが、弁護士から暴行罪にあたる旨を説明されました。
(※この事例は福岡高判昭和46.10.11を基にしたフィクションです。)
~塩をかけて暴行罪の「暴行」に?~
刑事事件となる犯罪の中でも、暴行罪は比較的耳にしやすい犯罪のうちの1つではないでしょうか。
法律上の暴行罪は、「暴行を加えたものが人を傷害するに至らなかったとき」に成立します。
刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
では、その暴行罪の「暴行」とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。
一般的にイメージされるであろう、殴る・蹴るといった直接的な暴力については、もちろん暴行罪の「暴行」に含まれます。
そして、それだけではなく、加害者の行為が被害者の身体に直接触れていなくとも、暴行罪は成立します。
例えば、今回のようなケースでは、Aの行った行為は、Vに塩を振りかけるというもので、直接殴ったり叩いたりしたわけではありませんが、このような場合でも暴行に含まれる可能性があります。
他にも髪の毛を不法に切断したり、拡声器を使って耳元で大声を叫んだりする行為も暴行罪とみなされた例もあります。
つまり、被害者の身体に触れていなくとも、被害者の身体に向けられた行為がその相手に不法に不快や苦痛を与えていれば、暴行罪は認められうるのです。
しかし、今回取り上げたような塩を振りかける行為が必ず暴行罪の「暴行」として認められるわけではありません。
暴行罪に当たるかの判断は難しく、一概にどの行為が「暴行」になるかは断定できないのです。
ですから、もし暴行罪の容疑で逮捕されてしまった、取調べを受けることになったという場合には、一度、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
~暴行事件を起こしてしまったら~
暴行事件の場合、今回のVさんのように被害者が存在します。
終局処分で有利な結果を得るためにも、Aさんのように逮捕され身体拘束をされている場合には釈放を求めるためにも、被害者の方への謝罪や弁償を行い、示談を締結することは非常に重要なことです。
ですが、こういった暴行事件などの被害に遭われた場合、いくら謝罪をしたいと言われても、直接会ったり個人情報を教えたりするのは怖いと考える被害者の方も多くいらっしゃいます。
そうした場合であっても、弁護士が間に入ることで、被害者の方の不安を軽減しながら示談交渉を行うことが期待できます。
弁護士が示談交渉を行う場合、被害者の方の個人情報は弁護士限りでとどめられるため、被害者の方は上記のような心配をすることなく謝罪や弁償の話を聞くことができるため、話を聞いていただくハードルを下げることができるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士は、刑事事件専門の暴行事件にも強い弁護士です。
京都府の刑事事件・逮捕に対応していますので、京都府の暴行事件やその逮捕にお困りの際は、一度ご相談ください。