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置き引きで出頭要請
置き引きで出頭要請
置き引きで出頭要請を受けたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
京都府綾部市内の駅近くのファミリーレストランにいたAさんは、Vさんが同じフロアのトイレに行くために席を外したことに乗じて、Vさんの席に置いてあった財布を盗み店を後にした。
5分後、席に戻ったVさんは財布が盗まれたことに気付き、京都府綾部警察署に通報した。
通報を受けた京都府綾部警察署の警察官は捜査を開始し、店の防犯カメラからAさんを特定。
後日、Aさんへ京都府綾部警察署から連絡があり、Aさんは置き引き事件の事情聴取のために京都府綾部警察署へ出頭するように指示を受けました。
(事例はフィクションです。)
本件はいわゆる「置き引き」の事例ですが、刑法的には窃盗罪又は占有離脱物横領罪に該当する行為です。
この2つの犯罪はどのように区別されるのでしょうか。
(1)窃盗罪
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪にいう「窃取」とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反し自己又は第三者の占有に移転させる行為をいいます。
なお、騙したり脅すなどして占有者の(瑕疵ある)意思による財物の交付を受けた場合は、詐欺罪や恐喝罪になります。
ここでの「意思に反して」とは、占有者の隙を突いて財物を奪い取るひったくりのようなケースもあれば、被害者の目の届かないところに置いてある財物を持ち去る置き引きのようなケースもあります。
注意して頂きたいのは、窃盗罪の条文に「他人が占有する財物」とあるように、財物の所有権は問題とされていないことです。
したがって、一度盗られた自分の持ち物を取り返そうと犯人(占有者)から奪い返すことも、窃盗罪の実行行為に当たることになります。
(2)占有離脱物横領罪
刑法第254条(占有離脱物横領罪)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。
他人の占有下にある財物を盗った場合は窃盗罪になりますが、占有下にない財物を盗った、つまり持ち主が財物を置いて完全に立ち去ってしまっていた時にその財物を盗った場合などには、占有離脱物横領罪に問われる可能性が出てきます。
占有離脱物横領罪の「横領」とは、不法領得の意思の発現行為一切をとされています。
そして、ここでの「不法領得の意思」とは、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいいます。
したがって、端的にいえば、「横領」とは、その物を自分の所有物として扱うことを意味します。
所有物として扱うということは、壊したり、捨てたりすることもできますので、これらの目的での占有離脱物横領罪も罰せられることが考えられます。
この点は、壊したり隠す目的での行為は処罰されない窃盗罪とは異なります。
(3)窃盗罪?占有離脱物横領罪?
窃盗罪か占有離脱物横領罪のどちらかに該当するかは、財物に対して占有が及んでいるか否かで決まります。
過去の判例や裁判例では、どのように評価しているのでしょうか。
〇窃盗罪が成立したケース
バスの乗車待ちの列に並んでいたV1さんが、列を前進する際に傍に置いていたカメラを置きっ放しにしていた。途中で気付いて引き返したが、既にBさんに持ち去られた後だった。
このケースでは、置き忘れたカメラとV1さんが気付いて取りに戻ろうとした場所との距離が20メートル弱、置き忘れてから取りに戻るまでの時間が5分程度でした。
最高裁判所はカメラについて未だV1さんの占有下にあると判断して、Bさんの行為を窃盗罪に当たると判断しました。
〇占有離脱物横領罪が成立したケース
V2さんは、大規模スーパーの6階のベンチに財布を置いたまま地下1階に降りてしまった。約10分後そのことに気が付いたV2さんが取りに戻った時には、既にCさんが持ち去っていた。
高等裁判所は置き忘れた地点とV2さんが引き返そうとした地点との具体的な距離を明示せず、フロア数を示したのみでしたが、このケースの場合はV2さんの占有が及んでいないと判断しました。
さて、以上を踏まえて今回のケースを検討します。
通常ファミリーレストランの飲食スペースとトイレは本件と同様に同じフロア、離れていても1~2階程度の隔たりでしかないと判断できます。
距離としても数メートルでしょう。
Vさんが不在にしていた時間も5分程度であることを考慮して、財布にはVさんの占有が及んでいると判断できます。
つまり、Aさんの置き引き行為は窃盗罪であると判断される可能性が高いと考えられるのです。
今回のケースでは、逮捕による身柄拘束がされることはありませんでした。
もっとも、事件を早期に解決するためには被害者の方への一刻も早い謝罪や示談を進める必要があります。
実際は、被疑者自身が直接被害者の方と謝罪や接触をすることは難しく、接触できた場合にも被害感情が峻烈になる場合もあります。
被害者対応に関して、間に入る弁護士の有無は非常に重要です。
早期に上記の対応がなされれば、被害届の取下げや不起訴処分での終結になる可能性も十分にあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、窃盗・占有離脱物横領事件の経験豊富な弁護士による、身柄の早期解放や示談交渉について最善のアドバイスを受けることができます。
置き引き事件にお困りの際は、遠慮なく弊所弁護士までご相談ください。
少年事件で退学阻止
少年事件で退学阻止
少年事件で退学阻止を目指す弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府舞鶴市に住んでいる高校生のAくん(17歳)は、少年事件を起こして、京都府舞鶴警察署に任意同行されました。
Aくんは、逮捕まではされなかったものの、後日再び取調べに京都府舞鶴警察署まで出頭するよう言われました。
Aくんの両親は、今回の少年事件によって、Aくんが退学になったりないかどうか不安に思い、少年事件に強い弁護士の初回無料法律相談を受け、今後の対策や可能な弁護活動について詳しく聞いてみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・少年事件を起こしたら退学?
上記事例のAくんは、逮捕まではされていないものの、少年事件を起こして警察にお世話になっている状態です。
逮捕されずに捜査が進む場合、在宅のまま過ごし、取調べ等の必要があるときだけ警察署などに呼ばれて捜査を受ける、という形で進んでいきます。
このような状態の時に、少年本人やそのご家族が心配することの1つとして挙げられるのが、学校はどうなるのか、という問題です。
実際に、少年事件を起こしてしまったことで、学校を退学になってしまうのではないか、と心配される少年やご両親は多くいらっしゃいます。
現在では、少年事件を起こして警察から取調べを受けたり逮捕されたり、ということになれば、原則として警察などから学校へ通知が行く制度になっています。
そのため、少年事件を起こしたことを学校へ知られないようにすることを完璧に防げる、というわけではありません。
しかし、弁護士が学校への通知を控えてもらえるように警察に働きかけることはできますから、まずは弁護士から警察へ打診してもらうことも1つの手でしょう。
さらに、弁護士が少年事件のサポートにつくことで、もしも学校への通知が行われたとしても、その後少年が更生し、再び少年事件を起こさないようにするための環境調整が行われていることなどを主張することで、退学といった厳しい処分を避けてもらえるよう、サポートすることもできます。
そもそも、今回のAさんは在宅で捜査を受けていますが、もしも逮捕されてしまっていた場合、釈放を目指さなければ学校に事件が露見してしまったり、欠席日数の超過により単位を落としてしまったり停学や留年となってしまったりすることも考えられますから、そういった場合にも退学回避のためには弁護士のサポートが必要になるでしょう。
少年事件によっては、弁護士が学校と協力し、少年の更生のための環境を整えることもありますから、在宅捜査なのか逮捕されているのかに関係なく、まずは弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。
少年にとって、自身の通う学校は、自分の生活の大きな部分を占める大切な場所です。
少年事件を起こしてしまっても、今まで頑張ってきた学校で更生に向けてやり直したいと考える少年やご両親は多いと思います。
少年事件の終局処分では、少年が再度犯罪をしないか、きちんと更生できる環境であるかどうかといったことが重視され、処分が決定されることから、就学先は重要な要素の1つとなります。
弁護士と協力しながら、就学先の確保や進路の決定などをすることで、少年事件でより適切な処分を判断してもらうことにもつながっていきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件・少年事件専門の弁護士が、少年事件を起こしてしまった少年自身やそのご家族のサポートを行います。
学校を退学になるのを避けたいと御悩みの方は、一度、弊所の弁護士にご相談ください。
初回無料法律相談のお申込みや、逮捕されてしまった方向けの初回接見サービスのお申込みは、0120-631-881から受け付けておりますので、お気軽にお電話ください。
触らせて強制わいせつ罪
触らせて強制わいせつ罪
触らせて強制わいせつ罪になった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市北区に住んでいるAさんは、小さな女の子に興味を持っていました。
ある日Aさんが京都市北区内の道路を通行中、11歳のVさんがAさんの前を歩いていました。
Aさんは欲を抑えられなくなり、Vさんを人気のない路地裏に連れ込むと、Vさんの手を掴み、VさんにAさん自身の下半身を触らせました。
Vさんが帰宅後、両親に報告したことから京都府北警察署に通報され、その後の捜査でAさんの犯行が発覚。
Aさんは強制わいせつ罪の容疑で京都府北警察署に逮捕されました。
(※この事例はフィクションです。)
・触らせても強制わいせつ罪?
強制わいせつ罪は、刑法に規定されている犯罪です。
刑法176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
この強制わいせつ罪の条文を見ると、「加害者が被害者に触った」という態様の時に強制わいせつ罪が成立するように見えます。
しかし、今回の事例のように「相手に触らせた」という場合でも、「わいせつな行為をした」とみなされます。
というのも、強制わいせつ罪の「わいせつな行為」というのは、大まかに言えば被害者の性的羞恥心を害する行為であると解されているためです。
これは、強制わいせつ罪は、性的自由を守るための犯罪であるためです。
今回のAさんのように、自身の下半身を触らせるといった行為は、被害者の性的羞恥心を害する行為であると考えられますから、たとえ自分が相手の身体を触るようないわゆる「痴漢」の態様でなかったとしても、強制わいせつ罪の「わいせつな行為」となる可能性があるのです。
・暴行・脅迫がなくても強制わいせつ罪?
今回のAさんの行為が強制わいせつ罪の「わいせつな行為」に当たりうることは先ほど確認しましたが、ここで、「今回のAさんはVさんに対して暴行も脅迫もしていないのではないか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
たしかに、強制わいせつ罪の条文の前段には、「暴行又は脅迫を用いて」わいせつな行為をした者に強制わいせつ罪が成立する旨が書いてあります。
しかし、強制わいせつ罪の条文の但し書き部分を見てみると、被害者が13歳未満の者の場合には、わいせつな行為をするだけで強制わいせつ罪が成立すると決められていることが分かります。
すなわち、今回のAさんは、暴行や脅迫を加えていなくとも、被害者のVさんが13歳未満であることから、わいせつな行為をした時点で強制わいせつ罪の成立が考えられるということになるのです。
・強制わいせつ事件と弁護活動
強制わいせつ事件で考えられる弁護活動としては、まず被害者との示談交渉が考えられるでしょう。
しかし、強制わいせつ事件では、被害者の処罰感情が強いことが多く、当事者が謝罪の意向を示してもそもそも取り次いでもらえないということも多いです。
特に、今回のAさんのような被害者が幼い強制わいせつ事件では、謝罪・示談交渉の相手は被害者の親となることが多く、処罰感情が強くなるのも自然なことといえます。
こうした場合でも、専門家であり第三者である弁護士を通じての謝罪・示談交渉の意思を示すことで、話を聞いてくださる被害者やその親御さんもいらっしゃいます。
ですから、強制わいせつ事件の示談交渉や弁護活動については、まずは一度弁護士に相談してみることが望ましいでしょう。
京都の強制わいせつ事件でお困りの際は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士までご相談ください。
暴行事件で勾留回避
暴行事件で勾留回避
暴行事件での勾留回避活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都府南丹市にある会社で経営者として働くAさんは、ある日の夜、酒に酔って暴行事件を起こしてしまいました。
その場で京都府南丹警察署に通報され、暴行事件の被疑者として現行犯逮捕されてしまったAさんでしたが、ひどく酒に酔っていたため、暴行事件を起こした当時のことを一切覚えてしませんでした。
逮捕後の取調べでも、事件当時のことを聞かれても記憶にないAさんに対し、警察官は「何も覚えていないのならこのまま勾留することになるかもしれない」と言いました。
しかし、Aさんは会社経営者として、連日多くの取引や商談を抱えており、逮捕・勾留によって身体拘束が続けば会社にダメージが出てしまうことになります。
Aさんの逮捕を知ったAさんの妻は、どうにかAさんを早期に釈放できないかと、弁護士を探しましたが、夜中であることもあって連絡がつく弁護士事務所がなかなかありません。
(※この事例はフィクションです。)
~勾留~
勾留とは、被疑者または被告人を刑事施設に拘禁することをいいます。
刑罰としての「拘留」と読み方が同じであるため、混同されがちですが、この勾留は刑罰ではなく、勾留をすることで被疑者・被告人の逃亡または罪証隠滅を防ぐのです。
勾留は、逮捕に引き続く身体拘束であり、逮捕されてから最大72時間以内に勾留がなされるかどうかが決まります。
逮捕された被疑者は、逮捕されたときから48時間以内に検察官のもとへと送られます。
これを「送検」といい、ニュースなどでも使われるワードです。
送検された被疑者は、検察官の取調べを経て、送検から24時間以内に勾留請求をされるかどうか決められます。
検察官が勾留の必要があると判断した場合には、裁判所に対して勾留請求がなされ、請求が認められれば最大10日間、延長されればさらに最大10日間、合計最大20日間の勾留となります。
勾留されてしまうと、家族はもちろんのこと、被疑者が普段働いている会社にも被害が及びます。
具体的には、勾留によって長期に家を空けることで逮捕・勾留の事実が外部に知られてしまったり、家事が回らなくなってしまったり、会社を欠勤してしまったりすることが挙げられます。
先述したように、勾留は延長を含めれば最大で20日間にも及びます。
1か月弱も外に出られず連絡もできない事態になってしまうわけですから、どうにか勾留を避けたいと考える方は多いでしょう。
~勾留回避の弁護活動~
勾留を回避する手段の1つとして、弁護士が検察官へ勾留請求をしないように求め、交渉することが挙げられます。
罪証の隠滅が不可能であることや家族の監督により逃亡が行えないことを理由に、勾留の必要がないことを訴えることが考えられるでしょう。
また、勾留により働いている会社に迷惑がかかることや失業により家族を養えなくなること等の事情についても訴え、勾留請求をしないよう求めることも考えられます。
それでも勾留請求がなされた場合には、勾留請求先の裁判官に対して勾留請求を認めないように求めることになります。
これらの勾留回避活動をしても、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれが認められれば、容疑者は勾留されることとなります。
しかし、勾留が決まったとしても勾留に対して準抗告という、不服申し立てを行うことができます。
釈放を求める場合には、ここで再度、勾留要件を充たさないことを説明していくことになります。
以上のような方法で、弁護士は勾留を避けたり、勾留を短くしたりすることを求めていくことができます。
ですが、これらの活動を充実して行うためには、早期の弁護士への相談・依頼が重要です。
今まで見てきたように、逮捕から勾留が決定されるまでは短い時間の間に行われることから、釈放を求める機会を全て生かすには、逮捕からなるべく早い段階で弁護士が活動を始める必要があるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、24時間いつでも弊所弁護士によるサービスの予約・申し込み受付を行っています。
夜中に起きた刑事事件や逮捕でも、すぐに弁護士のサービスを予約・申し込みできるため、活動を素早く開始することにつながります。
まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
チラシを貼って条例違反
チラシを貼って条例違反
チラシを貼って条例違反となったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市東山区に住んでいるAさんは、報道で話題になっている感染症について、感染者数の多い国の人や感染者である人から自分が住んでいる地域にも感染が広まるのではないかと心配していました。
Aさんは心配の余り、京都市東山区の道路にある電柱に、「感染者の多いX国の人は来るな」といった内容のチラシを貼っていきました。
しかし、そのチラシを貼っているところを目撃した通行人とAさんがトラブルになり、さらにその様子を目撃した人が京都府東山警察署に通報。
駆け付けた警察官がAさんに事情を聞いたところ、Aさんがチラシを電柱に貼っていることがわかりました。
すると、Aさんは京都市屋外広告物条例違反の容疑で京都府東山警察署に現行犯逮捕されることになりました。
(※令和2年2月21日NHK NEWS WEB配信記事を基にしたフィクションです。)
・チラシを貼ったら刑事事件?
今回のAさんはチラシを貼ったことで逮捕までされてしまっています。
記事を読まれている方の中には、「チラシを貼ったくらいで逮捕されるなんて大袈裟だ」「チラシくらいで犯罪になるのか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実はこうした行為も犯罪となり、態様等によっては逮捕されてしまう可能性も否定できないのです。
京都市では、「京都市屋外広告物等に関する条例(以下、「京都市屋外広告物条例」)」という条例が定められています。
刑事事件に関連する条例というと、痴漢や盗撮等で適用される各都道府県の迷惑防止条例が思い浮かびやすいですが、条例は都道府県単位だけでなく、市町村単位でも制定することができます。
今回の京都市屋外広告物条例は、京都市で定められている条例ですから、その効力の及ぶ範囲は京都市内に限られるということになります。
この京都市屋外広告物条例では、以下のような条文が定められています。
京都市屋外広告物条例5条
何人も、次に掲げる物件に、屋外広告物を表示し、又は掲出物件を設置してはならない。
ただし、法定屋外広告物、管理用屋外広告物及び公益、慣例その他の理由によりやむを得ないものとして別に定める屋外広告物並びにこれらの掲出物件については、この限りでない。
(略)
6号 前各号に掲げるもののほか、電柱、公衆電話所、アーケードの支柱、擁壁、煙突、電波塔、高架水槽、彫像、観覧車その他の建築物等で、その物に屋外広告物を表示し、又は掲出物件を設置することにより都市の景観に悪影響を及ぼすおそれがあるものとして別に定めるもの
つまり、京都市内では、やむを得ない理由なしに電柱等に「屋外広告物」を表示等することは禁止されているのです。
では、その「屋外広告物」とは何かというと、以下のように決められています。
京都市屋外広告物条例2条
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1号 屋外広告物 屋外広告物法(以下「法」という。)第2条第1項に規定する屋外広告物をいう。
屋外広告物法2条1項
この法律において「屋外広告物」とは、常時又は一定の期間継続して屋外で公衆に表示されるものであつて、看板、立看板、はり紙及びはり札並びに広告塔、広告板、建物その他の工作物等に掲出され、又は表示されたもの並びにこれらに類するものをいう。
このことから、京都市屋外広告物条例が電柱等に表示してはいけないとしている「屋外広告物」には、Aさんの貼り付けたようなチラシのような貼り紙も含まれるであろうことがわかります。
Aさんはこのチラシを無許可で電柱に貼り付けていますし、その理由も「法定屋外広告物、管理用屋外広告物及び公益、慣例その他の理由によりやむを得ないもの」でもないでしょう(この対象となる物は、具体的には京都市屋外広告物条例施行規則4条に定められています。)。
そのため、Aさんは京都市屋外広告物条例違反となると考えられるのです。
今回のAさんのように、電柱等にチラシを貼って京都市屋外広告物条例違反となった場合、30万円以下の罰金に処せられます(京都市屋外広告物条例47条1号)。
30万円以下の罰金という法定刑の犯罪であるため、原則として通常逮捕や緊急逮捕はされないのですが、今回のAさんのような現行犯逮捕の場合は逮捕されてしまうこともあり得ます。
自治体ごとに異なる法定刑や内容が決まっている条例違反事件では、どのような見通しであるのか、どういった犯罪であるのかといったこともなかなか分かりづらいでしょう。
刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、条例違反事件のご相談・ご依頼も受け付けていますので、条例違反の刑事事件に関する不安や疑問もお気軽にご相談ください。
お問い合わせ・お申込みは0120-631-881でいつでも受け付けています。
殴らなくても暴行罪で逮捕
殴らなくても暴行罪で逮捕
殴らなくても暴行罪で逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、以前から度々ご近所トラブルを起こしていた相手である隣人のVさんを、京都府城陽市にあるファミレスで見かけました。
AさんはVさんに対する恨みを募らせていたため、Vさんに嫌がらせをしてやろうと、ファミレスに置いてあった塩を手に取り、Vさんに向かって塩を振りかけました。
その塩はVさんの頭や顔にかかり、Vさんは驚き、店員に京都府城陽警察署に通報するよう頼みました。
突然の店内トラブルに驚いた店員が京都府城陽警察署に通報した結果、Aさんは駆け付けた警察官により、暴行罪の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、Aさんが暴行罪の容疑で逮捕されたと聞き急いで刑事事件を取り扱っている弁護士に逮捕されたAさんのもとへ行ってもらうことにしました。
逮捕され京都府城陽警察署に留置されていたAさんは、弁護士に直接殴っているわけでもないのに暴行罪で逮捕されたことに不満があると相談しましたが、弁護士から暴行罪にあたる旨を説明されました。
(※この事例は福岡高判昭和46.10.11を基にしたフィクションです。)
~塩をかけて暴行罪の「暴行」に?~
刑事事件となる犯罪の中でも、暴行罪は比較的耳にしやすい犯罪のうちの1つではないでしょうか。
法律上の暴行罪は、「暴行を加えたものが人を傷害するに至らなかったとき」に成立します。
刑法208条(暴行罪)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
では、その暴行罪の「暴行」とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。
一般的にイメージされるであろう、殴る・蹴るといった直接的な暴力については、もちろん暴行罪の「暴行」に含まれます。
そして、それだけではなく、加害者の行為が被害者の身体に直接触れていなくとも、暴行罪は成立します。
例えば、今回のようなケースでは、Aの行った行為は、Vに塩を振りかけるというもので、直接殴ったり叩いたりしたわけではありませんが、このような場合でも暴行に含まれる可能性があります。
他にも髪の毛を不法に切断したり、拡声器を使って耳元で大声を叫んだりする行為も暴行罪とみなされた例もあります。
つまり、被害者の身体に触れていなくとも、被害者の身体に向けられた行為がその相手に不法に不快や苦痛を与えていれば、暴行罪は認められうるのです。
しかし、今回取り上げたような塩を振りかける行為が必ず暴行罪の「暴行」として認められるわけではありません。
暴行罪に当たるかの判断は難しく、一概にどの行為が「暴行」になるかは断定できないのです。
ですから、もし暴行罪の容疑で逮捕されてしまった、取調べを受けることになったという場合には、一度、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
~暴行事件を起こしてしまったら~
暴行事件の場合、今回のVさんのように被害者が存在します。
終局処分で有利な結果を得るためにも、Aさんのように逮捕され身体拘束をされている場合には釈放を求めるためにも、被害者の方への謝罪や弁償を行い、示談を締結することは非常に重要なことです。
ですが、こういった暴行事件などの被害に遭われた場合、いくら謝罪をしたいと言われても、直接会ったり個人情報を教えたりするのは怖いと考える被害者の方も多くいらっしゃいます。
そうした場合であっても、弁護士が間に入ることで、被害者の方の不安を軽減しながら示談交渉を行うことが期待できます。
弁護士が示談交渉を行う場合、被害者の方の個人情報は弁護士限りでとどめられるため、被害者の方は上記のような心配をすることなく謝罪や弁償の話を聞くことができるため、話を聞いていただくハードルを下げることができるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の弁護士は、刑事事件専門の暴行事件にも強い弁護士です。
京都府の刑事事件・逮捕に対応していますので、京都府の暴行事件やその逮捕にお困りの際は、一度ご相談ください。
性犯罪で子どもが逮捕
性犯罪で子どもが逮捕
性犯罪で子どもが逮捕されてしまった際の対応について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Bさんは、高校1年生の息子Aさんと夫のCさんの3人で、京都府城陽市に住んでいます。
ある日、夜遅くになってもAさんが帰宅せず、学校に問い合わせてもAさんは帰宅したとの話でした。
そこでBさんとCさんが最寄の京都府城陽警察署に連絡してみたところ、警察官から、「息子さんは京都府城陽警察署にいるが、詳しいことは話せない。女性の関係で少し話を聞いている」と言われました。
BさんとCさんは心配して京都府城陽警察署を訪れましたが、警察官から「息子さんは逮捕されている。今日は息子さんとは会えない」と言われてしまいました。
Aさんに何が起こったのかも分からない状況に困ったBさん・Cさんは、弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・逮捕されている?どんな容疑をかけられている?
今回の事例のように、家族が帰宅せず、警察署に問い合わせたらその警察署で話を聞かれていた、というケースはしばしば見られます。
こうした場合、すでに刑事事件・少年事件の被疑者として逮捕されていたり、逮捕される予定であったりということを警察官から伝えられる場合もありますし、刑事事件・少年事件の被疑者となっていることや逮捕についてぼかした回答しか得られないという場合もあります。
というのも、刑事事件・少年事件の被疑者となっていることや逮捕されていることは、非常にデリケートな情報であり、他人に勝手に伝えることは避けなければならないためです。
もしも家族を装った他人に逮捕の事実等を漏らしてしまえば個人情報の漏洩をしてしまうことになりますから、警察も慎重な対応をしています。
ですから、問い合わせた時に回答をもらえないということもあり得るのです。
同様に、刑事事件・少年事件の被疑者として話を聞かれていることや逮捕されていること等が分かったとしても、どういった犯罪の容疑で話を聞かれているのか、逮捕されているのかといったことを詳しく聞かせてもらえないこともあります。
Aさんの事例のように、「何関連で話を聞かれている」と大まかな説明を受けるだけの場合もあります。
このような場合、この先の手続きや対応はどのようになるのか、そもそもどういった犯罪の容疑で被疑者になったり逮捕されたりしているのか、ご家族としては心配や不安が大きい状況となってしまいます。
そこで、こうした場合には弁護士への相談が効果的です。
もしもすでに逮捕されている場合には、弁護士が逮捕されている方のもとへ接見に行くことができます。
例えば、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部には初回接見サービスがあります。
Aさんの事例でそうであったように、逮捕直後は原則として一般の方の面会はできません。
ごくまれに警察官が時間を取ってくれるということもあるようですが、基本的には家族であっても面会はかないません。
だからこそ、先ほどのように全く事情の分からない中で逮捕の事実のみ知って不安が大きい、という状況も少なくないのです。
しかし、弁護士の場合、たとえ逮捕直後であっても接見(面会)することが可能となります。
さらに、弁護士が接見する場合には、時間の制限はなく、立ち合いの警察官もいません。
ですから、どういった容疑で逮捕されているのか、本人の認識はどういったものなのか、取調べに対応する際の注意や被疑者の権利はどのようなものか、ということを刑事事件・少年事件の専門家である弁護士と詳しく話すことができるのです。
もしも逮捕されずに自宅へ帰されるような場合にも、極力早めに弁護士に相談することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部の場合、初回無料法律相談が効果的です。
逮捕されていないからといって、刑事事件・少年事件を放置していいことにはなりません。
刑事事件・少年事件の流れや権利を知って取調べ等に臨むことで、意図しない自白をしてしまったり、状況が分からないまま手続きが進んでしまったりというリスクを下げることができます。
特に、今回のAさんのような性犯罪を起こしてしまったであろう少年事件の場合、少年自身が家族に事件について話すことを避けたがってしまうことも考えられます。
事件解決のためにも再犯防止のためにも、第三者であり専門家でもある弁護士のサポートを受けながら更生を目指すことが有効な手段の1つです。
今回の事例のように、子どもや家族が刑事事件・少年事件に関わったようだが今どういった状況なのか分からないという場合にも、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部のお問い合わせ用フリーダイヤル0120-631-881にお電話ください。
専門スタッフがご相談者様の状況に合わせたサービスをご案内させていただきます。
新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に
新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に
新型感染症を偽って偽計業務妨害罪に問われたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
京都市伏見区に住むAさんは、ニュース番組で、新型感染症が流行しているニュースを知りました。
Aさんは、日頃から近所にあるコンビニエンスストアの接客態度が気に食わないと思っていたことから、「新型感染症にかかっていると言って迷惑をかけてやろう。営業できなくなって痛い目を見ればいい」と思い、京都市伏見区にあるコンビニエンスストアに行くと、店員に向かって「俺は新型感染症にかかっている」「うつるから消毒した方がいい」などと告げました。
Aさんの言動により、コンビニエンスストアは保健所へ連絡をするなどしたうえで、店内を消毒するために数時間閉店するなどの対応を取りました。
しかし、その後、Aさんが嘘をついていたことが発覚し、Aさんは偽計業務妨害罪の容疑で京都府伏見警察署に逮捕されることとなりました。
(※令和2年4月5日YAHOO!JAPANニュース配信記事を基にしたフィクションです。)
・新型感染症を偽って偽計業務妨害罪
新型感染症が流行しており、連日関連したニュースが報道されています。
その中で、今回のAさんのように新型感染症にかかったと偽って来店し、その業務を妨害するという業務妨害事件もいくつか報道されています。
たとえ本人が軽い気持ちでいたずら感覚で行っていたとしても、こうした行為は犯罪となります。
今回のAさんの逮捕容疑となっているのは、刑法に規定されている偽計業務妨害罪という犯罪です。
刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
この条文によると、偽計業務妨害罪が成立するには、「偽計を用いて」「その業務を妨害した」ことが必要とされています。
今回のAさんの事例と当てはめながらその条件を確認していきましょう。
まず、偽計業務妨害罪の罪名にも入っている「偽計を用いて」という部分ですが、これは「人を欺罔・誘惑し、または他人の無知・錯誤を利用すること」であると言われています。
簡単に言えば、他人を騙したり、他人が知らないことや勘違いしていることを利用したりすることです。
今回のAさんは、実際は新型感染症にかかっていませんが、あたかも新型感染症にかかっているようなふりをしてコンビニエンスストアの店員を騙しています。
新型感染症にかかっているという嘘を利用しているわけですから、Aさんの行為は偽計業務妨害罪の条文にある通り、「偽計を用いて」いると判断できそうです。
では、偽計業務妨害罪の「業務を妨害した」とはどういった状態を指すのでしょうか。
一般に「業務妨害だ」という場合には、「仕事を邪魔した」ということを指すことが多いでしょう。
偽計業務妨害罪の「業務を妨害した」という言葉も、大まかにはそういった認識で間違っていません。
しかし、いくつか注意すべき点もあります。
例えば、偽計業務妨害罪のいう「業務」とは、「自然人または法人、その他の団体が社会生活上の地位において、あるいはこれと関連しておこなう職業その他の継続して従事することを必要とする事務」を指すとされています。
この「業務」には、一般に言う職業的な意味での「仕事」も含まれますが、経済的に収入を得る目的のもの以外も含むため、例えば継続的に行われているボランティア活動なども偽計業務妨害罪の「業務」になりえることに注意が必要です。
また、条文では「業務を妨害した」とあるため、偽計業務妨害罪の成立には実際に業務妨害された事実があることが必要なように見えますが、偽計業務妨害罪の成立には、実際に業務を妨害されたという事実までは不要で、業務を妨害される具体的な危険が発生していればよいとされています。
偽計業務妨害罪の成立を考える際には、こういった点にも注意が必要なのです。
今回のAさんですが、Aさんが新型感染症であると偽ったことによって、コンビニエンスストアは消毒作業などの対応に追われることになり、通常の営業時間内に閉店するという措置も取っています。
通常であれば営業で来ていた時間に閉店し、不要な業務をしなければならなくなったわけですから、十分「業務を妨害」されたと考えられます。
こうしたことから、Aさんには偽計業務妨害罪の成立が考えられるのです。
なお、今回は実際に業務妨害をされたという事実がありますが、先述のように、例えば消毒作業や閉店等をする前にAさんの嘘が分かったとしても、その嘘によって消毒作業や閉店といった業務妨害の危険性が発生していると判断されれば、実際に店側が業務を妨害されていなくとも偽計業務妨害罪の成立が考えられます。
今回の事例のように、偽計業務妨害事件などで実際に施設や店等の業務を妨害した事実がある場合、被害弁償などが多額になることも予想されます。
被害者との謝罪や示談交渉も、施設や店等についている弁護士と行うことになる場合もあり、当事者だけで対応することに不安が大きいという場合もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、偽計業務妨害事件のご相談・ご依頼も受け付けていますので、まずはお気軽にご相談ください。
連続した電話のパワハラで傷害事件に
連続した電話のパワハラで傷害事件に
連続した電話のパワハラで傷害事件になった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府八幡市にある会社Xに勤務する会社員です。
ある日、Aさんは部下のVさんが気に食わず、業務中にVさんを叱責するだけでなく、Vさんが会社を退勤した後の深夜や出勤前の早朝、Vさんの休日に関わらず、Aさんはほとんど毎日何回にもわたってVさんの携帯電話に電話をかけ、Vさんに対して仕事の出来の悪さを叱責するなどし、Vさんが電話に出ないと長時間コール音を鳴らし続けたり、その後「なぜ上司の電話に出ないんだ」とさらに叱責するなどしました。
Vさんは、Aさんに対し連日時間を問わず電話をするのはやめてほしい旨を何度も伝えましたが、Aさんは取り合いませんでした。
そうした状況が半年以上続いたところ、Vさんは不眠症や神経衰弱症の症状が出てきたことから病院へ行き、さらに京都府八幡警察署にも相談しました。
すると、後日Aさんのところに京都府八幡警察署から「傷害事件の被疑者として話を聞きたい」と連絡が入りました。
(※この事例はフィクションです。)
・パワハラと刑事事件
パワーハラスメント、略してパワハラという言葉は、ここ最近でかなり浸透してきた言葉でしょう。
簡単に言えば、パワハラとは、職場内で社会的地位の高い者が、その優位性を利用して、自分より立場の弱いものへ嫌がらせを行うことを指します。
パワハラ問題等が報道されることも少なくなく、世間のパワハラへの関心も高まっているといえるでしょう。
今回のAさんの事例も、Aさんが上司としての立場を利用してVさんへ嫌がらせをしているようですから、このパワハラに関連していると考えられます。
このパワハラですが、「パワハラ」としての犯罪があるわけではありませんが、その行為の内容によっては犯罪になることも十分考えられます。
学校等での「いじめ」と同様、「いじめ罪」「パワハラ罪」といった罪名がついていないからといって犯罪が成立しないということはありません。
その行為の態様1つで、犯罪となり刑事事件となる可能性があるということを知っておかなければなりません。
・電話で傷害罪?
今回、Aさんにかけられている容疑は刑法に規定されている傷害罪という犯罪のようです。
刑法204条
人の身体を傷害した者は、10五年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
傷害罪の典型例としては、人に殴る蹴るといった暴行を加えて怪我をさせてしまったような場合が挙げられます。
ですから、今回のAさんのような、電話を連続してかけ続けるといった行為と傷害罪がなかなか結び付きづらい方もいるかもしれません。
しかし、傷害罪の条文にある、「人の身体を傷害」するということは、人の身体の生理的機能を害することであると考えられています。
その「人の身体の生理的機能を害する」ということは、何も外傷だけに限ったことではありません。
例えば、PTSDのように精神に障害を与えるようなことでも、「人の身体の生理的機能を害する」といえると考えられているのです。
そして、傷害罪の「人の身体を傷害」するという行為にあたり、その手段として物理的に殴る蹴るといった手段に限定されているわけでもありませんから、例えば騒音や強い光などによって人に傷害を与えた場合でも、傷害罪は成立しうるとされています。
ここで、今回のAさんの事例を考えてみましょう。
Aさんは、Vさんに連日何回にもわたって電話をかけ続け、Vさんがやめてほしい旨を伝えてもその電話を継続しています。
その結果、Vさんは不眠症や神経衰弱症を患うことになっているようですから、「人の身体を傷害した」という傷害罪の条文に当てはまりそうです。
そして、AさんはVさんに電話をかけ続けるという行為によってVさんを「傷害」しているのですから、傷害罪にあたりうると考えられるのです。
ただし、犯罪が成立するには「故意」が必要です。
簡単に言えば、その犯罪に当たる行為をするという認識があったかどうか、ということですが、今回の場合は少し特殊です。
暴行によって相手に傷害を与えた場合、傷害罪の成立には、その暴行の認識があればよく、相手に傷害を与えるという認識までは不要とされています。
つまり、「殴るだけで怪我をさせるつもりはなかった」と言っても傷害罪は成立することになるのです。
ですが、今回のような場合、傷害を負わせる手段は暴行ではありません。
こうした場合、傷害罪の成立には、相手が傷害を負う可能性があることまで認識している必要があると考えられています。
ですから、今回のAさんで言えば、電話をかけ続けるパワハラ行為によってVさんに精神疾患を負わせるかもしれないという可能性を認識していたかどうか、といった事情が、Aさんに傷害罪が成立するかどうかの重要な事情となってくると考えられます。
なお、今回のAさんの行為は、傷害罪が成立しなかったとしても、各都道府県に規定されている迷惑防止条例に違反したり、侮辱罪になったりする可能性もあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、パワハラに関連した刑事事件のご相談・ご依頼も受け付けています。
0120-631-881では、初回無料法律相談のご予約が24時間可能です。
まずはお気軽にご予約ください。
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?②
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕?②
当て逃げだと思っていたのにひき逃げで逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府京田辺市にあるショッピングモールに自動車を運転して買い物に来ていました。
Aさんが帰ろうと駐車場から車を発進させた際、運転を誤って、前に停まっていた自動車に追突させてしまいました。
Aさんが車内から様子を伺ったところ、その車には誰も乗っていないように見えたため、「高速で走っているところをぶつかったわけではないのだし、車も大きく壊れたわけではない。放置しても大丈夫だろう」と考えたAさんは、そのまま車を運転して帰宅しました。
すると後日、Aさん宅に京都府田辺警察署の警察官がやってきました。
Aさんは、先日駐車場で車をぶつけてしまったことを思い出し、当て逃げの犯人として取調べを受けるのだろうと思っていました。
しかし、警察官は「ひき逃げ事件の被疑者として逮捕する」という旨を伝え、Aさんはひき逃げ事件の被疑者として逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・当て逃げだと思ってもひき逃げに?
今回のAさんは、自分のした行為が当て逃げだと思っていたようですが、実際にかけられた容疑はひき逃げでした。
前回の記事で確認した通り、当て逃げもひき逃げも、交通事故を起こしながら道路交通法の義務に違反する道路交通法違反ということは共通しています。
そして、その交通事故で人が死傷しているのかどうか、それに対して救護等をしたのかどうかによって当て逃げかひき逃げかが代わってくることになります。
ですから、簡単に考えれば、交通事故が物損事故なのか人身事故なのかによって当て逃げかひき逃げか変わるということになります。
今回のAさんは、駐車場で自動車を動かした際に低速度で他の車にぶつかったようです。
その際、Aさんは相手の車に誰も乗っていないと思ってそのまま立ち去っていますが、その中に人がいて怪我をしていれば、それは人身事故となる可能性があります。
たとえ駐車場での低速度での交通事故であっても、捻挫やむちうちなどの怪我を負ってしまい診断書が出ることは考えられますし、その怪我が交通事故に由来するものであれば、人身事故として処理されることも考えられます。
今回のAさんの場合も、Aさんが見落としていたところに車の搭乗者がいて、Aさんの車との衝突によって怪我をしていたことが考えられます。
駐車場や渋滞中などに起こった低速度の交通事故でも、人身事故になる可能性があることに注意しましょう。
どちらにせよ、人身事故でも物損事故でも起こしてしまった場合には道路交通法上の義務がありますから、そのまま立ち去らないようにしましょう。
・ひき逃げをしてしまったら何罪?
前回の記事でも触れた通り、ひき逃げ行為自体は道路交通法に違反した道路交通法違反という罪になります。
これは当て逃げ行為の場合も同じですが、ひき逃げをしてしまった場合には、この道路交通法違反のほかにも犯罪が成立します。
人身事故を起こしてしまった場合には、自動車運転処罰法の中に規定のある、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪といった犯罪が成立します。
これはひき逃げや当て逃げといった行為ではなく、人身事故を起こしてしまったこと自体に成立する犯罪です。
今回のAさんのような不注意によって相手に怪我を負わせてしまった交通事故の場合、過失運転致傷罪が成立する可能性が高いでしょう。
自動車運転処罰法5条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。
ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
まとめると、ひき逃げ事件の場合、ひき逃げ行為に成立する道路交通法違反と、人身事故を起こしたことに成立する過失運転致死傷罪などという、2つの犯罪が成立することになるのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした当て逃げ・ひき逃げのような交通事故に関連した刑事事件のご相談も受け付けています。
当て逃げ・ひき逃げといった、現場から一度逃げているという事情のある刑事事件では、逃亡のおそれが高いとして逮捕されることも珍しくありません。
突然の逮捕は刑事事件に強い弁護士にぜひご相談ください。