Archive for the ‘刑事事件’ Category
盗品の時計を買い取ったとして逮捕された事件
盗品の時計を買い取ったとして逮捕された事件
盗品の時計を窃盗犯である友人から、盗品であると知りながら買い取ったとして逮捕された事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事案
京都府中京警察署は、盗品等有償譲受け罪の疑いで、京都市内に住む会社員の男性(30)Aを逮捕した。
Aが友人から購入した時計は、先日京都市内で発生した時計店で盗まれたものの1つで、売主である友人はすでに逮捕されている。
問題の時計の相場は中古品で100万円ほどだが、Aは85万円で譲り受けたとされている。
取調べに対し、Aは、「盗品であることは知らなかった。相場より安いかもしれないが、もともと友人には金を貸していて利子を取っていなかったし、友達価格で売ってもらっただけ。」と容疑を否認している。
(フィクションです。)
盗品等有償譲受け罪とは
刑法256条1項
盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する。
同2項
前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する。
盗品等有償譲受け罪とは、刑法256条2項が規定する盗品等に関する罪の1つです。
窃盗罪などの犯罪によって持ち主から奪われた物などを、盗品等と知りながら有償で譲り受けるような行為を罰しています。
刑法は、盗品等有償譲受け罪の法定刑を10年以下の懲役「及び」50万円以下の罰金としており、これは窃盗罪の法定刑である10年以下の懲役「又は」50万円以下の罰金(刑法第235条)よりも重くなっています。
窃盗罪を犯した人は、懲役のみが課されるか、罰金のみが課されるかのどちらかですが、盗品等有償譲受け罪はその両方が課されることになります。
これは、窃盗犯は盗んだものを売って現金化することが多いところ、盗品などを有償で譲り受ける人が存在することが、窃盗などの動機付けとなりうるためです。
本件では、男性は、時計を窃盗犯である友人から85万円で買い取ったことまでは認めているようですから、盗品等有償譲受け罪が成立する可能性があります。
盗品であることの認識
盗品等有償譲受け罪は故意犯、すなわち、自分のする行為が犯罪であると分かっていながら行為に及んだ場合に犯罪が成立します。
本件で言うと、Aが、時計が盗品であると分かっていながら買い取った場合に盗品等有償譲受け罪は成立します。
逆に、Aが、時計が盗品と知らずに買い取った場合には、犯罪が成立しない可能性があります。
Aは、取調べに対して時計を85万で購入したことまでは認めていますが、盗品であるとは知らなかったと容疑を一部否認しているようです。
時計の相場である100万円より安くAは時計を購入していますから、警察は盗品であるという事情が関係していると疑いっているのかもしれません。
弁護士に早めに相談を
上述のように、盗品等有償譲受け罪の成立には、Aが盗品であると知っていたことが必要ですから、捜査機関は取調べで、この点を明らかにしようとするでしょう。
「相場よりも10万以上安く売ってもらえるということは、何かおかしいと思わなかったのか」「金を無心するほど金に困っていた友人が高価な時計を持っているのはおかしいと思わなかったのか」などと、盗品である可能性を認識していたと受け取れるような供述を引き出そうと誘導してくる可能性もあります。
仮に、取調べで盗品である可能性を認識していたかのような供述をし、その供述を文書化した供述調書にサインしてしまった場合、これを裁判で覆すのは非常に困難です。
したがって、取調べ前に、何を認めて何を認めないのか、しっかり線引きしておくことが重要となります。
このような判断を十分な法律の知識なしに適切に行うことは、非常に困難です。
そこで、法律のプロである弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、盗品等に関する事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
刑事事件に詳しい弁護士に事前に相談して取調べのアドバイスを得ることで、冤罪を防げるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。
隣人のバイクを倒して傷つけたとして器物損壊罪の疑いで逮捕
隣人のバイクを倒して傷つけたとして器物損壊罪の疑いで逮捕
隣人のバイクを倒して傷つけたとして器物損壊罪の疑いで逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府東山警察署によると、京都市内に住む会社員の男性Aが、隣人Bのバイクを蹴り倒してヘッドライトを壊すなどしたとして、同署は、器物損壊罪の疑いで逮捕した。
Aは、Bが深夜に大きな音を立てながらバイクで帰宅することに日頃から腹を立てており、何度注意してもBが反省する様子がなかったため怒りが抑えきれずバイクを蹴ってしまったと、容疑を認めている。
(フィクションです。)
器物損壊罪とは
本件では、男は器物損壊罪で逮捕されています。
器物損壊罪を規定する刑法261条は次のようになっています。
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
冒頭の「前三条」は、公用文書、私用文書、建造物等を壊すなどして使えなくするような行為について、規定しています。
これらの物については、その重要性に鑑みて、刑が器物損壊罪よりも加重されています。
本件では、男は、バイクを蹴って倒して一部破損させているようです。
バイクは文書でも建造物でもありませんから、本件では、器物損壊罪が成立するかが問題となります。
器物損壊罪が成立する行為としては、損壊と傷害が規定されています。
損壊とは、財物の公用を害する一切の行為をいいます。
例えば、お皿を割ったり、自動販売機を蹴って凹ませたりするような行為がこれに当たります。
本件では、男がバイクを蹴って倒した結果、ヘッドライトが壊れたようですので、他人の物を損壊したと言えそうですから、器物損壊罪が成立する可能性があります。
ちなみに器物損壊罪における「傷害」とは動物を殺したり、逃したりする行為を言います。
親告罪とは
器物損壊罪は、親告罪すなわち告訴がなければ起訴できない犯罪です(刑法264条)。
告訴とは、被害者などの告訴する権利のある者が、捜査機関に対して、犯罪があったことを告げて犯罪者の処罰を求めることを言います。
本件で言うと、Aに蹴り倒されたバイクの持ち主が警察署に告訴した場合、Aは起訴される可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
仮に、起訴された場合、有罪となり前科がつく可能性があります。
したがって、被害者に告訴しないでもらうために示談をすることが重要となります。
ただし、加害者が直接被害者と示談交渉を進めることは困難です。
本件のように、自分の大切なバイクを蹴って壊した相手に対して、被害者は強い処罰感情を有していることが多く、連絡を取ることさえ拒絶される可能性があります。
そこで、示談交渉は、交渉のプロである弁護士にお任せすることをおすすめします。
告訴は一度されたとしても、起訴前に取り下げてもらうことができれば、やはり起訴されることはありません。
逆に、起訴された後は告訴を取り下げることはできません(刑事訴訟法237条)。
したがって、なるべく早い段階で弁護士に相談されることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、器物損壊事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、起訴されることを防ぐことができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
詳しくは0120-631-881までお電話ください。
美容サロン7店に侵入し約130万円を盗み出した事例
美容サロン7店に侵入し約130万円を盗み出した事例
ポストに置かれていた合鍵を使用して美容サロンに進入し、約130万円等を盗んだとして、窃盗罪、建造物侵入罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都府警捜査3課と下京署などは11日、建造物侵入と窃盗の疑いで、(中略)を逮捕、追送検し、7件、計約131万円の被害を裏付け、捜査を終結したと発表した。
(1月11日 京都新聞 「ポストの合鍵使い、美容サロンで窃盗繰り返す 容疑の男「生活のため」」より引用)
府警によると、(中略)夜間帯に京都市下京区(中略)など7府県で、店舗関係者がテナントビルの集合ポストに置いたままにしていた合鍵を使い、美容サロン7店舗に侵入し、売上金や釣り銭計131万円と、鍵やポーチなど計4点を盗んだ疑いがある。「生活のためにやった」と供述しているという。
窃盗罪
窃盗罪は刑法第235条で規定されています。
刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃盗罪は簡単に説明すると、お金などの財物を持ち主の許可なく、自分など持ち主以外の人の所有物にすると成立する犯罪です。
今回の事例では、容疑者がテナントビルの集合ポストに置かれていた合鍵を使用して美容サロンに進入し、売上金や鍵、ポーチなどを盗んだと報道されています。
本来の売上金の持ち主は美容サロンですし、鍵やポーチは美容サロンかその従業員の持ち物でしょう。
容疑者が美容サロンの責任者やポーチ等の持ち主の許可なく美容サロンから持ち去ったのであれば、窃盗罪が成立する可能性があります。
建造物侵入罪
建造物侵入罪は刑法第130条で規定されています。
刑法第130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
住居とは人が普段生活している家などを指し、邸宅は現在人が生活していない空き家や使用していない別荘などを指します。
住居や邸宅以外の建物を建造物といい、お店や学校などの公共施設がこの建造物にあたります。
大まかに説明すると、建造物に正当な理由や管理者の許可なく立ち入ると建造物侵入罪が成立します。
今回の事例では、容疑者は集合ポストに置いたままにされていた合鍵を使用して夜間に美容サロンに進入したとされています。
おそらく容疑者は合鍵を使用する許可や、夜間に施錠された美容サロンに立ち入る許可を得ていないでしょう。
また、物を盗むために立ち入る行為は正当な理由にはならないでしょう。美容サロンは建造物にあたりますから、実際に容疑者が合鍵を用いて美容サロンに入ったのであれば、建造物侵入罪が成立する可能性があります。
窃盗罪と裁判
窃盗罪は身近な犯罪の一つだと思います。
そのため、初犯であれば、実刑判決は下されずに執行猶予が付くと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、悪質性が高かったり、被害額が高額な場合には、初犯であっても実刑になる可能性は十分にあります。
ですので、執行猶予付き判決の獲得に向けた弁護活動が重要になってくる場合があります。
今回の事例では、報道によると被害額は130万円を超えているようですし、7店舗で侵入盗をしているそうなので、悪質性が高いと判断され、もしかすると実刑判決を下されてしまうかもしれません。
では、実刑判決を回避するためにはどういったことをすればいいのでしょうか。
執行猶予付き判決の獲得を目指すうえで、一番初めにしてもらいたいことは弁護士に相談をすることです。
事件の見通しは事案ごとによって異なってきます。
ですので、一度弁護士に相談をして科される可能性のある量刑など、今後の見通しを聞いておくことがかなり重要になります。
また、執行猶予付き判決の獲得を目指すうえで、示談の締結が有利に働くことがあります。
当事者だけで示談をすることは不可能ではありませんが、法律の知識が乏しい中で、示談書を作成することはかなり大変な作業になることが予想されます。
何とか示談書を作成し被害者と交渉を行い示談書に署名等をもらったものの、示談書の内容に法的な穴が散見され示談書としての効力を有しない示談書になってしまうおそれもあります。
そういった事態を避けるためにも、弁護士に示談を任せることをおすすめします。
弁護士が代理人として示談交渉を行うことで、トラブルの回避につながることもありますので、そういった面でも示談交渉を行う際には、弁護士を介して行うことが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件に精通した法律事務所です。
窃盗事件や建造物侵入事件の豊富な弁護経験を持つ弁護士による弁護活動で、執行猶予付き判決を獲得できる可能性がありますので、示談を考えている方、窃盗罪、建造物侵入罪でお困りの方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回接見サービス、無料法律相談のご予約は、0120―631―881で受け付けております。
後輩に対してカツアゲした疑いで大学生を逮捕
後輩に対してカツアゲした疑いで大学生を逮捕
後輩に対してカツアゲした疑いで大学生が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府北警察署は、京都市内の大学に通う男子大学生A(22)を恐喝罪の疑いで逮捕した。
体育会系の部活の4回生であるAは、同じ部活に所属する後輩の1回生Vが部活に遅刻した際に、「部活舐めてんのか!?遅刻した罰金として3万よこせ!金払わないならケツバットな!」などと言って、後輩の財布に入っていた2万円と、銀行から下ろさせてきた1万円の計3万円を受け取ったとされている。
京都府北警察署の取調べに対し、Aは「パチンコの新台を打ちたかったが、お金がなかったので、後輩からカツアゲしようと思った」と容疑を認めている。
カツアゲは犯罪?
刑法249条
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
カツアゲは恐喝罪になる可能性があります。
本件では、Aは、同じ部活に所属する後輩Vに3万円を差し出させています。
3万円という財物を交付させていますから、Aの発言が恐喝に当たるのであれば、恐喝罪が成立する可能性があります。
恐喝とは、①財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫または暴行であって、②その反抗を抑圧するに至らない程度の行為を言います。
本件で、Aは、Vに対し、金銭をよこさないとケツバットすると言って後輩を怖がらせています。
ケツバットするというのは、身体に対する害悪の告知ですから、Aの発言は、財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫に該当しそうです(①)。
では、②についてはどうでしょうか?
Aの上記行為は、Vの反抗を抑圧するに至らない程度と言えるでしょうか?
反抗を抑圧する程度の脅迫というのは、例えば、拳銃の銃口を突きつけながら「金を出さないと殺す」などと脅すような場合がこれに当たります。
銀行強盗をイメージするとわかりやすいかもしれません。
この場合、要求に応じないと殺されそうなので、言われた通りお金を差し出すほかないでしょうから、上記脅迫は、反抗を抑圧する程度の脅迫と言えます。
これに対し、本件でのAのケツバットするぞという害悪の告知は、大学に入ったばかりの1回生を怖がらせるのには十分かもしれませんが、反抗を抑圧する程度に至ってはいないと考えられます(②)。
以上より、Aのケツバットするぞという発言は恐喝に当たり、Aには恐喝罪が成立する可能性があります。
恐喝から現金の交付までの因果関係
加えて、恐喝罪の成立には、次の因果関係が必要です。
①相手方を恐喝し、②それにより相手方が畏怖し、③その畏怖に基づいて相手方が交付行為を行い、④その交付行為によって財物が行為者に移転するという因果関係が必要です。
本件では、AがケツバットするぞとVを恐喝し(①)、それによりVが畏怖し(②)、その畏怖に基づいてVは3万円をAに差し出し、(③)、その交付行為によって財物がAに移転(④)しています。
以上より、Aには恐喝罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
カツアゲと聞くと大した犯罪ではないと思われるかもしれせんが、恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役と非常に重たくなっています。
執行猶予がつくためには、量刑が3年以下であることが条件の1つですから、カツアゲをすると実刑判決が下される可能性があります。
仮に執行猶予がつかず実刑判決が下った場合、刑務所に拘束されるため大学に通ったり会社に出勤したりすることはできず、解雇や退学処分となることが珍しくありません。
したがって、刑務所での拘束を避けるためには、科される量刑を3年以内に抑えて執行猶予付判決を獲得する必要があります。
では、量刑を3年以内に抑えるには、どうすれば良いのでしょうか?
この点については、被害者との間で示談を成立させることで、量刑を抑えることができる可能性があります。
ただし、カツアゲをした当の加害者が、直接被害者と示談交渉を進めることは通常困難です。
被害者は強い処罰感情を有していることは珍しくありません。
示談交渉のテーブルにつくことすらできないかもしれません。
そこで、交渉のプロである弁護士に第三者的立場から示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
さらに、検察官に起訴される前に示談を締結できた場合には不起訴処分となる可能性も存在しますから、できる限り早い段階で弁護士に相談することが極めて重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、恐喝事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を軽くしたり執行猶予付判決や不起訴処分を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
相談のご予約のお電話は0120-631-881で承っています。
書店で本を万引きして逮捕された事件
書店で本を万引きして逮捕された事件
書店で本を万引きして逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事案
大学生のAは、京都市中京区の書店Bで、週刊誌で連載中の漫画の単行本を鞄の中に入れてお金を支払わずに店の外に出た。
一部始終を見ていた私服警備員はAを呼び止めたところ、Aは、「自分は単行本派なので、最新刊が出たらすぐ読みたいとずっと思っていたが財布にお金がなった。どうしても前刊の続きが気になっていたが、週間連載には手を出さずに我慢していたところなので、つい万引きしてしまった。」と万引きしたことを認めた。
書店Bは、京都府中京警察署に通報し、その後Aは逮捕された。
(フィクションです)
窃盗罪とは
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することを言います。
大まかに説明すると、占有とは物の支配や管理のことを指し、占有者は物の所有者を指します。
占有が認められるのは、客観的要件としての財物に対する事実的支配(客観的支配)と、主観的要件として財物に対する支配意思が必要です。
例えば、自宅に置いてあるゲーム機は、自宅という限られた人しか入れない閉鎖的な支配領域内にあるため、強い客観的支配が認められます。
また、すぐ使えるようにテレビの前などの目に入る場所に置いてあるのであれば、このゲーム機は自分の物だという支配意思も強いと言えるでしょうから、家主に占有が認められます。
本件では、Aは、書店で販売されていた単行本を鞄にいれて店外に持ち出したようです。
Aが持ち出した単行本は、書店の中に置かれていたようですので、書店Bには当該単行本に対して強い客観的支配が認められます。
書店Bは、店内に置いてある商品である単行本に対して、自店舗のものだという強い支配意思を有しているでしょう。
したがって、書店Bは、当該単行本を占有していたと言えそうです。
そして、Aは、当該単行本を代金を支払うことなく外に持ち出したようです。
書店Bは、代金を支払わずに商品を店外に持ち出すことを許してはいないでしょうから、Aは、占有者である書店の意思に反して自己の占有に移転したといえます。
したがって、本事案では窃盗罪が成立する可能性があります。
犯行時のAの認識
窃盗罪は故意犯、すなわち自らの行為が犯罪であることをわかった上で行うと成立する犯罪です。
窃盗罪の場合、故意の内容は、他人の財物を窃取することを認識・認容していたことです。
Aは書店に商品として置いてある本を鞄に入れて意識的に店外に持ち出していますから故意は認められそうです。
このほかに、条文には明記されていないものの、窃盗罪の成立には不法領得の意思が必要であると解されています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用しまたは処分する意思」とされています(最判昭和26年7月13日)。
権利者を排除し他人の物を自己の所有物として振る舞う意思を権利者排除意思といい、経済的用法に従いこれを利用し処分する意思を利用処分意思と言います。
まず、権利者排除意思は、刑罰を科されない使用窃盗と窃盗を区別するための概念です。
使用窃盗とは、他人の財物を無断で一時的に使用することであり、被害者の被る被害が軽微であることから不可罰とされています
本件では、Aは、万引きを認めており、持ち出した単行本を書店Bに返すつもりはなかったようです。
仮にあったとしても商品を持ち出されては商売することができなくなるため、被害者の被る損害は軽微とは言えず、権利者排除意思が認められそうです。
次に、利用処分意思は、毀棄・隠匿の罪と区別するために必要な概念です。
毀棄・隠匿の罪は、物を壊したり隠したりすることで利用を妨げる罪です。
単行本の場合、利用処分意思は、単行本を読むつもりだった場合などに認められると考えられます。
本件では、Aは、前刊の続きが気になっていて最新刊がどうしても読みたかったから万引きしたと言っているので、利用処分意思が認められそうです。
以上より本件では、窃盗罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
本件では、Aは逮捕されています。
逮捕中は、ただ身体拘束されるだけでなく、警察官や検察官からの取調べが行われます。
取調べの結果は、調書として文書化されて、被疑者はそれにサインするよう求められます。
サインされた調書は、裁判が始まった際に証拠として用いられることがあり、仮に、証拠として提出された場合、被告人のサインがあるため不利な調書の内容を覆すのは非常に困難です。
したがって、取調べ前に何をどのように供述するのか、しっかり考えておく必要があります。
もっとも、法律に詳しくない一般の方にとって、どのように受け答えするのが適切か判断することは困難です。
そこで、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
法律のプロである弁護士に相談すれば、事件の内容を踏まえて取調べでどのように受け答えすれば良いのかについてアドバイスを得ることができます。
また、逮捕されたことによる不安を軽減して落ち着いて取調べに対応できる可能性が高まります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗罪を含む豊富な刑事弁護の経験を持つ法律事務所です。
逮捕前であれば、弊所にて初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣する初回接見サービスがございます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
初回無料法律相談、初回接見サービスをご希望の方は、0120-631-881までお電話ください。
SNS上で同僚を「反社」などと中傷した疑いで逮捕
SNS上で同僚を「反社」などと中傷した疑いで逮捕
SNS上で同僚を「反社」などと中傷した疑いで男が逮捕された事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事件概要
京都市中京区の営業会社で働くAは、自分と営業成績を争っている同僚のBが、期末に強引な手法で契約を取りにいった様子を見て、SNS上で「Bは反社。契約をとるためなら汚い手段を躊躇なくとってくる。」などとBを中傷する内容の投稿をした。
これを知ったBは京都府中京警察署に被害届を提出したところ、Aは名誉棄損罪の疑いで逮捕された。
(フィクションです)。
名誉棄損罪
刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
刑法は、名誉棄損罪を規定することで、社会が人に対して与えるプラスの評価を守ろうとしています。
本件で、Aは「公然と」「事実を摘示して」人の名誉を棄損したといえるのでしょうか?
まず、「公然と」とは、摘示された事実を不特定または多数人が認識しうる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、社会一般に知れわたる程度の人数という意味であり相当の多数であることを必要とします。
本件では、Aは、SNS上でBを反社だとする投稿をしています。
SNSに投稿された内容は、だれでも見ることができますから、Aによって摘示されたBが反社だとする投稿は、不特定の人が認識しうる状態にあったといえますから、「公然と」人の名誉を棄損したといえそうです。
次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
ここでの事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。
Aの「Bは反社」とする投稿は、真実かどうか証明の対象となりうる程度に具体的です。
加えて、反社であるといわれると、Bさんは世間から関わってはいけない悪人だと思われて社会的評価が低下する可能性があります。
以上より、Aは、公然と事実を摘示して人の名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。
条文にも書いてある通り、ここでの事実とは、真実だけでなく虚偽の事実も含まれます。
したがって、仮にBが本当に反社でありAの投稿が真実であっても名誉棄損罪の成立は妨げられません。
なお、条文の規定上、名誉棄損罪の成立には、現実にBの名誉が棄損されたことが必要であるかのように思えます。
しかし、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、判例によれば被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。
できるだけ早く弁護士に相談を
名誉棄損罪は親告罪、すなわち検察官が起訴するために被害者などの告訴が必要な犯罪です(刑法232条)。
名誉棄損罪が親告罪とされるのは、起訴されることで、かえって被害者の名誉を侵害する恐れがあるためです。
実際に他人の名誉を毀損する行為をして、被害者が告訴をした場合、起訴前に告訴を取り消してもらえるかどうかが非常に重要になってきます。
告訴の取下げに成功すれば、不起訴処分となり前科がつくこともないからです。
もっとも、不特定の人の目に触れる形で、自分のことを「反社だ」などと言って、社会的な評価を下げさせかねない発言をしてきた加害者に対して、被害者は強い処罰感情を抱いている可能性が高いです。
したがって、加害者が自ら示談交渉をして、告訴の取下げを含めた示談を成立させるのは困難です。
そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行い、告訴を取り下げてもらうことで不起訴処分を得ることができる可能性があります。
一度起訴されてしまうと、告訴を取り下げることはできません。
ですので、可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
精神鑑定を実施した精神科医が人の秘密を漏らした事件
精神鑑定を実施した精神科医が人の秘密を漏らした事件
精神鑑定を実施した精神科医が人の秘密を漏らした事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事案
京都府上京警察署によると、少年事件について家庭裁判所から鑑定依頼を受けた京都市内の病院に勤務する精神科医Aが、その少年事件について取材を進めている新聞記者に対して、鑑定資料として貸出しを受けていた捜査記録などを見せた疑いがもたれている。。
それを知った少年の父が被害届を京都府上京警察署に提出したところ、Aは、秘密漏示罪の容疑で上京警察署から出頭要請を受けた。
(フィクションです)
秘密漏示罪とは
刑法134条1項 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
秘密漏示罪は、医師のように職業の性質上人の秘密に接する機会が多い一定の職業に従事する者が、その業務をする上で知った人の秘密を漏らす行為を罰しています。
本件で、問題を起こし京都府上京警察署から出頭要請を受けたのは精神科医ですから刑法134条1項の「医師」にあたるといえそうです。
もっとも、Aは、医師として患者を治療する立場にあったわけではなく、裁判所から鑑定を命じられて鑑定をしたにすぎないようです。
したがって、Aの行った鑑定は、「医師の業務」ではなく「鑑定人の業務」であるとして、Aは秘密漏示罪の主体とならないと考える余地はないのでしょうか。
この点、最高裁は、医師が、医師としての知識、経験に基づく、診断を含む医学的判断を内容とする鑑定を命じられた場合には、その鑑定の実施は、医師がその業務として行うものといえるとしています(最高裁決定平成24年2月13日)。
Aは、精神科医としての知識、経験に基づいて少年の精神状態について医学的判断を内容とする鑑定を命じられたようなので、判例に従えばAの鑑定は、医師がその業務として行うものにあたり、秘密漏示罪の主体になる可能性があります。
次に、秘密漏示罪における秘密とは、一般に知られていない非公知の事実をいいます。
本件でAが新聞記者に見せた捜査資料には、少年が起こした事件に関する一般に知られていない非公知の事実が含まれていると考えられますから、秘密漏示罪の秘密に該当する可能性があります。
また、秘密漏示罪の「(秘密を)漏らす」とは、秘密を知らないものに告知することをいいます。
本件でAは、事件について調べている新聞記者に捜査資料を見せています。
新聞記者は少年の起こした事件の現場に居合わせたわけではないでしょうから、Aが事件の詳細を知らない新聞記者に捜査資料を見せた行為は、秘密漏示罪の「(秘密を)漏らす」行為に該当しそうです。
以上より本件では、秘密漏示罪が成立する可能性があります。
できるだけ早く弁護士に相談を
秘密漏示罪は、親告罪すなわち被害者などの告訴権者による告訴がなければ公訴を提起できない犯罪です(刑法135条)。
公訴の提起がされなければ、不起訴処分となり前科がつくこともありませんから、被害者の告訴を阻止できるかが重要となります。
仮に被害者が告訴をした場合でも、起訴前に告訴を取り消してもらえれば、やはり公訴を提起されません。
告訴を阻止するためには被害者と示談をすることが重要になります。
しかし、被害者は、加害者に対して処罰感情を抱いている可能性が高いため、加害者が自ら示談交渉をして、告訴の取下げを含めた示談を成立させるのは困難です。
そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、告訴を取り下げてもらい不起訴処分を得ることができる可能性があります。
告訴は、起訴されてしまった後では、取り下げることはできません。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
詳しくは0120ー631ー881までお電話ください。
価格高騰の腹いせに商品をSNS上で酷評した事件
価格高騰の腹いせに商品をSNS上で酷評した事件
価格高騰の腹いせに、PC関連商品についてSNS上で事実に反して酷評したとして信用毀損罪の疑いで男が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府中京警察署は、PCを自作する趣味を持つ自営業の男性(27)を信用毀損罪の疑いで逮捕した。
男は、PCを自作した動画をSNS上に投稿することを趣味としていたところ、昨今の半導体不足とマイニング(仮想通貨の取引システムに協力する見返りに、報酬を得ること)の需要による、グラフィックボード(PCの画像処理を担う部品)の高騰で思うようにPCを組むことができず腹を立てていた。
そこで、男は、腹いせにグラフィックボードを専門的に製造しているA社の最新GPUを購入していないにも関わらず、「A社最新グラフィックボードで自作PCしたら発火して故障!返品交換してくれと頼んでも無視!高すぎ!買う価値なし!」というタイトルでSNSに動画を投稿したとされる。
(フィックションです)
信用毀損罪とは
刑法233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
刑法233 条は、信用毀損罪と偽計業務妨害罪の2つの罪を規定しています。
本件で問題となっている信用毀損罪は、233 条の「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し(…)た者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」という部分で規定されています。
「虚偽の風説を流布し」とは、客観的事実に反する噂・情報を不特定又は多数の人に伝播させることをいいます。
本件では、男は、実際には所有していないA社のグラフィックボードを使った自作PCが不具合を起こして発火したという客観的事実に反する情報を、動画化してSNS上に投稿しています。
SNS上へ投稿すると、当該SNSを利用する不特定の人に伝播することになりますから、男の行為は「虚偽の風説を流布し」たと判断される可能性があります。
法人の商品の品質を貶めることは「人の信用を毀損した」にあたるか
信用毀損罪が対象としているのは「人の信用」です。
判例によると、ここでの「人」とは生身の人間である自然人だけでなく法人も含みます(大判昭和7年10月10日)。
よって、本件では、男がA社の信用を毀損したと言えるかどうかが問題となりそうです。
まず、男が酷評したのは、A社そのものではなく、A社の商品であるグラフィックボードですが、この場合にも人の「信用」を毀損したと言えるのでしょうか。
判例によると、「信用」とは、「人の支払能力又は支払意思に対する社会的な信頼に限定されるべきものではなく、販売される商品の品質に対する社会的な信頼も含むと解するのが相当である」とされています(最判平成15年3月11日)。
したがって、A社の販売する商品であるグラフィックボードの品質に対する社会的な信頼も「信用」に含まれることとなり、信用毀損罪が成立する可能性があります。
また、条文には「(人の信用を)毀損した」者に刑罰を科すと規定されています。
では、信用を毀損するような行為がされたことに加え、現実にA社の信用が低下するという結果が必要なのでしょうか。
この点、判例は、現実に信用毀損の結果が生じる必要はないとしています(大判大正2年1月27日刑録19輯85頁)。
したがって、男がSNS上に投稿した動画によって、A社の信用が実際に低下しなかったとしても信用毀損罪が成立する可能性があります。
できるだけ早く弁護士に相談を
信用毀損罪のように被害者のいる犯罪では、示談を成立させることが非常に重要です。
早期の示談締結ができれば、起訴猶予による不起訴処分となる可能性がありますし、起訴されたとしても、示談が成立していることを踏まえて量刑が軽くなる可能性もあるからです。
もっとも、本件のように大切な商品を貶めすような行為をした加害者が、示談交渉のために被害者と連絡をとろうとしても拒絶される可能性が高いでしょう。
そこで、示談交渉は弁護士にお任せすることをおすすめします。
加害者と接触することを拒絶する被害者も、弁護士を通じてであれば示談交渉に応じてくれる可能性があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、信用毀損罪を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、不起訴処分の獲得や量刑を軽くすることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談、初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。
SNSで知り合った他県の未成年者を自宅に招いた男が逮捕された事件
SNSで知り合った他県の未成年者を自宅に招いた男が逮捕された事件
SNSで知り合った未成年者を自宅に招いた男が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。
事例
京都府北警察署によると、SNS上で知り合った女子高校生(17)を車に乗せ自宅に招いたとして、京都市内に住む会社員の男(35)を未成年者誘拐罪の疑いで逮捕した。
男は取り調べに対し、被害者に「人生相談に乗って欲しい、車で迎えに来て」と言われたからその通りにしただけ、女性が未成年だと知らなかったとして、容疑を否定している。
(フィクションです)
未成年者誘拐罪
刑法第224条
未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
刑法224条は、未成年者略取罪と未成年者誘拐罪を規定しています。
両罪は、対象を未成年としているで共通しています。
異なるのは、どのようにして、未成年者を本来の生活環境から不法に離脱させ、自己又は第三者の実力的支配下に移すか、という点です。
未成年者略取罪は、略取、すなわち暴行又は脅迫を手段として、人を本来の生活環境から不法に離脱させ自己又は第三者の実力的支配下に移す犯罪です。
未成年者誘拐罪は、誘拐、すなわち欺罔(虚偽の事実を告知すること)又は誘惑(甘言により判断を誤らせること)を手段として、人を本来の生活環境から不法に離脱させ、自己又は第三者の実力支配下に移す犯罪です。
本件では、男は暴行又は脅迫を用いていません。
また、男は「人生相談に乗って欲しい、車で迎えに来て」と被害者に言われ実行に移したようですので、被害者の相談に乗るといった甘言を用いて被害者の判断を誤らせたと判断される可能性があることから、未成年者略取罪ではなく未成年者誘拐罪が成立するケースかと思われます。
もっとも、被害にあった女子高生(被拐取者といいます)は未成年ではあるものの、男に対して人生相談がしたいとして自分から車に乗っています。
そうすると、本来の生活環境から離脱することについて、被拐取者の承諾があると言え、不法ではないとして未成年者誘拐罪は成立しないのではないでしょうか。
未成年者の同意があっても未成年者誘拐罪は成立するか
判例によれば、未成年者誘拐罪を規定する刑法224条が守ろうとしているもの(保護法益といます)は、被拐取者の自由だけでなく両親などの監護者の監護権も含むため、仮に被拐取者の承諾があったとしても監護者が承諾していなければ未成年者誘拐罪は成立するとしています(大判対象13年6月19日、福岡高裁判決昭和31年4月14日)。
本件についてみてみると、男は確かに被拐取者の承諾は得ていると言える可能性がありますが、その両親からの承諾を得ているわけではないようです。
したがって、判例によれば、本件では未成年者誘拐罪が成立する可能性があります。
未成年と知らなかったことは未成年者誘拐罪の成否に影響するか
本件では、男は、被拐取者が未成年とは知らなかったと言っています。
未成年者誘拐罪が成立するためには、故意、すなわち被拐取者が未成年であることの認識が必要です。
男の言う通り、被拐取者が未成年であることを知るすべがなかったといえるのであれば、未成年者誘拐罪は成立しない可能性があります。
逆に言うと、男と被拐取者のやり取りを通じて得た情報を元に合理的に考えれば、被拐取者が未成年であるかもしれないと、男が認識可能だったと判断されれば、本罪の故意ありとして未成年者誘拐罪が成立する可能性があります。
早めに弁護士に相談を
未成年者誘拐罪の故意が成立するかどうかの判断にあたっては、被拐取者の容姿や言動など様々な事情を踏まえて判断されます。
本件のように被拐取者が17歳の場合、容姿から未成年と判断できない可能性があり、メッセージのやり取りなどを踏まえてもどちらとも言えない可能性があります。
このような微妙なケースでも、警察が故意ありと考えれば、取調べで故意を認めるかのような供述をするように誘導され、求められるがままに供述調書にサインをしてしまう可能性があります。
そのような供述調書は、裁判において故意認定の強力な証拠となり、覆すのは非常に困難です。
したがって、可能であれば取調べを受ける前、逮捕された場合には逮捕の直後に弁護士に直接会ってアドバイスをもらい、取調べでどのような供述をすべきか、またすべきでないか精査することが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、未成年者誘拐罪を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
逮捕前であれば、初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣させていただきます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
詳しくは0120ー631ー881までお電話ください。
足を踏まれて激怒し相手に土下座を強要した事件
足を踏まれて激怒し相手に土下座を強要した事件
コンビニで誤って足を踏んできた相手に対し、土下座と謝罪を強要した事件について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事案
京都市西京区にあるコンビニで買い物をしていた男性(46)が、下校中の男子高校生(16)に足を踏まれたことに激怒し胸ぐらを掴んだうえ、「痛いなぁ!謝れ!土下座しろ!」などと大声をあげて謝罪と土下座をさせた。
被害にあった男子高校生は、友人と話しながら店内を歩いており、周囲のようすを確認できておらず誤って男の足を踏んでしまった。
被害男子高校生が泣きながら帰宅し両親が被害届を提出したため、西京警察署は店内のカメラから男を特定し、強要罪の疑いで一度署まで出頭するよう要請している。
(事案はフィクションです。)
強要罪
刑法223条1項
生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
強要罪が成立するには、①強要の手段として脅迫・暴行を加えたこと、②人に義務のないことを行わせたこと、又は人の権利行使を妨害したこと、③強要の手段である脅迫・暴行と、強要の結果との間の因果関係が必要です。
本件では、男は男子高校生の胸ぐらを掴んでいます。
強要罪における暴行とは、人に対する有形力の行使を意味しますから、男の胸ぐらを掴む行為は強要罪における暴行と言えそうです(①)。
次に、男は男子高校生に謝罪と土下座をさせていますから、これが人に義務のないことを行わせたことになるのかが問題となります。
たしかに、悪気はなかったとしても人の足を踏んでしまったのであれば、法的義務はなくても、社会倫理上謝罪すべき義務があるといえるかもしれません。
この点、強要罪における義務とは、法的義務に限定するという立場(法的権利義務限定説)があります。
この立場に立てば、足を踏んだことに対して謝罪することは法的義務ではない以上、強要罪における義務を男子高校生は負っていないことになり、男は義務なき行為をさせたとして強要罪が成立する可能性があります。
これに対し、強要罪における義務とは、法的義務に限定されず社会倫理上の義務も含むという立場(無限定説)があります。
この立場に立てば、男子高校生には人の足を踏んでしまったため社会倫理上謝罪する義務があるといえそうであり、社会倫理上謝罪する義務があるのであれば強要罪における義務に含まれることになります。
そうすると、男は、男子高校生が負っている義務をさせたことになりますから、強要罪は成立しない可能性があります。
もっとも、本件で男は、謝罪だけでなく土下座までさせています。
うっかり人の足を踏んでしまったとしても、土下座させるのはやりすぎでしょう。
法的にはもちろん社会倫理的にも土下座をする義務はないと思われますから、土下座させた点をとらえて、男が「人に義務のないことを行わせた」といえそうです(②)。
したがって、男には強要罪が成立する可能性があります。
さらに①暴行と②土下座の因果関係も必要です。
本件では、高校生は男に胸ぐらを掴まれて怒鳴られたために土下座したようなので、因果関係もあるといえそうです(③)。
以上より、本件では強要罪が成立する可能性があります。
出頭の前に弁護士に相談を
本件では、被害届を受けた西京警察署が男を特定して出頭するように要請しています。
出頭すれば、取調べを受けることになります。
取調べでは、調書にサインを求められる可能性があります。
取調べの結果を記した調書はサインすることで裁判になったときの強力な証拠となるので、不利な調書の作成を防ぐためにも取調べの前に何をどう話すのか精査する必要があります。
もっとも、法的な知識が十分になくては、精査することは困難です。
そこで、法律のプロである弁護士に一度ご相談されることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、強要事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
初回の相談は無料で承っておりますので、お気軽にご相談ください。
無料法律相談のご予約は、0120-631-881にて受け付けております。