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SNS上で隣人を薬物中毒者と言って名誉を毀損した事例

2024-06-26

SNS上で隣人を薬物中毒者と言って名誉を毀損した事例

スマホ

SNS上で隣人を薬物中毒者と言って名誉を毀損した事例について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府東山警察署は、京都市東山区に住む60代の男性Aを逮捕した。
Aは、隣に住むVさんに昼夜問わず大音量でテレビを流されたことで夜眠れなくなったため、たびたびVさんに音量を下げるよう要求したが、一向に聞き入れてくれなかった。
頭にきたAさんは、最近使い始めたSNSで、Vさんを本名で名指しして「Vは頭がおかしい。あいつは薬物中毒者で近所の人全員が迷惑にしてる」などと投稿した。
これに気づいたVさんは警察が相談したところ、Aさんは逮捕されるに至った。
取調べに対し、Aさんは「家族に愚痴を言う感覚で投稿してしまった。こんな大事になると思ってなかった。」と容疑を認めている。
(フィクションです)

名誉毀損罪

刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

本件Aさんは、隣に住むVさんが昼夜問わずテレビを大音量で流すことに腹を立て、SNS上でVさんを頭のおかしい薬物中毒者などと罵ったようです。
本件Aの行為は名誉毀損罪にあたるのでしょうか?

まず、「公然と」というのは、摘示された事実を不特定または多数人が認識できる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、社会一般に知れわたる程度の人数という意味であり相当の多数であることを必要とします。

Aさんは、SNS上でVさんを、頭がおかしい薬物中毒者だと投稿しています。
SNS上の投稿は誰でもみることができますから、Aの書き込みは、不特定の人が認識できる状態にあったと言えそうです。
したがって、Aさんは「公然と」人の名誉を毀損したと言えそうです。

次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
ここでの事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。

本件Aさんは、「Vが頭のおかしい薬物中毒者」と投稿しています。
頭のおかしい薬物中毒者かどうかは、真実かどうか照明の対象となりうる程度に具体的です。
また、頭のおかしい薬物中毒者と思われた場合、その人は関わってはダメな反社会的な人物であるとして、社会的評価が低下する可能性があります。
以上より、Aは、公然と事実を摘示してVさんの名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

なお、名誉棄損罪の成立には、現実にAさんの発言によりVさんの名誉が棄損されたことが必要でしょうか?
この点、条文の文言からは必要であるように思われます。
しかし、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、判例によれば被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。

できるだけ早く弁護士に相談を

名誉毀損罪親告罪ですから、Vさんが告訴しないければAさんは起訴されません(刑法232条)。
起訴されなければ、前科がつくこともありませんから、告訴を防げるかどうかは非常に重要です。

被害者の告訴を阻止するためには、被害者に真摯に謝罪をして告訴をしないという内容の示談をまとめることが重要になります。
もっとも、加害者が直接被害者と交渉することは得策ではありません。
Vさんからすれば、Aさんは自分のことを頭のおかしい薬物中毒者などとSNS上で投稿して自分の名誉を毀損するような行為をした人物ですから、通常は強い処罰感情を有しており、謝罪すら受け入れてもらえないかもしれません。
仮に交渉に応じてくれたとしても過大な要求をされる可能性もあります。

そこで、被害者との話し合いは、示談交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
加害者と連絡を取ることに強い抵抗を感じる被害者であっても、弁護士相手であれば交渉に応じてくれることは少なくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が示談交渉を行うことで、告訴されることを防げる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

「校則破ってバイトしてるのバラすぞ」高校生を恐喝した疑いで大学生を逮捕

2024-06-19

「校則破ってバイトしてるのバラすぞ」高校生を恐喝した疑いで大学生を逮捕

胸ぐらを掴む男性

「校則破ってバイトしてるのバラすぞ」などと言って高校生を恐喝した疑いで大学生が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都府宇治警察署は、京都市内の大学に通う大学生Aを恐喝の疑いで逮捕した。
Aは、京都府宇治市内の抹茶専門店に抹茶パフェを食べに行ったところ、友人の弟である高校生Vが働いているのを見かけた。
Vの高校は、校則でバイトが禁止されていることを知っていたAは、Vに声をかけ「高校バイトダメじゃなかったっけ?バイト終わったら駅で話そう」などと言って、バイト終わりのVと駅で落ち合う約束をした。
Aは、約束通りに駅までやってきたVの胸ぐらを掴んで、「調べたらやっぱりVの高校バイト禁止やんな?校則破ってバイトしてるのバラされたくなかったら、口止め料として残ってる先月分のバイト代渡せや」などと言って、5万円をVから受け取った。
一部始終を見ていた近くの駅員が警察に通報し、駆けつけた警察官にAは逮捕された。
京都府宇治警察署の取調べに対し、Aは「金欠だったので、ついやってしまった」と容疑を認めている。
(フィクションです)

恐喝罪とは

刑法249条1項
人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。

本件で、Aは、友人の弟であるVから、校則違反のバイトをしていることをバラされたくなければ5万円を寄越せと脅して、5万円という財物を自身に交付させたと言えますから、恐喝罪が成立する可能性があります。

恐喝とは、①財物交付に向けられた、人を畏怖させるに足りる脅迫または暴行であって、②その反抗を抑圧するに至らない程度の行為を言います。

Aは、Vの胸ぐらを掴んで口止め料として現金をよこせと言ったようです。
胸ぐらを掴むのは、暴行にあたります。
また、年上の人に胸倉を掴まれると怖い思いをするでしょうから、Aは財物交付に向けて、人を畏怖させるに足りる暴行をしたと言えそうです(①)。

では、Aの上記行為は、世間一般の人から見て反抗を抑圧するに至らない程度と言えるでしょうか?(②)
例えば、鋭利な刃物を突きつけながら金銭を要求する行為は、反抗を抑圧するに至る程度の暴行又は脅迫に当たると考えられます。
なぜなら、反抗した場合、刃物で刺されて命を落とす可能性があるので、抵抗せずに要求を飲むしかないと考えられるからです。
このような場合には、恐喝罪ではなく強盗罪が成立する可能性があります。

本件Aは、Vの胸ぐらを掴んで現金を要求したようです。
確かに年上の人から胸ぐらを掴まれると怖い思いをするかもしれませんが、駅員など周囲の人に助けを求めたり逃げ出すなどの反抗は可能でしょうから、Aの行為は世間一般的に見て反抗を抑圧する程度には至っていない可能性が高いでしょう。
ですので、今回の事例の場合には、Aには恐喝罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役となっているため、執行猶予がつかない可能性があります。
というのは、執行猶予がつくためには、下される量刑が3年以下であることが条件の1つだからです。
仮に執行猶予がつかなかった場合、刑務所の中で服役することになり大学に通ったり会社に出勤したりすることはできず、解雇や退学処分となることが珍しくありません。
したがって、刑務所での拘束を避けるためには、科される量刑を3年以内に抑えて執行猶予付判決を獲得する必要があり、そのためには被害者との間で示談を締結できるかが非常に重要となります。

本件の被害者Vは、校則違反のバイトをしていたという理由で、Aから理不尽にも先月分の給料を交付させられていますから、VはAに対して強い処罰感情を有していると考えられ、A自らVに接触して示談交渉を進めようとしてもうまくいかない可能性が高く、連絡を取ること自体拒絶されるかもしれません。

そこで、交渉のプロである弁護士に第三者的立場から示談交渉をしてもらうことをおすすめします。
加害者と直接連絡を取ることに強い抵抗を示す被害者であっても、弁護士を通じてであれば示談交渉に応じてくれることは珍しくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、恐喝事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、量刑を軽くしたり執行猶予付判決不起訴処分を得ることができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部ご相談ください。
ご予約のお電話は0120-631-881で承っています。

匿名掲示板上で同僚の名誉を毀損した疑いで逮捕された事例

2024-06-07

匿名掲示板上で同僚の名誉を毀損した疑いで逮捕された事例

取調べを受ける男性

匿名掲示板上で同僚の名誉を毀損した疑いで逮捕された事例について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府下京警察署は、京都市内の不動産会社に勤務する女性A(36)を逮捕した。
Aは、同じ会社の経理課で働くCさんと折が合わずにいたところ、Cが別部署の既婚男性と不倫関係にあることを知り、匿名掲示板上で、「Cは会社で既婚男性と不倫している。ろくに仕事もせずに何のために会社に来てるんだろう」などと投稿した疑い。
投稿から数日後、Cがこの書き込みに気づき会社と京都府下京警察署に相談した。
警察の捜査の結果、AのPCからの書き込みということが判明し、Aは逮捕された。
(フィクションです)

名誉毀損罪

刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

本件で、Aは、会社の同僚であるCさんが不倫していると匿名掲示板に書き込んだようです。
このAの行為は名誉毀損罪にあたるのでしょうか?

まず、「公然と」というのは、摘示された事実を不特定または多数人が認識できる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、社会一般に知れわたる程度の人数という意味であり相当の多数であることを必要とします。

本件で、Aは、匿名掲示板でCさんが不倫しているという内容の書き込みをしています。
匿名掲示板への書き込みは、誰でもみることができます。
したがって、Aの書き込みは、不特定の人が認識できる状態にあったと言えそうですから、「公然と」人の名誉を毀損したと言えそうです。

次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
ここでの事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。

Aさんは、「Cは会社で不倫している」という書き込みをしていますが、不倫しているかどうかは、真実かどうか照明の対象となりうる程度に具体的です。
会社で不倫していると言われると、その人は、非常識な人だと思われて社会的評価が低下する可能性があります。
以上より、Aは、公然と事実を摘示してCさんの名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

なお、条文の規定上、名誉棄損罪の成立には、現実にAの発言によりCの名誉が棄損されたことが必要であるかのように思えます。
しかし、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、判例によれば被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。

できるだけ早く弁護士に相談を

名誉毀損罪親告罪ですから、Cさんが告訴しないければAさんは起訴されません(刑法232条)。
起訴されなければ、前科がつくこともありませんから、告訴されないことが重要となります。

そのためには、被害者に対して真摯に謝罪をして告訴をしないという内容の示談をまとめる必要があります。
もっとも、加害者が直接被害者と交渉することは得策ではありません。
被害者にとっては、加害者は自分の名誉を毀損するような行為をした人物ですから、通常は強い処罰感情を有しているでしょうし、仮に交渉に応じてくれたとしても過大な要求をされる可能性もあります。

そこで、被害者との話し合いは、示談交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
加害者と連絡を取ることに強い抵抗を感じる被害者であっても、弁護士相手であれば交渉に応じてくれることは少なくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士示談交渉を行うことで、告訴されることを防げる可能性があります。
可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部ご相談ください。

【事例紹介】睡眠薬を飲ませたとして傷害罪の容疑で逮捕された事例

2024-06-05

【事例紹介】睡眠薬を飲ませたとして傷害罪の容疑で逮捕された事例

薬

睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を生じさせたとして傷害罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

知人女性に睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を負わせたとして、京都府警中京署は8日、傷害の疑いで、京都市上京区、准看護師の男(32)を逮捕した。
逮捕容疑は(中略)、同市中京区のバーで、友人の女性会社員(32)に「二日酔いの薬やし飲んどき。めっちゃこれ効くから」などと話して睡眠薬を飲ませ、女性を店内で一時意識不明の状態にし、嘔吐(おうと)させるなど薬物中毒症状にした疑い。
同署によると、男は「薬を飲ませたことは間違いないが、何の薬を飲ませたかはあいまい」と容疑を一部否認している。

(5月9日 京都新聞 「「二日酔いの薬やし」偽り睡眠薬飲ませる、女性が一時意識不明の状態に 知人の准看護師の男を容疑で逮捕」より引用)

睡眠薬と傷害罪

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害罪を簡単に説明すると、人にけがを負わせた際に成立する犯罪です。
例えば、人を殴ってけがをさせたりすると傷害罪が成立します。

今回の事例では、睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を生じさせたとして傷害罪の容疑で逮捕されたと報道されています。
睡眠薬を飲ませて薬物中毒症状を生じさせた場合にも傷害罪は成立するのでしょうか。

刑法第204条では、「人の身体を傷害した者」について規定していますが、「傷害」とは何なのでしょうか。
「傷害」について、判例では「身体の生理機能の障害または健康状態の不良な変更」だと考えています。

今回の事例の被害者は一時意識不明の状態になったり、嘔吐するなどの薬物中毒症状に陥ったようですので、被害者の生理機能が害されたといえそうです。
ですので、睡眠薬を飲んだことによる薬物中毒症状は傷害罪の規定する「傷害」にあたる可能性があります。

傷害罪と認識

人の生理機能を害したからと言って必ずしも傷害罪が成立するわけではありません。

例えば、人を蹴ってけがを負わせた場合には、故意に暴行を加えた結果、人の生理機能を害しているわけですから、けがを負わせるつもりがなかったとしても傷害罪が成立します。

一方で、薬を飲ませたことで健康被害が起きた場合などの暴行によらない場合には、薬を飲ませるなどの行為により、相手の生理機能を害する可能性があることを認識している必要があります。

ですので、今回の事例では睡眠薬を飲ませることで、薬物中毒症状を引き起こす可能性があることを認識している必要があるといえます。
報道によると容疑者は「薬を飲ませたことは間違いないが、何の薬を飲ませたかはあいまい」と容疑を一部否認しているそうで、「二日酔いの薬やし飲んどき。めっちゃこれ効くから」などと話して睡眠薬を被害者に飲ませたそうです。
容疑者が二日酔いの薬を飲ませるつもりが誤って睡眠薬を飲ませてしまったのであれば、傷害罪は成立せず、過失致傷罪が成立する可能性があります。

また、容疑者が睡眠薬を飲ませるつもりで二日酔いに効く薬だと偽って飲ませた場合には、准看護師である容疑者には睡眠薬を飲ませることで薬物中毒症状を生じさせる可能性、つまり、生理機能を害する可能性があることを認識できたと思われますから、傷害罪が成立する可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス無料法律相談を行っています。
傷害罪などの刑事事件でお困りの方は、お気軽に、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

知人をロリコン性犯罪者などと中傷した疑いで大学生を逮捕

2024-05-22

知人をロリコン性犯罪者などと中傷した疑いで大学生を逮捕

スマホ

知人をロリコン性犯罪者などと中傷した疑いで大学生が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例解説

京都府下鴨警察署は、京都市内に住む大学4年生の男Aを、名誉毀損罪の疑いで逮捕した。
Aは、自分が最終面接で落ちた第一希望の会社Cに、同じサークルに所属するVが自分は内定をもらったと自慢された挙句、「俺は第一希望じゃないからAに分けてあげたいわ笑」と言われたことに腹を立て、SNS上で、「VがC社に内定もらったらしい。そいつロリコン性犯罪者ですよ」「Vみたいなロリコン性犯罪者を採用するとか見る目ないな」などと投稿した。
Aの投稿に、サークルのメンバー伝えにVが気づき、被害届を提出したところ、Aは京都府下鴨警察署に逮捕された。
取調べに対しAは、「あいつはサークルの合宿で小学生と付き合いたいと言っていた。だからロリコンだし性犯罪者予備軍だから本当のことを言っただけ」などと供述している。
(フィクションです)

名誉毀損罪とは

刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

本件で、Aは、SNS上でVをロリコン性犯罪者などと中傷する投稿をしたようですが、このAの行為は、「公然と」「事実を摘示して」人の名誉を棄損したといえるのでしょうか?

まず、「公然と」とは、摘示された事実を不特定または多数人が認識しうる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、社会一般に知れわたる程度の人数という意味であり相当の多数であることを必要とします。
本件では、Aは、SNS上で、Vがロリコン性犯罪者と中傷する投稿をしたようです。
SNSに投稿された内容は、だれでも見ることができますから、Aによって摘示されたVがロリコン性犯罪者だと中傷する投稿は、不特定の人が認識しうる状態にあったといえますから、「公然と」人の名誉を棄損したといえそうです。

次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
ここでの事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。
Aの「Vはロリコン性犯罪者」とする投稿は、真実かどうか証明の対象となりうる程度に具体的です。
加えて、ロリコンで性犯罪者であるといわれると、Vは常人には理解し難い特殊な性癖の持ち主であり、あまり関わってはいけない人物だと思われて社会的評価が低下する可能性があります。

以上より、Aは、公然と事実を摘示して人の名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

条文にも書いてある通り、ここでの事実とは、真実と虚偽のどちらも含まれます。
したがって、仮にBが本当にロリコンで性犯罪者であったとしても名誉棄損罪の成立は妨げられません。

なお、条文の規定上、名誉棄損罪の成立には、現実にVの名誉が棄損されたことが必要であるかのように思えます。
しかし、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、判例によれば被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。

できるだけ早く弁護士に相談を

名誉棄損罪親告罪、すなわち検察官が起訴するために被害者などの告訴が必要な犯罪です(刑法232条)。
名誉棄損罪親告罪とされるのは、起訴されることで、かえって被害者の名誉を侵害する恐れがあるためです。

したがって、名誉毀損罪を犯してしまった場合には、被害者に対して真摯に謝罪をし、必要な示談金を支払うことを約束した上で、告訴をしない旨を約束してもらう形で示談を成立させることが重要となります。

本件Vは、SNS上でAからロリコン性犯罪者と罵られ、内定先の企業等に悪いイメージを持たれてしまう可能性などの被害を受けていますから、Aに対して強い処罰感情を有しており、Aが直接謝罪しようとしても取り合ってくれない可能性があります。
そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。
加害者からの示談交渉を拒絶する被害者であっても、弁護士相手であれば交渉に応じてくれることは珍しくありません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行い、告訴を取り下げてもらうことで不起訴処分を得ることができる可能性があります。
一度起訴されてしまうと、告訴を取り下げることはできません。
ですので、可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部ご相談ください。

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件②

2024-04-15

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件②

ナイフを持つ人

前回のコラムに引き続き、妻を包丁で刺し殺したとして殺人罪の容疑をかけられている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都市伏見区小栗栖の集合住宅で女性(77)が死亡した事件で、京都府警山科署は9日、司法解剖の結果、死因は出血性ショックだったと発表した。(中略)同署は80代の夫が女性を包丁で刺したとみて調べている。
同署によると、(中略)夫から「妻を刺した」と110番があった。夫は自身の体も刺して搬送され、重傷という。無理心中を図った可能性があり、夫の回復を待って殺人容疑で事情を聴く方針。

(4月9日 京都新聞 「77歳女性の死因は出血性ショック死 80代夫が包丁で刺し無理心中か 京都市伏見区」より引用)

同意殺人罪

刑法第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

同意殺人罪には、嘱託殺人承諾殺人があります。
承諾殺人とは、簡単に説明すると、相手の同意を得てその人を殺すことをいいます。
承諾殺人における同意は、この同意は真意に基づく同意である必要があります。

例えば、一緒に死のうと提案し相手に殺してもいいか確認した際に相手は冗談だと思って同意した場合には、実際に殺されることを認識していないわけですから同意を得ていたとはいえません。
ですので、相手が殺されることを認識したうえで同意している場合でなければ、承諾殺人にはあたらないことになります。

今回の事例では、容疑者である夫が妻を包丁で刺し殺し、自らの身体も包丁で刺したとされています。
また、報道によると無理心中を図った可能性があるようです。
無理心中の場合、前もって相手に殺すことに対して同意を取っていた可能性があります。
ですので、今回の事例で被害者が容疑者に殺されることに同意しており、同意のうえ、容疑者が被害者を刺し殺したのであれば、承諾殺人にあたり、殺人罪ではなく同意殺人罪が成立する可能性があります。

とはいえ、殺された被害者に同意の有無を確認することは不可能ですから、同意があったにもかかわらず、殺人罪が成立してしまう可能性があります。
そういった事態を避けるためにも、容疑者本人の供述も重要な証拠になってくるでしょうから、取調べの対策を立てておくことが重要になります。

初めての取調べでは緊張や不安からうまく話せない可能性があります。
また、警察官や検察官は供述を誘導してくる可能性があり、その誘導に乗ってしまった結果、自分に不利になる供述調書や意に反した供述調書を作成されてしまうおそれがあります。
事前に弁護士に相談をして、供述内容を整理しておくことで、こういった事態を避けられるかもしれません。

繰り返しになりますが、被害者が死亡してしまっている場合には同意の有無を確認することは難しく、実際に同意を得ていても殺人罪が成立してしまうおそれがあります。
刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談をすることで、殺人罪の成立を避けられる可能性がありますから、殺人罪の容疑をかけられている場合には、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件①

2024-04-12

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件①

ナイフを持つ人

妻を包丁で刺し殺したとして殺人罪の容疑をかけられている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都市伏見区小栗栖の集合住宅で女性(77)が死亡した事件で、京都府警山科署は9日、司法解剖の結果、死因は出血性ショックだったと発表した。(中略)同署は80代の夫が女性を包丁で刺したとみて調べている。
同署によると、(中略)夫から「妻を刺した」と110番があった。夫は自身の体も刺して搬送され、重傷という。無理心中を図った可能性があり、夫の回復を待って殺人容疑で事情を聴く方針。

(4月9日 京都新聞 「77歳女性の死因は出血性ショック死 80代夫が包丁で刺し無理心中か 京都市伏見区」より引用)

殺人罪

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

殺人罪とは簡単に説明すると、人を殺す意思をもって人を殺すと成立する犯罪です。
上記のように、殺人罪には故意、殺す意思をもっている必要がありますので、人を殺してしまった場合に必ず殺人罪が成立するわけではありません。

例えば、車を運転中に過失により歩行者に気づかず、轢いて亡くならせてしまった場合には、過失運転致死罪の成立が考えられます。
一方で、車の運転中に嫌いな上司を発見し、事故に見せかけて殺してやろうと考えてひき殺した場合には、殺す意思をもって人を殺したとして、殺人罪の成立が考えられます。
以上により、どちらの場合も車で人を轢いて殺してしまった点では同じですが、殺す意思があったかどうかで殺人罪が成立するか否かが変わってくることがわかります。

今回の事例を考えていきましょう。

今回の事例では、容疑者である夫が妻を包丁で刺し、その後出血性ショックで死亡したと報道されています。
無理心中を図った可能性があると報道されており、実際に無理心中をするつもりで容疑者が妻を刺したのであれば、殺す意思があったと判断される可能性が高いと思われます。
また、今回は凶器として包丁が使われているようです。
刺す箇所にもよりますが、包丁で急所を刺されれば死に至る可能性が高いですから、包丁などの凶器を用いている場合には殺す意思があったと判断される可能性があります。
実際に、容疑者が包丁で妻を刺し殺したのであれば、殺す意思があったとして殺人罪が成立する可能性があります。

殺人罪の法定刑は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役です。
殺人罪で有罪になると死刑や無期懲役刑が科される可能性があり、刑法の中でもかなり重い刑罰を科される犯罪だといえます。
殺人罪は死刑や無期懲役刑だけでなく、5年以上の有期懲役刑も規定されていますので、裁判で有利な事情を主張することで、死刑や無期懲役を避けられる可能性があります。
殺人罪では裁判員裁判が開かれることになり、通常の裁判の手続きとは異なりますので、刑事事件の経験豊富な弁護士に委任されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は刑事事件に精通した法律事務所です。
殺人罪の容疑をかけられている方は、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

宿泊するつもりがないにもかかわらずホテルに宿泊の予約を入れた男を偽計業務妨害罪で逮捕

2024-04-04

宿泊するつもりがないにもかかわらずホテルに宿泊の予約を入れた男を偽計業務妨害罪で逮捕

犯罪の電話

宿泊するつもりがないにもかかわらずホテルに宿泊の予約を入れた男が偽計業務妨害罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都府東山警察署は、奈良県在住の男性A(34)を、宿泊するつもりがないにもかかわらず東山区にあるホテルVに7日間連泊の予約を入れて、当日になってもキャンセルの連絡もせずに来泊しなかったとして偽計業務妨害罪の疑いで逮捕した。
男は取調べに対し、「ホテルVのテレビCMで、自分の嫌いな俳優を使っていてムカついたので軽い気持ちで懲らしめてやろうと思って嘘の予約を入れた」と容疑を認めている。
(フィクションです)

偽計業務妨害罪とは

刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

上記233条の、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人(…)の業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」という箇所が偽計業務妨害罪を規定しています。

偽計業務妨害罪の妨害手段は、①虚偽の風説を流布すること、②偽計すなわち人を騙したり誘惑したり、あるいは人の勘違いや不知を利用することです。
本件では、Aは、ホテルVに7日間の宿泊予約をして自身が宿泊客であるかのように装うことでホテルVを騙して、実際には泊まりに来なかったようです。
したがって、AはホテルVに対して偽計を用いたと言えそうです。

業務の妨害

刑法233条によると、偽計を用いるなどして「業務を妨害した」とした場合に偽計業務妨害罪が成立するようです。
もっとも、判例によると現実に業務活動が阻害されたことは必要ではなく、業務活動が阻害されるおそれがあると言えれば良いとされています(大判昭和11年5月7日、最判28年1月30日)。
「業務」とは、職業として行われる活動など、人が社会生活上の地位に基づき継続して従事する事務をいいます(東京高裁昭和35年6月9日)。

Aが予約をしておきながら実際に宿泊しに来なかったことによって、他の宿泊客からしてもらえたかもしれない予約を逃してしまい営業活動を妨げられている可能性があります。
また、ホテル側はAが宿泊すると思っているわけですから、本来しなくてよかったAを迎えるための業務を行なっている可能性が高く、これによって他の業務に費やせた時間や労力が消費されたかもしれません。
加えて、Aが当日になっても何も連絡しなかったため、ホテル側はAが遅れて泊まりに来るかもしれないと考えてスタッフの配置を修正する必要に迫られた可能性もあります。
また、ホテルでの仕事は社会生活上の活動ですし、継続して行われますので、偽計業務妨害罪が規定する「業務」にあたると考えられます。
したがって、Aの行為は、ホテルの業務を妨害するおそれのある行為だと言えそうですから、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

本件で男は逮捕されており、この後に起訴され裁判となる可能性があります。
裁判となれば有罪となる可能性がありますし、仮に無罪となっても裁判中は大きな負担となります。

偽計業務妨害罪は被害者のいる犯罪ですから、被害者と示談を締結することで、事件を早期に解決したり、有罪となった場合にも執行猶予がつく可能性があります。
例えば、被害者が被害届を警察に提出する前に示談を結ぶことができれば、事件化を防ぐことができるかもしれません。
仮に事件化した場合であっても、示談が成立していれば、不起訴処分といって検察官が起訴をしない選択をする可能性もありますし、起訴されたとしても裁判官が執行猶予をつけてくれる可能性もあります。

示談交渉は加害者自ら行うのではなく交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
本件のように、偽計を用いて宿泊するつもりがないのに宿泊予約をした加害者に対して、被害者であるホテル側は強い処罰感情を有している可能性が高いと言えますから、示談交渉に応じてもらえないこともめずらしくありません。
このような状況であっても、弁護士相手であれば示談交渉に応じてもらえる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、偽計業務妨害事件をはじめ豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
交渉のプロである経験豊富な弁護士が示談交渉を行うことで、事件化や起訴を防ぐことができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

「あいつはヤクザ」などと名誉を毀損する内容の投稿をSNSにした疑いで逮捕された事例

2024-03-29

「あいつはヤクザ」などと名誉を毀損する内容の投稿をSNSにした疑いで逮捕された事例

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「あいつはヤクザ」などと名誉を毀損する内容の投稿をSNSにした疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府中京警察署は、京都市内で飲食店を経営する男性A(56)を名誉毀損罪の疑いで逮捕した。
Aは、自身の店の常連客の一人で、何かと理由をつけてクレームを言ってくるBに日頃からストレスを感じていたところ、ある日提供したビールがぬるいから会計を安くしろなどと難癖をつけてきた。
腹を立てたAは、SNS上で「Bはヤクザ。2度とくるな」などとBの名誉を毀損する内容の投稿をしてしまった。
Bから被害届を提出されたことをきっかけに捜査が開始し、Aは逮捕された。
(フィクションです)

名誉棄損罪

刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

本件では、AはBの名誉を毀損した疑いが持たれています。
Aがした「Bはヤクザ。2度とくるな」という内容の投稿は、「公然と」「事実を摘示して」人の名誉を棄損したといえるのでしょうか?

判例によれば、「公然と」とは、摘示された事実を不特定または多数人が認識しうる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、具体的な数は規定されていませんが1、2人では多数とはいえないでしょうから、相当の数を必要としていると考えられます。

本件では、Aは日頃から難癖をつけてくるBに腹を立てていたところ、怒りが限界に達し「Bはヤクザ」という内容の投稿をしてしまったようです。
SNSに投稿された内容は、だれでも見ることができますからBがヤクザだとするAの投稿は、不特定の人が認識しうる状態にあったといえます。
したがって、Aは、人の名誉を「公然と」棄損したとされる可能性があります。

次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
名誉毀損罪における事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。

本件で、Aが投稿した「Bはヤクザ」という内容は、真実かどうか証明の対象となりうる程度に具体的です。
さらに、公然と「Bはヤクザ」だと言われることで、周りの人からBさんは関わってはいけない悪い人だと思われて社会的評価が低下する可能性があります。

以上より、Aは、公然と事実を摘示して人の名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

なお、条文の規定上、名誉棄損罪の成立には、実際にBの名誉が棄損されたことが必要であるかのように読めます。
しかし、判例によれば、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。

できるだけ早く弁護士に相談を

名誉棄損罪は、親告罪と言って、検察官が起訴するために被害者などの告訴が必要とされます(刑法232条)。
起訴されることで、かえって、被害者の名誉が侵害されるおそれがあるためです。
したがって、告訴前であれば、真摯に謝罪することで告訴はしないという内容の示談をまとめることが重要です。
仮に、すでに告訴されている場合は、起訴前に告訴を取り消してもらえるかどうかが非常に重要になってきます。
なぜなら、告訴の取下げに成功すれば、不起訴処分となり前科がつくこともないからです。

名誉を毀損された被害者は、自分の社会的な評価を下げさせかねない発言をしてきた加害者に対して、被害者は強い処罰感情を抱いている可能性が高いです。
したがって、加害者が直接相手方と示談交渉をすることは得策ではありません。
本件の場合、被害者は何かと難癖をつけてくる相手のようですから、告訴の取り下げと引き換えに法外な示談金を請求される可能性があります。

そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。
被害者も弁護士相手であれば、冷静に示談交渉に応じてくれる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行い、告訴を取り下げてもらうことで不起訴処分を得ることができる可能性があります。
一度起訴されてしまうと、告訴を取り下げることはできません。
ですので、可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

100万円分のサンドバッグになることで賭け麻雀で負けた分を無しにしてもらった事件

2024-03-13

100万円分のサンドバッグになることで賭け麻雀で負けた分を無しにしてもらった事件

賭博

賭け麻雀で負けた男が、100万の支払いをサンドバッグとして1時間殴られる見返りに免除にしてもらった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都府伏見警察署によると、男性は、京都市伏見区内にある駅前の雑居ビルで友人のほかその場に居合わせた者と賭け麻雀をして100万円ほど負けたが、お金がなく支払えなかったため、1時間サンドバッグ代わりに殴られることを条件に免除してもらった。
1時間サンドバッグ代わりに暴行を受けた結果、気絶した男性は救急車に運ばれ、病院から伏見警察署に通報され事件が発覚した。
被害男性は肋骨が折れて全治2ヶ月と診断された。
(事例はフィクションです。)

賭け麻雀

本件では、大きく分けて2つの犯罪が成立する可能性があります。
1つは、賭博罪です。

刑法185条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

賭博とは、偶然の勝ち負けによって財産を得るか失うかを争うことを言います。
本件では、男らは現金を賭けて麻雀をしたとされています。
麻雀は偶然の要素により勝ち負けが左右されるものですから、その勝敗に現金という財産を得るか失うかを賭ける賭け麻雀は、賭博に当たる可能性があります。

もっとも、本条はただし書きで、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは」賭博罪は成立しないとしています。
本件も、このただし書きに当たりはしないのでしょうか。
「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」場合とは、すぐに飲み食いするなどして消費するもので、価値も低いものを賭けた場合を言います。
例えば、負けた人は勝った人にラーメンを奢るような場合です。
本件では、男は100万円もの大金を賭けて負けたようですから、ただし書きには該当しないでしょう。
以上より、サンドバッグになった男も含めて、賭け麻雀に参加した人には、賭博罪が成立する可能性があります。

被害者への暴行と承諾

もう1つ、サンドバッグになった男を被害者とする傷害罪が成立する可能性があります。

刑法204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害とは、殴って出血させたりするなどして人の生理的機能に障害を与えることを言います。
本件では、加害者は被害者を殴って、肋骨を折っているようですから、傷害罪が成立するように思われます。

もっとも、被害者は自分から100万円分サンドバッグとして殴られることを提案しているので、傷害行為を受けることについて被害者の承諾があるとも言えそうです。
刑法204条の傷害罪の規定は、個人の身体を守るための規定ですから、当の本人が傷害行為に晒されることに同意している場合、傷害罪は成立しないのではないでしょうか?
この点について、判例は、承諾があっても、傷害罪が成立するかどうかは、「単に承諾が存在するという事実だけでなく、」その「承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべき」であるとしています(最高裁決定昭和55年11月13日)。
例えば、不義理をした暴力団員の小指を、その承諾を得て切断をした事例について、犯罪が成立するとした裁判例があります(仙台地裁石巻支部昭和62年2月18日判時1249号145頁)。
本件では、被害者の承諾は、賭博という違法行為によって発生した100万の請求を免除するために得られていますから、承諾を得た目的が社会的に相当ではないと言えるでしょうし、身体傷害の程度も肋骨の骨折して全治2ヶ月と重症です。
したがって、被害者の承諾があるとはいえ、傷害罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

185条の賭博罪の法定刑は、50万円以下の罰金又は科料となっています。
このような比較的軽い刑罰となっているのは、賭博を主催するものが搾取する側であるのに対し、賭博に参加するものは搾取される側であるためです。
したがって、微罪処分や不起訴処分となり前科がつかないこともあります。
もっとも、とるべき防御活動を怠ったために罰金刑がつく可能性もあります。
罰金刑も刑罰ですから前科となります。
したがって、賭け麻雀をして警察に呼び出された場合には、出頭前に弁護士に一度相談することをおすすめします。

また、本件では、被害男性に対する傷害罪が成立する可能性があります。
傷害罪の法定刑は十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金と非常に重たいため、容疑者が逃亡したり証拠隠滅したりする恐れがあるため逮捕されることも多いです。
逮捕による身柄拘束は最大3日ですが、必要と判断されれば勾留という10日間に及ぶ身体拘束がされる恐れがあり、さらに延長されることさえあります。
逮捕前逮捕後すぐに弁護士に弁護活動を依頼していれば、勾留が不要である旨の意見書を提出することができ、早期に身柄が解放される可能性があります。
意見書を提出する機会を逃さないためにも、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、賭博事件傷害事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
賭け麻雀をして警察に見つかった場合や傷害事件を起こしてしまった場合には、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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