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【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件②

2024-04-15

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件②

ナイフを持つ人

前回のコラムに引き続き、妻を包丁で刺し殺したとして殺人罪の容疑をかけられている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都市伏見区小栗栖の集合住宅で女性(77)が死亡した事件で、京都府警山科署は9日、司法解剖の結果、死因は出血性ショックだったと発表した。(中略)同署は80代の夫が女性を包丁で刺したとみて調べている。
同署によると、(中略)夫から「妻を刺した」と110番があった。夫は自身の体も刺して搬送され、重傷という。無理心中を図った可能性があり、夫の回復を待って殺人容疑で事情を聴く方針。

(4月9日 京都新聞 「77歳女性の死因は出血性ショック死 80代夫が包丁で刺し無理心中か 京都市伏見区」より引用)

同意殺人罪

刑法第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の懲役又は禁錮に処する。

同意殺人罪には、嘱託殺人承諾殺人があります。
承諾殺人とは、簡単に説明すると、相手の同意を得てその人を殺すことをいいます。
承諾殺人における同意は、この同意は真意に基づく同意である必要があります。

例えば、一緒に死のうと提案し相手に殺してもいいか確認した際に相手は冗談だと思って同意した場合には、実際に殺されることを認識していないわけですから同意を得ていたとはいえません。
ですので、相手が殺されることを認識したうえで同意している場合でなければ、承諾殺人にはあたらないことになります。

今回の事例では、容疑者である夫が妻を包丁で刺し殺し、自らの身体も包丁で刺したとされています。
また、報道によると無理心中を図った可能性があるようです。
無理心中の場合、前もって相手に殺すことに対して同意を取っていた可能性があります。
ですので、今回の事例で被害者が容疑者に殺されることに同意しており、同意のうえ、容疑者が被害者を刺し殺したのであれば、承諾殺人にあたり、殺人罪ではなく同意殺人罪が成立する可能性があります。

とはいえ、殺された被害者に同意の有無を確認することは不可能ですから、同意があったにもかかわらず、殺人罪が成立してしまう可能性があります。
そういった事態を避けるためにも、容疑者本人の供述も重要な証拠になってくるでしょうから、取調べの対策を立てておくことが重要になります。

初めての取調べでは緊張や不安からうまく話せない可能性があります。
また、警察官や検察官は供述を誘導してくる可能性があり、その誘導に乗ってしまった結果、自分に不利になる供述調書や意に反した供述調書を作成されてしまうおそれがあります。
事前に弁護士に相談をして、供述内容を整理しておくことで、こういった事態を避けられるかもしれません。

繰り返しになりますが、被害者が死亡してしまっている場合には同意の有無を確認することは難しく、実際に同意を得ていても殺人罪が成立してしまうおそれがあります。
刑事事件の弁護経験が豊富な弁護士に相談をすることで、殺人罪の成立を避けられる可能性がありますから、殺人罪の容疑をかけられている場合には、お早めに弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件①

2024-04-12

【事例紹介】妻を包丁で刺し殺し、無理心中を図ったと思われる殺人事件①

ナイフを持つ人

妻を包丁で刺し殺したとして殺人罪の容疑をかけられている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都市伏見区小栗栖の集合住宅で女性(77)が死亡した事件で、京都府警山科署は9日、司法解剖の結果、死因は出血性ショックだったと発表した。(中略)同署は80代の夫が女性を包丁で刺したとみて調べている。
同署によると、(中略)夫から「妻を刺した」と110番があった。夫は自身の体も刺して搬送され、重傷という。無理心中を図った可能性があり、夫の回復を待って殺人容疑で事情を聴く方針。

(4月9日 京都新聞 「77歳女性の死因は出血性ショック死 80代夫が包丁で刺し無理心中か 京都市伏見区」より引用)

殺人罪

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。

殺人罪とは簡単に説明すると、人を殺す意思をもって人を殺すと成立する犯罪です。
上記のように、殺人罪には故意、殺す意思をもっている必要がありますので、人を殺してしまった場合に必ず殺人罪が成立するわけではありません。

例えば、車を運転中に過失により歩行者に気づかず、轢いて亡くならせてしまった場合には、過失運転致死罪の成立が考えられます。
一方で、車の運転中に嫌いな上司を発見し、事故に見せかけて殺してやろうと考えてひき殺した場合には、殺す意思をもって人を殺したとして、殺人罪の成立が考えられます。
以上により、どちらの場合も車で人を轢いて殺してしまった点では同じですが、殺す意思があったかどうかで殺人罪が成立するか否かが変わってくることがわかります。

今回の事例を考えていきましょう。

今回の事例では、容疑者である夫が妻を包丁で刺し、その後出血性ショックで死亡したと報道されています。
無理心中を図った可能性があると報道されており、実際に無理心中をするつもりで容疑者が妻を刺したのであれば、殺す意思があったと判断される可能性が高いと思われます。
また、今回は凶器として包丁が使われているようです。
刺す箇所にもよりますが、包丁で急所を刺されれば死に至る可能性が高いですから、包丁などの凶器を用いている場合には殺す意思があったと判断される可能性があります。
実際に、容疑者が包丁で妻を刺し殺したのであれば、殺す意思があったとして殺人罪が成立する可能性があります。

殺人罪の法定刑は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役です。
殺人罪で有罪になると死刑や無期懲役刑が科される可能性があり、刑法の中でもかなり重い刑罰を科される犯罪だといえます。
殺人罪は死刑や無期懲役刑だけでなく、5年以上の有期懲役刑も規定されていますので、裁判で有利な事情を主張することで、死刑や無期懲役を避けられる可能性があります。
殺人罪では裁判員裁判が開かれることになり、通常の裁判の手続きとは異なりますので、刑事事件の経験豊富な弁護士に委任されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は刑事事件に精通した法律事務所です。
殺人罪の容疑をかけられている方は、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

宿泊するつもりがないにもかかわらずホテルに宿泊の予約を入れた男を偽計業務妨害罪で逮捕

2024-04-04

宿泊するつもりがないにもかかわらずホテルに宿泊の予約を入れた男を偽計業務妨害罪で逮捕

犯罪の電話

宿泊するつもりがないにもかかわらずホテルに宿泊の予約を入れた男が偽計業務妨害罪で逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都府東山警察署は、奈良県在住の男性A(34)を、宿泊するつもりがないにもかかわらず東山区にあるホテルVに7日間連泊の予約を入れて、当日になってもキャンセルの連絡もせずに来泊しなかったとして偽計業務妨害罪の疑いで逮捕した。
男は取調べに対し、「ホテルVのテレビCMで、自分の嫌いな俳優を使っていてムカついたので軽い気持ちで懲らしめてやろうと思って嘘の予約を入れた」と容疑を認めている。
(フィクションです)

偽計業務妨害罪とは

刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

上記233条の、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人(…)の業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」という箇所が偽計業務妨害罪を規定しています。

偽計業務妨害罪の妨害手段は、①虚偽の風説を流布すること、②偽計すなわち人を騙したり誘惑したり、あるいは人の勘違いや不知を利用することです。
本件では、Aは、ホテルVに7日間の宿泊予約をして自身が宿泊客であるかのように装うことでホテルVを騙して、実際には泊まりに来なかったようです。
したがって、AはホテルVに対して偽計を用いたと言えそうです。

業務の妨害

刑法233条によると、偽計を用いるなどして「業務を妨害した」とした場合に偽計業務妨害罪が成立するようです。
もっとも、判例によると現実に業務活動が阻害されたことは必要ではなく、業務活動が阻害されるおそれがあると言えれば良いとされています(大判昭和11年5月7日、最判28年1月30日)。
「業務」とは、職業として行われる活動など、人が社会生活上の地位に基づき継続して従事する事務をいいます(東京高裁昭和35年6月9日)。

Aが予約をしておきながら実際に宿泊しに来なかったことによって、他の宿泊客からしてもらえたかもしれない予約を逃してしまい営業活動を妨げられている可能性があります。
また、ホテル側はAが宿泊すると思っているわけですから、本来しなくてよかったAを迎えるための業務を行なっている可能性が高く、これによって他の業務に費やせた時間や労力が消費されたかもしれません。
加えて、Aが当日になっても何も連絡しなかったため、ホテル側はAが遅れて泊まりに来るかもしれないと考えてスタッフの配置を修正する必要に迫られた可能性もあります。
また、ホテルでの仕事は社会生活上の活動ですし、継続して行われますので、偽計業務妨害罪が規定する「業務」にあたると考えられます。
したがって、Aの行為は、ホテルの業務を妨害するおそれのある行為だと言えそうですから、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

本件で男は逮捕されており、この後に起訴され裁判となる可能性があります。
裁判となれば有罪となる可能性がありますし、仮に無罪となっても裁判中は大きな負担となります。

偽計業務妨害罪は被害者のいる犯罪ですから、被害者と示談を締結することで、事件を早期に解決したり、有罪となった場合にも執行猶予がつく可能性があります。
例えば、被害者が被害届を警察に提出する前に示談を結ぶことができれば、事件化を防ぐことができるかもしれません。
仮に事件化した場合であっても、示談が成立していれば、不起訴処分といって検察官が起訴をしない選択をする可能性もありますし、起訴されたとしても裁判官が執行猶予をつけてくれる可能性もあります。

示談交渉は加害者自ら行うのではなく交渉のプロである弁護士に一任されることをおすすめします。
本件のように、偽計を用いて宿泊するつもりがないのに宿泊予約をした加害者に対して、被害者であるホテル側は強い処罰感情を有している可能性が高いと言えますから、示談交渉に応じてもらえないこともめずらしくありません。
このような状況であっても、弁護士相手であれば示談交渉に応じてもらえる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、偽計業務妨害事件をはじめ豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
交渉のプロである経験豊富な弁護士が示談交渉を行うことで、事件化や起訴を防ぐことができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

「あいつはヤクザ」などと名誉を毀損する内容の投稿をSNSにした疑いで逮捕された事例

2024-03-29

「あいつはヤクザ」などと名誉を毀損する内容の投稿をSNSにした疑いで逮捕された事例

スマホ

「あいつはヤクザ」などと名誉を毀損する内容の投稿をSNSにした疑いで逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府中京警察署は、京都市内で飲食店を経営する男性A(56)を名誉毀損罪の疑いで逮捕した。
Aは、自身の店の常連客の一人で、何かと理由をつけてクレームを言ってくるBに日頃からストレスを感じていたところ、ある日提供したビールがぬるいから会計を安くしろなどと難癖をつけてきた。
腹を立てたAは、SNS上で「Bはヤクザ。2度とくるな」などとBの名誉を毀損する内容の投稿をしてしまった。
Bから被害届を提出されたことをきっかけに捜査が開始し、Aは逮捕された。
(フィクションです)

名誉棄損罪

刑法230条1項
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。

本件では、AはBの名誉を毀損した疑いが持たれています。
Aがした「Bはヤクザ。2度とくるな」という内容の投稿は、「公然と」「事実を摘示して」人の名誉を棄損したといえるのでしょうか?

判例によれば、「公然と」とは、摘示された事実を不特定または多数人が認識しうる状態をいいます(最判昭和36年10月13日)。
不特定とは、相手方が限定されていないという意味です。
多数人とは、具体的な数は規定されていませんが1、2人では多数とはいえないでしょうから、相当の数を必要としていると考えられます。

本件では、Aは日頃から難癖をつけてくるBに腹を立てていたところ、怒りが限界に達し「Bはヤクザ」という内容の投稿をしてしまったようです。
SNSに投稿された内容は、だれでも見ることができますからBがヤクザだとするAの投稿は、不特定の人が認識しうる状態にあったといえます。
したがって、Aは、人の名誉を「公然と」棄損したとされる可能性があります。

次に、「事実を摘示」したといえるかも問題となります。
名誉毀損罪における事実とは、事実証明の対象となりうる程度に具体的であり、かつ、それ自体として人の社会的評価を低下させるような事実をいいます。

本件で、Aが投稿した「Bはヤクザ」という内容は、真実かどうか証明の対象となりうる程度に具体的です。
さらに、公然と「Bはヤクザ」だと言われることで、周りの人からBさんは関わってはいけない悪い人だと思われて社会的評価が低下する可能性があります。

以上より、Aは、公然と事実を摘示して人の名誉を棄損したとして、名誉棄損罪が成立する可能性があります。

なお、条文の規定上、名誉棄損罪の成立には、実際にBの名誉が棄損されたことが必要であるかのように読めます。
しかし、判例によれば、被害者の名誉が現実に棄損されたかどうかの判断は非常に困難ですから、被害者の名誉が現実に侵害される必要はありません(大判昭和13年2月28日)。

できるだけ早く弁護士に相談を

名誉棄損罪は、親告罪と言って、検察官が起訴するために被害者などの告訴が必要とされます(刑法232条)。
起訴されることで、かえって、被害者の名誉が侵害されるおそれがあるためです。
したがって、告訴前であれば、真摯に謝罪することで告訴はしないという内容の示談をまとめることが重要です。
仮に、すでに告訴されている場合は、起訴前に告訴を取り消してもらえるかどうかが非常に重要になってきます。
なぜなら、告訴の取下げに成功すれば、不起訴処分となり前科がつくこともないからです。

名誉を毀損された被害者は、自分の社会的な評価を下げさせかねない発言をしてきた加害者に対して、被害者は強い処罰感情を抱いている可能性が高いです。
したがって、加害者が直接相手方と示談交渉をすることは得策ではありません。
本件の場合、被害者は何かと難癖をつけてくる相手のようですから、告訴の取り下げと引き換えに法外な示談金を請求される可能性があります。

そこで、示談交渉のプロである弁護士に示談交渉をお任せすることをおすすめします。
被害者も弁護士相手であれば、冷静に示談交渉に応じてくれる可能性があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、名誉毀損事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行い、告訴を取り下げてもらうことで不起訴処分を得ることができる可能性があります。
一度起訴されてしまうと、告訴を取り下げることはできません。
ですので、可能な限り早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

100万円分のサンドバッグになることで賭け麻雀で負けた分を無しにしてもらった事件

2024-03-13

100万円分のサンドバッグになることで賭け麻雀で負けた分を無しにしてもらった事件

賭博

賭け麻雀で負けた男が、100万の支払いをサンドバッグとして1時間殴られる見返りに免除にしてもらった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都府伏見警察署によると、男性は、京都市伏見区内にある駅前の雑居ビルで友人のほかその場に居合わせた者と賭け麻雀をして100万円ほど負けたが、お金がなく支払えなかったため、1時間サンドバッグ代わりに殴られることを条件に免除してもらった。
1時間サンドバッグ代わりに暴行を受けた結果、気絶した男性は救急車に運ばれ、病院から伏見警察署に通報され事件が発覚した。
被害男性は肋骨が折れて全治2ヶ月と診断された。
(事例はフィクションです。)

賭け麻雀

本件では、大きく分けて2つの犯罪が成立する可能性があります。
1つは、賭博罪です。

刑法185条
賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

賭博とは、偶然の勝ち負けによって財産を得るか失うかを争うことを言います。
本件では、男らは現金を賭けて麻雀をしたとされています。
麻雀は偶然の要素により勝ち負けが左右されるものですから、その勝敗に現金という財産を得るか失うかを賭ける賭け麻雀は、賭博に当たる可能性があります。

もっとも、本条はただし書きで、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは」賭博罪は成立しないとしています。
本件も、このただし書きに当たりはしないのでしょうか。
「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」場合とは、すぐに飲み食いするなどして消費するもので、価値も低いものを賭けた場合を言います。
例えば、負けた人は勝った人にラーメンを奢るような場合です。
本件では、男は100万円もの大金を賭けて負けたようですから、ただし書きには該当しないでしょう。
以上より、サンドバッグになった男も含めて、賭け麻雀に参加した人には、賭博罪が成立する可能性があります。

被害者への暴行と承諾

もう1つ、サンドバッグになった男を被害者とする傷害罪が成立する可能性があります。

刑法204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害とは、殴って出血させたりするなどして人の生理的機能に障害を与えることを言います。
本件では、加害者は被害者を殴って、肋骨を折っているようですから、傷害罪が成立するように思われます。

もっとも、被害者は自分から100万円分サンドバッグとして殴られることを提案しているので、傷害行為を受けることについて被害者の承諾があるとも言えそうです。
刑法204条の傷害罪の規定は、個人の身体を守るための規定ですから、当の本人が傷害行為に晒されることに同意している場合、傷害罪は成立しないのではないでしょうか?
この点について、判例は、承諾があっても、傷害罪が成立するかどうかは、「単に承諾が存在するという事実だけでなく、」その「承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべき」であるとしています(最高裁決定昭和55年11月13日)。
例えば、不義理をした暴力団員の小指を、その承諾を得て切断をした事例について、犯罪が成立するとした裁判例があります(仙台地裁石巻支部昭和62年2月18日判時1249号145頁)。
本件では、被害者の承諾は、賭博という違法行為によって発生した100万の請求を免除するために得られていますから、承諾を得た目的が社会的に相当ではないと言えるでしょうし、身体傷害の程度も肋骨の骨折して全治2ヶ月と重症です。
したがって、被害者の承諾があるとはいえ、傷害罪が成立する可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

185条の賭博罪の法定刑は、50万円以下の罰金又は科料となっています。
このような比較的軽い刑罰となっているのは、賭博を主催するものが搾取する側であるのに対し、賭博に参加するものは搾取される側であるためです。
したがって、微罪処分や不起訴処分となり前科がつかないこともあります。
もっとも、とるべき防御活動を怠ったために罰金刑がつく可能性もあります。
罰金刑も刑罰ですから前科となります。
したがって、賭け麻雀をして警察に呼び出された場合には、出頭前に弁護士に一度相談することをおすすめします。

また、本件では、被害男性に対する傷害罪が成立する可能性があります。
傷害罪の法定刑は十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金と非常に重たいため、容疑者が逃亡したり証拠隠滅したりする恐れがあるため逮捕されることも多いです。
逮捕による身柄拘束は最大3日ですが、必要と判断されれば勾留という10日間に及ぶ身体拘束がされる恐れがあり、さらに延長されることさえあります。
逮捕前逮捕後すぐに弁護士に弁護活動を依頼していれば、勾留が不要である旨の意見書を提出することができ、早期に身柄が解放される可能性があります。
意見書を提出する機会を逃さないためにも、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、賭博事件傷害事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
賭け麻雀をして警察に見つかった場合や傷害事件を起こしてしまった場合には、一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

【事例紹介】現金を奪っていないのに、強盗致傷罪で逮捕された事例

2024-02-25

【事例紹介】現金を奪っていないのに、強盗致傷罪で逮捕された事例

窃盗や強盗で手に入れたお金

被害者を車で連れ去って監禁し暴行を加えることで現金を奪おうとしたとして、営利目的略取罪監禁罪強盗致傷罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警捜査1課と中京署は13日、営利目的略取と逮捕監禁、強盗致傷の疑いで、滋賀県豊郷町の建設会社社長など(中略)男4人を逮捕した。
4人の逮捕容疑は共謀して、(中略)京都市中京区の路上で、会社員男性(中略)の顔面を複数回殴り、車に押し込んで連れ去った後、滋賀県内の事務所に5日未明まで監禁。殴る蹴るの暴行を加えて軽傷を負わせ、「350万円払ったら逃がしたるわ」などと脅迫し、現金を奪おうとした疑い。府警は4人の認否を明らかにしていない。
(後略)

(2月13日 京都新聞 「退職申し出た従業員に暴行加え「350万円払ったら逃したる」 監禁などの疑いで建設会社社長ら4人逮捕」より引用)

営利目的略取罪

刑法第225条
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

略取とは、暴行や脅迫を用いて現在の生活状態から離脱させることで自分や第三者の支配下に置くことをいいます。
営利目的略取罪は、大まかに説明すると、金銭を得るなどの営利目的で略取を行うと成立する犯罪です。

今回の事例では、被害者の顔面を複数回殴り車に押し込んで連れ去ったとされています。
殴る行為は暴行に当たりますし、車でどこかへ連れ去る行為は現在の生活状態から離脱させ、容疑者らの支配下に置く行為だと推測できます。
また、「350万円払ったら逃がしたるわ」などと脅迫したと報道されていますので、営利目的があったと考えられますので、実際に容疑者らが被害者を車で連れ去ったのであれば、容疑者らに営利目的略取罪が成立する可能性があります。

監禁罪

刑法第220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

監禁罪は簡単に説明すると、鍵のかかった部屋に閉じ込めるなど、脱出が難しいような場所に閉じ込めると成立する犯罪です。

今回の事例では、被害者を車で連れ去ったとされています。
走行している車内から外に出る行為は最悪の場合死に至りますし、少なくともけがを負うでしょうから、走行中の車から脱出することは困難だといえます。
ですので、相手の同意なく車に乗せて走行する行為は監禁罪が成立すると考えられます。

また、報道では滋賀県内の事務所に被害者を監禁したとされています。
報道内容だけでは詳しいことは明らかではありませんが、鍵をかけた部屋に閉じ込めていた場合などは、脱出することは困難でしょうから、監禁罪が成立するおそれがあります。
ですので、今回の事例で実際に容疑者らが被害者を車で連れ去り滋賀県内の事務所で監禁したのであれば、監禁罪が成立するおそれがあります。

強盗致傷罪

刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

強盗罪は簡単に説明すると、抵抗できないような暴行や脅迫を用いてお金などを奪うと成立する犯罪です。
強盗の際にけがを負わせると強盗致傷罪が成立します。

今回の事例では、容疑者らが被害者に殴る蹴るの暴行を加えて軽傷を負わせ、「350万円払ったら逃がしたるわ」などと脅迫して現金を奪おうとしたと報道されています。
軽傷といえどもけがはけがですし、実際に容疑者らが350万円払えば逃がすという発言をしたのであれば、容疑者らは暴行を加えることで現金を奪おうとしていると推測できるでしょう。
であれば、実際に容疑者らがそういった発言をし、被害者にけがを負わせたのであれば、強盗致傷罪が成立する可能性があります。

ですが、今回の事例では、実際に現金を手に入れることはできなかったようです。
その場合にも強盗致傷罪は成立するのでしょうか。

判例では、「強盗に着手した者がその実行行為中被害者に暴行を加へて傷害の結果を生ぜしめた以上財物の奪取未遂の場合でも強盗傷人罪の既遂をもつて論ずべき」(昭和23年6月12日 最高裁判所 決定)だとしており、お金などの財物の奪取が未遂、つまりお金などを奪えていなくても暴行を加えて傷害の結果を生じさせた以上、強盗傷人罪は成立するとされています。
強盗傷人罪は刑法で明確に規定されているわけではなく、強盗傷人罪も強盗致傷罪と同様の刑法第240条が適用されます。
ですので、強盗致傷罪についても、財物が奪えていない場合も強盗致傷罪が成立する可能性があると考えられます。

ですので、今回の事例で容疑者らが実際に被害者から現金を奪おうとして暴行を加え、けがを負わせたのであれば、強盗致傷罪が成立する可能性があります。

逮捕されたら弁護士に相談を

共犯者がいる事件では、証拠隠滅の観点から、家族の接見が認められない場合があります。
ですが、弁護士による接見等一部解除の申請により、家族の接見が認められる場合があります。
また、弁護士による意見書の提出や準抗告の申し立てにより釈放を実現できる場合がありますので、ご家族が逮捕された方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

パチンコ店内で口論となった相手を殴った疑いで逮捕された事件

2024-02-21

パチンコ店内で口論となった相手を殴った疑いで逮捕された事件

胸ぐらを掴む男性

パチンコ店内で口論となった相手を殴った疑いで逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事件概要

京都府南警察署は、パチンコ店内でトラブルとなった相手を殴って全治2ヶ月の重症を負わせた疑いで、京都市内にあるホテルで働く会社員(35)の男性を傷害罪の容疑で現行犯逮捕した。
男は夜勤明けにパチンコをしていたところ負けが続き財布のお金が尽きたのでコンビニATMに行こうとして通路で別の客にぶつかり、イライラしていたこともあり殴ったり蹴ったりしてしまったと容疑を認めている。
相手の男性は殴られた勢いでパチンコ台に肩をぶつけて骨折し全治2ヶ月の重症を負った。
(フィクションです)

傷害罪とは

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害罪は、人の身体を「傷害」する犯罪です。
判例によれば、傷害とは人の生理的機能に障害を加えることです(大判明治45年6月20日)
例えば、人を殴って出血させた場合、血液が担う体内を循環し酸素などの物質や熱を運搬するといった生理的機能に障害を加えたといえます。
したがって、この場合には、人を傷害した、として傷害罪が成立する可能性があります。
本件では、容疑者は、パチンコで負けてイライラしていたところ、店内でぶつかった相手に殴る蹴るの暴行をして骨折させ、生理的機能に障害を加えています。
したがって、本件では傷害罪が成立する可能性があります。

逮捕されたらどうなるの?

本件で容疑者は逮捕されています。
逮捕自体は最大72時間ですが、この間に勾留の必要があるかどうかが検察官と裁判官により判断され、検察官が請求をし裁判官が勾留が必要だと判断した場合、さらに10日間身柄を拘束されることになります。
本件の容疑者は京都市内のホテルに勤務しているようです。
仮に、勾留された場合、仕事に行くことが長期間できなくなり、刑事事件を起こしてしまったことが勤務先のホテルに知られてしまう可能性が高いです。
この場合、長期間勤務できないことを理由に解雇されてしまう可能性がありますから、勾留の必要がないことを検察官と裁判官に説明すべきです。
もっとも、弁護士のように刑事事件に詳しくない一般の人にとって、検察官と裁判官に何をどう説明したら勾留の必要がないと判断してもらえるのか、よく分からないのではないでしょうか。

できるだけ早く弁護士に相談を

そこで、弁護士に相談されることをおすすめします。
弁護士は、検察官と裁判官に対し、勾留に対する意見書を提出することができます。
本件のように現行犯逮捕された場合は即座に弁護士を派遣してもらうことをおすすめします。
弁護士に依頼するのが遅くなってしまうと、適切なタイミングで適切な意見書を提出することが難しくなります。

仮に、釈放されずに起訴された場合、裁判所に対して保釈請求をして、身柄の解放を目指すことになります。
保釈が認められれば、保釈金を支払うことで身体拘束から解放されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、傷害事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
早い段階で弁護士に依頼していれば、長期間の身柄拘束を防ぎ、解雇を防ぐことができるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
逮捕された方への弁護士の派遣、無料法律相談のご予約は0120ー631ー881にて受け付けております。

【事例紹介】警部補が知り合いを転倒させてけがを負わせ、服の一部を壊した事例

2024-02-16

【事例紹介】警部補が知り合いを転倒させてけがを負わせ、服の一部を壊した事例

胸ぐらを掴む男性

京都府南丹署の警部補が知人にけがを負わせ、服の一部を壊したとして、傷害罪器物損壊罪の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

知人に軽傷を負わせたなどとして、京都府警は(中略)、傷害と器物損壊の疑いで、南丹署の30代の男性警部補を書類送検した。(中略)
書類送検容疑は、昨年10月、勤務後に飲酒して帰宅途中だった午後11時ごろ、南丹市内の路上で中傷を受けた知り合いの男性に対し、体を押して転倒させて右膝に軽傷を負わせ、服の一部を壊した疑い。(後略)

(2月15日 京都新聞 「知人にけがを負わせた男性警部補 傷害と器物損壊容疑で書類送検 京都府警」より引用)

傷害罪

刑法第204条
人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

傷害罪は簡単に説明すると、暴行などを加えて人にけがなどを負わせた際に成立する犯罪です。

今回の事例では、容疑者は知人の体を押して転倒させ、右膝に軽傷を負わせたとされています。
体を押す行為は暴行にあたりますし、体を押されたことで被害者である知人は転倒し、右膝をけがしたようです。
ですので、実際に容疑者が知人を転倒させ、けがを負わせたのであれば、傷害罪が成立する可能性が高いといえます。

器物損壊罪

刑法第261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

器物損壊罪は、簡単に説明すると、公用文書や私用文書、建造物以外の物を壊したり、使えなくした場合に成立する犯罪です。

今回の事例では、容疑者が知人の服の一部を壊したとされています。
服がどのように壊れたのかは報道からでは明らかではありませんが、おそらく転倒した際に破れたりしたのでしょう。
服は公用文書や私用文書、建造物にはあたりませんし、破れた服を着ることはできないでしょうから、実際に容疑者が知人の服の一部を壊したのであれば、器物損壊罪が成立する可能性があります。

書類送検

ニュースを見ていると、書類送検という言葉を目にすることがあると思います。
書類送検とはいったいなんなのでしょうか。

書類送検とは、事件が検察庁に送られることを指します。
検察官は警察署から送られてきた事件記録などを基に、起訴、不起訴の判断を行います。
書類送検後も必要であれば、取調べなどを追加で行いますから、書類送検されたからといって事件の捜査が終わるわけではありません。

また、書類送検後に起訴、不起訴の判断をするわけですから、略式起訴ではない限り起訴の判断がなされた場合には裁判が開かれることになるでしょうし、有罪になれば懲役刑などを科される可能性もあります。
時々、「これだけの事件を起こしといて書類送検で済むのか」などの意見を目にすることがあるのですが、書類送検は処分ではないため、書類送検された場合でも実刑判決が下されて刑務所に行かなければならなくなってしまう場合もあります。

示談と不起訴処分

器物損壊罪親告罪(刑法第264条)ですので、告訴を取り下げてもらうことができれば、器物損壊罪で刑罰を科されることはありません。

被害者に対して、謝罪と賠償をしっかりと行い示談を締結することで、告訴を取り下げてもらえる場合があります。
ですが、知人との間で起こした事件の場合は、知人と言えど被害者は加害者から連絡をもらいたくない、むしろ関係を断ちたいと思っている可能性もあり、加害者自らが被害者に連絡を取ることはあまり得策ではありません。
むしろ、今までの関係性があることから、事件後に連絡を取ることで余計にトラブルに発展してしまう可能性もあります。
弁護士が間に入ることで、双方が落ち着いて話をすることができる可能性もありますから、謝罪や賠償の申し入れや示談の提案を行う際には、弁護士に相談をすることをお勧めします。

また、傷害罪親告罪ではありませんが、被害者と示談を締結することで、不起訴処分を獲得できる場合があります。
仮に、不起訴処分を獲得できなくとも、被害者と示談を締結していることが、執行猶予付き判決の獲得や罪の減刑など有利に働く可能性が高いといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、無料法律相談を行っています。
傷害罪器物損壊罪に詳しい弁護士に相談をすることで、不起訴処分などのより良い結果を得られるかもしれません。
傷害罪器物損壊罪で捜査を受けている方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

ピザ屋に大量の注文をして受け取りに行かなかった偽計業務妨害罪の事例

2024-02-07

​​ピザ屋に大量の注文をして受け取りに行かなかった偽計業務妨害罪の事例

電話する人

ピザ屋に大量の持ち帰りの注文をして、受け取りに行かなかったとして、偽計業務妨害罪の疑いで男が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都府南警察署によると、京都市内に住む無職の男性(35)が、近所のピザ屋に大量の持ち帰りピザの注文をしておきながら時間になっても来店せずに無断キャンセルした疑いが持たれている。
京都府南警察署は、男を偽計業務妨害罪の疑いで逮捕した。
取調べに対し男は、「ピザ屋の配達員がデリバリーの際に、ショートカットのため男の私有地を横切っていることに普段から腹が立っていた。ピザ屋を困らせてやろうと思って嘘の注文をした。」と容疑を認めている。
(フィクションです。)

偽計業務妨害罪とは

刑法233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

刑法233条は、信用毀損罪偽計業務妨害罪という2つの犯罪を規定しています。
同条の「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人(…)の業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」という箇所が偽計業務妨害罪にあたります。

偽計業務妨害罪の妨害手段は、①虚偽の風説を流布することと、②偽計すなわち人を騙したり誘惑したり、あるいは人の勘違いや不知を利用することです。
本件では、男は、ピザ屋に大量の持ち帰りピザの注文をしておきながら時間になっても来店せずに無断キャンセルしたとされています。
男は、ピザを注文することであたかも代金を支払う客であるかのように装い、ピザ屋を騙しています。
したがって、男は偽計を用いたと言えそうです。

「業務を妨害した」と言えるか

偽計業務妨害罪が成立するためには、偽計を用いるなどして「業務を妨害した」と言える必要があります。
もっとも、判例によると現実に業務活動が阻害されたことは必要ではなく、業務活動が阻害されるおそれがあると言えれば良いとされています(大判昭和11年5月7日、最判28年1月30日)。
「業務」とは、人が社会生活上の地位に基づき継続して従事する事務をいいます(東京高裁昭和35年6月9日)。
例えば、職業として行われる活動がこれにあたり、ピザ屋ですと、ピザの製造のほか、仕込み作業、締め作業など多岐にわたります。
本件では、男による大量のピザの注文に応えるため、相当数のスタッフをピザの製造に割り当てています。
男の偽計がなければ、仕込みや清掃などの他の仕事を進めることができたと言えます。
また、男は大量のピザを受け取りに来なかったので、これらのピザを店舗は処理する必要が生じています。
男の偽計がなければ、定時までに終わらせていた締め作業を終わらせることができない可能性が生じています。
したがって、男は、ピザ屋の業務を妨害したと言えそうですから、偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

弁護士に相談して事件の早期解決を

偽計業務妨害罪は被害者が存在する犯罪です。
したがって、事件を早期に解決するためには、被害者と示談を成立させることが、重要となります。
本件では、男の注文によりピザ屋に損害が発生していますから、真摯な謝罪をした上で、被害額を含む示談金をお支払いして示談を成立させることができるかどうかが、男性の未来を左右することになるでしょう。

仮に被害届提出前に示談が成立すれば、警察沙汰にならずにすむかもしれません。
事件化した後に示談が成立した場合でも起訴前であれば、不起訴処分となるかもしれません。
不起訴処分となれば前科がつくこともありません。

もっとも、大量の注文にもかかわらず代金を支払ってもらえなかった被害者からすると、加害者に対して強い処罰感情を有しているのが自然ですから、示談交渉に応じてくれない可能性があります。
そこで、示談交渉は交渉のプロである弁護士にお任せすることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、偽計業務妨害事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談を数多く成立させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、事件化や起訴を防ぐことができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスのご予約は、0120-631-881にて受け付けております。

隣人のバイクを倒して傷つけたとして器物損壊罪の疑いで逮捕

2024-01-25

隣人のバイクを倒して傷つけたとして器物損壊罪の疑いで逮捕

ハンマーを振りかざす男性

隣人のバイクを倒して傷つけたとして器物損壊罪の疑いで逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

事例

京都府東山警察署によると、京都市内に住む会社員の男性Aが、隣人Bのバイクを蹴り倒してヘッドライトを壊すなどしたとして、同署は、器物損壊罪の疑いで逮捕した。
Aは、Bが深夜に大きな音を立てながらバイクで帰宅することに日頃から腹を立てており、何度注意してもBが反省する様子がなかったため怒りが抑えきれずバイクを蹴ってしまったと、容疑を認めている。
(フィクションです。)

器物損壊罪とは

本件では、男は器物損壊罪で逮捕されています。
器物損壊罪を規定する刑法261条は次のようになっています。
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。

冒頭の「前三条」は、公用文書、私用文書、建造物等を壊すなどして使えなくするような行為について、規定しています。
これらの物については、その重要性に鑑みて、刑が器物損壊罪よりも加重されています。
本件では、男は、バイクを蹴って倒して一部破損させているようです。
バイクは文書でも建造物でもありませんから、本件では、器物損壊罪が成立するかが問題となります。

器物損壊罪が成立する行為としては、損壊傷害が規定されています。
損壊とは、財物の公用を害する一切の行為をいいます。
例えば、お皿を割ったり、自動販売機を蹴って凹ませたりするような行為がこれに当たります。
本件では、男がバイクを蹴って倒した結果、ヘッドライトが壊れたようですので、他人の物を損壊したと言えそうですから、器物損壊罪が成立する可能性があります。

ちなみに器物損壊罪における「傷害」とは動物を殺したり、逃したりする行為を言います。

親告罪とは

器物損壊罪は、親告罪すなわち告訴がなければ起訴できない犯罪です(刑法264条)。
告訴とは、被害者などの告訴する権利のある者が、捜査機関に対して、犯罪があったことを告げて犯罪者の処罰を求めることを言います。
本件で言うと、Aに蹴り倒されたバイクの持ち主が警察署に告訴した場合、Aは起訴される可能性があります。

なるべく早く弁護士に相談を

仮に、起訴された場合、有罪となり前科がつく可能性があります。
したがって、被害者に告訴しないでもらうために示談をすることが重要となります。

ただし、加害者が直接被害者と示談交渉を進めることは困難です。
本件のように、自分の大切なバイクを蹴って壊した相手に対して、被害者は強い処罰感情を有していることが多く、連絡を取ることさえ拒絶される可能性があります。
そこで、示談交渉は、交渉のプロである弁護士にお任せすることをおすすめします。

告訴は一度されたとしても、起訴前に取り下げてもらうことができれば、やはり起訴されることはありません。
逆に、起訴された後は告訴を取り下げることはできません(刑事訴訟法237条)。
したがって、なるべく早い段階で弁護士に相談されることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、器物損壊事件を含む豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
示談交渉を数多く成功させてきた弁護士が被害者側と示談交渉を行うことで、起訴されることを防ぐことができる可能性があります。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
詳しくは0120-631-881までお電話ください。

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