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不正競争防止法違反と「プロテクト破り」

2021-07-22

不正競争防止法違反と「プロテクト破り」

不正競争防止法違反と「プロテクト破り」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市山科区に住んでいるAさんは、会社Vが提供しているXという音楽・映像編集ソフトの有料版を利用していました。
Xは、IDとパスワードによって管理されており、有料版を利用している人はそのIDとパスワードを入れることで有料版の機能を使えるようになっていました。
Aさんは、「IDとパスワードをネットオークションに出せば小遣い稼ぎになる」という話を聞きつけ、有料版のXを利用できるIDとパスワードを会社Vに無断でネットオークションに出品し、合計で50人程度の相手にIDやパスワードをメールやメッセージアプリを通じて教えました。
しばらくして、Aさんの自宅に京都府山科警察署の警察官が訪れ、Aさんに「プロテクト破り」をしたことによる不正競争防止法違反の容疑がかかっていることを告げると、Aさんは逮捕されてしまいました。
Aさんは、家族の依頼で接見に訪れた弁護士に、自分にかかっている不正競争防止法違反という犯罪の中身と、今後の手続について詳しく相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・不正競争防止法と「プロテクト破り」

今回のAさんは、有料版のソフトウェアXを利用できるパスワード等をネットオークション等で販売していたようです。
一見するとどんな犯罪が成立するのか分かりづらい事例ですが、こういった事例では、Aさんの逮捕容疑でもある不正競争防止法違反という犯罪が成立することが考えられます。

不正競争防止法は、簡単に言えば、文字通り事業者間での不正な競争を防止し、公正な競争を確保するための法律です。
事業者同士は、お互い市場におけるライバルのように競い合っていますが、その競争が不正に行われるようになるとなんでもやり放題になってしまって企業や経済の信用が失われてしまったり、消費者が被害を受けてしまったり、経済の成長が滞ってしまったりすることが考えられます。
そういったことを防止するために、不正競争防止法では公正な競争を確保するための決まりやそれを破った時の罰則などを定めているのです。

こうした不正競争防止法の目的等を見ると、今回のAさんの行為のように、一個人の行動によって不正競争防止法違反になるようなことはなさそうに見えます。
しかし、不正競争防止法の中には、以下のような規定があります。

不正競争防止法第2条
第1項 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
第18号 他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録(以下この号において「影像の視聴等」という。)を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置(当該装置を組み込んだ機器及び当該装置の部品一式であって容易に組み立てることができるものを含む。)、当該機能を有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)若しくは指令符号を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、若しくは当該機能を有するプログラム若しくは指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為(当該装置又は当該プログラムが当該機能以外の機能を併せて有する場合にあっては、影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする用途に供するために行うものに限る。)又は影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務を提供する行為

第8項 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法により影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴、プログラムの実行若しくは情報の処理又は影像、音、プログラムその他の情報の記録のために用いられる機器をいう。以下この項において同じ。)が特定の反応をする信号を記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音、プログラムその他の情報を変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。

長くて分かりづらいかもしれませんが、簡単にまとめると、特定の人以外に利用できないように営業上パスワードや暗号化などを用いて制限しているプログラムなどについて、その制限を効果を妨げるような指令符号(パスワード等)をインターネット等を通じて相手に渡す行為などが不正競争防止法の「不正競争」の1つとされています。
このような行為は、プログラム等にかかっている制限(いわゆる「プロテクト」)を妨害することから、いわゆる「プロテクト破り」と呼ばれ、不正競争防止法第2条第17号・第18号(今回取り上げているのは第18号の条文)は、この「プロテクト破り」を助長する不正競争行為を禁止しています。
プロテクト破り」という呼び方から、物理的に制限を破ったり、いわゆるクラッキングしてシステムに侵入したりするイメージがわくかもしれませんが、先ほど挙げたようにパスワードを提供するといった行為でも「プロテクト破り」による不正競争防止法違反となることに注意が必要です。

次回は、今回のAさんの事例がこの「プロテクト破り」に当てはまるのかどうか、条文とAさんの行為を照らし合わせながら具体的に検討していきます。

プロテクト破り」などの不正競争防止法違反は、条文が複雑なこともあり、どういった容疑をかけられているのか理解するにも大変に感じられることもあるでしょう。
だからこそ、早い段階で弁護士に相談・依頼することが重要です。
京都府不正競争防止法違反事件にお困りの際は、刑事事件専門弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。

相手が同意していても強制わいせつ罪?

2021-07-19

相手が同意していても強制わいせつ罪?

相手が同意していても強制わいせつ罪に問われたという事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府宮津市に住んでいる24歳のAさんは、近所に住んでいる小学生のVさん(12歳)と度々挨拶や立ち話をする仲でした。
ある日、Vさんからキスをしてほしいと言われたAさんは、Vさんにキスをして抱きしめたり、Vさんの胸や臀部といった身体を触ったりするようになりました。
AさんとVさんがキスなどの行為をするようになってしばらくしてから、Vさんの両親が、Vさんが何か隠している様子であることに気が付き、Vさんを問い詰めたことで、AさんとVさんの関係が発覚しました。
Vさんの両親が京都府宮津警察署に相談し、Aさんは強制わいせつ罪の容疑で話を聞かれることになりました。
Aさんは、「キスやハグなどは全てVさんから言い出したことで、相手のVさんは同意していた。それでも犯罪になるのか」と思い、刑事事件に対応している弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・「相手の同意がある=強制わいせつ罪にならない」ではない?

強制わいせつ罪という名前から、強制わいせつ罪は「強制的にわいせつな行為をする」という犯罪のイメージがある方も多いのではないでしょうか。
そのため、「わいせつな行為に対して相手の同意がない=強制わいせつ罪が成立する」、「わいせつな行為に対して相手の同意がある=強制わいせつ罪が成立しない」というイメージの方も少なくありません。

しかし、今回のAさんは、相手であるVさんの同意があった上でキスなどをしているにもかかわらず、強制わいせつ罪に問われているようです。
このように、相手の同意があったにも関わらず強制わいせつ罪に問われることがあるのでしょうか。
まずは、強制わいせつ罪の条文を確認してみましょう。

刑法第176条(強制わいせつ罪)
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。
13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

強制わいせつ罪の条文の前段では、「暴行又は脅迫を用いて」わいせつな行為をした者に強制わいせつ罪が成立する旨が定められています。
これは先ほど挙げたような、「相手の同意を得ないわいせつな行為に強制わいせつ罪が成立する」といった、世間一般の強制わいせつ罪のイメージと重なるものではないでしょうか。
ただし、ここで注意しなければいけないのは、この「暴行又は脅迫を用いて」わいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪が成立するのは、「13歳以上の者」への行為と限定されているということです。

これに対して、相手が13歳未満の者であった場合については、強制わいせつ罪の条文の後段に定められています。
13歳未満の者が相手であった場合、強制わいせつ罪は「わいせつな行為をした」だけで成立します。
つまり、被害者の年齢次第では、「暴行又は脅迫」という手段が用いられなくとも、わいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立することになるのです。
「わいせつな行為をした」だけで成立するのですから、相手がわいせつな行為に同意していたとしても強制わいせつ罪が成立することになるのです。
当然、13歳未満の者に対して暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をした場合にも強制わいせつ罪は成立しますが、相手の同意があったからといって必ずしも強制わいせつ罪にはならないというわけではないのです。

今回の事例のAさんは、12歳のVさん相手にキスなどをしているようです。
AさんはVさんの同意を得てした行為だと考えているようにですが、先ほど確認したように、相手が13歳未満の場合、相手に同意があったとしても、わいせつな行為をしただけで強制わいせつ罪が成立します。
ですから、Vさんの同意の有無に関係なく、Aさんには強制わいせつ罪が成立すると考えられるのです。

・被害者が未成年の強制わいせつ事件

強制わいせつ事件は被害者の存在する刑事事件ですから、被疑者・被告人が容疑を認めているのであれば、被害者への謝罪や被害弁償は、重要な弁護活動の1つとなってきます。

しかし、加害者である被疑者・被告人やその家族など近しい人たちが被害者に直接接触することは、刑事手続上よくないと考えられることが多いです。
被疑者・被告人やその家族が被害者に謝罪したいと捜査機関に申し出ても、連絡先等を教えられないと断られることが多いです。

というのも、加害者である被疑者・被告人が直接被害者に接触することで、証拠隠滅(例えば証言の変更を迫るなど)や被害者へ危害を加えるといったおそれが考えられるためです。
被害者側としても、当然加害してきた被疑者・被告人に怒りや恐怖の感情を抱いていることが多く、直接接触することは避けたいという意向であることも多いです。
特に、被害者が未成年である場合には、被害者本人ではなく、その両親などの保護者が謝罪等の相手となります。
自分の子供が性被害にあった状況ですから、被害感情が強いことが当然予想されます。
もしも当事者同士で謝罪の場を設けられたとしても、余計にこじれてしまう可能性も考えられます。

だからこそ、謝罪・被害弁償・示談交渉には、弁護士を間にはさむことがおすすめされます。
被害者の側からしても、直接加害者本人と接触せずに済むため、安心して話を聞くことができます。
被疑者・被告人の側からしても、法律の専門家であり第三者である弁護士が間に入ってくれることは安心できる要素でしょう。
早い段階から弁護士に相談・依頼することが望ましいといえます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、強制わいせつ事件などの性犯罪事件も承っています。
京都府の強制わいせつ事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。

ポイ捨てが不法投棄事件に発展

2021-07-15

ポイ捨てが不法投棄事件に発展

ポイ捨て不法投棄事件に発展してしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市伏見区に住んでいるAさんは、自宅へ帰る途中にあるマンションVの植え込みに、中身を飲み切ったペットボトルや菓子の袋などをポイ捨てしていました。
するとある日、植え込みに「不法投棄禁止」という看板が立っていることに気が付きましたが、Aさんは「ポイ捨て程度大丈夫だろう」と大して気にもせずポイ捨てを継続していました。
後日、Aさんがいつものように帰宅している途中、京都府伏見警察署の警察官がAさんに声をかけ、「不法投棄の容疑がかかっています。警察署で話を聞かせてください」と言ってきました。
その日は話を聞かれて帰されたAさんですが、その後自分がどうなるのか不安になり、京都市刑事事件に対応している弁護士初回無料法律相談を利用し、弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・ポイ捨てが刑事事件に?

不法投棄という単語を聞くと、会社が産業廃棄物を山等に大量に捨てていたり、個人が家具や家電といった大型のごみを捨てたりといった不法投棄事件を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
今回のAさんのような、小さなごみを捨てるいわゆる「ポイ捨て」と不法投棄という言葉はなかなか結び付かないという方も少なくないでしょう。
しかし、実は「ポイ捨て」も不法投棄となる行為であり、廃掃法違反という犯罪行為であることに注意が必要です。

廃掃法とは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」という法律の略称です。
廃掃法は、名前の通り、ごみの適切な処理やそれによって生活環境を清潔に保つことを目的として定められている法律です。
今回問題となっている不法投棄についても、この廃掃法によって規制されています。

廃掃法第16条
何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。

条文を見てみると、非常にシンプルなものであることが分かります。
条文の中に「不法投棄」という言葉自体は登場しませんが、この条文に違反する=「不法」な状態で廃棄物を捨てる=「投棄」することから、この条文に違反して廃棄物を捨てることを「不法投棄」と呼んでいるということになります。
廃掃法第16条に出てくる「みだりに」とは、「むやみやたらに」という意味ですから、この条文は「自治体などによる規定に背いてむやみやたらとごみを捨ててはいけない」と言っていることになります。

今回のAさんは、マンションの植え込みにペットボトルや菓子の袋といったごみをポイ捨てしています。
当然、ポイ捨てをすることは自治体などによる決まりを守らずにごみを捨てることになりますから、廃掃法のいう「みだりに廃棄物を捨て」ることになるといえます。
ですから、やろうと思えば誰でも気軽にできてしまうポイ捨てであっても、不法投棄となり犯罪となりうるということなのです。

ここで、最初に記載したような「不法投棄」という言葉のイメージから、「廃棄物」とは産業廃棄物や大型のごみを指すのではないか、ペットボトルやお菓子の袋などの小さく軽いごみ程度では「廃棄物」ではないのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、私たちがニュースなどでよく目にする不法投棄事件は、業者や会社が産業廃棄物を捨てるという態様のものが多いかもしれません。
しかし、廃掃法のいう「廃棄物」とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)」のことであるとされています(廃掃法第2条柱書)。
つまり、企業が出した産業廃棄物以外のごみ、例えば家庭ごみでも、廃掃法の「廃棄物」に該当することになります。
このことから、Aさんがポイ捨てしたペットボトルや菓子の袋といった軽かったり小さかったりするごみも、廃掃法上の「廃棄物」であると言えます。
すなわち、こうしたごみのポイ捨て廃掃法の規制対象ということになるのです。

なお、不法投棄をして廃掃法違反となれば、5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はこれらの併科に処せられる可能性があります(廃掃法第25条第1項第14号)。

こうした不法投棄による廃掃法違反事件では、例えば不法投棄先に対して迷惑料を支払って謝罪したり、不法投棄した物を処理して原状回復を行ったりする活動が考えられます。
ただし、相手方との交渉を行ったり、そうした活動を効果的に主張に取り入れていくためには、経験や専門的知識が必要となってきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、不法投棄による廃掃法違反事件のご依頼も承っています。
たかがポイ捨てと軽く考えず、まずは刑事事件専門の弁護士にご相談ください。

強盗致傷事件の逮捕に対応

2021-07-12

強盗致傷事件の逮捕に対応

強盗致傷事件逮捕に対応する弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

Aさんは、宝石を盗み出して儲けようと計画し、京都府舞鶴市にある宝石店Xに侵入し、宝石を物色していました。
しかし、宝石店Xの警備員であるVさんが巡回にやってきて、Aさんは宝石を物色しているところを発見されてしまいました。
Aさんは、こっそり宝石を盗み出すことは諦めて、警備員Vさんを脅して宝石を奪い取って逃げようと計画を変更し、携行していたナイフをチラつかせてVさんを脅すと、宝石を自分のカバンにしまい、逃げようとしました。
ところが、VさんはAさんが目を離したすきに警棒を持ち、Aさんをつかまえようと立ち上がりました。
ポケットにしまったナイフを取り出すのに手間取ったAさんは、とにかく逃げなければいけないと逃げ出しましたが、Vさんの追跡から逃げきれず、Vさんに追いつかれてしまいました。
この時点で、AさんがナイフでVさんを脅迫した時から10分が経過し、宝石店Xから150mほど離れた地点に来ていましたが、AさんはVさんの顔面を殴りつけるなどの暴行を加えて怪我を負わせると、逃亡を再開しました。
ですが、これらのやり取りを目撃した通行人が通報したことで京都府舞鶴警察署の警察官が駆け付け、Aさんは強盗致傷罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

・強盗致傷罪と「強盗の機会」

Aさんは元々宝石をこっそり盗み出すという窃盗行為を計画していたようですが、犯行の途中で警備員Vさんを脅して宝石を奪うように計画を変更しています。
このように、当初窃盗行為を意図しながら被害者などに発見されたために、暴行や脅迫をを加えたうえで財物奪おうとする犯人のことを「居直り強盗」と呼ぶことがあります。
居直り強盗というだけあって、こうした行為には刑法の強盗罪が成立すると考えられます。

刑法第236条第1項
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。

強盗罪の「暴行又は脅迫」とは、相手の反抗を抑圧するに足りる程度の強さのある暴行又は脅迫を指しています。
今回のAさんは、警備員Vさんに対してナイフを向けていますが、ナイフを向けられたVさんからすれば反抗するとナイフで刺されるなどする深刻な危害が加えられるおそれがあるため、Aさんの行為はVさんの反抗を抑圧するに足りる脅迫といえるでしょう。
そして、Aさんはそのような脅迫によって生じた状況を利用して宝石をカバンに入れているので「他人の財物を強取した」といえます。
以上から、Aさんには強盗罪が成立すると考えられるのです。

さらに、刑法には以下の規定があります。

刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

これは、強盗致傷罪強盗致死罪と呼ばれる犯罪であり、強盗犯が人に怪我をさせたり死亡させたりしたときに成立する犯罪です。
しかし、条文からは強盗犯が「いつ」人に怪我をさせたり死亡させたりしたときにこの強盗致死傷罪が成立するか明示されていません。
となると、強盗犯が人に怪我をさせればいつのことであっても強盗致傷罪が成立してしまうのではないか、と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

強盗犯が「いつ」人に怪我をさせた場合強盗致傷罪が成立するのかということについて、判例では、傷害の結果が「強盗の機会」に行われた行為から生じたものであればよいとしています(最判昭和24.5.28)。
どういった行為が「強盗の機会」における行為といえるかは事案ごとの事情を全て考慮した上で判断せざるを得ませんが、多くの判例は、犯意の継続性、強盗行為との時間的場所的近接性、強盗行為との関連性を考慮して判断しています(最判昭和32.7.18、東京高判平成23.1.25など)。
つまり、簡単に言えば、強盗行為と全く関係のないところで強盗犯が人を死傷したとしても強盗致死傷罪は成立しないということです。

本件では、AさんはVさんの顔面を殴る暴行を加えて怪我をさせているようです。
この暴行行為は、Vさんに捕まる=逮捕されることなく強盗行為を無事終えるためになされたのものであって、いまだ当初の強盗の犯意が継続しているといえます。
また、これは通常の強盗にも認められるような性質の行為であって強盗行為と関連性があります。
加えて、この暴行はAさんがナイフで警備員を脅迫した時から10分が経過し、宝石店Xから150m離れた地点でなされているなど、強盗行為と場所的時間的近接性が認められます。
これらの事情から、AさんがVさんを殴って怪我をさせたことは「強盗の機会」に行われたと考えられ、Aさんには強盗致傷罪が成立すると考えられるのです。

・強盗致傷事件と弁護活動

強盗致傷事件では、当然被害者が存在します。
今回のAさんのケースでは、宝石を奪われた宝石店Xと、Aさんから暴行を受けたVさんが被害者ということになるでしょう。
この被害者に対して、謝罪や被害弁償をしていくことも重要な弁護活動の1つです。

また、強盗致傷罪は法定刑に無期懲役を含む重大な犯罪であることから、逮捕・勾留による身体拘束を伴って捜査が進められることも十分予想されます。
釈放・保釈を求めて随時活動していくことも必要となるでしょう。

そして、強盗致傷事件は裁判員裁判対象事件でもあるため、起訴されれば裁判員裁判への対応が必要となります。
一般の刑事裁判とは異なる手続きも多い裁判員裁判に対応していくためには、入念な準備が必要となりますから、早期に弁護士と連携して備えることが望ましいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件専門の弁護士事務所です。
強盗致傷事件逮捕にも迅速に対応し、被疑者・被告人やそのご家族のお悩みや疑問の解消をサポートいたします。
京都府逮捕強盗致傷事件にお困りの際は、お気軽にご相談ください。

勾留決定に対する準抗告で釈放を目指す

2021-07-08

勾留決定に対する準抗告で釈放を目指す

勾留決定に対する準抗告で釈放を目指すケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市左京区に住んでいる大学生のAさんは、近所のスーパーマーケットで万引きをしてしまいました。
スーパーを出たところで店員に呼び止められたAさんは、店員の呼んだ京都府下鴨警察署の警察官に窃盗罪の容疑で逮捕されてしまい、その後勾留されてしまいました。
Aさんは7日後に大学の卒業に関わる試験を控えていたため、どうにかして釈放してもらえないかと困っています。
こうしたAさんの状況を知ったAさんの家族は、京都府の刑事事件に対応している弁護士に相談し、Aさんの釈放を求める活動ができないかと聞きました。
そこでAさんの家族は、弁護士から、勾留決定に対する準抗告という不服申し立ての制度があることをききました。
(※この事例はフィクションです。)

・窃盗罪

窃盗罪は、刑法に定められている犯罪です。
刑法において窃盗罪は以下の様に定められています。

刑法第235条 
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

窃盗罪とは、他人が合理的に占有している財物を、その他人の意思に反して自分や第三者の占有の下に移すことを言います。
今回のAさんについては、商品を万引きしていますから、窃盗罪が成立する可能性が高いと思われます。

・勾留

勾留とは、刑事訴訟法に定められた身体拘束を伴う刑事手続きの1つです。
刑事訴訟法では、以下の様に定められています。

刑事訴訟法第60条第1項
裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
第1号 被告人が定まった住居を有しないとき。
第2号 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
第3号 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

刑事訴訟法第207条第1項
前3条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。

これらの2つの規定は、前者が起訴後の勾留(被告人勾留)、後者が起訴前の勾留(被疑者勾留)を指していますが、今回Aさんに行われた勾留は、後者の起訴前の勾留です。

起訴前の勾留が認められるためには、
①犯罪をしたと疑う相当な理由があること
②以下のどれかの事由に当たること
(1)住所不定であること
(2)証拠の隠滅のおそれがあること
(3)逃亡のおそれがあること
③勾留の必要性があること
が必要とされています。

いずれの要件も条文から導かれています。
①と②は起訴後の勾留について定めた刑事訴訟法第60条第1項に定められている要件ですが、刑事訴訟法第207条第1項において、裁判間に同様の権限が与えられているため、起訴前の勾留でも必要と考えられています。

対して、③の要件は、刑事訴訟法第207条第1項には、直接記載されていません。
ただし、「前3条」による請求がそもそも勾留の必要性がある場合に限定していることや、刑事訴訟法第87条において勾留の必要性がなくなった場合には釈放をしなければならないとされている点から、起訴前の勾留請求を行う時点においても必要であると考えられています。
また、この必要性は必要なものがあるだけではなく、勾留によって生じる不利益を超える必要性があると考えられています。

・勾留決定に対する準抗告

先ほど挙げた要件に当てはまる際に勾留がつけられ、身体拘束されますが、裁判所から勾留決定が出たからといってそこから必ず10日間出れなくなったというわけではありません。
刑事訴訟法には、準抗告という制度があり、以下の条文に定められています。

刑事訴訟法第429条 
第1項 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
第1号 忌避の申立を却下する裁判
第2号 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
(以下略)

要するに、この場合の準抗告とは、勾留決定に対する不服申立ての手段です。
そのため、たとえ勾留決定が出た場合であっても、準抗告によって不服を申し立ててその準抗告が認められれば、勾留決定が取り消され、釈放が実現できるということになります。

本件のAさんの場合は、試験を受けることができなくなれば卒業できなくなってしまう可能性があるという重大な不利益がありますので、そういった事情を含めて準抗告などにより釈放を求めていくことになるでしょう。
勾留決定に対する準抗告の申し立ては経験や専門知識が必要になってきますので、刑事事件専門の弁護士に早い段階から相談・依頼することが望ましいといえるでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
窃盗事件にお悩みの方、勾留からの釈放活動をお考えの方は、まずは一度ご相談ください。

児童ポルノ所持事件と略式手続

2021-07-05

児童ポルノ所持事件と略式手続

児童ポルノ所持事件略式手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

~事例~

京都府福知山市に住んでいるAさんは、海外の動画サイトから16歳の女子学生が性交する動画1本と衣服を一切に身に着けていない女子学生の画像1点をダウンロードして保存していました。
これらの動画は、Aさんが個人で見るために、Aさんのパソコンで保管していました。
しかし、ある日、Aさんの自宅に京都府福知山警察署の警察官が来て、児童ポルノ所持による児童ポルノ禁止法違反の疑いで家宅捜査を受けました。
Aさんは京都府福知山警察署で取調べを受けることになり、その後も何回か取調べに呼ばれると伝えられました。
その中で、自分の刑事事件について略式手続が取られるかもしれないと耳にしたAさんは、詳しい話を聞いてみたいと弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・児童ポルノ所持事件

児童ポルノの所持の禁止は、正式名称を「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」という法律(以下、児童ポルノ禁止法)で定められた犯罪行為です。
児童ポルノ禁止法では、以下の条文で児童ポルノの所持を禁止しています。

児童ポルノ禁止法第7条第1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
自己の性的好奇心を満たす目的で、第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。

児童ポルノ禁止法において、児童ポルノの単純所持は、たとえその所持の目的が自身の性的欲求を満たすためであっても禁止されています。
児童ポルノの単純所持の場合は、児童ポルノの販売目的の所持の場合に比べて法的刑は軽くなっています。
これは、販売目的で児童ポルノを持っていたのであれば、児童ポルノがさらに広がるおそれがありますが、単純所持であればその可能性は低いことから、性的虐待の程度が小さいと判断されるためです。

本件の場合には、Aさんは児童ポルノの単純所持に当たり、かつ所持している児童ポルノは計2点と少ないため、罰金刑も考えられる事案です。

・略式手続

では、Aさんが受けるかもしれないと言われた略式手続とは、どういった手続きなのでしょうか。
一般に略式手続と呼ばれる手続きは、刑事訴訟法第461条から第470条にかけて定められている刑事裁判の手続です。
略式手続の特徴は、簡易に迅速に裁判が行われるため、迅速な裁判が行われる点です。

この略式手続をするためには、
1 簡易裁判所の管轄に属する事件であること
2 100万円以下の罰金、科料などを科すことができる事件であること
3 被疑者が略式手続を行うことに異議がないこと
が必要になります。
以上の要件を満たす場合に、検察官が簡易裁判所に対して書面で公訴を提起することによって行われることができます(刑事訴訟法第462条第1項)。

また、略式手続の日数ですが、略式手続の請求を受けた裁判所は、略式命令が可能かつ略式命令が相当と判断した場合には略式手続の請求を受けた日から14日以内に判断することになっています(刑事訴訟法規則第290条第1項)。
そのため約2週間という速さで罰金などの判断が出ることになります。

また、略式判決に不服がある場合には、公判を請求することもできます(刑事訴訟法第465条)。

今回の事案についてみると、児童ポルノの単純所持の量刑は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。
そのため、Aさんが同意すれば、管轄の簡易裁判所に公訴を提起することによって略式手続となる可能性も考えられるでしょう。

ただ、実際にAさんの立場になった場合、どうするべきかよくわからないと思う人も多いでしょう。
その場合には、刑事事件に強い弁護士に相談しながら決めることをおすすめいたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件でお悩みの方は、まずはお気軽に0120-631-881までお電話ください。
専門のスタッフが、 24時間体制で無料法律相談、初回接見サービスを受け付けております。

チケット転売事件で逮捕されたら

2021-07-01

チケット転売事件で逮捕されたら

チケット転売事件逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市下京区に住んでいるAさんは、有名歌手のコンサートチケットなどを高い値段で転売して生活していました。
そしてAさんはある時、Xという歌手のコンサートの指定席のチケットをインターネット上で購入し、通常の3倍の価格で転売を行いました。
Xのコンサートは京都市下京区内で開催予定であり、チケットにはAさんの氏名と連絡先、そして転売禁止の文言が書かれていました。
しかし、後日、Aさんの自宅に京都府下京警察署の警察官が来て、Xのチケットを転売したことについてのチケット転売禁止法違反の容疑で、Aさんは逮捕されてしまいました。
Aさんが逮捕されたという連絡を受けたAさんの家族は、急いで京都市刑事事件やその逮捕に対応している弁護士に相談することにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・チケット不正転売禁止法とは

チケットの不正転売を禁止した法律の正式名称は、「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」と言います(以下「チケット不正転売禁止法」とします。)。
チケット不正転売禁止法は、令和元年6月14日に施工された施行された、比較的新しい法律です。
この法律では、以下の行為が禁止されています。

チケット不正転売禁止法
第3条(特定興行入場券の不正転売の禁止)
何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならない。

第4条(特定興行入場券の不正転売を目的とする特定興行入場券の譲受けの禁止)
何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として、特定興行入場券を譲り受けてはならない。

第9条(罰則)
第1項 第3条又は第4条の規定に違反した者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

そして、ここでいう特定興業入場券とその不正転売については、チケット不正転売禁止法第2条で規定されています。

チケット不正転売禁止法第2条
第3項 この法律において「特定興行入場券」とは、興行入場券であって、不特定又は多数の者に販売され、かつ、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
第1号 興行主等(中略)が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨を当該興行入場券の券面に表示し又は当該興行入場券に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器(中略)の映像面に当該興行入場券に係る情報と併せて表示させたものであること。
第2号 興行が行われる特定の日時及び場所並びに入場資格者(中略)又は座席が指定されたものであること。
第3号 興行主等が、当該興行入場券の売買契約の締結に際し、次に掲げる区分に応じそれぞれ次に定める事項を確認する措置を講じ、かつ、その旨を第一号に規定する方法により表示し又は表示させたものであること。
イ 入場資格者が指定された興行入場券 入場資格者の氏名及び電話番号、電子メールアドレス(中略)その他の連絡先(以下略)
ロ 座席が指定された興行入場券(イに掲げるものを除く。) 購入者の氏名及び連絡先
第4項 この法律において「特定興行入場券の不正転売」とは、興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいう。

長い条文ですが、簡単にまとめると、
①不特定多数の人に販売されたイベントのチケット
②転売の禁止することが販売時とチケットに明示されたもの
③日時と入場できる人又は座席が指定されているもの
④主催者などが入場できる人や購入者の名前と連絡先を確認しチケットに記載があるもの
チケット不正転売禁止法の「特定興業入場券」に当たります。
そして、この「特定工業入場券」に当たるチケットを主催者の同意を得ないで販売価格以上で販売することや、そのために他の第三者から「特定興業入場券」に当たるチケットを買うことが禁止されています。

今回のAさんの事例ではどうでしょうか。
Aさんの購入したチケットは、インターネット上で販売された転売禁止の座席指定のチケットであり、Aさんの名前も記載されていることからすれば、チケット不正転売禁止法の定める「特定興業入場券」に当たる可能性が高いです。
Aさんはそのチケットを定価の3倍以上の値段で転売しているので、この行為は不正転売に当たり、チケット不正転売禁止法違反に問われる可能性があるといえるでしょう。

・チケットの転売で他の犯罪も成立する?

今回は、チケット不正転売禁止法に焦点を当てて検討しましたが、不正転売を目的として購入する行為については詐欺罪が成立する可能性もあります。
どういった行為にどの犯罪が成立するのかは、刑事事件や法律の専門的知識がなければ判断することが難しいです。
だからこそ、刑事事件の当事者となってしまったら、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
チケット不正転売禁止法違反事件などの刑事事件にお困りの際は、お気軽にご相談下さい。

盗撮用カメラの設置だけでも刑事事件に

2021-06-28

盗撮用カメラの設置だけでも刑事事件に

盗撮用カメラの設置だけでも刑事事件になりえるということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都府綾部市に住んでいる男性会社員Aさんは、以前から盗撮に興味があり、ついに自分で小型カメラを購入すると、近所のファミリーレストランのトイレの個室内にカメラを設置しました。
Aさんは女性の下着姿や下着を脱いでいる姿を盗撮したいと思っていたのですが、

①カメラがうまく作動せず、結局トイレの様子は撮影できていませんでした。

②トイレが男女共用であったこともあり、カメラを仕掛けてからトイレを利用したのは男性客のみであり、盗撮できていたのは男性客がトイレを利用する様子だけでした。

しばらくして、トイレの個室内にカメラがあることに気が付いた客が店員に相談したことがきっかけで京都府綾部警察署に通報され、捜査の結果、Aさんは盗撮のためにカメラを設置した京都府迷惑防止条例違反の容疑で話を聞かれることになりました。
Aさんは、「目的通りのものが撮影できていなかったのに犯罪になるのか」と思い、盗撮事件を含む刑事事件を扱う弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・盗撮に関わる迷惑防止条例

多くの盗撮事件では、今回の事例のAさんが容疑をかけられているような迷惑防止条例違反という犯罪が成立します。
迷惑防止条例は、各都道府県ごとに定められている条例で、例えば京都府では「京都府迷惑行為等防止条例」という条例が定められています。
こうした迷惑防止条例では、公共の場所や乗物(都道府県によってはその他の場所も含む)での盗撮行為が禁止されていることが多く、そのため、先ほど触れたように盗撮事件ではこの迷惑防止条例に違反したという犯罪が成立することが多いのです。
当然、盗撮をしようとして目的通り盗撮を成し遂げた場合には、盗撮をしたことによる迷惑防止条例違反となることに不思議はないでしょう。
しかし、今回のAさんの事例の①や②のように、当初の目的とは異なる結果になってしまった場合はどうなるのでしょうか。

①の場合
今回のAさんの事例で①のように、盗撮目的でカメラを設置したものの結果的に撮影ができていなかったような場合は、盗撮できていなかったのだから犯罪とはならないのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、京都府迷惑防止条例では、盗撮行為の禁止に関して、未遂罪の規定を置いているわけではありません(未遂罪が処罰されるには未遂罪の規定がなければいけません。)。
しかし、京都府迷惑防止条例には、盗撮行為自体以外の盗撮に関連する行為についても禁止している条文があります。

京都府迷惑防止条例第3条第4項
何人も、第1項に規定する方法で第2項に規定する場所若しくは乗物にいる他人の着衣等で覆われている下着等又は前項に規定する場所にいる着衣の全部若しくは一部を着けない状態にある他人の姿態を撮影しようとして、みだりに撮影機器を設置してはならない。

「第1項に規定する方法」とは、京都府迷惑防止条例第3条第1項にある「他人を著しく羞恥させ、又は他人に不安若しくは嫌悪を覚えさせるような方法」のことを指しています。
例えば、今回のAさんの事例のようにトイレの個室内にカメラを設置してトイレを利用する様子を盗撮するといった方法は、一般的に他人に恥ずかしいという感情を持たせたり、不安感や嫌悪感を抱かせたりするような方法と言えるでしょう。

また、「第2項に規定する場所若しくは乗物」とは、京都府迷惑防止条例第3条第2項の「公共の場所、公共の乗物、事務所、教室、タクシーその他不特定又は多数の者が出入りし、又は利用する場所又は乗物」のことを指します。
さらに、「前項に規定する場所」とは、京都府迷惑防止条例第3条第3項の「住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所」を指します。
ですから、今回のAさんの事例のような飲食店内のトイレといった場所は、これらの場所に当てはまることになるのです。

そして、これらの方法でこれらの場所に盗撮目的で「みだりに撮影機器を設置」することがこの条文で禁止されているのですから、①のようにたとえ撮影が出来ていなかったとしても迷惑防止条例違反となるのです。

②の場合
今回のAさんの事例の②では、Aさんが盗撮しようと思っていた女性客ではなく、男性客が撮影されています。
「同性だからいいではないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、迷惑防止条例では盗撮行為の被害者の性別を限定することはしていません。
ですから、たとえ撮影されたのが同性であっても、盗撮する目的の人物でなくても、盗撮による迷惑防止条例違反は成立することになります。

京都迷惑防止条例第3条第2項
何人も、公共の場所、公共の乗物、事務所、教室、タクシーその他不特定又は多数の者が出入りし、又は利用する場所又は乗物にいる他人に対し、前項に規定する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
第1号 通常着衣等で覆われている他人の下着等を撮影すること。

京都府迷惑防止条例第3条第3項
何人も、住居、宿泊の用に供する施設の客室、更衣室、便所、浴場その他人が通常着衣の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる他人に対し、第1項に規定する方法で、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
第1号 当該状態にある他人の姿態を撮影すること。

当然、被害者感情としても、「同性だから盗撮されてもよい」とはならないでしょうから、容疑に間違いがないのであれば、真摯に被害者対応をしていくことも大切となるでしょう。

盗撮というと、実際に撮影できて初めて刑事事件となるというイメージの方もいらっしゃるかもしれませんが、カメラを設置するだけでも刑事事件化する可能性もあります。
態様によっては迷惑防止条例違反だけでなく、別の犯罪も成立する可能性もありますから、まずは刑事事件の専門家である弁護士に、成立しうる犯罪や対応を聞いてみることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした盗撮に関連する刑事事件のご相談・ご依頼も承っていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

飲酒運転を隠すことも犯罪?

2021-06-24

飲酒運転を隠すことも犯罪?

飲酒運転を隠すことも犯罪になるのかということについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

~事例~

京都市中京区の会社に勤めているAさんは、仕事の行き帰りに自動車を運転していました。
ある日、Aさんは仕事帰りにコンビニエンスストアで酒を購入し、車の中で飲酒しました。
Aさんは、「自宅はすぐ近くにあるのだからこのくらいの距離ならいいだろう」とそのまま飲酒運転をして自宅へ向かいました。
しかし、Aさんは自宅へ着く前に通行人のVさんと接触してVさんに怪我を負わせる人身事故を起こしてしまいました。
Aさんは、このままでは飲酒運転をして人身事故を起こしたということが発覚してしまうと思い、どうにかアルコールの数値を低くしたいと、警察等に通報する前にコンビニエンスストアへ行くと、そこで水を購入し、大量に水を飲みました。
その後、通報によって駆け付けた京都府中京警察署の警察官によって、Aさんは捜査を受けることになったのですが、その際、警察官から「飲酒運転を隠そうとしただろう。それも犯罪になる」と言われたAさんは、「飲酒運転を隠すことも犯罪になるのか」と驚き、刑事事件に強い弁護士に相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・飲酒運転を隠すこと自体が犯罪に

今回の事例のAさんは、飲酒運転をした上に人身事故を起こし、そこで飲酒運転を隠すためにアルコールの数値を低くしようと水を大量に飲むなどしているようです。
飲酒運転をすることは犯罪となる(道路交通法違反)ことは多くの方がご存知の通りです。
しかし、Aさんは飲酒運転を隠そうとした行為も犯罪となると警察官から伝えられて驚いています。
飲酒運転を隠すこと自体も犯罪となるのでしょうか。

実は、人身事故を起こしてしまった際に成立する犯罪(過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪など)を定めている「自動車運転処罰法」(正式名称「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」)では、過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪という名前の犯罪を定めています。
なかなか耳にすることのない犯罪名かもしれませんが、その条文は以下のようになっています。

自動車運転処罰法第4条(過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪)
アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時のアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、12年以下の懲役に処する。

簡単に説明すると、自動車の運転に影響が出る程度の飲酒運転をして人身事故を起こした場合に、飲酒運転の発覚を免れるためにさらに飲酒を重ねたり水を飲むなどしてアルコール数値を減らしたりするなどすることで成立するのが、この過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪です。
今回のAさんのように、飲酒運転をして人身事故を起こし、その後にアルコールの数値を減らすために大量の水を飲む行為は、まさにこの過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪となります。

過失運転致傷アルコール等影響発覚免脱罪は、いわゆる「逃げ得」=飲酒運転をして人身事故を起こした場合、その場から逃げるなどして飲酒運転が発覚しないようにした方が、成立する犯罪によって受ける可能性のある刑罰の重さが軽くなってしまうというケースをなくすために作られた犯罪です。
飲酒運転の度合いによっては、人身事故によって問われる犯罪が危険運転致死傷罪という最長で20年の懲役が科せられる犯罪に問われることになりますが、逃げて飲酒運転の発覚を免れればひき逃げと過失運転致死傷罪が成立するにとどまり、その場合は最長で15年の懲役となることから、「(逃げて)飲酒運転の発覚を免れた方が得」とされてしまいます。
そういったことを防ぐために、人身事故後に飲酒運転の発覚を防ごうとすることも犯罪としたのが過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪なのです。

つまり、よく知られている飲酒運転自体だけでなく、その飲酒運転を隠す行為も、場合によっては重い罪となることがあるということなのです。

単なる飲酒運転の場合には被害者は存在しませんが、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱事件となると、人身事故に遭われた被害者が存在します。
ですから、弁護活動でも被害者対応などを含んだ迅速かつ丁寧な活動が求められます。
どういった犯罪の容疑がかけられていて、どのような弁護活動が必要なのかをきちんと把握して刑事手続きに臨むことが大切ですから、まずは弁護士の話を聞いてみることがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、逮捕された方向けの初回接見サービスから、在宅で捜査を受けている方向けの初回無料法律相談まで幅広く対応しています。
まずはお気軽にご相談ください。

自宅に放火して逮捕

2021-06-21

自宅に放火して逮捕

自宅に放火して逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説いたします。

~事例~

京都府南丹市在住のAさんは、自宅が老朽化している状態にもかかわらず、以前と同じように税金を納めることに嫌気がさしていました。
そこで、Aさんは自宅を解体して土地を売りに出すことを思いついたのですが、自宅が木造住居であったことから、解体費用の節約のため燃やすことによって解体してしまおうと思いつきました。
そして、Aさんは妻子には自宅を燃やすことを知らせずに適当な話をして別の家に泊まらせると、自宅に火を放ち、自宅を全焼させました。
当日、自宅の周りには他人の住居はなく、Aさんが自宅に火を放った当時周りに延焼するおそれはありませんでしたが、Aさんの自宅から上がる煙を発見した地域の住民が京都府南丹警察署に通報。
消防車やパトカーが駆け付ける事態となり、自宅の燃える様子を見ていたAさんは、現住建造物等放火罪の容疑で逮捕されることとなってしまいました。
Aさんは、「中に人もいなかったし、燃え移る心配もなさそうだった。何よりこれは自分の家なのだからどうしようと勝手なのではないか」と思い、家族の依頼を受けて接見にやってきた弁護士に、詳しいことを相談してみることにしました。
(※この事例はフィクションです。)

・放火罪と放火の対象物

放火罪という犯罪は、実は何種類かに分けられています。
その大まかな違いは、何に対して放火したかという、放火の対象物の違いです。
例えば、今回の事例のAさんは、自身の自宅という建造物に対して放火していますが、刑法の放火罪では、その建造物が①現住性ないし現在性があるもの、②①がなく非現住ないし非現在とされるものとを区別しています。
そして、その区別によって分けられた放火罪が以下の①現住建造物等放火罪と②非現住建造物等放火罪です。

①現住建造物等放火罪
刑法第108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する。

②非現住建造物等放火罪
刑法第109条第1項
放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期懲役に処する。

以上に加えて、非現住建造物等放火罪については、刑法第109条第2項において、それが自己の所有しているものであり、公共の危険を生じなかったといえれば、罰しないと規定されています。

刑法第109条第2項
前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の懲役に処する。
ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

今回のAさんのように、自分の所有する建造物に放火した場合、その建造物に現住性があるかどうかによって、どちらの犯罪が成立し、どのくらいの重さの刑罰を受ける可能性があるのかが大きく異なってくることが考えられます。
つまり、放火罪において、建造物に現住性が認めれるかどうかが重要になってきます。

では、本事例のAさんにはどういった放火罪が成立するでしょうか。

まずは、現住性以外の点について検討してみましょう。
建造物に関する放火については、法文から、①放火し、②建造物を焼損したことが必要だと考えられます。
本件で、Aさんの自宅は「建造物」であることは間違いないでしょう。
さらに、Aさんは火を放っており①「放火」したといえます。
また、②焼損したとは、火が媒介物を離れ独立して燃焼継続しうる状態に至ることをいうと解されていますが、Aさんの自宅は全焼しているので、この要件についても認められると考えられます。
このことから、Aさんは建造物に放火したことによる放火罪は成立すると考えられるものの、Aさんの自宅に現住性があるのかどうかによってその罪名が現住建造物等放火罪になるのか、非現住建造物等放火罪になるのかが変わりそうだということが分かります。

では、次に、Aさんの自宅が「現住性」を有するかどうかを検討してみましょう。
そもそも、建造物の現住性はどういった場合に認められるのでしょうか。
現住建造物等放火罪において「現に人が住居に使用」している場合とは、放火行為当時に犯人以外の人が起臥寝食の場所として使用している場合をいい、また、放火当時に人が現在する必要はないと解されています。
つまり、現住性については、放火当時その建造物内に人がいるという状況だけでなく、建造物を「人が起臥寝食の場所として使用している」抽象的可能性があればよいということとなります。

これを踏まえると、今回の事例では、Aさんは、妻子には放火に関して何も告げずに自宅に放火していることから、Aさんの妻子は日常住居とする意思があり使用形態に変更はなかったといえるので、現住性が認められる可能性が出てきます。
そうなると、Aさんには現住建造物等放火罪が成立する可能性が出てくると考えられるのです。

現住建造物等放火罪は、刑罰に死刑・無期懲役が含まれていることから、起訴されれば裁判員裁判になる重大犯罪です。
裁判員裁判は通常の刑事裁判手続きとは異なる手続きも多く、手続きが分からずに困惑してしまう方もいらっしゃるでしょう。
だからこそ、刑事事件に精通した弁護士のサポートを早いうちから受けておくことが重要です。

「自分の所有している建物だから自分の意思で放火する分には問題ない」と考えていても、その建造物の状況次第ではこれほど重大な犯罪が成立してしまう可能性があります。
もしも自宅など自身の所有する建造物への放火事件で刑事事件の当事者となってしまったら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部までご相談ください。
刑事事件専門弁護士が、被疑者・被告人ご本人やそのご家族の疑問や不安の解消に努めます。
まずはお気軽にお問い合わせください(0120-631-881)。

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