犯罪行為からの離脱について

共同正犯について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
京都市左京区に住むAさんは金銭に困っていたため、友人Bさんに京都市左京区にあるVさん宅に強盗に押し入ろうと持ち掛けて一緒に強盗計画を練りました。
Bさんはその計画に賛成しましたが、計画当日、Aさんは急に体調が悪くなったので、Bさんに対して「この計画からは手を引かせてくれ。」と電話しました。
Bさんはそれを了承した後、一人でVさん宅に押し入り、Vさんを脅すことで現金を奪って逃亡しました。
このような場合、AさんとBさんにはそれぞれどのような罪が成立するのでしょうか。
(この話は事実を基にしたフィクションです。)
犯罪行為からの離脱
最初にBさんは強盗目的でVさん宅に押し入っているので、Bさんの行為には住居侵入罪が成立すると思われます。
刑法130条(住居侵入罪)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
次にBさんは、Vさんを脅して現金を奪っているため、強盗罪が成立すると考えられます。
刑法236条1項(強盗罪)
暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。
Aさんは、Bさんと強盗計画を一緒に考えていたので、Aさんにも、住居侵入罪及び強盗罪の共同正犯(刑法60条)が成立しないか問題となります。
共同正犯
共同正犯とは、刑法60条に記載されており、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」とされています。
これを本件について見てみると、Aさんは侵入行為や強盗行為をしていないので「共同して犯罪を実行した」とはいえないようにも思われます。
ただ共同正犯は、互いに利用・補充し合って犯罪を実行する場合に成立するため
・自身の犯罪として行為を実行する意思
・共謀
・共謀に基づく実行行為
があれば共同正犯の成立が認められるのが一般的であると考えられています。
本件ではAさんは、自らBさんに強盗を提案しているところ、計画において重要な役割を果たしており「自身の犯罪として行為を実行する意思」を有していると考えられます。
そして、AさんとBさんは共に計画を練っているので「共謀」も認められると思われます。
その計画に基づいてBさんはVさん宅に侵入し強盗を行っているので、共謀に基づく実行行為も認められる可能性が高いです。
そのため、Aさんの行為には住居侵入罪及び強盗罪の共同正犯が成立し得ると言えるでしょう。
しかし、Aさんは「この計画からは手を引かせてくれ。」とBさんに電話しているので、共同正犯から離脱したと考えることはできないのでしょうか。
離脱が認められた場合、Aさんはその後の罪については責任を負わないと考えられます。
これについて前述のように共同正犯は互いに利用・補充し合って犯罪を実行する場合に成立するので、そのような相互利用補充関係が解消された場合に共同正犯からの離脱が認められるのが一般的です。
Bさんは、Aさんが計画から抜けることを了承しているので、心理的な因果性は解消されていると思われますし、本件で武器などの提供は行われていないので、Aさんが計画に参加しないことで物理的な因果性は解消されていると考えられます。
ですが、強盗を誘ったのはAさんですし、Bさんと共に強盗の計画を練っていたわけですから、Aさんの存在によって犯罪の実現の可能性が高くなっており、Bさんが犯罪行為を実行するにあたってAさんは重大な役割を担ったといえるでしょう。
Bさんの犯行を止めることもなく、「この計画からは手を引かせてくれ。」と電話して了承を得ただけでは、共同正犯関係を解消したとは認めてもらえない可能性があります。
実際に、犯行の防止する措置を講じていないことを理由に共犯関係が解消していないと判断された裁判例や判例が存在します。
したがって、事例では、Bさんが犯罪行為を実行するにあたり多大な影響を与えているにもかかわらず、AさんはBさんの犯行を防止する措置を一切講じていないことから、共同正犯関係の解消が認められない可能性が高いと考えられます。
解消が認められない場合には、Aさんは正犯として扱われますから、Bさんと同様に住居侵入罪、強盗罪の責任を問われることになります。
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