飲酒の上で傷害事件②

2019-04-28

飲酒の上で傷害事件②

~前回からの流れ~
滋賀県草津市に住むAさんは、友人たちとの飲み会をした後、自宅に帰るためにバスに乗り込んだところ、酔っぱらって眠ってしまった。
Aさんが目を覚ますと滋賀県草津警察署の警察官に囲まれており、バスの終点でAを起こそうとした運転手Vさんに対し、「俺の眠りを邪魔するな」等と言いながら殴りかかり、怪我を負わせたとのことだった。
Aさんは「酔っていて何も覚えていない」と警察官に話したところ、傷害罪の容疑で逮捕されてしまった。
Aさんは、滋賀県草津警察署に引致されたところで、家族の依頼によってやってきた、京都府滋賀県刑事事件に対応している弁護士と面会することになった。
Aさんは弁護士に、飲酒によって何も記憶がないが、今回の傷害事件がどういった風に進んでいくのか相談することにした。
(フィクションです。)

前回の記事では、犯罪が成立するためには、犯罪の構成要件を満たす行為をしていて、その行為が違法であり、さらに責任能力が必要であることに触れました。
そして、Aさんは、刑法の傷害罪の構成要件に当てはまる行為をしてしまっています。
しかし、Aさんは記憶をなくすほど飲酒をして酔っ払っていますから、犯罪が成立するための責任能力があるのか疑問に思われる方もいるでしょう。
今回は、この責任能力について詳しく取り上げます。

・責任能力

刑法で責任能力について定める条文は以下の通りです。

刑法第39条(心神喪失及び心神耗弱)
①心神喪失者の行為は、罰しない。
②心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

心神喪失は簡単に言えば、「精神の障害により行為の是非や善悪を判断する能力がない状態」をいいます。
それに対して心神耗弱は、「精神の障害により行為の是非や善悪を判断する能力が著しく減退した状態」をいいます。
そして、精神の障害の典型例としては、統合失調症やアルコール中毒、薬物中毒が挙げられます。

次に、心神喪失や心神耗弱が認められた場合の効果について説明します。
心神喪失の場合には「罰しない」(刑法39条1項)と定められています。
これは、責任能力が認められず、犯罪が成立しないことを意味します。
これに対して、心神耗弱の場合は「減軽する」(刑法39条2項)とあるので、犯罪が成立した上で、どのくらいの刑罰を科すのかという量刑の部分で考慮されなければならないことになります。

したがって、本件Aさんの場合でも、アルコールによる精神障害により「心神喪失」であると判断されれば、傷害罪が成立しない可能性もあります。
では、Aさんについては、心神喪失であるか、心神耗弱であるか、または完全な責任能力が認められるかについてどのように判断されるのでしょうか。

・責任能力の判断方法について

一般に責任能力があるかどうかは、犯行当時の精神障害の状態、犯行前後の行動、犯行の動機、態様などを総合的に考慮して判断されます。

そして本件のように飲酒しての犯行であればどの程度酔っているかが重要な要素になると考えられています。

酩酊の程度については、一般的な酩酊状態である「単純酩酊」と、それを超える程度の「異常酩酊」の状態があるとされます。
そして異常酩酊の中にも、激しく興奮して記憶が断片的になる「複雑酩酊」と、意識障害があり幻覚妄想などによって理解不能な言動が出てくる「病的酩酊」の二つの状態があります。
これはあくまで判断の目安に過ぎず、それぞれの境界は明確ではありません。
しかし、一般的には、単純酩酊であれば完全な責任能力が認められる、すなわち刑法39条のいう「心神喪失」や「心神耗弱」には当たらないとされることが多いです。
そして、複雑酩酊の場合は心神耗弱状態、病的酩酊の場合には心神喪失と認められる可能性が高いと言われています。

では、飲酒の際の暴行を覚えていなければ直ちに異常酩酊であると認められるかというとそうではなく、様々な事情が総合的に判断されます。
したがって、それまでの行為に至るまでの理由や犯行後の行動に何か異常であると認めらる事情がなければ、「単純酩酊」状態であるとされ、責任能力は認められると思われます。
本件であれば、バスの運転手Vさんに起こされたことに腹を立てて、殴りかかるという行動は、是非はともかくとして理由があり、異常とまではいえず、Aさんの責任能力が肯定され、Aさんには傷害罪が成立する可能性が高いと言えます。

このように、責任能力について検討するためには、専門的な知識と事案を照らし合わせていかなければならず、非常に難しいです。
飲酒時の刑事事件では、被疑者本人の記憶があいまいなために、どのように争うべきか、どういった弁護活動をすべきか分かりづらいことも多いですから、こうした刑事事件で逮捕されてしまったら、まずは専門家の弁護士に相談してみましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、24時間いつでも0120-631-881でお問い合わせを受け付けています。
突然の逮捕の知らせにお困りの際や、責任能力についての専門家の意見を聞きたいという際には、お気軽にご連絡ください。
滋賀県草津警察署までの初回接見費用:37,300円)