文化財への落書きで文化財保護法違反②
文化財への落書きで文化財保護法違反となった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
東京都在住のAさんは、京都府に観光に来ていました。
観光していく中で、Aさんは京都市左京区内にある寺を訪れました。
寺を見ていくうち、Aさんはその寺をいたく気に入り、寺に来た記念を残したいと考えました。
そこでAさんは、寺の壁に持っていたスプレーで自身の名前やイラストを描き残しました。
その後、他の観光客がAさんの残した落書きを発見し、京都府川端警察署に通報。
残された名前や防犯カメラの映像などから、Aさんは京都府川端警察署に、文化財保護法違反の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)
・文化財保護法違反事件と弁護活動
Aさんのように、落書きによって重要文化財を損壊してしまって文化財保護法違反となってしまった場合には、まずはその重要文化財の修復等で出た損害を賠償したり、謝罪したりすることで、示談交渉を行うことが考えられます。
刑法の器物損壊罪が親告罪(被害者などの告訴権者による告訴=被害申告と処罰を求める申告がなければ起訴することのできない犯罪)であるのに対し、文化財保護法違反は親告罪ではありません。
ですから、たとえ起訴前に示談ができたとしても、親告罪とは異なり必ずしも不起訴処分になるとは限りません。
しかし、謝罪ができていたり被害賠償ができているという事情があれば、起訴・不起訴の判断をする際や量刑を判断する際などに有利に働く可能性が高いです。
当事者だけで示談交渉をすることには不安が伴うでしょうし、どのように進めるべきか、どういった話し合いをすべきなのかもわからないことが多いでしょう。
弁護士を通じて示談交渉をしてもらうことで、そういった不安を解消することができます。
また、今回のAさんは逮捕されてしまっています。
逮捕から引き続いて身体拘束をされる「勾留」が決定すれば、その延長も含め、逮捕から数えて最大23日間も外部との接触ができなくなります。
1か月弱の間身体拘束されてしまえば、就業先・就学先・家庭などに大きな影響を及ぼしてしまいます。
Aさんのように旅行先で逮捕されてしまった場合、家族が面会に来ることも一苦労です。
そうしたことから、逮捕を伴う捜査を受けた場合、上述の示談交渉等の活動に加え、弁護士に釈放を求める活動も並行して行ってもらうことがよいでしょう。
・重要文化財でなければ犯罪にならない?
今回のAさんは、重要文化財に落書きをしたことで文化財保護法違反の容疑をかけられているようですが、この落書きをした寺が重要文化財でなければ犯罪にならないのでしょうか。
実は、そう簡単に済むことはではなく、たとえ落書きをした寺が重要文化財ではなくとも、文化財保護法違反以外の犯罪が成立する可能性があります。
それが、刑法の建造物損壊罪や器物損壊罪です。
刑法260条
他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。
よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
刑法261条
前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。
建造物損壊罪の「損壊」は、器物損壊罪の「損壊」でもあったように、物理的にその建造物を壊してしまうだけでなく、その建造物の効用をなくしたり減損したりすることも含んでいます。
建造物損壊罪と器物損壊罪の大まかな違いとしては、「損壊」される対象が「建造物」なのかそれ以外なのかという点が挙げられます。
一般的に、「建造物」かそれ以外かは、その建て物から取り外せるのかどうか、また、その部分がその建て物の重要な役割を負っている部分かどうかといったことを考慮され判断されます。
例えば、今回のAさんのような建て物の壁への落書きの場合、壁は建て物から取り外すことはできませんから、「建造物」への損壊行為であると考えられる可能性があるということになるのです。
なお、建造物損壊罪と器物損壊罪は、親告罪ではないか親告罪であるかという点も異なります。
建て物への落書きは、どういった建て物のどの部分にどのように落書きをしたのかによって、成立する犯罪が異なります。
自分の行為がどういった犯罪になるのか、どういった見通しなのかを早めに弁護士に相談し、対応を練ることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、刑事事件専門の弁護士が刑事事件へのご不安やお悩みを解消できるよう、丁寧に対応いたします。
まずはお気軽にご相談ください(お申込:0120-631-881)。