トラブルがあった隣人の家に放火した女が逮捕された事件
トラブルがあった隣人の家に放火した女が逮捕された事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事案
京都府西京警察署は、京都府内の会社に勤務する会社員の女性A(37)を現住建造物等放火罪の疑いで逮捕した。
Aは、隣にすむV家族の話し声を耳障りに思っており、たびたび口論になっていたところ、Aが仕事の関係で京都市外に引っ越すことになった。
引越しの準備が完了し家を出ようとしたAは、最後にVをこらしめてやろうと考え、コンビニで購入したライターを使ってV宅の壁に火をつけた。
しばらくして、壁に火が定着して燃え広がり始めたのでAはその場を去った。
京都府西京警察署の取調べに対し、Aは、「話し声のうるさいV家族に日頃からむかついていた。」「自分は引っ越すから放火しても自分には影響ないので、最後にこらしめてやろうと思ってやった」と容疑を認めている。
(フィクションです)
放火の罪
刑法108条
放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
刑法は、何を燃やそうとして放火したかに着目して、いくつかの放火の罪を規定しています。
これは、何が燃やされるかによって生命・身体・財産が脅かされる危険性が異なるためです。
例えば、住居や人がいる建造物に放火した場合には現住建造物等放火罪が成立し、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役となります(刑法108条)。
住居や人がいる建物に放火した場合には、生命や財産が脅かされる可能性が高いことから、現住建造物等放火罪は、その他の放火の罪よりもはるかに重い刑罰が規定されています。
現住建造物等放火罪の他には、非現住建造物等放火罪(109条)や建造物等以外放火罪(110条)などがあります。
非現住建造物等放火罪は、放火の対象が建造物等である点は、現住建造物等放火罪と共通ですが、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物等を焼損した場合に成立します。
建造物等以外放火罪は、バイクやベッドなどの建造物等でないものを焼損した場合に成立する可能性のある犯罪です。
本件で、Aは、隣人V家族の話し声がうるさくてムカついていたという理由で、V宅に火を点けたようです。
V宅は、V家族が住居に使用している建造物ですから、本件では現住建造物等放火罪が成立する可能性があります。
現住建造物等放火罪
本件でAは、隣人V家族をこらしめてやろうと考えて、V宅の壁に火をつけたようです。
壁にライターで火をつける行為は、放火すなわち目的物の焼損を惹起させる行為と評価できるでしょう。
次に、V宅が焼損したことが必要です。
判例によれば、焼損とは、火が媒介物を離れて目的物にうつり、目的物が独立に燃焼を継続する状態のことを言います(大判大正7年3月15日)。
本件では、Aがライターの火を壁に当て続けることで、壁に炎が移り定着して燃え広がったようです。
したがって、炎がV宅の壁に定着し燃え広がり始めた時点で、独立に燃焼を継続する状態に至っていたと言えそうです。
以上より、本件では、現住建造物等放火罪が成立する可能性があります。
弁護士に相談を
現住建造物等放火罪の法定刑は、死刑又は無期もしくは5年以上の懲役と非常に重たいです。
執行猶予がつくためには、下される量刑が3年以下の懲役である必要がありますから、実刑判決が下される可能性が高く、有罪となった場合には今まで通り会社で働くことができず、解雇される可能性が非常に高いです。
現住建造物等放火罪を犯した場合、執行猶予がつくことはないのでしょうか?
この点、被害者との間で示談が成立していた場合、刑が減軽されて3年以下の懲役となれば、執行猶予がつく可能性があります。
本件Aのように犯人が逮捕されている場合には、自由に動くことができませんから実際に示談交渉することは困難です。
仮に自由に動けたとしても、V家族からすれば、Aは自宅に火をつけてきた加害者であるわけですから、示談交渉に応じてくれる可能性は低いです。
そこで、示談交渉は弁護士に一任されることをおすすめします。
加害者と直接連絡を取ることに強い抵抗を感じる被害者であっても、弁護士とであれば示談交渉に応じてくれることは珍しくありません。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、現住建造物等放火罪をはじめとする放火事件など刑事事件の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
刑事事件に詳しい弁護士に示談交渉を任せることで、執行猶予付き判決を得られるかもしれません。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
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