ユッケを加熱調理用の肉と同じ厨房で調理したとして、食品衛生法違反の容疑で書類送検された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
事例
生食用のユッケを加熱用の肉などと同じ厨房(ちゅうぼう)で調理したとして、京都府警は10日、食品衛生法違反の疑いで、京都府宇治市の食肉販売兼飲食店(中略)の運営会社(中略)と社長の男(55)、同店の店長の男(49)を書類送検した。「収益のため」などと容疑を認めているという。
(2月10日 産経新聞 「生食ユッケを鶏や豚と調理 容疑で社長ら書類送検、食べた女性は死亡」より引用)
(中略)
書類送検容疑は共謀して昨年8~9月、専用の加工場での調理が必要な生食用のユッケを、鶏肉や豚肉などと同じ厨房で計921パック(1パック約70~90グラム)分を調理したとしている。
ユッケと食品衛生法
牛肉には食中毒の原因となる腸管出血性大腸菌O157などの菌が付着しています。
基本的に牛肉などのお肉を食べる際は、菌を殺すため加熱調理をしてから食べるのですが、牛肉を加熱せず生で食べることもあります。
牛肉を生のままで食べる料理の代名詞としてユッケが挙げられます。
ユッケなど、生の肉を食べる場合、加熱による殺菌はできませんから、加熱して食べる場合と比べて調理方法などが厳しく規定されています。
ユッケなどに使用される生食用食肉の加工、調理に関して、食品衛生法施行規則では、以下の要件を満たさなければならないとしています。(職衛生施行規則別表第21)
・生食用食肉の加工又は調理をするための設備が他の設備と区分されていること。
・器具及び手指の洗浄及び消毒をするための専用の設備を有すること。
・生食用食肉の加工又は調理をするための専用の機械器具を備えること。
・取り扱う生食用食肉が冷蔵保存を要する場合にあっては当該生食用食肉が摂氏4度以下と、冷凍保存を要する場合にあっては、当該生食用食肉が摂氏マイナス15度以下となるよう管理することができる機能を備える冷蔵又は冷凍設備を有すること。
・生食用食肉を加工する施設にあっては、加工量に応じた加熱殺菌をするための設備を有すること。
ですので、ユッケを調理、販売する際には上記の基準を満たす必要があります。
また、食品衛生法では、厚生労働大臣は販売する食品の製造等に関して規格を定めることができ(食品衛生法第13条1項)、その基準に合わない方法により食品の調理、販売をしてはいけない(食品衛生法第13条2項)、と規定しています。
生食用食肉の加工、調理に関する基準は、食品衛生施行規則で規定されていますので、その基準を満たさない場合は、調理や販売をしてはいけないことになります。
今回の事例では、容疑者らが運営する店では、生食用のユッケと加熱用の肉を同じ厨房で調理していたとされています。
生食用食肉は、食品衛生規則で規定されているように、生食用食肉を調理する際には、生食用食肉を調理する設備と他の肉を調理する設備が分けられている必要があります。
ですので、今回の事例のように、生食用食肉であるユッケと加熱調理用の肉を同じ場所で調理してしまうと食品衛生施行規則が定める基準を満たさないことになります。
食品衛生法では、基準を満たさない方法による調理は禁止されていますので、今回の事例では食品衛生法違反が成立する可能性があります。
食品衛生法と弁護活動
食品衛生法第13条2項に違反した場合は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科されます。(食品衛生法第82条1項)
また、情状により懲役及び罰金を併科される場合があります。(食品衛生法第82条2項)
上記のように、規程された基準に満たない生食用食肉を調理し、食品衛生法違反で有罪になった場合には、懲役刑が科される可能性があります。
ですので、実刑判決を下されてしまうと、刑務所に収容され刑務作業に従事しなければならなくなってしまいます。
しかし、執行猶予付きの判決を得ることができれば、刑の執行が猶予されることになります。
執行猶予付きの判決の獲得を目指すうえで重要になるのが、取調べ対応です。
実は、取調べ時に作成される供述調書は、裁判の際に重要な証拠として扱われます。
ですので、もしも、あなたの意に反した供述調書が作成された場合には、裁判で窮地に立たされるかもしれません。
刑事事件の豊富な弁護経験を持つ、弁護士による取調べ対策で、あなたの意に反した供述調書の作成を防げるかもしれません。
また、弁護士が検察官と処分交渉を行うことで、不起訴処分の獲得や略式命令での罰金刑を狙えるかもしれません。
今回のケースでは、再犯のリスクが低いことを主張していくことが重要かと思います。
例えば、事件後に生食用食肉と加熱調理用の肉の調理設備をしっかりと分けるための整備を行ったこと、今後は生食用食肉の調理や販売は一切行わないことなどを主張することで、検察官に再犯のリスクが低いと判断され、不起訴処分の獲得や略式命令での罰金刑を目指せる可能性があります。
不起訴処分の獲得や略式命令での罰金を目指すにしても、処分交渉だけでなく、取調べ対応はかなり重要になりますので、犯罪の嫌疑をかけられた場合には、弁護士をつけることが望ましいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、無料法律相談を行っています。
刑事事件に精通した弁護士による弁護活動で、不起訴処分や執行猶予付き判決の獲得を目指せるかもしれません。
食品衛生法違反、その他刑事事件でご不安な方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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