【事例紹介】特殊詐欺事件の受け子 詐欺罪ではなく窃盗罪で逮捕?

事例

京都府警八幡署は21日、窃盗の疑いで、(中略)逮捕した。
逮捕容疑は、9月27日に共謀の仲間が商業施設の従業員を名乗って八幡市の女性(86)宅に「クレジットカードが不正利用されている」と電話した後、容疑者が銀行協会職員を名乗って女性宅を訪れ、キャッシュカードとクレジットカード各1枚を別のカードとすり替えて盗んだ疑い。
(中略)容疑を認めているという。

(10月22日 京都新聞 「「銀行協会職員」名乗り、カードすり替え盗む 容疑の「受け子」逮捕 京都・八幡」より引用)

特殊詐欺事件

今回の事例のように、銀行員や警察官などに成りすまし、クレジットカードなどが不正利用されているとうそをついて、クレジットカードを入手し現金を引き出すような事件は、特殊詐欺事件と呼ばれることが多いです。

今回取り上げた事例では、特殊詐欺事件受け子窃盗罪の容疑で逮捕されています。
なぜ、詐欺罪ではなく窃盗罪なのでしょうか。
今回のコラムでは、詐欺罪窃盗罪について簡単に説明していきます。

詐欺罪

相手が判断をするうえで重要な事項についてうそをつき、そのうそを信じた相手からお金などを受け取った(交付された)場合に詐欺罪は成立します。

例えば、Aさんが警察官になりすまし、Bさんが所有している1万円札は偽札であるから回収したいと申し出たとします。
BさんはAさんのうそを信じ込み、Aさんに1万円札を渡しました。

AさんはBさんにうそをつき、うそを信じたBさんはAさんに1万円札を渡しています。
また、BさんはAさんが警察官ではないことや偽札ではないことを知っていた場合に1万円札を渡さなかったでしょうから、AさんはBさんがお金を渡す判断をするうえで、重要なこと事項についてうそをついたことになります。
ですので、AさんとBさんの例は、詐欺罪にあたります。

以上のように、詐欺罪を成立させるためには、①相手が判断するうえで重要な事項でうそをつくこと、②相手がうそを信じること、③相手から財物(お金など)が相手の意思で交付されることの3つが必要になります。

窃盗罪

これに対して、人のお金などを、その所有者の許可を得ないでとった場合には窃盗罪が成立します。

例えば、Cさんが目の前を歩いているDさんの鞄の中から、Dさんに気付かれないように財布を取り出し、自分の鞄の中に入れました。

CさんはDさんに気付かれないようにDさんの財布をとっています。
気付かれないようにしていることから、当然Dさんの許可は得ていないので、Cさんの行為は窃盗罪にあたります。

窃盗罪と詐欺罪

窃盗罪詐欺罪の大きな違いの1つは、財物の交付行為の有無です。

先ほど確認したように、詐欺罪が成立するためには、人にうそをついて、うそを信じた人から財物を交付される必要がありました。
一方で、窃盗罪は、人の財物を所有者の許可なく手に入れた場合に成立するので、人から財物を交付される必要はありません。

では、交付行為の有無について着目し、今回の事例を考えていきましょう。

今回の事例の報道によると、容疑者が銀行職員に成りすまし、キャッシュカードとクレジットカード各1枚を別のカードにすり替えることでカードを手に入れたとされています。
すり替えについて詳しく報道されているわけではないので推測になりますが、何らかの理由をつけて被害者にクレジットカードなどを封筒に入れて保管してもらうように言い、その封筒を別の封筒などとすり替えることで、被害者のクレジットカードなどを入手したのだとすれば、被害者が容疑者にクレジットカードなどを渡しているわけではありませんので、カードは「交付」されていないことになります。

加害者が被害者にうそをついていたとしても、交付されていなければ詐欺罪にはあたりませんので、今回の事例では詐欺罪は成立しません。
今回の事例では、容疑者はクレジットカードなどを別のカードとすり替えることで入手しているので、所有者である被害者の許可を得ずに入手していることになり、窃盗罪が成立すると考えられます。

詐欺罪窃盗罪では、法定刑が異なります。

詐欺罪で有罪になった場合には、10年以下の懲役(刑法第246条1項)窃盗罪で有罪になった場合は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法第235条)が科されることになります。

詐欺罪窃盗罪では、以上のように法定刑が異なりますが、特殊詐欺事件の場合、詐欺罪窃盗罪どちらが適用されても科される量刑が大きく異なることはありません。
こうしたケースでは、罪名というよりも事件の態様や関わり方などを考慮して量刑(刑罰の重さ)が決められることが予想されるためです。
そのため、特殊詐欺事件受け子を行い窃盗罪で有罪になった際には、初犯であっても罰金刑で済まず、実刑判決を受けることになることも十分考えられます。

今回の事例のような特殊詐欺事件では、受け子窃盗罪で有罪になった場合に、懲役刑が科される可能性があります。
しかし、弁護士による示談交渉などの弁護活動によって、執行猶予付き判決を目指していくことができます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、初回接見サービス、無料法律相談を行っています。
詐欺罪窃盗罪、その他刑事事件で逮捕、捜査されている方は、お気軽に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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