【事例紹介】捜査先の民家から現金を盗んだ疑いで警部補を起訴
事案
京都府警の警察官が職務で訪れた民家から現金を盗んだとされる事件で、京都地検は24日、窃盗の罪で、城陽市、府警捜査2課警部補(57)を起訴した。(後略)
(11月24日京都新聞「職務で訪れた民家から現金窃盗容疑 京都府警の警部補を起訴」より引用)
窃盗罪とは
刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して自己または第三者の占有に移転することを言います。
占有が認められるのは、客観的要件としての財物に対する事実的支配(客観的支配)と、主観的要件として財物に対する支配意思が必要です。
例えば、自宅で使っているデスクトップPCは、自宅という限られた人しか入れない閉鎖的な支配領域内にあるため、強い客観的支配が認められます。また、普段使っているのであれば、このデスクトップPCは自分の物だという支配意思も強いと言えるでしょうから、家主に占有が認められます。
本件報道によれば、容疑者である警察官は、民家に置いてあった現金を持ち出したようです。
現金は、民家の中に置いてあったようなので、上述のように家主には当該現金に対して強い客観的支配が認められます。
家主が当該現金のことをはっきり認識していた場合はもちろん、仮に当該現金の所在を忘れていたとしても、自宅内にあるわけですので当該現金を支配する抽象的な意思があったと言えます。
したがって、家主は当該現金を占有していたといえそうです。
そして、容疑者は当該現金を持ち出したようです。
被害者に無断で持ち出したのであれば、占有者である被害者の意思に反して自己の占有に移転したとして、窃盗罪が成立する可能性があります。
犯行時の内心
窃盗罪は故意犯、すなわち自らの行為が犯罪であることをわかった上で行うと成立する犯罪です。
窃盗罪の場合、故意の内容は、他人の財物を窃取することを認識・認容していたことです。
このほかに、窃盗罪が成立するには不法領得の意思が必要であると解されています。
不法領得の意思とは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従いこれを利用しまたは処分する意思」とされています(最判昭和26年7月13日)。
権利者を排除し他人の物を自己の所有物として振る舞う意思を権利者排除意思といい、経済的用法に従いこれを利用し処分する意思を利用処分意思と言います。
まず、権利者排除意思は、刑罰を科されない使用窃盗と窃盗を区別するための概念です。
使用窃盗とは、他人の財物を無断で一時的に使用することであり、被害者の被る被害が軽微であることから不可罰とされています。
本件では、容疑者は現金を持ち出して返すつもりはなかったようですし、被害者が被る被害は軽微とは言えないでしょうから、権利者排除意思を認めてよいと思われます。
次に、利用処分意思は、毀棄・隠匿の罪と区別するために必要な概念です。
毀棄・隠匿の罪は、物を壊したり隠したりすることで利用を妨げる罪です。
現金の場合、利用処分意思が認められる代表例は、何かの購入代金として使おう思って現金を窃取した場合です。
本件報道では、そのあたりの情報は不明ですが、仮に民家から持ち出した現金を使って何かを購入等していた場合、利用処分意思があったと評価され、窃盗罪が成立する可能性があります。
なるべく早く弁護士に相談を
本件では、容疑者は逮捕・起訴されています。
逮捕は、容疑者が逃亡したり、証拠を隠滅したりする恐れがある場合にされる身体拘束で、逮捕中は、単に身体拘束されるだけでなく、捜査機関からの取調べが行われます。
取調べの結果は、調書として文書化されサインするよう求められます。
サインされた調書は、裁判が始まった際に証拠として用いられることがありますから、取調べ前に何をどのように供述するのか、しっかり考えておく必要があります。
もっとも、法律に詳しくない一般の方にとって、どのように受け答えするのが適切か判断することは困難です。
また、逮捕されたショックや不安の中、捜査機関から言われるがまま不利な供述の書かれた調書にサインしてしまうことがあります。
そこで、できるだけ早い段階で弁護士に相談されることをおすすめします。
法律のプロである弁護士であれば、事件の内容を踏まえて取調べでどのように受け答えすれば良いのかアドバイスすることができますし、逮捕された不安を軽減して落ち着いて取調べに対応できる可能性が高まります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部は、窃盗罪の豊富な弁護経験を持つ法律事務所です。
逮捕前であれば、初回無料で弁護士に相談していただけます。
逮捕後の場合には、弁護士を留置場まで派遣する初回接見サービスをご利用できます。
できるだけ早い段階で一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。
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