大学への威力業務妨害事件で逮捕

大学への威力業務妨害事件で逮捕されてしまった事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

◇大学に対する威力業務妨害罪で逮捕◇

Aさんは、京都市上京区にキャンパスのある大学Vに通う大学生の素行が悪いという噂を聞き、それを許せないと思うようになりました。
そこでAさんは、大学Vに電話をかけると、「学生の素行が悪いと聞いているが、そんな学生を育てている大学は許せない。火をつけて大学をなくしてやるぞ」といったような話をしました。
大学Vは当初Aさんからの電話を受け流していたのですが、Aさんからの電話が複数回あったため、危険だと判断した大学Vは京都府上京警察署に相談。
京都府上京警察署の捜査の結果、Aさんの犯行であることが発覚し、Aさんは威力業務妨害罪の容疑で逮捕されてしまいました。
(※この事例はフィクションです。)

◇業務妨害行為に関連する犯罪◇

威力業務妨害罪とは、業務妨害罪のうちの1つであり、刑法に定められている犯罪です。
普段の会話や報道で「業務妨害」という言葉を聞いたことのある方も多いと思いますが、実は刑法では単純な「業務妨害罪」という犯罪は存在しておらず、業務妨害の手段によって成立する犯罪が異なります。
そのうちの1つが今回のAさんの逮捕容疑である威力業務妨害罪であるということなのです。
では、業務妨害行為に関連する刑法の条文を見てみましょう。

刑法第233条
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する

刑法第234条
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

刑法第233条の「…偽計を用いて、…その業務を妨害した者」に成立する業務妨害罪が「偽計業務妨害罪」という業務妨害罪であり、刑法第234条の「威力を用いて人の業務を妨害した者」に成立する業務妨害罪が、今回のAさんの逮捕容疑でもある「威力業務妨害罪」です。
先程触れたように、どちらも「(人の)業務を妨害した」ことで成立する犯罪であり、法定刑は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となっていますが、「業務を妨害した」手段が「偽計」を用いるものなのか「威力」を用いるものなのかによって、偽計業務妨害罪か威力業務妨害罪かどちらが成立するかが変わってくるのです。

◇Aさんの事件を検討◇

今回Aさんが容疑をかけられて逮捕されている威力業務妨害罪の手段である「威力を用いて」とは、簡単に言えば、状況から被害者が自分で自由に決められる意思を抑え付けられるようなことを使って、ということを指します。
一方、偽計業務妨害罪の「偽計を用いて」とは、被害者を騙したり被害者の勘違いや無知を利用したりすることを指します。
過去の判例では、大まかにではありますが、外見的に見て明らかな場合は威力業務妨害罪、そうでない場合は偽計業務妨害罪を成立させているケースが多いです。
しかし、これらはその業務妨害事件の細やかな事情1つでどちらが成立するのかが変わってくるため、専門家である弁護士の意見を聞いてみることをおすすめいたします。

今回のAさんは、大学Vに「火をつける」と伝えています。
放火されてしまえば、大学側は抵抗することはできず、自由意思を抑圧されていると考えることができるため、Aさんは「威力を用いて」いると判断されたのでしょう。

ここで、「Aさんの行為は『業務を妨害した』と言えるのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
報道されるような爆破予告による威力業務妨害事件では、予告をされた施設が休業して捜査が行われるといった、明らかに業務妨害になるようなことになっていますが、今回の事例では大学Vはそこまでの大事になっていないように見えます。
しかし、こういった場合でも威力業務妨害罪は成立する可能性はあります。
というのも、威力業務妨害罪をはじめとする業務妨害罪では、業務を妨害する危険が発生していれば犯罪が成立するとされているのです。
つまり、実際に業務を妨害されたという事実がなくとも、業務が妨害される危険が発生してさえいれば、業務妨害罪が成立しうるのです。

今回のAさんの事例でも、例えば職員の見回りの強化等、通常であればやらなくてもよい業務が増えることで通常業務が滞るといった業務妨害の事実があればもちろんのこと、業務妨害の事実がまだない場合でも、その危険が発生していると判断されれば、Aさんに威力業務妨害罪が成立する可能性が出てくるということになるのです。

◇業務妨害罪に強い弁護士◇

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、こうした威力業務妨害事件の弁護活動のご相談・ご依頼も受け付けています。
威力業務妨害事件では、被害者となる施設や会社などへの謝罪・示談交渉や、Aさんのように逮捕されている被疑者の釈放を求める活動を行なっていくことが考えられますが、法律知識のない当事者だけでこれらを行うことには困難が伴います。
まずはご相談だけでも、専門家の弁護士の話を聞いてみましょう。
お問い合わせは0120-631-881へいつでもお電話ください。

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