置き引き事件で準現行犯逮捕
置き引き事件で準現行犯逮捕されたケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。
~事例~
Aさんは、京都府木津川市の道路で、傍らに荷物を置いて電話をしていたVさんの荷物を手に取ると、素早くその場を去ろうとしました。
しかし、Vさんは荷物を取られたことにすぐに気が付き、Vさんの荷物を持って逃げるAさんを「待て、泥棒!」などと声を上げながら追いかけました。
途中でAさんは追いかけてきたVさんに捕まり、その場で通報を受けた京都府木津警察署の警察官に引き渡されました。
Aさんは、窃盗罪の容疑で準現行犯逮捕されたこととなり、京都府木津警察署に留置されることになりました。
その知らせを聞いたAさんの家族は、すぐに弁護士に相談してAさんの様子を見てきてもらったうえで、準現行犯逮捕とは何か、今後の手続きはどのようになるのかなどを詳しく聞くことにしました。
(※この事例はフィクションです。)
・置き引き
そもそも、置き引きとは、置いてある他人の荷物を勝手に持って行ってしまうことを指し、窃盗行為の1種類であるとされています。
状況によっては占有離脱物横領罪という犯罪が成立することもありますが、置き引きは多くの場合、刑法の窃盗罪が成立するとされています。
刑法第235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
今回のAさんも、Vさんの傍に置いてあったVさんの荷物を勝手に持っていくという置き引きの態様であることから、この窃盗罪が成立すると考えられます。
・準現行犯逮捕とは?
現行犯逮捕とは、皆さんがご存知のように、現在犯罪をしている人や現在犯罪を行い終わった現行犯を逮捕することを指します。
刑事訴訟法第212条第1項
現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者を現行犯人とする。
刑事訴訟法第213条
現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができる。
現行犯逮捕はまさに犯罪が行われていたり行い終わったりしているその場で犯人を逮捕することから冤罪の危険性も少ないとされ、通常の逮捕とは異なり、「逮捕状なくして」できる逮捕です。
さらに、現行犯逮捕は「何人でも」できるとされていることから、警察官や検察官だけでなく、一般人もすることができます。
一般人の行った現行犯逮捕は「常人逮捕」や「私人逮捕」と呼ばれることもあります。
では、今回のAさんがされた準現行犯逮捕とはどういった逮捕なのでしょうか。
刑事訴訟法では、先ほど挙げた「現行犯人」でなくとも、以下の条件に当てはまった場合には「現行犯人」とみなすとしています。
刑事訴訟法212条第2項
左の各号の一にあたる者が、罪を行い終つてから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。
第1号 犯人として追呼されているとき。
第2号 贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき。
第3号 身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき。
第4号 誰何されて逃走しようとするとき。
つまり、まさに犯行現場であるという状況でなくとも、上記の条件に当てはまれば現行犯人と同じように現行犯逮捕ができるということになります。
こうしたことから、刑事訴訟法第212条第2項に該当して現行犯逮捕されることを、現行犯逮捕に準ずることから「準現行犯逮捕」と呼ぶのです。
今回のAさんは、置き引きをしてからすぐにVさんに見つかり追いかけられていますから、「罪を行い終つてから間がないと明らかに認められる」と言えるでしょう。
そして、AさんはVさんに「待て、泥棒!」と声を上げられながら追いかけられていますが、これは「犯人として追呼されているとき」に当たります。
こうしたことから、Aさんは「現行犯人」とみなされることになりますから、準現行犯逮捕されうることになります。
先述のように、現行犯逮捕は警察官でない一般人でも可能な逮捕ですから、今回の場合はVさんがAさんを準現行犯逮捕し、京都府木津警察署の警察官に引き渡したということになるでしょう。
現行犯逮捕や準現行犯逮捕されてしまうと、突然周囲と連絡がつかなくなってしまい、逮捕された方の家族も心配されることが多いです。
特に準現行犯逮捕の場合には、本当に準現行犯逮捕の条件に当てはまっているのか、手続きに誤りはないのかなど検討すべきことも多いです。
だからこそ、準現行犯逮捕されてしまったらまずは弁護士に相談しましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部では、365日いつでもお問い合わせを受け付けていますので、京都府の準現行犯逮捕にお困りの際はお気軽にお問い合わせください。