【事例紹介】現金を奪っていないのに、強盗致傷罪で逮捕された事例

【事例紹介】現金を奪っていないのに、強盗致傷罪で逮捕された事例

窃盗や強盗で手に入れたお金

被害者を車で連れ去って監禁し暴行を加えることで現金を奪おうとしたとして、営利目的略取罪監禁罪強盗致傷罪の容疑で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部が解説します。

事例

京都府警捜査1課と中京署は13日、営利目的略取と逮捕監禁、強盗致傷の疑いで、滋賀県豊郷町の建設会社社長など(中略)男4人を逮捕した。
4人の逮捕容疑は共謀して、(中略)京都市中京区の路上で、会社員男性(中略)の顔面を複数回殴り、車に押し込んで連れ去った後、滋賀県内の事務所に5日未明まで監禁。殴る蹴るの暴行を加えて軽傷を負わせ、「350万円払ったら逃がしたるわ」などと脅迫し、現金を奪おうとした疑い。府警は4人の認否を明らかにしていない。
(後略)

(2月13日 京都新聞 「退職申し出た従業員に暴行加え「350万円払ったら逃したる」 監禁などの疑いで建設会社社長ら4人逮捕」より引用)

営利目的略取罪

刑法第225条
営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

略取とは、暴行や脅迫を用いて現在の生活状態から離脱させることで自分や第三者の支配下に置くことをいいます。
営利目的略取罪は、大まかに説明すると、金銭を得るなどの営利目的で略取を行うと成立する犯罪です。

今回の事例では、被害者の顔面を複数回殴り車に押し込んで連れ去ったとされています。
殴る行為は暴行に当たりますし、車でどこかへ連れ去る行為は現在の生活状態から離脱させ、容疑者らの支配下に置く行為だと推測できます。
また、「350万円払ったら逃がしたるわ」などと脅迫したと報道されていますので、営利目的があったと考えられますので、実際に容疑者らが被害者を車で連れ去ったのであれば、容疑者らに営利目的略取罪が成立する可能性があります。

監禁罪

刑法第220条
不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

監禁罪は簡単に説明すると、鍵のかかった部屋に閉じ込めるなど、脱出が難しいような場所に閉じ込めると成立する犯罪です。

今回の事例では、被害者を車で連れ去ったとされています。
走行している車内から外に出る行為は最悪の場合死に至りますし、少なくともけがを負うでしょうから、走行中の車から脱出することは困難だといえます。
ですので、相手の同意なく車に乗せて走行する行為は監禁罪が成立すると考えられます。

また、報道では滋賀県内の事務所に被害者を監禁したとされています。
報道内容だけでは詳しいことは明らかではありませんが、鍵をかけた部屋に閉じ込めていた場合などは、脱出することは困難でしょうから、監禁罪が成立するおそれがあります。
ですので、今回の事例で実際に容疑者らが被害者を車で連れ去り滋賀県内の事務所で監禁したのであれば、監禁罪が成立するおそれがあります。

強盗致傷罪

刑法第240条
強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の懲役に処し、死亡させたときは死刑又は無期懲役に処する。

強盗罪は簡単に説明すると、抵抗できないような暴行や脅迫を用いてお金などを奪うと成立する犯罪です。
強盗の際にけがを負わせると強盗致傷罪が成立します。

今回の事例では、容疑者らが被害者に殴る蹴るの暴行を加えて軽傷を負わせ、「350万円払ったら逃がしたるわ」などと脅迫して現金を奪おうとしたと報道されています。
軽傷といえどもけがはけがですし、実際に容疑者らが350万円払えば逃がすという発言をしたのであれば、容疑者らは暴行を加えることで現金を奪おうとしていると推測できるでしょう。
であれば、実際に容疑者らがそういった発言をし、被害者にけがを負わせたのであれば、強盗致傷罪が成立する可能性があります。

ですが、今回の事例では、実際に現金を手に入れることはできなかったようです。
その場合にも強盗致傷罪は成立するのでしょうか。

判例では、「強盗に着手した者がその実行行為中被害者に暴行を加へて傷害の結果を生ぜしめた以上財物の奪取未遂の場合でも強盗傷人罪の既遂をもつて論ずべき」(昭和23年6月12日 最高裁判所 決定)だとしており、お金などの財物の奪取が未遂、つまりお金などを奪えていなくても暴行を加えて傷害の結果を生じさせた以上、強盗傷人罪は成立するとされています。
強盗傷人罪は刑法で明確に規定されているわけではなく、強盗傷人罪も強盗致傷罪と同様の刑法第240条が適用されます。
ですので、強盗致傷罪についても、財物が奪えていない場合も強盗致傷罪が成立する可能性があると考えられます。

ですので、今回の事例で容疑者らが実際に被害者から現金を奪おうとして暴行を加え、けがを負わせたのであれば、強盗致傷罪が成立する可能性があります。

逮捕されたら弁護士に相談を

共犯者がいる事件では、証拠隠滅の観点から、家族の接見が認められない場合があります。
ですが、弁護士による接見等一部解除の申請により、家族の接見が認められる場合があります。
また、弁護士による意見書の提出や準抗告の申し立てにより釈放を実現できる場合がありますので、ご家族が逮捕された方は、ぜひ一度、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所京都支部にご相談ください。

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